JP2014101569A - ばね用鋼線材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】フェライト脱炭およびトータル脱炭の存在を極力低減することができ、ショットピーニングやグラインダ研削などの表面処理を施すことなく、良好な特性を発揮するばね用鋼線材を製造するための有用な方法を提供する。
【解決手段】所定の化学成分組成を有する鋼材を加熱炉に入れ、少なくとも750〜850℃の温度域の昇温速度が20℃/分以上となるようにしながら950℃まで加熱し、次いで温度950〜1150℃、時間15分以上、60分以下の均熱をして加熱炉から抽出し、鋼材温度950〜1150℃を維持しながら圧延および巻取りを行い、この巻取り後5℃/秒以上の平均冷却速度で温度700℃以下まで冷却する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ばね用鋼線材を製造するための有用な方法に関し、特にばね用鋼線材の製造時における脱炭の発生を極力低減しつつ、良好な特性を発揮するばね用鋼線材を製造するための方法に関するものである。
近年、自動車の軽量化や高出力化の要請が高まるにつれて、エンジンやサスペンション等に使用される弁ばねや懸架ばね等においても高応力設計が指向されている。そのためこれらのばねには、負荷応力の増大に対応するため、耐疲労性や耐へたり性に優れたものが強く望まれている。
こうしたばね用鋼線材では、ばねの疲労特性の確保や、圧延、熱処理後のショットピーニング工程の省略などの観点から、鋼材のフェライト組織生成に伴う脱炭(フェライト脱炭)やトータル脱炭(全脱炭)の抑制が要求されている。
こうした観点から、これまでにも様々な技術が提案されている。例えば特許文献1および特許文献2には、鋼材成分の制御によって、フェライト脱炭を抑制する方法が提案されている。また、特許文献3および特許文献4には、熱間圧延時の加熱温度や圧延後の冷却速度などを制御することによって、フェライト脱炭を抑制する方法が開示されている。
特開2004−10965号公報 特開2003−105496号公報 特公昭60−37853号公報 特開2002−194432号公報
これまで提案された技術は、いずれもフェライト脱炭を抑制するには有効であるが、特に加熱炉での加熱段階において発生するトータル脱炭(全脱炭)の抑制については何等考慮されていないのが実状である。トータル脱炭深さが大きくなると、フェライト脱炭が生成した場合と同様に、ばねの疲労特性の低下を招くことになる。脱炭生成(フェライト脱炭およびトータル脱炭)により特性劣化を防止するために、圧延および熱処理後にショットピーニングやグラインダ研削などの表面処理をすることが有効であることは知られている。しかしながら、これらの表面処理を施すことは生産性の低下を招くことになる。こうしたことから、ショットピーニングやグラインダ研削などの表面処理を施すことなく、脱炭(フェライト脱炭およびトータル脱炭)を極力低減するための技術の確立が望まれている。
本発明はこうした状況の下になされたものであって、その目的は、フェライト脱炭およびトータル脱炭の存在を極力低減することができ、ショットピーニングやグラインダ研削などの表面処理を施すことなく、良好な特性を発揮するばね用鋼線材を製造するための有用な方法を提供することにある。
上記目的を達成し得た本発明のばね用鋼線材の製造方法とは、C:0.35〜0.65%(「質量%」の意味、以下同じ)、Si:1.4〜3.0%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:0.1〜2.0%、P:0.025%以下(0%を含まない)およびS:0.025%以下(0%を含まない)を夫々含み、残部が鉄および不可避不純物からなる鋼材を加熱炉に入れ、少なくとも750〜850℃の温度域の昇温速度が20℃/分以上となるようにしながら950℃まで加熱し、次いで温度950〜1150℃、時間15分以上、60分以下の均熱をして加熱炉から抽出し、鋼材温度950〜1150℃を維持しながら圧延および巻取りを行い、この巻取り後5℃/秒以上の平均冷却速度で温度700℃以下まで冷却する点に要旨を有するものである。
本発明で対象とする鋼材は、更に(a)Ni:1.0%以下(0%を含まない)および/またはCu:1.0%以下(0%を含まない)、(b)V:0.3%以下(0%を含まない)、Ti:0.1%以下(0%を含まない)、Nb:0.1%以下(0%を含まない)およびZr:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上、(c)Mo:1.0%以下(0%を含まない)、等を含むものであってもよい。
本発明は以上の様に構成されており、熱間圧延前と熱間圧延時における熱処理条件、および熱間圧延後における冷却条件を適切に制御することによって、フェライト脱炭およびトータル脱炭の存在を極力低減することができ、こうして得られたばね用鋼線材ではショットピーニングやグラインダ研削などの表面処理を施さなくても、良好な疲労特性を発揮できるものとなる。
図1は、加熱温度と脱炭速度との関係を示すグラフである。
本発明者らは、熱間圧延前と熱間圧延時の熱処理条件、および熱間圧延後における冷却条件が、フェライト脱炭およびトータル脱炭に与える影響について、様々な角度から検討した。その研究の一環として、鋼材からの炭素拡散に伴うトータル脱炭と、表層フェライト変態に伴うフェライト脱炭との2種類の脱炭に対する脱炭モデル式を構築して計算した。トータル脱炭のモデル式およびフェライト脱炭のモデル式を、夫々下記(1)式および(4)式に示す。尚、脱炭モデル式を構築するに際し、下記の文献1、2を参考にした。
文献1:N Birks and G H meier: Introduction to High Temperature Oxidation of Metals ,1988
文献2:Akie Ichihara and Yoshio Nuri: Sanyo Technical Report Vol.8 No.1 (2001)
Figure 2014101569
但し、x:トータル脱炭速度(μm/秒1/2
1:炭素鋼中の炭素の拡散係数(下記(2)式を代入)
Figure 2014101569
Figure 2014101569
Figure 2014101569
尚、上記数式において、「C」は、鋼材の初期炭素濃度(懸架ばねの場合、代表値として0.54質量%を使用)を意味する。
t :時間(秒)
A:内部の脱炭限界(92%を代入)
kc:内方酸化スケールの成長速度(下記(3)式を代入)
Figure 2014101569
Figure 2014101569
但し、x’:フェライト脱炭速度(μm/秒1/2
:フェライト中の炭素の溶解度(質量%)
t :時間(秒)
2:純鉄中の炭素の拡散係数(下記(5)式を代入)
1:懸架ばねの炭素濃度[0.54質量%(代表値)を代入]
Figure 2014101569
Figure 2014101569
Figure 2014101569
また、フェライト中の炭素の溶解度C(質量%)は、Themo−Calc[Masahiro Nomura et al.: Kobe Steel Engineering Report Vo.56 No.3 (2006)]を用いて計算した値とした。
脱炭モデル式による計算結果を図1に示す。この図1は、加熱温度と脱炭速度との関係を示したものであり、フェライト脱炭やトータル脱炭がどの温度範囲で発生しやすいかを示したものである。この結果から、トータル脱炭は高温、長時間ほど発生しやすく、フェライト脱炭は700〜900℃の圧延相当温度で発生し(特に、750〜850℃で顕著になる)、950℃以上では発生しないことが判明した。尚、図1に示した結果は、ばね用鋼線材の基本成分(本発明で規定する化学成分組成)を有するものを対象としたものであり(後記実施例参照)、この化学成分範囲では、フェライト脱炭やトータル脱炭が発生する温度領域は基本的に変わらない。
この結果に基づき、熱間圧延前と熱間圧延時の熱処理条件、および熱間圧延後における冷却条件を適切に制御すれば、フェライト脱炭およびトータル脱炭が極力抑えられたばね用鋼線材が得られることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明で規定する各要件について説明する。
フェライト脱炭は、750〜850℃の温度域で特に顕著に発生することが実験で確認できた。この結果に基づき、熱間圧延前に鋼材を加熱炉で加熱するに際し、少なくとも750〜850℃(好ましくは770℃以上、830℃以下)の温度域をできるだけ急速に加熱することによって、フェライト脱炭が抑制できる。こうした観点から、少なくとも750〜850℃の温度域での昇温速度が20℃/分以上となるようにしながら950℃まで加熱する必要がある。このときの昇温速度は、好ましくは30℃/分以上であり、より好ましくは40℃/分以上である。但し、この昇温速度が大きくなり過ぎると、ビレットの均一加熱が困難となるので、80℃/分以下とすることが好ましい。
高温に加熱すればするほど、雰囲気中の酸素と、鋼材中の炭素とが化合することによるトータル脱炭が進行することになる(前記図1参照)。そのため加熱炉内での加熱温度(以下、「均熱温度」と呼ぶことがある)は、フェライト脱炭が生じない950℃以上とする必要がある(好ましくは970℃以上、より好ましくは1000℃以上)。しかしながら、この均熱温度が高くなり過ぎると、酸化スケールが厚くなってスケールロスが増大するので、均熱温度は、1150℃以下とする必要がある(好ましくは1120℃以下、より好ましくは1100℃以下)。
また上記のような加熱での時間(均熱時間)は、トータル脱炭低減の観点から60分以下とする必要がある(好ましくは55分以下、より好ましくは50分以下)。しかしながら、均熱時間が短すぎると、圧延時での負荷が大きくなるので、15分以上とする必要がある(好ましくは20分以上、より好ましくは30分以上)。
上記の条件で均熱を行った後(加熱炉から抽出した後)は、フェライト脱炭防止という観点から、圧延温度は950℃以上とし、且つ巻取り温度も950℃以上を維持する必要がある(好ましくは970℃以上、より好ましくは1000℃以上)。また、スケールロス低減、トータル脱炭抑制の観点から、圧延温度、巻取り温度の上限は1150℃以下とする必要がある(好ましくは1120℃以下、より好ましくは1100℃以下)。
上記のような圧延、巻取りを行った後は、冷却工程でのフェライト生成防止(フェライ脱炭抑制)という観点から、できるだけ速やかに(概ね10秒以内程度)冷却を開始し、フェライトが生成しない700℃以下まで5℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する必要がある。このときの平均冷却速度は、好ましくは10℃/秒以上であり、より好ましくは15℃/秒以上である。但し、この平均冷却速度が大きくなり過ぎると、過冷組織が生じやすくなるので、50℃/秒以下(より好ましくは30℃/秒以下)とすることが好ましい。
本発明方法で対象とするばね用鋼線材の化学成分組成については、最終製品(高強度ばね)としての特性を発揮させるために、その化学成分組成を適切に調整する必要がある。その化学成分組成における各成分(元素)による範囲限定理由は次の通りである。
[C:0.35〜0.65%]
Cは、鋼線材の強度に影響する元素であり、その含有量が多いほど高強度が得られる。本発明の鋼線材を高強度懸架ばね等に適用する上で、必要な強度を確保するためには0.35%以上含有させる必要がある。C含有量の好ましい下限は0.40%以上(より好ましくは0.45%以上)である。しかしながら、C含有量が過剰になると耐食性が劣化するため、0.65%以下とする必要がある。C含有量の好ましい上限は0.60%以下(より好ましくは0.55%以下)である。
[Si:1.4〜3.0%]
Siは、ばねに必要な耐へたり性の向上に有効な元素であり、本発明の鋼線材を高強度懸架ばね等に適用するには、1.4%以上含有させる必要がある。Si含有量の好ましい下限は1.6%以上(より好ましくは1.8%以上)である。しかしながら、Si含有量が過剰になると、延性・靱性を低下させる他、表面の脱炭が増加して疲労特性を低下させるため、3.0%以下とする必要がある。Si含有量の好ましい上限は2.5%以下(より好ましくは2.2%以下)である。
[Mn:0.1〜1.0%]
Mnは、靭性劣化元素であるSをMnSとして固定し、Sを無害化する上で有用な元素であり、このような効果を十分に発揮させるためには、0.1%以上含有させる必要がある。Mn含有量の好ましい下限は0.15%以上(より好ましくは0.2%以上)である。しかしながら、Mn含有量が過剰になると、鋳造時の凝固偏析が顕著になり、偏析部で破壊が生じやすくなるため、1.0%以下とする必要がある。Mn含有量の好ましい上限は0.85%以下(より好ましくは0.75%以下)である。
[Cr:0.1〜2.0%]
Crは、耐食性向上に寄与する元素であり、このような効果を発揮させるためには、0.1%以上含有させる必要がある。Cr含有量の好ましい下限は0.15%以上(より好ましくは0.2%以上)である。しかしながら、Crの含有量が過剰になると、粗大なCr系炭化物が生成し、靱性が低下するため、その含有量は2.0%以下とする必要がある。Cr含有量の好ましい上限は1.8%以下(より好ましくは1.6%以下)である。
[P:0.025%以下(0%を含まない)]
Pは、粒界偏析によって靭性を低下させる不可避不純物であるため、少ないほど良い。本発明では高強度懸架ばねとしての特性を確保するという観点から、その上限を0.025%以下とした。P含有量の好ましい上限は0.020%以下(より好ましくは0.015%以下)である。
[S:0.025%以下(0%を含まない)]
Sは、粒界脆化や粗大な硫化物形成によって靭性を低下させる不可避不純物であるため、少ないほど良い。本発明では高強度懸架ばねとしての特性を確保するという観点から、その上限を0.025%以下とした。S含有量の好ましい上限は0.020%以下(より好ましくは0.015%以下)である。
本発明の鋼線材における基本成分は上記の通りであり、残部は、鉄および不可避不純物である。この不可避不純物としては、例えば鉄原料(スクラップを含む)、副原料などの資材、製造設備などの状況によって不可避的に鋼線材中に導入される元素が挙げられる。こうした元素としては、例えばAl,O,N等が挙げられるが、これらの元素は以下のように制御することが好ましい。
[Al:0.1%以下]
Alは、脱炭を促進する元素であるため、できるだけ少ない方が良い。こうした観点から、Al含有量は0.1%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.05%以下であり、更に好ましくは0.03%以下である。
[O:0.0030%以下]
Oは、粗大酸化物を形成して伸線加工性の劣化をもたらすため、できるだけ少ない方がよく、こうした観点から、O含有量は0.0030%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.0020%以下であり、更に好ましくは0.0015%以下である。
[N:0.006%以下]
Nが固溶状態で存在すると、伸線加工性を劣化させるため、できるだけ少ない方がよく、こうした観点から、N含有量は0.006%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.004%以下であり、更に好ましくは0.003%以下である。
本発明で対象とする鋼材には、必要によって(a)Ni:1.0%以下(0%を含まない)および/またはCu:1.0%以下(0%を含まない)、(b)V:0.3%以下(0%を含まない)、Ti:0.1%以下(0%を含まない)、Nb:0.1%以下(0%を含まない)およびZr:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上、(c)Mo:1.0%以下(0%を含まない)、等を含有させてもよく、含有させる元素の種類に応じて、鋼線材の特性が更に改善される。これらの元素の好ましい範囲設定理由は下記の通りである。
[Ni:1.0%以下(0%を含まない)および/またはCu:1.0%以下(0%を含まない)]
NiおよびCuは、耐食性向上元素として有用な元素である。しかしながら、過剰に含有させると、残留オーステナイトの増加によって、最終製品のばねの特性(引張強さ)が低下する。こうした観点から、いずれも1.0%以下とすることが好ましい。より好ましくはNiで0.7%以下(更に好ましくは0.6%以下)であり、Cuで0.8%以下(更に好ましくは0.6%以下)である。尚、これらの元素を含有させるときの好ましい下限は、Niで0.2%以上(より好ましくは0.3%以上)であり、Cuで0.1%以上(より好ましくは0.2%以上)である。
[V:0.3%以下(0%を含まない)、Ti:0.1%以下(0%を含まない)、Nb:0.1%以下(0%を含まない)およびZr:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上]
V、Ti、NbおよびZrは、いずれも炭・窒化物(炭化物、窒化物および炭窒化物)形成元素であり、微細組織の生成によって靭性を向上させる効果がある。しかしながら、過剰に含有させると炭・窒化物が粗大化し、靭性が劣化する。こうした観点からして、これらの元素を含有するときは、Vで0.3%以下、Ti、NbおよびZrで0.1%以下とすることが好ましい。より好ましくは、Vで0.2%以下、Ti、NbおよびZrで0.07%以下(更に好ましくはNbおよびZrで0.05%以下)である。尚、上記の効果を有効に発揮させるためには、Vで0.12%以上であり、Ti、NbおよびZrで0.01%以上(より好ましくはTiで0.05%以上)である。
[Mo:1.0%以下(0%を含まない)]
Moは、ばね用鋼の強度確保に有効である他、Pの粒界偏析による靭性低下などの悪影響を低減し、強靭化に有効な元素である。しかしながら、Moは凝固偏析しやすい元素であり、過剰に含有させると偏析部で破壊する虞がある。こうした観点からMo含有量は、1.0%以下とすることが好ましく、より好ましい上限は0.7%以下(更に好ましくは0.5%以下)である。尚、上記の効果を有効に発揮させるためのMo含有量の好ましい下限は、0.1%以上であり、より好ましくは0.2%以上(更に好ましくは0.3%以上)である。
本発明の製造方法によって得られたばね用鋼線材は、熱間圧延および巻取り後を想定したものであるが、このばね用鋼線材はその後ばね加工されることによって、高強度ばねに成形されるものであり、脱炭が低減されたものとなることによって良好な特性を発揮するばねが得られる。
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
下記表1に示す化学成分組成の鋼材を溶製し、下記表2に示す製造条件(750〜850℃での昇温速度、均熱温度、均熱時間、圧延温度、巻取り温度)で線材(直径:12mm)を製造した。得られた線材(熱間圧延線材コイル)について、下記の方法によってフェライト脱炭およびトータル脱炭の生成状況について評価した。また、鋼線材の表層における炭素割合を評価した。これらの結果を、圧延材特性として下記表3に示す。
Figure 2014101569
Figure 2014101569
[脱炭の生成状況の評価]
線材コイルのトップ部(圧延始め)およびボトム部(圧延終わり)から、それぞれ5巻き目を寸断した。トップ側およびボトム側の1巻きを、それぞれ8等分に分割し(1本当たり20mm)で、合計8本の線材片(サンプル)を作製した。このサンプルを、切断面(横断面)が表面に出るようにしながら樹脂に埋め込み、エメリー紙およびダイヤモンド粒子を用いて湿式研磨し、次いでピクラール液でエッチングして、合計8個の脱炭層深さ測定用試験片を作製した。これら試験片を光学顕微鏡にて観察倍率200倍で観察し、表層のトータル脱炭層深さおよびフェライト脱炭層深さを測定した。この測定法は、JIS G 0558の顕微鏡による測定法に従った。8個のサンプルの中で、トータル脱炭層深さおよびフェライト脱炭層深さの最大値を評価した。評価基準は、トータル脱炭層深さが0.07mm以下の場合を良好、それより深い場合を不良とした。またフェライト脱炭層深さは、0.01μm以下の場合を合格(「○」印)、それよりも深い場合を不合格(「×」印)とした。
[鋼線材の表層における炭素割合]
鋼線材の地鉄表層から0.03mm位置の部分(表層)について、炭素含有量を測定し、鋼材全体の炭素含有量に対する割合(質量%)を測定した。この値が大きい方が、脱炭が抑制されていることを示しており、80%以上を合格と評価した。
Figure 2014101569
この結果から、次のように考察できる。試験No.1〜12のものでは、製造条件が適正に制御されており、トータル脱炭層およびフェライト脱炭が有効に抑制されていることが分かる。
これに対し、試験No.13〜20のものは、本発明で規定するいずれかの要件を満足しない製造条件で製造されたものであり、いずれかの特性が劣化している。即ち、試験No.13、14のものは、750〜850℃での昇温速度が遅い例であり、フェライト脱炭が抑制されず、トータル脱炭も深くなっており、鋼線材の表層における炭素割合が小さくなっている。
試験No.15のものは、加熱炉内での加熱温度(均熱温度)が低くなっている例であり、フェライト脱炭が抑制されず、トータル脱炭も深くなっており、鋼線材の表層における炭素割合が小さくなっている。試験No.16のものは、均熱時間が長い例であり、フェライト脱炭は抑制されているが、トータル脱炭が深くなっており、鋼線材の表層における炭素割合も小さくなっている。
試験No.17のものは、加熱炉内での加熱温度(均熱温度)が高くなっている例であり、フェライト脱炭は抑制されているが、トータル脱炭が深くなっており、鋼線材の表層における炭素割合も小さくなっている。試験No.18のものは、圧延温度および巻取り温度が低くなっている例であり、フェライト脱炭が抑制されず、トータル脱炭も深くなっており、鋼線材の表層における炭素割合が小さくなっている。
試験No.19のものは、圧延温度および巻取り温度が高くなっている例であり、フェライト脱炭は抑制されているが、トータル脱炭が深くなっており、鋼線材の表層における炭素割合も小さくなっている。試験No.20のものは、圧延および巻取り後の冷却速度が小さくなっている例であり、フェライト脱炭が抑制されず、トータル脱炭も深くなっており、鋼線材の表層における炭素割合が小さくなっている。

Claims (4)

  1. C:0.35〜0.65%(「質量%」の意味、以下同じ)、Si:1.4〜3.0%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:0.1〜2.0%、P:0.025%以下(0%を含まない)およびS:0.025%以下(0%を含まない)を夫々含み、残部が鉄および不可避不純物からなる鋼材を加熱炉に入れ、少なくとも750〜850℃の温度域の昇温速度が20℃/分以上となるようにしながら950℃まで加熱し、次いで温度950〜1150℃、時間15分以上、60分以下の均熱をして加熱炉から抽出し、鋼材温度950〜1150℃を維持しながら圧延および巻取りを行い、この巻取り後5℃/秒以上の平均冷却速度で温度700℃以下まで冷却することを特徴とするばね用鋼線材の製造方法。
  2. 前記鋼材は、更にNi:1.0%以下(0%を含まない)および/またはCu:1.0%以下(0%を含まない)を含むものである請求項1に記載のばね用鋼線材の製造方法。
  3. 前記鋼材は、V:0.3%以下(0%を含まない)、Ti:0.1%以下(0%を含まない)、Nb:0.1%以下(0%を含まない)およびZr:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含むものである請求項1または2に記載のばね用鋼線材の製造方法。
  4. 前記鋼材は、更にMo:1.0%以下(0%を含まない)を含むものである請求項1〜3のいずれかに記載のばね用鋼線材の製造方法。
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