JP2007119674A - 水溶性助剤及びその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】樹脂(特に溶融粘度が高い樹脂)との溶融混練性が高く、溶融混練又はその後の成形加工に伴って形成された所定形状の樹脂成形体を容易に分離できる水溶性助剤とその用途を提供する。
【解決手段】水溶性助剤を、少なくとも1つの環状構造(例えば、α−1,4−グルコシド結合とα−1,6−グルコシド結合とで構成された環状構造)を有する水溶性多糖類で構成する。水溶性助剤は、さらに、前記多糖類を可塑化するための水溶性可塑化成分(例えば、糖類又は糖アルコール)で構成してもよい。このような水溶性助剤は、実質的に水を含むことなく、樹脂成分などの溶融可能な有機固体成分と混練して溶融成形可能である。
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂などの溶融可能な有機固体成分と組み合わせて用いることにより、有機固体成分の粒子(樹脂粒子など)や多孔体を得るのに有用な水溶性助剤(又は加工助剤)とその用途(前記水溶性助剤を含む溶融成形可能な組成物、分散体及び得られた粒子など)に関する。
従来、樹脂粒子を製造する方法としては、機械的な粉砕法、例えば、樹脂や樹脂組成物を、クラッシャーなどで粗粉砕した後、ジェットミルなどを用いて微粉砕し、その後風力分級機などにより分級する方法が利用されている。しかし、このような方法では、製造機器が高価であることに加え、得られた粒子も不定形で、粒子サイズにばらつきがある。また、樹脂粒子のサイズを揃えるためには、分級する必要があり、分級により、利用できないサイズの樹脂粒子が大量に生成するため、経済的にも不利である。さらに、粒子同士のブロッキング、分散性、流動性などの観点から、球状の粒子が好ましいものの、機械的な粉砕法では、球状の微粒子を得ることは不可能である。
特開平10−176065号公報(特許文献1)には、微粉末化する熱可塑性樹脂(a)に、他の1種類以上の熱可塑性樹脂(b)を溶融混練することにより、樹脂(a)が分散相、樹脂(b)が連続相を構成する樹脂組成物を得て、樹脂(a)は溶解せず、樹脂(b)が溶解するような溶媒で前記樹脂組成物を洗浄することにより、樹脂(a)の球状微粒子を得る方法が開示されている。しかし、この方法では、分散相と連続相とがそれぞれ非相溶である必要があるだけでなく、分散相の樹脂の種類によって、連続相の樹脂と溶媒との適正な組み合わせを選択する必要があるため、樹脂同士の組合せが制限されるだけでなく、樹脂及び溶媒の組み合わせについても制限される。また、連続相を形成する樹脂は、製品となる樹脂微粒子にはなんら関与しないため、最終的に回収されるか、あるいは溶解状態のまま廃棄されることになる。しかし、溶液中の樹脂を回収することは、非常に困難であるばかりか、樹脂微粒子の製造コストを上昇させる要因となる。また、樹脂溶液を廃液としてそのまま廃棄した場合、環境への悪影響も懸念される。
特開昭60−13816号公報(特許文献2)には、ポリエチレングリコールと熱可塑性樹脂とを溶融撹拌した後に、水中に投入して両ポリマーを凝固させ、その後、水を用いて、ポリエチレングリコールを除去する熱可塑性樹脂粒子の製造方法が提案されている。特開昭61−9433号公報(特許文献3)には、熱可塑性樹脂とポリエチレンオキサイドとを溶融撹拌した後に冷却させ、水を用いて、ポリエチレンオキサイドを除去する熱可塑性樹脂粒子の製造方法が開示されている。特開平9−165457号公報(特許文献4)には、ポリビニルアルコール系樹脂、変性澱粉、ポリエチレンオキサイドなどの溶融成形可能な水溶性高分子と、熱可塑性樹脂とを混合して溶融成形物を得た後、水を用いて、成形物から水溶性高分子を除去する樹脂微粒子の製造方法が開示されている。
しかし、これらの方法においても、樹脂と水溶性高分子との非相溶性が必要であるため、選択できる樹脂の組合せが限定されるだけでなく、得られる樹脂粒子の粒子径分布の均一性は十分ではない。特に、溶融状態での剪断粘度を高めて樹脂との溶融混練性を高めると、水溶性高分子の水への溶解度が小さいため、溶解させるために大量の水が必要であるとともに、溶解速度が遅いため、生産性を著しく低下させる。また、水溶性高分子の水溶液の粘度が高いため、樹脂粒子の回収をさらに困難にする。一方、水に対する水溶性高分子の溶解性を高めると、溶融状態での剪断粘度が低下するため、樹脂と均一に溶融混練できず、樹脂を粒子状などの形態に成形できなくなる。さらに、このような水溶性高分子は、非天然物由来である場合が多いため、このような水溶性高分子を溶解した廃液は、環境に悪影響を及ぼす。
このような問題点を解決するため、オリゴ糖を用いた水溶性助剤が開示されている。例えば、特開2004−51942号公報(特許文献5)には、樹脂成分(A)及び水溶性乳化媒体(B)で構成された分散体であって、乳化媒体(B)が、少なくともオリゴ糖(B1)で構成されている分散体、および前記分散体から乳化媒体(B)を溶出し、樹脂成分(A)で構成された成形体を製造する方法が開示されている。この文献には、(i)前記乳化媒体(B)が、海島構造における連続相または共連続相を形成していてもよいこと、(ii)前記分散体は、樹脂成分(A)と乳化媒体(B)とを混練することにより調製できることが記載されている。
また、特開2005−162841号公報(特許文献6)には、オリゴ糖(A1)と、このオリゴ糖(A1)を可塑化するための水溶性可塑化成分(A2)とで構成され、かつ実質的に水を含むことなく溶融成形可能な水溶性助剤が開示されている。この文献には、オリゴ糖を必須成分とする水溶性助剤成分と熱可塑性樹脂とを溶融攪拌し、熱可塑性樹脂を分散相、水溶性助剤成分を連続相とする分散体を得た後に、水溶性助剤成分を水により除去して、熱可塑性樹脂の粒子が得られることが記載されている。
しかし、これらの文献に記載の水溶性助剤は、オリゴ糖で構成されているため、溶融粘度を上昇させるには限界があり、樹脂の種類(例えば、粘度の比較的大きい樹脂)などによっては、溶融混練して成形体(例えば、樹脂粒子)を得ることには、困難性を要する場合がある。すなわち、オリゴ糖では、樹脂などの有機固体成分の溶融温度における剪断粘度が小さいため、有機固体成分と水溶性助剤との混練温度において、これらを均一に混合できず、その結果、微小でかつ均一な粒子径を有する粒子などが得られなくなる場合がある。特に、融点が高い有機固体成分や、低融点であっても溶融粘度が高い有機固体成分では、溶融粘度の高い熱可塑性樹脂では、小粒子化、さらには粒子化することすら困難になる。
特開平10−176065号公報(特許請求の範囲) 特開昭60−13816号公報(特許請求の範囲) 特開昭61−9433号公報(特許請求の範囲) 特開平9−165457号公報(特許請求の範囲) 特開2004−51942号公報(特許請求の範囲、段落番号[0103]) 特開2005−162841号公報(特許請求の範囲)
従って、本発明の目的は、樹脂(特に、融点が高い樹脂や、低融点であっても溶融粘度が高い樹脂)などの溶融可能な有機固体成分との溶融混練性を改善できるとともに、溶融混練又はその後の成形加工に伴って形成された所定形状の有機固体成分を溶融混練物(又は分散体)から容易に分離できる水溶性助剤(又は水溶性加工助剤)とその用途(樹脂などの有機固体成分を含む溶融成形可能な組成物や分散体、粒子や多孔体などの成形体など)を提供することにある。
本発明の他の目的は、水に対する溶解性が高いとともに水溶液粘度が低く、水溶性成分を工業的に有利に溶出でき、水による溶出分離性の高い水溶性助剤(又は水溶性加工助剤)とその用途を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、融点が高い樹脂や溶融粘度が比較的高い樹脂(特に、低融点でかつ溶融粘度が高い樹脂)であっても、小さい粒子径で樹脂粒子を得ることができる水溶性助剤(又は水溶性加工助剤)とその用途を提供することにある。
本発明の別の目的は、溶融粘度が比較的高い樹脂や高融点の樹脂であっても、小粒径で、かつ狭い粒径分布で粒子(有機固体粒子)を得ることができる水溶性助剤(又は水溶性加工助剤)とその用途を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、樹脂粒子などの粒径のサイズ(および粒径分布)や成形体の孔径を簡便にかつ効率よくコントロールできる水溶性助剤(又は水溶性加工助剤)とその用途を提供することにある。
本発明の他の目的は、樹脂粒子などの成形体を工業的に有利に製造するのに適した水溶性助剤(又は水溶性加工助剤)とその用途を提供することにある。
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、溶融可能な有機固体成分と溶融混練して前記有機固体成分の成形体を生成するための助剤として、特定の多糖類で構成された水溶性助剤を用いると、溶融混練において水溶性助剤の剪断粘度を適度に保持でき、特に融点が高い樹脂や溶融粘度が高い樹脂(特に、低融点でかつ溶融粘度が高い樹脂)であっても、溶融混練性を改善でき、しかも、混練後には溶融混練物(又は分散体)から容易に分離できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の水溶性助剤(又は水溶性加工助剤)は、溶融可能な有機固体成分と溶融混練して前記有機固体成分の成形体を生成(又は形成又は製造)するための助剤であって、少なくとも1つの環状構造を有する水溶性多糖類で構成されている。
前記多糖類において、環状構造を形成するグリコース単位の平均重合度は、1つの環状構造あたり10以上であってもよい。また、前記多糖類において、環状構造は、1,6−グルコシド結合を含む環状構造(又は環、環状ユニット)であってもよく、例えば、α−1,4−グルコシド結合とα−1,6−グルコシド結合とを有する環状構造であってもよい。
代表的には、環状構造を有する水溶性多糖類は、α−1,4−グルコシド結合およびα−1,6−グルコシド結合を有し、1つの環状構造あたりグリコース単位の平均重合度が10以上である環状構造と、この環状構造に結合した非環状構造とを有し、かつ平均重合度(総平均重合度)50以上である多糖類で構成されていてもよい。
本発明の水溶性助剤は、さらに、オリゴ糖で構成されていてもよい。このようなオリゴ糖は、少なくとも四糖類で構成されていてもよい。このようなオリゴ糖を含む水溶性助剤において、前記多糖類とオリゴ糖との割合は、前者/後者(重量比)=95/5〜10/90程度であってもよい。
また、本発明の水溶性助剤は、さらに、前記多糖類を可塑化するための水溶性可塑化成分で構成されていてもよい。水溶性可塑化成分は、例えば、糖類および糖アルコールから選択された少なくとも1種で構成されていてもよい。前記水溶性可塑化成分は、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、ズルシトール及びマンニトールから選択された少なくとも一種で構成されていてもよい。このような水溶性可塑化成分を含む水溶性助剤において、前記多糖類と水溶性可塑化成分との割合は、前者/後者(重量比)=90/10〜40/60程度であってもよい。
本発明には、前記水溶性助剤と、溶融可能な有機固体成分とで構成されている溶融成形可能な組成物も含まれる。前記有機固体成分は、樹脂成分で構成されていてもよい。このような樹脂成分は、特に高い融点又は高い溶融粘度を有する樹脂であってもよく、例えば、前記有機固体成分は、環状ポリオレフィン系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、およびポリアミド系樹脂から選択された少なくとも1種で構成されていてもよい。また、本発明には、前記水溶性助剤及び有機固体成分のうち、一方の成分がマトリックスを形成し、他方の成分が分散相を形成した分散体も含まれる。このような分散体は、代表的には、前記水溶性助剤で構成されたマトリックスと、このマトリックス中に分散し、溶融可能な有機固体成分で構成された分散相とで構成されている分散体であってもよい。このような組成物又は分散体において、水溶性助剤と有機固体成分との割合は、前者/後者(重量比)=99/1〜45/55程度であってもよい。
また、本発明には、前記組成物(水溶性助剤および有機固体成分)を溶融混練し、生成した混練物から水溶性助剤を溶出し、溶融可能な有機固体成分で構成された成形体を製造する方法も含まれる。このような方法において、成形体は、溶融可能な有機固体成分で構成された粒子(有機固体粒子)であってもよい。
なお、本明細書において、「有機固体成分」とは、固体である限り、炭素系の有機化合物に限らず、ケイ素化合物(シリコーン樹脂など)なども含む意味に用いる。
本発明の水溶性助剤(又は水溶性加工助剤)は、特定の多糖類で構成するので、樹脂(特に、溶融粘度が高い樹脂)などの溶融可能な有機固体成分との溶融混練性を改善できるとともに、溶融混練又はその後の成形加工に伴って形成された所定形状の有機固体成分を溶融混練物(又は分散体)から容易に分離できる。また、本発明の水溶性助剤(又は水溶性加工助剤)は、水に対する溶解性が高いとともに水溶液粘度が低く、水溶性成分を工業的に有利に溶出でき、水による溶出分離性が高い。さらに、本発明の水溶性助剤(又は水溶性加工助剤)では、溶融混練時においても比較的高い剪断粘度を保持できるため、溶融粘度が比較的高い樹脂であっても、小さい粒子径で樹脂粒子を得ることができる。しかも、溶融粘度が比較的高い樹脂であっても、狭い粒径分布で粒子(有機固体粒子)を得ることができる。また、本発明では、特定の多糖類とオリゴ糖などとを組み合わせることにより、水溶性助剤の剪断粘度を調整でき、樹脂粒子などの粒径のサイズ(および粒径分布)や成形体(多孔体)の孔径を簡便にかつ効率よくコントロールできる。このような本発明の水溶性助剤(水溶性加工助剤)は、樹脂粒子などの成形体を工業的に有利に製造するのに適している。
[水溶性助剤]
本発明の水溶性助剤は、環状構造を有する水溶性多糖類(以下、単に、水溶性多糖類、多糖類などということがある)で構成されている。そして、このような本発明の水溶性助剤は、溶融可能な有機固体成分(例えば、樹脂成分など)の乳化媒体として作用し、このような有機固体成分と溶融混練して前記有機固体成分の成形体を生成するための助剤として用いることができる。
[環状構造を有する水溶性多糖類]
環状構造を有する水溶性多糖類において、環状構造(環状骨格、環状ユニット、環状部位)は、多糖類を構成する複数のグリコース単位[通常、グルコース単位(特にD−グルコース)]がグルコシド結合(又はグルコシル化)して形成された環であればよい。すなわち、本明細書において、環状構造とは、複数のグリコース単位(およびグルコシド結合)で形成された環を意味し、グルコース環などの単糖類の環を意味するものではない。
このような環状構造を有する水溶性多糖類は、オリゴ糖などに比べて比較的高分子量であり溶融粘度が高く、しかも、その環状構造によるためか、水溶性を示す。本発明では、このような特定の多糖類を使用することにより、溶融時において、オリゴ糖などに比べて高い剪断粘度を保持できるため、溶融混練性を損なうことなく溶融混練でき、しかも、水溶性であるため、水などにより容易に除去可能である。
前記多糖類において、環状構造は、複数のグルコシド結合で構成されていればよく、α−グルコシド結合又はβ−グルコシド結合で構成されていてもよく、通常、α−グルコシド結合で構成されていてもよい。
環状構造(1つの環状構造あたり)の平均重合度(数平均重合度、環状構造を形成する平均グルコシド結合数、環状構造を形成するグリコース単位の平均重合度)は、例えば、10以上(例えば、10〜500程度)、好ましくは12以上(例えば、12〜300程度)、さらに好ましくは14以上(例えば、14〜100程度)であってもよい。
また、環状構造を構成するグルコシド結合は、通常、少なくとも1,4−グルコシド結合(特に、α−1,4−グルコシド結合)で形成された環であればよく、1,4−グルコシド結合(特に、α−1,4−グルコシド結合)と1,6−グルコシド結合(特に、α−1,6−グルコシド結合)とで形成された環であってもよい。
このような1,6−グルコシド結合を含む環において、環状構造(1つの環状構造あたり)における1,6−グルコシド結合の平均数は、1以上(例えば、1〜700程度)であればよく、例えば、1〜300(例えば、1〜200)、好ましくは1〜100(例えば、1〜50)、さらに好ましくは1〜20(例えば、1〜10)であってもよい。
また、環状構造を有する水溶性多糖類は、少なくとも1つの環状構造(環状ユニット)を有していればよく、複数の環状構造を有していてもよい。
なお、環状構造を有する水溶性多糖類の平均重合度(数平均重合度、総平均重合度、多糖類全体の平均重合度)は、例えば、14以上(例えば、14〜15000)、好ましくは17以上(例えば、17〜10000)、さらに好ましくは20以上(例えば、20〜8000)程度であってもよい。
なお、環状構造を有する水溶性多糖類は、誘導体化(又は変性)されていてもよい。例えば、環状構造を有する水溶性多糖類は、ヒドロキシル基(アルコール性ヒドロキシル基)が誘導体化[例えば、エーテル化(例えば、メチルエーテル化などのアルキルエーテル化;ヒドロキシエチルエーテル化、ヒドロキシプロピルエーテル化などのヒドロキシアルキルエーテル化;グリセリル化など)、エステル化、グラフト化、架橋化など]された誘導体であってもよい。
環状構造を有する水溶性多糖類は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
代表的な環状構造を有する水溶性多糖類には、(1)環状構造(又は環状ユニット)とこの環状構造に結合した非環状構造(非環状骨格、非環状ユニット非環状部位)とを有し、かつ平均重合度50以上である多糖類、(2)14以上のα−1,4−グルコシド結合で形成された環状構造を分子内に一つ有する多糖類などが挙げられる。
(多糖類(1))
前記多糖類(1)において、環状構造は、通常、α−1,4−グルコシド結合とα−1,6−グルコシド結合とで形成された環であってもよい。
また、環状構造(1つの環状構造あたり)の平均重合度(数平均重合度)は、例えば、10〜500、好ましくは12〜300、さらに好ましくは14〜100であってもよい。環状構造がα−1,6−グルコシド結合を有する場合、環状構造(1つの環状構造あたり)におけるα−1,6−グルコシド結合の平均数は、例えば、1以上(例えば、1〜200)、好ましくは1〜100、さらに好ましくは1〜50程度であってもよい。
なお、多糖類(1)の平均重合度(数平均重合度、総数平均重合度)は、50以上であればよく、例えば、50〜10000、好ましくは60〜7000、さらに好ましくは70〜5000程度であってもよい。
なお、多糖類(1)は、非環状構造を1又は複数有していてもよく、通常、複数(例えば、2〜1000、好ましくは3〜500程度)有していてもよい。このような非環状部位(又は多糖類(1)の環状構造以外の部位)1つあたりの平均重合度(数平均重合度)は、例えば、10以上(例えば、10〜30)、好ましくは10〜20程度であってもよい。また、非環状部位全体の平均重合度(数平均重合度)は、10以上であればよく、例えば、40以上(例えば、50〜5000程度)、好ましくは100〜3000程度であってもよい。なお、非環状部位は、特に、α−1,6−グルコシド結合のグリコース(特にグルコース)単位から分岐している場合が多い。
なお、多糖類(1)において、ヒドロキシル基(アルコール性ヒドロキシル基)は、誘導体化(例えば、エーテル化、エステル化、グラフト化など)されていてもよい。
このような多糖類(1)には、いわゆる「クラスターデキストリン」として知られている多糖類が含まれる。このような多糖類(1)は、例えば、糖類(例えば、澱粉、澱粉の部分分解物、アミロペクチン、グリコーゲン、ワキシー澱粉、ハイアミロース澱粉、可溶性澱粉、デキストリン、澱粉加水分解物、およびホスホリラーゼによる酵素合成アミロペクチンから選択された少なくとも1種の基質など)に、糖類に作用して環状構造を形成可能な酵素(枝作り酵素、D酵素、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼなど)を反応させることにより得てもよい。このようなクラスターデキストリンおよびその製造方法についての詳細は、特開平8−134104号公報などを参照できる。
(多糖類(2))
前記多糖類(2)において、環状構造は、α−1,4−グルコシド結合で少なくとも形成された環であればよく、α−1,4−グルコシド結合とα−1,6−グルコシド結合とで形成された環であってもよい。
また、多糖類(2)において、環状構造の平均重合度(数平均重合度)は、14以上であればよく、例えば、14〜5000、好ましくは15以上(例えば、15〜3000程度)、さらに好ましくは17以上(例えば、17〜1000程度)であってもよい。環状構造がα−1,6−グルコシド結合を有する場合、環状構造におけるα−1,6−グルコシド結合の平均数は、例えば、1〜500、好ましくは1〜300、さらに好ましくは1〜100程度であってもよい。
多糖類(2)は、前記環状構造を有している限り、非環状構造(例えば、直鎖状構造)を有していてもよいが、通常、前記環状構造のみで構成(又は形成)された環状多糖類であってもよい。
なお、多糖類(2)において、ヒドロキシル基(アルコール性ヒドロキシル基)は、誘導体化(例えば、エーテル化、エステル化、グラフト化、架橋化など)されていてもよい。
このような多糖類(2)には、いわゆる「シクロアミロース(又はサイクロアミロース)」として知られている多糖類が含まれる。このような多糖類(2)は、例えば、直鎖状のα−1,4−グルカン又はこのグルカンを含む糖類(例えば、マルトオリゴ糖、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、澱粉、ワキシー澱粉、ハイアミロース澱粉、可溶性澱粉、デキストリン、澱粉枝切り物、澱粉部分加水分解物、ホルホリラーゼによる酵素合成アミロース、およびこれらの誘導体から選択された少なくとも1種など)と、多糖類(2)を形成可能な酵素(例えば、D酵素など)とを、必要に応じて、ホスホリラーゼおよびグルコース1−リン酸の存在下で反応させることにより得ることができる。また、前記反応は、基質としてα−1,6−グルコシド結合を有する基質を用いる場合には、α−1,6−グルコシド結合を切断可能な酵素(例えば、イソアミラーゼ、プルラナーゼなど)の存在下で行ってもよい。このようなサイクロアミロースおよびその製造方法についての詳細は、特開平8−311103号公報などを参照できる。
これらの多糖類は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。本発明では、前記多糖類(1)及び/又は多糖類(2)を好適に用いることができ、特に、前記多糖類(1)(又はクラスターデキストリン)を好適に用いることができる。
[オリゴ糖]
本発明の水溶性助剤は、前記多糖類で少なくとも構成すればよく、所望の粘度に調整するため前記多糖類に加えて、さらに、オリゴ糖を添加してもよい。前記多糖類とオリゴ糖とを組み合わせることにより、溶融時における剪断粘度を調整できる。そのため、オリゴ糖を用いることにより、得られる有機固体成分(有機固体粒子)の粒径や多孔体の孔径の幅を広げることができる。
オリゴ糖は、2〜10分子の単糖類が、グリコシド結合を介して脱水縮合したホモオリゴ糖と、少なくとも2種類以上の単糖類及び/又は糖アルコールが、2〜10分子グリコシド結合を介して脱水縮合したヘテロオリゴ糖とに大別される。これらのオリゴ糖は、無水物でもよい。また、オリゴ糖において、単糖類と糖アルコールとが結合していてもよい。また、オリゴ糖は複数の糖成分で構成されたオリゴ糖組成物であってもよい。このようなオリゴ糖組成物であっても単にオリゴ糖という場合がある。オリゴ糖(又はオリゴ糖組成物)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
二糖類としては、トレハロース(例えば、α,α−トレハロース、β,β−トレハロース、α,β−トレハロースなど)、コージービオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオースなどのホモオリゴ糖;ラクトース、スクロース、パラチノース、メリビオース、ルチノース、プリメベロース、ツラノースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。
三糖類としては、マルトトリオース、イソマルトトリオース、パノース、セロトリオースなどのホモオリゴ糖;マンニノトリオース、ソラトリオース、メレジトース、プランテオース、ゲンチアノース、ウンベリフェロース、ラクトスクロース、ラフィノースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。
四糖類としては、マルトテトラオース、イソマルトテトラオースなどのホモオリゴ糖;スタキオース、セロテトラオース、スコロドース、リキノース、パノースの還元末端に糖又は糖アルコールが結合したテトラオースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。
これらの四糖類のうち、パノースの還元末端に単糖類又は糖アルコールが結合したテトラオースは、例えば、特開平10−215892号公報に開示されており、パノースの還元末端に、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、アラビノースなどの単糖類や、ソルビトール、キシリトール、エリスリトールなどの糖アルコールが結合したテトラオースが例示できる。
五糖類としては、マルトペンタオース、イソマルトペンタオースなどのホモオリゴ糖;パノースの還元末端に二糖類が結合したペンタオースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。パノースの還元末端に二糖類が結合したペンタオースは、例えば、特開平10−215892号公報に開示されており、パノースの還元末端に、スクロース、ラクトース、セロビオース、トレハロースなどの二糖類が結合したペンタオースが例示できる。
六糖類としては、マルトヘキサオース、イソマルトヘキサオースなどのホモオリゴ糖などが挙げられる。
オリゴ糖は、多糖類の分解により生成するオリゴ糖組成物であってもよい。オリゴ糖組成物としては、例えば、デンプン糖(デンプン糖化物)、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー、フルクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖などが挙げられる。
例えば、デンプン糖は、デンプンに酸又はグルコアミラーゼなどを作用させて得られるオリゴ糖組成物であり、複数個のグルコースが結合したオリゴ糖の混合物であってもよい。デンプン糖としては、例えば、東和化成工業(株)製の還元デンプン糖化物(商品名:PO−10、四糖類の含有量90重量%以上)などが挙げられる。
これらのオリゴ糖組成物において、溶融混練での急激な粘度低下を防止するため、オリゴ糖組成物中の三糖類、四糖類(特に四糖類)の含有量は、例えば、60重量%以上(例えば、60〜100重量%程度)、好ましくは70重量%以上(例えば、70〜100重量%程度)、さらに好ましくは80重量%以上(例えば、80〜100重量%程度)、特に90重量%以上(例えば、90〜100重量%程度)であってもよい。
オリゴ糖は還元型(マルトース型)であってもよく、非還元型(トレハロース型)であってもよいが、還元型のオリゴ糖は、耐熱性に優れるため好ましい。
還元型のオリゴ糖としては、遊離のアルデヒド基又はケトン基を有し、還元性を示す糖であれば、特に限定されず、例えば、コージービオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、パラチノース、メリビオース、ルチノース、プリメベロース、ツラノースなどの二糖類;マルトトリオース、イソマルトトリオース、パノース、セロトリオース、マンニノトリオース、ソラトリオースなどの三糖類;マルトテトラオース、イソマルトテトラオース、セロテトラオース、リキノースなどの四糖類;マルトペンタオース、イソマルトペンタオースなどの五糖類;マルトヘキサオース、イソマルトヘキサオースなどの六糖類などが挙げられる。
なお、オリゴ糖の種類[例えば、還元デンプン糖化物などのデンプン糖など]によっては、融点又は軟化点を示さず、分解(熱分解)する場合がある。このような場合、分解温度をオリゴ糖の「融点又は軟化点」としてもよい。
オリゴ糖の融点又は軟化点と、樹脂成分などの前記有機固体成分の熱変形温度との温度差は、例えば、1℃以上(例えば、1〜80℃程度)、好ましくは10℃以上(例えば、10〜70℃程度)、さらに好ましくは15℃以上(例えば、15〜60℃程度)である。オリゴ糖の融点又は軟化点は、樹脂成分などの前記有機固体成分の種類などに応じて、70〜300℃の範囲で選択でき、例えば、90〜290℃、好ましくは100〜280℃(例えば、110〜270℃)、さらに好ましくは120〜260℃(例えば、130〜260℃)程度であってもよい。
オリゴ糖を用いる場合、前記多糖類とオリゴ糖との割合は、目的とする有機固体成分の粒径などに応じて、例えば、前者/後者(重量比)=99/1〜5/95、好ましくは95/5〜10/90、さらに好ましくは90/10〜20/80(例えば、85/15〜25/75)、特に80/20〜30/70(例えば、70/30〜40/60)程度であってもよく、通常99/1〜50/50程度であってもよい。
[水溶性可塑化成分]
本発明の水溶性助剤は、溶融混練性をより一層高めるため、乳化媒体として、さらに、前記多糖類を可塑化するための水溶性可塑化成分(単に可塑化成分ということがある)を含んでいてもよい。水溶性可塑化成分としては、前記多糖類を可塑化できる限り特に限定されないが、例えば、糖類、糖アルコールなどが使用できる。このような糖類や糖アルコールは、前記多糖類だけでなく、オリゴ糖を可塑化(すなわち、オリゴ糖が水和して水飴状態となる現象を発現)する成分としても作用する。
これらの可塑化成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
(a)糖類
糖類としては、通常、単糖類及び/又は二糖類が使用される。なお、二糖類は、オリゴ糖に分類されるが、オリゴ糖を組み合わせる場合には、三糖類以上のオリゴ糖と組み合わせる限り使用することができる。これらの糖類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
単糖類としては、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、オクトース、ノノース、デコースなどが挙げられる。これらの化合物は、アルドースやケトースであってもよく、ジアルドース(糖の誘導体であって炭素鎖両末端がアルデヒド基である化合物、例えば、テトラアセチルガラクトヘキソジアルドース、イドヘキソジアルドース、キシロペントドアルドース等)、複数のカルボニル基を有する単糖類(オソン、オノース等のアルドアルコケトース等)、メチル基を有する単糖類(アルトロメチロースなどのメチル糖等)、アシル基(特にアセチル基などのC2-4アシル基等)を有する単糖類(前記アルドースのアセチル体、例えば、アルデヒドグルコースペンタアセチル化合物などのアセチル体など)、カルボキシル基が導入された糖類(糖酸またはウロン酸等)、チオ糖、アミノ糖、デオキシ糖などであってもよい。
このような単糖類の具体例としては、例えば、テトロース(エリトロース、トレオロース等)、ペントース(アラビノース、リボース、リキソース、デオキシリボース、キシロース等)、ヘキソース(アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、フコース、ラムノース、タロース、ガラクチュロン酸、グルクロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン等)などが例示できる。
また、単糖類は、ヘミアセタール結合により環状構造を形成した環状異性体であってもよい。単糖類は、旋光性を有している必要はないが、D形、L形、DL形のいずれであってもよい。これらの単糖類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
二糖類としては、例えば、前記二糖類のうち、低融点または低軟化点を有する二糖類(例えば、ゲンチオビオース、メリビオース、トレハロース(二水化物)など)、前記単糖類のホモ及びヘテロ二糖類に相当する二糖類(例えば、グルクロン酸とグルコースとがα−1,6グリコシド結合したグルクロノグルコースなどのアルドビオウロン酸など)が例示できる。
糖類は、熱安定性に優れるため、還元糖が好ましく、そのような糖類としては、遊離の単糖類の他、前記二糖類のうち、低融点又は低軟化点の還元糖(例えば、ゲンチオビオース、メリビオースなど)が挙げられる。
(b)糖アルコール
糖アルコールとしては、アルジトール(グリシトール)などの鎖状糖アルコールであってもよく、イノシットなどの環式糖アルコールであってもよいが、通常は、鎖状糖アルコールが使用される。これらの糖アルコールは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
鎖状糖アルコールとしては、テトリトール(トレイトール、エリスリトールなど)、ペンチトール[ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール(アドニトール)、キシリトール、リキシトールなど]、ヘキシトール[ソルビトール、マンニトール、イジトール、グリトール、タリトール、ズルシトール(ガラクチトール)、アロズルシトール(アリトール)、アルスリトールなど]、ヘプチトール、オクチトール、ノニトール、デキトール、及びドデキトールなどが挙げられる。
これらの糖アルコールのうち、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、ズルシトール及びマンニトールが好ましい。糖アルコールは、エリスリトール、ペンタエリスリトール、キシリトールから選択された少なくとも1つの糖アルコールを含む場合が多い。
本発明の水溶性助剤において、水溶性可塑化成分を使用する場合、前記多糖類と水溶性可塑化成分との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=99/1〜20/80、好ましくは95/5〜30/70(例えば、95/5〜35/65)、さらに好ましくは90/10〜40/60、特に85/15〜45/55程度であってもよく、通常99/1〜50/50程度であってもよい。
また、本発明の水溶性助剤において、水溶性可塑化成分とオリゴ糖とを併用する場合、オリゴ糖と水溶性可塑化成分との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=99/1〜10/90、好ましくは95/5〜20/80(例えば、95/5〜30/70)、さらに好ましくは90/10〜35/65、特に85/15〜40/60(例えば、80/20〜45/55)程度であってもよい。
さらに、本発明の水溶性助剤において、水溶性可塑化成分とオリゴ糖とを併用する場合、多糖類及びオリゴ糖の総量と水溶性可塑化成分との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=99/1〜30/70、好ましくは95/5〜40/60(例えば、95/5〜50/50)、さらに好ましくは90/10〜55/45、特に85/15〜60/40(例えば、80/20〜65/35)程度であってもよい。
なお、本発明の水溶性助剤は、より高粘度、高融点の有機固体成分に適用する場合、他の乳化媒体、例えば、水溶性樹脂[例えば、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体など)、ビニルアルコール系重合体(例えば、ポリビニルアルコールなど)、水溶性アクリル系樹脂、水溶性スチレン系樹脂、ポリビニルピロリドンなどの水溶性合成樹脂;セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースなどのアルキル−ヒドロキシアルキルセルロースなどのヒドロキシル基を有するセルロース誘導体、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロース、エチルセルロースなどのアルキルセルロースなどのセルロースエーテル類など)など]などを含んでいてもよい。このような他の乳化媒体の割合は、水溶性助剤全体の20重量%以下(例えば、0.1〜15重量%程度)、好ましくは10重量%以下(例えば、0.5〜8重量%程度)であってもよい。
水溶性助剤の融点又は軟化点は、樹脂成分などの有機固体成分の熱変形温度以上であってもよく、熱変形温度以下であってもよい。樹脂成分などの有機固体成分及び水溶性助剤は、少なくとも混練温度(又は成形加工温度)において溶融又は軟化すればよい。例えば、水溶性助剤の融点又は軟化点と、樹脂成分などの有機固体成分の熱変形温度との温度差は、0〜100℃の範囲で選択してもよく、例えば、3〜80℃(例えば3〜55℃)、好ましくは5〜60℃(例えば、5〜45℃)、さらに好ましくは5〜40℃(例えば、10〜35℃)程度であってもよい。なお、水溶性助剤の融点又は軟化点と、樹脂成分などの有機固体成分の熱変形温度との温度差が小さい場合(例えば、前記温度差が0〜20℃程度である場合)、固化速度の高い助剤により短時間で分散形態を固定化できるという利点がある。
さらに、水溶性助剤(例えば、多糖類と水溶性可塑化成分とで構成された水溶性助剤)のメルトフローレートは、例えば、溶融可能な有機固体成分(樹脂成分など)の熱変形温度(例えば、前記ビカット軟化点など)より30℃高い温度でJIS K 7210で規定されるメルトフローレートを測定したとき、1以上(例えば、1〜40程度)、好ましくは5以上(例えば、5〜30程度)、さらに好ましくは10以上(例えば、10〜20程度)であってもよい。
本発明の水溶性助剤は、前記水溶性多糖類(および必要に応じて水溶性可塑化成分)で構成されているため、溶融可能な有機固体成分と組み合わせて用い、混練により生成した有機固体成分の成形体(所定形状の有機固体成分)を得るのに好適である。すなわち、水溶性助剤は溶融混練して前記有機固体成分の成形体(粒子又は多孔体などの所定形状の有機固体成分)を生成するための助剤として有用である。
[溶融成形可能な組成物および分散体]
そのため、本発明は、前記水溶性助剤と溶融可能な有機固体成分(樹脂成分など、単に有機固体成分ということがある)とを含む溶融成形可能な組成物(又は溶融成形性組成物)も提供する。また、前記水溶性助剤で構成されたマトリックスと、このマトリックス中に分散し、かつ溶融可能な有機固体成分(樹脂成分など)で構成された分散相(粒子状分散相、多孔状相分離構造など)とで構成されている分散体も提供する。
[溶融可能な有機固体成分]
溶融可能な有機固体成分(単に、有機固体成分などということがある)としては、通常、水溶性助剤に対して非相溶の成分又は疎水性の成分(非水溶性成分)が使用できる。前記有機固体成分は、通常、室温(15〜25℃程度)で固体であり、低分子化合物であってもよく、高分子化合物(又は樹脂)であってもよい。有機固体成分は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
有機固体成分は、少なくとも高分子化合物(樹脂)で構成する場合が多い。特に、本発明では、前記のように特定の多糖類を使用することにより、水溶性助剤の溶融粘度(剪断粘度)を、有機固体成分(特に樹脂)の溶融粘度に近づけることができるため、比較的溶融粘度が高い樹脂や高い融点の樹脂であっても溶融混練性を損なうことなく分散体(又は粒子などの成形体)を得ることができる。また、オリゴ糖などの場合に比べて溶融粘度を高めることができるため、溶融粘度が高い樹脂[例えば、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルナン骨格を有する樹脂など)など]や融点(又はガラス転移点)が高い樹脂(例えば、芳香族ポリエステル系樹脂など)などの有機固体成分であっても、小粒径の粒子や粒径分布の狭い粒子を簡便にかつ効率よく得ることができる。
樹脂は、通常、室温(15〜25℃程度)で固体であり、融点を有する場合、その融点は、例えば、40〜350℃、好ましくは50〜300℃、さらに好ましくは70〜290℃程度であってもよく、本発明では、230〜280℃程度の比較的高い融点を有する樹脂も使用できる。また、融点を有さない非晶質樹脂の場合は、そのガラス転移点温度は、40〜280℃(好ましくは50〜270℃、さらに好ましくは70〜260℃)程度であってもよく、本発明では、100〜260℃の比較的高いガラス転移点温度を有する樹脂も使用できる。なお、溶融可能な樹脂は、通常、水溶性助剤に対して非相溶性の樹脂又は完全疎水性の樹脂である。
前記樹脂には、例えば、熱可塑性樹脂[ポリエステル系樹脂(例えば、芳香族ポリエステル系樹脂や脂肪族ポリエステル系樹脂など)、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ(チオ)エーテル系樹脂[例えば、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、ポリ(チオ)エーテルケトン系樹脂(ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィドケトンなど)など]、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂(例えば、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなど)、などの縮合系熱可塑性樹脂;ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂(例えば、ハロゲン含有ビニル系樹脂、ビニルエステル系樹脂又はその誘導体など)などのビニル重合系熱可塑性樹脂;セルロース誘導体などの天然物由来樹脂、熱可塑性シリコーン樹脂、熱可塑性エラストマーなど]、および熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂(シリコーンゴム、シリコーンワニスなども含む)など)などが挙げられる。これらの樹脂は、生分解性樹脂[例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂(例えば、ポリ乳酸系樹脂やポリC3-12ラクトン系樹脂など)、ポリエステルアミドなどの生分解性ポリエステル系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、前記セルロース誘導体]であってもよい。これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。有機固体成分としては、通常、熱可塑性樹脂、非水溶性樹脂(又は疎水性樹脂、非水溶性熱可塑性樹脂など)が使用される。
好ましい樹脂としては、比較的高い融点及び/又は高い溶融粘度を有する水不溶性熱可塑性樹脂(又は疎水性熱可塑性樹脂)、例えば、ポリオレフィン系樹脂(特に、環状ポリオレフィン系樹脂)、ポリアミド系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂(特に、芳香族ポリエステル系樹脂)、ポリアセタール樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂などが挙げられる。特に好ましい樹脂には、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂などが含まれる。なお、水溶性助剤との溶融混練を容易にするために、アミノ基、ヒドロキシル基やカルボキシル基などの親水性基を有する樹脂を使用してもよい。
以下に、代表的な熱可塑性樹脂を例示する。
(熱可塑性樹脂)
(1)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂には、例えば、α−C2-6オレフィンの単独又は共重合体(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(メチルペンテン−1)など)、α−C2-6オレフィンと共重合性単量体との共重合体(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)、環状ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
特に、本発明では、環状ポリオレフィン系樹脂(環状オレフィン系樹脂)などの比較的溶融粘度が高いオレフィン系樹脂であっても、好適に使用できる。
環状オレフィン系樹脂(シクロオレフィン系樹脂)は、環状オレフィンを少なくとも重合成分とする樹脂であればよい。環状オレフィンは、単環式オレフィンであってもよく、多環式オレフィンであってもよい。また、環状オレフィンは、置換基{例えば、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、メチル基などのC1-10アルキル基、好ましくはC1-5アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基などのC6-10アリール基)、アルケニル基(例えば、プロペニル基などのC2-10アルケニル基など)、シクロアルケニル基(例えば、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などのC5-10シクロアルケニル基など)、アルキリデン基(例えば、エチリデン基などのC2-10アルキリデン基、好ましくはC2-5アルキリデン基など)など]、アルコキシ基(例えば、メトキシ基などのC1-10アルコキシ基、好ましくはC1-6アルコキシ基)、アシル基(例えば、アセチル基などのC2-5アシル基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1-10アルコキシ−カルボニル基)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、オキソ基(=O)、複素環基(ピリジル基などの窒素原子含有複素環基など)など}を有していてもよい。環状オレフィンは、単独で又は2種以上組みあわせて置換基を有していてもよい。
具体的な環状オレフィンとしては、単環式オレフィン類[例えば、シクロアルケン(例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのシクロC3-10アルケンなど)など、シクロアルカジエン(例えば、シクロペンタジエンなどのシクロC3-10アルカジエン)など];二環式オレフィン類{例えば、ビシクロアルケン[例えば、ノルボルネン類(例えば、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5又は5,6−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,6−ジメトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,6−ジ(トリフルオロメチル)−2−ノルボルネン、7−オキソ−2−ノルボルネンなど)などのC4-20ビシクロアルケンなど]、ビシクロアルカジエン[例えば、ノルボルナジエン類(例えば、2,5−ノルボルナジエン、5−メチル−2,5−ノルボルナジエン、5−シアノ−2,5−ノルボルナジエン、5−メトキシカルボニル−2,5−ノルボルナジエン、5−フェニル−2,5−ノルボルナジエン、5,6−ジメチル−2,5−ノルボルナジエン、5,6−ジ(トリフルオロメチル)−2,5−ノルボルナジエン、7−オキソ−2−ノルボルナジエンなど)など]など}、三環式オレフィン{例えば、トリシクロアルケン[例えば、ジヒドロジシクロペンタジエン類(ジヒドロジシクロペンタジエンなど)などのC6-25トリシクロアルケンなど]、トリシクロアルカジエン[例えば、ジシクロペンタジエン類(ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエンなど)、トリシクロ[4.4.0.12,5 ]ウンデカ−3,7−ジエン、トリシクロ[4.4.0.12,5 ]ウンデカ−3,8−ジエンなどのC6-25トリシクロアルカジエンなど]など}、四環以上の多環式オレフィン{例えば、四環式オレフィン[例えば、テトラシクロアルケン(例えば、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンなどのC8-30テトラシクロアルケンなど)など]、五環式オレフィン[例えば、ペンタシクロアルカジエン(例えば、トリシクロペンタジエンなどのC10-35ペンタシクロアルカジエン)など]、六環式オレフィン[例えば、ヘキサシクロアルケン(例えば、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘプタデセンなどのC12-40ヘキサシクロアルケン)など]など}などの多環式オレフィン類などが挙げられる。
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンの単独又は共重合体(例えば、単環式オレフィンと多環式オレフィンとの共重合体など)であってもよく、環状オレフィンと共重合性単量体との共重合体であってもよい。共重合性単量体としては、共重合可能な限り特に限定されないが、鎖状オレフィン[アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどのC2-20アルケン)、アルカジエン(例えば、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役C5-20アルカジエン)など]、重合性ニトリル化合物(例えば、(メタ)アクリロニトリルなど)、(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸など)、不飽和ジカルボン酸又はその誘導体(無水マレイン酸など)などが挙げられる。共重合性単量体は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
好ましい環状オレフィン系樹脂には、多環式オレフィン(例えば、二乃至六環式オレフィンなど)を重合成分とする樹脂、特に、多環式オレフィンのうち、ノルボルネン系単量体(又はノルボルネン骨格を有する単量体、例えば、前記ノルボルネン類、前記ジシクロペンタジエン類など)を重合成分とする樹脂などが挙げられる。環状オレフィン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
なお、環状オレフィン系樹脂は、付加重合により得られた樹脂であってもよく、開環重合(開環メタセシス重合など)により得られた樹脂であってもよい。また、環状オレフィン系樹脂(例えば、開環メタセシス重合により得られた樹脂など)は、水素添加された水添樹脂であってもよい。また、環状オレフィン系樹脂は、結晶性又は非晶性樹脂であってもよく、通常、非晶性樹脂であってもよい。
多環式オレフィンを重合成分とする樹脂は、多環式オレフィンの単独又は共重合体であってもよく、多環式オレフィンを重合成分とする共重合体(多環式オレフィンと共重合性単量体との共重合体)であってもよい。多環式オレフィンを重合成分とする共重合体において、多環式オレフィン(ノルボルネン系単量体など)の割合は、単量体全体[多環式オレフィンと共重合性単量体(例えば、エチレンなどの前記鎖状オレフィンなど)との総量]の30重量%以上(例えば、35〜99.5重量%程度)、好ましくは40重量%以上(例えば、45〜99重量%程度)、さらに好ましくは50重量%以上(例えば、55〜98重量%程度)、特に60重量%以上(例えば、65〜95重量%程度)であってもよい。
なお、環状オレフィン系樹脂は、慣用の重合方法(例えば、チーグラー型触媒を用いた付加重合、メタセシス重合触媒を用いた開環メタセシス重合など)により調製してもよく、市販品を使用してもよい。例えば、環状オレフィン系樹脂は、日本ゼオン(株)から商品名「ZEONEX」「ゼオノア」、JSR(株)から商品名「ARTON」、三井化学(株)から商品名「アペル」などとして入手することもできる。
(2)ポリエステル系樹脂
ポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合、オキシカルボン酸成分(例えば、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、4−カルボキシ−4′−ヒドロキシビフェニル、ヒドロキシフェニル酢酸、グリコール酸、D−,L−又はD/L−乳酸、オキシカプロン酸およびこれらの誘導体)又はラクトン成分(プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(例えば、ε−カプロラクトンなど)などのC3-12ラクトンなど)の重縮合、またはこれらの成分の重縮合などにより得られるホモ又はコポリエステルなどが挙げられる。
ジカルボン酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸などのC4-40ジカルボン酸、好ましくはC4-20ジカルボン酸など)、脂環族ジカルボン酸(例えば、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸などのC8-12ジカルボン酸など)、芳香族ジカルボン酸[C8-16アレーンジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸など)、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルアルカンジカルボン酸(4,4′−ジフェニルメタンジカルボン酸など)、4,4′−ジフェニルケトンジカルボン酸など)など]、これらの誘導体(低級アルキルエステル、酸無水物などのエステル形成可能な誘導体など)などが挙げられる。ジカルボン酸成分は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。さらに、ジカルボン酸成分に、必要に応じて、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸を併用してもよい。
ジオール成分としては、例えば、脂肪族ジオール[例えば、アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオールなどのC2-12アルキレングリコール、好ましくはC2-10アルキレングリコール)、ポリアルキレングリコール{複数のオキシC2-4アルキレン単位を有するグリコール、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど}など]、脂環族ジオール[例えば、1,4−シクロヘキサンジオールなどのC5-8シクロアルカンジオール、シクロアルカンジアルカノール(1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのC5-6シクロアルカンジC1-2アルカノールなど)、水素化ビスフェノールAなど]などが挙げられる。また、ジオール成分として、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビフェノール、ビスフェノール類又はそのC2-3アルキレンオキシド付加体[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン又はこれらの臭素化誘導体など]、キシリレングリコールなどの芳香族ジオールを使用してもよい。ジオール成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。さらに、ジオール成分に、必要に応じて、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどのポリオールを併用してもよい。
好ましいジオール成分には、C2-6アルキレングリコール(エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの直鎖状アルキレングリコール)、繰返し数が2〜4程度のオキシアルキレン単位を有するポリアルキレングリコール[例えば、ジエチレングリコールなどのポリ(オキシ−C2-4アルキレン)単位を含むグリコール]、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが含まれる。
代表的なポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロへキシルジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリC2-6アルキレン−アリレート系樹脂、C2-6アルキレン−アリレート単位を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステル(例えば、ジオール成分の一部として(ポリ)オキシC2-4アルキレングリコール(ジエチレングリコールなど)を使用したコポリエステル、ジカルボン酸成分の一部としてC6-12脂環族ジカルボン酸(例えば、ヘキサヒドロテレフタル酸など)やイソフタル酸、フタル酸などの非対称性芳香族ジカルボン酸を使用したコポリエステルなど)、ポリアリレート系樹脂、液晶性ポリエステルなどの芳香族ポリエステル系樹脂;ポリC2-6アルキレン−オギザレート、ポリC2-6アルキレン−サクシネート、ポリC2-6アルキレン−アジペートなどのポリ(C2-6アルキレングリコール−C2-10脂肪族ジカルボン酸エステル)、ポリオキシカルボン酸系樹脂(例えば、ポリグリコール酸やポリ乳酸、グリコール酸−乳酸共重合体など)、ポリラクトン系樹脂(例えば、ポリカプロラクトンなどのポリC3-12ラクトン系樹脂など)、これらのコポリエステル(例えば、ポリカプロラクトン−ポリブチレンサクシネート共重合樹脂など)などが挙げられる。ポリエステル系樹脂はウレタン結合を含んでいてもよい。さらに、ポリエステル系樹脂は生分解性を有していてもよい。
特に、本発明では、比較的高い融点(例えば、210〜260℃程度)や高い溶融粘度を有するポリエステル系樹脂[例えば、芳香族ポリエステル系樹脂(例えば、ポリC2-4アルキレンアリレート系樹脂、ジオール成分の一部としてジエチレングリコールなどを使用したコポリエステル、ジカルボン酸成分の一部としてC6-12脂環族ジカルボン酸などを使用したコポリエステルなど)など]であっても好適に使用できる。
(3)ポリアミド系樹脂
ポリアミド系樹脂としては、例えば、脂肪族ポリアミド系樹脂、脂環族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂などが挙げられ、通常、脂肪族ポリアミド系樹脂が使用される。これらのポリアミド系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
脂肪族ポリアミド系樹脂としては、脂肪族ジアミン成分(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC4-10アルキレンジアミン)と脂肪族ジカルボン酸成分(アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC4-20アルキレンジカルボン酸など)との縮合物(例えば、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1212など)、ラクタム(ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのC4-20ラクタムなど)又はアミノカルボン酸(ω−アミノウンデカン酸などの炭素数C4-20アミノカルボン酸など)の単独又は共重合体(例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6/11、ポリアミド6/12など)、これらのポリアミド成分が共重合したコポリアミド(例えば、ポリアミド66/11、ポリアミド66/12、ポリアミド6/66/12など)などが挙げられる。ポリアミド系樹脂のジカルボン酸成分はダイマー酸単位を含んでいてもよい。さらに、ポリアミド系樹脂は生分解性を有していてもよい。
特に、本発明では、比較的高い融点や高い溶融粘度を有するポリアミド系樹脂であっても適用できる。特に、ポリアミド6/12、ポリアミド6/66/12などは、融点がポリアミド12よりも高くポリアミド66よりも小さいため、好適に用いることができる。
(4)ポリ(チオ)エーテル系樹脂
ポリ(チオ)エーテル系樹脂としては、例えば、ポリオキシアルキレン系樹脂(安定化されたポリオキシメチレングリコール又はホモ又はコポリアセタール系樹脂、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体などのポリオキシC2-4アルキレングリコール)、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンエーテルケトン系樹脂、ポリスルフィド系樹脂(ポリフェニレンスルフィド又はその共重合体などのポリチオエーテル系樹脂)、ポリエーテルケトン系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン系樹脂を含む)などが含まれる。
(5)ポリカーボネート系樹脂
ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂などのビスフェノール類をベースとする芳香族ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートなどの脂肪族ポリカーボネートなどが含まれる。
(6)ポリスルホン系樹脂
ポリスルホン系樹脂としては、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリールスルホン樹脂などが例示できる。
(7)セルロース誘導体
セルロース誘導体としては、セルロースエステル類(例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート(酢酸セルロース)、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのアシルセルロース;セルロースの無機酸エステルなど)、セルロースエーテル類(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、イソプロピルセルロース、ブチルセルロースなどのアルキルセルロース;ベンジルセルロースなどのアラルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシアルキルアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロース;シアノエチルセルロースなど)、セルロースカーバメート類(セルロースフェニルカーバメートなど)などが挙げられる。
(8)熱可塑性エラストマー
熱可塑性エラストマーには、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
熱可塑性エラストマーがブロック共重合体であるとき、ブロック構造は特に制限されず、トリブロック構造、マルチブロック構造、星形ブロック構造などであってもよい。
(9)(メタ)アクリル系樹脂
(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル系単量体((メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸C1-18アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリロニトリルなど)の単独又は共重合体、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)などが挙げられる。
(10)スチレン系樹脂
スチレン系樹脂としては、スチレン系単量体(スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなど)の単独又は共重合体(ポリスチレン、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−α−メチルスチレン共重合体など)、スチレン系単量体と共重合性単量体との共重合体(スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、スチレン−無水マレイン酸共重合体など;スチレン−ブタジエンブロック共重合体などのブロック共重合体など;ゴム成分の存在下、少なくともスチレン系単量体をグラフト重合したグラフト重合体、例えば、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS、又はゴムグラフトポリスチレン系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、このABS樹脂のブタジエンゴムBに代えて、エチレンプロピレンゴムE、アクリルゴムA、塩素化ポリエチレンC、酢酸ビニル重合体などのゴム成分を用いたグラフト共重合体(AES樹脂,AAS樹脂,ACS樹脂などのAXS樹脂)、アクリロニトリルに代えて(メタ)アクリル系単量体(メタクリル酸メチルなど)を用いたグラフト共重合体(例えば、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム−スチレン共重合体(MBS樹脂)など)などが挙げられる。
(11)ハロゲン含有ビニル系樹脂
ハロゲン含有ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン系樹脂、フッ素樹脂などが例示できる。
(12)ビニルエステル系樹脂又はその誘導体
ビニルエステル系樹脂又はその誘導体としては、例えば、カルボン酸ビニルエステルの単独又は共重合体(ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、これらのケン化物(ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系樹脂)、ケン化物(ビニルアルコール系樹脂)からの誘導体(例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール系樹脂など)などが例示できる。エチレン−ビニルアルコール共重合体において、エチレン含量は5〜40重量%程度であってもよい。
(13)ポリウレタン系樹脂
ポリウレタン系樹脂としては、例えば、ジイソシアネート類(ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類又はその水添ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ジイソシアネート類又はその水添ジイソシアネート類など)と、ポリオール類(例えば、ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールなど)と、必要により鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタン系樹脂が例示できる。
なお、樹脂成分の熱変形温度(例えば、JIS K 7206で規定されるビカット軟化点)は、60〜300℃の範囲から選択でき、例えば、80〜260℃、好ましくは100〜240℃(例えば110〜240℃)、さらに好ましくは120〜230℃(例えば130〜220℃)程度である。
樹脂成分(熱可塑性樹脂など)のメルトフローレートは、JIS K 7210に準拠して、温度210℃および荷重2.16kgの条件において、例えば、3g/10分以下(例えば、0.01〜2.5g/10分程度)、好ましくは2g/10分以下(例えば、0.05〜1.5g/10分程度)、さらに好ましくは1g/10分以下(例えば、0.1〜0.8g/分程度)であってもよい。
前記組成物(及び分散体)において、水溶性助剤と樹脂成分などの有機固体成分との割合は、有機固体成分及び水溶性助剤の種類や粘度、有機固体成分と水溶性助剤との相溶性などに応じて選択でき、特に制限されないが、通常、成形性を損なわない割合、例えば、水溶性助剤/有機固体成分(重量比)=99/1〜45/55、好ましくは95/5〜50/50、さらに好ましくは90/10〜55/45程度であってもよい。
また、前記組成物(及び分散体)において、前記多糖類と樹脂成分などの有機固体成分との割合は、前者/後者(重量比)=95/5〜10/90、好ましくは90/10〜20/80(例えば、85/15〜30/70)、さらに好ましくは80/20〜40/60(75/25〜50/50)、通常90/10〜55/45程度であってもよい。
なお、マトリックスを有機固体成分で構成する場合[又は成形体(樹脂成形体など)が多孔質である場合]、水溶性助剤と樹脂成分などの有機固体成分との割合(重量比)は、前者/後者=90/10〜25/75の範囲から選択でき、好ましくは85/15〜40/60(85/15〜50/50)、さらに好ましくは75/25〜60/40程度であってもよい。多孔質の樹脂成形体は、例えば、分離膜などとして有用である。
[改質剤]
本発明において、前記組成物(又は分散体)には、必要に応じて、さらに改質剤(又は添加剤)を含んでいてもよい。改質剤(又は添加剤)としては、前記有機固体成分を改質可能な成分であれば特に限定されず、慣用の改質剤(又は添加剤)、例えば、可塑剤(又は軟化剤)、充填剤(粉粒状フィラーなど)、光分解性付与剤(アナターゼ型酸化チタンなど)、滑剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候(光)安定剤、加工安定剤など)、紫外線散乱剤(酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物の粉末など)、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤[例えば、染料又は顔料[油溶性染料(ソルベント染料など)、分散染料、バット染料、硫化染料、アゾイック染料(ナフトール染料)、無機顔料(二酸化チタンなどの白色顔料;炭酸カルシウムなどの体質顔料;カーボンブラックなどの黒色顔料;カドミウムレッドなどの赤色顔料;カドミウムイエローなどの黄色顔料;群青などの青色顔料;ニッケル、フェライトなどの強磁性金属粉末など)、有機顔料(アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリノン系顔料、ペリノン・ペリレン系顔料、スレン系顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン系顔料、インジゴ又はチオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン化合物など)、蛍光顔料又は染料、蓄光顔料など]、電荷制御剤(ニグロシン染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、アミン系化合物などの正電荷制御剤;サリチル酸金属錯体、アゾ染料金属錯体、銅フタロシアニン染料、ニトロイミダゾール誘導体、尿素誘導体などの負電荷制御剤など)、離型剤、光沢剤、濡れ性改良剤、流動化剤、架橋剤、抗菌剤、防腐剤、反応性基を有する化合物[例えば、エポキシ基を有する化合物、酸基を有する化合物(例えば、アクリル酸基を有する化合物、カルボキシル基を有する化合物、スルホン酸基を有する化合物、無水マレイン酸などの酸無水物基を有する化合物など)などが例示できる。前記組成物(又は分散体)は、これらの改質剤を単独で又は2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
これらの添加剤は、例えば、有機固体成分(特に樹脂)100重量部に対して、添加剤の総量は、0〜100重量部程度の範囲から選択でき、例えば、0〜50重量部(例えば、0〜30重量部)、好ましくは0.05〜20重量部(例えば、0.1〜20重量部)程度、さらに好ましくは0.1〜10重量部(例えば、0.5〜10重量部)程度であってもよい。
なお、改質剤(添加剤)は、後述の分散体を構成する分散相(樹脂成分などの有機固体成分を構成する各樹脂など)及びマトリックス(連続相)のいずれに含有させてもよい。特に、有機固体成分と改質剤とで構成された分散相(又は改質剤を含む有機固体成分で構成された分散相)を有する分散体は、後述するように、予め改質剤を含む有機固体成分と、水溶性助剤とを混合(特に、溶融混合又は溶融混練)することにより効率よくかつ確実に得ることができる。
以下、代表的な改質剤として、滑剤、帯電防止剤、架橋剤を例示する。
(滑剤)
滑剤は、滑り性(又は潤滑性)を付与できる改質剤であり、固体状の滑剤(ワックス)、液体状の滑剤(オイル)などが挙げられる。なお、滑剤は、帯電防止性を有していてもよい。すなわち、滑剤は、滑り性を付与できる改質剤であるが、種類によっては、滑り性および帯電防止性を付与できる場合がある。
ワックスは、常温で固体状(半固体状を含む)であればよく、例えば、オレフィン系重合体(又はオレフィン系ワックス、例えば、ポリエチレンワックス、エチレン共重合体ワックス、ポリプロピレンワックスなど)、脂肪酸系ワックス[例えば、脂肪酸、脂肪酸誘導体(例えば、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド)など]、高級アルコール類、石油ワックス、シリコーンワックス、動植物ワックス、鉱物ワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、これらのワックスを加工した加工ワックスなどが挙げられる。ワックスは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。特に、脂肪酸系ワックスは、有機固体粒子に優れた滑り性(又は潤滑性)を付与できる。
脂肪酸アミドは、アミン又はアンモニアの水素原子を脂肪酸(前記例示の脂肪酸など)に対応する酸基で置換した化合物である。アミンは、第1級アミン(又はN−モノ置換アミン)又は第2級アミン(又はN,N−二置換アミン)であってもよく、モノアミン又はポリアミンであってもよい。具体的な脂肪酸アミドには、脂肪酸モノアミド類、脂肪酸ポリアミド[又はポリ脂肪酸アミド、例えば、飽和脂肪酸ビスアミド類(例えば、N,N’−エチレンビス(ステアリン酸アミド)などのアルキレン(又はアルキリデン)ビス(飽和脂肪酸アミド)など)など]、不飽和脂肪酸ビスアミド類などが含まれる。
これらの脂肪酸系ワックスのうち、特に、脂肪酸アミドは、両親媒性および結晶性を有しているためか、分散相表面に有効に滑り性を付与でき、好適に用いることができる。
脂肪酸系ワックス(例えば、脂肪酸アミド)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
なお、脂肪酸系ワックスは、液状又は固体状であってもよく、通常、固体状であってもよい。また、脂肪酸系ワックスは、通常、非結晶性又は結晶性であってもよく、結晶性を有する脂肪酸系ワックスを好適に使用できる。
オイル(又は液状のワックス)としては、用途に応じて、例えば、炭化水素油又は鉱物油、シリコーンオイルなどが挙げられる。オイルは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。特に、シリコーンオイル(ポリシロキサンオイル、ポリオルガノシロキサンオイル)は、有機固体粒子にしっとり感やぬめり感といった触感を付与するのに有用である。
シリコーンオイルは、ポリオルガノシロキサン単位を有しており、このようなポリオルガノシロキサンとしては、例えば、ポリジアルキルシロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサンなどのポリジC1-10アルキルシロキサン、好ましくはポリジC1-4アルキルシロキサン)、ポリアルキルアルケニルシロキサン(例えば、ポリメチルビニルシロキサンなどのポリC1-10アルキルC2-10アルケニルシロキサン)、ポリアルキルアリールシロキサン(例えば、ポリメチルフェニルシロキサンなどのポリC1-10アルキルC6-20アリールシロキサン、好ましくはポリC1-4アルキルC6-10アリールシロキサン)、ポリジアリールシロキサン(例えば、ポリジフェニルシロキサンなどのポリジC6-20アリールシロキサン)、ポリアルキルハイドロジェンシロキサン(例えば、ポリメチルハイドロジェンシロキサンなどのポリC1-10アルキルハイドロジェンシロキサン)、オルガノシロキサン共重合体(例えば、ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体など)、変性ポリオルガノシロキサン(又は変性シリコーンオイル)[前記ポリオルガノシロキサンに対応する変性ポリオルガノシロキサン、例えば、ヒドロキシル変性ポリオルガノシロキサン(例えば、末端シラノールポリジメチルシロキサン、末端シラノールポリメチルフェニルシロキサン、末端ヒドロキシプロピルポリジメチルシロキサン、ポリジメチルヒドロキシアルキレンオキシドメチルシロキサンなど)、アミノ変性ポリオルガノシロキサン(例えば、末端ジメチルアミノポリジメチルシロキサン、末端アミノプロピルポリジメチルシロキサンなど)、カルボキシル変性ポリオルガノシロキサン(例えば、末端カルボキシプロピルポリジメチルシロキサンなど)など]などが挙げられる。
これらのうち、好ましいポリオルガノシロキサン(シリコーンオイル)には、ポリジメチルシロキサン(又はジメチルシリコーンオイル)などのポリジアルキルシロキサン(又はジアルキルシリコーンオイル)、ポリメチルフェニルシロキサン(又はメチルフェニルシリコーンオイル)などのポリアルキルアリールシロキサン(又はアルキルアリールシリコーンオイル)などが含まれる。
オイル(例えば、シリコーンオイル)の粘度は、25℃において、例えば、0.5〜1000000cSt(センチストークス)、好ましくは5〜500000cSt、さらに好ましくは10〜2000000cSt、特に50〜100000cSt(例えば、100〜50000cSt)程度であってもよい。
滑剤の割合は、有機固体成分100重量部に対して、0.1〜50重量部、好ましくは0.3〜30重量部(例えば、0.5〜25重量部)、さらに好ましくは0.8〜20重量部(例えば、1〜15重量部)、特に1〜10重量部程度であってもよい。
なお、本発明では、滑り性(潤滑性、しっとり感など)を十分に付与することが困難な有機固体成分であっても、有効に滑り性を付与できる。そのため、特に、分散相は、滑り性が良好でない有機固体成分(例えば、ポリアミド系樹脂など)と滑剤とで構成してもよい。
(帯電防止剤)
帯電防止剤(又は界面活性剤)としては、アニオン性帯電防止剤、カチオン性帯電防止剤、ノニオン性帯電防止剤、両性帯電防止剤などの低分子型帯電防止剤や、高分子型帯電防止剤などが含まれる。帯電防止剤は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
帯電防止剤の割合は、有機固体成分100重量部に対して、0.01〜50重量部、好ましくは0.1〜20重量部(例えば、0.2〜15重量部)、さらに好ましくは0.3〜10重量部(例えば、0.5〜8重量部)、特に0.5〜5重量部(例えば、0.7〜3重量部)程度であってもよい。
(架橋剤)
架橋剤としては、重合性化合物、硬化剤(例えば、ポリアミン類など)、開始剤[例えば、ラジカル発生剤(有機過酸化物、アゾ化合物など)、光重合開始剤(アセトフェノン類などのケトン系化合物、ホスフィンオキシド類などのホスフィン系化合物、スルフィド系化合物など)などの重合開始剤]などが含まれる。架橋剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
架橋剤の割合は、有機固体成分100重量部に対して、0.1〜30重量部、好ましくは0.2〜25重量部(例えば、0.3〜20重量部)、さらに好ましくは0.5〜15重量部(例えば、1〜10重量部)程度であってもよい。
本発明の分散体において、分散相の平均粒子径(又は数平均粒子径)は、特に制限されず、用途に応じて0.05μm〜1mm程度の範囲から選択でき、0.1〜800μm、好ましくは0.1〜100μm(例えば、0.2〜50μm)、さらに好ましくは0.5〜40μm(例えば、1〜30μm)、特に1.5〜20μm(例えば、2〜10μm、好ましくは2〜6μm)程度であってもよい。
本発明の分散体において、分散相の形状は、粒子状であればよく、例えば、球状、楕円体状、多角体状、角柱状、円柱状、棒状、不定形状などであってもよい。
なお、球状分散体(又は球状粒子)には、真球状に限らず、例えば、長径と短径との長さ比が、例えば、長径/短径=1.5/1〜1/1程度である形状も含まれる。長径と短径との長さ比は、好ましくは長径/短径=1.3/1〜1/1(例えば、1.2/1〜1/1)、さらに好ましくは1.1/1〜1/1程度であってもよい。
[組成物、分散体および成形体の製造方法]
(組成物の製造方法)
本発明の組成物は、水溶性助剤(又は水溶性助剤の構成成分)と、有機固体成分(改質剤を予め含んでいてもよい有機固体成分)と、必要に応じて他の成分(例えば、改質剤など)とを慣用の混合(ドライブレンドなどの非溶融混合)方法により混合することにより得ることができる。
(改質剤を含む有機固体成分)
なお、改質剤を予め含む有機固体成分を使用すると、分散体において効率よく有機固体成分(又は分散相)に改質剤を分配できる。改質剤を含む有機固体成分(又は組成物、以下、単に組成物ということがある)は、有機固体成分に改質剤を含有させることができれば特に限定されず、例えば、有機固体成分と改質剤とを混合して調製してもよい。混合方法としては、慣用の方法を利用できる。特に、有機固体成分と改質剤との溶融混合物(又は溶融混練物)は、好適に使用できる。
(分散体の製造方法)
本発明の分散体は、通常、前記溶融成形可能な組成物を混練[又は水溶性助剤と有機固体成分(改質剤を含んでいてもよい有機固体成分)と必要に応じて他の成分(改質剤など)とを混練]することにより調製できる。
そして、本発明の成形体は、調製(又は生成)した混練物(又は分散体)から前記水溶性助剤を溶出し、前記有機固体成分で構成された成形体(粒子又は多孔体など)を製造する。前記混練物(又は分散体)が、水溶性助剤で構成されたマトリックス(連続相)中に、有機固体成分で構成された分散相が独立した相分離構造(海島構造)を有する場合には、分散相に対応する有機固体粒子(有機固体成分で構成された粒子)を得ることができ、有機固体成分のマトリックス中に水溶性助剤で構成された分散相が分散した構造を有する場合には、多孔体を得ることができる。
混練は、慣用の混練機(例えば、単軸もしくは二軸スクリュー押出機、ニーダー、カレンダーロールなど)を用いて行うことができる。また混練に先立ち、各成分は、予め凍結粉砕機などで粉体状に予備加工したり、ヘンシェルミキサー、タンブルミキサー、ボールミルなどで予備混練してもよい。なお、有機固体成分と水溶性助剤との相溶性、溶融粘度、混練条件(例えば、混練時間、混練温度など)、成形加工温度並びに冷却条件(例えば、冷却時間、冷却温度など)を調整することにより、多孔体の平均孔径や粒子の平均粒子径を調整できる。
水溶性助剤は、混練物(溶融混練物)から溶出させてもよく、混練した組成物を、成形し、得られた予備成形体から溶出させてもよい。予備成形体の成形法としては、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、カレンダー成形などが挙げられ、通常、生産性や加工の容易さの点から、押出成形又は射出成形が使用される。
予備成形体(又は分散体)の形状は、特に制限されず、0次元的形状(粒状、ペレット状など)、1次元的形状(ストランド状、棒状など)、2次元的形状(板状、シート状、フィルム状など)、3次元的形状(管状、ブロック状など)などであってもよい。水溶性助剤の溶出性を考慮すると、ストランド状、棒状、シート状、又はフィルム状に加工することが望ましい。
なお、混練温度や成形加工温度は、使用される原材料(例えば、樹脂成分及び水溶性助剤)に応じて適宜設定することが可能であり、例えば、90〜300℃、好ましくは110〜260℃(例えば、170〜250℃)、さらに好ましくは140〜240℃(例えば、170〜240℃)、特に170〜230℃(例えば、180〜220℃)程度である。オリゴ糖や可塑化成分の熱分解を避けるため、混練温度や成形加工温度を230℃以下にしてもよい。また、混練時間は、例えば、10秒〜1時間の範囲から選択してもよく、通常30秒〜45分、好ましくは1〜30分(例えば、1〜10分)程度である。
混練及び/又は成形加工により得られた溶融物(例えば、混練物、予備成形体)は、必要により適宜冷却してもよい。このように、溶融物を冷却することにより、溶融状態において、樹脂成分などの有機固体成分と、水溶性助剤とが相溶していても、冷却に伴って、表面張力、結晶化などの固化速度の相違などにより分散相を形成でき、分散体を得ることもできる。
冷却温度は、有機固体成分の熱変形温度、又は水溶性助剤の融点若しくは軟化点よりも少なくとも10℃程度低い温度であればよく、例えば、上記温度(樹脂成分などの有機固体成分の熱変形温度、又は水溶性助剤の融点若しくは軟化点)より10〜100℃程度低い温度、好ましくは前記温度より15〜80℃程度低い温度、さらに好ましくは前記温度より20〜60℃程度低い温度であってもよい。具体的には、例えば、冷却温度は、有機固体成分又は水溶性助剤の種類に応じて5〜150℃の範囲から選択でき、例えば、10〜120℃(例えば、10〜60℃)、好ましくは15〜100℃(例えば、15〜50℃)、さらに好ましくは20〜80℃(例えば、20〜40℃)程度であってもよい。冷却時間は、有機固体成分や水溶性助剤の種類、冷却温度等に応じて適宜設定でき、例えば、30秒〜20時間の広い範囲から選択してもよく、例えば、45秒〜10時間、好ましくは1分〜5時間(例えば、1分〜1時間)、さらに好ましくは1.5〜30分程度であってもよい。
また、混練条件(例えば、混練時間、混練温度など)や冷却条件(例えば、冷却時間、冷却温度など)を調整することにより、分散相(又は樹脂粒子など)の平均粒子径を変化させたり、粒度分布幅をさらに狭めることもできる。
このようにして得られた分散体では、水溶性助剤が、前記特性を有するため、水溶性助剤を速やかに溶出又は抽出でき、前記有機固体成分の成形体を効率よく得ることができる。
水溶性助剤の溶出(又は洗浄)は、水性溶媒、例えば、水、水溶性溶媒(例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、エーテル類(セロソルブ、ブチルセロソルブなど)など)などを用いることにより行うことができる。これらの水性溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。環境への負荷が少なく、工業コストを低減できるため、溶出溶媒として水(特に水単独)を用いるのが好ましい。
水溶性助剤の溶出は、慣用の方法、例えば、前記分散体(又は予備成形体)を、前記水性媒体中に浸漬、分散して、水溶性助剤を溶出または洗浄(水性溶媒に移行)することに行うことができる。なお、水溶性助剤の分散及び溶出を促進するため、適宜、撹拌などを行ってもよい。
水溶性助剤は、例えば、加圧下において、溶出させてもよいが、通常、常圧下(例えば、10万Pa程度)又は減圧下において溶出できる。また、水溶性助剤の溶出温度は、樹脂成分及び水溶性助剤に応じて、適宜設定することができ、通常、樹脂成分の融点又は軟化点未満の温度、例えば10〜100℃、好ましくは25〜90℃、さらに好ましくは30〜80℃(例えば、40〜80℃)程度である。
有機固体成分で構成された成形体は、慣用の分離(回収)方法、例えば、濾過、遠心分離などを用いて回収できる。なお、多孔体の平均孔径は、特に制限されず、用途に応じて0.1μm〜1mm程度の範囲から選択でき、例えば、0.1〜800μm(例えば0.1〜500μm)、好ましくは0.1〜100μm(例えば、0.5〜80μm)、さらに好ましくは0.5〜50μm(例えば、1〜40μm)程度であってもよい。また、孔径の変動係数([孔径の標準偏差/平均孔径]×100)は、60%以下(例えば5〜60%程度)、さらに好ましくは50%以下(例えば、10〜50%程度)であってもよい。
得られた成形体(有機固体粒子など)中には、水溶性助剤が実質的に残留していないことが望ましいが、例えば、洗浄過程のコスト削減などの点から、水溶性助剤が成形体(樹脂粒子など)に少量残存していても、水溶性助剤が天然物由来の化合物(食品又は食品添加物なども含む)であるため、得られた成形体に与える悪影響は小さく、安全性も高い。なお、成形体(有機固体粒子など)における水溶性助剤の残存割合は、例えば、3重量%以下(例えば0〜3重量%)、好ましくは1重量%以下(例えば、0〜1重量%)、さらに好ましくは0.5重量%以下(例えば、0.001〜0.5重量%)であってもよい。本発明では、水溶性助剤の溶出性が高いため、成形体(有機固体粒子など)における水溶性助剤の含有量を大きく低減できる。例えば、前記水溶性助剤の含有量は、成形体(有機固体粒子など)全体に対して、重量基準で、10,000ppm以下(例えば、0〜10,000ppm程度)、好ましくは3,000ppm以下(例えば、0〜3,000ppm程度)、さらに好ましくは1,000ppm以下(例えば、0〜1,000ppm程度)、特に500ppm以下(例えば、0〜500ppm程度)であり、300ppm以下(例えば、1〜300ppm程度)に容易に低減させることもできる。また、前記水溶性助剤の含有量は、通常、検出限界以下の濃度であってもよい。
なお、溶媒で溶出又は抽出された水溶性助剤は、慣用の分離手段(例えば、蒸留、濃縮、再結晶、乾燥(フリーズドライ)など)を用いて簡便に回収できる。
本発明には、前記製造方法により得られる成形体も含まれる。成形体としては、多孔体(シート状、フィルム状などの二次元的構造の多孔体など)や粒子(球状、真球状)が挙げられる。なお、得られた成形体は、熱融着などにより他の基材を積層して加工してもよい。
特に、本発明では、水溶性助剤の剪断粘度を適度に保持できるため、溶融可能な有機固体成分で構成された粒子(すなわち、有機固体粒子、特に、樹脂粒子)を効率よく得ることができる。有機固体粒子(特に樹脂粒子)の形状、平均粒子径は、前記分散相と同様の範囲から選択できる。また、有機固体粒子(特に樹脂粒子)の長径と短径との比も前記分散相と同様の範囲から選択できる。なお、有機固体粒子(特に樹脂粒子)の形状やサイズは、前記溶出溶媒(水性溶媒)に樹脂成分などの有機固体成分が溶出しない限り、前記分散相の形状やサイズがそのまま維持される。なお、有機固体粒子(特に樹脂粒子)は、必要に応じて、分級などの手段により、粒子サイズを揃えてもよい。
本発明の方法で得られた成形体は、得られた形状に応じて、様々な用途に使用できる。例えば、多孔体は、衝撃吸収材、防音材、分離膜(例えば、液体用の分離膜)、機能性物質の担持体、フィルタ、吸湿剤、吸着剤、保湿剤、記録用シートの受像層(又は受像体)(例えば、インクの受像体)などに好適に利用できる。
また、本発明の方法により得られた粒子(改質剤を含んでいてもよい有機固体粒子、特に樹脂粒子)は、トナーやインクなどの画像形成材料、塗料やコート剤(例えば、粉体塗料)、ブロッキング防止剤(例えば、成形体のブロッキング防止剤)、スペーサー、導電性微粒子などの二次加工粒子の母粒子、化粧品用材料、圧縮成形やレーザー造型などの粉体を用いた成形加工用の原料などとして好適に利用できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例及び比較例では、以下の多糖類、オリゴ糖、水溶性可塑化成分及び樹脂を用いた。
(水溶性助剤)
環状構造を有する水溶性多糖類(環状多糖類):日本食品化工(株)製、商品名「クラスターデキストリン」
オリゴ糖(デンプン糖):東和化成工業(株)製、還元デンプン糖化物「PO−10」
糖アルコール(ソルビトール):東和化成工業(株)製、ソルビット。
(樹脂)
樹脂1:ポリスチレン(東洋スチレン(株)製、GPPS 「G100C」)
樹脂2:ポリアミド12(ダイセル・デグサ(株)製、「ダイアミドL1640」)。
(実施例1〜4および比較例1)
表1に示す組成割合および混練温度で、環状多糖類(クラスターデキストリン)と、糖アルコールと(オリゴ糖と)を、ブラベンダー(東洋精機(株)製、ラボプラストミル)により設定温度200℃で7分間溶融混練し、糖組成物(水溶性助剤)を調製した。この水溶性助剤の剪断粘度(剪断粘度の温度依存性)を、以下の装置および条件で測定した。
測定装置:回転式レオメーター(Perr Physica社製、UDS200)
プレート :パラレルプレート(25φ)
プレート間ギャップ: 1mm
測定モード:動的測定(歪量10%、周波数1Hz)
温度:200〜140℃の降温(2℃/分)モード。
結果を表1に示す。
Figure 2007119674
表1から明らかなように、クラスターデキストリンを含まない比較例1の糖組成物と比較して、水溶性可塑化成分である糖アルコールの種類、量が同じであっても、クラスターデキストリンを含む実施例では溶融時の剪断粘度が上昇していることが分かる。
(実施例5〜7および比較例2〜3)
表2に示す組成割合および混練温度で、樹脂と、環状多糖類(クラスターデキストリン)と(比較例ではなし)、糖アルコールと(オリゴ糖と)を、ブラベンダー(東洋精機(株)製、ラボプラストミル)により回転速度50rpmで10分間溶融混練して、分散体を得た。得られた分散体を60℃の湯水中に浸漬し、樹脂粒子の懸濁溶液を得た。メンブレン膜(孔径0.45μm,ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、前記懸濁溶液から不溶分を濾別し樹脂の微粒子を回収した。回収した微粒子を、微粒子に対し重量比で20倍の蒸留水中に分散し、10分間マグネティックスターラーを用いて攪拌処理し懸濁液を得た。その後、再びメンブレン膜(孔径0.45μm,ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、前記懸濁溶液から不溶分を濾別し樹脂の微粒子を回収した。
そして、得られた樹脂微粒子の平均粒子径(数平均粒子径)および粒子径分布を以下のようにして測定した。
得られた樹脂微粒子を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、FE−SEM、JSM−6700F)により撮影し、得られた電子顕微鏡写真を用い、写真上に少なくとも200個の粒子が含まれるように任意のサイズの長方形を描き、その長方形内に存在する全粒子の真球換算時の粒子径を採寸した。得られた少なくとも200個の粒子径より、数平均粒子径(Dn)、体積平均粒子径(Dw)及び粒子径分布Dw/Dnを得た。
結果を表2に示す。
Figure 2007119674
表2から明らかなように、クラスターデキストリンの使用により、得られる粒子の粒子径が小さくなり、また、粒子径分布が狭くなっていた。

Claims (17)

  1. 溶融可能な有機固体成分と溶融混練して前記有機固体成分の成形体を生成するための助剤であって、少なくとも1つの環状構造を有する水溶性多糖類で構成されている水溶性助剤。
  2. 環状構造を形成するグリコース単位の平均重合度が、1つの環状構造あたり10以上である請求項1記載の水溶性助剤。
  3. 環状構造が、α−1,4−グルコシド結合とα−1,6−グルコシド結合とを有する環状構造である請求項1記載の水溶性助剤。
  4. 環状構造を有する水溶性多糖類が、α−1,4−グルコシド結合およびα−1,6−グルコシド結合を有し、1つの環状構造あたりグリコース単位の平均重合度が10以上である環状構造と、この環状構造に結合した非環状構造とを有し、かつ平均重合度50以上である多糖類で構成されている請求項1記載の水溶性助剤。
  5. さらに、オリゴ糖で構成されている請求項1記載の水溶性助剤。
  6. 環状構造を有する水溶性多糖類とオリゴ糖との割合が、前者/後者(重量比)=95/5〜10/90である請求項5記載の水溶性助剤。
  7. さらに、環状構造を有する水溶性多糖類を可塑化するための水溶性可塑化成分で構成されている請求項1記載の水溶性助剤。
  8. 水溶性可塑化成分が、糖類および糖アルコールから選択された少なくとも1種で構成されている請求項7記載の水溶性助剤。
  9. 水溶性可塑化成分が、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、ズルシトール及びマンニトールから選択された少なくとも一種で構成されている請求項7記載の水溶性助剤。
  10. 環状構造を有する水溶性多糖類と水溶性可塑化成分との割合が、前者/後者(重量比)=90/10〜40/60である請求項7記載の水溶性助剤。
  11. 請求項1記載の水溶性助剤と、溶融可能な有機固体成分とで構成されている溶融成形可能な組成物。
  12. 有機固体成分が樹脂成分で構成されている請求項11記載の組成物。
  13. 有機固体成分が、環状ポリオレフィン系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、およびポリアミド系樹脂から選択された少なくとも1種で構成されている請求項11記載の組成物。
  14. 請求項1記載の水溶性助剤で構成されたマトリックスと、このマトリックス中に分散し、溶融可能な有機固体成分で構成された分散相とで構成されている分散体。
  15. 水溶性助剤と有機固体成分との割合が、前者/後者(重量比)=99/1〜45/55である請求項11記載の組成物。
  16. 請求項11記載の組成物を溶融混練し、生成した混練物から水溶性助剤を溶出し、溶融可能な有機固体成分で構成された成形体を製造する方法。
  17. 成形体が、溶融可能な有機固体成分で構成された粒子である請求項16記載の製造方法。
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