JP2009300192A - 亀裂検出装置及び亀裂検出方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ワークからのアコースティックエミッション波(AE波)に基づいて複数の情報を取得する情報取得手段20と、複数の情報に基づいて判別分析におけるマハラノビスの距離を算出する距離算出手段30と、距離に基づいてワークの亀裂の有無を判別する判別手段40と、を備えている。情報取得手段20は、AE波の大きさを電圧値として検出する検出手段を備え、この検出手段で検出された電圧値の経時変化から複数の情報を取得する。
【選択図】図2
Description
プレス成形時に板状の鋼材が曲げられると、人間の可聴領域よりも高い周波数の弾性波が素材内から外部へ放出される。この現象はアコースティックエミッション(本明細書中でAEと言う場合がある)として知られている。
このアコースティックエミッション(AE)において、プレス成形時に素材に亀裂が生じると、通常とは異なる弾性波が外部へ放出される。
それゆえ、プレス成形時にアコースティックエミッションによって生じる弾性波、即ちアコースティックエミッション波(本明細書中でAE波と言う場合がある)を検出することで、プレス成形によって得られたプレス成形品の亀裂を検出することができる。以下、素材やプレス成形品等の加工処理を施される材料及びその材料に処理を施して得られたものを、総称して『ワーク』と言う。
基準信号発生部104は、予め統計処理によって得られた割れAE波の標準波に対応する基準信号を発生するものである。
相互相関処理回路105は、前述のメモリ103からの検出信号及び基準信号発生部104からの基準信号に対して相互相関処理を行って相関特性を求めるものである。具体的には、相互相関処理回路105は、計測信号のインパルス応答を求める等のために、所定の式の相互相関関数の演算を行う。
区間設定部106は、前述の相互相関処理で得られた演算範囲において参照すべき範囲を特定するための時間等の範囲を示す信号を出力するものである。
基準設定部107は、判定処理に用いる基準データを判定部108へ出力するものである。
判定部108は、相互相関処理回路105で得られた相関データの内、区間設定部106で指定された範囲のデータに対して、基準データと比較してワークの亀裂の有無を判定する。その結果は、判定結果出力部109へ送信される。
(1)同一のAEセンサー101でも、亀裂の種類によって生じるAE波が異なるため、比較すべき基準となる波形を画一的に設定することはできない。
(2)同じ品番のAEセンサー101であっても図19に示すように個体差があるため、各AEセンサー101から出力されるAE波を同じ基準で比較することはできない。
(3)図20に示すように、同じAEセンサー101から出力データに対して、ワークの亀裂の有無をユークリッド距離で比較しているため、同じスカラーで亀裂有りのワークW1と亀裂無しのワークW2とを区別することができない。
このように、従来装置では、不規則なAE波形によって相互相関処理を正確に行うことは容易ではなかった。
本発明の亀裂検出装置において、好ましくは、情報取得手段は、検出手段から出力される電圧値の経時変化を原波形として、この原波形と該原波形を高速フーリエ変換して得られたFFT波形とから、それぞれ複数の情報を取得する。具体的には、図3に示すように情報取得手段は、原波形から情報を取得する第1情報取得部と、FFT波形から情報を取得する第2情報取得部と、を備えており、複数の情報が、第1情報取得部で得られた数値群と上記第2情報取得部で得られた数値群とで成る。さらに、第1情報取得部と第2情報収得部とは、波形の内、所定の範囲を情報の取得対象とし、さらに上記範囲を複数の区分に区切り、各区域毎に前記数値群をそれぞれ取得して、取得した複数の数値群によって前記複数の情報を構成することが望ましい。
さらに、第1ステップは、原波形から情報を取得する第1の情報取得工程と、FFT波形から情報を取得する第2の情報取得工程と、を含み、複数の情報は、第1の情報取得工程で得られた複数の数値群と第2の情報取得工程で得られた複数の数値群とで成る。ここで、第1の情報取得工程と第2の情報取得工程とは、波形の内、所定の範囲を情報の取得対象とし、さらに上記範囲を複数の区分に区切り、各区域毎に前記数値群をそれぞれ取得して、取得した複数の数値群によって前記複数の情報を構成することが望ましい。
特に、本発明によれば、各ワークから発生するAE波の波形が不規則であっても、多次元空間(即ち、マハラノビス空間)における基準点と単位量を定義し、評価対象のワークから得たサンプルデータが唯一の距離に対する誤差として評価することができるので、安定し、且つ、精度良くワークWを評価測定することができる。
(1)亀裂検出装置を適用したプレスラインシステムの概要
図1は本発明の実施形態に係る亀裂検出装置10を適用したプレスラインシステム1を示す模式図である。このプレスラインシステム1では、プレス装置が4機(A〜D)設けられており、亀裂検出装置10は、板状の鋼材で成るワークWを最も変形させる絞型装置Aで絞加工を施した際にワークWに生じた亀裂を検出する装置である。亀裂検出装置10でワークWの亀裂が検出された場合には、例えば、図1に示す警報ランプ3によって作業者Pへ亀裂発生を報知する。なお、このような報知手段は、警報ランプ3に限らず、スピーカーやディスプレイを利用してもよい。
(2)亀裂検出装置の説明
本発明の実施形態に係る亀裂検出装置10は、ワークWが絞型装置Aでプレス加工される際に発生するAE波から複数の情報を取得し、当該複数の情報からマハラノビスの距離(Mahalanobis distance)を算出して、当該ワークWの亀裂を検出することを特徴としている。
このため、亀裂検出装置10は図2に示すように、情報取得手段20と、距離算出手段30と、判別手段40と、を備えている。
次に、これらの構成要素についてそれぞれ詳述する。
情報取得手段20は、ワークWについての複数の情報を取得するものである。本実施形態では、情報取得手段20は、ワークWより発生するAE波の大きさを電圧値として検出し、検出された電圧値の経時変化から複数の情報を取得する。さらに、この複数の情報は、AE波の電圧値の経時変化を原波形として、この原波形と該原波形を高速フーリエ変換(fast Fourier transform、本願明細書ではFFTと称す)して得られた波形(本願明細書ではFFT波形と称す)とから得られる情報によって構成されている。
このために、情報取得手段20は図3に示すように、AE波の大きさを電圧値として検出する検出手段21と、検出手段21から出力される電圧値の経時変化の原波形から複数の情報を取得する第1情報取得部22と、上記の原波形をFFTしたFFT波形から複数の情報を取得する第2情報取得部23とを備えている。
さらに、本実施形態では、例えば、上記検査対象の波形をさらに5msec間隔ごとに区切り、各5msec間をサンプリングの対象としている。図5は上記の範囲の内、700msec〜705msecにおける波形の拡大図であり、以下詳述するように、第1情報取得部22と第2情報取得部23とはこの5msec間の波形毎に以下の処理を行う。
ここで、間隔V1は0〜0.01〔V〕の範囲であり、間隔V2は0.01〜0.02〔V〕の範囲であり、間隔V13は0.13〜0.14〔V〕の範囲である。
ここで、間隔F1は200〜215〔kHz〕の範囲で、間隔F2は215〜230〔kHz〕の範囲で、間隔F20は685〜700〔kHz〕の範囲である。
具体的には、このデータ群は、図11に示すように各サンプルデータ1〜60を上下に整列させて成る、太線内の(33×60)個の値xi,n(i=1〜33,n=1〜60)から構成されている。なお、図11中の黒丸『・』の部分は値xi,nの表示を省略したものであり、このような表示は以後の図12,図13,図15でも同様である。
この図11において、前述の図7における項目(V1〜V13)は図11の変数(X1〜X13)に対応し、前述の図10の項目(F1〜F20)は図11の変数X14〜X33に対応する。さらに具体的には、図7における項目(V1)の値『9』が図11の値(x1,1)であり、項目(V13)の値『9』が図11の値(x13,1)である。
以下、このように亀裂の有無を判別すべきワークWから取得した上記図11の太枠内の数値群を一つの行列として取り扱い、判断対象のデータVmとする。
距離算出手段30は、情報取得手段20によって得られた判断対象のワークWに関する情報、即ち前述のデータVm(図11参照)に基づいてマハラノビスの距離を算出するものである。なお、距離算出手段30における検査対象のワークWについてのマハラノビスの距離を算出するにあたり、本実施形態に係る亀裂検出装置10は、予め、亀裂が無い良品のワークに関する情報(以下、良品データと言う場合がある)を記憶しており、上記データVmと共に良品データとに基づいて検査対象のワークについてマハラノビスの距離を算出する。
マハラノビスの距離とは、適正であったり正常と評価されるべき良品のワークに関する複数のデータ、即ち良品データの平均の値を原点として、その原点と評価対象のワークWに関するデータとのマハラノビスの距離D2を、データ間の相関を考慮して算出するものである。
このようなマハラノビスの距離D2の算出にあたり、以下のステップ(イ)〜(ハ)を予め行う必要がある。
このため、亀裂の無い良品のワークについて、前記のVmに相当するデータVg(以下、基準データVgと言う場合がある)を作成する。データVgの作成は、前記のVmと同じであり、良品のワークを絞型装置Aで押さえつけた際に生じるAE波をAEセンサーに入力させて、AEセンサーから出力される電圧の経時変化を示す波形の内、図4の四角の領域Sの範囲、即ち700msec〜1000msecを検査対象として、この範囲をさらに5msec間隔毎に区切り、各間隔をサンプリング対象として、各間隔について前述変数X1〜X33に対応する値を求め、700msec〜1000msec内の各5msec間隔から得られた60個のサンプリングデータを取得し、図12に示すようにサンプルデータ1〜60を上下に整列させて、太線内に(33×60)個の値(ai,n)(i=1〜33,n=1〜60)がマトリクス状に配置された空間を基準空間として取り扱う。このように亀裂の無い良品のワークから得た良品データ、即ち上記図12の太枠内の数値群を一つの行列として取り扱い、評価の基準データVgとする。なお、図12において、データVgを構成する各値を、前記のデータVmの値と区別するために『a』を用いて表している。このように、基準空間が、本実施形態では、(33×60)個の値で構成されていることに対応して、データVmも同様に構成されている。
なお、基準空間は上記に限らず、例えば項目数を33項目より多くして或いは少なくしてもよく、また、サンプリングデータの数は上記では60個であるがこの数に限定されるものではなく、非常に精度を高めるためには数百以上が望ましく、場合により60個よりも少ないサンプリングであってもよい。
この基準化多次元ベクトルBnから、基準化値ai,nの相関行列Rは下記式(3)として表される。
このようにして、マハラノビスの距離D2を算出するための準備が完了する。
そして、距離算出手段30は、検査対象のワークWから個々に生じたAE波に基づいて情報取得手段20が取得した検査対象のワークWのデータVmと、上記の逆行列R-1とから、マハラノビスの距離D2を、以下の式(4)から算出する。
本実施形態では60個のサンプルデータを利用しているので、各評価対象のサンプルデータ毎にマハラノビスの距離D2が求まる。
ここで、マハラノビスの距離D2は、ワークWが良品である場合には短く、即ち図13で示すように小さい値として算出される。これらの算出された各距離D2(即ち図13の各値)を図14に示すように0.5毎に距離を区切って、各距離間隔内に含まれるデータの数をカウントすると、良品のワークの距離は大凡0〜3未満の範囲内に集中することが知られている。一方、不良品のワークWにあっては、図15に示すようにマハラノビスの距離D2が長いもの、即ち大きな値が算出され、図16に示すように、良品の数値範囲を超える距離区間に距離が存在するサンプルデータが存在することになる。
判別手段40は、検査対象のワークWについて距離算出手段30で算出されたマハラノビスの距離D2から、ワークWの亀裂の有無を判定する。図14に示すように、距離D2に関して、0.5間隔で評価の程度が等級として表されることになり、例えば、距離D2として参照値Vrefよりも大きな距離D2が存在する場合に、判別手段はワークに亀裂があると判定する。例えば、距離D2が0〜3未満を良品とし、3以上の距離D2が一つでも存在すれば、そのワークを不良品と判断する。
このように、判別手段40は算出された60個の距離D2を参照してVrefよりも大きな距離D2が存在する場合にそのワークWを不良品と判断する。ワークWが不良品であると判断した場合、その旨が警報ランプ3(図1参照)などの報知手段を駆動する図示省略する制御部へ送られて、当該制御部が報知手段を駆動することで、作業者に亀裂の有るワークの存在を知らせることができる。
本発明の実施形態に係る亀裂検出装置10は以上のように構成されており、ワークWの亀裂の検出動作について図17に示す判別フローに基づいて説明する。
検査対象のワークWにプレス加工が施されると、プレス時に発生するAE波が絞型装置A(図1参照)のポンチ型側面に配設されたAEセンサーに入力される(ステップS1)。このAE波の振幅変化がAEセンサーによって検出されて、AEセンサーから亀裂検出装置10の主装置を成すコンピュータ50(図1参照)へ電圧の経時変化として送られる。コンピュータ50では、図示省略する記憶装置にそのデータ(原波形)を格納する(ステップS2)。
20 情報取得手段
21 検出手段
22 第1情報取得部
23 第2情報取得部
30 距離算出手段
40 判別手段
50 コンピュータ
W ワーク
1 プレスラインシステム
2A 上型
2B 下型
3 警報ランプ
4 有線
Claims (11)
- ワークの亀裂を検出する装置であって、
上記ワークからのアコースティックエミッション波に基づいて複数の情報を取得する情報取得手段と、
上記複数の情報に基づいて判別分析におけるマハラノビスの距離を算出する距離算出手段と、
上記距離に基づいて上記ワークの亀裂の有無を判別する判別手段と、
を備えたことを特徴とする、亀裂検出装置。 - 前記情報取得手段が、前記アコースティックエミッション波の大きさを電圧値として検出する検出手段を備え、この検出手段で検出された電圧値の経時変化から前記複数の情報を取得することを特徴とする、請求項1に記載の亀裂検出装置。
- 前記アコースティックエミッション波がプレス装置の成形部で前記ワークをプレス加工する際に生じる弾性波であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の亀裂検出装置。
- 前記情報取得手段が、前記検出手段から出力される電圧値の経時変化を原波形として、 この原波形と該原波形を高速フーリエ変換して得られたFFT波形とから、それぞれ複数の情報を取得することを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の亀裂検出装置。
- 前記情報取得手段が、
前記原波形から情報を取得する第1情報取得部と、
前記FFT波形から情報を取得する第2情報取得部と、を備えており、
前記複数の情報が、上記第1情報取得部で得られた数値群と上記第2情報取得部で得られた数値群とで成ることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の亀裂検出装置。 - 前記第1情報取得部と前記第2情報収得部とが、前記波形の内、所定の範囲を情報の取得対象とし、さらに上記範囲を複数の区分に区切り区域毎に前記数値群をそれぞれ取得し、取得した複数の数値群によって前記複数の情報を構成することを特徴とする、請求項5に記載の亀裂検出装置。
- 前記検出装置が、前記プレス装置で前記ワークを押さえるポンチ型に取り付けられていることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の亀裂検出装置。
- ワークの亀裂を検出する方法であって、
上記ワークから発生するアコースティックエミッション波から複数の情報を取得する第1ステップと、
上記複数の情報に基づいて判別分析におけるマハラノビスの距離を算出する第2ステップと、
上記マハラノビスの距離に基づいて上記ワークの亀裂の有無を判別する第3ステップと、を備えたことを特徴とする、亀裂検出方法。 - 前記第1ステップが、前記アコースティックエミッション波の大きさを示す電圧値の経時変化を原波形として、この原波形と該原波形を高速フーリエ変換したFFT波形とから、それぞれ複数の情報を取得することを特徴とする、請求項8に記載の亀裂検出方法。
- 前記第1ステップが、前記原波形から情報を取得する第1の情報取得工程と、
前記FFT波形から情報を取得する第2の情報取得工程と、を含み、
前記複数の情報が、上記第1の情報取得工程で得られた複数の数値群と上記第2の情報取得工程で得られた複数の数値群とで成ることを特徴とする、請求項9に記載の亀裂検出方法。 - 前記第1の情報取得工程と前記第2の情報取得工程とが、前記波形の内、所定の範囲を情報の取得対象とし、さらに上記範囲を複数の区分に区切り、各区域毎に前記数値群をそれそれ取得して、取得した複数の数値群によって前記複数の情報を構成することを特徴とする、請求項10に記載の亀裂検出方法。
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