<第1実施形態>
図1はこの発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。また、図2は図1の基板処理装置の主要な制御構成を示すブロック図である。この基板処理装置は、半導体ウエハ等の略円形基板Wの表面周縁部TRおよび該表面周縁部に連なる基板Wの周端面EF(基板Wの端部)に対して洗浄処理を施す装置である。具体的には、基板Wの端部に対して酸化膜の形成および該酸化膜の除去処理を施して基板端部に存在する不要物を除去した後、基板端部および裏面Wbに対してリンス処理および乾燥処理を施す装置である。なお、この実施形態では、基板表面Wfとはデバイスパターンが形成されるパターン形成面をいう。
この基板処理装置は、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持しながら回転させるスピンチャック1(本発明の「基板保持手段」に相当)と、基板Wの下面(裏面Wb)にDIW(deionized water)を供給する下面処理ノズル2と、基板表面側から基板Wの表面周縁部TRにオゾン水を供給する第1ノズル3と、基板表面側から基板Wの表面周縁部TRにフッ酸およびDIWのいずれかを選択的に供給する第2ノズル4と、基板Wの表面Wfに対向配置された遮断部材5とを備えている。
スピンチャック1は中空の回転支軸11がモータを含むチャック回転機構13の回転軸に連結されており、チャック回転機構13の駆動により回転中心A0を中心に回転可能となっている。この回転支軸11の上端部にはスピンベース15が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。したがって、装置全体を制御する制御ユニット8からの動作指令に応じてチャック回転機構13を駆動させることによりスピンベース15が回転中心A0を中心に回転する。このように、この実施形態では、チャック回転機構13が本発明の「回転手段」として、スピンベース15が本発明の「ベース部材」として機能する。
中空の回転支軸11には処理液供給管21が挿通されており、その上端に下面処理ノズル2が結合されている。処理液供給管21はDIW供給ユニット16(図2)と接続されており、DIWが供給される。また、回転支軸11の内壁面と処理液供給管21の外壁面の隙間は、環状のガス供給路23を形成している。このガス供給路23はガス供給ユニット19(本発明の「ガス供給部」に相当)と接続されており、基板裏面Wbと該基板裏面Wbに対向するスピンベース15の上面とに挟まれた空間に窒素ガスを供給できる。なお、この実施形態では、ガス供給ユニット19から窒素ガスを供給しているが、空気や他の不活性ガスなどを吐出するように構成してもよい。
図3はスピンベースを上方から見た平面図である。スピンベース15の中心部には開口が設けられている。また、スピンベース15の周縁部付近には複数個(この実施形態では6個)の第1支持ピンF1〜F6と、複数個(この実施形態では6個)の第2支持ピンS1〜S6が本発明の「支持部」として、昇降自在に設けられている。第1支持ピンF1〜F6は回転中心A0を中心として放射状に略等角度間隔でスピンベース15から上方に向けて突設されているとともに、第2支持ピンS1〜S6が円周方向に沿って各第1支持ピンF1〜F6の間に位置するように、回転中心A0を中心として放射状に略等角度間隔でスピンベース15から上方に向けて突設されている。つまり、第1および第2支持ピンからなる一対の支持ピンが円周方向に沿って回転中心A0を中心として放射状に6対、スピンベース15の周縁部に上方に向けて設けられている。
第1支持ピンF1〜F6および第2支持ピンS1〜S6の各々は基板裏面Wbと当接することによって、スピンベース15から所定距離だけ上方に離間させた状態で基板Wを略水平姿勢で支持可能となっている。これらのうち、周方向に沿って1つ置きに配置された6個の第1支持ピンF1〜F6は第1支持ピン群を構成し、これらは連動して基板Wを支持し、または基板裏面Wbから離間してその支持を解除するように動作する。一方で、残る6個の第2支持ピンS1〜S6は第2支持ピン群を構成し、これらは連動して基板Wを支持し、または基板裏面Wbから離間してその支持を解除するように動作する。なお、基板Wを水平に支持するためには、各支持ピン群が有する支持ピンの個数は少なくとも3個以上であればよいが、各支持ピン群が有する支持ピンの個数を6個とすることで安定して基板Wを支持できる。
図4は支持ピンの構成を示す部分拡大図である。なお、支持ピンF1〜F6,S1〜S6の各々はいずれも同一構成を有しているため、ここでは1つの支持ピンF1の構成についてのみ図面を参照しつつ説明する。支持ピンF1は、基板Wの下面に離当接可能な当接部61と、当接部61を昇降可能に支持する可動ロッド62と、この可動ロッド62を昇降させるモータ等を含む昇降駆動部63と、可動ロッド62を取り囲むように設けられ可動ロッド62と昇降駆動部63とを外部雰囲気から遮断するベローズ64とを有している。ベローズ64は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)より形成され、フッ酸等の薬液により基板Wを処理する際に、ステンレス鋼(SUS)またはアルミニウム等から形成される可動ロッド62を保護する。また、当接部61は耐薬性を考慮して、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)で形成されるのが好ましい。ベローズ64の上端部は当接部61の下面側に固着される一方、ベローズ64の下端部はスピンベース15の上面側に固着されている。
上記した構成を有する支持ピンF1〜F6,S1〜S6では、昇降駆動部63が制御ユニット8からの駆動信号に基づき図示省略する駆動連結部を介して可動ロッド62を1〜数mmのストロークで駆動させることにより、次のように基板Wを支持する。すなわち、昇降駆動部63を駆動させない状態では、所定の高さ位置(基板処理位置)で基板Wを支持するように支持ピンF1〜F6,S1〜S6の各々はコイルばね等の付勢手段(図示せず)によって上向きに付勢されており、基板Wは支持ピンF1〜F6からなる第1支持ピン群と、支持ピンS1〜S6からなる第2支持ピン群との両方の支持ピン群により支持される。一方で、支持ピンS1〜S6を付勢力に抗して下降駆動させると、支持ピンS1〜S6の当接部61は基板裏面Wbから離間して基板Wは支持ピンF1〜F6からなる第1支持ピン群のみにより支持される。また、支持ピンF1〜F6を付勢力に抗して下降駆動させると、支持ピンF1〜F6の当接部61は基板裏面Wbから離間して基板Wは支持ピンS1〜S6からなる第2支持ピン群のみにより支持される。
図1に戻って説明を続ける。スピンチャック1の上方には、スピンチャック1に保持された基板Wに対向する円盤状の遮断部材5が水平に配設されている。遮断部材5はスピンチャック1の回転支軸11と同軸上に配置された回転支軸51の下端部に一体回転可能に取り付けられている。この回転支軸51には遮断部材回転機構53が連結されており、制御ユニット8からの動作指令に応じて遮断部材回転機構53のモータを駆動させることで遮断部材5を回転中心A0を中心に回転させる。制御ユニット8は遮断部材回転機構53をチャック回転機構13と同期するように制御することで、スピンチャック1と同じ回転方向および同じ回転速度で遮断部材5を回転駆動できる。
また、遮断部材5は遮断部材昇降機構55と接続され、遮断部材昇降機構55の昇降駆動用アクチュエータ(例えばエアシリンダーなど)を作動させることで、遮断部材5をスピンベース15に近接して対向させたり、逆に離間させることが可能となっている。具体的には、制御ユニット8は遮断部材昇降機構55を駆動させることで、基板処理装置に対して基板Wが搬入出される際には、スピンチャック1から上方に十分に離れた離間位置に遮断部材5を上昇させる。その一方で、基板Wに対して洗浄処理を施す際には、スピンチャック1に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで遮断部材5を下降させる。これにより、遮断部材5の下面501(本発明の「基板対向面」に相当)と基板表面Wfとが近接した状態で対向配置される。
遮断部材5の中心の開口および回転支軸51の中空部は、ガス供給路57を形成している。ガス供給路57はガス供給ユニット19と接続されており、基板表面Wfと遮断部材5の下面501とに挟まれた間隙空間SPに窒素ガスを供給可能となっている。
図5は遮断部材の底面図である。遮断部材5の下面501の平面サイズは基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。このため、遮断部材5が対向位置に配置されると基板表面全体を覆って基板表面Wf上の雰囲気を外部雰囲気から遮断可能となっている。また、遮断部材5の周縁部には遮断部材5を上下方向(鉛直軸方向)に貫通する、略円筒状の内部空間を有するノズル挿入孔5A,5Bが形成されている。ノズル挿入孔5A,5Bは第1および第2ノズル3,4を個別に挿入可能に、しかも基板Wの表面周縁部TRに対向する位置に形成されている。ノズル挿入孔5Aとノズル挿入孔5Bは回転中心A0に対して対称位置に同一形状に形成されている。一方で、第1ノズル3と第2ノズル4は同一のノズル外径を有している。このため、両ノズル3,4をそれぞれノズル挿入孔5A,5Bのいずれにも挿入可能となっている。
また、遮断部材5の下面501には複数のガス噴出口502が形成されている。複数のガス噴出口502はスピンチャック1に保持される基板Wの表面中央部、つまり表面周縁部TRより径方向内側の非処理領域NTRに対向する位置に、回転中心A0を中心とする円周に沿って等角度間隔に形成されている。これらのガス噴出口502は遮断部材5の内部に形成されたガス流通空間503(図1)に連通しており、ガス流通空間503に窒素ガスが供給されると、複数のガス噴出口502を介して窒素ガスが間隙空間SPに供給される。
そして、遮断部材5が対向位置に位置決めされた状態で、複数のガス噴出口502およびガス供給路57から間隙空間SPに窒素ガスが供給されると、間隙空間SPの内部圧力を高めて基板Wをその裏面Wbに当接する支持ピンF1〜F6,S1〜S6に押圧する。これによって、制御ユニット8の動作指令に応じてスピンベース15が回転すると、基板裏面Wbと支持ピンF1〜F6,S1〜S6との間に発生する摩擦力によって基板Wが支持ピンF1〜F6,S1〜S6に支持されながらスピンベース15とともに回転する。なお、間隙空間SPに供給された窒素ガスは基板Wの径方向外側へと流れていく。このように、この実施形態では、遮断部材5とガス供給ユニット19とが、本発明の「押圧機構」として機能する。
図1に戻って説明を続ける。第1ノズル3はオゾン水供給ユニット17(図2)と接続されており、制御ユニット8からの動作指令に応じてオゾン水供給ユニット17から第1ノズル3に本発明の「液体状の酸化剤」として所定濃度のオゾンを含有した水(オゾン水)を供給する。なお、液体状の酸化剤としてオゾン水の他、過酸化水素水および硝酸を用いることができるが、特にランニングコスト低減の観点からはオゾン水が好適である。
第1ノズル3は水平方向に延びるノズルアーム31の一方端に取り付けられている。また、ノズルアーム31の他方端は第1ノズル移動機構33に接続されている。第1ノズル移動機構33は第1ノズル3を水平方向に所定の回動軸回りに揺動させるとともに、第1ノズル3を昇降させることができる。このため、制御ユニット8からの動作指令に応じて第1ノズル移動機構33が駆動されることで、第1ノズル3を遮断部材5のノズル挿入孔5A(または5B)に挿入して表面周縁部TRにオゾン水を供給可能な供給位置P31(本発明の「第1供給位置」に相当)と、基板Wから離れた待機位置P32(本発明の「第1待機位置」に相当)とに移動させることができる。
また、第2ノズル4はフッ酸供給ユニット18(図2)およびDIW供給ユニット16と接続されており、制御ユニット8からの動作指令に応じてフッ酸供給ユニット18から所定濃度に調整されたフッ酸およびDIW供給ユニット16からDIWをリンス液として第2ノズル4に選択的に供給可能となっている。なお、リンス液としては、DIWの他、炭酸水、水素水、希薄濃度(例えば1ppm程度)のアンモニア水および希薄濃度の塩酸などであってもよい。
第2ノズル4を駆動する第2ノズル移動機構43は第1ノズル移動機構33と同様な構成を有している。すなわち、第2ノズル移動機構43はノズルアーム41の先端に取り付けられた第2ノズル4を水平方向に所定の回動軸回りに揺動させるとともに、第2ノズル4を昇降させることができる。このため、制御ユニット8からの動作指令に応じて第2ノズル移動機構43が駆動されることで、第2ノズル4を遮断部材5のノズル挿入孔5B(または5A)に挿入して表面周縁部TRにフッ酸およびDIWを選択的に供給可能な供給位置P41(本発明の「第2供給位置」に相当)と、基板Wから離れた待機位置P42(本発明の「第2待機位置」に相当)とに移動させることができる。
ここで、ノズル挿入孔5Aとノズル挿入孔5Bは回転中心A0に対して対称位置に形成されており、平面視で回転中心A0から供給位置P31に延びる方向と回転中心A0から供給位置P41に延びる方向とが形成する角度は180°となっている。
次に、第1および第2ノズル3,4および遮断部材5に設けられたノズル挿入孔5A,5Bの構成について説明する。ここで、両ノズル3,4は吐出する液の種類が異なる点を除いて同一に構成されている。また、両ノズル挿入孔5A,5Bは遮断部材5に同一形状で、しかも回転中心A0に対して対称位置に形成されている。このため、第1ノズル3およびノズル挿入孔5Aの構成を中心に図6および図7を参照しつつ説明する。
図6は第1ノズルおよび遮断部材に設けられたノズル挿入孔の構成を示す斜視図である。また、図7はノズル挿入孔に挿入された第1および第2ノズルの様子を示す断面図である。第1ノズル3は遮断部材5に設けられたノズル挿入孔5Aの形状に合わせて略円筒状に形成され、ノズル挿入孔5Aに挿入されることで、第1ノズル3の先端側が表面周縁部TR(図1)に対向して配置される。第1ノズル3の内部には液供給路301が形成されており、液供給路301の先端部(下端部)が第1ノズル3の吐出口301aを構成している。第1ノズル3のノズル外径は必要以上にノズル挿入孔5Aの孔径を大きくすることのないように、例えばφ5〜6mm程度に形成される。第1ノズル3は、略円筒状に形成されたノズル胴部の断面積がノズル先端側と後端側で異なるように構成されている。具体的には、ノズル先端側の胴部302の断面積がノズル後端側の胴部303の断面積より小さくなるように構成されており、ノズル先端側の胴部302とノズル後端側の胴部303との間に段差面304が形成されている。すなわち、ノズル先端側の胴部302の外周面(側面)とノズル後端側の胴部303の外周面(側面)は段差面304を介して結合されている。段差面304はノズル先端側の胴部302を取り囲むように、しかもスピンチャック1に保持された基板表面Wfに略平行に形成されている。
ノズル挿入孔5Aの内壁には第1ノズル3の段差面304と当接可能な円環状の当接面504が形成されている。そして、第1ノズル3がノズル挿入孔5Aに挿入されると、段差面304と当接面504とが当接することで、第1ノズル3が供給位置P31に位置決めされる。第1ノズル3が供給位置P31に位置決めされた状態で、第1ノズル3の吐出口301a周囲の先端面は遮断部材5の対向面501と面一になっている。当接面504は遮断部材5の対向面501と略平行に、つまり基板表面Wfと略平行に形成されており、第1ノズル3の段差面304と面接触するようになっている。このため、第1ノズル3を供給位置P31に位置決めする際に、第1ノズル3が遮断部材5に当接して位置固定され、第1ノズル3を安定して位置決めすることができる。
第1ノズル3の吐出口301aは基板Wの径方向外側に向けて開口しており、吐出口301aからオゾン水を表面周縁部TRに吐出可能になっている。液供給路301はノズル後端部においてオゾン水供給ユニット17に接続されている。このため、オゾン水供給ユニット17からオゾン水が液供給路301に圧送されると、第1ノズル3からオゾン水が基板Wの径方向外側に向けて吐出される。これにより、表面周縁部TRに供給されたオゾン水は基板Wの径方向外側に向かって流れ、表面周縁部TRに連なる基板Wの周端面EFを伝って基板外に排出される。したがって、オゾン水の供給位置よりも径方向内側の非処理領域NTRにはオゾン水は供給されず、基板Wの周端面EFおよび該周端面EFから内側に向かって一定の幅の表面領域(表面周縁部TR)、つまり基板Wの端部が酸化され、該基板Wの端部に酸化膜OFが形成される(図7(a))。
また、第2ノズル4の吐出口についても第1ノズル3と同様にして基板Wの径方向外側に向けて開口しており、該吐出口から表面周縁部TRにフッ酸およびDIWを選択的に吐出可能となっている。このため、フッ酸供給ユニット18から第2ノズル4にフッ酸が圧送されると、第2ノズル4からフッ酸が基板Wの径方向外側に向けて吐出される。これにより、表面周縁部TRにフッ酸が供給されるとともに、基板Wの径方向外側に向かって流れ、表面周縁部TRに連なる基板Wの周端面EFを伝って基板外に排出される。これにより、基板Wの周端面EFおよび該周端面EFから内側に向かって一定の幅の表面領域(表面周縁部TR)、つまり基板Wの端部がエッチングされ、基板Wの端部に形成された酸化膜OFが基板Wから除去される(図7(b))。
その一方、DIW供給ユニット16から第2ノズル4にDIWが圧送されると、第2ノズル4からDIWが基板Wの径方向外側に向けて吐出される。これにより、表面周縁部TRにDIWが供給されるとともに、基板Wの径方向外側に向かって流れ、表面周縁部TRに連なる基板Wの周端面EFを伝って基板外に排出される。したがって、基板Wの端部に残留するフッ酸等の薬液成分を洗い流し、基板Wから除去することができる(図7(c))。
ノズル挿入孔5A,5Bの孔径は第1および第2ノズル3,4の外径よりも大きく形成されている。このため、ノズル挿入孔5A,5Bの内部空間で第1および第2ノズル3,4を水平方向に互いに異なる位置に位置決めすることが可能となっている。そこで、この実施形態では、第2ノズル4の供給位置P41としてフッ酸供給時とDIW供給時とで水平方向における位置を変更している。具体的には、第2ノズル移動機構43の駆動により、供給位置P41として水平方向における位置が互いに異なる2つの位置、つまり、フッ酸を表面周縁部TRに供給可能なエッチング位置P41E(図7(b))と、リンス液を表面周縁部TRに供給可能であってエッチング位置P41Eに対して基板Wの径方向内側に位置するリンス位置P41R(図7(c))との間で第2ノズル4を移動させている。なお、第1ノズル3の供給位置P31と第2ノズル4のエッチング位置P41Eの径方向(水平方向)における基板Wの周端面EFからの距離は同一に設定される。なお、ノズル挿入孔5A,5Bの孔径としては、第1および第2ノズル3,4の外径に対して1〜2mm程度大きく形成することが好ましく、リンス位置P41Rはエッチング位置P41E(および供給位置P31)に対して、例えば0.2〜0.5mmだけ基板Wの径方向内側の位置に設定される。
また、遮断部材5のノズル挿入孔5A,5Bの内壁には、ガス導入口505が開口されており、ガス導入口505からノズル挿入孔5A,5Bの内部空間に窒素ガスを供給可能となっている。ガス導入口505は遮断部材5の内部に形成されたガス流通空間503を介してガス供給ユニット19に連通している。したがって、ガス供給ユニット19から窒素ガスが圧送されると、ノズル挿入孔5A,5Bの内部空間に窒素ガスが供給される。これにより、第1および第2ノズル3,4が待機位置P32、P42に位置決めされた状態、つまり、第1および第2ノズル3,4がノズル挿入孔5A,5Bに未挿入の状態では、ノズル挿入孔5A,5Bの上下双方の開口から窒素ガスが噴出される。このため、ノズル挿入孔5A,5Bにノズルが未挿入の状態でも、処理液がノズル挿入孔5A,5Bの内壁に付着するのが防止される。
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について図8および図9を参照しつつ説明する。図8は図1の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。この装置では、未処理の基板Wが装置内に搬入されると、制御ユニット8が装置各部を制御して基板Wに対して一連の洗浄処理(酸化膜形成/酸化膜除去工程+リンス工程+乾燥工程)が実行される。ここで、例えば基板表面Wfにはパターンが形成されることがある。そこで、この実施形態では、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが装置内に搬入される。なお、遮断部材5は離間位置にあり、基板Wとの干渉を防止している。
未処理の基板Wが支持ピンF1〜F6,S1〜S6に載置されると、制御ユニット8は離間位置に位置する遮断部材5のガス噴出口502から窒素ガスを吐出させるとともに、ガス供給路57から窒素ガスを吐出させる(ステップ1)。次に、遮断部材5を回転させて、ノズル挿入孔5Aおよび5Bが所定位置となるように遮断部材5を回転方向に関して位置調整する(ステップ2)。具体的には、第1および第2ノズル3,4がそれぞれ供給位置P31およびP41に移動された際に、ノズル挿入孔5Aおよび5Bに挿入されるように遮断部材5を回転させる。その後、遮断部材5が対向位置まで降下され基板表面Wfに近接配置される(ステップS3)。これによって、間隙空間SPの内部圧力が高められ、基板Wはその下面(裏面Wb)に当接する支持ピンF1〜F6,S1〜S6に確実に押圧されてスピンベース15に保持される。また、基板表面Wfは遮断部材5の下面501に覆われて、基板周囲の外部雰囲気から確実に遮断される。なお、上記のように基板Wはすべての支持ピンF1〜F6,S1〜S6で支持してもよいし、支持ピンF1〜F6からなる第1支持ピン群のみにより支持してもよく、あるいは支持ピンS1〜S6からなる第2支持ピン群のみにより支持してもよい。
次に、制御ユニット8は遮断部材5を停止させた状態で基板Wを回転させる(ステップS4)。このとき、支持ピンF1〜F6,S1〜S6に押圧された基板Wは支持ピンF1〜F6,S1〜S6と基板裏面Wbとの間に発生する摩擦力でスピンベース15に保持されながらスピンベース15とともに回転する。続いて、第1および第2ノズル3がそれぞれ待機位置P32,P42から供給位置P31,P41に位置決めされる(ステップS5)。具体的には、第1ノズル3が水平方向に沿って遮断部材5のノズル挿入孔5Aの上方位置に移動された後、降下されノズル挿入孔5Aに挿入される。また、第2ノズル4が水平方向に沿って遮断部材5のノズル挿入孔5Bの上方位置に移動された後、降下されノズル挿入孔5Bに挿入される。ここで、第2ノズル4は供給位置P41としてエッチング位置P41Eに位置決めされる。
そして、基板Wの回転速度が所定速度に達すると、オゾン水供給ユニット17からオゾン水が第1ノズル3に圧送されて、回転する基板Wの表面周縁部TRに向けて第1ノズル3からオゾン水が吐出される。その結果、表面周縁部TRに供給されたオゾン水が基板Wの径方向外側に向かって流れ、基板Wの周端面EFを伝って基板外に排出される(図7(a))。これにより、オゾン水が供給された表面周縁部TRおよび該表面周縁部TRに連なる周端面EF、つまり基板Wの端部に酸化膜OFが周方向(回転方向)に沿って形成されていく(酸化膜形成工程)。また、オゾン水の供給とほぼ同時にフッ酸供給ユニット18からフッ酸が第2ノズル4に圧送されて、回転する基板Wの表面周縁部TRに向けて第2ノズル4からフッ酸が吐出される。その結果、表面周縁部TRに供給されたフッ酸が基板Wの径方向外側に向かって流れ、基板Wの周端面EFを伝って基板外に排出される(図7(b))。これにより、フッ酸が供給された基板Wの端部(表面周縁部TRおよび周端面EF)がエッチングされ該基板端部から酸化膜OFとともに不要物が周方向に沿って除去されていく(酸化膜除去工程)。つまり、オゾン水による酸化膜形成工程とフッ酸による酸化膜除去工程とが並行して実行され、基板端部の各部から不要物が除去される(ステップS6)。
図9は図1の基板処理装置の動作を説明するための動作説明図である。図9において、符号SR(T1)〜SR(T4)は基板端部における微小領域SRの各タイミングT1〜T4における位置を示している。第1ノズル3からオゾン水が微小領域SRに供給されると、該微小領域SRに酸化膜が形成される(タイミングT1)。また、微小領域SRに供給されたオゾン水は基板Wの回転に伴う遠心力を受けて基板外に振り切られていく。そして、基板Wが回転方向Rに回転して微小領域SRに第2ノズル4からフッ酸が供給されると、微小領域SRに形成された酸化膜がエッチングされ、該酸化膜とともに基板端部に付着していた不要物が除去される(タイミングT2)。また、微小領域SRに供給されたフッ酸は基板Wの回転に伴う遠心力を受けて基板外に振り切られていく。さらに、基板Wが回転して一周すると、微小領域SRにオゾン水が第1ノズル3から供給され、微小領域SRに新たな酸化膜が形成される(タイミングT3)。その後、基板Wが回転して微小領域SRに第2ノズル4からフッ酸が供給されると、微小領域SRから酸化膜が除去される(タイミングT4)。こうして、基板Wの回転に伴い、微小領域SRに対してオゾン水による酸化膜の形成とフッ酸による酸化膜の除去が交互に繰り返し実行される。これにより、基板端部に付着する不要物を酸化膜とともに効率良く基板端部の全周から除去することができる。
基板端部へのオゾン水およびフッ酸の供給が予め設定された所定時間行われると、第2ノズル4からのフッ酸の供給を停止する。これにより、回転する基板Wの端部に第1ノズル3からのオゾン水のみが供給される。その結果、基板端部からの不要物の除去後、基板端部の全周に酸化膜が形成される。このように、その表面に酸化膜が付着した状態で基板端部が仕上げることにより、後工程において基板端部にパーティクル等の汚染物質が付着するのを防止することができる。すなわち、仮にフッ酸の供給を継続した状態でオゾン水の供給を停止した場合には、酸化膜がない状態で基板端部が仕上げられ、基板端部は汚染物質を引き寄せ易い表面状態となってしまう。このため、オゾン水の供給を継続した状態でフッ酸の供給を停止するのが好ましい。
続いて、制御ユニット4は第2ノズル4へのフッ酸の供給を停止した状態で、第2ノズル4をエッチング位置P41Eからリンス位置P41Rに位置決めする。第2ノズル4がリンス位置P41Rに位置決めされると、DIW供給ユニット16からDIWが第2ノズル4に供給されて、回転する基板Wの表面周縁部TRに向けて第2ノズル4からDIWが吐出される。その結果、表面周縁部TRに供給されたDIWが基板Wの径方向外側に向かって流れ、基板Wの周端面EFを伝って基板外に排出される(図7(c))。そして、基板Wの端部の全周にわたってDIWが供給されることにより、基板端部に対してリンス処理が施される(ステップS7)。ここで、第2ノズル4から吐出されたDIWは、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて基板Wの径方向外向きに流れることから、第2ノズル4がエッチング位置P41Eに対して基板Wの径方向内側に位置するリンス位置P41Rに位置決めされることで、フッ酸供給範囲を含み、しかもフッ酸供給範囲よりも広い範囲にDIWを供給することができる。このため、表面周縁部TR(処理領域)と表面中央部(非処理領域NTR)との界面に付着するフッ酸をDIWによって容易に洗い流すことができる。
第2ノズル4からのDIWによるリンス処理開始後、第1ノズル3からのオゾン水の供給を停止してもよいし、リンス処理の間、第1ノズル3からのオゾン水の供給を継続してもよい。オゾン水の供給を停止した場合には、その後、第1ノズル3がノズル挿入孔5Aから抜き出され、待機位置P42に位置決めされる。
また、基板端部に対するリンス処理と同時に下面処理ノズル2から回転する基板Wの裏面WbにDIWが供給され、裏面Wbに対してリンス処理が施される。これにより、基板Wの表面中央部の非処理領域NTRを除く、基板Wの表面領域全体に対してリンス処理が施される。そして、リンス処理が所定時間だけ実行されると、基板Wの表面側および裏面側からのDIWの供給が停止される。その後、第2ノズル4が供給位置P41から待機位置P42に位置決めされる。その一方で、リンス処理の間、第1ノズル3からのオゾン水の供給を継続した場合には、第1ノズル3についても供給位置P31から待機位置P32に位置決めされる(ステップS8)。
続いて、遮断部材5の回転を開始させるとともに(ステップS9)、基板Wおよび遮断部材5を高速回転させる。これにより、遮断部材5に付着する液体成分が振り切られるとともに、基板Wの乾燥が実行される(ステップS10)。このとき、基板表面Wfへの窒素ガス供給と併せてガス供給路23からも窒素ガスを供給して基板Wの表裏面Wf,Wbに窒素ガスを供給することで、基板Wの乾燥処理が促進される。
基板Wの乾燥処理が終了すると、遮断部材5の回転を停止させるとともに基板Wの回転を停止させる(ステップS11)。そして、遮断部材5が上昇された後(ステップ12)、ガス供給路57およびガス噴出口502からの窒素ガスの供給を停止する(ステップS13)。これにより、基板Wの支持ピンF1〜F6,S1〜S6への押圧保持が解除され、処理済の基板Wが装置から搬出される。
以上のように、この実施形態によれば、基板Wの表面側の供給位置P31に位置決めされた第1ノズル3から回転する基板Wの端部にオゾン水を供給しつつ、基板Wの表面側の供給位置P41(エッチング位置P41E)に位置決めされた第2ノズル4から回転する基板Wの端部にフッ酸を供給している。これにより、基板Wの各部に対してオゾン水による酸化膜形成とフッ酸による酸化膜除去とが交互に実行される。このため、基板端部に付着する不要物を酸化膜とともに効率良く基板端部の全周から除去することができる。すなわち、基板端部に付着するパーティクル等の不要物が基板端部に形成された酸化膜に取り込まれ、不要物を酸化膜とともに基板Wから除去することができる。
しかも、基板端部に対して処理液(オゾン水およびフッ酸)を供給することにより洗浄処理を施しているので、洗浄処理時におけるパーティクルの発生を防止することができる。すなわち、基板端部は洗浄ブラシ等と摺動することなく、全周にわたって洗浄されるので、摺動部分からのパーティクル発生を防止することができる。したがって、基板Wを汚染させることなく基板端部を良好に洗浄することができる。さらに、洗浄ブラシを用いて基板端部を洗浄する場合には、洗浄効率を高めるために基板端部に対する洗浄ブラシの接触圧を高める必要がある。しかしながら、この場合には、洗浄ブラシの磨耗が激しくなり、パーティクルも発生し易くなってしまう。これに対して、この実施形態によれば、基板端部に供給するオゾン水およびフッ酸に含有される有効成分の濃度(以下、「処理液の濃度」という)をそれぞれ、オゾン水供給ユニット17およびフッ酸供給ユニット18にて調整することが可能となっている。このため、処理液の濃度を適宜に調整することでパーティクルの発生を防止しながら不要物の除去率をコントロールすることができる。また、基板Wの周端面から内側に切り欠かれたノッチ等の切欠部が基板端部に形成されている場合には、洗浄ブラシ等を用いて洗浄処理すると、基板端部において切欠部が形成されている部位とそれ以外の部位とでは、基板端部に対するブラシの接触圧が変化してしまう。その結果、切欠部を良好に洗浄することができない場合があった。これに対して、この実施形態によれば、切欠部に対してもオゾン水およびフッ酸が交互に供給され、酸化膜形成と酸化膜除去とが交互に実行されることで、切欠部を良好に洗浄することができる。
また、この実施形態によれば、基板Wを回転させながらオゾン水を供給しつつフッ酸を供給することによって、酸化膜形成工程と酸化膜除去工程とを並行して実行しているので、酸化膜形成工程と酸化膜除去工程とを順に直列的に実行する場合に比較して短時間で基板端部に処理を施すことができる。しかも、基板端部に局部的かつ直接に処理液(オゾン水およびフッ酸)を供給しているので、処理液の消費量を抑制してランニングコストを低減することができる。
また、この実施形態では、間隙空間SPに供給された窒素ガスの押圧力により基板Wがその裏面Wbに当接する支持ピンF1〜F6,S1〜S6に押圧される。そして、基板端部を洗浄処理する際に、支持ピンF1〜F6,S1〜S6と基板Wとの間に発生する摩擦力によって基板Wが支持ピンF1〜F6,S1〜S6に支持されながらスピンベース15とともに回転する。したがって、基板端部に当接する当接部材、例えば基板端部に当接して該基板Wを挟持する挟持部材がない状態で基板端部が洗浄される。このため、基板端部を全周にわたって隈なく良好に洗浄することができる。また、基板端部を挟持することに起因して発生する不具合、例えば基板Wに供給された処理液が挟持部材に当たって基板Wに向けて跳ね返るような不具合を防止することができる。
また、この実施形態によれば、第1および第2ノズル3,4が供給位置P31,P41に位置決めされる際に、第1および第2ノズル3,4は遮断部材5のノズル挿入孔5A,5Bに挿入される。このため、遮断部材5によって基板表面Wfを外部雰囲気から遮断しながらも、回転する基板Wの表面周縁部TRに処理液を直接に供給することができる。したがって、基板Wの表面中央部(非処理領域NTR)に処理液が付着するのを防止しながら、基板端部から不要物を効率良く除去することができる。また、ノズル(第1および第2ノズル)は遮断部材5のノズル挿入孔5A,5Bに挿入されているため、洗浄処理時に処理液が飛散してノズルに大量の処理液が付着するのを回避することができる。このため、ノズル移動時においてノズルから処理液が落下して基板Wあるいは基板周辺部材に付着するのを防止することができる。
<第2実施形態>
図10はこの発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。また、図11は図10の基板処理装置における基板端部へのオゾン水およびフッ酸の供給方法を説明するための図である。この第2実施形態にかかる基板処理装置が第1実施形態と大きく相違する点は、オゾン水を基板Wの裏面側から供給している点と、オゾン水による酸化膜形成工程後に、オゾン水の供給を停止させた状態でフッ酸による酸化膜除去工程を実行している点である。なお、その他の構成および動作は基本的に第1実施形態と同様であるため、ここでは相違点を中心に説明する。
この実施形態では、基板Wの表面側からオゾン水を基板端部に供給する第1ノズル3に代えて、次のようにして基板端部にオゾン水を供給している。処理液供給管21にはDIW供給ユニット16のほかにオゾン水供給ユニット17が接続されており、下面処理ノズル2から基板裏面WbにDIWおよびオゾン水のいずれかを選択的に供給することができる。すなわち、基板Wを所定の回転数で回転させながらオゾン水供給ユニット17から下面処理ノズル2にオゾン水が圧送されると、下面処理ノズル2からオゾン水が回転する基板Wの裏面Wbの中心部に供給される。そして、裏面Wbの中心部に供給されたオゾン水は、基板Wの回転に伴う遠心力によって裏面全体に広がり、裏面Wbから周端面EFを伝って該周端面EFから内側に向かって一定の幅の表面領域(表面周縁部TR)に回り込む。これにより、基板Wの周端面EFおよび表面周縁部TR、つまり基板端部の全周にわたってオゾン水が供給され、該基板端部の全周に酸化膜OFを形成することができる(図11(a))。このように、この実施形態では、下面処理ノズル2が本発明の「裏面側ノズル」として機能する。
また、この実施形態では、遮断部材50には1つのノズル挿入孔5Bのみが形成されている。遮断部材50の構成はノズル挿入孔5Aが設けられていない点を除いて第1実施形態にかかる基板処理装置に装備された遮断部材5の構成と同一である。そして、ノズル挿入孔5Bに第2ノズル4を挿入させることで、第1実施形態と同様にして基板端部にフッ酸およびDIWを局部的に、しかも選択的に供給可能となっている。すなわち、第2ノズル移動機構43の駆動により、ノズル挿入孔5Bに挿入され基板Wの表面周縁部TRに対向する供給位置P41(本発明の「対向位置」に相当)と、基板Wから離れた待機位置P42との間で第2ノズル4が移動される。また、第2ノズル移動機構43の駆動により、供給位置P41として、エッチング位置P41Eと該エッチング位置P41Eよりも径方向内側に位置するリンス位置P41Rとの間で第2ノズル4が移動される。そして、エッチング位置P41Eに位置決めされた第2ノズル4からフッ酸を回転する基板Wの表面周縁部TRに向けて吐出させることで、基板端部(表面周縁部TRおよび周端面EF)の全周にフッ酸を供給することができる(図11(b))。このように、この実施形態では、第2ノズル4が本発明の「表面側ノズル」として、第2ノズル移動機構43が本発明の「表面側ノズル移動機構」として機能する。
また、リンス位置P41Rに位置決めされた第2ノズル4からDIWを回転する基板Wの表面周縁部TRに向けて吐出させることで、エッチング位置P41Eより径方向内側から基板端部にDIWを供給することができる。
図12は図10の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。この実施形態では、第2ノズル4のエッチング位置P41Eへの位置決めが完了すると(ステップS35)、次のようにして基板端部に対して酸化膜形成/酸化膜除去処理を実行する。すなわち、下面処理ノズル2から回転する基板Wの裏面Wbにオゾン水が供給されると、オゾン水が基板端部の全周に回り込み基板端部の全周に酸化膜OFが形成される(ステップS36;酸化膜形成工程)。そして、所定時間の経過後、オゾン水の供給が停止される(ステップS37)。続いて、第2ノズル4から回転する基板Wの端部にフッ酸が供給されると、フッ酸の供給部位に位置する酸化膜OFが除去される。そして、基板Wの回転に伴ってフッ酸が基板端部の各部に供給されることによって、基板端部の全周から酸化膜が除去される(ステップS38;酸化膜除去工程)。こうして、基板端部から酸化膜が除去されると、フッ酸の供給が停止される(ステップS39)。
続いて、制御ユニット8は所定回数だけ酸化膜形成工程と酸化膜除去工程とが繰り返し実行されたか否かを判断する(ステップS40)。すなわち、基板端部の表面状態、基板端部に付着する不要物の種類等によっては、一回限りの酸化膜形成工程および酸化膜除去工程の実行では基板端部から不要物を十分に除去しきれない場合がある。そこで、この場合(ステップS40でNO)には、酸化膜形成工程と酸化膜除去工程とが繰り返し実行される。このような酸化膜形成工程および酸化膜除去工程の繰り返し実行回数は、洗浄処理対象に応じて基板Wの処理内容を規定する処理レシピで予め規定される。このため、制御ユニット8は、処理レシピ等で規定された繰り返し実行回数だけ酸化膜形成工程と酸化膜除去工程とを実行する。これにより、繰り返し回数に応じて酸化膜とともに基板端部に付着する不要物を基板Wから除去することができ、基板端部からの不要物の除去率を高めることができる。なお、基板裏面Wbへのオゾン水の供給によって基板裏面Wbには酸化膜が形成されるが、一旦、基板裏面Wbに酸化膜が形成されると、その後に基板裏面Wbにオゾン水が供給されても該酸化膜が成長することはない。
こうして、所定回数だけ酸化膜形成工程と酸化膜除去工程とが繰り返し実行されると(ステップS40でYES)、続いてリンス処理を実行する(ステップS41)。すなわち、第2ノズル4がリンス位置P41Rに位置決めされ、第2ノズル4からフッ酸に替えてDIWが回転する基板Wの端部に供給される。また、下面処理ノズル2から回転する基板Wの裏面Wbにオゾン水に替えてDIWが供給される。これにより、基板端部の全周および基板裏面Wbに対してリンス処理が施される。
ここで、酸化膜形成工程および酸化膜除去工程の繰り返し実行後も、下面処理ノズル2から基板端部へのオゾン水の供給(酸化膜形成工程の実行)を継続した状態でリンス処理に移行することが好ましい。これにより、その表面に酸化膜が付着した状態で基板端部が仕上げられ、後工程において基板端部にパーティクル等の汚染物質が付着するのを防止することができる。なお、第2ノズル4からのDIW供給後、上記のように基板裏面Wbに対してオゾン水に替えてDIWを供給してもよいし、オゾン水を供給し続けてもよい。
以上のように、この実施形態によれば、回転する基板Wの裏面Wbからオゾン水を基板端部に回り込ませることで基板端部の全周に酸化膜を形成した後、基板Wの表面側から回転する基板Wの端部に局部的にフッ酸を供給することで、基板端部の各部にフッ酸を供給して基板端部の全周から酸化膜を除去している。このため、基板端部に付着する不要物を酸化膜とともに効率良く基板端部の全周から除去することができる。しかも、基板端部に対して処理液(オゾン水およびフッ酸)を供給することにより洗浄処理を施しているので、第1態様と同様に洗浄処理時におけるパーティクルの発生を防止することができる。したがって、基板Wを汚染させることなく基板端部を良好に洗浄することができる。
また、この実施形態によれば、基板Wはその端部に当接する当接部材(挟持部材)がない状態で回転しながら処理されるので、基板端部を全周にわたって隈なく良好に洗浄することができる。しかも、基板端部を挟持することに起因して発生する不具合、例えば基板Wに供給された処理液が挟持部材に当たって基板Wに向けて跳ね返るような不具合を防止することができる。
また、この実施形態によれば、遮断部材50によって基板表面Wfを外部雰囲気から遮断しながらも、第2ノズル4をノズル挿入孔5Bに挿入させることで、回転する基板Wの表面周縁部TRにフッ酸を直接に供給することができる。したがって、基板Wの表面中央部(非処理領域NTR)に処理液が付着するのを防止しながら、基板端部から不要物を効率良く除去することができる。また、第2ノズル4は遮断部材50のノズル挿入孔5Bに挿入されているため、洗浄処理時に処理液が飛散してノズルに大量の処理液が付着するのを回避することができる。さらに、この実施形態によれば、表面側からのオゾン水供給用のノズルが不要となるため、装置のイニシャルコストを低減することができる。
また、この実施形態によれば、基板裏面Wbに供給したオゾン水を基板端部に回り込ませることによって基板端部にオゾン水を供給している。このため、表面側からノズルによって基板端部に局部的にオゾン水を供給する場合に比較して比較的大量のオゾン水を基板端部に供給することができる。したがって、基板端部に酸化膜を効率良く形成することができる。
<第3実施形態>
図13はこの発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。この第3実施形態にかかる基板処理装置が第2実施形態と大きく相違する点は、オゾン水による酸化膜形成工程とフッ酸による酸化膜除去工程とを並行して実行している点である。なお、その他の構成および動作は基本的に第2実施形態と同様であるため、ここでは相違点を中心に説明する。
この実施形態では、下面処理ノズル2から回転する基板Wの裏面Wbにオゾン水を供給しつつ、エッチング位置P41Eに位置決めされた第2ノズル4からフッ酸を基板端部に供給する。これにより、基板Wの裏面Wbに供給されたオゾン水は基板Wの回転に伴う遠心力によって裏面全体に広がり、裏面Wbから周端面EFを伝って表面周縁部TRに回り込む。これにより、基板端部の全周にオゾン水が供給され、基板端部の全周に酸化膜が形成される(酸化膜形成工程)。また、酸化膜形成工程と並行して第2ノズル4から回転する基板Wの端部にフッ酸が局部的に供給されると、フッ酸の供給部位に位置する酸化膜が除去される。具体的には、基板端部に付着するオゾン水を径方向外側に押し退けるかたちでフッ酸が基板端部に供給され、酸化膜とともに基板端部から不要物が除去される。なお、基板端部に供給されたフッ酸も該フッ酸の作用により基板端部が疎水性を呈するようになるため、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて基板端部を径方向外向きに流れ、速やかに基板Wから排出される。
図14は図13の基板処理装置の動作を説明するための動作説明図である。図14において、符号SR(T11)〜SR(T14)は基板端部における微小領域SRの各タイミングT11〜T14における位置を示している。タイミングT11のように微小領域SRがフッ酸の供給部位、つまり処理位置P41(エッチング位置P41E)に位置決めされた第2ノズル4からのフッ酸が局部的に供給される部位から外れた位置にあるときには、基板裏面Wbから回り込むオゾン水によって微小領域SRに酸化膜が形成される。そして、基板Wが回転方向Rに回転して微小領域SRがフッ酸の供給部位に位置すると、第2ノズル4からのフッ酸によって微小領域SRから酸化膜が除去される(タイミングT12)。さらに、基板Wが回転してタイミングT13のように微小領域SRがフッ酸の供給部位から外れると、基板裏面Wbから回り込むオゾン水によって再び微小領域SRがオゾン水と接液して該微小領域SRに酸化膜が形成される。その後、基板Wの回転により微小領域SRがフッ酸の供給部位に位置すると、微小領域SRから酸化膜が除去される(タイミングT14)。こうして、基板Wの回転に伴って微小領域SRに対して酸化膜形成と酸化膜除去とが交互に実行されることなる。このため、基板端部に付着する不要物を酸化膜とともに効率良く基板端部の全周から除去することができる。
以上のように、この実施形態によれば、回転する基板Wの裏面Wbからオゾン水を基板端部に回り込ませることで基板端部の全周に酸化膜を形成しつつ、基板Wの表面側から回転する基板Wの端部に局部的にフッ酸を供給することで、基板端部の各部にフッ酸を供給して基板端部の全周から酸化膜を除去している。このため、基板端部に付着する不要物を酸化膜とともに効率良く基板端部の全周から除去することができる。しかも、基板端部に対して処理液(オゾン水およびフッ酸)を供給することにより洗浄処理を施しているので、第1態様と同様に洗浄処理時におけるパーティクルの発生を防止することができる。したがって、基板を汚染させることなく基板端部を良好に洗浄することができる。
また、基板端部に当接する当接部材(挟持部材)がない状態で基板Wを回転させながら処理している点および遮断部材50によって基板表面Wfを外部雰囲気から遮断しながら第2ノズル4をノズル挿入孔5Bに挿入させる点は第2実施形態と同じである。したがって、第2実施形態と同様な作用効果が得られる。さらに、この実施形態によれば、基板Wを回転させながらオゾン水を供給しつつフッ酸を供給することによって、酸化膜形成工程と酸化膜除去工程とを並行して実行しているので、酸化膜形成工程と酸化膜除去工程とを順に直列的に実行する場合に比較して短時間で基板端部に処理を施すことができる。
<その他>
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記第1実施形態では、平面視で回転中心A0から第1ノズル3の供給位置に延びる方向と回転中心A0から第2ノズル4の供給位置に延びる方向とが形成する角度を180°に設定しているが、当該角度はこれに限定されず、基板端部にオゾン水が滞留する時間および基板端部にフッ酸が滞留する時間を考慮しながら90°、120°など180°以外の角度に設定してもよい。
また、上記第1実施形態では、第1および第2ノズル3,4を供給位置P31,P41に位置決めする際に、遮断部材5に形成されたノズル挿入孔5A,5Bに第1および第2ノズル3,4を挿入しているが、ノズル挿入孔5A,5Bに第1および第2ノズル3,4を挿入することは必ずしも必要でない。例えば基板Wの平面サイズよりも小さな平面サイズを有する遮断部材を基板表面Wfに対向配置して、基板Wの表面中央部を覆いながら第1および第2ノズル3,4を遮断部材の側壁に近接させて配置してもよい。さらに、遮断部材を基板表面Wfに対向配置させることなく、第1および第2ノズル3,4のみを基板Wの表面側に配置してもよい。同様にして、上記第2および第3実施形態でも、ノズル挿入孔5Bに第2ノズル4を挿入することは必ずしも必要でない。
また、上記第1実施形態では、第1および第2ノズル3,4に対応して遮断部材5に2つのノズル挿入孔を形成しているが、3つ以上のノズル挿入孔を形成してもよい。例えば、径方向における基板Wの周端面からの距離が互いに同一のノズル挿入孔対を、径方向における基板Wの周端面からの距離が互いに異なる位置に複数対形成してもよい。この構成によれば、複数のノズル挿入孔対のいずれかひとつのノズル挿入孔対の一方に第1ノズル3を挿入させるとともに該ノズル挿入孔対の他方に第2ノズル4を挿入させることができる。つまり、第1および第2ノズル3,4を挿入させるノズル挿入孔対を適宜選択することで、基板Wの周端面EFから内側に向かって処理が施される幅を変更することができる。
また、上記第2および第3実施形態では、第2ノズル4に対応して遮断部材50に1つのノズル挿入孔を形成しているが、複数のノズル挿入孔を形成してもよい。例えば、径方向における基板Wの周端面からの距離が互いに異なる位置にノズル挿入孔を複数個形成してもよい。この構成によれば、複数のノズル挿入孔のうち第2ノズル4を挿入させるノズル挿入孔を適宜選択することで、基板Wの周端面EFから内側に向かって処理が施される幅を変更することができる。
また、上記第2および第3実施形態では、1本の第2ノズル4から基板端部にフッ酸を供給しているが、2本以上の第2ノズル4から基板端部にフッ酸を供給するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、基板Wをその裏面Wbに当接する支持ピンF1〜F6,S1〜S6などの支持部に押圧支持させて基板Wを保持しているが、チャックピンなどの挟持部材により基板Wを保持してもよい。