JP2007132844A - プレス監視システム及びae評価方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プレス装置10における成形不良を監視するためのプレス監視システム9に、プレス装置10にて被成形素材Wを成形加工する際に生じるAEを検出するAEセンサ20と、前記AEを電気的信号に変換するAE計測手段21と、前記電気的信号の強度の変化を電圧値の変化として表したAE波形を得る数値処理手段22と、前記被成形素材Wの摩擦係数を測定する摩擦係数測定手段35と、良品が得られた成形加工時に計測されたAE波形を、前記摩擦係数にて定まる補正値で補正して、評価基準となるAE波形を決定する評価基準決定手段24と、前記評価基準と前記数値処理手段にて得られたAE波形とを比較し、プレス不良発生の有無を評価する評価手段23とを備えた。
【選択図】図1
Description
プレス成形加工は、一秒に数枚程度の処理速度で行われるため、この非常に短い加工時間の間の現象を正確に捉えることは非常に難しく、不具合が発生したときに、どのような不具合が、何を原因として発生したのかの情報を、瞬時に得ることは難しい。
そこで、特許文献2では、プレス装置の軸受欠陥を高精度で診断するために、プレス装置から検出されたAEがノイズであるのか、欠陥部位から検出されたものであるかを、プレス成形加工時に検出されたAEと、非加工時に検出されたAEとを比較処理することによって、判定する技術が提案されている。
しかし、上記AEセンサを用いた被成形素材の割れの検出は、比較的小さく形状の単純な製品を成形加工する際には容易に適用することができるが、特に、車輌部品など、巨大な製品においては、被成形素材である鋼板が大きく、また、製品形状が複雑であるため、割れ検出のために取得したAEの評価や解析が難しく、実用化が困難となっていた。
図1は本発明の一実施例に係るプレス装置の全体的な構成を示した図、図2はAE波形の一例を示す図、図3はAE波形と被成形素材の摩擦係数の関係を説明する図、図4はAE波形とクッション圧の関係を説明する図、図5は原評価基準と評価基準と測定結果の一例を示す図である。
なお、本実施例では、プレス装置10の一例としてクランクプレス式の装置を採用しているが、プレス装置10の形態はこれに限定されるものではなく、例えば、リンクモーションプレス式、カムプレス式又はねじプレス式等の機械式プレス装置や、油圧プレス式、空圧プレス式などの流体圧式プレス装置等とすることができる。
そして、前記プレス装置10には、成形加工時に発生するアコースティック・エミッション(以下、『AE』と記載する)を計測し、該AEから得られる情報に基づいてプレス不良を検出するためのプレス監視システム9が備えられる。
ここで、AEとは、被成形素材Wの亀裂の発生や伸展などといった被成形素材Wの破壊等に伴って発生する、振動や音波などの弾性波のことをいう。
本実施例において、数値処理手段22、評価手段23及び評価基準決定手段24は、表示部37や入力部38が具備された汎用コンピュータ36にて機能させている。
前記AE計測手段21では、検出されたAEは電気的信号(以下、『AE信号』と記載する)に変換され、アンプによる信号増幅処理や、ノイズ除去のためのフィルタ処理などが施される。
さらに、数値処理手段22では、前記AE波形の積分値であるアコースティック・エミッションエネルギー(以下、『AEエネルギー』と記載する)の値が算出される。
なお、図2では、縦軸に電圧値を、横軸に成形加工時のスライド14の変位を、それぞれ示し、AE信号の強度が電圧値として断続的にプロットされ、AE波形が形成されている。そして、AE波形の断面積(図2の斜線部分)によってAEエネルギー値が示されている。
評価手段23では、評価基準決定手段24により定められた評価基準となるAE波形と、計測により得られたAE波形とを、比較演算することにより評価して、プレス不良の有無を判定する。
このとき、評価基準となるAE波形と、計測により得られたAE波形との差異が予め設定された許容値の範囲外であれば、プレス不良と判定し、許容値の範囲内であれば、プレス良と判定する。
AEエネルギー値の評価は、評価基準となるAE波形と、計測により得られたAE波形とのそれぞれのAEエネルギー値を算出するとともに、これらのAEエネルギー値を比較演算し、AEエネルギー値の差異が予め設定された許容値の範囲外であれば、プレス不良と判定し、許容値の範囲内であれば、プレス良と判定する。
評価基準となるAE波形は、被成形素材Wの摩擦係数および成形加工時のクッション圧のいずれか一方又は両方の変動に応じて、決定される。
成形加工時に測定されるAE波形に基づいて算出されるエネルギー値は、同形状の成形金型を使用して成形加工する場合であっても、被成形素材Wの摩擦係数の値によって異なる。
例えば、図3では、(a)被成形素材Wの摩擦係数がμ1である場合と、(b)被成形素材Wの摩擦係数がμ2である場合との、それぞれにおいて得られたAE波形を示している(但し、μ1<μ2とする)。図3によれば、摩擦係数がμ1である場合のAE波形と、摩擦係数がμ2である場合のAE波形とが異なっている。また、AEエネルギー値も異なっている。
つまり、図3に示すD1、D2、D3の範囲のAE波形及びAEエネルギー値が、評価対象となる。以下、図4及び図5に示すAE波形においても同様とする。
従って、成形加工されている被成形素材Wの摩擦係数が良品の摩擦係数よりも大きいと推測されるAE波形において、亀裂発生などに起因する異常なピークが表れれば、摩擦係数が増大したことを原因として亀裂などのプレス不良が発生したことを、推測することができる。
成形加工時に測定されるAE波形は、同形状の成形金型を使用して成形加工する場合であっても、クッション圧の値によって異なる。クッション圧とは、成形加工時に、被成形素材Wに与えられた加圧力を、プレス装置10が支持する圧力である。
例えば、図4では、(a)クッション圧がP1である場合と、(b)クッション圧がP2である場合と、(c)クッション圧がP3である場合との、それぞれにおいて得られたAE波形を示している(但し、P1<P2<P3とする)。
図4に示すように、クッション圧が増大するに伴って、ピークの位置が早まる傾向が見られる。つまり、プレス装置10の構成要素が膨張し大きくなるために、クッション圧の増大により、プレスのタイミングが早くなるのである。
評価基準となるAE波形を定めるにあたって、先ず、評価基準素材が成形加工されて良品が成形された場合に計測されたAE波形である、原評価基準が予め評価手段23に設定される。但し、原評価基準となるAE波形は、金型とプレス装置10の組合せにより異なるので、金型とプレス装置10の組合せごとに設定する。
また、成形加工時のクッション圧を計測するために、ボルスタ13に圧力測定手段32が備えられ、該圧力測定手段32にて計測されたクッション圧が評価基準決定手段24に伝達される。但し、クッション圧はスライド14やロッド17に圧力測定手段を備えて計測することもできる。
AEエネルギー値は、被成形素材Wの摩擦係数によって、評価基準値が増減し、摩擦係数が大きくなるほど評価基準値が大きくなる。従って、被成形素材Wの摩擦係数が増大するに従って、AEとして計測される電圧値が大きくなる結果、AE波形は全体的に上方にシフトすることとなる。
AE波形の電圧値の評価基準値は、原評価基準値に、補正値を加えて算出される。前記補正値は、該補正値と被成形素材Wの摩擦係数との関係を定めた関数に基づいて算出されるか、又は、予め設定されたマップに基づいて決定される。
また、上記実施例では、AE波形を通じてAEエネルギー値の評価も行うが、AE波形とAEエネルギー値とをそれぞれ別個に評価するために、それぞれの評価基準を定めることもできる。
被成形素材W1の摩擦係数μ1が評価基準素材W0の摩擦係数μ0と比較して大きいため、評価基準となるAE波形のAEエネルギー値は、原評価基準となるAE波形と比較して全体的にやや増大している。
なお、被成形素材W2の成形加工では、割れのプレス不良が発生している。
評価手段23では、図5cに示すAE波形において、評価基準のAEエネルギー値と計測されたAEエネルギー値との差異が所定の許容値の範囲外となる箇所が存在し、さらに、図5cに示すAE波形に評価基準となるAE波形を超える異常なピークが存在することから、プレスは不良であると判定する。この場合、プレス不良は、被成形素材W2の摩擦係数が異常に大きいために生じたと推定される。
なお、被成形素材W3の成形加工では、金型により押さえられている被成形素材W3の周縁部が破断する、所謂「押さえちぎれ」となるプレス不良が発生している。
評価手段23では、図5dに示すAE波形において、評価基準のAEエネルギー値と計測されたAEエネルギー値との差異が所定の許容値の範囲内であるが、図5dに示すAE波形に評価基準となるAE波形を超える異常なピークが存在するので、プレスは不良であると判定される。この場合、プレス不良は、被成形素材W3の摩擦係数以外の原因により生じたと推定される。
従って、被成形素材Wの摩擦係数や、成形加工のクッション圧の変動に起因して、計測されるAE波形やAEエネルギーの変化が生じても、割れやくびれ等のプレス不良に伴うAE波形やAEエネルギーの変化を確実に捉えることができる。
また、プレス成形加工時の、被成形素材Wの摩擦係数、成形加工時のクッション圧、AEエネルギーに基づく素材流入量の変化等に関して、割れの真因を究明するために、割れない製造要件、管理要件に関する知見を得ることが可能となる。
10 プレス装置
15a 下金型
15b 上金型
20 AEセンサ
21 AE計測手段
22 数値処理手段
23 評価手段
24 評価基準決定手段
32 圧力測定手段
35 摩擦係数測定手段
Claims (6)
- プレス装置における成形不良を監視するためのプレス監視システムであって、
プレス装置にて被成形素材を成形加工する際に生じるAEを検出するAEセンサと、
前記AEを電気的信号に変換するAE計測手段と、
前記電気的信号の強度の変化を電圧値の変化として表したAE波形を得る数値処理手段と、
前記被成形素材の摩擦係数を測定する摩擦係数測定手段と、
前記摩擦係数に基づいてAE波形の評価基準を決定する評価基準決定手段と、
前記評価基準と前記数値処理手段にて得られたAE波形とを比較し、プレス不良発生の有無を評価する評価手段とを、具備することを特徴とする、
プレス監視システム。 - 前記評価基準決定手段は、
良品が得られた成形加工時に計測されたAE波形を前記摩擦係数にて定まる補正値で補正して、AE波形の評価基準を決定することを特徴とする、
請求項1に記載のプレス監視システム。 - プレス装置における成形不良を監視するためのプレス監視システムであって、
プレス装置にて被成形素材を成形加工する際に生じるAEを検出するAEセンサと、
前記AEを電気的信号に変換するAE計測手段と、
前記電気的信号の強度の変化を電圧値の変化として表したAE波形を得る数値処理手段と、
前記被成形素材を成形加工する際のクッション圧を測定する圧力測定手段と、
前記クッション圧に基づいてAE波形の評価基準を決定する評価基準決定手段と、
前記評価基準と前記数値処理手段にて得られたAE波形とを比較し、プレス不良発生の有無を評価する評価手段とを、具備することを特徴とする、
プレス監視システム。 - 前記評価基準決定手段は、
良品が得られた成形加工時に計測されたAE波形を前記クッション圧にて定まる補正値で補正して、AE波形の評価基準を決定することを特徴とする、
請求項3に記載のプレス監視システム。 - プレス装置にて被成形素材を成形加工する際に生じるAEの評価方法であって、
成形加工時に生じるAEの強度の変化を電圧値の変化として表したAE波形と、
良品が得られた成形加工時に計測されたAE波形及び前記被成形素材の摩擦係数に基づいて決定されたAE波形の評価基準とを、
比較することにより、プレス不良発生の有無を評価することを特徴とする、
AE評価方法。 - プレス装置にて被成形素材を成形加工する際に生じるAEの評価方法であって、
成形加工時に生じるAEの強度の変化を電圧値の変化として表したAE波形と、
良品が得られた成形加工時に計測されたAE波形及び前記被成形素材を成形加工する際のクッション圧とに基づいて決定されたAE波形の評価基準とを、
比較することにより、プレス不良発生の有無を評価することを特徴とする、
AE評価方法。
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