JP2007123282A - 有機エレクトロルミネッセンス装置及び電子機器 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス装置及び電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】液相法により形成された有機機能層を備えた有機エレクトロルミネッセンス装置であって、開口率を維持しつつ均一な膜厚に形成された有機機能層を具備し、もって均一かつ高度の発光が得られる有機エレクトロルミネッセンス装置、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の有機EL装置は、画素電極141と共通電極154との間に有機機能層140を挟持した有機EL素子200を基板P上に配設してなり、前記有機機能層140が、前記画素電極の周縁部に沿って立設されたバンク150に囲まれる領域内に配されるとともに、前記画素電極141側から正孔注入層140Aと発光層140Bを積層して含み、前記画素電極141上に、前記正孔注入層140A側へ突出する凸状部149a…が設けられており、前記凸状部149a…と前記発光層140Bとの間には、前記正孔注入層140Aの一部が介在している。
【選択図】図3

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス装置及び電子機器に関するものである。
近年、自発光素子である有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を画素として用いた有機EL装置の開発が進められている。有機EL素子は、陽極と陰極との間に発光層等の有機機能層を挟持した構成を備えており、最近では、有機物材料を溶解した液体材料をインクジェット法によって基板上パターン配置する方法を採用した有機EL装置の開発が行われている。このような有機EL装置では、画素毎を区画する隔壁部材を基板上に設け、この隔壁部材で囲まれた領域内に上記液体材料を吐出するならば、基板上に正確に上記有機機能層を形成することが可能である。
例えば特許文献1では、材質の異なる2層構造の隔壁部材の表面に撥液処理を施し、それらと液体材料との親和性の差異によって液体材料を電極上に均一に配置することが提案されている。また特許文献2では、液体材料が塗布されるべき電極上の領域を凸状部によって平面的に区画することで、液体を塗布する領域を小さくしてインクの偏在を防止することが提案されている。
特許第3328297号公報 特開2003−272872号公報
上記従来技術によれば、電極上に塗布した液体材料の均一化において一定の効果を得ることが可能である。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、電極の周囲に設けた部材によって液体材料との親和性の制御を行うため、電極の平面積に対して液体材料の塗布量が少量である場合には、電極上での濡れ広がりが十分なものとならない可能性がある。特許文献2に記載の技術では、凸状部により区画される領域を十分に小さくすれば、インクの濡れ広がりの問題は生じないが、それに伴って画素の開口率が低下するため、十分な表示輝度が得られなくなる。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、液相法により形成された有機機能層を備えた有機エレクトロルミネッセンス装置であって、開口率を維持しつつ均一な膜厚に形成された有機機能層を具備し、もって均一かつ高度の発光が得られる有機エレクトロルミネッセンス装置、及びその製造方法を提供することを目的としている。
本発明は、上記課題を解決するために、第1電極と第2電極との間に有機機能層を挟持した有機EL素子を基体上に配設してなる有機エレクトロルミネッセンス装置であって、前記有機機能層は、隔壁部材に囲まれた領域に設けられるとともに、前記第1電極側に設けられた電荷輸送層と、前記電荷輸送層の上方に設けられた発光層とを有しており、前記第1電極上に、前記電荷輸送層側へ突出する凸状部が設けられており、前記凸状部は、その側壁に斜面部を有して形成されており、前記凸状部と前記発光層との間には、前記電荷輸送層の一部が介在していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置を提供する。
液相法により前記電荷輸送層を形成する場合、第1電極上に、電荷輸送層を形成するための形成材料と溶媒とを含む液体材料を配し、乾燥固化させることで電荷輸送層を形成する。ここで、本発明では、前記第1電極と有機機能層との間に凸状部が設けられているので、前記液体材料を乾燥固化させる際に、前記凸状部により前記液体材料が画素電極上で流動するのを堰き止めることができ、偏った状態で固化されるのを防止することができる。これにより、電荷輸送層が均一な膜厚、膜質を有して形成される。従って、電荷輸送層上に形成される発光層も平坦化され、均一な膜厚、膜質を有する有機機能層による均一な発光が得られる。また、膜厚が均一であることから、電極間での短絡も良好に防止され、信頼性に優れた有機EL(エレクトロルミネッセンス)装置が得られる。
さらに、上記電荷輸送層は前記凸状部と発光層との間にも介在しているので、凸状部を設けたことによって発光層への電荷輸送が滞ることはなく、発光層はその全面で発光可能になっている。すなわち、凸状部を設けたことで開口率が低下することはない。
さらにまた、前記凸状部は、有機EL素子からの光取り出し効率を高める効果も奏する。有機EL素子の発光層で生じた光は等方的に放射されるので、表示光として取り出される光は有機機能層の層厚方向に射出される光が中心となり、有機機能層の面方向に伝搬する光成分はほとんど表示に寄与しない。そこで、本発明のように電極面から突出する凸状部を設けておくことで、前記面方向に伝搬する光成分の伝搬方向を凸状部で反射又は屈折させて変化させることができるので、当該光成分を表示光として取り出しやすくすることができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記凸状部が、平面視略ストライプ状を成して前記第1電極上に形成されている構成とすることができる。この構成によれば、液相法を用いて電荷輸送層を形成する際に、隔壁部材に囲まれる領域内に配された液体材料を上記略ストライプ状の凸状部に沿って流動させることができ、同領域内に均一に液体材料を満たして均一な膜厚の電荷輸送層を形成することができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、平面視略ストライプ状を成す前記凸状部が、前記有機EL素子の長手方向に沿って延在していることが好ましい。この構成によれば、液体材料の偏在が生じやすい素子の長手方向で液体材料を均一配置できるので、上記膜厚の均一化効果が得やすくなる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記凸状部が概略点状の突起からなり、複数の前記凸状部が前記第1電極上に形成されている構成とすることができる。このような構成とした場合にも、前記凸状部によって液体材料を良好に保持できるので、第1電極上での液体材料の均一配置、並びに形成される電荷輸送層の膜厚の均一化という効果を得ることができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記凸状部を成す突起が、前記第1電極上で等間隔に配列されている構成とすることもできる。この構成によれば、前記第1電極上の全面で均一に液体材料を保持することができ、形成される電荷輸送層の膜厚の均一化が図れる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記凸状部を成す突起が、前記第1電極上の領域の周縁部に高密度に配置されている構成とすることもできる。すなわち、前記突起が特定位置(電極周縁部)で狭間隔に配置されている構成とすることができる。この構成によれば、第1電極上に配された液体材料の形状がその表面張力で半球状(あるいはドーム状)となり、第1電極上で偏在するのを防止することができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記凸状部を成す突起が、前記第1電極上の領域の角部に高密度に配置されている構成とすることができる。この構成によれば、前記角部においても液体材料を良好に保持できるようになり、電荷輸送層を電極上の全面で均一な膜厚に形成できるようになる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記凸状部を成す突起が、前記第1電極上の領域の中央部に高密度に配置されている構成とすることもできる。この構成は、前記第1電極上の領域が一方向に細長い平面形状である場合に特に有効なものである。つまり、細長い形状の第1電極上では、その長手方向端部に液体材料が偏りやすくなるが、第1電極上の中央部に凸状部を高密度に配置することで、第1電極上の領域の中央部に液体材料を保持できるようになり、形成される電荷輸送層の膜厚均一化が図れる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記凸状部がその側壁に斜面部を有して形成されていることが好ましい。このような構成とすることで、電荷輸送層内での膜厚変化を緩和することができ、電荷輸送効率の低下を防止することができるので、均一な発光を得ることが可能になる。また、このような斜面部が設けられていることで、当該斜面部に発光層で生じた光のうち有機機能層の面方向の光成分が入射した際、その光成分を層厚方向に向けて取り出しやすくなるので、有機EL素子の光取り出し効率の向上にも大いに寄与する。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記凸状部が、前記隔壁部材の少なくとも一部と同一の材質であることが好ましい。この構成によれば、前記凸状部を前記隔壁部材を設ける際に同時に形成できるので、工数を増加させることなく上記発光特性の向上効果を得られる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記隔壁部材が、無機絶縁材料からなる第1隔壁層上に、有機絶縁材料からなる第2隔壁層を積層した構成を備えており、前記凸状部が、前記第1隔壁層と同一材質であることが好ましい。この構成によれば、前記第1隔壁層を形成する際に凸状部を同時に形成でき、効率的な製造が可能であるのに加え、前記凸状部が無機絶縁材料により形成されていることで、有機絶縁材料からなる第2隔壁層に比して液体材料に対する親和性を高くすることが容易になる。これにより、第1電極上での液体材料の濡れ広がりをより良好なものとすることができ、電荷輸送層の均一性がさらに高まる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記凸状部が、前記第1電極の一部を成している構成とすることもできる。すなわち、前記凸状部は、第1電極の表面を加工して成形することもできる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記電荷輸送層が1又は複数の導電層であり、前記凸状部が、前記各導電層を層厚方向に跨るように配置されている構成とすることもできる。つまり電荷輸送層は複数層の積層構造であってもよく、この場合には、少なくとも最上層(最も発光層側)の導電層の一部が発光層との間に介在していればよい。
次に、本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法は、第1電極と、電荷輸送層及び発光層を含む有機機能層と、第2電極とを順に積層してなる有機EL素子を基体上に配設してなる有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法であって、基体上に第1電極を形成する工程と、前記第1電極上に凸状部を形成する工程と、前記第1電極の周縁部に沿って隔壁部材を立設する工程と、前記隔壁部材に囲まれた領域内に、電荷輸送材料を含む液体材料を配置する工程と、前記液体材料を乾燥させて前記凸状部を覆う電荷輸送層を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
この製造方法によれば、第1電極上に凸状部を形成し、この凸状部が配された電極上に液体材料を塗布するので、前記液体材料を乾燥させる際に、前記凸状部によって液体材料が偏在化するのを防止することができ、もって均一な膜厚にて電荷輸送層を形成できる。これにより、その上の発光層も平坦化されるので、良好な発光特性を備えた有機EL装置を製造可能である。また、前記凸状部を覆って電荷輸送層を形成するので、発光層への電荷輸送性を損なうことが無く、従って高開口率の有機EL装置を製造することができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法では、前記凸状部を形成する工程と、前記隔壁部材を立設する工程とを同工程にて行うこともできる。
さらに本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法では、前記隔壁部材を立設する工程が、前記基体上に無機絶縁材料からなる第1隔壁層を形成する工程と、該第1隔壁層上に、有機絶縁材料からなる第2隔壁層を積層形成する工程とを含んでおり、前記第1隔壁層を形成する工程において、前記凸状部を前記無機絶縁材料により形成することもできる。
これらの製造方法によれば、前記隔壁部材を形成する工程にて前記凸状部を同時に形成できるので、凸状部を形成する工程を別途設ける必要が無く、効率的な製造を行える。また従来の工程からの移行も容易である。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法では、前記液体材料を配する工程に先立って、前記凸状部表面の前記液体材料に対する親和性を、前記第1電極表面の前記液体材料に対する親和性より高くすることが好ましい。この製造方法によれば、前記凸状部を含む第1電極上に液体材料を塗布した際に、前記凸状部により液体材料を濡れ広がらせることができ、形成される電荷輸送層の均一化を実現できる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法では、前記凸状部を形成する工程が、前記第1電極の表面を部分的に除去する工程であってもよい。すなわち、第1電極が前記凸状部を有するように形成することもできる。この場合にも、前記凸状部によって電荷輸送層の膜厚の均一化が図れ、良好な発光特性を有する有機EL装置が得られる。
次に、本発明の電子機器は、先に記載の本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置を備えたことを特徴としている。この構成によれば、上記本発明の有機EL装置によって高輝度、高コントラストの高画質表示が可能な表示部を備えた電子機器が提供される。
(有機EL装置)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。以下の実施の形態では、有機EL素子を画素として基体上に配列してなる有機EL装置(有機エレクトロルミネッセンス装置)を例示して説明する。この有機EL装置は、例えば電子機器等の表示手段として好適に用いることができるものである。
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態の有機EL装置の回路構成図、図2は、同有機EL装置に備えられた各画素71の平面構造を示す図であって、(a)は画素71のうち、主にTFT等の画素駆動部分を示す図、(b)は画素間を区画するバンク(隔壁部材)等を示す図である。また図3(a)は、図2(a)のA−A線に沿う断面構成を示す図であり、(b)は(a)に示す領域Bの拡大図である。
図1に示すように、有機EL装置70は、透明の基板上に、複数の走査線(配線、電力導通部)131と、これら走査線131に対して交差する方向に延びる複数の信号線(配線、電力導通部)132と、これら信号線132に並列に延びる複数の共通給電線(配線、電力導通部)133とがそれぞれ配線されたもので、走査線131及び信号線132の各交点毎に、画素(画素領域)71が設けられて構成されたものである。
信号線132に対しては、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、及びアナログスイッチ等を備えるデータ側駆動回路72が設けられている。一方、走査線131に対しては、シフトレジスタ及びレベルシフタ等を備える走査側駆動回路73が設けられている。また、画素領域71の各々には、走査線131を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT(薄膜トランジスタ)142と、このスイッチング用TFT(薄膜トランジスタ)142を介して信号線132から供給される画像信号(電力)を保持する保持容量capと、保持容量capによって保持された画像信号がゲート電極に供給される駆動用TFT143と、この駆動用TFT143を介して共通給電線133に電気的に接続したときに共通給電線133から駆動電流が流れ込む画素電極141と、この画素電極141と共通電極154との間に挟み込まれる発光部140と、が設けられている。そして、前記画素電極141と共通電極154と、発光部140とによって構成される素子が、本発明に係る有機EL素子である。
このような構成のもとに、走査線131が駆動されてスイッチング用TFT142がオンとなると、そのときの信号線132の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capの状態に応じて、駆動用TFT143のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT143のチャネルを介して共通給電線133から画素電極141に電流が流れ、さらに発光部140を通じて共通電極154に電流が流れることにより、発光部140は、これを流れる電流量に応じて発光するようになる。
次に、図2(a)に示す画素71の平面構造をみると、画素71は、平面視略矩形状の画素電極141の四辺が、信号線132、共通給電線133、走査線131及び図示しない他の画素電極用の走査線によって囲まれた配置となっている。また図3(a)に示す画素71の断面構造をみると、基板(基体)P上に、駆動用TFT143が設けられており、駆動用TFT143を覆って形成された複数の絶縁膜を介した基板P上に、有機EL素子200が形成されている。有機EL素子200は、基板P上に立設されたバンク(隔壁部材)150に囲まれる領域内に設けられた有機機能層140を主体として構成され、この有機機能層を、画素電極141と共通電極154との間に挟持した構成を備える。
ここで、図2(b)に示す平面構造をみると、バンク150は、画素電極141の形成領域に対応した平面視略矩形状の開口部151を有しており、この開口部151に先の有機機能層140が形成されるようになっている。また、図2(b)及び図3(a)に示すように、画素電極141の表面には、平面視ストライプ状の複数(4本)の凸状部149aが設けられている。
図3(a)に示すように、駆動用TFT143は、半導体膜210に形成されたソース領域143a、ドレイン領域143b、及びチャネル領域143cと、半導体層表面に形成されたゲート絶縁膜220を介してチャネル領域143cに対向するゲート電極143Aとを主体として構成されている。半導体膜210及びゲート絶縁膜220を覆う第1層間絶縁膜230が形成されており、この第1層間絶縁膜230を貫通して半導体膜210に達するコンタクトホール232,234内に、それぞれドレイン電極236、ソース電極238が埋設され、各々の電極はドレイン領域143b、ソース領域143aに導電接続されている。第1層間絶縁膜230には、第2平坦化絶縁膜240が形成されており、この第2平坦化絶縁膜240に貫設されたコンタクトホールに画素電極141の一部が埋設されている。そして画素電極141とドレイン電極236とが導電接続されることで、駆動用TFT143と画素電極141(有機EL素子200)とが電気的に接続されている。画素電極141の周縁部に一部乗り上げるようにして無機絶縁材料からなる無機バンク(第1隔壁層)149が形成され、この無機バンク149と同層に、同一材質の前記凸状部149a…が、有機機能層140側へ突出して形成されている。無機バンク149上には、有機材料からなるバンク(第2隔壁層)150が積層され、この有機EL装置における隔壁部材を成している。
上記有機EL素子200は、画素電極141上に、正孔注入層(電荷輸送層)140Aと発光層140Bとを積層し、この発光層140Bとバンク150とを覆う共通電極154を形成することにより構成されている。正孔注入層140Aは、画素電極141上に設けられた凸状部149a…を覆って形成されており、その周端部は、バンク150の下層側に設けられた無機バンク149のうち、バンク150から画素電極141中央側に突出して配置された部分も覆って形成されている。
基板Pとしては、いわゆるトップエミッション型の有機EL装置の場合、有機EL素子200が配設された側から光を取り出す構成であるので、ガラス等の透明基板のほか、不透明基板も用いることができる。不透明基板としては、例えばアルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、また熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、さらにはそのフィルム(プラスチックフィルム)などが挙げられる。
画素電極141は、基板Pを介して光を取り出すボトムエミッション型の場合には、ITO(インジウム錫酸化物)等の透光性導電材料により形成されるが、トップエミッション型の場合には透光性である必要はなく、金属材料等の適宜な導電材料によって形成できる。
共通電極154は、発光層140Bとバンク150の上面、さらにはバンク150の側面部を形成する壁面を覆った状態で基板P上に形成される。この共通電極154を形成するための材料としては、トップエミッション型の場合、透明導電材料が用いられる。透明導電材料としてはITOが好適であるが、他の透光性導電材料であっても構わない。
共通電極154の上層側には、陰極保護層を形成してもよい。係る陰極保護層を設けることで、製造プロセス時に共通電極154が腐食されるのを防止する効果が得られ、無機化合物、例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン窒酸化物等のシリコン化合物により形成できる。共通電極154を無機化合物からなる陰極保護層で覆うことにより、無機酸化物からなる共通電極154への酸素等の侵入を良好に防止することができる。なお、このような陰極保護層は、共通電極154の平面領域の外側の基板上まで、10nmから300nm程度の厚みに形成される。
上記構成を備えた本実施形態の有機EL装置では、画素電極141の表面領域を平面的に区画するように凸状部149a…が設けられているが、それを覆って正孔注入層140Aが形成されている。従って、図3(a)に示すように、陽極である画素電極141から注入された正孔は、凸状部149aが無い部分では、経路r1で示すように正孔注入層140Aを層厚方向に直進して発光層140Bに到達し、凸状部149aが設けられている部分では、経路r2で示すように、他の領域から注入された正孔が凸状部149aを回り込むようにして発光層140Bに到達する。すなわち、画素電極141の一部が無機絶縁材料からなる凸状部149a…により被覆されていても、発光層140Bと正孔注入層140Aとの界面における電荷輸送性が確保されており、凸状部149a…の形成領域を含む発光層140Bの全面で均一な発光が得られるようになっている。
また図3(b)に拡大して示すように、凸状部149aは、側壁に斜面部149sを有する断面視略台形状に形成されている。このように凸状部149aが斜面部149sを有していることで、正孔注入層140A内部での膜厚差が緩和されるので、有機EL素子200の安定動作に寄与する。また、正孔注入層140A内部を移動する正孔が凸状部149aを回り込みやすくなるので、発光効率の向上にも寄与する。
また凸状部149aの突出高さhは、50nm以下であることが好ましく、10nm〜50nmの範囲であることが好ましい。突出高さhを低くすることで、画素電極141上での段差が小さくなるので、正孔注入層140Aの膜厚の均一化が容易になるとともに、動作時に画素電極から供給された正孔が回り込みやすくなる。突出高さhが10nm〜50nmの範囲であれば、発光効率を向上させる効果が高く、また安定して均一な膜厚の正孔注入層140Aを形成できる。一方、50nmを超える突出高さとすると、正孔注入層140A内での膜厚差が大きくなることから、有機EL素子の平面領域で発光むらを生じるおそれがある。
また詳細は後段の製造方法の説明で述べるが、上記凸状部149a…は、正孔注入層140Aを液相法で形成する際に、その膜厚及び膜質を均一化する作用を奏し、これにより正孔注入層140Aが平坦化されるとともに、その上の発光層140Bも平坦化される。従って、電極間での短絡や、膜厚や膜質の不均一による発光輝度のばらつきも生じ難く、高品質の表示光が得られるものとなっている。また凸状部149aが、図3(b)に示した斜面部149sを備えているならば、液相法を用いて正孔注入層140Aを形成する際に正孔注入層140Aの成膜不良を生じ難くすることができ、均一な膜厚及び膜質の正孔注入層を容易に形成することができる。
従って、本実施形態の有機EL装置によれば、明るくかつ高効率に発光可能な有機EL素子200を備えたことで、高輝度、高コントラストの高画質表示を得ることができる。
さらに上記凸状部149a…は、有機EL素子200の光取り出し効率を高める作用をも奏するものとなっている。図12は、凸状部149aの係る作用を説明するための有機EL素子200の部分断面構成図である。有機EL素子200を構成する画素電極141と共通電極154との間に電源Eから電圧を印加すると、発光層140Bでの電子と正孔との再結合によって発光を生じるが、この光は、発光位置から等方的に散乱する。そのため、素子厚さ方向(図示上下方向)の成分は、容易に表示光として取り出すことができるが、素子面方向(図示左右方向)の成分は、例えばボトムエミッション型の有機EL装置の場合では、ITO等からなる画素電極141と、酸化シリコンや透光性樹脂からなる平坦化絶縁膜240との界面で全反射されて有機EL素子200内に閉じ込められてしまう(光路L3)。これに対して、本実施形態のように画素電極141上に凸状部149a…が設けられていると、素子面方向に伝搬して凸状部149a…に入射した光成分は、正孔注入層140Aと凸状部149aとの屈折率差によって画素電極141側へ屈折し、基板P側へ取り出すことができるようになる(光路L1、L2)。これにより、有機EL素子200の光取り出し効率を高めることができ、明るい表示を得られるようになる。なお、正孔注入層140Aがポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルフォン酸の混合物(PEDOT/PSS)からなるものであれば、その屈折率は1.8程度であり、画素電極141がITOからなる場合の屈折率は2.1〜2.2程度である。また凸状部149aが酸化シリコン(SiO2)からなるものである場合、その屈折率は1.4程度である。
上記光取り出し効率を向上させる効果は、凸状部149aの断面形状によらず得られるものであるが、凸状部149aが図3(b)に示した斜面部149sを備えたものであるならば、図12に示すように、斜面部149sの外面での屈折(光路L1)又は内面での反射(光路L2)によって基板Pの法線側へ伝搬方向を変化させることができるので、光取り出し効率をさらに高めることができ、好ましい構成となる。図3(b)に示した凸状部の斜面部149sの傾斜角度θsは、30°〜60°の範囲とすることが好ましい。傾斜角度θsが30°未満であれば、光取り出し効率を向上させる効果が充分に得られない。60°を超える角度である場合には、画素電極141と共通電極154との間での短絡や、正孔注入層の膜厚や膜質の不均一による発光輝度のばらつきを招きやすい。
なお、上記では有機EL装置がボトムエミッション型である場合について説明したが、この光取り出し効率を高める効果は、トップエミッション型の有機EL装置であっても得ることができる。トップエミッション型では、画素電極141がアルミニウムや銀等の光反射性を具備した導電膜によって形成され、その表面に凸状部149a…が形成されるが、このような構成においても、有機EL素子の面方向に伝搬する光が凸状部149aに入射すれば、その伝搬方向を変化させることができるので、表示光として取り出しやすくなる。
また本実施形態では、凸状部149a…が、無機バンク149とほぼ同一の高さである場合について説明したが、この凸状部149a…の高さはこれに限らず適宜変更することができる。すなわち、発光層140Bと凸状部149a…との間に正孔注入層140Aの一部が介在していることが条件となるので、正孔注入層140Aの層厚を薄くする場合にはそれに応じて低く形成する。上記では凸状部149a…が、無機バンク149と同一材料であることとしているので、例えば酸化シリコン等により形成されるが、凸状部149a…と、無機バンク149とは異なる材料で形成してもよく、例えば酸化チタン等の金属酸化物により形成することもできる。あるいは、凸状部149a…は導電性を有する材料からなるものとしても構わない。例えば、画素電極141の表面を凸状に形成してなる形態も適用可能である。
<第2の実施形態>
上記実施の形態では、正孔注入層140Aが単層構造である場合を図示して説明したが、正孔注入層140Aが2層以上の複層構造であっても本発明は適用できる。図10は、2層構造の正孔注入層140Aを形成した場合における有機EL装置の部分断面構造を示す図であり、同図は図3(a)に相当する断面構成図である。
図10に示すように、正孔注入層140Aが、第1の正孔注入層140A1と第2の正孔注入層140A2とを積層した構造である場合、画素電極141上に設けられる凸状部149a…は、最上層(最も発光層140B寄りの層)である第2の正孔注入層140A2を貫通しない高さ以下の範囲で任意の高さに形成される。例えば図10では、凸状部149a…は第1の正孔注入層140A1を貫通し、その頂部を第2の正孔注入層140A2内に配された状態で配置されているが、凸状部149a…が第1の正孔注入層140A1内にのみ配されている形態であってもよい。いずれの場合にも、発光層140Bへの電荷輸送性を損なうことなく正孔注入層140A1、140A2の平坦化、及び均一化を実現でき、均一な発光を得られ、高輝度の有機EL素子を形成することができる。
<第3の実施形態>
次に、図13を参照して本発明に係る有機EL装置の第3の実施形態について説明する。図13(a)〜(d)は、第3の実施形態に係る有機EL装置の画素71を示す平面構成図であって、図2(b)に相当する図である。
先の第1実施形態では、画素電極141上に設けられる凸状部149aが平面視ストライプ状であるとしていたが、本実施形態の有機EL装置では、図13に示すように、画素電極141上に複数の概略点状の突起(凸状部)149cが形成されている。なお、本実施形態の有機EL装置と第1実施形態の有機EL装置70との異なる点は、上記凸状部の構成のみであり、その他の構成は共通である。
突起149cの形状は特に限定されることなく、円柱状、多角柱状、円錐状、多角錐状、円錐台状、多角錐台状等の種々の形状を適用することができる。また、平面視ないし側面視で対称形状となっていなくてもよい。
図13(a)は、突起149cが電極面141a(バンク150に囲まれた領域に臨む画素電極141表面)に等間隔に配列されている構成例を示している。図13(b)は、突起149cを電極面141aの周縁部に高密度(狭間隔)に配した構成例を示している。図13(c)は、突起149cを電極面141aの周縁部及び角部に高密度に配置した構成例を示している。図13(d)は、突起149cを平面視略矩形状の電極面141aの周縁部及び角部に高密度に配し、さらに電極面141aの中央部にも高密度に配した構成例を示している。
図13(a)〜(d)に示したいずれの構成例においても、先の実施形態の凸状部149aと同様の効果を得ることができ、均一かつ高効率の発光による明るい表示が可能な有機EL装置を得ることができる。特に、図13(b)〜(d)の構成によれば、液相法を用いて正孔注入層140Aを形成する際に膜厚の薄くなりやすい領域での液体材料の保持を良好なものとすることができるため、均一な膜厚及び膜厚を具備した正孔注入層140Aを形成できるという利点が得られる。また図13(d)によれば、画素が細長い形状、例えば短辺と長辺の長さの比率が1:2以上であるような場合に、液体材料が電極面141aの周縁部に引っ張られて中央部の膜厚が薄くなるのを、中央部に高密度に配した突起149cにより防止することができる。
なお、突起149cの平面寸法や突出高さは、画素(バンク150に囲まれる平面領域)の大きさ等に応じて適切な大きさや高さに変更すればよいが、突起149cによって画素電極141の表面が覆われた領域では僅かであるが正孔注入層での抵抗が増加するため、その影響を受けて輝度が低下しやすくなる。有機機能層の膜厚の均一性を向上させる効果や光取り出し効率を向上させる効果を得ながら、この輝度低下の影響を抑えるには、突起149c…の合計面積が画素電極141の面積に対して10%程度以下となるようにすることが好ましい。なお、図2に示した平面視ストライプ状の凸状部149aを形成する場合にも同様の面積率とすることが好ましい。
(有機EL装置の製造方法)
以下、本発明に係る有機EL装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、図1から図3に示した構成を備えた有機EL装置を、液滴吐出法(インクジェット法)を用いて製造する方法を例示して説明する。
<液滴吐出装置>
まず、製造方法の説明に先立ち、有機EL装置の製造に好適に使用できる液滴吐出装置について説明する。図4は本発明の有機EL装置を製造する際に用いる液滴吐出装置を示す概略斜視図である。また、図5及び図6は液滴吐出装置に設けられた液滴吐出ヘッドを示す図である。
図4において、液滴吐出装置IJは、基板Pの表面(所定面)に液滴(インク滴)を配置可能な成膜装置であって、ベース12と、ベース12上に設けられ、基板Pを支持するステージ(ステージ装置)STと、ベース12とステージSTとの間に介在し、ステージSTを移動可能に支持する第1移動装置14と、ステージSTに支持されている基板Pに対して、有機機能層の形成材料を含む液滴を定量的に吐出(滴下)可能な液滴吐出ヘッド20と、液滴吐出ヘッド20を移動可能に支持する第2移動装置16とを備えている。液滴吐出ヘッド20の液滴の吐出動作や、第1移動装置14及び第2移動装置16の移動動作を含む液滴吐出装置IJの動作は制御装置CONTにより制御される。
第1移動装置14はベース12の上に設置されており、Y軸方向に沿って位置決めされている。第2移動装置16は、ベース12の後部12Aに立てられた支柱16A,16Aにより第1移動装置16の上方に支持されている。第2移動装置16のX軸方向は第1移動装置14のY軸方向と直交する方向である。ここで、Y軸方向はベース12の前部12Bと後部12A方向に沿った方向である。これに対してX軸方向はベース12の左右方向に沿った方向であり、各々水平である。また、Z軸方向はX軸方向及びY軸方向に垂直な方向である。
第1移動装置14は例えばリニアモータによって構成され、2本のガイドレール40と、これらのガイドレール40,40に沿って移動可能なスライダー42とを備えている。このリニアモータ形式の第1移動装置14のスライダー42はガイドレール40に沿ってY軸方向に移動して位置決め可能である。スライダー42はZ軸回り(θZ)用のモータ44を備えている。このモータ44は例えばダイレクトドライブモータであり、モータ44のロータはステージSTに固定されている。これにより、モータ44に通電することでロータとステージSTとはθZ方向に沿って回転してステージSTをインデックス(回転割り出し)することができる。すなわち、第1移動装置14はステージSTをY軸方向及びθZ方向に移動可能である。
ステージSTは基板Pを保持し所定の位置に位置決めするものである。また、ステージSTは吸着保持装置50を有しており、吸着保持装置50が作動することによりステージSTに設けられた吸入孔46Aを通して基板PをステージSTの上に吸着して保持する。
第2移動装置16はリニアモータによって構成され、支柱16A,16Aに固定されたコラム16Bと、このコラム16Bに支持されているガイドレール62Aと、ガイドレール62Aに沿ってX軸方向に移動可能に支持されているスライダー60とを備えている。スライダー60はガイドレール62Aに沿ってX軸方向に移動して位置決め可能であり、液滴吐出ヘッド20はスライダー60に取り付けられている。
液滴吐出ヘッド20は揺動位置決め装置としてのモータ62,64,66,68を有している。モータ62を作動すれば、液滴吐出ヘッド20はZ軸に沿って上下動して位置決め可能である。このZ軸はX軸とY軸に対して各々直交する方向(上下方向)である。モータ64を作動すると、液滴吐出ヘッド20はY軸回りのβ方向に沿って揺動して位置決め可能である。モータ66を作動すると、液滴吐出ヘッド20はX軸回りのγ方向に揺動して位置決め可能である。モータ68を作動すると、液滴吐出ヘッド20はZ軸回りのα方向に揺動して位置決め可能である。すなわち、第2移動装置16は液滴吐出ヘッド20をX軸方向及びZ軸方向に移動可能に支持するとともに、この液滴吐出ヘッド20をθX方向、θY方向、θZ方向に移動可能に支持する。
このように、図4の液滴吐出ヘッド20は、スライダー60において、Z軸方向に直線移動して位置決め可能で、α、β、γに沿って揺動して位置決め可能であり、液滴吐出ヘッド20の吐出面20Pは、ステージST側の基板Pに対して正確に位置あるいは姿勢をコントロールすることができる。なお、液滴吐出ヘッド20の吐出面20Pには液滴を吐出する複数のノズルが設けられている。
図5は液滴吐出ヘッド20を示す分解斜視図である。液滴吐出ヘッド20は、複数のノズル81を有するノズルプレート80と、振動板85を有する圧力室基板90と、これらノズルプレート80と振動板85とを嵌め込んで支持する筐体88とを備えて構成されている。
液滴吐出ヘッド20の主要部構造は、図6の斜視図一部断面図に示すように、圧力室基板90をノズルプレート80と振動板85とで挟み込んだ構造とされている。ノズルプレート80のノズル81は、各々圧力室基板90に区画形成された圧力室(キャビティ)91に対応している。圧力室基板90には、シリコン単結晶基板等をエッチングすることにより、各々が圧力室として機能可能にキャビティ91が複数設けられている。キャビティ91同士の間は側壁92で分離されている。各キャビティ91は供給口94を介して共通の流路であるリザーバ93に繋がっている。振動板85は例えば熱酸化膜等により構成される。
振動板85にはタンク口86が設けられ、図4に示したタンク30からパイプ(流路)31を通じて任意の液滴を供給可能に構成されている。振動板85上のキャビティ91に相当する位置には圧電体素子87が配設されている。圧電体素子87はPZT素子等の圧電性セラミックスの結晶を上部電極および下部電極(図示せず)で挟んだ構造を備える。圧電体素子87は制御装置CONTから供給される吐出信号に対応して体積変化を発生可能に構成されている。
液滴吐出ヘッド20から液滴を吐出するには、まず、制御装置CONTが液滴を吐出させるための吐出信号を液滴吐出ヘッド20に供給する。液滴は液滴吐出ヘッド20のキャビティ91に流入しており、吐出信号が供給された液滴吐出ヘッド20では、その圧電体素子87がその上部電極と下部電極との間に加えられた電圧により体積変化を生ずる。この体積変化は振動板85を変形させ、キャビティ91の体積を変化させる。この結果、そのキャビティ91のノズル穴211から液滴が吐出される。液滴が吐出されたキャビティ91には吐出によって減った液体材料が新たに後述するタンク30から供給される。
本実施形態に係る液滴吐出装置IJに備えられた液滴吐出ヘッド20は、圧電体素子に体積変化を生じさせて液滴を吐出させる構成であるが、発熱体により液体材料に熱を加えその膨張によって液滴を吐出させるような構成であってもよい。
図4に戻り、基板P上に設けられる液体材料は、液体材料調整装置Sにより生成される。液体材料調整装置Sは、液体材料を収容可能なタンク30と、タンク30に取り付けられ、このタンク30に収容されている液体材料の温度を調整する温度調整装置32と、タンク30に収容されている液体材料を攪拌する撹拌装置33とを備えている。温度調整装置32はヒータにより構成されており、タンク30内の液体材料を任意の温度に調整する。温度調整装置32は制御装置CONTにより制御され、タンク30内の液体材料は温度調整装置32により温度調整されることで所望の粘度に調整される。
タンク30はパイプ(流路)31を介して液滴吐出ヘッド20に接続しており、液滴吐出ヘッド20から吐出される液体材料の液滴はタンク30からパイプ31を介して供給される。また、パイプ31を流れる液体材料は不図示のパイプ温度調整装置によって所定の温度に制御され、粘度を調整される。更に、液滴吐出ヘッド20から吐出される液滴の温度は、液滴吐出ヘッド20に設けられた不図示の温度調整装置により制御され、所望の粘度に調整されるようになっている。
尚、図4には液滴吐出ヘッド20及び液体材料調整装置Sのそれぞれが1つだけ図示されているが、液滴吐出装置IJには複数の液滴吐出ヘッド20及び液体材料調整装置Sが設けられており、これら複数の液滴吐出ヘッド20のそれぞれから異種または同種の液体材料の液滴が吐出されるようになっている。そして、基板Pに対してこれら複数の液滴吐出ヘッド20のうち、第1の液滴吐出ヘッドから第1の液体材料を吐出した後、これを焼成又は乾燥し、次いで第2の液滴吐出ヘッドから第2の液体材料を基板Pに対して吐出した後これを焼成又は乾燥し、以下、複数の液滴吐出ヘッドを用いて同様の処理を行うことにより、基板P上に複数の材料層が積層され、多層パターンを形成できるようになっている。
<有機EL装置の製造方法>
次に、上述した液滴吐出装置IJを用いた、本発明に係る有機EL装置(有機エレクトロルミネッセンス装置)の製造方法について説明するが、以下に示す手順や液体材料の材料構成は一例であってこれに限定されるものではない。
以下、上記有機EL装置70に備えられる有機EL素子の製造方法について図7及び図8を参照しながら説明する。尚、図7、図8には、説明を簡略化するために単一の画素71についてのみが図示されている。本発明に係る有機EL装置では、有機EL素子の光を基板側から取り出す構成(ボトムエミッション)、及び基板と反対側から取り出す構成(トップエミッション)のいずれも採用できるが、本実施形態ではトップエミッション型の有機EL装置として説明する。
まず、図7(a)に示すように、基板P上に駆動用TFT143を形成する。トップエミッション型では、基板は不透明であってもよいため、アルミナ等のセラミックス、ステンレス等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂なども用いることができるが、従来から液晶装置等に用いられているガラス基板であってもよい。
上記駆動用TFT143の作製手順は、例えば以下のような工程による。
まず、基板Pに対し、必要に応じてTEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約200〜500nmのシリコン酸化膜からなる下地保護膜(図示せず)を形成しておく。その後、基板温度を350℃程度に設定して基板Pの表面にプラズマCVD法により厚さ約30〜70nmのアモルファスシリコン膜を形成し、公知のフォトリソグラフィ技術を用いてパターニングすることで半導体膜210を形成する。そしてこの半導体膜210を、レーザアニールまたは固相成長法などによる結晶化工程に供することで結晶化してポリシリコン膜とする。レーザアニール法では、例えばエキシマレーザであってビームの長寸が400mmのラインビームを用いることができ、その出力強度は例えば200mJ/cm2である。ラインビームについては、その短寸方向におけるレーザ強度のピーク値の90%に相当する部分が各領域毎に重なるようにラインビームを走査する。
次いで、半導体膜210及び基板Pの表面に対して、TEOSや酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約60〜150nmのシリコン酸化膜または窒化膜からなるゲート絶縁膜220を形成する。なお、半導体膜210は、図1に示した駆動用TFT143のチャネル領域及びソース・ドレイン領域となるものであるが、異なる断面位置においてはスイッチング用TFT142のチャネル領域及びソース・ドレイン領域となる半導体膜も形成されている。つまり、図7(a)に示す駆動用TFT143を作製する工程では、2種類のトランジスタ142、143が同時に作製される。
次に、アルミニウム、タンタル、モリブデン、チタン、タングステンなどの金属膜、ないしこれらの積層膜からなる導電膜をスパッタ法等により形成した後、パターニングすることで、ゲート電極143Aを形成する。続いて、半導体膜210に対して、高濃度のリンイオンを打ち込むことで、ゲート電極143Aに対して自己整合的にソース・ドレイン領域143a、143bを形成する。このとき、ゲート電極143Aにより遮蔽されて不純物が導入されなかった部分がチャネル領域143cとなる。その後、半導体膜210及び基板P表面を覆う層間絶縁膜230を形成する。
次に、層間絶縁膜230を貫通するコンタクトホール232及び234を形成し、これらコンタクトホール232及び234内にドレイン電極236及びソース電極238を埋め込むように形成し、駆動用TFT143を得る。ここで、層間絶縁膜230上においてソース電極238に接続するように、不図示の共通給電線(配線)や走査線も形成しておく。
次に、層間絶縁膜230、及び各配線の上面を覆うように平坦化絶縁膜240を形成し、この平坦化絶縁膜240を貫通してドレイン電極236に達するコンタクトホール240aを貫設する。
上記の工程によって駆動用TFT143を形成したならば、次に、図7(b)に示すように、コンタクトホール240aを含む領域に、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて画素電極141をパターン形成する。これにより、先の図2(a)に示したような信号線、共通給電線、及び走査線に囲まれた位置に、ドレイン電極236を介して駆動用TFT143のドレイン領域143aと導電接続された画素電極141が形成される。
本実施形態の場合、有機EL装置はトップエミッション型であるため、画素電極141は透明導電膜である必要はなく、金属材料により形成することができる。画素電極141をアルミニウムや銀等の光反射性の金属膜を含む構成とすれば、この画素電極に入射した光を反射させて観察者側へ射出できるようになる。本有機EL装置では、画素電極141は陽極として機能するので、仕事関数が4.8eV以上の材料で形成することが好ましく、具体例を挙げるならば、ITO/Alの積層膜、Au、Pt等からなる金属膜で形成するのがよい。
尚、この画素電極141の形成に先立って、平坦化絶縁膜240の表面を清浄化する処理(例えば酸素プラズマ処理、UV照射処理、オゾン処理等)を施しておいてもよい。これにより、画素電極141と平坦化絶縁膜240との密着性を向上させることができる。
次に、図7(c)に示すように、画素電極141の周縁部と一部平面的に重なるように、酸化シリコン等の無機絶縁材料からなる無機バンク(第1隔壁層)149を形成する。またこのとき、無機バンク149とともに、画素電極141上に複数の凸状部149a…を形成する。具体的には、画素電極141及び平坦化絶縁膜240を覆うように酸化シリコン膜を形成した後、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて酸化シリコン膜をパターニングし、画素電極141の表面を部分的に開口させることで形成できる。上記凸状部149a…は、酸化シリコンに限らず、酸化チタン等の金属酸化物を用いて形成することもでき、その場合には、画素電極141上に開口領域を有する無機バンク149を形成した後、例えば酸化チタン膜を形成し、パターニングすることで凸状部149aを形成する。
尚、図7及び図8では、図面を見易くするために凸状部149aを2本のみ図示しているが、実際には図2(b)に示したように4本の帯状の凸状部149aが形成されている。また、本実施形態では図2に示した平面視ストライプ状の凸状部149aを形成する場合について図7に示して説明しているが、図13に示した平面視点状の突起149cも上記形成方法で無機バンク149とともに画素電極141上に形成することができる。
ここで、凸状部149aの形成方法を図14を参照して詳細に説明する。図14(a)〜(c)は、画素電極141上に凸状部149a及び無機バンク149を形成する工程を示す断面工程図であり、図7に示す一連の工程のうち、(b)に示す工程と(c)に示す工程との間の工程に相当する図である。
無機バンク149及び凸状部149aを形成するには、まず、図14(a)に示すように、画素電極141上を含む平坦化絶縁膜240上の領域に、酸化シリコン等からなる無機絶縁膜147を形成する。次いで、無機絶縁膜147を覆うようにフォトレジスト148を形成した後、露光、現像処理することで画素電極141上の所定位置に開口部148aを形成する。
次に、図14(b)に示すように、フォトレジスト148をマスクとして用いたエッチング処理により開口部148aの底部に露出されている無機絶縁膜147を部分的に除去する。このとき、本実施形態の製造方法では、エッチング手段158として、等方性のエッチング手段を用いることが好ましい。エッチング手段158によって図示のように無機絶縁膜147を等方的にエッチングすることで、側壁に傾斜面を有する凸状部149aを画素電極141上に形成することができる。また、凸状部149aとともに形成される無機バンク149の開口部149bの縁端にも凸状部149aと同様の斜面部が形成される。
また上記形成方法を用いて図13に示した点状の突起149cを形成する場合、その突出方向に先窄まり状(テーパー状)の突起を形成することができる。このように側壁に傾斜面を有する凸状部149aないしテーパー状の突起149cでは、画素電極141表面との段差が傾斜面によって緩和されるので、後段の工程で画素電極141上に形成される正孔注入層140Aの成膜不良が生じ難くなる。また有機EL装置の動作時には、画素電極から注入された電荷が凸状部を回り込みやすくなるので、発光効率の向上に有利である。さらに、発光層140Bで生じた光のうち、素子の面方向に伝搬する成分が表示光として取り出しやすくなるという効果も得られる。
上記等方性のエッチング手段としては、ウェットエッチングのほか、アノードカップリングやリモートプラズマを用いたドライエッチングを例示することができる。また、酸素含有量を高めたエッチングガスを用い、フォトレジスト148を後退させながら(開口部148aを面方向に拡げつつ)エッチングを行ってもよい。
次に、図7(d)に示すように、無機バンク149上に、アクリル、ポリイミド等の有機絶縁材料からなるバンク(第2隔壁層)150を形成する。バンク150の高さは、例えば1〜2μm程度に設定され、基板P上で有機EL素子の仕切部材として機能する。このような構成のもと、有機EL素子の正孔注入層や発光層の形成場所、すなわちこれらの形成材料の塗布位置とその周囲のバンク150との間に十分な高さの段差からなる開口部151が形成される。
また、このバンク150を形成するに際しては、バンク150の開口部151の壁面を、無機バンク149の開口部149bから若干外側へ後退させて形成するのがよい。このようにバンク150の開口部151内に無機バンク149を一部露出させておくことで、バンク150内での液体材料の濡れ広がりを良好なものとすることができる。
バンク150を形成したならば、次に、バンク150及び画素電極141を含む基体上の領域に対して撥液処理を施す。バンク150は、有機EL素子を区画する仕切部材として機能するので、液滴吐出ヘッド20から吐出される液体材料に対して非親和性(撥液性)を示すものであることが好ましく、前記撥液処理により、バンク150に選択的に非親和性を発現させることができる。
係る撥液処理として、例えばバンクの表面をフッ素系化合物などで表面処理するといった方法を採用できる。フッ素化合物としては、例えばCF4、SF6、CHF3などがあり、表面処理としては、例えばプラズマ処理、UV照射処理などが挙げられる。
このような撥液処理では、基体の一面側全体に処理を施したとしても、ITO膜や金属膜からなる無機材料の画素電極141表面は有機材料からなるバンク150の表面よりも撥液化されにくく、バンク150の表面のみが選択的に撥液化され、バンク150に囲まれる領域内に液体材料に対する親和性の異なる複数の領域が形成される。さらに本実施形態の場合、画素電極141上に凸状部149a…が設けられているが、この凸状部149a…は例えば酸化シリコンからなるものであり、ITO膜や金属膜よりもさらに撥液化されにくい。従って撥液化の度合いは、バンク150が最も大きく、次いで画素電極141、凸状部149a…(及び無機バンク149)の順で小さくなっている。
次に、図8(a)に示すように、基板Pの上面を上に向けた状態で正孔注入層形成材料を含む液体材料114aを液滴吐出ヘッド20によりバンク150に囲まれた塗布位置に選択的に塗布する。正孔注入層を形成するための液体材料114aは図4に示した液体材料調整装置Sにより調製され、正孔注入層形成材料及び溶媒を含む。
正孔注入層形成材料としては、ポリマー前駆体がポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N,N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム、ポリスチレンスルフォン酸、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルフォン酸との混合物(PEDOT/PSS)等を例示することができる。また、溶媒としては、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリノン等の極性溶媒を例示することができる。
上述した正孔注入層形成材料を含む液体材料114aが液滴吐出ヘッド20より基板P上に吐出されると、流動性が高いため水平方向に広がろうとするが、塗布された位置を囲んでバンク150が形成されているので、液体材料114aはバンク150を越えてその外側に広がらないようになっている。また本実施形態では、画素電極141の表面が親液領域となっており、その表面に形成された凸状部149a…の表面は画素電極141表面よりもさらに液体材料との親和性が高くなっているので、画素電極141上に塗布された液体材料114aは、凸状部149a…に沿って画素電極141上に隙間無く濡れ広がり、バンク150内に均一に満たされるようになっている。特に、凸状部149aを酸化チタンにより形成するとともに、液体材料114aに水系の溶媒を用いるならば、凸状部149aと液体材料114aとが極めて良好な親和性を呈することから、正孔注入層140Aの均一化に有効である。
なお、前記液体材料114aは、この液体材料114aを乾燥固化して得られる正孔注入層140B(図8(c)参照)が、凸状部149a…を覆って形成される吐出量に調整されてバンク150内に供給される。
続いて、図8(c)に示すように加熱あるいは光照射により液体材料114aの溶媒を蒸発させて画素電極141上に固形の正孔注入層140Aを形成する。または、大気環境下又は窒素ガス雰囲気下において所定温度及び時間(一例として200℃、10分)焼成するようにしてもよい。あるいは大気圧より低い圧力環境下(減圧環境下)に配置することで溶媒を除去するようにしてもよい。この際、図8(b)に示した液体材料を配置する工程で、バンク150内に液体材料が均一に濡れ拡がっているので、図8(c)に示すように、均一な膜厚を有した平坦膜状の正孔注入層140Aが得られる。
すなわち、本実施形態では、液体材料114aの乾燥時にも凸状部149aの作用により、形成する正孔注入層140Aの膜厚及び膜質を均一化できるようになっている。図9は、この凸状部149aの作用を説明するための部分断面構成図であり、図3(a)に相当する図面である。
液滴吐出ヘッド20から滴下された液体材料114aは、塗布後の乾燥工程において図9に示すようにその液面が徐々に低下し、最終的に固化されて正孔注入層140Aを構成する。このとき、乾燥初期にはバンク150の開口部151内で断面凸形の液面を成しているが、液量が少なくなるにつれてバンク150の内壁に引っ張られるように断面凹形の液面形状となっていく。これはバンク150表面に撥液処理が施されているとはいえ表面張力があるため、この表面張力によって液面が引っ張られるためであるが、このとき液面とともに液体材料114aの内部でもバンク150側へ向かって液体が流動し、溶質(正孔注入層形成材料)がバンク150側へ移動する。ここで凸状部149a…が設けられていないとすれば、液体材料114aは画素電極141の外周部に偏ることになり、得られる正孔注入層140Aも外周側で膜厚が大きいものとなるが、凸状部149a…が設けられていれば、図に示すように液体材料114aの流動を阻害するように機能するので、液体材料114aが画素電極141上で偏在するのを効果的に防止することができ、従って得られる正孔注入層140Aも膜厚、膜質が均一であり、その表面の平坦性にも優れたものとなる。
また、画素電極141上に図13(a)に示した配置で突起149c…が設けられていれば、画素電極141上の全面で液体材料の偏在を防止することができる。また、図13(b)に示した配置で突起149c…が設けられていれば、バンク150内に吐出された液体材料がその表面張力で球状に変形するのを抑制でき、電極面141aの周縁部で膜厚が薄くなるのを防止することができる。また図13(c)に示した配置で突起149c…が設けられていれば、前記液体材料の球状変形によって電極面141aの角部から液体材料が離れるのを防止でき、当該角部においても均一な膜厚の正孔注入層140Aを形成することができる。また図13(d)に示した配置で突起149c…が設けられていれば、細長い形状の電極面141aの中央部に設けられた突起149cにより、電極面141aの長手方向端部に液体材料が偏在するのを防止でき、均一な膜厚で正孔注入層140Aを形成することができる。
続いて、図8(b)に示すように、基板Pの上面を上に向けた状態で液滴吐出ヘッド20より発光層形成材料と溶媒とを含む液体材料114bをバンク150内の正孔注入層140A上に選択的に塗布する。
この発光層形成材料としては、例えば共役系高分子有機化合物の前駆体と、得られる発光層の発光特性を変化させるための蛍光色素とを含んでなるものを好適に用いることができる。共役系高分子有機化合物の前駆体は、蛍光色素等とともに液滴吐出ヘッド20から吐出されて薄膜に成形された後、例えば以下の(化I)に示すように加熱硬化されることによって共役系高分子有機EL層となる発光層を生成し得るものをいい、例えば前駆体のスルホニウム塩の場合、加熱処理されることによりスルホニウム基が脱離し、共役系高分子有機化合物となるもの等である。
Figure 2007123282
このような共役系高分子有機化合物は固体で強い蛍光を持ち、均質な固体超薄膜を形成することができる。しかも形成能に富みITO電極との密着性も高い。さらに、このような化合物の前駆体は、硬化した後は強固な共役系高分子膜を形成することから、加熱硬化前においては前駆体溶液を後述する液滴吐出パターニングに適用可能な所望の粘度に調整することができ、簡便かつ短時間で最適条件の膜形成を行うことができる。
上記前駆体としては、例えばPPV(ポリ(パラ−フェニレンビニレン))またはその誘導体の前駆体が好ましい。PPVまたはその誘導体の前駆体は、水あるいは有機溶媒に可溶であり、また、ポリマー化が可能であるため光学的にも高品質の薄膜を得ることができる。さらに、PPVは強い蛍光を持ち、また二重結合のπ電子がポリマー鎖上で非極在化している導電性高分子でもあるため、高性能の有機EL素子を得ることができる。
このようなPPVまたはPPV誘導体の前駆体として、例えば化学式(II)に示すような、PPV(ポリ(パラ−フェニレンビニレン))前駆体、MO−PPV(ポリ(2,5−ジメトキシ−1,4−フェニレンビニレン))前駆体、CN−PPV(ポリ(2,5−ビスヘキシルオキシ−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)))前駆体、MEH−PPV(ポリ[2−メトキシ−5−(2'−エチルヘキシルオキシ)]−パラ−フェニレンビニレン)前駆体等が挙げられる。
Figure 2007123282
PPVまたはPPV誘導体の前駆体は、前述したように水に可溶であり、成膜後の加熱により高分子化してPPV層を形成する。前記PPV前駆体に代表される前駆体の含有量は、液体材料組成物全体に対して0.01〜10.0wt%が好ましく、0.1〜5.0wt%がさらに好ましい。前駆体の添加量が少な過ぎると共役系高分子膜を形成するのに不十分であり、多過ぎると液体材料組成物の粘度が高くなり、液滴吐出法(インクジェット法)による精度の高いパターニングに適さない場合がある。
さらに、発光層形成材料としては、少なくとも1種の蛍光色素を含むのが好ましい。これにより、発光層の発光特性を変化させることができ、例えば、発光層の発光効率の向上、または光吸収極大波長(発光色)を変えるための手段としても有効である。すなわち、蛍光色素は単に発光層材料としてではなく、発光機能そのものを担う色素材料として利用することができる。例えば、共役系高分子有機化合物分子上のキャリア再結合で生成したエキシトンのエネルギーをほとんど蛍光色素分子上に移すことができる。この場合、発光は蛍光量子効率が高い蛍光色素分子からのみ起こるため、発光層の電流量子効率も増加する。したがって、発光層の形成材料中に蛍光色素を加えることにより、同時に発光層の発光スペクトルも蛍光分子のものとなるので、発光色を変えるための手段としても有効となる。
なお、ここでいう電流量子効率とは、発光機能に基づいて発光性能を考察するための尺度であって、下記式により定義される。
ηE=放出されるフォトンのエネルギー/入力電気エネルギー
そして、蛍光色素のドープによる光吸収極大波長の変換によって、例えば赤、青、緑の3原色を発光させることができ、その結果フルカラー表示体を得ることが可能となる。さらに蛍光色素をドーピングすることにより、EL素子の発光効率を大幅に向上させることができる。
蛍光色素としては、赤色発光層を形成する場合、赤色に発光するローダミンまたはローダミン誘導体を好ましく用いることができる。これらの蛍光色素は、低分子であるため水溶液に可溶であり、またPPVと相溶性がよく、均一で安定した発光層の形成が容易である。このような蛍光色素として具体的には、ローダミンB、ローダミンBベース、ローダミン6G、ローダミン101過塩素酸塩等が挙げられ、これらを2種以上混合したものであってもよい。
また、緑色発光層を形成する場合、緑色に発光するキナクリドンおよびその誘導体を好ましく用いることができる。これらの蛍光色素は前記赤色蛍光色素と同様、低分子であるため水溶液に可溶であり、またPPVと相溶性がよく発光層の形成が容易である。
さらに、青色発光層を形成する場合、青色に発光するジスチリルビフェニルおよびその誘導体を好ましく用いることができる。これらの蛍光色素は前記赤色蛍光色素と同様、低分子であるため水・アルコール混合溶液に可溶であり、またPPVと相溶性がよく発光層の形成が容易である。
また、青色に発色する他の蛍光色素としては、クマリンおよびその誘導体を挙げることができる。これらの蛍光色素は、前記赤色蛍光色素と同様、低分子であるため水溶液に可溶であり、またPPVと相溶性がよく発光層の形成が容易である。このような蛍光色素として具体的には、クマリン、クマリン−1、クマリン−6、クマリン−7、クマリン120、クマリン138、クマリン152、クマリン153、クマリン311、クマリン314、クマリン334、クマリン337、クマリン343等が挙げられる。
さらに、別の青色の発色光を有する蛍光色素としては、テトラフェニルブタジエン(TPB)またはTPB誘導体を挙げることができる。これらの蛍光色素は、前記赤色蛍光色素等と同様、低分子であるため水溶液に可溶であり、またPPVと相溶性がよく発光層の形成が容易である。
以上の蛍光色素については、各色ともに1種のみを用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
これらの蛍光色素については、前記共役系高分子有機化合物の前駆体固型分に対し、0.5〜10wt%添加するのが好ましく、1.0〜5.0wt%添加するのがより好ましい。蛍光色素の添加量が多過ぎると発光層の耐候性および耐久性の維持が困難となり、一方、添加量が少なすぎると、前述したような蛍光色素を加えることによる効果が十分に得られないからである。
また、前記前駆体および蛍光色素については、極性溶媒に溶解または分散させて液体材料とし、この液体材料を液滴吐出ヘッド20から吐出するのが好ましい。極性溶媒は、前記前駆体、蛍光色素等を容易に溶解または均一に分散させることができるため、液滴吐出ヘッド20のノズル孔での発光層形成材料中の固型分が付着したり目詰りを起こすのを防止することができる。
このような極性溶媒として具体的には、水、メタノール、エタノール等の水と相溶性のあるアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルイミダゾリン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、2,3−ジヒドロベンゾフラン等の有機溶媒または無機溶媒が挙げられ、これらの溶媒を2種以上適宜混合したものであってもよい。
更に、前記形成材料中に湿潤剤を添加しておくのが好ましい。これにより、形成材料が液滴吐出ヘッド20のノズル孔で乾燥・凝固することを有効に防止することができる。かかる湿潤剤としては、例えばグリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールが挙げられ、これらを2種以上混合したものであってもよい。この湿潤剤の添加量としては、形成材料の全体量に対し、5〜20wt%程度とするのが好ましい。
尚、その他の添加剤、被膜安定化材料を添加してもよく、例えば、安定剤、粘度調整剤、老化防止剤、pH調整剤、防腐剤、樹脂エマルジョン、レベリング剤等を用いることができる。
上記、液体材料114bを液滴吐出ヘッド20から吐出することによる発光層の形成は、赤色の発色光を発光する発光層形成材料を含む液体材料、緑色の発色光を発光する発光層形成材料を含む液体材料、青色の発色光を発光する発光層形成材料を含む液体材料を、それぞれ対応する画素71(開口部151)に吐出し塗布することによって行う。なお、各色に対応する画素71は、これらが規則的な配置となるように予め決められている。
このようにして各色の発光層形成材料を含む液体材料114bを吐出し塗布したならば、液体材料114b中の溶媒を蒸発させる。この工程により、図8(c)に示すように正孔注入層140A上に固形の発光層140Bが形成され、これにより正孔注入層140Aと発光層140Bとからなる有機機能層140が得られる。ここで、発光層形成材料を含む液体材料114b中の溶媒の蒸発については、必要に応じて加熱あるいは減圧等の処理を行うが、発光層形成材料は通常乾燥性が良好で速乾性であることから、特にこのような処理を行うことなく、したがって各色の発光層形成材料を順次吐出塗布することにより、その塗布順に各色の発光層140Bを形成することができる。また先に記載のように、液体材料114bが配される正孔注入層140Aの表面は良好に平坦化されているので、その上に形成される発光層140Bも良好な平坦性を持って形成され、膜厚及び膜質が均一なものとなる。従って、均一かつ良好な発光特性、信頼性を備えた発光層となる。
その後、図8(c)に示すように、基板Pの表面全体に、あるいはストライプ状に、ITO等の透明導電材料からなる共通電極154を形成する。こうして、有機EL素子200を製造することができる。尚、本実施形態において有機EL素子200は画素電極141と正孔注入層140Aと発光層140Bと共通電極154とを含むものである。
このような有機EL素子の製造方法において、正孔注入層140Aや発光層140Bといった有機EL素子の構成要素となる薄膜は液滴吐出装置IJにより製造されるので、正孔注入層140Aや発光層140Bの形成材料となる液体材料のロスは少なく、正孔注入層140Aや発光層140Bは比較的安価にしかも安定して形成される。
ところで、図8(c)に示すように、形成された駆動用TFT143と有機EL素子200とは基板Pの法線方向において重なり合わないように配置されているが、発光層からの光を基板Pと反対側から取り出す所謂トップエミッション構造では、駆動用TFT143と有機EL素子とが重なり合っていても問題ない。トップエミッション構造においてはバンク150の下方に薄膜トランジスタを配置する必要がなく、バンク150の形成領域を小さくすることができるとともに有機EL素子の形成領域を大きくすることができるので、発光面積を大きくすることができる。
以上説明したように、本発明に係る製造方法によれば、基板P上にバンク150及び有機EL素子200を形成するに際して、画素電極141上に凸状部149a…を形成しておき、その後バンク150の内部に液体材料114aを配するので、画素電極141表面で液体材料が均一に濡れ広がり、かつ均一な膜厚にて乾燥固化することができる。これににより、画素71内で均一な発光特性が得られ、また膜厚が均一であることから電極間の短絡も生じ難い、信頼性に優れた有機EL素子200を製造することができる。
また上記凸状部149a…は、無機バンク149を形成する工程にて同時に形成できるため、工数の増加を伴うことなく上記有機EL素子の特性向上を実現できる。但し、凸状部149a…は、無機バンク149と同層に形成する必要はなく、別工程で画素電極141上に形成してもよく、無機バンク149とは異なる材質であっても構わない。あるいは、画素電極141の表面を直接加工して凸状部を形成することもできる。
上記実施形態では、液滴吐出装置IJを用いた液滴吐出法により液体材料を塗布することで有機機能層140を形成する場合について説明したが、液滴吐出法に限らず、例えばスピンコート法、スリットコート(或いはカーテンコート)、ダイコート法など他の塗布方法を用いることもできる。また、液体材料の生成工程や成膜工程は大気環境下で行ってもよいし窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。なお、液体材料調整装置Sによる液体材料の生成工程や液滴吐出装置IJによる成膜工程はクリーンルーム内でパーティクル及びケミカル的にクリーン度を維持された環境下で行うのが望ましい。
(電子機器)
図11は、本発明に係る電子機器の一例を示す斜視構成図である。
図11に示す映像モニタ1200は、先の実施形態の有機EL表示装置(表示装置)を備えた表示部1201と、筐体1202と、スピーカ1203等を備えて構成されている。そして、この映像モニタ1200は、先の有機EL装置により高画質で、均一な明るさの表示が可能である。特に大型のパネルでは画素が大型であるため、発光部である有機機能層を均一に形成するのが困難になるが、本発明に係る有機EL装置では、任意の大きさの有機機能層を均一に形成できるため、大型のパネルに用いて好適な有機EL装置となっている。
上記各実施の形態の有機EL装置は、上記携帯電話に限らず、電子ブック、パーソナルコンピュータ、デジタルスチルカメラ、ビューファインダ型あるいはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等々の画像表示手段として好適に用いることができ、いずれの電子機器においても、高画質表示が可能になっている。
図1は、第1実施形態に係る有機EL装置の回路構成図。 図2は、同、平面構成図。 図3は、図2のA−A線に沿う断面構成図。 図4は、液滴吐出装置の斜視構成図。 図5は、液滴吐出ヘッドの説明図。 図6は、液滴吐出ヘッドの説明図。 図7は、実施形態に係る有機EL装置の製造工程を示す断面構成図。 図8は、実施形態に係る有機EL装置の製造工程を示す断面構成図。 図9は、有機EL装置の製造方法における作用説明図。 図10は、第2実施形態に係る有機EL装置の断面構成図。 図11は、電子機器の一例を示す斜視構成図。 図12は、第1実施形態に係る有機EL素子の部分断面構成図。 図13は、第3実施形態に係る有機EL装置を示す平面構成図。 図14は、有機EL装置の製造工程を示す断面構成図。
符号の説明
20…液滴吐出ヘッド、70…有機EL装置、114a,114b…液体材料、140…有機機能層、141…画素電極(第1電極)、142…スイッチング用TFT、143…駆動用TFT、149…無機バンク(第1隔壁層)、149a…凸状部、150…バンク(第2隔壁層;隔壁部材)、154…共通電極(第2電極)、200…有機EL素子、230,240…層間絶縁膜、IJ…液滴吐出装置、P…基板(基体)。

Claims (9)

  1. 第1電極と第2電極との間に有機機能層を挟持した有機EL素子を基体上に配設してなる有機エレクトロルミネッセンス装置であって、
    前記有機機能層は、隔壁部材に囲まれた領域に設けられるとともに、前記第1電極側に設けられた電荷輸送層と、前記電荷輸送層の上方に設けられた発光層とを有しており、
    前記第1電極上に、前記電荷輸送層側へ突出する凸状部が設けられており、
    前記凸状部は、その側壁に斜面部を有して形成されており、
    前記凸状部と前記発光層との間には、前記電荷輸送層の一部が介在していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置。
  2. 前記凸状部が概略点状の突起からなり、複数の前記凸状部が前記第1電極上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
  3. 前記凸状部を成す突起が、前記第1電極上の領域の周縁部に高密度に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
  4. 前記凸状部を成す突起が、前記第1電極上の領域の角部に高密度に配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
  5. 前記凸状部を成す突起が、前記第1電極上の領域の中央部に高密度に配置されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
  6. 前記凸状部が、平面視略ストライプ状を成して前記第1電極上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
  7. 前記凸状部が、前記隔壁部材の少なくとも一部と同一の材質であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
  8. 前記凸状部が、前記第1電極の一部を成していることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
  9. 請求項1から8のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置を備えたことを特徴とする電子機器。
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