JP2007138260A - 酸洗い性に優れたばね用鋼線材 - Google Patents

酸洗い性に優れたばね用鋼線材 Download PDF

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Abstract

【課題】SiおよびCrを多く含むばね用鋼線材において、Moなどの合金成分を必須成分として添加しなくても、酸洗い性に優れたばね用鋼線材を提供する。
【解決手段】C:0.35〜0.7%(質量%の意味。以下、同じ)、Si:1.4〜2.5%、Mn:0.05〜1.0%、Cr:0.5〜1.9%、P:0.02%以下(0%を含まない)、S:0.02%以下(0%を含まない)、残部:Feおよび不可避不純物を満足するばね用鋼線材であって、表層のCr濃度と鋼中のCr濃度との差が2.50%以下であるばね用鋼線材である。
【選択図】なし

Description

本発明は、酸洗い性に優れたばね用鋼線材に関し、詳細には、Si及びCrを合金元素として多量に含むばね用鋼線材に関するものである。本発明のばね用鋼線材は、自動車等のエンジンに使用される弁ばねや、クラッチばね、ブレーキばね、スタビライザー、トーションバーなどの懸架ばね等に好適に用いられる。
弁ばねや懸架ばね等に用いられるばね用鋼の化学成分は、例えば、JIS G 3565〜JIS G 4801などに規定されており、ばね設計の種類などに応じて適切な鋼種が用いられている。最近、排ガスや燃費の低減化に伴ってばねの小型軽量化が進むにつれ、ばねの設計応力も高くなり、例えば、ばね素線(焼入れ焼戻し処理材)の引張強さが約1600MPa以上の高強度を実現し得るばね用鋼線材の提供が切望されている。また、ばねの重要な特性の一つである大気下での耐久性を高めるため、耐力の向上も望まれており、固溶強化によって耐力を向上し得るSiおよびCrを合金元素として多く含む鋼線材が用いられる傾向にある。
一般に、ばねは、鋼片を加熱し、熱間圧延した線材(圧延線材)を、必要に応じて表面に潤滑剤を施して皮膜処理(表面皮膜処理)を行った後、所定の線径まで引き抜き、加工(熱間成形または冷間成形)して製造される。加熱は、通常、酸化性雰囲気下で行われるため、圧延線材の表面には、「圧延スケール」または「スケール」と呼ばれるFe酸化物の酸化層が生成する。スケールが付着したままの圧延線材を用いてばねを製造すると、表面疵などが発生して品質の低下を招くことから、引き抜き処理を行う前に、スケールを除去するための酸洗い処理が行われる。
図1に、SiおよびCrを多く含む鋼(高Si高Cr含有鋼)の表面にスケールが付着した圧延線材の断面を、Fe−SEM装置を用いて観察した写真を示す。これは、後記する実施例のNo.E−1に相当する。図1に示すように、スケールは、表層側から順に、ヘマタイト(Fe)、マグネタイト(Fe)、ウスタイト(FeO)、ファイヤライト(2FeO・SiO)から構成されている。鋼(地鉄)とスケールとの間には、SiやCrが濃化したサブスケールが更に生成しており、Cr酸化物を主体とする粒界酸化層も生成している。
このうち、ファイヤライトは、Siを多量に含む鋼を用いた場合に見られる低融点酸化物であり、通常の酸洗処理では剥離し難い難剥離性物質である。例えば、高Si高Cr含有鋼を、ファイヤライトとウスタイトとの共晶温度(約1170℃)以上に加熱すると、これらの酸化物が複雑に絡み合った緻密な溶融層が形成され、更に、1200℃以上に加熱すると、上記の溶融相やファイヤライトにCrが侵入し、地鉄との界面に濃化して粒界酸化層(詳細は後記する。)が形成されるようになる。一旦、濃化したCrは、その後の工程によって除去することが極めて困難である。
また、サブスケールは、酸洗い処理による地鉄の活性化を低下させ、酸洗い性の低下を招くことが知られている。酸洗い性が低下すると、酸洗い処理後に、サブスケールを主体とする圧延スケールが残存するため、表面に施される潤滑剤(表面皮膜処理に用いられる)との付着性が低下し、引き抜き加工中に断線する恐れがある。断線に至らなくても、引抜き加工中にクラック(亀裂)が生じ、ばね成形(冷間コイリング)中に折損することがある。これらの問題は、例えば、酸洗い処理時間を長くし、圧延スケールを完全に除去することによって低減され得るが、酸溶液中の浸漬時間が長くなるため、地鉄への酸によるアタックが激しくなって表層粗さの劣化を招き、最終的に、大気下での耐久性も阻害されるようになる。また、地鉄への酸によるアタックの際に発生する水素の一部が鋼中に速やかに拡散して吸収されるため、水素吸蔵量が増加して鋼材の脆化(水素脆化)を招き、引き抜き加工中に断線に至る場合がある。
粒界酸化層は、Crを多く含む鋼を用いた場合に見られる。Crは酸素との親和力が強く、熱間圧延中に酸素が浸入すると、結晶粒内よりも結晶粒界の酸化速度が大きくなるためである。粒界酸化がある程度進むと、ばね成形の際、粒界酸化部によるノッチ効果によってばねが折損してしまう。更に、ばねの使用中に、粒界酸化部によるノッチ効果によって疲労折損する恐れもある。一般に、粒界酸化層は、サブスケールの厚さが厚いほど、厚くなる傾向にある。
このように、鋼中にSiおよびCrを多く含むばね用鋼線材を用いると、前述した様々な理由によって酸洗い性が低下し、ばねの疲労特性が低下するという問題を抱えている。
上記の問題を解決するため、例えば、特許文献1には、Moなどの合金元素を添加し、熱間圧延時の加熱温度および圧延終了温度を制御することによってスケールの膜厚を10μm以下に制御する方法が開示されている。
特開平6−299295号公報
しかしながら、上記方法では、CrおよびSiの他に、Moなどの高価な合金元素を必須成分として添加しなければならない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、SiおよびCrを多く含むばね用鋼線材において、Moなどの合金成分を必須成分として添加しなくても、酸洗い性に優れたばね用鋼線材を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る酸洗い性に優れたばね用鋼線材は、C:0.35〜0.7%(質量%の意味。以下、特に断らない限り、同じ)、Si:1.4〜2.5%、Mn:0.05〜1.0%、Cr:0.5〜1.9%、P:0.02%以下(0%を含まない)、S:0.02%以下(0%を含まない)、残部:Feおよび不可避不純物を満足するばね用鋼線材であって、表層のCr濃度と鋼中のCr濃度との差が2.50%以下であることに要旨が存在する。
好ましい実施形態において、V:0.07〜0.4%、Ti:0.01〜0.1%、およびNb:0.01〜0.1%よりなる群から選択される少なくとも一種を更に含有する。
好ましい実施形態において、Ni:0.15〜0.8%を更に含有する。
上記課題を解決することのできた本発明のばねは、上記のいずれかのばね用鋼線材を用いて得られたものである。
本発明のばね用鋼線材は、表層部のCrの濃化が著しく抑えられているほか、スケール、サブスケール、および粒界酸化層の厚さが、いずれも、非常に薄いため、酸洗い性に優れている。本発明のばね用鋼線材を用いてばねを製造すると、酸洗工程によってスケールやサブスケールが容易に剥離するため、表面性状に優れ、疲労特性も高められたばねを提供することができる。
本発明者は、SiおよびCrを多く含むばね用鋼線材の酸洗い性を高めるため、鋭意検討してきた。その結果、後に詳しく説明するように、特に、熱間圧延前の加熱工程および均熱工程を適切に制御すれば、線材表面のCr濃化(特に、ファイヤライト中へのCrの濃化)が抑えられて表層のCr濃度と鋼中のCr濃度との差(以下、ΔCrと略記する場合がある。)が著しく低減されるため、酸洗い性が格段に向上することを見出し、本発明を完成した。
以下、本発明について詳しく説明する。
前述したように、本発明のばね用鋼線材は、C:0.35〜0.7%、Si:1.40〜2.5%、Mn:0.05〜1.0%、Cr:0.50〜1.9%、P:0.02%以下(0%を含まない)、S:0.02%以下(0%を含まない)、残部:Feおよび不可避不純物を満足するばね用鋼線材であって、表層のCr濃度と鋼中のCr濃度との差(ΔCr)が2.50%以下であることを特徴としている。
本明細書において、「鋼線材」とは、鋼片を加熱後、線状に熱間圧延された鋼材(圧延材)であり、酸洗い処理が施される前のものを意味する。
まず、鋼中成分について説明する。
C:0.35〜0.7%
Cは、焼入れ焼戻し後の強度(硬さ)の向上に寄与し、大気耐久性を高める元素である。C量が0.35%未満では、上記作用を有効に発揮させることができず、一方、0.7%を超えると、靱延性が劣化し、亀裂が伝播し易くなって耐久性が低下する。また、弁ばねなどのように冷間コイリングが施されるばねでは、靭延性の劣化によって表面疵を基点とした折損が生じる場合がある。C量は、0.51%以上0.61%以下であることが好ましい。
Si:1.4〜2.5%
Siは、固溶強化元素として強度向上に寄与し、耐力も向上し得る元素である。Siが1.4未満では、マトリックス強度が不充分である。ただし、Siが2.5%を超えて過剰になると、A変態点を超える熱処理により、表面にフェライト脱炭が生じ易くなり、固溶強化作用が有効に発揮されない。Siは、1.7%以上2.1%以下であることが好ましい。
Mn:0.05〜1.0%
Mnは、鋼中の焼入れ性を高める元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Mnの添加量は、0.05%以上とする。しかし、Mn量が1.0%を超えて過剰に添加されると、焼入れ性が増大して過冷組織が生成し易くなり、引き抜き加工性が劣化する。また、後述する「ばね工程(c)」のように、熱間圧延後酸洗い処理前に、線材の軟化を目的として焼鈍工程を行う場合、コスト高が避けられなくなる。Mnは、0.4%以上0.9%以下であることが好ましい。
Cr:0.5〜1.9%
Crは、固溶強化によって線材のマトリックスを強化する元素である。また、Mnと同様、焼入れ性の向上にも有効に作用する。このような作用を有効に発揮させるため、Crを0.5%以上添加する。しかし、Crが1.9%を超えると、圧延後冷却時に過冷組織が生成し易くなり、引き抜き加工性が劣化する。Crは、0.6%以上1.75%以下であることが好ましい。
P:0.02%以下(0%を含まない)
Pは、旧オーステナイト粒界に偏析して粒界を脆化させ、疲労特性を低下させるため、できるだけ少ない方が良い。本発明では、工業生産上、上限を0.02%とする。
S:0.02%以下(0%を含まない)
Sは、旧オーステナイト粒界に偏析して粒界を脆化させ、疲労特性を低下させるため、できるだけ少ない方が良い。本発明では、工業生産上、上限を0.02%とする。
本発明のばね用鋼線材は、上記成分を含有し、残部:鉄および不可避不純物である。
本発明において、耐水素脆性を更に高める目的で、V:0.07〜0.4%、Ti:0.01〜0.1%、およびNb:0.01〜0.1%よりなる群から選択される少なくとも一種を更に含有することが好ましい。また、焼入れ焼戻し後の靭性を高める目的で、Niを含有することが好ましい。以下、各元素について、詳細に説明する。
V:0.07〜0.4%
Vは、微細な炭化物や窒化物を形成して耐水素脆性の向上に寄与する元素である。また、疲労特性も高められる。更に、結晶粒微細化効果によって靱性や耐力が向上し、耐へたり性の向上にも寄与する。このような作用を有効に発揮させるためには、Vを0.07%以上添加することが好ましい。ただし、Vを0.4%を超えて過剰に添加すると、焼入れ加熱時に、オーステナイト中に固溶しない炭化物量が増大し、充分な強度と硬さが得られなくなるほか、残留オーステナイト量も増加してばね硬さが低下する。Vは、0.1以上0.35%以下であることがより好ましい。
Ti:0.01〜0.1%
Tiは、焼入れ焼戻し後の旧オーステナイト結晶粒を微細化し、耐水素脆性の向上に有効な元素である。また、大気耐久性向上作用も有している。このような作用を有効に発揮させるためには、Tiを0.01%以上添加することが好ましい。ただし、Tiを過剰に添加すると、粗大な窒化物が析出し易くなり、大気耐久性が低下するため、上限を0.1%とすることが好ましい。Tiは、0.04%以上0.085%以下であることがより好ましい。
Nb:0.01〜0.1%
Nbは、炭化物、窒化物、硫化物、およびこれらの複合化合物よりなる微細な析出物を形成して耐水素脆性の向上に寄与する元素である。また、結晶粒微細化効果によって靱性や耐力も向上する。このような作用を有効に発揮させるためには、Nbを0.01%以上添加することが好ましい。ただし、Nbを0.1%を超えて過剰に添加すると、焼入れ加熱時に、オーステナイト中に固溶しない炭化物量が増大し、所定の引張強さが得られない。また、粗大化した窒化物による疲労折損を生じ易くなる。Nbは、0.02%以上0.05%以下であることがより好ましい。
Ni:0.15〜0.8%
Niは、焼入れ焼戻し後の靱性を高める元素である。また、圧延前および圧延中に生じるフェライト脱炭を抑制する作用も有する。このような作用を有効に発揮させるため、Niを0.15%以上添加する。しかし、Niが0.8%を超えると焼入れ性が増大し、圧延後に過冷組織が生成し易くなる。また、残留オーステナイト量も増大し、ばね硬さが低下する。Niは、0.25%以上0.55%以下であることが好ましい。
以上、本発明における鋼中成分について説明した。
表層のCr濃度と鋼中Cr濃度との差(ΔCr):2.50%以下
本発明のばね用鋼線材は、ΔCrが2.50%以下と、低く抑えられている。後記する実施例に示すように、ΔCrが高くなると酸洗い性が低下するが、これは、酸洗液中にCrO(OH)が生成し、地鉄表面にCrの不働体膜が生じるためである。本発明では、後に詳しく説明するように、特に、熱間圧延前の加熱工程および均熱工程を適切に制御しているため、ΔCrを低く抑えられる。ΔCrは、少なければ少ないほど良く、例えば、2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましい。その下限は特に限定されないが、実操業レベルを考慮すると、0.4%以上であることが好ましい。
ここで、「表層のCr濃度」の測定方法を、図2を用いて説明する。図2は、以下のようにして作製した供試材を用い、表層部から内部の中心に向かって0.3mmの範囲で、下記条件のEPMAライン定量分析によって測定した図であり、図2(a)に、Feに関し、X線強度(cps)と表層部からの距離との関係を示し、図2(b)に、Cr濃度(%)と表層部からの距離との関係を、それぞれ、示す。図2(a)に示すように、FeのX線強度が最大値に達したときの地点を地鉄界面(スケールと地鉄との境界)とし、この領域を「表層部」と定義し、当該表層部におけるCr量の最大値を「表層のCr濃度」と定義する(図2(b)を参照)。上記の「表層」部分は、鋼中成分や線材の製造条件などによっても相違するが、少なくとも、ファイヤライトを含んでいる。
EPMA測定装置:日本電子製X線マイクロアナライザー「JXA−8800 RL」を使用
供試材:スケールが付着したままの鋼材を樹脂に埋め込み、圧延方向に垂直な断面(測定面)を研磨剤で鏡面仕上げした後、電導性を保持するため、オスミウムを用いて蒸着を行った。
加速電圧:15kV
照射電流:0.3μA
定量ライン分析:分布の間隔1μm、合計300点を測定
以上、本発明を最も特徴付けるΔCrについて説明した。
本発明のばね用鋼線材は、以下に示すように、スケールの厚さや組成、サブスケールの厚さが適切に制御されていることが好ましく、これにより、酸洗い性が更に高められる。
(スケールの厚さ)
スケールの厚さは、40μm以下であることが好ましい。以下に詳しく説明するように、スケール内に発生した亀裂(クラック)によるスケール剥離を考慮すると、スケールの厚さは、おおむね、5μm以上25μm以下であることがより好ましい。
スケール内には、例えば、圧延後の冷却過程や圧延線材の取扱い中にミクロレベルの亀裂が生成することがある。亀裂が多いほど、地鉄表面からのスケールの剥離が容易になるため、酸洗い性が向上すると考えられている。一般に、亀裂は、スケールの厚さが薄くなるほど、スケール強さが低下して発生し易くなる傾向にあるが、スケールの厚さが薄くなり過ぎると、スケール自体の延性が増加して内部応力が減少するため、亀裂は少なくなる。従って、スケールの厚さは、上記範囲内にあることが好ましい。
(スケールの組成)
スケールの組成は、体積比率で、おおむね、ファイヤライト:2〜10%(より好ましくは3〜7%)、ウスタイト:2〜20%(より好ましくは10〜18%)、マグネタイト:35〜70%(より好ましくは37〜50%)、およびヘマタイト:20〜60%(より好ましくは30〜55%)の範囲を満足することが好ましい。本発明によれば、難剥離性のファイヤライトの比率が少なく、スケール剥離性に優れたウスタイトやマグネタイトの比率が多くなるようにスケール組成が制御されているため、酸洗い性が一層高められる。
(サブスケールの厚さ)
サブスケールの厚さは、2μm以下であることが好ましい。本発明のようにCrを含む鋼材では、前述したように、スケールと地鉄との界面に、Crを主体としたサブスケール(主に、Cr)が生成するが、Crは、酸洗中にCrO(OH)に変化し、酸洗液に対して難溶性の不働体膜を生成するため、酸洗い性が低下する。また、不働体膜が生成すると、地鉄の活性化が低下して水素の発生が抑制されるため、スケールの剥離に長時間を要するようになる。サブスケールの厚さは薄いほど良く、8μm以下であることがより好ましい。
本発明のばね用鋼線材は、更に、粒界酸化層の厚さが以下のように制御されていることが好ましく、これにより、主に、ばねに成形したときの疲労特性が高められる。
(粒界酸化層の深さ)
粒界酸化層の深さ(厚さ)は、10μm以下であることが好ましい。粒界酸化層の深さは薄いほど良く、8μm以下であることがより好ましい。
なお、粒界酸化は、上記のようにばね用鋼線材のみならず、ばねに加工した後(例えば、オーステナイト領域での焼入れの際)に生じる場合もある。ばねに加工したときの粒界酸化層の深さは、15μm以下であることが好ましい。
以上、本発明のばね用鋼線材について説明した。
次に、上記のばね用鋼線材を製造する方法を説明する。
ばね用鋼線材の製造方法は、(ア)加熱工程と、(イ)均熱工程と、(ウ)熱間圧延工程前の脱スケール工程と、(エ)熱間圧延工程とを包含している。本発明では、表層部へのCrの濃化を防止し、粒界酸化を抑制するため、特に、(ア)加熱工程における昇温速度および加熱温度、並びに(イ)均熱工程における均熱時間および均熱温度を細かく制御しており、これにより、表層のCr濃度を著しく低減することが可能になった。後記する実施例に示すように、本発明によれば、SiおよびCrを多量に含む鋼を用いているにもかかわらず、表層部へのCrの濃化が著しく抑えられ、スケールおよびサブスケールの厚さも薄く、粒界酸化層も全く形成されないため、引張強度が約1600MPa以上で、疲労特性に優れたばねを提供することができる。
以下、各工程を詳しく説明する。
(ア)加熱工程
ここでは、おおむね、10℃/分以上の昇温速度で、700℃〜1000℃の温度に加熱する。昇温速度が10℃/分未満の場合、表層部へのCrの濃化を有効に防止することができない。昇温速度は、できるだけ、速い方が良く、15℃/分以上であることが好ましい。また、加熱温度が上記範囲を超えると、Crの濃化が進み、表層のCr量が多くなる。一方、加熱温度が上記範囲を下回ると、鋼材が充分加熱されず、粗圧延ができない。加熱温度は、750℃以上900℃以下であることが好ましい。
(イ)均熱工程
ここでは、おおむね、1050℃〜1250℃(好ましくは1100℃〜1200℃)の温度で、20分間〜60分間(より好ましくは、30分間〜50分間)均熱する。この均熱条件は、表層へのCrの濃化を防止し、粒界酸化の進行を抑えるために決定されたものであり、例えば、均熱温度や均熱時間が上記範囲を超えると、Crの濃化が進み易く、一方、均熱温度や均熱時間が上記範囲を下回ると、粒界酸化が進むようになる。
本発明において、加熱工程の加熱温度と均熱工程の均熱温度とは、必ずしも、一致している必要はない。例えば、後記する実施例では、加熱温度よりも均熱温度が約50〜150℃程度高くなっているが、これは、加熱後均熱前の滞留時間などによって、均熱時の温度が上昇したためである。
(ウ)熱間圧延前の脱スケール工程
本発明のばね用鋼線材は、特に、上記(ア)および(イ)の工程に留意して製造することが必要であって、他の工程、例えば、(ウ)熱間圧延前の脱スケール工程や、後記する(エ)熱間圧延工程は、特に限定されず、通常、用いられる条件を適宜選択することができるが、例えば、以下のように制御することが推奨される。
ここでは、主に、ファイヤライト含有スケールを速やかに除去するため、約80kgf/mm(≒785MPa)〜160kgf/mm(≒1569MPa)、より好ましくは、約100kgf/mm(≒981MPa)〜120kgf/mm(≒1176MPa)の水圧下で、約1秒間〜10秒間(より好ましくは、3秒間〜7秒間)、高水圧シャワーを行うことが好ましい。これにより、後続の熱間圧延工程を速やかに実施することができる。シャワーの水圧が80kgf/mm未満の場合、スケールが厚くなり、熱間圧延中の噛み込みによる表面疵の発生や、表層Cr濃度および表層Ni濃度の増加を招く恐れがある。一方、シャワーの水圧が160kgf/mmを超えると、熱間圧延前のビレットの温度が低下し、圧延が困難になる。
なお、熱間圧延前の脱スケール工程は、上記の高水圧シャワーに限定されず、例えば、ショットブラストなどのメカニカルデスケーリングを行ってもよい。
(エ)熱間圧延工程
ここでは、熱間圧延中に生成したファイヤライトへのCrやNiの濃化を防止し、更に、スケールの組成を適切に制御するため、所定の水冷シャワーを施している。
具体的には、粗圧延を行った後の仕上圧延工程において、シャワーによる冷却を行う。シャワーの水量は、おおむね、100t/hr以上200t/hr以下であることが好ましく、120t/hr以上180t/hr以下であることがより好ましい。シャワーの水量が100t/hr未満では、所望のスケール(ファイヤライト)除去作用、およびΔCuやΔNiの低減作用が有効に発揮されない。一方、シャワーの水量が200t/hrを超えると、鋼材が過剰に冷却され、過冷組織が析出してしまう。
仕上圧延温度は、主に、スケールの厚さや組成を適切に制御するため、おおむね、800℃〜1000℃(より好ましくは、950℃〜980℃)の範囲で行うことが好ましい。
更に、上記と同様の観点から、例えば、仕上圧延の終了後、約700℃の温度域までの冷却速度を4℃/sec〜20℃/sec(より好ましくは、6℃/sec〜15℃/sec)の範囲内に制御することが好ましい。上記温度域における冷却速度が4℃/sec未満の場合、スケール厚さなどが増加し、酸洗い性が低下する。一方、上記の冷却速度が20℃/secを超えると、当該温度域の保持時間が短くなって当該温度域で生成するウスタイトの比率が低下するため、酸洗い性が低下する。
本発明には、上記のばね用鋼線材のほか、上記鋼線材を用いて得られるばねも包含される。本発明によれば、赤スケールと呼ばれるスケール疵も全く発生せず、表面性状に極めて優れており、疲労特性も高められたばねを製造することができる。
ばねを製造する方法は、特に限定されず、通常、用いられる方法を適宜採用することができる。代表的には、例えば、下記のばね工程(a)から(c)によって製造することができる。
(a)酸洗い→表面皮膜処理→引き抜き→焼入れ焼戻し(オイルテンパー)
(b)鉛パテンティング(LP)→酸洗い→表面皮膜処理→引き抜き→オイルテンパー
(c)焼鈍→酸洗い→表面皮膜処理→皮削り(SV)→LP→酸洗い→表面皮膜処理→
引き抜き→オイルテンパー
後記する実施例に示すように、本発明によれば、ΔCrが低く抑えられた圧延線材が得られるため、上記のばね工程(a)から(c)のいずれの方法を用いても、表面性状に極めて優れたばねが得られる。更に、圧延線材における粒界酸化層の厚さも薄く制御されているため、上記のいずれのばね工程を用いても、疲労特性に優れたばねが得られる。なお、圧延線材の粒界酸化層の厚さが本発明の好ましい範囲を外れたとしても、上記のばね工程(c)のように皮削り処理を行えば、ばね加工後の粒界酸化層は薄くなるため、良好な疲労特性が得られることを実験によって確認している。
上記のばね工程(a)から(c)に記載の各処理方法は特に限定されず、通常、実施される方法を適宜選択することができる。例えば、酸洗い処理は、代表的には、60℃〜90℃の温度で5〜25%のHSO中に浸漬するか、または、20℃〜50℃の温度で5〜15%のHCl中に浸漬することによって行われる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳述する。ただし、下記の実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することは、本発明の技術範囲内に包含される。
(ばね用鋼線材の製造)
表1に示す種々の鋼(鋼種A〜G、いずれも、本発明で定める鋼中成分を満足している例であり、残部は鉄および不可避不純物である。)を小型真空溶解炉で150kg溶製し、155cm角のビレットに熱間鍛造した後、下記に示す線材工程1から3の加熱・熱間圧延条件により、直径7.4mm径の鋼線材を作製した。上記の線材工程のうち、線材工程1および2は、本発明で規定する製造条件をすべて満足する本発明例であり、線材工程3は、加熱温度および均熱温度の両方が本発明の範囲よりも高い比較例である。
(線材工程1)
15℃/分の加熱速度で約1000℃まで加熱した後、約1060℃で20分間均熱し、100kgf/mm(≒981MPa)の水圧下で約5秒間、高水圧シャワーを行って脱スケールを実施した。次に、粗圧延を行った後、150t/hrのシャワー冷却を行いながら、仕上圧延を行った(仕上圧延温度950℃)後、仕上圧延終了後、約700℃までの範囲を6℃/secの冷却速度で冷却した。巻取温度は、875℃とした。
(線材工程2)
20℃/分の加熱速度で約980℃まで加熱した後、約1100℃で30分間均熱し、
100kgf/mm(≒981MPa)の水圧下で約5秒間、高水圧シャワーを行って脱スケールを実施した。次に、粗圧延を行った後、150t/hrのシャワー冷却を行いながら、仕上圧延を行った(仕上圧延温度980℃)後、仕上圧延終了後、約700℃までの範囲を6℃/secの冷却速度で冷却した。巻取温度は、875℃とした。
(線材工程3)
18℃/分の加熱速度で約1100℃まで加熱した後、約1300℃で40分間均熱し、100kgf/mm(≒981MPa)の水圧下で約5秒間、高水圧シャワーを行って脱スケールを実施した。次に、粗圧延を行った後、150t/hrのシャワー冷却を行いながら、仕上圧延を行った(仕上圧延温度1050℃)後、仕上圧延終了後、約700℃までの範囲を4℃/secの冷却速度で冷却した。巻取温度は、875℃とした。
このようにして得られた各鋼線材について、前述した方法によってΔCrを測定すると共に、酸洗い性を評価した。
(酸洗い性の評価)
上記の鋼線材を100mm長さに切断し、サンプル数(n)を3として、以下の酸洗いテスト(ビーカテスト)を実施した。ここでは、実操業における酸洗い処理と同様の条件下で実験を行った。
酸溶液:15%の硫酸
地鉄の溶解防止用としてインヒビター(カチオン性アミン誘導体)を
0.5%
鉄分として2価鉄を20g/L
浸漬条件:60℃で10分間
次いで、酸洗後のスケール剥離率を以下のようにして測定した。本実施例では、もともとのスケール付着率(後記するA)に対する、酸洗いを行ったときのスケール剥離率(B)の百分率(B/A×100(%))で「酸洗後のスケール剥離率」を定義した。
(1)A(%)=[(W−W)/W]×100
式中、
Aは、もともとのスケール付着率(鋼線材のスケール付着率)であり、
は、浸漬前の鋼線材(圧延まま、スケール付着あり)の重量(g)、
は、上記の浸漬条件で浸漬した後の鋼線材の重量(g)を意味する。
(2)B(%)=[(W01−W)/(W01)]
Bは、上記条件での酸洗後のスケール剥離率であり、
01は、浸漬前の鋼線材(圧延まま)の重量(g)、
は、酸洗い実験後の重量(g)を意味する。
上式(1)および(2)において、WおよびW01は、いずれも、圧延ままの鋼線材の重量を意味するが、「同じ条件で製造した別々のサンプル(圧延まま鋼線材)の重量」であることを明確にするため、異なる記号を用いた。同じサンプルを用いて、上記のAおよびBを測定することはできないからである。
本発明では、上記のようにして測定されたスケール剥離率が100%のものを酸洗い性に優れる(合格、○)と判定した。
更に、スケール、サブスケール、および粒界酸化層の厚さ、並びにスケールの組成を以下のようにして測定した。これらを測定するに当たっては、上記の鋼線材を樹脂に埋め込み、圧延方向に垂直な断面(測定面)を研磨剤で鏡面仕上げした後、電導性を保持するため、オスミウムを用いて蒸着を行ったものを、供試材として用いた。
(スケールの厚さ)
上記供試材の断面を、Fe−SEM装置(日立製作所製のS−4500電界放射型走査電子顕微鏡)を用いて観察した写真(倍率:3000倍)に基づき、スケールの厚さを測定し、その最大厚さを「スケールの厚さ」とした。
本発明では、上記のようにして測定されたスケールの厚さが40μm以下のものを合格と判定した。
(スケールの組成)
上記供試材の断面について、下記条件のX線回折分析を行い、スケールの組成(体積比率)を測定した。
装置:理学電気製「RAD−RU300」
ターゲット:Cr
ターゲット出力:40kV−200mA
モノクロメータ受光スリット:0.6mm
スリット:発散1°、散乱1°、受光0.15mm
走査速度:2°/分
測定範囲(2θ):15°または110°
サンプリング幅:0.02°/step
(サブスケールの厚さ)
前述した「スケールの厚さ」と同様にして、Fe−SEM写真に基づいてサブスケールの厚さを測定し、その最大厚さを「サブスケールの厚さ」とした。Fe−SEM写真において、サブスケールは、スケールに比べて黒く観察される(前述した図1を参照)ため、両者は、色の濃淡によって区別することができる。
本発明では、上記のようにして測定されたサブスケールの厚さが2μm以下のものを合格と判定した。
(粒界酸化層の厚さ)
上記供試材の断面について、光学顕微鏡(倍率400倍)を用いて粒界酸化層を測定し、その最大深さを「粒界酸化層の厚さ」とした。
本発明では、上記のようにして測定された粒界酸化層の深さが10μm以下のものを合格と判定した。
(ばね用鋼線の製造)
次に、上記の各鋼線材を用い、下記に示すばね工程(a)から(c)のいずれかを行うことにより、直径4.0mmのばね用鋼線(オイルテンパー線)を製造した。下記工程では、引き抜き、鉛パテンティング(LP)、および皮削り(SV)は、すべて、同じ条件で実施した。
(a)表面皮膜処理→引き抜き(乾式伸線)→オイルテンパー(加熱温度:930
℃、焼入油温度:70℃、焼戻温度:450℃、焼戻し後の冷却:水冷)
(b)LP、930℃で加熱→600℃で保持)→酸洗い→表面皮膜処理
→引き抜き→オイルテンパー
(c)焼鈍(660℃で2時間保持)→酸洗い→SV→LP→酸洗い→引き抜き
→オイルテンパー
(粒界酸化層の深さ)
このようにして得られたオイルテンパー線を用い、上記と同様にして粒界酸化層の深さを測定した。本発明では、粒界酸化層の深さが10μm以下のものを合格と判定した。
(疲労寿命(耐割れ性))
上記のオイルテンパー線を切断したサンプル(長さ約650mm)を50本用意し、中村式回転曲げ疲労試験に供した。具体的には、各サンプルの引張強度の45%の負荷応力下で疲労試験(10000万回)を行い、折損が発生した数を測定した。サンプル50本中、折損が発生した比率(折損率)を算出した。
本発明では、上記のようにして測定された折損率が5%以下のものを疲労特性に優れる(合格、○)と判定した。
これらの結果を表2および表3に示す。
表2および表3において、例えば、「A−1」は、表1に示す鋼種Aを用い、線材工程1によって鋼線材を製造した例を意味し、「A−2」は、表1に示す鋼種Aを用い、線材工程2によって鋼線材を製造した例を意味する。他の例も、同様である。なお、表3には、オイルテンパー線を製造したときのばね工程の種類を併記した。例えば、表2および表3において、No.1は、鋼種Aを用い、線材工程1によって鋼線材を製造した後、ばね工程(a)によってオイルテンパー線を製造した例である。他の例も同様である。
表2および表3より、以下のように考察することができる。
まず、No.1〜2、4〜5、7〜8、10、12、14〜15は、ΔCrが本発明の範囲を満足すると共に、スケール及びサブスケールの厚さが、本発明の好ましい範囲を満足する本発明例であり、これらは、表2に示すように、スケール剥離率は100%と、酸洗い性に極めて優れている。更に、上記線材のスケール組成をX線回折法によって調べたところ、いずれも、前述した好ましい範囲に制御されていることを確認している(表には示さず)。
また、上記の線材、および上記の線材を用いて得られたオイルテンパー線には、いずれも、粒界酸化層の生成は全く認められず、疲労特性に優れている。更に、上記オイルテンパー線の引張強度を、JIS Z 2241に基づいて測定したところ、いずれも、約1900〜2100MPa以上の高強度を有していることが確認された(表には示さず)。
上記本発明例のうち、No.1〜2、4〜5、7〜8は、ばね工程(a)により、No.10、12、14、および15は、ばね工程(b)により、それぞれ、オイルテンパー線を作製した例であるが、いずれの方法によっても、疲労特性に優れたばねが得られた。なお、表には示していないが、ばね工程(c)によってオイルテンパー線を作製しても、疲労特性に優れたばねが得られることを、実験によって確認している。
これに対し、No.3、6、9、11、13は、いずれも、加熱温度および均熱温度が本発明の範囲を外れる線材工程3を採用してばねを製造した比較例であり、ΔCrが本発明の範囲を外れているため、スケール剥離率が低下した(表2を参照)。更に、上記比較例を用いて得られた鋼線材およびばねの粒界酸化層深さは、いずれも、本発明の好ましい範囲を外れており、ばねの疲労特性も低下した。
なお、上記の比較例のように、鋼線材の粒界酸化層深さが本発明の範囲を外れていても、前述したばね工程(c)のように皮削り処理を行うと、ばね加工後の粒界酸化層は薄くなり、優れた疲労特性が得られたことを実験によって確認している。
スケールが付着した圧延線材の断面を観察したFe−SEM写真である。 表層のCr濃度を測定するため、所定の供試材をEPMAライン定量分析によって測定した図であり、図2(a)は、Feに関し、X線強度(cps)と表層部からの距離との関係を示す図であり、図2(b)は、Cr濃度(%)と表層部からの距離との関係を示す図である。

Claims (4)

  1. C :0.35〜0.7%(質量%の意味。以下、特に断らない限り、同じ)、
    Si:1.4〜2.5%、
    Mn:0.05〜1.0%、
    Cr:0.5〜1.9%、
    P :0.02%以下(0%を含まない)、
    S :0.02%以下(0%を含まない)、
    残部:Feおよび不可避不純物
    を満足するばね用鋼線材であって、
    表層のCr濃度と鋼中のCr濃度との差が2.50%以下であることを特徴とする酸洗い性に優れたばね用鋼線材。
  2. V :0.07〜0.4%、
    Ti:0.01〜0.1%、および
    Nb:0.01〜0.1%
    よりなる群から選択される少なくとも一種を更に含有する請求項1に記載のばね用鋼線材。
  3. Ni:0.15〜0.8%を更に含有する請求項1または2に記載のばね用鋼線材。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のばね用鋼線材を用いて得られるばね。
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