JP2007149993A - 電子部品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】デラミネーションの発生を低減させ、高寸法精度でかつ高精度な導体を形成することができる導体形成用シートおよび電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】支持体1上に導体ペースト2aを塗布して乾燥することにより導体層2を形成する工程と、導体層2の形成された支持体1上にセラミックスラリー3aを塗布して乾燥することにより導体層付きセラミックグリーンシート3を形成する工程と、導体層付きセラミックグリーンシート3を複数枚積層してセラミックグリーンシート積層体4を形成する工程と、セラミックグリーンシート積層体4を焼成する工程とを有しており、支持体1の表面の溶解度パラメータとセラミックスラリー3aに含まれる溶剤の溶解度パラメータとの差が1.8乃至4であることを特徴とする電子部品の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、積層セラミック配線基板のような電子部品の製造方法に関するものであり、特に、導体が表面に形成された支持体上にセラミックスラリーを塗布し、乾燥後剥離することにより平坦なセラミックグリーンシートを形成する電子部品の製造方法に関する。
近年、電子機器の小型化に伴い、この電子機器に用いられる積層コンデンサや積層セラミック配線基板のような電子部品においても小型化及び高性能化が望まれている。例えば、積層コンデンサにおいては小型化及び高容量化のために、より薄い誘電体層及び導体層を多層化したものが求められている。また、積層セラミック配線基板においては小型化及び配線導体の高密度化のために、より薄い絶縁層及び配線導体層を多層に形成し、配線導体層の幅及び間隔もより微細なものが求められている。
このような電子部品は、セラミック粉末に有機バインダ、可塑剤、溶剤等を加えてスラリーとし、ドクターブレード等によりセラミックグリーンシート(以下、グリーンシートともいう)を成形した後、金属粉末を含有する導体ペーストを印刷するなどしてグリーンシート上に導体層を形成し、次に複数枚の導体層が形成されたグリーンシートを積層して加圧することにより圧着して積層体を得て、この積層体を焼成することで得られる。
ところが、電子部品に対する前述の要求に対応して導体層が形成されたグリーンシートの積層数を多くすると、導体層が形成された領域が重なる部分と他の部分ではその厚み差が大きくなる。このため、積層されたグリーンシートを厚み方向に加圧した場合、導体層が形成された領域が重なる部分においては加圧力が十分に加わるものの、そうでない部分においては加圧力が十分に加わりにくくなるので、不十分な圧着となり易い。その結果、そのような積層体を焼成すると、圧着が不十分な部分でデラミネーション(層間剥離)が発生する可能性があった。
それに対して、特許文献1に記載されているような、導体層が表面に形成された支持体上にセラミックスラリーを塗布し、乾燥後剥離することにより平坦な導体層付きセラミックグリーンシートを形成する製法が提案されている。この製法によれば導体層がグリーンシートに埋没しているので導体層が形成されたグリーンシートの表面が平坦になることから、グリーンシートを積層した場合に導体層が形成された領域とそうでない部分で厚み差がなくなり、グリーンシート積層時に不均一な加圧力によりデラミネーションが発生することがなくなるというものである。
しかしながら、特許文献1に記載されているような導体層が表面に形成された支持体上にセラミックスラリーを塗布し、乾燥後剥離することにより平坦な導体層付きセラミックグリーンシートを形成する製法においては、乾燥や積層などの製造工程中に支持体が伸縮すると、その上に形成された導体層やセラミックグリーンシートの寸法が変動してしまうという不具合を有している。
このような製造工程中に発生する支持体の寸法変動という不具合に対して、特許文献2に記載されているような、あらかじめ全工程で加わる最も高い温度以上で支持体を加熱処理することにより製造工程中の熱負荷による支持体の熱収縮を抑制すること方法を用いることが考えられる。
特開昭50−64768号公報 特開平10−112586号公報
しかしながら、特許文献2に記載されているような、導体層が表面に形成された支持体上にセラミックスラリーを塗布して乾燥した後に剥離することにより平坦な導体層付きセラミックグリーンシートを形成する製法においては、製造工程中の熱負荷による支持体の熱収縮を抑制する方法を用いても製造工程中に発生する支持体の寸法変動を抑えることができないという問題があった。これは、主にセラミックスラリーに含まれる溶剤が極微量ながら支持体へ浸透したり、また逆に浸透した有機溶剤が支持体から放出されたりすることにより支持体が伸縮する、つまり浸透による膨潤や放出による収縮が発生してしまうことによるものであった。
このように支持体が伸縮して寸法変動が発生すると、上述したようにその上に形成された導体層やセラミックグリーンシートの寸法が変動してしまい、このような寸法変動が生じた導体層付きセラミックグリーンシート(以下、シートともいう)を積層して焼成することにより作製された電子部品は、電気的な容量値や抵抗値が実際の設計値からずれるため、電気特性の規格値を満足することができないという問題があった。また、寸法変動の大きさはシートサイズが大きくなると顕著になることから、シートサイズを小さくしてしまうと生産性が低下し、コストが大きくなってしまうという問題点があった。
本発明は、上記の問題点を解決するために完成されたものであり、導体層が表面に形成された支持体上にセラミックスラリーを塗布し、乾燥後剥離することにより平坦な導体層付きセラミックグリーンシートを形成してなる電子部品製法において、セラミックスラリーに含まれる溶剤の支持体への浸透による支持体の寸法変動を抑え、寸法精度が高い電子部品の製造方法を提供することにある。
本発明の電子部品の製造方法は、支持体上に導体ペーストを塗布して乾燥することにより導体層を形成する工程と、該導体層の形成された前記持体上にセラミックスラリーを塗布して乾燥することにより導体層付きセラミックグリーンシートを形成する工程と、該導体層付きセラミックグリーンシートを複数枚積層してセラミックグリーンシート積層体を形成する工程と、該セラミックグリーンシート積層体を焼成する工程とを具備しており、前記支持体の表面の溶解度パラメータと前記セラミックスラリーに含まれる溶剤の溶解度パラメータとの差が1.8乃至4であることを特徴とするものである。
また本発明の電子部品の製造方法は、前記支持体の表面の溶解度パラメータと前記セラミックスラリーに含まれる溶剤の溶解度パラメータとの差よりも前記セラミックスラリーに含まれる溶剤の溶解度パラメータと前記セラミックスラリーに含まれる有機バインダの溶解度パラメータとの差が小さいことを特徴とするものである。
本発明の電子部品の製造方法は、支持体の表面の溶解度パラメータとセラミックスラリーに含まれる溶剤の溶解度パラメータとの差が1.8乃至4であることにより、セラミックスラリーに含まれる溶剤が支持体表面から弾かれることがないので塗布ムラを低減させるとともに、セラミックスラリーに含まれる溶剤が支持体へ浸透しにくくなるので溶剤の浸透による支持体の膨潤や浸透した溶剤の放出による収縮といった支持体の寸法変動を抑制することができ、高寸法精度の導体層付きセラミックグリーンシートを得ることができる。高寸法精度の導体層付きセラミックグリーンシートを用いることにより、デラミネーションの発生を低減させ、寸法精度の高い電子部品を製造することが可能となる。
また、本発明の電子部品の製造方法は、上記製造方法において、支持体の表面の溶解度パラメータとセラミックスラリーに含まれる溶剤の溶解度パラメータとの差より、セラミックスラリーに含まれる溶剤の溶解度パラメータとセラミックスラリーに含まれる有機バインダの溶解度パラメータとの差が小さいものとしたことにより、セラミックスラリーに含まれる有機バインダと溶剤との相溶性が高くなり、有機バインダに溶剤が保持され易くなるのでセラミックスラリーに含まれる溶剤が支持体内へ浸透するのをより一層抑えることができ、支持体の寸法変動を抑制することができ、より高寸法精度の導体層付きセラミックグリーンシートおよびより高寸法精度の電子部品を得ることができる。
本発明の電子部品の製造方法について以下に詳細に説明する。
図1は本発明の電子部品の製造方法の実施の形態の一例を示す工程毎の断面図であり、1は支持体、2は導体層、2aは導体ペースト、3は導体層付きセラミックグリーンシート、3aはセラミックスラリー、4はセラミックグリーンシート積層体である。
まず、図1(a)に示すように、支持体1上に導体ペースト2aを塗布して乾燥することにより導体層2を形成する。次に、図1(b)のように、導体層2の形成された支持体1上にセラミックスラリー3aを塗布して乾燥することにより導体層付きセラミックグリーンシート3を形成する。
ここで、支持体1の表面の溶解度パラメータとセラミックスラリー3aに含まれる溶剤の溶解度パラメータとの差が1.8乃至4であることが重要である。
溶解度パラメータの差が1.8より小さい場合、支持体1へセラミックスラリー3aを塗布した際に、セラミックスラリー3aに含まれる溶剤が支持体1へ浸透しやすくなるので支持体1に寸法変動が発生する。また逆に溶解度パラメータの差が4より大きい場合、支持体1上にセラミックスラリー3aを塗布した際に、セラミックスラリーが支持体1の表面に対する濡れ性が悪く、反発してなじまないので、支持体1上でセラミックスラリーのハジキによる塗布ムラが発生し、導体層付きセラミックグリーンシート3内にピンホールなどの外観不良が発生する。
また、支持体1の表面の溶解度パラメータとセラミックスラリー3aに含まれる溶剤の溶解度パラメータとの差よりもセラミックスラリー3aに含まれる溶剤の溶解度パラメータとセラミックスラリー3aに含まれる有機バインダの溶解度パラメータとの差が小さいことが好ましい。このことによりセラミックスラリー3aに含まれる有機バインダと溶剤との相溶性が高くなり、溶剤は支持体1へ浸透するより有機バインダ中に保持され易くなるので、セラミックスラリー3aに含まれる溶剤が支持体1内へ浸透するのをより一層抑えることができ、より支持体1の寸法変動を抑えることができる。
ここで、溶解度パラメータ(Solubility Parameter)とは、有機成分の性質が似通ったものは相溶けやすいという性質をもとに数値化したものであり、SP値とも呼ばれるものである。溶解度パラメータの値が近いもの同士は溶解しやすいことを示すものであるので、有機成分の溶解力を示す指標として用いられる。なお、本発明の有機成分の溶解度パラメータは、講談社出版「溶剤ハンドブック」(浅原昭三ほか編、1976年初版)による溶解度パラメータのデータを使用した。
支持体1はポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリイミド系、塩化ビニル系等の有機樹脂からなるフィルム状のものである。支持体1の表面とは、セラミックグリーンシートの剥離性を考慮して離型剤や帯電防止剤などの表面処理層を支持体1の表面に形成している場合はその表面処理層の表面である。支持体1からの剥離時に導体層付きセラミックグリーンシート3が伸び等の変形してしまうことを抑えるためには離型剤の表面処理層が形成されていることが好ましい。離型剤の種類としては、大別してシリコーン系と、フッ素系、長鎖アルキル基含有系、アルキッド樹脂系、ポリオレフィン樹脂系などを用いることができる。耐熱性、剥離性及びコストの観点から、シリコーン系が望ましい。また、商品形態別にいえば無溶剤型、エマルジョン型、溶剤型のいずれでも使用し得る。
導体ペースト2aは導体粉末に有機バインダと溶剤と必要に応じて分散剤とを加えて混合したものをボールミル、三本ロールミル、プラネタリーミキサー、トリミックス等の混練手段により均質に分散した後、溶剤を必要量添加することにより粘度を調整する。
導体粉末の導体材料としては、例えばW,Mo,Mn,Au,Ag,Cu,Pd(パラジウム),Pt(白金)等の1種または2種以上が挙げられ、その導体粉末はアトマイズ法、還元法等により製造されたものであり、必要により酸化防止、凝集防止等の処理をおこなってもよい。導体材料が2種以上の場合は2種類以上の粉末を混合してもよいし、合金、コーティング等により2種以上の材料が一体となった粉末であってもよい。また、分級等により微粉末または粗粉末を除去し粒度分布を調整したものであってもよい。
有機バインダとしては、従来より導体ペースト2aに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。有機バインダの選定に当たっては、溶解度パラメータの他、焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系、アルキド系の有機バインダがより好ましい。また、有機バインダの添加量としては、導体粉末により異なるが、焼成時に分解・除去されやすく、かつ導体粒子を分散できる量であればよく、導体粉末に対して外添加で5乃至20質量%程度が望ましい。
導体ペースト2aに用いる溶剤としては、導体粉末と有機バインダとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、テルピネオールやブチルカルビトールアセテート及びフタル酸等などが使用可能である。溶剤は導体粉末に対して4乃至15質量%加えることにより、導体ペースト2aが印刷により導体層2を形成でき、かつ導体層2を形成した後に導体ペースト2aの滲みが発生しない程度の粘度、30000cps乃至40000cps程度となるようにすることが望ましい。
ここで、導体ペースト2aは、セラミックスラリー3aと同様に、支持体1の表面の溶解度パラメータと導体ペースト2aに含まれる溶剤の溶解度パラメータとの差が1.8乃至4であれことが好ましい。セラミックスラリー3aに含まれる溶剤量は、セラミックスラリーに含まれる無機粉末に対して30乃至100質量%程度であるのに対して、導体ペースト2aは上記のように、導体粉末に対して4乃至15質量%であり、含まれる溶剤量が少なく、また塗布される面積が少ないことから、支持体1の溶剤の浸透に起因する寸法変動に対する影響は小さいものの、このようにすることにより導体ペースト2aの塗布ムラを発生させることがないとともに、溶剤の浸透による支持体1の膨潤や浸透した溶剤の放出による収縮といった支持体1の寸法変動をより抑制することができ、より高寸法精度の導体層付きセラミックグリーンシート3aを得ることができる。
また同様に、支持体1の表面の溶解度パラメータと導体ペースト2aに含まれる溶剤の溶解度パラメータとの差よりも、導体ペースト2aに含まれる溶剤の溶解度パラメータと導体ペースト2aに含まれる有機バインダの溶解度パラメータとの差が小さいものとすることにより、導体ペースト2aに含まれる溶剤が有機バインダに保持され易くなることから、導体ペースト2aに含まれる溶剤が支持体1内へ浸透するのをより一層抑え、より支持体1の寸法変動を抑えることができるので、より好ましい。
導体ペースト2aに用いる溶剤としては、例えば、支持体1の表面処理層としてシリコーン系の離型層を用いた場合、離型層のSP値は7.5であるので、溶剤のSP値は3.5乃至5.7の範囲または9.3乃至11.5の範囲であればよく、SP値が9.6の酢酸メチル、SP値が11.5のイソプロパノール・1−ブタノール等が使用可能である。
また、導体ペースト2aの塗布後の形成性、乾燥性を考慮し、低沸点溶剤を用いることが好ましく、塗布の作業性を考慮すると溶剤の沸点は作業時の温度(室温)より高い方が好ましい。さらに、乾燥時の温度による支持体1の寸法変動を抑制するためには、支持体1のガラス転移点より低いことが好ましい。ここで支持体1のガラス転移点とは、支持体1を形成する樹脂の特性が変化する温度のことで、ガラス転移点以下ではガラス質、ガラス転移点以上では粘弾性性質を示すものであり、ガラス転移点以上になると樹脂が変形しやすくなる。これらを考慮すると、導体ペースト2aに使用する溶剤の沸点は40℃から支持体1のガラス転移点の範囲であるのがより好ましい。このようなものとしては、例えば支持体1としてガラス転移点70℃のPET(ポリエチレンテレフタレート)を用いた場合は、沸点が57℃の酢酸メチル等の溶剤が挙げられる。
支持体1の表面の溶解度パラメータと導体ペースト2aに含まれる溶剤の溶解度パラメータとの差よりも導体ペースト2aに含まれる溶剤の溶解度パラメータと導体ペースト2aに含まれる有機バインダの溶解度パラメータとの差が小さくなる組合せとしては、例えば、支持体1の表面に塗布する離形剤にシリコーンを用い、導体ペースト2aに用いる有機バインダとして焼成時の分解性の良好なメタクリル酸エステル共重合体などのアクリル系の有機バインダを用いた場合、導体ペースト2aの溶剤としてフタル酸ジブチルを用いると良い。
支持体1上に導体ペースト2aを塗布して乾燥する方法としては、従来より用いられているスクリーン印刷やグラビア印刷等の印刷法により塗布した後、温風乾燥機、真空乾燥機、または遠赤外線乾燥機等の乾燥機を用いることができる。ここで乾燥温度は上記のように、導体ペースト2aに含まれる溶剤の沸点以上で支持体のガラス転移点より低い温度で行なうのが好ましい。
セラミックスラリー3aは、セラミック粉末に有機バインダおよび溶剤を加え、ボールミルやビーズミル等の混合装置を用いてセラミック粉末を解砕しながら混合することにより作製される。セラミック粉末の分散性やセラミックグリーンシート3の硬度や強度を調整するために分散剤や可塑剤を添加してしてもよい。
セラミックスラリー3aに用いられるセラミック粉末としては、例えばセラミック配線基板であれば、Al,AlN,ガラスセラミック粉末(ガラス粉末とフィラー粉末との混合物)等が挙げられ、積層コンデンサであればBaTiO系,PbTiO系等の複合ペロブスカイト系セラミック粉末が挙げられ、電子部品に要求される特性に合わせて適宜選択される。
ガラスセラミック粉末のガラス成分としては、例えばSiO−B系、SiO−B−Al系,SiO−B−Al−MO系(ただし、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−Al−MO−MO系(ただし、MおよびMは同じまたは異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−B−Al−MO−MO系(ただし、MおよびMは上記と同じである),SiO−B−M O系(ただし、MはLi、NaまたはKを示す),SiO−B−Al−M O系(ただし、Mは上記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等が挙げられる。
また、ガラスセラミック粉末のフィラー粉末としては、例えばAl,SiO,ZrOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,TiOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,AlおよびSiOから選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等のセラミック粉末が挙げられる。
有機バインダとしては、従来よりグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。有機バインダの選定に当たっては、溶解度パラメータの他、焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系バインダがより好ましい。また、有機バインダの添加量はセラミック粉末により異なるが、焼成時に分解・除去されやすく、かつセラミック粉末が分散され、グリーンシートのハンドリング性や加工性が良好な量であればよく、セラミック粉末に対して10乃至20質量%程度が望ましい。
セラミックスラリー3aに用いる溶剤としては、支持体1の表面の溶解度パラメータとの差が1.8乃至4の範囲であり、上記のセラミック粉末と有機バインダとを良好に分散させて混合できるようなもので、トルエン,ケトン類,アルコール類等の有機溶媒や水が挙げられる。これらの中で、トルエン,メチルエチルケトン,イソプロピルアルコール等の蒸発係数の高い溶剤はスラリー塗布後の乾燥工程が短時間で実施できるので好ましい。例えば、支持体1の表面処理層としてフッ素系樹脂の離型層を用いた場合、離型層のSP値は11.0であるので、溶剤のSP値は7.0乃至9.8または12.8乃至16.0の範囲であればよく、SP値が8.9のトルエンやSP値が14.5のメタノール等が使用可能である。溶剤はセラミック粉末に対して、前記のように30乃至100質量%加えることにより、セラミックスラリー3aを良好に支持体1上に塗布することができるような粘度、3cps乃至100cps程度となるようにすることが望ましい。
支持体1の表面の溶解度パラメータとセラミックスラリー3aに含まれる溶剤の溶解度パラメータとの差よりもセラミックスラリー3aに含まれる溶剤の溶解度パラメータとセラミックスラリー3aに含まれる有機バインダの溶解度パラメータとの差が小さくなる組合せとしては、例えば、支持体1の表面に塗布する離形剤にSP値が11.0のフッ素系の樹脂を用い、セラミックスラリー3aに用いる有機バインダとして焼成時の分解性が良好なSP値が9.4のアクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体からなるアクリル樹脂を用いた場合、セラミックスラリー3aの溶剤はSP値が8.9であるトルエンを用いると良い。
セラミックスラリー3aを塗布する方法としては、ドクターブレード法,リップコーター法,ダイコーター法等が挙げられる。特にダイコーター法やスロットコーター法、カーテンコーター法等の押し出し式の方法を用いると、これらは非接触式の塗布方法なので、導体層2を物理的な力で混合させてしまうことなく導体層付きセラミックグリーンシート3を形成することができるのでよい。また、導体層付きセラミックグリーンシート3の厚さは、導体層2の厚みより厚くなるように形成される。
支持体1上に塗布したセラミックスラリー3aの乾燥は、導体ペースト2aの乾燥方法と同様に、従来より用いられている温風乾燥機や遠赤外線乾燥機等のような輻射熱や伝熱を利用するものの他、溶剤の蒸気圧を低下させ揮発させる真空乾燥機等の乾燥機を用いることにより行なわれる。
また、導体層付きセラミックグリーンシート3は、第1のグリーンシート層と積層体を作製する際の加熱時に溶融する溶融成分を含む第2のグリーンシート層とからなるものとしてもよい。この場合、第2のセラミックグリーンシート層は溶融成分を含有していることから、積層時の加熱により溶融成分が溶融数することにより第2のセラミックグリーンシート層が接着性を有するものとなるので、導体層付きセラミックグリーンシート3同士を積層する際に高い圧力をかける必要はなく、積層した導体層付きセラミックグリーンシート3が位置ずれしない程度の圧力で積層することが可能となり、積層圧力による変形がなく高寸法精度を維持することができる。
なお、必要に応じて上下の層間の導体層2同士を接続するためのビアホール導体やスルーホール導体等の貫通導体を形成してもよい。これら貫通導体は、金型によるパンチング加工やレーザ加工等により導体層付きセラミックグリーンシート3に形成した貫通孔に、貫通導体用導体ペーストを印刷やプレス充填等の埋め込み手段によって形成される。貫通穴加工は、導体層付きセラミックグリーンシート3が厚い場合、パンチング加工が導体層付きセラミックグリーンシート3の表裏の貫通穴径に差異がなく、また、ギャング金型による多数個の一括形成が可能であり好ましい。また、貫通穴を加工する際、導体層付きセラミックグリーンシート3は支持体1から剥がして行なってもよいが、支持体1上に保持したまま行なうと導体層付きセラミックグリーンシート3の変形を防止できるのでより好ましい。貫通導体用導体ペーストは導体ペースト2a同様にして作製され、溶剤や有機バインダの量により15000cps乃至40000cps程度に調整される。
次に、図1(c)に示すように、導体層付きセラミックグリーンシート3同士を位置合わせして積み重ね、加熱及び加圧して圧着することでセラミックグリーンシート積層体4を作製する。圧着の際の加熱加圧の条件は用いる有機バインダ等の種類や量により異なるが、概ね30〜100℃、2〜20MPaである。このとき、導体層付きセラミックグリーンシート3同士の接着性を向上させるために、溶剤と有機バインダや可塑剤等を混合した接着剤を用いることも可能である。また、支持体1から導体層付きセラミックグリーンシート3を剥がす時は、圧着前でも後でも構わない。圧着後であれば、特に導体層付きセラミックグリーンシートが薄い場合、支持体1に拘束されるため、圧着する際の温度、圧力による導体層付きセラミックグリーンシート3の寸法変動が抑制でき、より好ましい。また剥がす際に、必要に応じて導体層付きセラミックグリーンシート3が寸法変動しない程度に加熱等の処理を施すことも可能である。
圧着する前の、導体層付きセラミックグリーンシート3を位置合わせして積み重ねた時点で、導体層付きセラミックグリーンシート3が位置ずれしないように、導体層付きセラミックグリーンシート3が変形しない程度の加圧(0.1〜1MPa)を行なうと、導体層付きセラミックグリーンシート3間にデラミネーションが発生することなく密着することとなり、セラミックグリーンシート積層体4を焼成して得られる電子部品は絶縁基体内に空隙の発生のないものとなる。また、導体層付きセラミックグリーンシート3を位置合わせして積み重ねた際に真空吸引を行うと、積み重ねられた導体層付きセラミックグリーンシート3間に取り込まれた空気が除去されることからデラミネーションの発生がより抑えられ、また、吸引力によりより密着することから導体層付きセラミックグリーンシート3同士の位置ずれが発生しにくくなるのでより好ましい。
積層コンデンサのように表面に導体層2が露出しないような電子部品の場合、図1(c’)に示すように、最上部に位置する導体層付きセラミックグリーンシート3には導体層2が形成されていないセラミックグリーンシート3bを用いればよい。
そして最後に、セラミックグリーンシート積層体4を焼成することにより、本発明の電子部品が作製される。焼成する工程は、有機成分の除去とセラミック粉末の焼結とから成る。有機成分の除去は、100〜800℃の温度範囲でセラミックグリーンシート積層体4を加熱することによって行い、有機成分を分解、揮発させるものである。また、焼結温度は、セラミック組成により異なり、約800〜1600℃の範囲内で行なう。焼成雰囲気は、セラミック粉末や導体材料により異なり、大気中、還元雰囲気中、非酸化性雰囲気中等で行なわれ、有機成分の除去を効果的に行なうために水蒸気等を含ませてもよい。
セラミック材料としてガラスセラミックスのような低温焼結材料を用いる場合、グリーンシート積層体4の上下面にさらに拘束グリーンシートを積層して焼成し、焼成後に拘束シートを除去するようにすれば、より高寸法精度のセラミック基板を得ることが可能となる。拘束グリーンシートは、Al等の難焼結性無機材料を主成分とするグリーンシートであり、焼成時に収縮しないものである。この拘束グリーンシートが積層された積層体は、収縮しない拘束グリーンシートにより積層平面方向(xy平面方向)の収縮が抑制され、積層方向(z方向)にのみ収縮するので、焼成収縮に伴う寸法ばらつきが抑制される。
また、拘束グリーンシートには難焼結性無機成分に加えて、焼成温度以下の軟化点を有するガラス成分、例えばセラミックグリーンシート3中のガラスと同じガラスを含有させるとよい。焼成中にこのガラスが軟化してセラミックグリーンシート3と結合することにより、セラミックグリーンシート3と拘束グリーンシートとの結合が強固となり、より確実な拘束力が得られる。このときのガラス量は、難焼結性無機成分とガラス成分を合わせた無機成分に対して外添加で、0.5乃至15質量%とするとよく、拘束力が向上し、かつ拘束グリーンシートの焼成収縮が0.5%以下に抑えられる。
焼成後の拘束グリーンシートの除去方法としては、例えば研磨、ウォータージェット、ケミカルブラスト、サンドブラスト、ウェットブラスト(砥粒と水とを空気圧により噴射させる方法)等が挙げられる。
焼成後の電子部品は、その表面に露出した導体層2の表面に、導体層2の腐食防止のために、または半田や金属ワイヤ等の外部基板や電子部品との接続手段の良好な接続のために、NiやAuのめっきを施すとよい。
以上のような方法で作製された電子部品は、その内部にデラミネーションを有さず寸法精度が高く、かつ高精度な導体を有しており、電子部品として要求される優れた電気特性や気密性の高いものとなる。
本発明の実施例について以下に詳細に説明する。
まず、PETより成るフィルム状の支持体1上に、離型剤として溶解度パラメータが7.5であるシリコーン系および溶解度パラメータが11.0であるフッ素系の樹脂からなる表面処理層を形成し、支持体1の表面の溶解度パラメータが7.5および11.0である2種類を準備した。表面処理層の形成は、離型剤100質量%に対して、トルエンを500%、硬化剤を1%添加し、攪拌翼により混合したものを用いてグラビアコーターにより、1平方メートル当たり1mg塗布して、熱風乾燥機により100℃で30秒間乾燥することにより行なった。
また、導体ペースト2aは、まずCu粉末100質量%に対して外添加で、溶解度パラメータが9.5のアクリル樹脂を10質量%、溶剤として溶解度パラメータが8.9のテルピネオールを3質量%添加し、3本ロールを用いて混合した後、テルピネオールを添加して導体ペースト2aの粘度を10000cpsに調整し作製した。
この支持体1上に導体ペースト2aをスクリーン印刷法で塗布して熱風乾燥機により50℃で600秒程度乾燥することにより、幅及びギャップが75μmの導体層2を形成した。
セラミックスラリー3aは、SiO−B−Al系ガラス粉末60質量%およびアルミナ粉末40質量%の無機粉末に対して外添加で溶解度パラメータがそれぞれ8.3および9.4であるメタクリル酸メタクリレート重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体からなるアクリル樹脂を12質量%、そして溶剤を40質量%添加し、ボールミルにて24時間混合することにより作製した。溶剤として溶解度パラメータが8.4のメチルイソブチルケトン、8.9のトルエン、9.3のメチルエチルケトン、11.5のイソプロパノール・1−ブタノール、14.5のメタノールをそれぞれ用いた5種類のセラミックスラリー3aを準備した。
導体層2を形成した支持体上にドクターブレード法によりセラミックスラリー3aを塗布し、熱風乾燥機で50℃で600秒乾燥することにより導体層付きセラミックグリーンシート3を形成した。
試料の評価は寸法変動と導体層付きセラミックグリーンシート3の外観について行なった。寸法変動の評価は、支持体1上に導体層2を形成した後、および導体層付きセラミックグリーンシート3を形成した後に、工具顕微鏡(ニコン製MM−20)にて導体層2のピッチ寸法を測定しセラミックスラリー3a塗工前後の寸法変動率を算出することにより行なった。またセラミックグリーンシート3の外観の評価は、支持体1から剥離した導体層付きセラミックグリーンシート3に光を当て、透過光により目視でピンホール等の欠陥の有無を観察することにより行なった。評価結果を表1に示す。
Figure 2007149993
表1の寸法精度の評価において、「◎」は、寸法変動率が0.1%以内であるもの、「○」は寸法変動率が0.2%以内であるもの、「×」は寸法変動率としては問題ないものの0.2%より大きいものを示す。またセラミックグリーンシート外観の評価において、「○」は、ピンホール等の外観不良が発生していないことを示し、「×」は使用上問題ないものの、ピンホール等の外観不良が発生していたことを示す。
表1より、支持体1の表面とセラミックスラリーに含まれる溶剤との溶解度パラメータの差が1.8よりも小さい場合(試料No.1,2,6,7,13,14,18,19)は、寸法精度が「×」であった。
また、支持体1の表面とセラミックスラリー3aに含まれる溶剤との溶解度パラメータの差が4よりも大きい場合(試料No.5,10)は、寸法精度は「○」であるが、導体層付きグリーンシート3の外観が「×」であった。
これに対し、支持体1の表面とセラミックスラリー3aに含まれる溶剤との溶解度パラメータの差が1.8乃至4の場合(試料No.3,4,8,9,11,12,15,16,17,20)は、寸法精度が「○」または「◎」で、外観が「○」と良好な結果が得られた。この中でも支持体1の表面の溶解度パラメータとセラミックスラリー3aに含まれる溶剤の溶解度パラメータとの差よりもセラミックスラリー3aに含まれる溶剤の溶解度パラメータとセラミックスラリー3aに含まれる有機バインダの溶解度パラメータとの差が小さい場合(試料No.3,4,8,9,11,12,16,17)は寸法精度の評価が「◎」と、より一層高寸法精度のものとなっている。
(a)〜(d)は、本発明の電子部品の製造方法の実施の形態の一例を示す工程毎の断面図である。
符号の説明
1・・・支持体
2・・・導体層
2a・・導体ペースト
3・・・導体層付きセラミックグリーンシート
3a・・セラミックスラリー
4・・・セラミックグリーンシート積層体

Claims (2)

  1. 支持体上に導体ペーストを塗布することにより導体層を形成する工程と、
    該導体層の形成された前記支持上にセラミックスラリーを塗布することにより複数の導体層付きセラミックグリーンシートを形成する工程と、
    該複数の該導体層付きセラミックグリーンシートを積層してセラミックグリーンシート積層体を形成する工程と、
    該セラミックグリーンシート積層体を焼成する工程とを有しており、
    前記支持体の表面の溶解度パラメータと前記セラミックスラリーに含まれる溶剤の溶解度パラメータとの差が、1.8乃至4であることを特徴とする電子部品の製造方法。
  2. 前記支持体の表面の溶解度パラメータと前記セラミックスラリーに含まれる溶剤の溶解度パラメータとの差より、前記セラミックスラリーに含まれる溶剤の溶解度パラメータと前記セラミックスラリーに含まれる有機バインダの溶解度パラメータとの差が小さいことを特徴とする請求項1に記載の電子部品の製造方法。
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