JP3510946B2 - コーディエライト質焼結体及びその製造方法並びに誘電体共振器 - Google Patents

コーディエライト質焼結体及びその製造方法並びに誘電体共振器

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、マイクロ
波、ミリ波等の高周波で用いられるコ−ディエライト質
焼結体に係わり、例えば、マイクロ波、ミリ波集積回路
等のマイクロ波、ミリ波帯域で用いられる回路素子用基
板、誘電体共振器用支持台、誘電体共振器、誘電体導波
路、誘電体アンテナ等の材料として有用なコ−ディエラ
イト質焼結体、並びに誘電体磁器を支持台を介して基板
に固定した誘電体共振器に関するものである。
【0002】
【従来技術】マイクロ波、ミリ波集積回路をはじめとす
る高周波回路素子では、誘電体共振磁器を支持部材を介
して基板に固定する構造が採用される場合がある。例え
ば、誘電体共振器制御型マイクロ波発信器は、第1図に
示すように、誘電体磁器1を支持部材2を介して磁器基
板3に取り付け、誘電体磁器1の外部に漏れ出る電磁界
Hを利用して磁器基板3に設けたストリップライン4に
結合させる構造であり、これらを金属ケ−ス5に収容さ
せた構造を有している。
【0003】この種の高周波回路においては、誘電体磁
器1の電界が支持部材2を介して漏れるのを制御するこ
とによって、無負荷Qの高い共振系が構成されることに
なるため、支持部材2には誘電率が低く誘電損失(ta
nδ)が小さい(Q値が大きい)材料を使用する必要が
ある。このため、従来、支持部材の材料としては比誘電
率が約7、測定周波数10GHzでのQ値が約1500
0のフォルステライトが採用され、また、磁器基板の材
料としては主として比誘電率が約10、測定周波数10
GHzでのQ値が20000以上のアルミナ磁器が採用
されていた(例えば、特開昭62−103904号公報
等参照)。
【0004】一方、比誘電率が低い材料としては、従
来、コ−ディエライトが知られているが、焼成温度範囲
がきわめて狭いことから緻密な焼結体が得がたい。この
ため、従来から、コ−ディエライトにガラス材を添加
し、焼成が比較的容易である比誘電率が4〜6のガラス
セラミックが用いられている(例えば、特開昭61−2
34128号公報等参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来用
いられていたアルミナ、及びフォルステライトの比誘電
率はそれぞれ約10及び約7程度であり、近年における
高周波数帯の誘電体共振器の普及にともない、より低い
誘電率の材料が求められていた。
【0006】一方、低誘電率材料として用いられている
上記ガラスセラミックの磁器は比誘電率が約4〜6と小
さいが、Q値が10GHzで1000程度であり、近年
における高周波数帯の誘電体共振器の普及に伴い、より
高いQ値の低誘電率材料が求められていた。
【0007】また、共振器の磁器基板に主として使用さ
れているアルミナ磁器は比誘電率が約10と比較的高
く、高インピーダンスのストリップラインを形成しよう
とすると、ライン幅が小さくなりすぎて(通常1μm以
下)、断線が生じたり、相対的なライン幅のばらつきが
大きくなり、マイクロ波集積回路の不良率が増大すると
いう問題があった。
【0008】他方、この種の磁器基板におけるストリッ
プラインのインピ−ダンスは、基板の厚さが一定であれ
ば、その誘電率及びストリップラインの幅にそれぞれ反
比例するため、ライン幅を小さくする代わりに、誘電率
の低い基板材料を使用することによってもインピ−ダン
スを高めることができ、このため、より低誘電率材料が
求められていた。
【0009】本発明者等は上記問題を解決する一手段と
して、金属元素としてMg、Al、Siからなる複合酸
化物であって、各金属元素の酸化物によるモル比組成式
をxMgO−yAl2 3 −zSiO2 と表した時、前
記x、y、zが10≦x≦40、10≦y≦40、20
≦z≦80、x+y+z=100を満足し、比誘電率が
6以下、かつ、測定周波数10GHzでのQ値が200
0以上である高周波用誘電体磁器組成物、および誘電体
共振器をすでに出願した(特願平7−195211
号)。
【0010】この高周波用誘電体磁器組成物はアルミ
ナ、フォルステライトよりも低い比誘電率を有し、か
つ、ガラスセラミックよりも高いQ値を有する優れたも
のであった。しかしながら、従来、コーディエライト
緻密化できる焼成温度範囲が極めて狭いことから、焼成
条件を厳密に制御する必要があり、緻密な焼結体が安定
して得難く、上記本発明者等が先に出願した高周波用誘
電体磁器組成物も例外ではなかった。
【0011】本発明は、比誘電率が6以下で、測定周波
数10GHzでのQ値がコーディエライト系ガラスセラ
ミックと同等あるいはそれ以上の優れた特性を維持しつ
つ、焼成条件を改善できるコーディエライト質焼結体お
よび誘電体共振器を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、前記課題
を解決すべく鋭意検討した結果、コーディエライトを主
成分とし、CaO、BaOを0.1〜15重量%からな
場合には、アルミナ、フォルステライトよりも低い比
誘電率を有し、かつ、コーディエライト系ガラスセラミ
ックと同等あるいはそれ以上のQ値を有するとともに、
緻密な焼結体を得るのに必要な焼成温度範囲が広いコー
ディエライト質焼結体を得ることができることを見い出
し、本発明に至った。
【0013】即ち、本発明のコーディエライト質焼結体
は、金属元素として、Mg、Al、及びSiと、Ca、
Baのうち少なくとも1種と、不純物とからなり、コー
ディエライトを主成分とし、Ca及び/又はBaを、そ
れぞれCaO換算、BaO換算で総量0.1〜15重量
%含有するとともに、周波数10GHzにおける比誘電
率が5.3以下、Q値が1200以上であることを特徴
とするものであり、特に主結晶相のコーディエライト
と、ムライト、スピネル、プロトエンスタタイト、クリ
ノエンスタタイト、クリストバライト、フォルステライ
ト、トリジマイト、サファリン、Ca、Baとの化合
物、アノーサイト、セルジアンのうち少なくとも1種の
結晶相とからなることが好ましい
【0014】また、コーディエライト質焼結体の製造方
法は、Ca及び/又はBaを、それぞれCaO換算、B
aO換算で総量0.1〜15重量%と、コーディエライ
ト粉末又は焼成によってコーディエライトを形成する原
料粉末とを含む成形体を1300〜1440℃で焼成す
ることを特徴とするものである。さらに、本発明の誘電
体共振器は、基板上に支持部材を介して誘電体磁器を固
定してなる誘電体共振器において、前記基板及び/又は
前記支持部材が、上記のコーディエライト質焼結体から
なるものである。
【0015】
【作用】本発明のコーディエライト質焼結体では、焼成
温度等の焼成条件を厳密に制御して得られた特性を大き
く劣化させることなく、上記した主成分に対してCaお
よび/またはBaを所定量含有することにより、焼成条
件を改善することができる。即ち、アルミナ、フォルス
テライトよりも低い4〜6の比誘電率を有し、かつ、
ーディエライト系ガラスセラミックと同等あるいはそれ
以上のQ値を有するとともに、例えば、焼温度幅が1
0℃程度であったものを50℃程度まで拡大することが
でき、製造を容易にし、量産性を向上することができ
る。
【0016】また、このような低誘電率,高Q値のコ−
ディエライト質焼結体を、例えば、誘電体共振器の支持
部材および/または基板に用いることにより、高インピ
−ダンスのマイクロ波用集積回路などの高周波用回路素
子を信頼性を損なう事なく製造することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明のコ−ディエライト質焼結
体は、コ−ディエライトを主成分とし、Caおよび/ま
たはBaを、それぞれCaO換算、BaO換算で総量
0.1〜15重量%含有するものである。
【0018】ここで、Caおよび/またはBaを所定量
含有したのは、Caおよび/またはBaを含有すること
により、例えば、焼結温度幅等の焼成条件を改善するこ
とができるからである。
【0019】Caおよび/またはBaを、それぞれCa
O換算、BaO換算で総量0.1〜15重量%含有した
のは、Caおよび/またはBaがCaO換算、BaO換
算で総量0.1重量%よりも少ない場合には焼成条件の
改善効果が不十分となり、15重量%よりも多いと誘電
損失が大きくなり、Q値が従来のコーディエライト系ガ
ラスセラミックよりも低下してしまうためである。Ca
および/またはBaの含有量は、Q値が2000以上で
あり焼成条件を改善するという観点からCaO換算、B
aO換算で総量1〜10重量%が望ましい。Caおよび
/またはBaの含有量を増加させる程緻密化焼成温度は
広くなるが、一方比誘電率が増加し、またQ値が低下し
ていくため、これらの特性と緻密化焼成温度との兼ね合
いで、Caおよび/またはBaの含有量を決定すること
が望ましい。
【0020】本発明のコ−ディエライト質焼結体は、原
料粉末として、例えば、MgCO3粉末,Al2 3
末,SiO2 粉末、BaCO3 、CaCO3 粉末を用
い、所定の割合で秤量し、湿式混合した後乾燥し、この
混合物を大気中において1100〜1300℃で仮焼し
た後、粉砕する。得られた粉末に適量のバインダを加え
て成形し、この成形体を大気中1000〜1400℃で
焼成することにより得られる。Mg,Al,Si,B
a,Caの金属元素を含有する原料粉末は、それぞれ酸
化物,炭酸塩,酢酸塩等の無機化合物、もしくは有機金
属等の有機化合物等の、焼成により酸化物として形成さ
れるものであればいずれの粉末を用いても良い。
【0021】本発明においては、予めコ−ディエライト
となるように所定割合にて調合されたMgO粉末、Al
2 3 粉末、SiO2 粉末の混合粉末に対して、BaC
3粉末、CaCO3 粉末を混合した作製しても良く、
また、予めコ−ディエライトとなるように所定割合にて
調合されたMgO粉末、Al2 3 粉末、SiO2 粉末
の混合粉末を仮焼し、これを粉砕したコ−ディエライト
粉末にBaCO3 粉末、CaCO3 粉末を混合した作製
しても良い。熱溶融、焼成して得たものを用いる事も可
能である。
【0022】コ−ディエライト、またはコ−ディエライ
ト組成となる原料に配合するCaO、BaO成分として
は、予めCaO、BaO、またはCaO、BaOを含む
混合物のごとき酸化物として配合しておくのが通常であ
るが、焼成により酸化物となるCa、Baの有機塩、無
機塩等の化合物として配合しても良い。
【0023】本発明に於て、焼成温度は、CaO、Ba
O成分が含まれていることにより充分に緻密化の目的が
達成され、具体的には焼成温度は1300℃〜1440
、好ましくは1300〜1400℃となる。
【0024】また、本発明の誘電体磁器組成物では、主
結晶相がコ−ディエライトであり、他に結晶相として、
ムライト、スピネル、プロトエンスタタイト、クリノエ
ンスタタイト、クリストバライト、フォルステライト、
トリジマイト、サファリン、Ca、Baとの化合物、ア
ノーサイト、セルジアン等が析出する場合がある。
【0025】また、本発明の誘電体共振器は、図1に示
すように、基板3上に支持部材2を介して誘電体磁器1
を固定してなり、支持部材2または基板3、或いは支持
部材2及び基板3が、上記コ−ディエライト質焼結体か
らなるものである。
【0026】尚、本発明のコ−ディエライト質焼結体
は、金属元素として、Mg、Al、Si、およびCa、
Baのうちの少なくとも一種とからなるものであるが、
例えば、粉砕ボールや原料粉末の不純物として、Zr、
Ni、Fe、Cr、P、Na、Ti、Caを添加する場
合にはBa、Baを添加する場合にはCa等が混入する
場合があるが、この場合も、上記組成を満足する限り低
誘電率で、高Q値の磁器を得ることができる。
【0027】また、本発明のコ−ディエライト質焼結体
では、低誘電率および高Q値が求められるものであれ
ば、例えば、回路素子用基板,誘電体共振器の誘電体磁
器,誘電体導波路,誘電体アンテナ等、どのようなもの
でも適用できるが、上記したように、誘電体共振器の支
持部材または基板に最適である。
【0028】
【実施例】原料粉末として純度99%のMgCO3
末、純度99.7%のAl23粉末、純度99.4%の
SiO2粉末を、MgO換算で22.2モル%、Al2
3換算で22.2モル%、SiO2換算で55.6モル%
となるように混合し、この混合粉末に、純度99.9%
のCaCO3粉末、純度99.9%のBaCO3粉末を、
それぞれCaO換算、BaO換算で表1に示す量だけ添
加し、15時間湿式混合した後、乾燥し、この混合物を
1200℃2時間仮焼した。この後、アルミナボールを
用いたボールミルにより粉砕した。得られた粉末に適量
のバインダを加えて造粒し、これを1000kg/cm
2の圧力の下でプレス成形して、直径12mm厚さ8m
mの成形体を得た。この成形体を大気中1300〜14
45℃で2時間焼成して、直径10mm厚さ6mmの試
料を得た。
【0029】この試料を用いて誘電体円柱共振器法にて
周波数10GHzにおける比誘電率とQ値を測定し、そ
の結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】表1によれば、本発明に係るコーディエラ
イト質焼結体は、緻密化する焼成温度幅を広くとること
が可能で、比誘電率が5.3以下とコーディエライト単
体の特性を有していることがわかる。また、Q値が、
ーディエライト系ガラスセラミックと同等あるいはそれ
以上の1200以上を有することが判る。
【0032】尚、図2に試料No.5のX線回折チャート
図を示す。この図2から、コ−ディエライトの他に、ア
ノーサイト、スピネルが析出していることが判る。
【0033】
【発明の効果】本発明のコーディエライト質焼結体で
は、コーディエライトを主成分とし、Ca、Baを所定
量含有するため、アルミナ、フォルステライトよりも低
い比誘電率で、コーディエライト系ガラスセラミックと
同等あるいはそれ以上のQ値を維持した状態で、緻密な
焼結体を得るのに必要な焼成温度範囲が拡大し、生産性
を向上することができる。そして、本発明のコーディエ
ライト質焼結体を、例えば、誘電体共振器の支持部材ま
たは基板に用いることにより、高インピーダンスのマイ
クロ波用集積回路などの高周波用回路素子を、信頼性を
損なうことなく製造することができる。また、低誘電率
および高Q値であるため、例えば、マイクロ波、ミリ波
集積回路等のマイクロ波、ミリ波帯域で用いられる回路
素子用基板、誘電体共振器用支持台、誘電体共振器、誘
電体導波路、誘電体アンテナ等の材料として最適であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】高周波用回路素子の一例を示す誘電体共振器制
御型マイクロ波発信器の概略断面図である。
【図2】試料No.5の結晶構造を示すX線回折図であ
る。
【符号の説明】
1・・・誘電体磁器 2・・・支持部材 3・・・磁器基板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−230462(JP,A) 特開 昭62−219994(JP,A) 特開 昭63−64957(JP,A) 特開 平7−157363(JP,A) 特開 昭62−278145(JP,A) 特開 平7−111402(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 35/00 - 35/22

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属元素として、Mg、Al、及びSi
    と、Ca、Baのうち少なくとも1種と、不純物とから
    なり、コーディエライトを主成分とし、Ca及び/又は
    Baを、それぞれCaO換算、BaO換算で総量0.1
    〜15重量%含有するとともに、周波数10GHzにお
    ける比誘電率が5.3以下、Q値が1200以上である
    ことを特徴とするコーディエライト質焼結体。
  2. 【請求項2】主結晶相のコーディエライトと、ムライ
    ト、スピネル、プロトエンスタタイト、クリノエンスタ
    タイト、クリストバライト、フォルステライト、トリジ
    マイト、サファリン、Ca、Baとの化合物、アノーサ
    イト、セルジアンのうち少なくとも1種の結晶相とから
    なることを特徴とする請求項1記載のコーディエライト
    質焼結体。
  3. 【請求項3】Ca及び/又はBaを、それぞれCaO換
    算、BaO換算で総量0.1〜15重量%と、コーディ
    エライト粉末又は焼成によってコーディエライトを形成
    する原料粉末とを含む成形体を1300〜1440℃で
    焼成することを特徴とするコーディエライト質焼結体の
    製造方法
  4. 【請求項4】基板上に支持部材を介して誘電体磁器を固
    定してなる誘電体共振器において、前記基板及び/又は
    前記支持部材が、請求項1又は2記載のコーディエライ
    ト質焼結体からなることを特徴とする誘電体共振器。
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