<第1実施形態>
図1は、この発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。図2は、図1の基板処理装置の部分斜視図である。この基板処理装置は、半導体ウエハ等の基板表面Wfの周縁部からメタル層やフォトレジスト層などの薄膜をエッチング除去する装置である。具体的には、その表面Wf(デバイス形成面)に薄膜が形成された基板Wの周縁部TR(本発明の「処理領域」に相当)に対して化学薬品または有機溶剤等の薬液や純水またはDIW等のリンス液(以下、「処理液」という)を供給することで該表面周縁部TRから薄膜をエッチング除去するとともに、基板裏面Wbに処理液を供給して裏面Wb全体を洗浄する装置である。
この基板処理装置は、基板Wをその表面Wfを上方に向けた状態で水平に保持して回転させるスピンチャック1と、スピンチャック1に保持された基板Wの下面(裏面Wb)の中央部に向けて処理液(薬液やリンス液)を供給する下面処理ノズル2と、スピンチャック1に保持された基板Wの上面(表面Wf)の中央部に向けて処理液を供給する上面処理液ノズル3と、スピンチャック1に保持された基板Wの上面に対向配置された遮断板5と、スピンチャック1に保持された基板Wの表面周縁部TRに処理液を供給する周縁処理ノズル7を備えている。
スピンチャック1は、中空の回転支軸11がモータを含むチャック回転駆動機構13の回転軸に連結されており、チャック回転駆動機構13の駆動により鉛直方向に伸びる回転軸J回りに回転可能となっている。この回転支軸11の上端部には、スピンベース15が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。したがって、装置全体を制御する制御ユニット4からの動作指令に応じてチャック回転駆動機構13を駆動させることによりスピンベース15が回転軸J回りに回転する。このように、この実施形態では、チャック回転駆動機構13が本発明の「回転手段」に相当している。
中空の回転支軸11には、処理液供給管21が挿通されており、その上端に下面処理ノズル2が結合されている。処理液供給管21は薬液供給ユニット22およびリンス液供給ユニット23と接続されており、薬液またはリンス液が選択的に供給される。また、回転支軸11の内壁面と処理液供給管21の外壁面の隙間は、円筒状のガス供給路24を形成している。このガス供給路24はガス供給ユニット25(ガス供給手段)と接続されており、基板Wの下面とスピンベース15の対向面との間に形成される空間に窒素ガスを供給することができる。なお、この実施形態では、ガス供給ユニット25から窒素ガスを供給しているが、空気や他の不活性ガスなどを吐出するように構成してもよい。
スピンベース15の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン17が立設されている。チャックピン17は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース15の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。チャックピン17のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持しながら基板Wの端面を押圧して基板Wを保持する保持部17aと、保持部17aを基板支持点を中心に回動自在に支持する軸17bとを備えている。各チャックピン17は、軸17bが回動することで保持部17aが基板Wの端面を押圧する押圧状態と、保持部17aが基板Wの端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
スピンベース15に対して基板Wが受渡しされる際には、複数個のチャックピン17を解放状態とし、基板Wに対してエッチング処理を行う際には、複数個のチャックピン17を押圧状態とする。押圧状態とすることによって、複数個のチャックピン17は基板Wの周縁を把持してその基板Wをスピンベース15から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持することができる。基板Wは、その表面Wfを上面側に向け、裏面Wbを下面側に向けた状態で保持される。
スピンチャック1の上方には、チャックピン17に保持された基板Wに対向する円盤状の遮断板5が本発明の「当接部材」として水平に配設されている。この遮断板5は、スピンチャック1の回転支軸11と同軸上に配置された回転支軸51の下端部に一体回転可能に取り付けられている。この回転支軸51には、遮断板回転駆動機構52が連結されており、制御ユニット4からの動作指令に応じて遮断板回転駆動機構52のモータを駆動させることにより遮断板5を回転軸J回りに回転させる。制御ユニット4は、遮断板回転駆動機構52をチャック回転駆動機構13と同期するように制御することで、スピンチャック1と同じ回転方向および同じ回転速度で遮断板5を回転駆動させることができる。
また、遮断板5は、遮断板昇降駆動機構53と接続され、遮断板昇降駆動機構53の昇降駆動用アクチェータ(例えばエアシリンダーなど)を作動させることで、遮断板5をスピンベース15に近接して対向させたり、逆に離間させることが可能となっている。具体的には、制御ユニット4は遮断板昇降駆動機構53を駆動させることで、基板処理装置に対して基板Wが搬入出される際には、スピンチャック1の上方の退避位置に遮断板5を上昇させる。その一方で、基板Wに対してエッチングなどの所定の処理を施す際には、スピンチャック1に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定され、該基板表面Wfと対向する対向位置まで遮断板5を下降させる。これにより、遮断板5の下面(対向面501)と基板表面Wfとが近接した状態で離間して対向配置される。すなわち、遮断板5が対向位置に配置されることで、処理領域となる表面周縁部TRに臨む空間に遮断板5が配置されることとなる。
この遮断板5の基板表面Wfと対向する対向面501の平面サイズは基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されており、その中心部に開口を有している。また、遮断板5の周縁部には遮断板5を上下方向(鉛直軸方向)に貫通する、略円筒状の内部空間を有する貫通孔502が形成されており、後述する周縁処理ノズル7が挿入可能となっている。この貫通孔502はスピンチャック1に保持される基板Wの表面周縁部TRに対向する位置に形成されているため、周縁処理ノズル7を貫通孔502に挿入させることで周縁処理ノズル7を表面周縁部TRに対向して配置させることができる。なお、貫通孔502の孔径は、周縁処理ノズル7が貫通孔502の内壁に擦ることなく挿入可能な範囲で必要最小限の大きさで形成される。これは、周縁処理ノズル7と貫通孔502の内壁との摺接によるパーティクル発生を防止するとともに、必要以上に貫通孔502の孔径を大きくすることで貫通孔502に処理液が入り込み、処理液の跳ね返り等の不具合が生じるのを防止するためである。
この周縁処理ノズル7は遮断板5の貫通孔502の形状に合わせて略円筒状に形成され、貫通孔502に挿入されることで、周縁処理ノズル7の先端側が表面周縁部TRに対向して配置される。周縁処理ノズル7の内部には、薬液供給路701とリンス液供給路702とが挿通されており、各供給路701、702の先端部(下端部)がそれぞれ周縁処理ノズル7の吐出口701a,702aを構成している(図2)。そして、周縁処理ノズル7が貫通孔502に挿入される際には、周縁処理ノズル7の吐出口701a,702a周囲の先端面7aが遮断板5の対向面501と面一の位置まで挿入される。周縁処理ノズル7の直径(ノズル径)は、上記したように遮断板5の貫通孔502に挿入させる関係上、必要以上に貫通孔502の孔径を大きくすることのないように、極力小さく形成される。
周縁処理ノズル7の吐出口701a,702aは基板Wの径方向外側に向けて開口しており、吐出口701a,702aからそれぞれ、薬液およびリンス液を表面周縁部TRに供給可能になっている。薬液供給路701とリンス液供給路702とはノズル後端部においてそれぞれチューブ等を介して薬液供給ユニット22およびリンス液供給ユニット23と接続されており、薬液またはリンス液が供給される。このため、例えば制御ユニット4からの動作指令に応じて薬液供給ユニット22から薬液が圧送されると、周縁処理ノズル7の吐出口701aから薬液が吐出され、表面周縁部TRに供給されるとともに、基板Wの径方向外側に向かって流れ、基板外に排出される。したがって、薬液の供給位置よりも基板内周側の非処理領域NTRには薬液は供給されず、その結果、基板表面Wfの周縁部は基板Wの端面から内側に向かって一定の周縁エッチング幅で薄膜がエッチング除去される。
また、制御ユニット4からの動作指令に応じてリンス液供給ユニット23からリンス液が圧送されると、周縁処理ノズル7の吐出口702aからリンス液が吐出され、表面周縁部TRに供給されるとともに、基板Wの径方向外側に向かって流れ、基板外に排出される。ここで、リンス液供給路702は薬液供給路701に対して基板Wの径方向内側に形成されており、リンス液の供給範囲は薬液の供給範囲よりも広くなっている。このため、表面周縁部(処理領域)TRと非処理領域NTRとの界面に付着する薬液をリンス液によって十分に洗い流すことができる。
周縁処理ノズル7は、ノズルアーム71の一方端に固着されている。ノズルアーム71の他方端はアーム軸72により軸支され、アーム軸72が回動することで周縁処理ノズル7がアーム軸72を中心として所定の角度範囲で揺動可能となっている。また、アーム軸72には、ノズルアーム71と該ノズルアーム71に固着された周縁処理ノズル7とを一体的に駆動させる駆動機構73が連結されている。この駆動機構73は、周縁処理ノズル7とノズルアーム71とを揺動させるモータ等の揺動駆動源731と、周縁処理ノズル7とノズルアーム71とを上下方向に昇降させるシリンダ等の昇降駆動源732とを備えている。これらの構成により、周縁処理ノズル7を、揺動駆動源731により基板表面Wfに平行に水平移動させるとともに、昇降駆動源732により上下移動させることが可能となっている。このため、制御ユニット4からの動作指令に応じて駆動機構73が駆動されることで、周縁処理ノズル7とノズルアーム71とを表面周縁部TRから離間した離間位置P1(図1の破線で示す位置)と、遮断板5の貫通孔502に挿入され表面周縁部TRに処理液を供給可能な処理位置P2(図1の実線で示す位置)とに移動させることができる。このように、この実施形態では、処理液を吐出して表面周縁部TRに処理液を供給する周縁処理ノズル7とノズルアーム71とが本発明の「供給機構」として機能するとともに、周縁処理ノズル7とノズルアーム71とを離間位置P1と処理位置P2とに移動させる駆動機構73が、本発明の「供給機構駆動手段」として機能している。
周縁処理ノズル7は、略円筒状に形成されたノズル胴部の断面積がノズル先端側と後端側で異なるように構成されている。具体的には、ノズル先端側の胴部703の断面積がノズル後端側の胴部704の断面積に対して小さくなるように構成されており、ノズル先端側の胴部703とノズル後端側の胴部704との間に段差面7bを有している(図2)。すなわち、ノズル先端側の胴部703の外形面(側面)とノズル後端側の胴部704の外形面(側面)とは段差面7bを介して結合されている。段差面7bは胴部の結合部分においてノズル先端側の胴部703周囲を取り囲む円環状に形成されるとともに、スピンチャック1に保持された基板表面Wfに略平行に形成されている。
なお、周縁処理ノズル7およびノズルアーム71は耐薬性を考慮して樹脂材料により形成されている。具体的には、周縁処理ノズル7は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)にて、ノズルアーム71はPVC(ポリ塩化ビニル)にて形成されている。周縁処理ノズル7の段差面7bは、例えば上記樹脂材料で形成された円筒状のノズルの先端側を切削加工することにより形成することができる。
一方で、遮断板5の貫通孔502の内壁には、周縁処理ノズル7の段差面7bと当接可能な段差部503が設けられている。この段差部503は、周縁処理ノズル7が処理位置P2に位置決めされた際に周縁処理ノズル7と当接する、円環状の当接面5aを有している。当接面5aは、遮断板5の対向面501と略平行に、つまり基板表面Wfと略平行に形成されており、周縁処理ノズル7の段差面7bと面接触することが可能となっている。このため、段差面7bおよび当接面5aを基板表面Wfに平行に形成しない場合に比べて、周縁処理ノズル7の外形部分および貫通孔502の内壁の加工を容易として、周縁処理ノズル7を処理位置P2に位置決めする際に、基板Wに対するノズルの位置精度を高めることができる。さらに、周縁処理ノズル7を鉛直方向に降下させて、つまり基板表面Wfの法線方向に沿って基板Wに向かって周縁処理ノズル7を遮断板5(段差部503)に押し付けて処理位置P2に位置決めしているので、周縁処理ノズル7と遮断板5(貫通孔502の内壁)とが摺動するのを抑制してパーティクルの発生を防止することができる。
また、遮断板5の貫通孔502の内壁には、ガス導入部504が開口されており、ガス導入部504から貫通孔502の内部空間に窒素ガスを供給することが可能となっている。ガス導入部504は遮断板5の内部に形成されたガス流通空間505を介してガス供給ユニット25に連通している。したがって、制御ユニット4からの動作指令に応じてガス供給ユニット25から窒素ガスが圧送されると、貫通孔502の内部空間に窒素ガスが供給され、周縁処理ノズル7が離間位置P1に移動された状態、すなわち、周縁処理ノズル7が貫通孔502に挿入されていない状態では、貫通孔502の上下双方の開口から窒素ガスが噴出される。
ガス導入部504は、貫通孔502の内壁に設けられた段差部503に対して、基板Wから離間する方向、つまり段差部503を中心として基板Wが位置する方向と反対側に開口されている。このため、周縁処理ノズル7が処理位置P2に位置決めされた際に、周縁処理ノズル7の段差面7bと当接面5aとが当接することにより基板W側へのガス流路が塞がれ、窒素ガスが当接部分を越えて貫通孔502から基板表面Wfと対向面501とで挟まれた空間SPに噴出するのが防止される。
遮断板5の中心の開口および回転支軸51の中空部には、処理液供給管31が挿通されており、その下端に上面処理ノズル3が結合されている。処理液供給管31は薬液供給ユニット22およびリンス液供給ユニット23と接続されており、スピンチャック1に保持された基板Wの上面に薬液またはリンス液が選択的に供給される。また、回転支軸51の内壁面と処理液供給管31の外壁面の隙間は、円筒状のガス供給路32を形成している。このガス供給路32はガス供給ユニット25と接続されており、基板Wの上面(表面Wf)と遮断板5の対向面501との間に形成される空間SPに窒素ガスを供給することができる。ガス供給路32から噴出された窒素ガスは、基板Wが回転処理される際に基板Wの回転に伴う遠心力によって基板Wの径方向外側に向けて流れ、基板外に排出される。このため、非処理領域NTRに処理液が付着するのが防止される。
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について説明する。図3は、図1の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。また、図4は、図1の基板処理装置の動作を模式的に示す図である。この装置では、基板Wの表面Wfにメタル層などの薄膜TFが形成された基板Wが薄膜形成面を上方に向けた状態で搬入されスピンベース15上に載置されると、制御ユニット4が装置各部を以下のように制御して基板Wに対してベベルエッチング処理(エッチング工程+リンス工程+乾燥工程)を実行する。なお、基板Wの搬送を行う際には、遮断板5はスピンチャック1の上方の退避位置にあり、基板Wとの干渉を防止している。
未処理の基板Wがスピンベース15上に載置されると、制御ユニット4が複数個のチャックピン17を解放状態から押圧状態とすることにより基板Wの周縁を把持する。これにより基板Wは略水平姿勢に保持される。基板Wがチャックピン17に保持されると、制御ユニット4は遮断板昇降駆動機構53を制御して遮断板5を対向位置まで降下させて基板Wに近接して対向配置させる(ステップS1)。これにより、基板表面Wfは遮断板5の対向面501に覆われ、基板Wの周辺の外部雰囲気から遮断される。
次に、制御ユニット4は駆動機構73を作動させることで周縁処理ノズル7を離間位置P1から処理位置P2に移動させる(ステップS2)。具体的には、揺動駆動源731の作動により周縁処理ノズル7が水平方向に沿って遮断板5の貫通孔502の上方位置に移動するとともに、昇降駆動源732の作動により周縁処理ノズル7が降下してノズル先端面7aが遮断板5の対向面501と面一となる位置まで貫通孔502に挿入される。このとき、周縁処理ノズル7の外形部分に形成された段差面7bと、貫通孔502の内壁に形成された当接面5aとが当接して、周縁処理ノズル7が遮断板5(段差部503)に基板側に向かって、つまり鉛直方向下向きに押し付けられる。これによって、周縁処理ノズル7が遮断板5に当接固定され、処理位置P2に安定して位置決めされる。
それに続いて、制御ユニット4は遮断板5を停止させた状態で、チャック回転駆動機構13を制御してスピンベース15を回転させることにより、基板Wを回転させる(ステップS3)。また、制御ユニット4はガス供給ユニット25を作動させて、ガス供給路32から基板表面Wfの中央部に向けて窒素ガスを供給するとともに、ガス流通空間505に窒素ガスを送り込む。基板表面Wfと対向面501とで挟まれた空間SPに供給されたガスは、基板Wの回転に伴う遠心力によって回転軸Jを中心として径方向外側に均等に流れ、基板外に排出されていく。ここで、ガス導入部504を介して貫通孔502にも窒素ガスが流れ込むが、基板W側への流路は周縁処理ノズル7の段差面7bと貫通孔502の内壁に形成された当接面5aとの当接により塞がれており、貫通孔502から窒素ガスが空間SPに入り込むことがなく、貫通孔502の内壁と周縁処理ノズル7(ノズル後端側の胴部704)の隙間から遮断板5の上方から抜けていく。このため、遮断板5の周縁部に形成された1つの貫通孔502から空間SPに回転軸Jに対して不均一に窒素ガスが入り込み、回転軸Jを中心として径方向外側に均等に流れていく気流を乱すのを防止することができる。
この状態で、薬液供給ユニット22からエッチング処理に適した薬液が周縁処理ノズル7に圧送されて、表面周縁部TRに薬液が供給される(図4(a))。基板Wの径方向外側に向けて吐出された薬液は基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの周縁に向かって流れ、基板の端面を伝って流下する。このとき、周縁処理ノズル7は遮断板5の段差部503に押し当てられた状態で処理位置P2に位置決めされているので、遮断板5に対して周縁処理ノズル7が固定され、ノズル位置、特に上下方向(高さ方向)の位置が正確に定まる。このため、基板Wの回転に伴う気流や振動等の影響により周縁処理ノズル7からの吐出位置が不安定になるのを防止できる。すなわち、樹脂等の剛性が比較的低い材質で形成されたノズルアーム71およびこれに固着された小径の周縁処理ノズル7は気流や振動等の影響を受け易いが、これらに比べて物理的(体積および質量、配置条件等)に振動等の影響を受けにくい遮断板5に周縁処理ノズル7が押し付けられることで、吐出位置が変動するのが防止される。
特に、この実施形態では、薬液を鉛直方向ではなく、基板Wの径方向外側に向けて斜めに吐出させているので、基板Wと周縁処理ノズル7との間の距離が一定とされることで、周縁エッチング幅EHが変動するのを防止することができる。また、ノズル先端面7aが対向面501よりも上方に位置ずれした際に、周縁処理ノズル7から吐出された薬液が貫通孔502の内壁に当たって跳ね返りが発生するのを防止することができる。その結果、表面周縁部TR以外の非処理領域NTRがエッチングされてしまうのを回避することができる。したがって、表面周縁部TRから不要物(薄膜TF)が一定の周縁エッチング幅EHで均一に、全周にわたってエッチング除去される(ステップS4)。
また、制御ユニット4は基板表面Wfへの薬液供給と同時に下面処理ノズル2から基板裏面Wbの中央部に向けて薬液を供給して、裏面Wbを洗浄するようにしてもよい。基板裏面Wbの中央部に供給された薬液は基板Wの回転に伴う遠心力によって裏面全体に拡がる。これにより、裏面Wbが洗浄されるとともに、裏面Wbへの不要物の回り込みが防止される。なお、裏面Wbについては、表面周縁部TRに対するエッチング処理とリンス処理が終了した後に、裏面Wbに対するエッチング処理とリンス処理とを実行するようにしてもよい。
エッチング処理が終了すると、リンス液が周縁処理ノズル7に圧送されて、表面周縁部TRにリンス液が供給される。これにより、基板Wの表面周縁部TRに付着している薬液がリンス液によって洗い落とされる。リンス液は薬液に対して基板Wの内周側から供給されるので、表面周縁部(処理領域)TRと非処理領域NTRとの界面に付着する薬液がリンス液によって十分に洗い流される。また、表面周縁部TRに対するエッチング処理と同時に裏面Wbに対するエッチング処理が終了している場合には、基板表面Wfへのリンス液供給と同時に下面処理液ノズル2から基板裏面Wbの中央部に向けてリンス液を供給してもよい。基板裏面Wbの中央部に供給されたリンス液は基板Wの回転に伴う遠心力によって裏面全体に拡がり裏面Wbがリンス処理される(ステップS5)。
こうして、エッチング処理およびリンス処理が完了すると、制御ユニット4は駆動機構73を作動させることで周縁処理ノズル7を貫通孔502から抜き出して表面周縁部TRから離間した離間位置P1に移動させる(ステップS6)。そして、チャック回転駆動機構13のモータの回転速度を高めて基板Wを高速回転させる。また、基板Wの回転と合わせて遮断板回転駆動機構52のモータを駆動させて遮断板5を高速回転させる。これにより、基板Wおよび遮断板5に付着する液体成分が振り切られる。このとき、上記した基板表面Wfへの窒素ガス供給と併せて、ガス供給路24からも窒素ガスを供給することで、基板Wの表裏面に窒素ガスを供給させる。これにより、基板Wの表裏面が乾燥処理される(ステップS7)。ここで、周縁処理ノズル7が貫通孔502から抜き出されると、ガス導入部504から貫通孔502に導入される窒素ガスが、基板W側の開口からも下方に向けて噴出する(図4(b))。このため、貫通孔502の内部空間に処理液が入り込み基板Wに向けて跳ね返るようなことがない。その結果、非処理領域NTRの腐食を防止することができる。
乾燥処理が終了すると、制御ユニット4は遮断板回転駆動機構52を制御して遮断板5の回転を停止させるとともに、チャック回転駆動機構13を制御して基板Wの回転を停止させる(ステップS8)。こうしてベベルエッチング処理(エッチング処理+リンス処理+乾燥処理)が完了すると、遮断板昇降駆動機構53の駆動により遮断板5が上昇され、基板Wの周縁を保持する複数個のチャックピン17を押圧状態から解放状態にして、処理済基板Wが装置から搬出される(ステップS9)。
以上のように、この実施形態によれば、周縁処理ノズル7を離間位置P1から処理位置P2に移動した際に、周縁処理ノズル7の段差面7bを対向位置に配置された遮断板5の貫通孔502の内壁に形成された段差部503(当接面5a)に当接させるとともに基板Wに向かって押し付けている。このため、周縁処理ノズル7を処理位置P2に安定して位置決めしながらベベルエッチング処理を行うことができる。その結果、基板Wの回転による気流や振動等の影響により吐出位置が不安定になるのを防止して、プロセス性能を安定化させることができる。特に、基板表面Wfからの周縁処理ノズル7の高さ方向の位置を安定して位置決めすることができるので、周縁処理ノズル7から吐出される処理液の跳ね返りを防止することができる。また、周縁エッチング幅EHの変動を防止して周縁エッチング幅EHを均一にすることができる。
また、この実施形態によれば、周縁処理ノズル7において、ノズル先端側の胴部703の断面積がノズル後端側の胴部704の断面積に対して小さくなるように、ノズル先端側の胴部703とノズル後端側の胴部704との間に段差面7bを有するようにノズルを形成して、該段差面7bを遮断板5の当接面5aに押し付けている。このため、ノズル径が小さく、吐出口周囲のノズル先端面7aで当接部材と当接させることが困難な場合でもノズルの位置決めを確実に行うことができる。さらに、周縁処理ノズル7のノズル先端面7aを遮断板5の対向面501に対して面一にして位置決めすることができるので、周縁処理ノズル7から吐出された処理液が貫通孔502の内壁に当たってしまうのを回避することができるとともに、処理液が貫通孔502に入り込み基板Wに向けて跳ね返ることがない。
さらに、この実施形態によれば、段差面7bと当接面5aとを基板表面Wfに略平行に形成しているので、周縁処理ノズル7および遮断板5の加工を容易として、周縁処理ノズル7を処理位置P2に位置決めする際に、基板Wに対するノズルの位置精度を高めることができる。さらに、段差面7bおよび当接面5aを基板表面Wfに略平行に形成しながら基板表面Wfの法線方向に沿って基板Wに向かって周縁処理ノズル7を遮断板5(段差部503)に押し付けて処理位置P2に位置決めしているので、周縁処理ノズル7と遮断板5とが摺動するのを抑制してパーティクルの発生を防止することができる。
また、この実施形態によれば、貫通孔502の内壁にガス導入部504を開口させるとともに、ガス供給ユニット25からガス導入部504に窒素ガスを供給して貫通孔502に窒素ガスを導入している。このため、周縁処理ノズル7が離間位置P1に移動して貫通孔502から抜き出された際に、貫通孔502から窒素ガスが噴出して、処理液が貫通孔502に入り込むことに起因して基板Wに向けて処理液の跳ね返りが発生するのを抑制することができる。
さらに、この実施形態によれば、ガス導入部504を段差部503に対して、基板Wから離間する方向に開口させているので、周縁処理ノズル7が貫通孔502に挿入された際には、段差面7bと当接面5aとが当接することにより基板W側へのガス流路が塞がれ、基板表面Wfと対向面501とで挟まれた空間SPに窒素ガスが流入するのを防止することができる。このため、貫通孔502から空間SPに窒素ガスが入り込み、回転軸Jを中心として径方向外側に均等に流れていく気流を乱すのを防止することができる。その結果、処理液の跳ね返り等の不具合を防止することができる。
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態にかかる基板処理装置の要部を示す図である。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、周縁処理ノズルの構造が相違する点である。第1実施形態では、周縁処理ノズル7が薬液とリンス液とにそれぞれ対応して、液供給路とその端部を構成する吐出口を有していた、すなわち、薬液に対して薬液供給路701と吐出口701aが設けられる一方、リンス液に対してリンス液供給路702と吐出口702aが設けられていた。これに対して、この第2実施形態では、周縁処理ノズル70は1つの処理液供給路700と、その端部を構成する1つの吐出口700aを有している。つまり、周縁処理ノズル70は処理液供給路700を介して吐出口700aから薬液とリンス液とが選択的に吐出されるように構成されている。なお、その他の構成および動作は基本的に第1実施形態と同様であり、同一構成については同一符号を付してその説明を省略する。
周縁処理ノズル70の内部には、処理液供給路700が形成されており、処理液供給路700の先端部(下端部)が周縁処理ノズル70の吐出口700aを構成している。そして、周縁処理ノズル70が貫通孔502に挿入される際には、周縁処理ノズル70の吐出口700a周囲の先端面70aが遮断板5の対向面501と面一の位置まで挿入される。周縁処理ノズル70の直径(ノズル径)は、貫通孔502の孔径を大きくすることのないように小さくすることが望ましいが、この実施形態によれば、ノズル内部に挿通される液供給路を1つにして薬液とリンス液に対して共通利用しているので、ノズル径を極力小さくすることができるという利点がある。ノズル径としては、例えばφ5〜6mm程度に形成される。
周縁処理ノズル70の吐出口700aは基板Wの径方向外側に向けて開口しており、吐出口700aから薬液およびリンス液を表面周縁部TRに供給可能になっている。処理液供給路700はノズル後端部においてチューブ等を介して薬液供給ユニット22およびリンス液供給ユニット23と接続されており、制御ユニット4からの動作指令に応じて薬液またはリンス液が選択的に供給される。
また、ノズル先端側の胴部703とノズル後端側の胴部704との間に段差面70bが形成されている点は第1実施形態と同様である。この段差部70bは、ノズル先端側の胴部703周囲を取り囲む円環状に、しかもスピンチャック1に保持された基板表面Wfに略平行に形成され、遮断板5の当接面5aに当接可能に仕上げられている。
図6は、第2実施形態にかかる基板処理装置の動作を模式的に示す図である。この実施形態においても、図3に示すフローチャートと同様な手順で基板処理が実行される。すなわち、遮断板5が対向位置に配置された後、周縁処理ノズル70のノズル先端面70aが遮断板5の対向面501と面一となる位置まで貫通孔502に挿入される。このとき、周縁処理ノズル70の段差面70bと、遮断板5の当接面5aとが当接して、周縁処理ノズル70が遮断板5(段差部503)に基板側に向かって押し付けられる。これによって、周縁処理ノズル70が遮断板5に当接固定され、処理位置P2に安定して位置決めされる。
続いて、基板Wが回転され、エッチング処理(ステップS4)とリンス処理(ステップS5)とが実行される。ここで、表面周縁部TRに対するエッチング処理(図6(a))とリンス処理(図6(b))とを実行する際に、周縁処理ノズル70から薬液とリンス液とが単一の処理液供給路700を介して基板Wの表面周縁部TRに向けて選択的に供給される。
以上のように、この実施形態においても、周縁処理ノズル70を処理位置P2に移動した際に、周縁処理ノズル70の段差面70bが遮断板5の段差部503(当接面5a)に当接し基板Wに向かって押し付けられることで、周縁処理ノズル70を処理位置P2に安定して位置決めしながらベベルエッチング処理を行うことができる。その結果、基板Wの回転による気流や振動等の影響により吐出位置が不安定になるのを防止して、プロセス性能を安定化させることができる。
また、周縁処理ノズル70は段差面70bを有し、該段差面70bを遮断板5の当接面5aに押し付けている点、段差面70bと当接面5aとを基板表面Wfに略平行に形成している点、ガス導入部504に窒素ガスを供給して貫通孔502に窒素ガスを導入している点、ガス導入部504を段差部503に対して基板Wから離間する方向に開口させている点は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様な作用効果が得られる。
さらに、この実施形態によれば、処理液供給路700を1つにして周縁処理ノズル70のノズル径を小さくすることができるため、遮断板5に形成する貫通孔502の孔径を小さくすることができる。その結果、遮断板5の雰囲気遮断効果を高めるとともに、貫通孔502に起因する処理液の跳ね返り等の不具合を抑制することができる。
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態にかかる基板処理装置の構成を示す図である。この第3実施形態が第1および第2実施形態と大きく相違する点は、第1および第2実施形態では、チャックピン17により基板裏面Wbの周縁部を下方から支持しながら基板Wの端面をメカ的に押圧して基板Wを保持していたのに対して、この第3実施形態では、基板裏面Wbの周縁部を下方から支持ピンにより支持しながら遮断板50と基板表面Wfとで挟まれた空間にガスを供給することにより基板Wを上方から支持ピンに押圧させて保持させている点である。なお、周縁処理ノズルのノズル径を小さくするため、単一の処理液供給路700を介して薬液とリンス液とを選択的に供給する点は第2実施形態と同様である。
図8は、図7の基板処理装置が備えるスピンベース15を上方から見た平面図である。スピンベース15には、その中心部に開口が設けられるとともに、その周縁部付近には複数個(この実施形態では24個)の支持ピンF1〜F12,S1〜S12が鉛直方向に昇降自在に設けられている。ここで、基板Wを水平支持するためには、支持ピンの個数は少なくとも3個以上であればよいが、支持ピンが基板Wの下面に当接する部分を処理するためには、支持ピンを基板Wの下面に対して離当接自在に構成するとともに、処理中に少なくとも1回以上、支持ピンを基板Wの下面から離間させるのが望ましい。そのため、支持ピンが基板Wの下面に当接する部分をも含めて基板Wの下面を処理するためには少なくとも4個以上の支持ピンが必要とされ、実施形態である24個とすることより安定して基板Wを支持することができる。
これら支持ピンF1〜F12,S1〜S12は、回転軸Jを中心として放射状に略等角度間隔でスピンベース15から上方に向けて突出して設けられている。支持ピンF1〜F12、S1〜S12の各々は、基板裏面Wbと当接することによって、スピンベース15から所定距離だけ上方に離間させた状態で基板Wを水平に支持可能となっている。これらのうち、周方向に沿って1つ置きに配置された12個の支持ピンF1〜F12は、第1支持ピン群を構成していて、これらは連動して基板Wを支持し、または基板Wの裏面から離間してその支持を解除するように動作する。一方で、残る12個の支持ピンS1〜S12は、第2支持ピン群を構成しており、これらは連動して基板Wを支持し、または基板Wの裏面から離間してその支持を解除するように動作する。
図9は支持ピンの構成を示す部分拡大図である。なお、支持ピンF1〜F12,S1〜S12の各々はいずれも同一構成を有しているため、ここでは1つの支持ピンF1の構成についてのみ図面を参照しつつ説明する。支持ピンF1は、基板Wの下面に離当接可能な当接部61と、当接部61を上下方向へ移動可能に支持する可動ロッド62と、この可動ロッド62を上下動させるモータ等を含む昇降駆動部63と、可動ロッド62を取り囲むように設けられ可動ロッド62と昇降駆動部63とを外部雰囲気から遮断するベローズ64とを有している。ベローズ64は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)より形成され、薬液等により基板Wを処理する際に、ステンレス鋼(SUS)またはアルミニウム等から形成される可動ロッド62を保護する。また、当接部61は耐薬性を考慮して、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)で形成されるのが好ましい。ベローズ64の上端部は当接部61の下面側に固着される一方、ベローズ64の下端部はスピンベース15の上面側に固着されている。なお、昇降駆動部63はモータに限らず、エアシリンダ等のアクチュエータ全般を用いてもよい。
上記した構成を有する支持ピンF1〜F12,S1〜S12では、昇降駆動部63が制御ユニット4からの駆動信号に基づき図示省略する駆動連結部を介して可動ロッド62を1〜数mmのストロークで駆動させることにより、次のように基板Wを支持する。すなわち、昇降駆動部63を駆動させない状態では、所定の高さ位置(基板処理位置)で基板Wを支持するように支持ピンF1〜F12,S1〜S12の各々はコイルばね等の付勢手段(図示せず)によって上向きに付勢されており、基板Wは支持ピンF1〜F12からなる第1支持ピン群と、支持ピンS1〜S12からなる第2支持ピン群との両方の支持ピン群により支持される。一方で、支持ピンS1〜S12を付勢力に抗して下降駆動させると、支持ピンS1〜S12の当接部61は基板Wの下面から離間して基板Wは支持ピンF1〜F12からなる第1支持ピン群のみにより支持される。また、支持ピンF1〜F12を付勢力に抗して下降駆動させると、支持ピンF1〜F12の当接部61は基板Wの下面から離間して基板Wは支持ピンS1〜S12からなる第2支持ピン群のみにより支持される。
図10は遮断板50の底面図である。この遮断板50が第1および第2実施形態にかかる基板処理装置に用いられる遮断板5と相違する点は、遮断板5の対向面501に円周方向に沿って複数のガス噴出口を開口させている点である。これにより、基板表面Wfと対向面501とで挟まれた空間SPの内部圧力を効果的に高め、基板Wを支持ピンF1〜F12,S1〜S12に押圧させてスピンベース15とともに回転保持させることが可能となっている。なお、遮断板50のその他の構成については、基本的に第1および第2実施形態にかかる基板処理装置に用いられる遮断板5と同等であり、同一構成については同一符号を付してその説明を省略する。
対向面501には円周方向に沿って複数のガス噴出口506が開口している。複数のガス噴出口506はスピンチャック1に保持される基板Wの表面中央部の非処理領域NTRに対向する位置に、回転軸Jを中心とする円周に沿って等角度間隔に形成されている。これらのガス噴出口506は、遮断板50の内部のガス流通空間505に連通しており、ガス流通空間505に窒素ガスが供給されると、ガス噴出口506を介して窒素ガスが空間SPに供給される。なお、ガス噴出口は複数の開口に限らず、単一の開口、例えば、回転軸Jを中心として全周にわたってリング状に開口したものであってもよい。但し、複数のガス噴出口とした方が、ガス噴出圧の均一性を得る点で有利である。
そして、この空間SPに窒素ガスが供給されることで空間SPの内部圧力を高めて基板Wをその下面に当接する支持ピンF1〜F12,S1〜S12に押圧させることができる。これによって、支持ピンF1〜F12,S1〜S12に押圧された基板Wは、チャック回転駆動機構13がスピンベース15を回転させることで基板Wの下面と支持ピンF1〜F12,S1〜S12との間に発生する摩擦力によって支持ピンF1〜F12,S1〜S12に支持されながらスピンベース15とともに回転する。なお、ガス噴出口506から噴出された窒素ガスは、基板Wが回転処理される際に基板Wの回転に伴う遠心力によって基板Wの径方向外側に向けて流れ、基板外に排出される。このため、非処理領域NTRに処理液が付着するのが確実に防止される。
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について説明する。図11は、図7の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。また、図12は、図7の基板処理装置の動作を模式的に示す図である。この装置では、基板Wの表面Wfにメタル層などの薄膜TFが形成された基板Wが薄膜形成面を上方に向けた状態で搬入されスピンベース15上に載置されると、制御ユニット4が装置各部を以下のように制御して基板Wに対してベベルエッチング処理(エッチング工程+リンス工程+乾燥工程)を実行する。なお、基板Wの搬送を行う際には、遮断板50はスピンチャック1の上方の退避位置にあり、基板Wとの干渉を防止している。また、搬入される基板Wはすべての支持ピンF1〜F12,S1〜S12にて支持するようにしてもよいし、支持ピンF1〜F12からなる第1支持ピン群のみにより支持、あるいは支持ピンS1〜S12からなる第2支持ピン群のみにより支持するようにしてもよい。
未処理基板Wが支持ピンF1〜F12,S1〜S12に載置されると、制御ユニット4は遮断板50を対向位置まで降下させて基板Wに近接して対向配置させる(ステップS11)。そして、ガス噴出口506から窒素ガスを吐出させるとともに、ガス供給路32から基板表面Wfの中央部に向けて窒素ガスを供給する(ステップS12)。これによって、遮断板50の対向面501と基板表面Wfとの間に形成される空間SPの内部圧力が高められ、基板Wはその下面(裏面Wb)に当接する支持ピンF1〜F12,S1〜S12に押圧されてスピンベース15に保持される。また、基板表面Wfは遮断板50の対向面501にごく近接した状態で覆われることによって、基板Wの周辺の外部雰囲気から確実に遮断される。
次に、制御ユニット4は駆動機構73を作動させることで周縁処理ノズル70を離間位置P1から処理位置P2に移動させる(ステップS13)。具体的には、揺動駆動源731の作動により周縁処理ノズル70が水平方向に沿って遮断板50の貫通孔502の上方位置に移動するとともに、昇降駆動源732の作動により周縁処理ノズル70が降下してノズル先端面7aが遮断板50の対向面501と面一となる位置まで貫通孔502に挿入される。このとき、周縁処理ノズル70の外形部分に形成された段差面7bと、貫通孔502の内壁に形成された当接面5aとが当接して、周縁処理ノズル70が遮断板50(段差部503)に基板Wに向かって、つまり鉛直方向下向きに押し付けられる。これによって、周縁処理ノズル70が遮断板50に当接固定され、処理位置P2に安定して位置決めされる。
それに続いて、制御ユニット4は遮断板50を停止させた状態で、チャック回転駆動機構13を制御してスピンベース15を回転させることにより、基板Wを回転させる(ステップS14)。このとき、支持ピンF1〜F12,S1〜S12に押圧された基板Wは支持ピンF1〜F12,S1〜S12と基板Wの下面との間に発生する摩擦力でスピンベース15に保持されながら、スピンベース15とともに回転することとなる。
基板表面Wfと対向面501とで挟まれた空間SPに供給されたガスは、基板Wの回転に伴う遠心力によって回転軸Jを中心として径方向外側に均等に流れ、基板外に排出されていく。ここで、ガス導入部504を介して貫通孔502にも窒素ガスが流れ込むが、基板W側への流路は周縁処理ノズル70の段差面70bと貫通孔502の内壁に形成された当接面5aとの当接により塞がれており、貫通孔502から窒素ガスが空間SPに入り込むことがなく、貫通孔502の内壁と周縁処理ノズル70(ノズル後端側の胴部704)の隙間から遮断板50の上方から抜けていく。このため、遮断板50の周縁部に形成された1つの貫通孔502から空間SPに回転軸Jに対して不均一に窒素ガスが入り込み、回転軸Jを中心として径方向外側に均等に流れていく気流を乱すのを防止することができる。
この状態で、薬液供給ユニット22からエッチング処理に適した薬液が周縁処理ノズル70に圧送されて、表面周縁部TRに処理液として薬液が供給される(図12(a))。基板Wの径方向外側に向けて吐出された薬液は基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの周縁に向かって流れ、基板の端面を伝って流下する。これにより、表面周縁部TRの全体に薬液が供給されてエッチング処理される。このとき、周縁処理ノズル70は遮断板50の段差部503に押し当てられた状態で処理位置P2に位置決めされているので、遮断板50に対して周縁処理ノズル70が固定され、ノズル位置、特に上下方向(高さ方向)の位置が正確に定まる。このため、基板Wの回転に伴う気流や振動等の影響により周縁処理ノズル70からの吐出位置が不安定になるのを防止できる。すなわち、樹脂等の剛性が比較的低い材質で形成されたノズルアーム71およびこれに固着された小径の周縁処理ノズル70は気流や振動等の影響を受け易いが、これらに比べて物理的(体積および質量、配置条件等)に振動等の影響を受けにくい遮断板50に周縁処理ノズル70が押し付けられることで、吐出位置が変動するのが防止される。
特に、この実施形態では、薬液を鉛直方向ではなく、基板Wの径方向外側に向けて斜めに吐出させているので、基板Wと周縁処理ノズル70との間の距離が一定とされることで、周縁エッチング幅EHが変動するのを防止することができる。また、ノズル先端面70aが対向面501よりも上方に位置ずれした際に、周縁処理ノズル70から吐出された薬液が貫通孔502の内壁に当たって跳ね返りが発生するのを防止することができる。その結果、表面周縁部TR以外の非処理領域NTRがエッチングされてしまうのを回避することができる。
また、この実施形態では、基板Wの外周端部に接触して基板Wを保持する、チャックピン等の保持部材がないことから、保持部材により保持している部分と保持していない部分とで薬液の回り込み量が異なることはなく、基板表面Wfの周縁部へ薬液を均一に回り込ませることができる。また、基板Wの外周端部付近の気流を乱す要因がないことからミスト状の薬液の基板表面Wf側への巻き込みが軽減される。さらに、ガス供給路32およびガス噴出口506から供給される窒素ガスにより基板表面Wfの中央部への薬液の入り込みが防止される。したがって、表面周縁部TRから不要物(薄膜TF)が一定の周縁エッチング幅EHで全周にわたって均一にエッチング除去される(ステップS15)。
さらに、周縁処理ノズル70は遮断板50の貫通孔502に挿入されるため、薬液が飛散して周縁処理ノズル70に向けて跳ね返ってくるような場合でも薬液は遮断板50の対向面501に遮られ、周縁処理ノズル70の周囲(側面)に薬液が付着するようなことがない。このため、ノズル移動時において周縁処理ノズル70から薬液が落ちて基板Wあるいは基板周辺部材に付着して悪影響を及ぼすことが防止される。したがって、周縁処理ノズル70の洗浄も不要となり、装置のスループットの向上を図ることができる。
表面周縁部TRに対するエッチング処理が終了すると、制御ユニット4は周縁処理ノズル70への薬液の圧送を停止して、リンス液供給ユニット23からリンス液を周縁処理ノズル70に圧送する。これにより、表面周縁部TRにリンス液が供給され、基板Wの表面周縁部TRに付着している薬液がリンス液によって洗い落とされる(ステップS16)。
こうして、表面周縁部TRに対するリンス処理が終了すると、制御ユニット4は周縁処理ノズル70へのリンス液の圧送を停止して、周縁処理ノズル70を貫通孔502から抜き出して表面周縁部TRから離間した離間位置P1に移動させる(ステップS17)。このとき、ガス導入部504から貫通孔502に導入される窒素ガスが遮断板50の上下の開口から貫通孔502の上下方向に噴出する(図12(b))。このため、周縁処理ノズル70が貫通孔502から抜き出された状態であっても、処理液が貫通孔502に入り込み基板表面Wfに向けて跳ね返るのが抑制される。
続いて、制御ユニット4は遮断板回転駆動機構52を制御してスピンベース15の回転数とほぼ同一の回転数で同一方向に遮断板50を回転させる(ステップS18)。その後、下面処理ノズル2からスピンベース15とともに回転される基板Wの裏面Wbに処理液が供給され、基板Wの裏面(非デバイス形成面)Wbに対して裏面洗浄処理が実行される(ステップS19)。具体的には、下面処理ノズル2から基板裏面Wbの中央部に向けて処理液として薬液とリンス液とが順次供給されることにより、裏面全体と裏面Wbに連なる基板端面部分が洗浄される。このように基板Wとともに遮断板50を回転させることで、遮断板50に付着する処理液がプロセスに悪影響を及ぼすのを防止するとともに、基板Wと遮断板50との間に回転に伴う余分な気流が発生するのを抑制して基板表面Wfへの処理液の巻き込みを防止することができる。
ここで、洗浄処理中に支持ピンF1〜F12,S1〜S12を基板裏面Wbから少なくとも1回以上、離間させることで支持ピンF1〜F12,S1〜S12と基板裏面Wbの当接部分にも処理液を回り込ませて当該部分を洗浄することができる。例えば、洗浄処理途中に、支持ピンF1〜F12からなる第1支持ピン群と支持ピンS1〜S12からなる第2支持ピン群との両方の支持ピン群により基板Wを支持した状態から第1支持ピン群のみにより基板Wを支持した状態に切り換え、基板Wと第2支持ピン群との間の当接部分に処理液を回り込ませる。その後、両方の支持ピン群により基板Wを支持した状態に移行させた後に、第2支持ピン群のみにより基板Wを支持した状態に切り換え、基板Wと第1支持ピン群との間の当接部分に処理液を回り込ませる。これにより、基板Wと支持ピンF1〜F12,S1〜S12との間の当接部分のすべてに処理液を回り込ませて裏面全体の洗浄処理を行うことができる。
なお、裏面洗浄については、表面周縁部TRに対するエッチング処理と同時に裏面Wbをエッチング処理するとともに、表面周縁部TRに対するリンス処理と同時に裏面Wbをリンス処理してもよいが、上記したように、表面周縁部TRに対するエッチング処理とリンス処理を終了した後に、裏面Wbに対するエッチング処理とリンス処理とを実行するのが好ましい。後者によれば、裏面洗浄時に遮断板50を回転させることができるため、裏面Wbに供給される比較的大流量の処理液が遮断板50に付着するのを防止することができるからである。
こうして、裏面洗浄処理が完了すると、制御ユニット4はチャック回転駆動機構13および遮断板回転駆動機構52のモータの回転速度を高めて基板Wおよび遮断板50を高速回転させて、基板Wの乾燥を実行する(ステップS20)。このとき、上記した基板表面Wfへの窒素ガス供給と併せて、ガス供給路24からも窒素ガスを供給することで、基板Wの表裏面に窒素ガスを供給させる。これにより、基板Wの表裏面の乾燥処理が促進される。
基板Wの乾燥処理が終了すると、制御ユニット4は遮断板回転駆動機構52を制御して遮断板50の回転を停止させるとともに(ステップS21)、チャック回転駆動機構13を制御して基板Wの回転を停止させる(ステップS22)。そして、ガス供給路32およびガス噴出口506からの窒素ガスの供給を停止することで、基板Wの支持ピンF1〜F12,S1〜S12への押圧保持を解除する(ステップS23)。その後、遮断板50が上昇され、処理済基板Wが装置から搬出される(ステップS24)。
以上のように、この実施形態においても、周縁処理ノズル70を離間位置P1から処理位置P2に移動した際に、周縁処理ノズル70の段差面7bを対向位置に配置された遮断板50の貫通孔502の内壁に形成された段差部503(当接面5a)に当接させるとともに基板Wに向かって押し付けている。このため、周縁処理ノズル70を処理位置P2に安定して位置決めしながらベベルエッチング処理を行うことができる。その結果、基板Wの回転による気流や振動等の影響により吐出位置が不安定になるのを防止して、プロセス性能を安定化させることができる。
また、周縁処理ノズル70は段差面70bを有し、該段差面70bを遮断板50の当接面5aに押し付けている点、段差面70bと当接面5aとを基板表面Wfに略平行に形成している点、ガス導入部504に窒素ガスを供給して貫通孔502に窒素ガスを導入している点、ガス導入部504を段差部503に対して基板Wから離間する方向に開口させている点は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様な作用効果が得られる。
さらに、この実施形態によれば、基板裏面Wbに当接する支持ピンF1〜F12,S1〜S12によって基板Wを支持しながら、遮断板50の対向面501と基板表面Wfとの間に形成される空間SPに窒素ガスを供給することによって、基板Wを支持ピンF1〜F12,S1〜S12に押圧させてスピンベース15に保持させている。そして、基板Wと支持ピンF1〜F12,S1〜S12との間に発生する摩擦力によってスピンベース15とともに基板Wを回転させている。このため、基板Wの外周端部に当接して基板Wを保持するチャックピン等の保持部材を不要とすることができる。その結果、表面周縁部TRに供給された処理液が保持部材に当たって跳ね返り表面中央部の非処理領域NTRを腐食させることがない。また、基板Wの外周端部付近の気流を乱す要因がないことからミスト状の処理液の基板表面側への巻き込みを軽減して、非処理領域NTRへの処理液の付着を効果的に防止することができる。
<その他>
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、遮断板5,50をノズルに当接可能な当接部材として、遮断板5,50の貫通孔502にノズル7,70を挿入させてノズル7,70を遮断板5,50に押し付けているが、本発明の当接部材はこれに限定されない。例えば、図13に示す当接部材を用いることができる(第4実施形態)。
この第4実施形態では、遮断板をノズルに当接可能な当接部材としているのではなく、周縁処理ノズル70の段差面70bと当接して周縁処理ノズル70の位置を固定することが可能な位置決め部材8を処理領域である表面周縁部TRの近傍に設けている。
この実施形態においては、位置決め部材8は振動等の影響を受けないように、スピンチャック1等の可動する物体とは別に固定されている。位置決め部材8は、基板表面Wfに略平行な、周縁処理ノズル70の段差面70bと当接可能な当接面8aを有しており、周縁処理ノズル70が離間位置P1から処理位置P2に移動された際に、周縁処理ノズル70の段差面70bと、位置決め部材8の当接面8aとが当接して、周縁処理ノズル70が位置決め部材8に基板Wに向かって、つまり鉛直方向下向きに押し付けられる。これによって、周縁処理ノズル70が位置決め部材8に当接固定され、処理位置P2に安定して位置決めされる。こうして、周縁処理ノズル70を処理位置P2に位置決めした状態で、ベベルエッチング処理が実行される。
以上のように、この実施形態によれば、処理領域である表面周縁部TRに臨む空間に位置決め部材8を配置するとともに、位置決め部材8に周縁処理ノズル70を基板Wに向かって押し付けているので、上記実施形態と同様な作用効果が得られる。すなわち、基板Wの回転による気流や振動等の影響により吐出位置が不安定になるのを防止して、プロセス性能を安定化させることができる。特に、基板表面Wfからの周縁処理ノズル70の高さ方向の位置を安定して位置決めすることができるので、周縁エッチング幅EHの変動を防止して周縁エッチング幅EHを均一にすることができる。
また、上記実施形態では、処理領域として基板Wの表面周縁部TRに処理液を供給して該表面周縁部TRに対してエッチング処理やリンス処理などの所定の処理を施しているが、処理領域はこれに限定されず、任意である。すなわち、ノズルを処理領域から離間した離間位置から処理領域に処理液を供給可能な処理位置に移動させて処理領域に対して所定の基板処理を施す限り、処理対象となる処理範囲は任意である。特に、処理領域に対して処理を施す際に、処理位置におけるノズルの位置精度、位置決めの再現性が要求される基板処理装置に好適である。
また、上記実施形態では、遮断板5,50および位置決め部材8などの当接部材を、処理領域を臨む空間に配置した後に、ノズル7,70を処理位置P2に移動させてノズル7,70を当接部材に基板Wに向かって押し付けることによりノズル7,70を位置決めしているが、これに限定されない。例えばノズル7,70を処理位置P2に移動させた後に、当接部材をノズル7,70に向けて移動させて処理領域を臨む空間に配置させることにより、ノズル7,70を当接部材に基板Wに向かって押し付けることによりノズル7,70を位置決めするようにしてもよい。つまり、結果として離間位置P1から処理位置P2に移動されたノズル7,70が当接部材に基板Wに向かって押し付けることによりノズル7,70が位置決めされていればよい。
また、上記実施形態では、ノズル先端側の胴部703の断面積がノズル後端側の胴部704の断面積に対して小さくなるように、ノズル先端側の胴部703とノズル後端側の胴部704との間に段差面7b,70bを有するようにノズルを形成して、該段差面7b,70bを当接面5a,8aに押し付けてノズル7,70を安定的に位置決めしているが、これに限定されない。例えば図14に示すように、ノズル9の吐出口周囲の先端面9aを当接部材8に押し付けるようにしてもよい(第5実施形態)。この場合、ノズル9の吐出口の近傍でノズル9が固定されることとなり、吐出位置精度をさらに高めることができる。
また、ノズル7,70を遮断板5,50および位置決め部材8などの当接部材に基板Wに向かって押し付けることにより位置決めする場合に限らず、その一方端でノズル7,70を固着支持するノズルアーム71を当接部材に基板Wに向かって押し付けることによりノズル7,70を位置決めするようにしてもよい。このように構成した場合であっても、ノズル7,70を固着支持するノズルアーム71が当接部材に基板Wに向かって押し付けられることにより、基板Wからノズル7,70までの距離を一定として、吐出位置の安定化を図ることができる。すなわち、当接部材を基板Wの処理領域を臨む空間に配置して、処理領域に処理液を供給するノズルを備えた供給機構を当接部材に基板Wに向かって押し付けることにより、ノズルを処理位置に安定して位置決めすることができる。