図1はこの発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。また、図2は図1の基板処理装置の主要な制御構成を示すブロック図である。この基板処理装置は、半導体ウエハ等の略円形基板Wの表面Wfの周縁部TRに存在するTaN層やW層などの難溶性層をエッチング除去する装置である。なお、この実施形態では、後述するように基板表面WfにTh-Ox(熱酸化)層などの下地層が形成され、さらに当該下地層上にW層などの難溶性層が形成された基板Wを処理対象としており、基板Wの表面周縁部TRでは難溶性層が最上位に位置して本発明の「上層」に相当している。
この基板処理装置は、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるスピンチャック1と、スピンチャック1に保持された基板Wの下面(裏面Wb)の中央部に向けてリンス液を供給する下面処理ノズル2と、基板表面Wf側からスピンチャック1に保持された基板Wの表面周縁部TRに薬液を供給する薬液吐出ノズル3と、薬液が接液する接液部(図6中の符号Pe)の基板端面側にDIW(deionized Water:脱イオン水)などのリンス液を供給するリンス液吐出ノズル4と、スピンチャック1に保持された基板Wの表面Wfに対向配置された遮断部材5とを備えている。
スピンチャック1は中空の回転支軸11がモータを含むチャック回転機構13の回転軸に連結されており、チャック回転機構13の駆動により回転中心A0を中心に回転可能となっている。この回転支軸11の上端部にはスピンベース15が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。したがって、装置全体を制御する制御ユニット8からの動作指令に応じてチャック回転機構13を駆動させることによりスピンベース15が回転中心A0を中心に回転する。このスピンベース15の上面151には、基板Wの下面に当接して基板Wを下方から支持するための支持ピン152が上向きに突設されている。支持ピン152の本数は特に限定されないが、例えば等角度間隔で3本以上設けることにより、ウエハWを水平にかつ安定して支持することが可能となる。
中空の回転支軸11にはリンス液供給管21が挿通されており、その上端に下面処理ノズル2が結合されている。リンス液供給管21はリンス液供給ユニット17と接続されており、リンス液としてDIWが供給される。また、回転支軸11の内壁面とリンス液供給管21の外壁面との隙間は環状のガス供給路23を形成している。このガス供給路23はガス供給ユニット18と接続されており、当該ガス供給路23を介して窒素ガスが基板裏面Wbと該基板裏面Wbに対向するスピンベース15の上面151とに挟まれた空間SP1に供給される。なお、この実施形態では、ガス供給ユニット18から窒素ガスを供給しているが、空気や他の不活性ガスなどを吐出するように構成してもよい。
スピンチャック1の上方には、支持ピン152に支持された基板Wに対向する円盤状の遮断部材5が水平に配設されている。遮断部材5はスピンチャック1の回転支軸11と同軸上に配置された回転支軸51の下端部に一体回転可能に取り付けられている。この回転支軸51には遮断部材回転機構53が連結されており、制御ユニット8からの動作指令に応じて遮断部材回転機構53のモータを駆動させることで遮断部材5を回転中心A0を中心に回転させる。制御ユニット8は遮断部材回転機構53をチャック回転機構13と同期するように制御することで、スピンチャック1と同じ回転方向および同じ回転速度で遮断部材5を回転駆動できる。
また、遮断部材5は遮断部材昇降機構55と接続され、遮断部材昇降機構55の昇降駆動用アクチュエータ(例えばエアシリンダーなど)を作動させることで、遮断部材5をスピンベース15に保持された基板Wに近接して対向させたり、逆に離間させることが可能となっている。具体的には、制御ユニット8は遮断部材昇降機構55を駆動させることで、基板処理装置に対して基板Wが搬入出される際には、スピンチャック1から上方に十分に離れた離間位置に遮断部材5を上昇させる。その一方で、基板Wに対してエッチング処理などの所定の処理を施す際には、スピンチャック1に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで遮断部材5を下降させる。これにより、遮断部材5の下面501(基板対向面)と基板表面Wfとが近接した状態で対向配置される。
遮断部材5の中心の開口および回転支軸51の中空部は、ガス供給路57を形成している。ガス供給路57はガス供給ユニット18と接続されており、後述するガス流通空間503およびガス吐出口502を介して基板表面Wfと遮断部材5の下面501とに挟まれた空間SP2に窒素ガスを供給可能となっている。
図3は遮断部材の底面図である。遮断部材5の下面501の平面サイズは基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。このため、遮断部材5が対向位置に配置されると、基板表面全体を覆って基板表面Wf上の雰囲気を外部雰囲気から遮断可能となっている。また、遮断部材5の周縁部には遮断部材5を上下方向(鉛直軸方向)に貫通する、略円筒状の内部空間を有するノズル挿入孔5A,5Bが形成されており、ノズル3、4を個別に挿入可能となっている。ノズル挿入孔5Aとノズル挿入孔5Bは回転中心A0に対して対称位置に同一形状に形成されている。一方で、薬液吐出ノズル3とリンス液吐出ノズル4は同一のノズル外径を有している。このため、両ノズル3,4をそれぞれノズル挿入孔5A,5Bのいずれにも挿入可能となっている。
また、遮断部材5の下面501には複数のガス吐出口502が形成されている。複数のガス吐出口502はスピンチャック1に保持される基板Wの表面中央部、つまり表面周縁部TRより径方向内側の非処理領域に対向する位置に、回転中心A0を中心とする円周に沿って等角度間隔に形成されている。これらのガス吐出口502は遮断部材5の内部に形成されたガス流通空間503(図1)に連通しており、ガス供給路57を介してガス流通空間503に窒素ガスが供給されると、複数のガス吐出口502を介して窒素ガスが空間SP2に供給される。
そして、遮断部材5が対向位置に位置決めされた状態で、複数のガス吐出口502から空間SP2に窒素ガスが供給されると、空間SP2の内部圧力を高めて基板Wをその裏面Wbに当接する支持ピン152に押圧する。この状態で制御ユニット8の動作指令に応じてスピンベース15が回転すると、基板裏面Wbと支持ピン152との間に発生する摩擦力によって基板Wが支持ピン152に支持されながらスピンベース15とともに回転する。なお、空間SP2に供給された窒素ガスは基板Wの径方向外側へと流れていく。
図1に戻って説明を続ける。薬液吐出ノズル3は薬液供給ユニット16と接続されており、制御ユニット8からの動作指令に応じて薬液供給ユニット16から薬液吐出ノズル3に薬液を供給する。薬液としては、TaN層やW層などの難溶性層のエッチングに適した薬液、例えばフッ硝酸等が用いられる。
薬液吐出ノズル3は水平方向に延びるノズルアーム31の一方端に取り付けられている。また、ノズルアーム31の他方端は第1ノズル移動機構33に接続されている。第1ノズル移動機構33は薬液吐出ノズル3を水平方向に所定の回動軸回りに揺動させるとともに、薬液吐出ノズル3を昇降させることができる。このため、制御ユニット8からの動作指令に応じて第1ノズル移動機構33が駆動されることで、薬液吐出ノズル3を遮断部材5のノズル挿入孔5Aに挿入して表面周縁部TRに薬液を供給可能な処理位置(薬液供給位置)P31と、基板Wから離れた待機位置P32とに移動させることができる。また、薬液吐出ノズル3を遮断部材5のノズル挿入孔5Aに挿入した状態で薬液供給ユニット16から薬液が圧送されると、薬液が薬液吐出ノズル3から表面周縁部TRに供給されて難溶性層のエッチング除去が行われる。なお、このように表面周縁部TRのうち薬液が難溶性層に接液する領域を「接液部Pe」と称する。
また、リンス液吐出ノズル4はリンス液供給ユニット17と接続されており、制御ユニット8からの動作指令に応じてリンス液供給ユニット17からリンス液吐出ノズル4にDIWを供給する。リンス液吐出ノズル4は表面周縁部TRへの薬液の接液部Peよりも基板端面側にリンス液を供給可能となっている。また、リンス液吐出ノズル4を駆動するために第2ノズル移動機構43が設けられている。第2ノズル移動機構43は第1ノズル移動機構33と同様な構成を有している。すなわち、第2ノズル移動機構43はノズルアーム41の先端に取り付けられたリンス液吐出ノズル4を水平方向に所定の回動軸回りに揺動させるとともに、リンス液吐出ノズル4を昇降させることができる。このため、制御ユニット8からの動作指令に応じて第2ノズル移動機構43が駆動されることで、リンス液吐出ノズル4を遮断部材5のノズル挿入孔5Bに挿入して表面周縁部TRにリンス液を供給可能な処理位置(リンス液供給位置)P41と、基板Wから離れた待機位置P42とに移動させることができる。
ここで、ノズル挿入孔5Aとノズル挿入孔5Bは遮断部材5に同一形状で、しかも回転中心A0に対して対称位置に形成されており、平面視で回転中心A0から処理位置P31に延びる方向と回転中心A0から処理位置P41に延びる方向とが形成する角度は180°となっている。また、両ノズル3,4は吐出する液の種類が異なる点を除いて同一に構成されている。また、両ノズル挿入孔5A,5Bは遮断部材5に同一形状で、しかも回転中心A0に対して対称位置に形成されている。このため、薬液吐出ノズル3およびノズル挿入孔5Aの構成のみを図4を参照しつつ説明する。
図4は薬液吐出ノズルおよび遮断部材に設けられたノズル挿入孔の構成を示す図である。薬液吐出ノズル3は遮断部材5に設けられたノズル挿入孔5Aの形状に合わせて略円筒状に形成され、ノズル挿入孔5Aに挿入されることで、薬液吐出ノズル3の先端側が表面周縁部TRに対向して配置される。薬液吐出ノズル3の内部には液供給路301が形成されており、液供給路301の先端部(下端部)が薬液吐出ノズル3の吐出口301aを構成している。薬液吐出ノズル3のノズル外径は必要以上にノズル挿入孔5Aの孔径を大きくすることのないように、例えばφ5〜6mm程度に形成される。薬液吐出ノズル3は、略円筒状に形成されたノズル胴部の断面積がノズル先端側と後端側で異なるように構成されている。具体的には、ノズル先端側の胴部302の断面積がノズル後端側の胴部303の断面積より小さくなるように構成されており、ノズル先端側の胴部302とノズル後端側の胴部303との間に段差面304が形成されている。すなわち、ノズル先端側の胴部302の外周面(側面)とノズル後端側の胴部303の外周面(側面)は段差面304を介して結合されている。段差面304はノズル先端側の胴部302を取り囲むように、しかもスピンチャック1に保持された基板表面Wfに略平行に形成されている。
ノズル挿入孔5Aの内壁には薬液吐出ノズル3の段差面304と当接可能な円環状の当接面504が形成されている。そして、薬液吐出ノズル3がノズル挿入孔5Aに挿入されると、段差面304と当接面504とが当接することで、薬液吐出ノズル3が処理位置P31に位置決めされる。薬液吐出ノズル3が処理位置P31に位置決めされた状態で、薬液吐出ノズル3の吐出口301a周囲の先端面は遮断部材5の対向面501と面一になっている。当接面504は遮断部材5の対向面501と略平行に、つまり基板表面Wfと略平行に形成されており、薬液吐出ノズル3の段差面304と面接触するようになっている。このため、薬液吐出ノズル3を処理位置P31に位置決めする際に、薬液吐出ノズル3が遮断部材5に当接して位置固定され、薬液吐出ノズル3を安定して位置決めすることができる。
薬液吐出ノズル3の吐出口301aは基板Wの径方向外側に向けて開口しており、吐出口301aから薬液を基板Wの回転中心上方から基板端面側に向かう方向(図6、図8の矢印方向)に吐出して表面周縁部TRに供給可能になっている。液供給路301はノズル後端部において薬液供給ユニット16に接続されている。このため、薬液供給ユニット16から薬液が液供給路301に圧送されると、薬液吐出ノズル3から薬液が基板Wの径方向外側に向けて吐出される。これにより、表面周縁部TRに供給された薬液は基板Wの径方向外側に向かって流れ、基板外に排出される。したがって、薬液の供給位置よりも径方向内側の非処理領域には薬液は供給されず、基板Wの端面から内側に向かって一定の幅(周縁エッチング幅)で薄膜がエッチング除去される。また、リンス液吐出ノズル4の吐出口についても薬液吐出ノズル3と同様にして基板Wの径方向外側に向けて開口しており、該吐出口から表面周縁部TRにDIWを吐出可能となっている。このため、リンス液供給ユニット17からリンス液吐出ノズル4にDIWが圧送されると、リンス液吐出ノズル4からDIWが基板Wの径方向外側に向けて吐出される。これにより、表面周縁部TRにDIWが供給されるとともに、基板Wの径方向外側に向かって流れ、基板外に排出される。
また、ノズル挿入孔5A,5Bの孔径はノズル3、4の外径よりも大きく形成されている。このため、ノズル挿入孔5A,5Bの内部空間でノズル3、4を水平方向に互いに異なる位置に位置決めしたり、ノズル挿入孔5A、5B内でノズルを移動することが可能となっている。本実施形態では、後で詳述するように、リンス液吐出ノズル4の処理位置P41を薬液吐出ノズル3の処理位置P31に対して基板Wの径方向外側に設定し、表面周縁部TRへの薬液の接液部Peよりも基板端面側にリンス液を供給する。また、薬液による難溶性層のエッチング除去の進行に伴って第2ノズル移動機構43がリンス液吐出ノズル4を基板Wの回転中心側に移動させる。
また、遮断部材5のノズル挿入孔5A,5Bの内壁には、ガス導入口505が開口されており、ガス導入口505からノズル挿入孔5A,5Bの内部空間に窒素ガスを供給可能となっている。ガス導入口505は遮断部材5の内部に形成されたガス流通空間503を介してガス供給ユニット18に連通している。したがって、ガス供給ユニット18から窒素ガスが圧送されると、ノズル挿入孔5A,5Bの内部空間に窒素ガスが供給される。これにより、ノズル3、4が待機位置P32、P42に位置決めされた状態、つまり、ノズル3,4がノズル挿入孔5A,5Bに未挿入の状態では、ノズル挿入孔5A,5Bの上下双方の開口から窒素ガスが噴出される。このため、ノズル挿入孔5A,5Bにノズルが未挿入の状態でも、薬液やリンス液がノズル挿入孔5A,5Bの内壁に付着するのが防止される。
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について図5および図6を参照しつつ説明する。図5は図1の基板処理装置の動作を示す模式図である。図6は図5の部分断面図である。この装置では、未処理の基板Wが装置内に搬入されると、制御ユニット8が装置各部を制御して該基板Wに対して一連の膜除去処理(エッチング処理工程+リンス工程+乾燥工程)が実行される。ここで、基板表面Wfの全面に下地層DLが形成されるとともに下地層DL上に難溶性層ULが形成されている(図6)。この実施形態では、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが装置内に搬入される。なお、遮断部材5は離間位置にあり、基板Wとの干渉を防止している。
未処理の基板Wが支持ピン152に載置されると、遮断部材5が対向位置まで降下されて基板表面Wfに近接配置される。そして、ガス吐出口502から窒素ガスを吐出させる。これによって、遮断部材5の下面501と基板表面Wfとに挟まれた空間SP2の内部圧力が高められ、基板Wはその下面(裏面Wb)に当接する支持ピン152に押圧されてスピンベース15に保持される。また、基板表面Wfは遮断部材5の下面501に覆われて、基板周囲の外部雰囲気から確実に遮断される。なお、この時、遮断部材5は回転せず停止したままである。
続いて、基板Wに対してエッチング処理が実行される。このエッチング処理工程では、薬液吐出ノズル3が待機位置P32から処理位置P31に位置決めされる。具体的には、薬液吐出ノズル3を水平方向に沿って遮断部材5のノズル挿入孔5Aの上方位置に移動させる。そして、薬液吐出ノズル3を降下させてノズル挿入孔5Aに挿入する。また、後述するようにエッチング処理中にカバーリンス処理を並行して行うためにリンス液吐出ノズル4が薬液吐出ノズル3と同様にして待機位置P42から処理位置P41に位置決めされるが、この実施形態では図5(a)に示すように、基板Wの回転中心A0からリンス液吐出ノズル4までの距離は薬液吐出ノズル3よりも長く、リンス液吐出ノズル4は薬液吐出ノズル3に比べて基板端面側に位置している。このため、後述するようにリンス液吐出ノズル4から吐出されるリンス液が表面周縁部TRに接液する接液部Prは薬液吐出ノズル3から吐出される薬液の接液部Peよりも基板端面側に位置する。
このようにノズル3、4の位置決めが完了すると、遮断部材5を停止させた状態で基板Wを回転させる。このとき、支持ピン152に押圧された基板Wは支持ピン152と基板裏面Wbとの間に発生する摩擦力でスピンベース15に保持されながらスピンベース15とともに回転する。そして、基板Wの回転速度が所定速度(例えば600rpm)に達すると、回転する基板Wの表面周縁部TRに薬液吐出ノズル3から薬液を連続的に供給する。これにより、薬液吐出ノズル3から吐出される薬液が接液部Peに供給され、図5(a)の斜線領域で示すように基板Wの表面周縁部TRに薬液が供給されて難溶性層ULのエッチング除去が開始される。
この実施形態では難溶性層ULをエッチング除去するために高濃度のフッ硝酸などの薬液を使用しているため、上記したように薬液の接液部Peで直ちにエッチング処理は実行されず、当該接液部Peよりも基板端面側でエッチング処理が開始される。また、難溶性層ULは基板端面側で薄くなっている。このため、表面周縁部TRのうち基板端面側で難溶性層ULが真っ先にエッチング除去されて下地層DLが露出する。そして、下地層DLを露出させたままエッチング処理を継続すると、薬液吐出ノズル3から供給される薬液により下地層DLが高エッチングレートでエッチング除去されてしまう。この下地層DLはエッチング除去すべきものではなく、このように難溶性層ULで覆われていない非処理部に対してエッチング処理を施してしまうと、上記した課題が発生してしまう。
そこで、本実施形態では下地層DLが露出した段階で制御ユニット8はリンス液供給ユニット17を作動させてリンス液吐出ノズル4からリンス液を吐出させる。これにより、薬液の接液部Peよりも基板端面側にリンス液が供給されて露出した下地層DLに付着した薬液がリンス液で薄められるとともに洗い流されて下地層DLのエッチングが阻止される。また、図5(b)や図6(b)に示すように、リンス液供給により下地層DLの露出部がリンス液で覆われてカバーリンス部CLにより保護される。そして、カバーリンス部CLにより下地層DLの露出部を薬液から保護したまま難溶性層ULのエッチング除去が継続される。
また、難溶性層ULのエッチング除去が進行すると、下地層DLの露出部は基板Wの回転中心A0側に広がっていく。そこで、図5(c)および図6(c)に示すように、この露出部の広がり、つまりエッチング処理の進行に伴って制御ユニット8は第2ノズル移動機構43を制御してリンス液吐出ノズル4を基板Wの回転中心A0側に移動させる。これにより露出部全体をカバーリンス部CLで覆った状態で難溶性層ULのエッチング除去が進められる。
そして、表面周縁部TRに形成されていた難溶性層ULのエッチング除去が完了すると、リンス液吐出ノズル4からのリンス液供給を継続させる一方、薬液供給ユニット16からの薬液供給を停止して薬液吐出ノズル3からの薬液吐出を停止させる。これにより、表面周縁部TRに対するリンス処理が実行される。このとき、下面処理ノズル2から回転する基板Wの裏面Wbにリンス液を同時に供給してもよい。また、上記リンス処理の後に特許文献1に記載の装置と同様に下面処理ノズル2から処理液およびリンス液を順次供給して基板裏面Wbに対して裏面洗浄処理を実行してもよい。
こうして、所定時間のリンス処理が完了すると、リンス液吐出ノズル4へのリンス液の供給が停止され、リンス液吐出ノズル4が処理位置P41から待機位置P42に位置決めされる。続いて、スピンベース15の回転数とほぼ同一の回転数で同一方向に遮断部材5を高速(例えば1500rpm)に回転させる。これにより、基板Wの乾燥が実行される。このとき、基板表面Wfへの窒素ガス供給と併せてガス供給路23からも窒素ガスを供給して基板Wの表裏面に窒素ガスを供給することで、基板Wの乾燥処理が促進される。
基板Wの乾燥処理が終了すると、遮断部材5の回転を停止させるとともに、基板Wの回転を停止させる。そして、ガス吐出口502からの窒素ガスの供給を停止することで、基板Wの支持ピン152への押圧保持を解除する。その後、遮断部材5が上昇され、処理済の基板Wが装置から搬出される。
以上のように、本実施形態では、基板Wの表面周縁部TRに形成された難溶性層ULに薬液を供給して難溶性層ULをエッチング除去している間、難溶性層ULの基板端面側にリンス液を供給してカバーリンス部CLを形成し、難溶性層ULのエッチング除去により露出してしまった下地層DLをリンス液で覆っている。このため、下地層DLに流れてくる薬液を薄めるとともに洗い流して下地層DLの露出部が薬液によりエッチングされるのを抑制することができる。このように難溶性層ULの基板端面側にカバーリンス部CLを設けて露出した下地層DLを保護した状態でエッチング処理を行っているため、基板Wの表面周縁部TRに形成された難溶性層ULのみを選択的にエッチング除去することができる。
このように本実施形態では、基板表面Wf上に形成された下地層DLが本発明の「下層」に相当し、当該下地層DL上に形成された難溶性層ULが本発明の「上層」に相当している。また、下地層DLのうち難溶性層ULのエッチング除去により露出した領域、つまり下地層DLの露出部が本発明の「非処理部」に相当している。また、薬液吐出ノズル3と薬液供給ユニット16とで本発明の「薬液供給手段」が構成されて上層に薬液を供給し、またリンス液吐出ノズル4とリンス液供給ユニット17とで本発明の「カバーリンス手段」が構成されて非処理部にリンス液で覆うカバーリンス部CLを形成している。さらに、「カバーリンス手段」には第2ノズル移動機構43が含まれており、リンス液吐出ノズル4を基板Wの径方向に移動させるように構成されている。
また、基板表面Wf上に直接難溶性層ULが形成された基板Wに対して上記基板処理装置によりエッチング処理を実行することができる。つまり、基板基体が本発明の「下層」に相当し、難溶性層ULのエッチング除去により露出した基板基体の表面領域が本発明の「非処理部」に相当しており、難溶性層ULの基板端面側にリンス液を供給してカバーリンス部CLを形成することで基板基体がエッチングされるの効果的に防止しながら難溶性層ULのみを選択的にエッチング除去することができる。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、下地層DLの全面に難溶性層ULが形成された基板Wに対して表面周縁部TRから難溶性層ULを選択的にエッチングする、いわゆるベベルエッチング処理を施しているが、本発明に適用対象はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば図7(a)および図8(a)に示すように基板端面や基板端面近傍で下地層DLが露出するように難溶性層ULが基板Wの表面周縁部TRに形成されている場合にも、本発明を適用することができる。より詳しくは、図1に示す基板処理装置の動作を一部変更することで図7(a)や図8(a)に示す基板Wについても、表面周縁部TRから難溶性層ULのみを選択的にエッチング除去することができる。以下、図7および図8を参照しつつ本発明の第2実施形態について説明する。
図7は本発明にかかる基板処理装置の第2実施形態の動作を示す模式図である。図8は図7の部分断面図である。第2実施形態にかかる基板処理装置の構成は上記したように第1実施形態と同一であり、基板処理動作のみが一部相違している。以下、相違点を中心に説明する。
この第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、未処理の基板Wが装置内に搬入されて支持ピン152に載置されると、遮断部材5が対向位置まで降下されて基板表面Wfに近接配置される。そして、ガス吐出口502から窒素ガスを吐出させて基板Wをスピンベース15に保持される。
そして、薬液吐出ノズル3およびリンス液吐出ノズル4がそれぞれ処理位置P31、P41に位置決めされる(図7(a)および図8(a))。それに続いて、遮断部材5を停止させた状態で基板Wを回転させるとともに、リンス液吐出ノズル4からリンス液を吐出させてカバーリンス部CLを形成しながら薬液吐出ノズル3から薬液を接液部Peに供給してエッチング処理を開始する(図7(b)および図8(b))。このように第2実施形態では、薬液とリンス液を同時に供給し、表面周縁部TRのうち難溶性層ULに対して薬液が供給されるとともに難溶性層ULで覆われていない下地層DLの露出部、つまり本発明の「非処理部」に対してリンス液が供給されてカバーリンス部CLが形成される。そして、カバーリンス部CLで下地層DLの露出部を保護しながら薬液による難溶性層ULのエッチング除去が実行される。
また、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に難溶性層ULの周縁部がまず下地層DLから完全に剥離された後に基板Wの回転中心A0側、つまり薬液の接液部Peに向かってエッチング除去が進行していき、下地層DLの露出部は基板Wの回転中心A0側に広がっていく。そこで、第1実施形態と同様に、この露出部の広がり、つまりエッチング処理の進行に伴って制御ユニット8は第2ノズル移動機構43を制御してリンス液吐出ノズル4を基板Wの回転中心A0側に移動させる(図7(c)および図8(c))。これにより下地層DLの露出部全体をカバーリンス部CLで覆った状態で難溶性層ULのエッチング除去が進められる。
そして、表面周縁部TRに形成されていた難溶性層ULのエッチング除去が完了すると、第1実施形態と同様にリンス処理および乾燥処理が実行された後、処理済の基板Wが装置から搬出される。
以上のように、第2実施形態によれば、難溶性層ULの基板端面側にリンス液を供給して下地層DLの露出部をカバーリンス部CLで保護しながら難溶性層ULに対してエッチング処理を行っているため、下地層DLが薬液によりエッチングされることなく、基板Wの表面周縁部TRに形成された難溶性層ULのみを選択的にエッチング除去することができる。
また、上記第2実施形態では、下地層DL上に難溶性層ULが形成された基板Wに対してエッチング処理が施されているが、基板表面Wf上に直接難溶性層ULが形成された基板Wに対して上記基板処理装置によりエッチング処理を実行することができる。つまり、この場合、基板基体が本発明の「下層」に相当し、基板表面Wfのうち難溶性層ULが形成されていない表面領域および難溶性層ULのエッチング除去により露出した基板基体の表面領域が本発明の「非処理部」に相当しており、第2実施形態と同様にエッチング処理の開始時点からエッチング終了時点までカバーリンス部CLを形成することで、基板基体がエッチングされるの効果的に防止しながら難溶性層ULのみを選択的にエッチング除去することができる。この点に関しては、基板表面Wf全体に直接難溶性層ULが形成された基板Wに対して上記基板処理装置によりエッチング処理を実行する場合も同様である。つまり、第1実施形態と同様にして難溶性層ULのエッチング除去により露出した基板基体の表面領域にカバーリンス部CLを形成することで、基板基体がエッチングされるの効果的に防止しながら難溶性層ULのみを選択的にエッチング除去することができる。
また、上記実施形態では、リンス液としてDIWを用いているが、これ以外の液体をリンス液として用いてもよく、下地層DLや基板基体を保護することができる液体である限り任意の液体を用いることができる。
また、上記実施形態では、上層(難溶性層UL)としてW層が、また下層(下地層DL)としてTh-Ox(熱酸化)層が形成されており、Th-Ox層(非処理部)のエッチング選択比がW層のエッチング選択比に対して3.4となっている基板Wに対してエッチング処理を行っている。本発明の適用対象はこのようなエッチング選択比を有する基板Wに限定されるものではなく、下層のエッチング選択比が上層のエッチング選択比に対して3.4以下である基板に対して本発明は特に有効である。
また、上記実施形態では、平面視で回転中心A0から薬液吐出ノズル3の処理位置P31(薬液供給位置)に延びる方向と回転中心A0からリンス液吐出ノズル4の処理位置P41(リンス液供給位置)に延びる方向とが形成する角度を180°としているが、該角度はこれに限定されない。
また、上記実施形態では、ノズル3、4を表面周縁部TRに薬液およびリンス液を供給可能な処理位置P31、P41にそれぞれ位置決めする際に、遮断部材5に形成されたノズル挿入孔5A,5Bにノズル3、4を挿入しているが、ノズル挿入孔5A,5Bにノズル3、4を挿入することは必ずしも必要でない。例えば基板Wの平面サイズよりも小さな平面サイズを有する遮断部材を基板表面Wfに対向配置して、ノズル3、4を該遮断部材の側壁に近接して配置してもよい。さらに、遮断部材5を基板表面Wfに対向配置させることなく、ノズル3、4のみを基板表面Wf側に位置決めしてもよい。
また、上記実施形態では、基板Wをその裏面Wbに当接する支持ピン152などの支持部材に押圧支持させて基板Wを保持しているが、チャックピンなどの保持部材を基板Wの外周端部に当接させて基板Wを保持してもよい。
また、上記実施形態では、基板処理装置は薬液吐出ノズル3とリンス液吐出ノズル4とをそれぞれ、1本ずつ装備しているが、ノズルの本数は1本に限定されず、複数本装備してもよい。
さらに、遮断部材5のノズル挿入孔についても、上記実施形態では、ノズル3、4に対応して遮断部材5に2つのノズル挿入孔を形成しているが、3つ以上のノズル挿入孔を形成してもよい。例えば、平面視で回転中心A0から第1処理位置に延びる方向と回転中心A0から第2処理位置に延びる方向とが形成する角度が互いに異なる位置に3つ以上のノズル挿入孔を形成してもよい。特に、基板Wによって難溶性層や下地層の形成状態や寸法などが異なる場合があるが、予めノズル挿入孔の形成位置やノズル挿入孔内でリンス液吐出ノズル4が移動できる範囲などをノズル挿入孔毎に相違させておくと、難溶性層や下地層の形成状態や寸法などに応じて3つ以上のノズル挿入孔のいずれかにノズル3、4を適宜、挿入して処理を行うことで、カバーリンス部CLを基板Wに応じた位置に形成することができ、種々の基板Wに対応可能となり、汎用性を高めることができる。