JP2007137764A - 誘電体磁器組成物およびそれを用いた誘電体共振器、非放射性誘電体線路並びに高周波用配線基板 - Google Patents

誘電体磁器組成物およびそれを用いた誘電体共振器、非放射性誘電体線路並びに高周波用配線基板 Download PDF

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Abstract

【課題】 低い誘電率を示し、かつ、60GHzもの高い高周波帯域においても、高いQ値を有する誘電体磁器組成物およびそれを用いた誘電体共振器、非放射性誘電体線路並びに高周波用配線基板を提供すること。
【解決手段】 Mg,Al,Siの複合酸化物を主成分とし、前記複合酸化物のモル比組成式がxMgO・yAl23・zSiO2(但し、x=10〜40モル%、y=10〜40モル%、z=20〜80モル%、x+y+z=100モル%を満足する)で表され、希土類元素を酸化物換算で0.1〜15重量部含み、主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2の粒界に、MgO・Al23と一般式RE23・wSiO2(式中、REは希土類元素であり、wは1または2である)で表される結晶相が析出しており、ガラス相が析出していない。
【選択図】 図1

Description

本発明は、例えば、マイクロ波、ミリ波等の高周波帯域で用いられる高周波用の誘電体磁器組成物に係わり、例えば、マイクロ波集積回路、誘電体線路等を構成する材料として有用な誘電体磁器組成物およびそれを用いた誘電体共振器、非放射性誘電体線路並びに高周波用配線基板に関する。
従来、マイクロ波集積回路、ミリ波集積回路等の高周波回路では、共振用の誘電体磁器を支持部材を介して、基板上に固定した誘電体共振器が採用される場合があった。このような誘電体共振器を用いたものとして、例えば、誘電体共振器制御型マイクロ波発振器は、図2に示すように、誘電体磁器11を支持部材12を介して基板13に取り付け、これらを金属ケース15に収納した構造であり、誘電体磁器11の外部に漏れ出る電磁界Hを利用して基板13に形成したストリップライン14に電磁結合させることができる。
このような高周波回路においては、誘電体磁器11の電界が、支持部材12を介して漏れるのを制御することによって、無負荷Qの高い共振系が構成できるため、支持部材12には比誘電率が低く誘電体損失(tanδ)が小さい、即ちQ値が高い材料を使用する必要がある。このため、従来、支持部材12の材料としては比誘電率が約7であり、測定周波数10GHzでのQ値が約15000のフォルステライト(2MgO・SiO2)セラミックスが用いられ、また、基板13の材料としては、主として比誘電率が約10であり、測定周波数10GHzでのQ値が20000以上のアルミナセラミックスが用いられてきた(例えば、下記の特許文献1参照)。
また、従来の誘電体材料からなる高周波信号伝送用の線路を有する非放射性誘電体線路(Non Radiative Dielectric Waveguide、以下、NRDガイドという)の基本構成を図3に示す。なお、図3において、上側の平行平板導体23は一部を切り欠いて示している。この図において、NRDガイドS1は、使用周波数において空気中を伝搬するミリ波等の高周波信号(電磁波)の波長λに対して、間隔がλ/2以下である一対の平行平板導体21,23の間に誘電体線路22を介装することにより、その誘電体線路22に沿ってその内部を電磁波が伝搬でき、放射波は平行平板導体21,23の遮断効果によって抑制される。
このようなNRDガイドS1の電磁波伝搬モードとしてはLSM(Longitudinal Section Magnetic)モード、LSE(Longitudinal Section Electric)モードの2種類があることが知られているが、損失の小さいLSMモードが一般的に使用されている。
また、誘電体線路22は曲線状にしたものを使用することもでき、この場合電磁波を容易に曲線的に伝搬させることが可能となってミリ波集積回路等の小型化や自由度の高い回路設計ができるという利点を有する。
このような、NRDガイドS1の誘電体線路22の材料としては、低誘電率であるとともに加工が容易である等の理由で、テフロン(登録商標)やポリスチレンなどの比誘電率が2〜4の樹脂材料が使用されてきた。
また、従来、マイクロ波、ミリ波等の高周波帯域で用いられる高周波回路においては、高周波信号の伝送特性をよくするために基板材料として比誘電率が低く誘電体損失(tanδ)が小さい(Q値が高い)材料を使用する必要があり、主として比誘電率が約10、測定周波数10GHzでのQ値が20000以上のアルミナセラミックスが用いられてきた。
一方、比誘電率が低く、熱膨張率も低い材料として、コージェライト(2MgO・2Al23・5SiO2)セラミックスが知られている。しかしながら、これは焼成温度範囲が極めて狭いことから緻密な焼結体を安定に作製するのが困難であった。そこで、焼成温度範囲を広くして緻密な焼結体を安定に作製する目的で、原料にガラス材を添加して焼成する方法が提案されている。これにより、比誘電率が4〜6、測定周波数10GHzでのQ値が1000程度のガラスセラミックスが得られる(例えば、下記の特許文献2参照)。
特開昭62−103904号公報 特開昭61−234128号公報 特開平9−48661号公報
しかしながら、従来の誘電体共振器において、基板13に用いられるアルミナセラミックスや支持部材12に用いられるフォルステライトセラミックスの比誘電率は、それぞれ約10、約7であり、近年における高周波帯域の誘電体共振器の普及により、さらに低い比誘電率の材料が求められていた。
また、低誘電率材料として用いられているガラスセラミックスは、比誘電率が約4〜6と低いもののQ値が10GHzで1000程度と低く、近年における高周波帯域の誘電体共振器の普及に伴い、より高いQ値の低誘電率材料が求められていた。
さらに、誘電体共振器の基板13に主として使用されているアルミナセラミックスは、比誘電率が約10と比較的高いため、高インピーダンスのストリップラインを形成しようとすると、ライン幅を1μm以下と小さくする必要があり、ラインの断線が生じたり、相対的なライン幅のバラツキが大きくなり、上記の誘電体共振器を用いてマイクロ波集積回路を構成した場合、その不良率が増大するという問題点もあった。
一方、この種の基板13におけるストリップラインのインピーダンスは、基板13の厚さが一定であれば、その比誘電率およびストリップラインの幅にそれぞれ反比例するため、ストリップラインの幅を小さくする代わりに比誘電率の低い材料を使用することによってもインピーダンスを高めることができる。このため、より低比誘電率の材料が求められていた。
このような課題を解決するために、本出願人は金属元素としてMg,Al,Siからなる複合酸化物であって、各金属元素の酸化物によるモル比組成式をxMgO・yAl23・zSiO2としたとき、10≦x≦40、10≦y≦40、20≦z≦80、x+y+z=100を満足し、比誘電率が6以下、かつ測定周波数10GHzでのQ値が2000以上である高周波用誘電体磁器組成物および誘電体共振器を提案した(上記の特許文献3参照)。
この高周波用誘電体磁器組成物は、アルミナセラミックスやフォルステライトセラミックスよりも低い比誘電率を有し、かつガラスセラミックスよりも高いQ値を有する優れたものであった。しかしながら、この高周波用誘電体磁器組成物は、焼成温度範囲が10℃程度と小さく安定に作製することが困難であった。よって、焼成温度範囲がより大きくて安定に作製できるとともに高い周波数においても高いQ値が得られる誘電体磁器組成物が求められていた。
また、従来のNRDガイドにおいて、テフロン(登録商標)やポリスチレン等の比誘電率2〜4の樹脂材料からなる誘電体線路22でNRDガイドS1を構成する場合、誘電体線路22を曲線状にすると、誘電体線路22の比誘電率が低すぎるために誘電体線路22の曲線部での曲げ損失や、誘電体線路22同士の接合部での損失が大きくなるという問題があった。このため、誘電体線路22に急峻な曲線部を形成することができず、その結果、NRDガイドS1を小型化できないという問題があった。一方、誘電体線路に穏やかな曲線部を形成した場合にも、高周波信号の損失を抑制するために曲線部の曲率を精密に決定する必要があった。さらに、曲げ損失が小さい状態で使用できる周波数範囲が、例えば60GHz付近では1〜2GHzの幅しかなく十分ではなかった。
これは、比誘電率が2〜4と低い誘電体を用いてNRDガイドS1を構成した場合、LSMモードとLSEモードの分散特性において、2つのモードの分散曲線が3GHz程度しか離れていないため、LSMモードの電磁波の一部がLSEモードに変換されてしまうためであった。
さらに、テフロン(登録商標)やポリスチレン等の樹脂材料からなる誘電体線路22でNRDガイドS1を構成すると、誘電体線路22と平行平板導体との接着が困難であり、振動や熱膨張差によって誘電体線路22が位置ずれを生じ、正常に機能しなくなるという問題点をも有していた。
一方、誘電体線路22の材料としてアルミナ等の比誘電率が10程度のセラミックスを用いたものもあるが、比誘電率が高いために50GHz以上の高周波で使用するためには、誘電体線路の幅を非常に細くしなければならず、加工性および実装の作業性、即ち製造上実用的でなかった。
また、周波数がより高周波となると誘電体線路の断面もより小さくなる。例えば、断面のサイズが1mm×2mm程度で長さが10mm程度の誘電体線路を磁器で形成し配置する場合、製造時等に誘電体線路を取り扱う際にきわめて折損しやすくなるという問題があった。その上、誘電体線路を一対の平行平板導体で挟持する必要があるが、この平行平板導体で誘電体線路を締め付ける際に破損するという問題があった。
また、誘電体線路22の材料に低誘電率材料として用いられているガラスセラミックスを用いた場合、ガラスセラミックスの比誘電率は4〜6と樹脂材料よりも高く、アルミナセラミックスよりも低く、適度な比誘電率を有しているものの、Q値が10GHzで1000程度と低く、より高いQ値の低誘電率材料が求められていた。
また、従来の高周波用配線基板において、絶縁基板31の材料にアルミナセラミックスを用いると、10GHzでのQ値は20000以上と高いものの、比誘電率が約10と比較的高いため、たとえば図4に示すような高インピーダンスのマイクロストリップラインとしての配線層33を形成しようとすると、ライン幅が小さくなりすぎて断線が生じたり、相対的なライン幅のバラツキが大きくなりマイクロ波集積回路の不良率が増大するという問題があった。またライン間が狭くなることによりクロストークが発生するという問題もあった。
一方、この種の絶縁基板31における配線層33のインピーダンスは絶縁基板31の厚さが一定であれば、その比誘電率および配線層33の幅にそれぞれ反比例するため、ライン幅を小さくする代わりに、比誘電率の低い材料を使用することによってもインピーダンスを高めることができ、このため、より低誘電率の材料が求められていた。さらに、マイクロ波からミリ波へと伝送周波数がより高周波化した場合、Q値が低いと急激に伝送損失が大きくなることから、よりQ値が高い低損失な材料が求められていた。
従って、本発明は上記問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、低い誘電率を示し、かつ、60GHzもの高い高周波帯域においても高いQ値を有する誘電体磁器組成物およびそれを用いた誘電体共振器、非放射性誘電体線路並びに高周波用配線基板を提供することにある。
本発明の誘電体磁器組成物は、Mg,Al,Siの複合酸化物を主成分とし、前記複合酸化物のモル比組成式がxMgO・yAl23・zSiO2(但し、x=10〜40モル%、y=10〜40モル%、z=20〜80モル%、x+y+z=100モル%を満足する)で表され、希土類元素を酸化物換算で0.1〜15重量部含み、主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2の粒界に、MgO・Al23と一般式RE23・wSiO2(式中、REは希土類元素であり、wは1または2である)で表される結晶相が析出しており、ガラス相が析出していないことを特徴とする。
本発明の誘電体磁器組成物は、希土類元素を酸化物換算で0.1〜15重量部含み、主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2の粒界に、MgO・Al23と一般式RE23・wSiO2(式中、REは希土類元素であり、wは1または2である)で表される結晶相が析出しており、ガラス相が析出していないことから、従来の誘電体磁器組成物に比較して、特性が大きく劣化することなく、焼成条件が改善される。即ち、主結晶相としての2MgO・2Al23・5SiO2の粒界に、焼結助剤としてのMgO・Al23とRE23・wSiO2の結晶相が析出しているため、焼結性が向上して緻密で脆性が改善された良好な焼結体となるとともに、焼成温度幅が従来の10℃程度であったものが100℃程度まで向上し、また高いQ値と低い比誘電率とをともに有する優れたものとなる。また、測定周波数が60GHzの高周波帯域においても1000以上のQ値を有し、高周波帯域での使用に適したものとなる。
本発明の誘電体磁器組成物において、好ましくは、前記主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2のβ相のX線回折による(241)のピーク強度と(222)のピーク強度との比をβp(241)/βp(222)としたときに、0.8≦βp(241)/βp(222)≦1.3であることを特徴とする。
本発明の誘電体磁器組成物は、主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2のβ相のX線回折による(241)のピーク強度と(222)のピーク強度との比をβp(241)/βp(222)としたときに、0.8≦βp(241)/βp(222)≦1.3としたことから、主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2のα相からβ相への相変化が完全に進行していない状態となり、その結果、より低い誘電率とより高いQ値を有するものとなる。
本発明の誘電体磁器組成物において、好ましくは、前記RE23・wSiO2で表される結晶相は、気孔率が0.1体積%以下であることを特徴とする。
本発明の誘電体磁器組成物は、RE23・wSiO2で表される結晶相の気孔率を0.1体積%以下としたことから、主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2のα相からβ相への相変化の状態が適度なものとなり、より低比誘電率でより高Q値なものとなる。
また、緻密な焼結体となる。
本発明の誘電体磁器組成物において、好ましくは、アルカリ金属元素の含有量が酸化物換算で0.1重量部以下であることを特徴とする。
本発明の誘電体磁器組成物は、アルカリ金属元素の含有量を酸化物換算で0.1重量部以下としたことから、2MgO・2Al23・5SiO2のα相からβ相への相変化の速度を遅くすることができ、低い誘電率と高いQ値を有する誘電体磁器組成物をより安定に作製可能なものとなる。
本発明の誘電体磁器組成物において、好ましくは、10〜40℃における熱膨張率が2×10-6/℃以下であるとともに密度が2.3g/cm3以上であることを特徴とする。
本発明の誘電体磁器組成物は、10〜40℃における熱膨張率が2×10-6/℃以下であるとともに密度が2.3g/cm3以上であるものとしたことから、主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2のα相からβ相への相変化が完全に進行していない適度な状態となり、低比誘電率で高Q値なものになるとともに緻密で熱膨張率が小さく寸法精度の高いものになる。
本発明の誘電体磁器組成物において、好ましくは、比誘電率が6以下であるとともに測定周波数60GHzでのQ値が1000以上であることを特徴とする。
本発明の電体磁器組成物は、比誘電率が6以下であるとともに測定周波数60GHzでのQ値が1000以上であるものとしたことから、低誘電率であるとともに60GHzの高周波帯域においても高いQ値を有し、この組成物を用いて誘電体共振器や非放射性誘電体線路、高周波用配線基板を構成した場合、高周波特性の優れたものとなる。
本発明の誘電体共振器は、基板上に、支持部材を介して該支持部材よりも比誘電率が大きい誘電体磁器を固定してなる誘電体共振器において、前記基板および/または支持部材が上記の誘電体磁器組成物からなることを特徴とする。
本発明の誘電体共振器は、基板および/または支持部材が上記の誘電体磁器組成物からなることから、60GHzの高周波帯域においても特性の優れたものとなり、近年における高周波帯域用にも十分対応できる。また、基板を低比誘電率のものとすることで、ストリップラインの線幅を細線化しなくとも高周波回路を形成することができる。
本発明の非放射性誘電体線路は、高周波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置した平行平板導体間に、上記の誘電体磁器組成物からなる前記高周波信号伝送用の誘電体線路を設けたことを特徴とする。
本発明の非放射性誘電体線路は、上記の誘電体磁器組成物からなる前記高周波信号伝送用の誘電体線路を設けたことから、LSMモードの電磁波のLSEモードへの変換による損失を低減することができる。また、60GHzの高周波帯域においても特性が優れ、誘電体線路の幅を非常に細くする必要もない。
本発明の高周波用配線基板は、絶縁基板の表面および/または内部に、1GHz以上の高周波信号を伝送させるための配線層を配設してなる高周波用配線基板において、前記絶縁基板は、上記の誘電体磁器組成物からなることを特徴とする。
本発明の高周波用配線基板は、絶縁基板が上記の誘電体磁器組成物からなるものとすることにより、60GHzの高周波帯域においても高周波伝送特性に優れたものとなり、近年における高周波帯域用にも十分対応できる。また、絶縁基板を低比誘電率のものとすることで、マイクロストリップラインとしての配線層の線幅を細線化しなくとも高周波回路を形成することができる。
本発明の誘電体磁器組成物は、Mg,Al,Siの複合酸化物を主成分とし、複合酸化物のモル比組成式がxMgO・yAl23・zSiO2(但し、x=10〜40モル%、y=10〜40モル%、z=20〜80モル%、x+y+z=100モル%を満足する)で表され、希土類元素を酸化物換算で0.1〜15重量部含み、主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2の粒界に、MgO・Al23と一般式RE23・wSiO2(式中、REは希土類元素であり、wは1または2である)で表される結晶相が析出しており、ガラス相が析出していないことから、従来のコージェライトセラミックスに比較して、特性が大きく劣化することなく、焼成条件が改善される。即ち、主結晶相としての2MgO・2Al23・5SiO2の粒界に、焼結助剤としてのMgO・Al23とRE23・wSiO2の結晶相が析出しているため、焼結性が向上して緻密で脆性が改善された良好な焼結体となるとともに、焼成温度幅が従来の10℃程度であったものが100℃程度まで向上し、また高いQ値と低い比誘電率とをともに有する優れたものとなる。また、測定周波数が60GHzの高周波帯域においても1000以上のQ値を有し、高周波帯域での使用に適したものとなる。
本発明の誘電体磁器組成物は、上記構成において、主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2のβ相のX線回折による(241)のピーク強度と(222)のピーク強度との比をβp(241)/βp(222)としたときに、0.8≦βp(241)/βp(222)≦1.3としたことから、主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2のα相からβ相への相変化が完全に進行していない状態となり、その結果、より低い誘電率とより高いQ値を有するものとなる。
本発明の誘電体磁器組成物は、上記構成において、前記RE23・wSiO2で表される結晶相の気孔率を0.1体積%以下としたことから、主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2のα相からβ相への相変化の状態を適度なものとなり、より低比誘電率でより高Q値なものとなる。また、緻密な焼結体となる。
本発明の誘電体磁器組成物は、上記構成において、アルカリ金属元素の含有量を酸化物換算で0.1重量部以下としたことから、2MgO・2Al23・5SiO2のα相からβ相への相変化の速度を遅くすることができ、低い誘電率と高いQ値を有する誘電体磁器組成物をより安定に作製可能なものとなる。
本発明の誘電体磁器組成物は、上記構成において、10〜40℃における熱膨張率が2×10-6/℃以下であるとともに密度が2.3g/cm3以上であるものとしたことから、主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2のα相からβ相への相変化が完全に進行していない適度な状態となり、低比誘電率で高Q値なものとなるとともに緻密で熱膨張率の小さな寸法精度の高いものとなる。
本発明の電体磁器組成物は、上記構成において、比誘電率が6以下であるとともに測定周波数60GHzでのQ値が1000以上であるものとしたことから、低誘電率であるとともに60GHzの高周波帯域においても高いQ値を有し、この組成物を用いて誘電体共振器や非放射性誘電体線路、高周波用配線基板を構成した場合、高周波特性の優れたものとなる。
本発明の誘電体共振器は、基板上に、支持部材を介して該支持部材よりも比誘電率が大きい誘電体磁器を固定してなる誘電体共振器において、基板および/または支持部材が上記の誘電体磁器組成物からなることから、60GHzの高周波帯域においても特性の優れたものとなり、近年における高周波帯域用にも十分対応できる。また、基板を低比誘電率のものとすることで、ストリップラインの線幅を細線化しなくとも高周波回路を形成することができる。
本発明の非放射性誘電体線路は、高周波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置した平行平板導体間に、上記の誘電体磁器組成物からなる高周波信号伝送用の誘電体線路を設けたことから、LSMモードの電磁波のLSEモードへの変換による損失を低減することができる。また、60GHzの高周波帯域においても特性が優れ、誘電体線路の幅を非常に細くする必要もない。
本発明の高周波用配線基板は、絶縁基板の表面および/または内部に、1GHz以上の高周波信号を伝送させるための配線層を配設してなる高周波用配線基板において、絶縁基板は、上記の誘電体磁器組成物からなるものとすることにより、60GHzの高周波帯域においても高周波伝送特性に優れたものとなり、近年における高周波帯域用にも十分対応できる。また、絶縁基板を低比誘電率のものとすることで、マイクロストリップラインとしての配線層の線幅を細線化しなくとも高周波回路を形成することができる。
本発明の誘電体磁器組成物およびそれを用いた誘電体共振器、比放射性誘電体線路並びに高周波用配線基板を以下に詳細に説明する。
本発明の誘電体磁器組成物は、Mg,Al,Siの複合酸化物を主成分とし、複合酸化物のモル比組成式がxMgO・yAl23・zSiO2(但し、x=10〜40モル%、y=10〜40モル%、z=20〜80モル%、x+y+z=100モル%を満足する)で表され、希土類元素を酸化物換算で0.1〜15重量部含み、主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2の粒界に、MgO・Al23と一般式RE23・wSiO2(式中、REは希土類元素であり、wは1または2である)で表される結晶相が析出しており、ガラス相が析出していない。
誘電体磁器組成物の主成分組成を前記範囲に限定したのは、次の理由による。即ち、MgOのモル百分率を示すxを10〜40モル%としたのは10モル%未満では良好な焼結体が得られず密度が低下し、Q値が低くなり、また40モル%を超えると熱膨張率が大きくなるとともに比誘電率が6よりも高くなるからである。特にMgO量を示すxは、熱膨張率を1.5×10-6/℃以下にするという観点から15〜35モル%が望ましい。その場合、Q値が2000以上となり、その向上が著しい。
また、Al23のモル百分率を示すyを10〜40モル%としたのは、Al23量yが10モル%よりも小さい場合には、良好な焼結体が得られず密度が劣化してQ値が低くなり、また40モル%を超えると比熱膨張率が大きくなるとともに比誘電率が6よりも高くなるからである。Al23量を示すyは、熱膨張率を1.5×10-6/℃以下にするという点から17〜35モル%が望ましい。その場合、Q値が2000以上となり、その向上が著しい。
SiO2のモル百分率zを20≦z≦80モル%としたのは、zが20モル%よりも小さい場合には熱膨張率が大きくなって比誘電率も6より高くなり、また80モル%を超えると良好な焼結体が得られず密度が低下し、Q値が低下するからである。SiO2量を示すzは熱膨張率を1.5×10-6/℃以下とするという点から30〜65モル%が望ましい。その場合、Q値が2000以上となり、その向上が著しい。
従って、Q値を2000以上とするためには、x=15〜35モル%、y=17〜35モル%、z=30〜70モル%とするのが望ましく、特にコージェライト組成、即ちx=22.2、y=22.2、z=55.6であることがよい。
また、焼結体(セラミックス)である誘電体磁器組成物は、主結晶相がコージェライトであり、他に結晶相として、ムライト,スピネル,プロトエンスタタイト,クリノエンスタタイト,クリストバライト,フォルステライト,トリジマイト,サファリン等が析出する場合があるが、組成によってその析出相が異なる。なお、本発明の誘電体磁器組成物では、Mg,Al,Siの酸化物からなる複合酸化物はコージェライトのみからなる結晶相であっても良い。
なお、誘電体磁器組成物に含まれるMg,Al,Siの金属元素からなる原料粉末は、それぞれ酸化物,炭酸塩,酢酸塩等の無機化合物、もしくは有機金属等の有機化合物いずれであっても、焼成により酸化物として形成されるものであれば良い。
さらに、本発明の誘電体磁器組成物は、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu等の希土類元素を酸化物換算で0.1〜15重量部含む。0.1重量部未満では、比誘電率が4.5〜6、測定周波数60GHzでのQ値が1000以上の特性を得ることのできる焼成温度範囲を広げるのが困難で焼成温度範囲が10℃程度と小さく、上記特性のものを製造するのが困難となって量産性が低下し易くなる。一方、15重量部を超えると、誘電体磁器組成物の比誘電率が大きくなり易いとともにQ値も小さくなり易い。
希土類元素は、Q値を低下させずに低温焼成できるという点から、Tb,Dy,Ho,Er,Yb,Luが好ましく、特にYbが好ましい。
このような、MgO,Al23,SiO2のモル比x,y,zや希土類元素の酸化物の含有率はEPMA(Electron Probe Micro Analysis)法やXRD(X−ray diffraction、即ち、X線回折)法等の分析方法で特定できる。
なお、本発明の誘電体磁器組成物の主成分は、金属元素として、Mg,Al,Siおよび希土類元素を含むが、焼結温度範囲の制御、機械的特性向上を目的に、他の成分を含有しても良い。例えば、希土類元素化合物の他に、Ba,Sr,Ca,Ni,Co,In,Ga,Zr,Ti,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Cu,Zn,B,Ge,Sn等の酸化物化合物ならびに窒化ケイ素、炭化ケイ素等の非酸化物化合物である。これらは単独、または複数種であっても良い。これらは、磁器組成中で、非酸化物化合物、酸化物化合物、あるいはSiO2との化合物として粒界相に析出する。
また、本発明の誘電体磁器組成物は、主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2の粒界に、MgO・Al23と一般式RE23・wSiO2で表される結晶相が析出しており、例えば、図1に示されるような組織構造を有する。図1は少なくともMg,Al,Siを含む主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2結晶相1と、析出相として少なくともMg、Alを含むMgO・Al23結晶相2と、粒界相として、RE23・xSiO2(式中、REは希土類元素を示し、xは1または2である)で表される結晶相3から構成されている。場合によってはムライト,プロトエンスタタイト,クリノエンスタタイト,クリストバライト,フォルステライト,トリジマイト,サファリン等が析出するが、組成によってその析出相が異なる。
本発明の誘電体磁器組成物は、温度や時間等の焼成条件を制御しながらこのような結晶構造をとるように焼成することにより、主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2のα相からβ相への相変化の状態を適度なものとすることができ、より低く比誘電率であるとともにより高いQ値のものとなる。
なお、本発明の誘電体磁器組成物には粒界にガラス相が析出しておらず、ガラスセラミックスのようにQ値が低くなることもない。このようなガラス相の有無は、XRDおよび透過型電子顕微鏡観察法等の分析方法で特定できる。
本発明の主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2は、そのβ相のX線回折による(241)のピーク強度と(222)のピーク強度との比をβp(241)/βp(222)としたときに、0.8≦βp(241)/βp(222)≦1.3であるのがよい。これにより、主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2のα相からβ相への相変化が完全に進行していない状態となり、その結果、より低い誘電率とより高いQ値を有するものとなる。
上記のように規定したのは、以下の理由による。コージェライトの結晶相にはα相とβ相が存在し、熱処理により可逆的に相変化(相転移)することが知られている。この相転移はわずかな結晶格子の変化ではあるが、結晶の対称性の変化によるX線回折パターンの変化、すなわち結晶状態による種々の角度に回折されたX線のピーク強度の変化を測定することで、相変化の状態を特定することができる。
そして、比誘電率が小さく誘電損失が小さいという点で最も好ましいα相は、誘電体磁器組成物を作製する際に、焼結するにつれてβ相へ変化していく。このα相の(211)のX線(波長0.15406nm)回折によるピークに着目すると、α相からβ相への相転移に伴い、α相の(211)ピークはβ相の(151),(241),(311)の3本のピークに変化していく。即ち、β相の結晶構造の変化(結晶のx軸方向長さ/y軸方向長さの変化)に伴い、α相の(211)のピークは、1本のものが次第に高さが低くなるとともに3本のピークへと分離していく。
一方、α相の(202)ピークに着目すると、このピークは相転移に関係なく、ピーク強度に変化はみられない。ただし、相変化に伴い単位格子がβ相へと変化するため、β相では(222)ピークに相当する。
従って、相変化してもピーク強度が変化しないβ相の(222)ピークの強度と、相変化によりピーク強度が変化するβ相の(151),(241),(311)のピークの強度との比から、コージェライトの相転移の状態を特定することができる。β相の(151),(241),(311)のピークのうち、相転移が進行するにしたがい、最もピーク強度が大きい(241)ピークが小さくなり、その両側に(151)ピークと(311)ピークが生成される。従って、β相の(222)ピークに対する(241)ピークの強度比により、相転移状態を良好に特定できることとなる。
よって、βp(241)/βp(222)<0.8のとき、α相からβ相への相変化が進行し過ぎており、誘電体損失が大きくなってQ値が低くなる。また、βp(241)/βp(222)=1.3のときはα相の状態であり、より低い誘電率とより高いQ値を得ることのできる最も好適な結晶状態である。なお、βp(241)/βp(222)が1.3より大きくなることはない。
本発明のRE23・wSiO2で表される結晶相の気孔率は0.1体積%以下であるのがよい。これにより、主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2のα相からβ相への相変化の状態を適度なものとなり、より低比誘電率でより高Q値なものとなる。また、緻密な焼結体となる。
このような気孔率は、焼成後の誘電体磁器組成物の断面を顕微鏡観察し、気孔を球状と仮定して気孔の体積を算出することにより求めることができる。
気孔率が0.1体積%を超える場合、焼結条件が急激であり、主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2がほとんどα相からβ相へ相変化している状態になり易く、低比誘電率および高Q値なものを得難くなる。また、緻密な焼結体が得られ難くなる。
また本発明は、上記主成分対して、Li,Na,K,Rb等のアルカリ金属の酸化物換算での含有量が0.1重量部以下が好ましい。これにより、2MgO・2Al23・5SiO2のα相からβ相への相変化の速度を遅くすることができ、低い誘電率と高いQ値を有する誘電体磁器組成物をより安定に作製することができる。0.1重量部を超えると、主結晶相としてのコージェライト相がα相からβ相へ相変化し易くなり、Q値が低下する。このアルカリ金属元素の含有量は少ないほど良いが、より好ましくは0.03重量部以下とするのがよい。
上記アルカリ金属元素のうち、特にKを含むことで、コージェライト相のα相からβ相への相変化速度が大きくなりQ値が低下するため、Kの含有率を0.1重量部以下とすることが好ましい。
また、本発明の誘電体磁器組成物は、10〜40℃における熱膨張率が2×10-6/℃以下であるとともに密度が2.3g/cm3以上であるのがよい。これにより、主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2のα相からβ相への相変化が完全に進行していない適度な状態となり、低比誘電率で高Q値なものとなるとともに緻密で熱膨張率が低く寸法精度の高いものとなる。
さらに、本発明の電体磁器組成物は、比誘電率が6以下であるとともに測定周波数60GHzでのQ値が1000以上であるのがよい。これにより、低誘電率であるとともに60GHzの高周波帯域においても高いQ値を有し、この組成物を用いて誘電体共振器や非放射性誘電体線路、高周波用配線基板を構成した場合、高周波特性の優れたものとなり、近年における高周波帯域用にも十分対応できる。なお、Q値は高ければ高い方が良いが、特に測定周波数60GHzでのQ値が1500以上であることが望ましい。
このような誘電体磁器組成物は、以下のようにして製造する。原料粉末として、例えば、MgCO3粉末、Al23粉末、SiO2粉末を所定の割合で秤量し、湿式混合した後乾燥し、この混合物を大気中において1100〜1300℃で仮焼した後、粉砕する。得られた粉末にアルカリ金属の酸化物の粉末、および希土類元素の酸化物の粉末を所定量混合し、適量の有機樹脂バインダを加えて成形し、この成形体を大気中1300〜1450℃で焼成することにより得られる。
次に、本発明の誘電体磁器組成物を用いた誘電体共振器について以下に説明する。本発明の誘電体共振器は、例えば、図1に示すような誘電体共振器制御型マイクロ波発振器として用いることができ、基板13上に、支持部材12を介してこの支持部材12よりも比誘電率が大きい誘電体磁器11を固定し、これらを金属ケース15に収容した構造であり、基板13および/または支持部材12が上記の誘電体磁器組成物からなる。
これにより、基板13および/または支持部材12が上記の誘電体磁器組成物からなることから、60GHzの高周波帯域においても特性の優れたものとなり、近年における高周波帯域用にも十分対応できる。また、基板13を低比誘電率のものとすることで、ストリップライン14の線幅を細線化しなくとも高周波回路を形成することができる。
このような誘電体共振器は、共振用の誘電体磁器11の外部に漏れでる電磁界Hを利用して基板13に形成したストリップライン14に電磁結合させることができる。そして、誘電体磁器11の電界が支持部材12を介して漏れるのを制御することによって、無負荷Qの高い共振系が構成できる。
また、共振用の誘電体磁器11は支持部材12よりも高い比誘電率であり、例えば比誘電率が約10のアルミナセラミックス等からなる。
次に、本発明の非放射性誘電体線路(NRDガイド)について以下に説明する。NRDガイドの基本構成は、図2に示すように、高周波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置した平行平板導体間21,23に、上記の誘電体磁器組成物からなる高周波信号伝送用の誘電体線路22を設けている。これにより、LSMモードの電磁波のLSEモードへの変換による損失を低減することができる。また、60GHzの高周波帯域においても特性が優れ、誘電体線路22の幅を非常に細くする必要もない。
誘電体線路22の材料としては、上記誘電体磁器組成物を用いており、この誘電体磁器組成物の比誘電率は4.5〜6がよい。比誘電率が4.5より小さいと、LSMモードの電磁波のLSEモードへの変換が大きくなり、損失が増大する。また、比誘電率が6よりも大きいと、50GHz以上の周波数で使用する際、誘電体線路22の幅をきわめて細くしなければならず、加工が困難になるとともに強度が劣化するといった問題が生じる。
また、誘電体線路22は、周波数60GHzでのQ値が1000以上が望ましく、これは近年におけるマイクロ波帯域、ミリ波帯域で使用される伝送線路として十分対応できる特性である。
本発明のNRDガイドは数10〜数100GHz帯の高周波信号を利用する高周波回路であれば適用でき、特に50GHz以上、さらには70GHz以上の高周波帯域で好適に使用できる。具体的には、本発明のNRDガイドは無線LAN、自動車用のミリ波レーダ等に使用されるものであり、例えば自動車用のミリ波レーダは、自動車の周囲の障害物および他の自動車に対しミリ波を誘電体線路22で導波して照射し、反射波を他の誘電体線路で受け元の高周波信号と合成して中間周波信号を得、この中間周波信号を分析することにより障害物および他の自動車までの距離やそれらの移動速度等を得ることのできるものである。
また、平行平板導体21,23は高い電気伝導度および加工性の点で、Cu,Al,Fe,Ag,Au,Pt,SUS(ステンレススチール)等の導体板、あるいはこれらの導体層を表面に形成した絶縁板でもよい。
次に、本発明の高周波用配線基板について以下に示す。本発明の高周波用配線基板は、上記の誘電体磁器組成物からなる絶縁基板31の表面および/または内部に、1GHz以上の高周波信号を伝送させるための配線層32,33を配設してなる。即ち、絶縁基板21の下面に配線層(グランド)32を、上面に配線層33(マイクロストリップライン)を形成して構成されている。
これにより、配線層32,33に高周波信号として1GHz以上、特には20GHz以上さらには50GHz以上の高周波信号が伝送されても高周波伝送特性に優れたものとすることができ、近年における高周波帯域用にも十分対応できる。また、基板を低比誘電率のものとすることで、ストリップラインである配線層33の線幅を細線化しなくとも高周波回路を形成することができる。
なお、図3では絶縁基板31の表面にストリップラインである配線層33を形成した例について説明したが、例えば、絶縁基板31の内部にストリップ線路、コプレナー線路、誘電体導波管線路を形成してもよい。また、このような高周波用配線基板は、マイクロ波やミリ波用等の高周波域で用いられるパッケージ,誘電体共振器,LCフィルター,コンデンサ,誘電体導波路,誘電体アンテナ等に用いることができる。
また、本発明の誘電体組成物は、低比誘電率および高Q値を示して電気特性に優れたものとなるだけでなく、120GPa以上の高いヤング率および室温近傍(10〜40℃)において2×10-6/℃以下の低い熱膨張率を示して機械的特性にも優れたものとなる。
このような特性を利用して、本発明の誘電体組成物は、例えばLSI等の半導体製造工程におけるシリコンおよび/またはガリウムヒ素ウエハに配線を形成して半導体素子を製造するためのウエハ支持台、静電チャック、絶縁リング、露光装置、あるいはその他の半導体製造装置用の治具等に用いられてもよい。
これにより、上記冶具を100nm以下の位置決め精度の可能なものとすることができる。従って、近年の高周波化に伴う回路の微細化によって線幅がサブミクロンオーダーのレベルまで高精密化しつつあるLSI等の半導体素子を製造する工程、例えば、シリコンウエハに回路を形成する工程や形成された回路を検査する工程等に用いられる冶具に上記誘電体組成物を用いることにより、位置合わせ誤差が良好となり、製品の品質向上や歩留まり向上が可能となる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更を行っても何ら差し支えない。本発明の誘電体磁器組成物は、低誘電率および高Q値が求められる各種電子部品等に応用できるものであり、例えば、電子回路基板,光電子回路基板,誘電体共振器の誘電体磁器,誘電体線路,誘電体導波路,誘電体アンテナ等に適用できる。
本発明の誘電体磁器組成物を以下の工程[1]〜[6]により作製した。
[1]原料粉末として純度99.0%のMgCO3、純度99.7%のAl23、純度99.4%のSiO2粉末、純度99.0%のK23粉末を用い、これらを焼結体が表1に示す組成比となるように秤量し、15時間湿式混合した後、乾燥し、この混合物を大気中において1200℃で2時間仮焼した後、粉砕した。表1においては、MgCO3はMgOに換算した。
[2]得られた粉末に適量の有機樹脂バインダを加えて造粒し、これを1000kg/cm2の圧力のもとで成形して、直径8mm、厚さ(高さ)5mmの円柱状の成形体を得た。
[3]この成形体を大気中で種々の温度で90分焼結して焼結体を得、さらに直径5mm、厚さ2.25mmの円柱状となるように研磨し、誘電体磁器組成物の試料を得た。
同様にして、組成比の異なる種々の試料を作製した。
これらの試料について、誘電体円柱共振器法により周波数60GHzでの比誘電率およびQ値を測定した。その結果を表1に示した。
[4]次に[1]で得られた粉末に適量の有機樹脂バインダを加えて造粒し、これを1000kg/cm2の圧力のもとで成形して、直径60mm、厚さ(高さ)5mmの成形体を得た。
[5]この成形体を大気中で種々の温度で90分焼結して焼結体を得、さらに直径50mm、厚さ0.2mmに研磨し、誘電体磁器組成物の高周波用配線基板を得た。
同様にして、組成比の異なる種々の高周波用配線基板を作製した。
この高周波用配線基板に0.3mm幅のCuからなるマイクロストリップラインを形成し、図4に示す高周波伝送線路を作製し、20GHzでの伝送損失を測定した。
[6]次に[1]で得られた粉末に適量の有機樹脂バインダを加えて造粒し、これを1000kg/cm2の圧力のもとで成形して、この成形体を大気中で種々の温度で90分焼結して焼結体を得、さらに3×4×15mmの大きさに研削加工し、誘電体磁器組成物の基板を得た。
同様にして、組成比の異なる種々の基板を作製した。
このセラミックスの10〜40℃での平均熱膨張率をJIS R3251−1995に規定の方法に準拠して測定した。また、直径20mm、厚さ10mmに加工し、超音波パルス法(JIS R1602−1995)により、室温におけるヤング率を測定した。
また、XRD法により磁器組成物の構成相を同定し、試料No.8のX線回折チャートを図5に示した。
Figure 2007137764
表1に示すように、本発明の誘電体磁器組成物は、比誘電率が4.5〜6.0であり、測定周波数60GHzでのQ値が1000以上と高いものであった。しかも、図4に示す高周波伝送線路では周波数20GHzにおいて伝送損失15dB/m以下を示すことがわかった。
また、希土類元素を含まない比較としての試料No.30は低比誘電率および高Q値を示したものの、焼成温度範囲が10℃であり非常に狭い範囲であり、また、ヤング率も90GPaと低いものであったのに対し、本発明の試料は焼成温度範囲が20℃以上と大きく、また、ヤング率も100GPa以上であり優れていた。
比較例として、ガラスセラミックスからなる基板を作製した。この基板の比誘電率は5.6と高く、測定周波数10GHzでのQ値は1000と低いものであった。また、図4に示す高周波伝送線路では、周波数20GHzにおいて伝送損失24dB/mと損失が大きかった。
また、表1から明らかなように、2MgO・2Al23・5SiO2を主成分としアルカリ金属酸化物および希土類元素酸化物を各所定量を添加し、主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2の粒界に、MgO・Al23と一般式:RE23・xSiO2(式中、REは希土類元素を示し、xは1または2である)で表される結晶相を析出させることにより、10〜40℃の熱膨張率を2×10-6/℃以下と小さく、かつヤング率を120Gpa以上と大きくすることもできることがわかった。
本発明の誘電体磁器組成物の組織の一例を示す概略図である。 本発明の誘電体共振器を用いた誘電体共振器制御型マイクロ波発振器について実施の形態の一例を示す断面図である。 本発明の非放射性誘電体線路について基本構成を示す部分切欠斜視図である。 本発明の高周波用配線基板について実施の形態の一例を示す斜視図である。 本発明の誘電体磁器組成物(実施例中試料No.8)のX線回折チャート図である。
符号の説明
1:主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2結晶相
2:MgO・Al23結晶相
3:RE23・xSiO2で表される結晶相
11:誘電体磁器
12:支持部材
13:基板
14:ストリップライン
21:平行平板導体
22:誘電体線路
23:平行平板導体
31:絶縁基板
32:配線層(グランド)
33:配線層(マイクロストリップライン)

Claims (9)

  1. Mg,Al,Siの複合酸化物を主成分とし、前記複合酸化物のモル比組成式がxMgO・yAl23・zSiO2(但し、x=10〜40モル%、y=10〜40モル%、z=20〜80モル%、x+y+z=100モル%を満足する)で表され、希土類元素を酸化物換算で0.1〜15重量部含み、主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2の粒界に、MgO・Al23と一般式RE23・wSiO2(式中、REは希土類元素であり、wは1または2である)で表される結晶相が析出しており、ガラス相が析出していないことを特徴とする誘電体磁器組成物。
  2. 前記主結晶相である2MgO・2Al23・5SiO2のβ相のX線回折による(241)のピーク強度と(222)のピーク強度との比をβp(241)/βp(222)としたときに、0.8≦βp(241)/βp(222)≦1.3であることを特徴とする請求項1記載の誘電体磁器組成物。
  3. 前記RE23・wSiO2で表される結晶相は、気孔率が0.1体積%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の誘電体磁器組成物。
  4. アルカリ金属元素の含有量が酸化物換算で0.1重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物。
  5. 10〜40℃における熱膨張率が2×10-6/℃以下であるとともに密度が2.3g/cm3以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の誘電体磁器組成物。
  6. 比誘電率が6以下であるとともに測定周波数60GHzでのQ値が1000以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の誘電体磁器組成物。
  7. 基板上に、支持部材を介して該支持部材よりも比誘電率が大きい誘電体磁器を固定してなる誘電体共振器において、前記基板および/または支持部材が請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の誘電体磁器組成物からなることを特徴とする誘電体共振器。
  8. 高周波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置した平行平板導体間に、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の誘電体磁器組成物からなる前記高周波信号伝送用の誘電体線路を設けたことを特徴とする非放射性誘電体線路。
  9. 絶縁基板の表面および/または内部に、1GHz以上の高周波信号を伝送させるための配線層を配設してなる高周波用配線基板において、前記絶縁基板は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の誘電体磁器組成物からなることを特徴とする高周波用配線基板。
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