JP2008291255A - 複合樹脂粒子およびこの複合樹脂粒子が分散した分散体 - Google Patents

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綾 中井
Hisayoshi Ito
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Abstract

【課題】光散乱性に優れたコアシェル型複合樹脂粒子を提供する。
【解決手段】第1の熱可塑性樹脂と、第2の熱可塑性樹脂と、オリゴ糖や水溶性多糖類などの助剤とを溶融混練して第1の熱可塑性樹脂をコアとし、第2の熱可塑性樹脂をシェルとする複合樹脂粒子を含む分散体を調製する際に、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との組み合わせを選択したり、前記助剤の種類を選択するなどにより、1つのシェルに複数のコアが含まれたコアシェル型複合樹脂粒子を得ることが。このようなコアシェル型複合樹脂粒子は、外形が凹凸形状を有しており、球状又は真球状の複合樹脂粒子に比べて光散乱性を向上できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂で構成されたコアシェル構造の複合樹脂粒子であって、複数のコアを有する複合樹脂粒子、およびこの複合樹脂粒子を分散相として含む分散体に関する。
コアシェル構造を有する複合樹脂粒子は、複数の有機固体物質(樹脂など)で構成されているため、有機固体物質(樹脂など)の特性に応じて、単一成分(単一樹脂成分など)で構成された粒子では得られない種々の機能を付与できる。例えば、環状ポリオレフィン系樹脂は、高い光線透過率、あるいは低い吸水率といった優れた性能を有しているが、コアシェル構造とすることにより、さらなる樹脂特性の向上又は付与が期待できる。
前記のようなコアシェル構造を有する複合樹脂粒子を得る方法としては、コアとなる高分子の粒子を合成した後、重合性単量体を重合するシード乳化重合法が最も一般的である。例えば、特開平7−70255公報(特許文献1)には、シード乳化重合法により、アルキルアクリレート系ゴム状コア部と、メチルメタクリレート系ガラス状シェル部を有するコアシェルポリマーを製造する方法が示されている。
しかし、このようなシード乳化重合法では、コアとなる高分子が、乳化状態あるいは縣濁状態で重合可能な高分子に限られる。また、シード乳化重合法は、コアとなる高分子を重合する工程を含む製造方法であるため、コアとなる粒子が粒径1μmを超えた高分子粒子を粒径分布の狭い状態で安定に製造することが困難である。このため、シード乳化重合法に適用可能な高分子は、乳化重合あるは懸濁重合においてラジカル重合可能な単量体を用いた樹脂に限られ、さらにシェルに用いる高分子の種類も限定される。すなわち、このようなシード乳化重合方法は、縮合反応で得られる樹脂や、高圧法ポリオレフィンや環状ポリオレフィンなどの高圧法でラジカル重合する高分子には適用できない。
シード乳化重合法以外の方法で得られた複合樹脂粒子も知られている。特開2005−162797号公報(特許文献2)には、溶融可能な有機固体成分(A)(樹脂成分など)で構成された粒子であって、前記有機固体成分(A)が、少なくともオリゴ糖(B1)を含む水溶性助剤成分(B)に対して異なる親和性を有する複数の有機固体物質で構成されている複合粒子が開示されている。この文献には、前記複合粒子が、第1の有機固体物質(A1)を含む芯部と、第2の有機固体物質(A2)を含む殻部とで構成されたコア−シェル構造を有していてもよいことが記載されている。そして、この文献には、前記複数の有機固体物質を含む有機固体成分(A)で構成された粒子状の分散相が、少なくともオリゴ糖(B1)を含む水溶性助剤成分(B)で構成されたマトリックスに分散している分散体から、助剤成分(B)を溶出する方法により、前記複合粒子を製造できることが記載されている。
この文献に記載の方法では、1つのシェルに対して1つのコアを含む通常のコアシェル型粒子が得られる。しかし、このような通常のコアシェル型粒子では、光散乱性などの点で十分でない場合も多かった。
そのため、光散乱性などにおいてさらなる優れた特性を有する複合樹脂粒子が求められていた。なお、前記特許文献2には、例えば、オレフィン系樹脂などを有機固体成分として用いることが開示されているが、具体的に、オレフィン系樹脂をコアとするコアシェル構造の複合樹脂粒子について開示されておらず、特に、環状ポリオレフィン系樹脂を用いたコアシェル構造の粒子についても開示されていない。
特開平7−70255公報(特許請求の範囲) 特開2005−162797号公報(特許請求の範囲、段落番号[0115])
従って、本発明の目的は、コアが複数のコアで構成されているコアシェル構造を有する複合樹脂粒子、およびこの複合樹脂粒子を分散相として含む分散体を提供することにある。
本発明の他の目的は、光散乱性(又は光拡散性)に優れたコアシェル構造の複合樹脂粒子、およびこの複合樹脂粒子を分散相として含む分散体を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、コアが複数のコアで構成されたコアシェル構造を有する複合樹脂粒子を簡便にかつ効率よく製造できる分散体を提供することにある。
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、コアおよびシェルを構成する熱可塑性樹脂の種類や、複合樹脂粒子を分散させるマトリックスの組成などを選択することにより、コアが複数のコアで構成された新規なコアシェル構造を有する複合樹脂粒子が得られること、このような複合樹脂粒子が従来のコアシェル型複合樹脂粒子に比べて光散乱性において優れていることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の複合樹脂粒子は、第1の熱可塑性樹脂で構成されたコアと、前記第1の熱可塑性樹脂とは異なる第2の熱可塑性樹脂で構成され、前記コアを被覆するシェルとを含むコアシェル構造を有する複合樹脂粒子であって、前記コアが複数のコアで構成されている。前記第1の熱可塑樹脂は、疎水性高分子(例えば、環状ポリオレフィン系高分子)で構成されていてもよく、第2の熱可塑性樹脂は、極性基を有する熱可塑性樹脂(例えば、(メタ)アクリル系高分子、ポリアミド系高分子、およびビニルアルコール系高分子から選択された少なくとも1種)で構成されていてもよい。
前記複合樹脂粒子において、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との割合は、前者/後者(重量比)=30/70〜95/5程度であってもよい。
本発明の複合樹脂粒子において、シェル(又は複合樹脂粒子)の外形は、通常、凹凸状であってもよい。本発明の複合樹脂粒子は、複数のコアに由来してか、球状又は真球状でなく、このような凹凸形状を有しているため、光散乱性において優れている。
本発明には、前記複合樹脂粒子が、第1の熱可塑性樹脂および第2の熱可塑性樹脂に対して非相溶の助剤中に分散した分散体も含まれる。前記助剤は、オリゴ糖および環状構造を有する水溶性多糖類から選択された少なくとも1種の水溶性多糖類で構成されていてもよい。特に、前記助剤は、水溶性多糖類に加えて、さらに、水溶性多糖類を可塑化するための水溶性可塑化成分を含んでいてもよい。
前記分散体には、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との組み合わせ、助剤の種類などに応じて、本発明の複合樹脂粒子が含まれている。このような複合樹脂粒子を含む前記分散体には、以下の分散体などが含まれる。
少なくとも環状ポリオレフィン系高分子で構成された第1の熱可塑性樹脂と、極性基を有する熱可塑性樹脂[例えば、少なくとも(メタ)アクリル系高分子]で構成された第2の熱可塑性樹脂と、少なくともオリゴ糖を含む非相溶の助剤とを溶融混練して得られる分散体
少なくとも環状ポリオレフィン系樹脂で構成された第1の熱可塑性樹脂と、極性基を有する熱可塑性樹脂[例えば、少なくとも(メタ)アクリル系高分子]で構成された第2の熱可塑性樹脂と、少なくとも環状構造を有する水溶性多糖類を含む非相溶の助剤とを溶融混練して得られる分散体。
なお、前記複合樹脂粒子は、前記分散体に分散相として含まれており、前記分散体から前記助剤を溶出することにより得られる。
なお、本明細書において、「高分子」「疎水性ポリマー」「親水性ポリマー」「水溶性高分子」「プラスチック」「熱可塑性樹脂」などの用語は、「新版高分子辞典」(朝倉書店発行 高分子学会編:19988年11月25日初版)の定義を参照できる。ただし、粒子に対して「高分子」という用語を用いている場合には、上記の「新版高分子辞典」の「プラスチック」という用語と同義(天然および合成樹脂を主原料に、これに充填剤、可塑剤、安定剤、顔料などの添加剤を加えたもの)を意味する場合がある。また、「樹脂粒子」のように粒子の構成物質として「樹脂」という用語を用いている場合は上記の「新版高分子辞典」で定義する「プラスチック」と同義である場合がある。また、特定高分子の名称の後に「樹脂」という用語を用いている場合は、JIS工業用大辞典 (財団法人 日本規格協会発行・編集:1996年10月20日発行 第3刷)の広義の意味、すなわち「プラスチック用の基盤材料であるいくつかの重合体を明示するためにも使用される。」と同一の意味である。
本発明では、コアが複数のコアで構成されているコアシェル構造を有する複合樹脂粒子を得ることができる。そして、このような複合樹脂粒子は、複数のコア、さらには複合樹脂粒子表面の凹凸形状に由来してか、光散乱性(又は光拡散性)に優れている。また、複合樹脂粒子表面の凹凸形状により、複合樹脂粒子の流動性も改善できる。さらに本発明の分散体を利用すると、前記複合樹脂粒子を簡便にかつ効率よく製造できる。
本発明の複合樹脂粒子は、第1の熱可塑性樹脂で構成されたコアと、前記第1の熱可塑性樹脂とは異なる第2の熱可塑性樹脂で構成され、前記コアを被覆するシェルとを含むコアシェル構造を有する複合樹脂粒子であって、前記コアが複数のコアで構成されている複合樹脂粒子である。このような複合樹脂粒子は、後述するように、通常、複合樹脂粒子が、特定の助剤中に分散した分散体から、前記助剤を溶出して得ることができる。
[第1の熱可塑性樹脂]
コアを構成する第1の熱可塑性樹脂としては、第2の熱可塑性樹脂の種類に応じてコアシェル構造を形成可能な熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリエステル系高分子(又はポリエステル系ポリマー又はポリエステル系樹脂と同意に用いる場合がある、以下、用語「高分子」において同じ、例えば、芳香族ポリエステル系高分子、脂肪族ポリエステル系高分子など)、ポリアミド系高分子、ポリウレタン系高分子、ポリ(チオ)エーテル系高分子[例えば、ポリアセタール系高分子、ポリフェニレンエーテル系高分子、ポリスルフィド系高分子、ポリ(チオ)エーテルケトン系高分子(ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィドケトンなど)など]、ポリカーボネート系高分子、ポリスルホン系高分子、ポリイミド系高分子(例えば、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなど)などの縮合系熱可塑性高分子;ポリオレフィン系高分子、(メタ)アクリル系高分子、スチレン系高分子、ビニル系高分子(例えば、酢酸ビニル系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、ハロゲン含有ビニル系高分子、ビニルエステル系高分子又はその誘導体など)などのビニル重合系熱可塑性樹脂;セルロース誘導体などの天然物由来高分子;熱可塑性シリコーン樹脂;熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
好ましい第1の熱可塑性樹脂としては、疎水性ポリマー、例えば、ポリオレフィン系高分子、スチレン系高分子、疎水性ビニル系高分子(塩化ビニル系高分子、フッ素高分子など)、熱可塑性エラストマー(オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなど)などが挙げられる。疎水性熱可塑性樹脂は、非極性の(又は極性基を有しない)高分子であってもよい。また、疎水性ポリマーは、非晶性高分子であってもよい。なお、非晶性高分子とは無定形高分子ともいわれはっきりした結晶状態を示さない高分子であり、アタクチック(atactic)高分子、共重合高分子などに多く見られるものである。本発明でいう非晶性高分子とは明確な結晶性を示さない広義の意味での非晶性高分子であり、結晶構造を僅かに含む高分子(例えば、結晶化度が5%以下の高分子)も非晶性高分子の範疇に含める。また、第2の熱可塑性樹脂の種類によっては、極性基を有する熱可塑性樹脂(例えば、(メタ)アクリル系高分子(後述の樹脂など)、ポリアミド系高分子(後述の高分子など)など)も第1の熱可塑性樹脂として使用できる。
特に好ましい第1の熱可塑性樹脂には、ポリオレフィン系高分子、スチレン系高分子などが挙げられる。以下、これらの好ましい熱可塑性樹脂について詳述する。
(ポリオレフィン系高分子)
ポリオレフィン系高分子には、例えば、α−C2−6オレフィンの単独又は共重合体(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(メチルペンテン−1)など)、α−C2−6オレフィンと共重合性単量体との共重合体(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)、環状ポリオレフィン系高分子などが挙げられる。これらのポリオレフィン系高分子は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
特に、本発明では、環状ポリオレフィン系高分子(シクロオレフィン系高分子)などの比較的溶融粘度が高いオレフィン系高分子を好適に使用できる。
環状ポリオレフィン系高分子は、環内にエチレン性二重結合を有する重合性の環状オレフィン(シクロオレフィン)をモノマー単位として構成されるポリマーの総称であり、環状オレフィンの単独又は共重合体[環状オレフィン単独の開環重合体、2種以上の環状オレフィンの開環重合体(単環式オレフィンとノルボルネン類などの多環式オレフィンとの共重合体など)など]、環状オレフィンと共重合性単量体との共重合体の他、ポリマーブレンド又はポリマーアロイ(上記重合体と、各種ゴム状ポリマー、アミド系ポリマー及びエステル系ポリマー、弾性エラストマーなどとのポリマーブレンド物など)が例示される。このような高分子又は重合体は、例えば、特開昭60−168708号公報、特開昭61−120816号公報、特開昭62−252406号号公報、特開平2−167318号号公報、特開平4−35653号公報などに開示されている。
代表的な環状オレフィンとしては、例えば、ノルボルネン類(例えば、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5又は5,6−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,6−ジメトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,6−ジ(トリフルオロメチル)−2−ノルボルネン、7−オキソ−2−ノルボルネンなど)、シクロペンタジエン類又はジシクロペンタジエン類、ノルボルネン類とシクロペンタジエンとの縮合により得られる1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン類、ヘキサシクロ[6.6.1.1.1.0.0]ヘプタデセン−4類、エチレンとシクロペンタジエンとから合成される6−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどが例示できる。環状オレフィンは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。環状オレフィンは、特に、ノルボルネン類(例えば、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネンなどのアルキルノルボルネンなど)であってもよい。
共重合性単量体としては、共重合可能な限り特に限定されないが、鎖状オレフィン[アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどのC2−20アルケン)、アルカジエン(例えば、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役C5−20アルカジエン)など]などが例示できる。これらの共重合性単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。共重合性単量体は、α−オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどのC2−10α−オレフィン類、特にC2−6α−オレフィン類)であってもよい。
さらに、本発明の効果を損なわない範囲内で、共重合性単量体として、重合性ニトリル化合物(例えば、(メタ)アクリロニトリルなど)、(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸など)、不飽和ジカルボン酸又はその誘導体(無水マレイン酸など)などを用いてもよい。これらの共重合性単量体も単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
好ましい環状ポリオレフィン系高分子は、鎖状オレフィン(エチレンなどのα−オレフィン)と環状オレフィン(特にノルボルネン類)との共重合体(例えば、エチレン−環状オレフィン系共重合体などのα−C2−4オレフィンと環状オレフィンとの共重合体)である。このような共重合体は、オレフィン系重合体(エチレン系重合体など)と環状オレフィン重合体との性質を兼ね備えており、α−オレフィンの共重合比率を調整することにより、所望のガラス転移温度を有し、かつ高分子量の重合体を得ることができる。耐熱性の点からは、ノルボルネン類とシクロペンタジエン(又はジシクロペンタジエン類)とを縮合した環状ポリオレフィン系高分子、ノルボルネン類とシクロペンタジエン(又はジシクロペンタジエン類)と、共重合性単量体(例えば、α−オレフィン類)とを重合した環状ポリオレフィン系共重合体が好ましい。なお、環状ポリオレフィン系共重合体において共重合性単量体(例えば、α−オレフィン類)の使用量は特に制限されず、少量(例えば、1〜25モル%、好ましくは2〜20モル%程度)であってもよい。
環状ポリオレフィン系高分子は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
なお、環状ポリオレフィン系高分子(例えば、α−オレフィンと環状オレフィンとの共重合体)は、高いガラス転移温度を有しており、割れ易いという性質が顕著である。そして、このような環状ポリオレフィン系高分子を従来の方法で粒子化するのは困難である。しかし、このような環状ポリオレフィン系高分子であっても、本発明の方法で粒子化することにより、樹脂粒子を得ることができる。
環状ポリオレフィン系高分子の可塑化温度の指標としてはガラス転移温度を用いることができ、環状ポリオレフィン系高分子のガラス転移温度は、所望する特性、例えば耐熱性などに応じて選択でき、70〜200℃(例えば、75〜190℃)、好ましくは80〜175℃(例えば、85〜165℃)、さらに好ましくは90〜150℃(例えば、95〜140℃)程度である。ガラス転移温度が低いと、可塑化温度が低くなり、後述する助剤の選択の範囲が広がるが、樹脂粒子の耐熱性が低下する。なお、本発明では、特に、助剤として少なくとも1つの環状構造を有する水溶性多糖類などを用いることにより、ガラス転移温度の高い環状ポリオレフィン系高分子であっても有効に複合樹脂粒子(例えば、球状の複合樹脂粒子)を効率よく得ることができる。そのため、環状ポリオレフィン系高分子のガラス転移温度は、100〜180℃(例えば、120〜150℃)、好ましくは130〜145℃程度であってもよい。
環状オレフィン系の高分子の分子量は、重量平均分子量(Mw)2×10〜30×10(例えば、3×10〜25×10)、好ましくは4×10〜20×10(例えば、5×10〜18×10)、さらに好ましくは7×10〜15×10(8×10〜12×10)程度である。なお、重量平均分子量が2×10以下の環状ポリオレフィン系高分子を粉砕法で粒子化すると、さらに分子量が低下するため好ましくなく、2×10を越える環状ポリオレフィン系高分子を物理的に粉砕することは困難である。これに対して、本発明では、このような分子量の環状ポリオレフィン系高分子であっても分子量の低下を防止しつつ粒子化できる。
(スチレン系高分子)
スチレン系高分子としては、スチレン系単量体(スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなど)の単独又は共重合体(ポリスチレン、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−α−メチルスチレン共重合体など)、スチレン系単量体と共重合性単量体との共重合体(スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体などの共重合体など;アクリロニトリル−アクリル酸エステル−スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体(ACS樹脂)、アクリロニトリル−酢酸ビニル−スチレン共重合体(AXS樹脂)などのスチレン系グラフト共重合体;ゴム成分の存在下、少なくともスチレン系単量体をグラフト重合したグラフト重合体、例えば、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS、又はゴムグラフトポリスチレン系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)など)などが挙げられる。これらのスチレン系高分子は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
[第2の熱可塑性樹脂]
第2の熱可塑性樹脂としては、第1の熱可塑性樹脂と異なる熱可塑性樹脂であり、第1の熱可塑性樹脂との組み合わせにおいてコアシェル構造を形成できる限り特に限定されず、慣用の熱可塑性樹脂から適宜選択できる。
第2の熱可塑性樹脂は、通常、極性基(又は親水性基)を有する熱可塑性樹脂であってもよい。極性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基(−NH−)、エーテル基、オキシアルキレン基(ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基などのポリオキシC2−4直鎖又は分岐状アルキレン基など)、エステル基(又はエステル結合)、アミド基(又はアミド結合)、ウレタン結合(−NHC(=O)O−)などが例示できる。第2の熱可塑性樹脂は、前記極性基を単独で又は二種以上組み合わせて有していてもよい。
代表的な第2の熱可塑性樹脂は、前記例示の樹脂のうち、ポリエステル系高分子、ポリアミド系高分子、ポリカーボネート系高分子、ポリウレタン系高分子、酢酸ビニル系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、(メタ)アクリル系高分子[(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどを構成単位として有する(メタ)アクリル系高分子など]、セルロース誘導体、熱可塑性エラストマー(ポリC2−4オキシアルキレンユニットをソフトセグメントとして有するポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマーなど)などの親水性ポリマーが挙げられる。これらの熱可塑性は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
好ましい第2の熱可塑性樹脂には、(メタ)アクリル系高分子、ポリアミド系高分子、ビニルアルコール系高分子(例えば、エチレン−ビニルアルコール系高分子など)などが挙げられ、特に(メタ)アクリル系高分子、ポリアミド系高分子が好ましい。以下、これらの好ましい高分子について詳述する。
((メタ)アクリル系高分子)
(メタ)アクリル系高分子としては、例えば、(メタ)アクリル系単量体((メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリロニトリルなど)の単独又は共重合体、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)などが挙げられる。好ましい(メタ)アクリル系高分子には、ポリ(メタ)アクリル酸C1−5アルキル、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)などが含まれる。これらの(メタ)アクリル系高分子は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
(ビニアルコール系高分子)
ビニルアルコール系高分子(又はビニルアルコール系重合体)としては、例えば、ポリビニルアルコール、脂肪酸ビニルエステルと共重合性単量体[C2−4オレフィン(エチレン、プロピレン、ブテンなど)などのオレフィン;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系単量体;アルキルビニルエーテル類;ビニルピロリドンなど]との共重合体のケン化物(例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)などが含まれる。なお、エチレン−ビニルアルコール共重合体において、エチレン含有量は1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、さらに好ましくは2〜10重量%程度であってもよい。ビニルアルコール系重合体のケン化度は、例えば、70モル%以上であり、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上であってもよい。
(ポリアミド系高分子)
また、ポリアミド系高分子としては、例えば、脂肪族ポリアミド系高分子、脂環族ポリアミド系高分子、芳香族ポリアミド系高分子などが挙げられ、通常、脂肪族ポリアミド系高分子が使用される。これらのポリアミド系高分子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
脂肪族ポリアミド系高分子としては、脂肪族ジアミン成分(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC4−10アルキレンジアミン)と脂肪族ジカルボン酸成分(アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC4−20アルキレンジカルボン酸など)との縮合物(例えば、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1212など)、ラクタム(ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのC4−20ラクタムなど)又はアミノカルボン酸(ω−アミノウンデカン酸などの炭素数C4−20アミノカルボン酸など)の単独又は共重合体(例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12など)、これらのポリアミド成分が共重合したコポリアミド(例えば、ポリアミド6/11,ポリアミド6/12,ポリアミド66/11,ポリアミド66/12など)などが挙げられる。
さらに、ポリアミド系高分子は生分解性を有していてもよい。生分解性ポリアミド系高分子としては、前記脂肪族ジアミン成分(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC4−10アルキレンジアミン)と前記脂肪族ジカルボン酸成分(アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC4−20アルキレンジカルボン酸など)、前記脂肪族ジオール成分(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールなどのC2−12アルキレングリコールなど)との縮合物であるポリエステルアミドが挙げられる。
なお、第2の熱可塑性樹脂は、複数の熱可塑性樹脂で構成してもよい。第2の熱可塑性樹脂を、複数の熱可塑性樹脂で構成する場合、一方の熱可塑性樹脂(例えば、(メタ)アクリル系高分子など)と、それ以外の熱可塑性樹脂(例えば、2種の熱可塑性樹脂である場合には他方の熱可塑性樹脂)との割合は、前者/後者(重量比)=99/1〜10/90、好ましくは95/5〜20/80、さらに好ましくは90/10〜25/75(例えば、80/20〜30/70)程度であってもよい。
代表的な第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との組み合わせ(コアシェル構造を形成できる組み合わせ)としては、(1)環状ポリオレフィン系高分子(第1の熱可塑性樹脂)と極性基を有する熱可塑性樹脂(第2の熱可塑性樹脂、特に、(メタ)アクリル系高分子、ポリアミド系高分子、および/またはビニルアルコール系高分子)との組み合わせ、(2)スチレン系高分子(第1の熱可塑性樹脂)と極性基を有する熱可塑性樹脂(第2の熱可塑性高分子、特に、ポリアミド系高分子)との組み合わせ、(3)(メタ)アクリル系高分子(第1の熱可塑性樹脂)と極性基を有する熱可塑性樹脂(第2の熱可塑性樹脂)(詳細には(メタ)アクリル系高分子とは異なる極性基を有する熱可塑性樹脂、例えば、ビニルアルコール系高分子など)との組み合わせ、(4)ポリアミド系高分子(第1の熱可塑性樹脂)と極性基を有する熱可塑性樹脂(第2の熱可塑性樹脂、例えば、ビニルアルコール系樹脂など)との組み合わせなどが挙げられる。なお、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との組み合わせとしては、特開2005−162797号公報を参照することもできる。
これらの組み合わせのうち、特に、組み合わせ(1)が好ましく、特に組み合わせ(1)のなかでも、少なくとも環状ポリオレフィン系高分子で構成された第1の熱可塑性樹脂と、少なくとも(メタ)アクリル系高分子で構成された第2の熱可塑性樹脂[例えば、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリル系高分子および極性基を有する熱可塑性樹脂(詳細には、(メタ)アクリル系樹脂とは異なる極性基を有する熱可塑性樹脂、ビニルアルコール系樹脂など)など]との組み合わせが好ましい。
本発明の複合樹脂粒子において、第1の熱可塑性樹脂(又はコア)と第2の熱可塑性樹脂(又はシェル)との割合は、前者/後者(重量比)=20/80〜99/1、好ましくは30/70〜95/5、さらに好ましくは40/60〜90/10、特に45/55〜85/15(例えば、50/50〜80/20)程度であってもよい。
なお、本発明の複合樹脂粒子は、種々の添加剤、例えば、可塑剤又は軟化剤、滑剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候(光)安定剤など)、着色剤[水不溶性(又は難溶性)染料(油溶性染料(ソルベント染料)、分散染料、バット染料、硫化染料、アゾイック染料(ナフトール染料)など]、分散剤、有機又は無機充填剤、難燃剤、帯電防止剤、電荷制御剤(ニグロシン染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、アミン系化合物などの電荷制御剤;サリチル酸金属錯体、アゾ染料金属錯体、銅フタロシアニン染料、ニトロイミダゾール誘導体、尿素誘導体などの負電荷制御剤など)、流動化剤、ワックス類[ポリエチレンワックス、エチレン共重合体ワックス、ポリプロピレンワックスなどのオレフィン系ワックス;パラフィンワックス;高級脂肪酸又はその誘導体(塩、多価アルコールエステル、アミド(高級脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどのアルキレンビス高級脂肪酸アミド、ステアロアミドエチルステアレートなどのN−(C2−6アルキル−C16−34アルカンカルボン酸エステル)C16−34アルカンカルボン酸アミドなどのエステルアミド類など)など);エステル系ワックスなど]、架橋剤、結晶核剤、抗菌剤、防腐剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
本発明の複合樹脂粒子は、前記のように、第1の熱可塑性樹脂で構成されたコアと、第2の熱可塑性樹脂で構成されたシェルとで構成されており、前記コアが複数のコアで構成された複合樹脂粒子である。詳細には、通常のコアシェル型複合樹脂粒子が、コア1個あたりにつき1個のシェルが被覆した構造であるのに対して、本発明の複合樹脂粒子は、1個のシェルが被覆するコアが複数個のコアで形成された構造(シェル1個あたりに複数のコアが含まれている(内包されている)構造)を有している。なお、このような本発明の複合樹脂粒子は、後述するように、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との組み合わせ(さらには、第1又は第2の熱可塑性樹脂と無機微粒子との組み合わせ)を選択したり、後述するように分散体を構成するマトリックス(助剤)の種類(さらには混練条件)を選択することにより得ることができる。
本発明の複合樹脂粒子において、シェル1個あたりに含まれるコアの数(平均数)は、例えば、2〜20、好ましくは3〜15、さらに好ましくは4〜10程度であってもよい。
コアの形状は、球状であってもよく、異形状(楕円体状、多角体状、角柱状、円柱状、棒状、不定形状、ダンベル状など)であってもよい。通常、コアの形状は、非球状(楕円体状など)であってもよく、特に、1つのシェル内において互いにコアと隣接しない面(シェル側の面など)が曲面形状であり、1つのシェル内において互いに隣接するコアと隣接する面(隣接する部位)が、前記曲面形状が変形した形状である場合が多い。
なお、シェルに含まれる各コアは、一部又は全部(表面の一部又は全部)において同一のシェルに含まれる他のコアと分離(又は離間)してシェルに含まれていればよく、前記他のコアと一部において接触(又は密着)していてもよい。
また、本発明の複合樹脂粒子において、シェルの形状(又は複合樹脂粒子の外面形状)は、球状であってもよいが、通常、異形状(楕円体状、棒状、不定形状など)である。
さらに、本発明の複合樹脂粒子は、内部に複数のコアを有しているためか、シェル(又は複合樹脂粒子)の外形(又は外面)が凹凸状である場合が多い。なお、通常、コアシェル型樹脂粒子の形状は、球状又は真球状である。凹凸形状の凹部および凸部は角状であってもよいが、曲面状である場合が多い。本発明の複合樹脂粒子の外形は、代表的には、複数の湾曲部が連なった形状(又は複数の湾曲した表面を有する形状)であってもよく、特に、いわゆるじゃがいも状(又はポテト状)であってもよい。このような凹凸形状と複数のコアとがあいまって、本発明の複合樹脂粒子は、高い光散乱性を有しているものと考えられる。
なお、本技術で特に助剤中に粒子を分散させる工程を経て粒子を得る場合に、粒子が真球状になるのは、マトリックスとなる助剤成分と粒子を形成する樹脂成分の表面張力比の違いにより、溶融状態で樹脂が真球の液滴を形成するためと考えられる。この時、粒子が複数のコアを有しているため、粒子全体が真球状になることが液滴として最も安定な状態ではないと想定できる。液滴が溶融状態で形成される際に、シェルを形成する樹脂と助剤成分の表面張力比、及び液滴中の複数のコアの存在に影響されて、複数の凹凸を有し、かつ各凹凸が滑らかな曲線を有する、すなわちジャガイモ形状が形成されると考えられる。
なお、本発明の複合樹脂粒子(又は分散体)は、少なくともこのような複数個のコアが1つのシェルで被覆された構造の複合樹脂粒子で構成されていればよく、本発明の効果(光散乱性など)を損なわない範囲であれば、通常のコアシェル構造の複合樹脂粒子(コア1個あたりにつき1個のシェルが被覆した複合樹脂粒子)や、コアシェル構造を有しない複合樹脂粒子などを含んでいてもよい。すなわち、本発明の複合樹脂粒子は、複数個のコアが1つのシェルで被覆された構造の複合樹脂粒子と、このような複合樹脂粒子の範疇に属さない樹脂粒子を含む組成物(粒子組成物)であってもよい。このような組成物において、複数個のコアが1つのシェルで被覆された構造の複合樹脂粒子(本発明の複合樹脂粒子)の割合は、組成物全体に対して、例えば、90重量%以上、好ましくは95重量%以上であり、ほとんどが前記複合樹脂粒子で構成されている。
本発明の複合樹脂粒子の平均粒子径(体積平均粒子径Dw)は、用途に応じて、例えば、0.01〜100μm(例えば、0.05〜80μm)程度の範囲から選択でき、0.1〜60μm(例えば、0.1〜30μm)程度であってもよい。複合樹脂粒子の平均粒子径(体積平均粒子径Dw)は、通常、1〜80μm(例えば、3〜75μm)程度であり、用途によっては20〜70μm、好ましくは30〜60μm(例えば、30〜50μm)程度が適当な場合がある。また、複合樹脂粒子の平均粒子径(体積平均粒子径Dw)は、着色剤による着色用途や化粧品用途などでは、通常、1〜50μm、好ましくは5〜40μm、さらに好ましくは8〜30μm程度であるのが適当である場合がある。
本発明の複合樹脂粒子において、数平均粒子径Dn[μm]に対する体積平均粒子径Dw[μm]の比Dw/Dnは、1.2〜5、好ましくは1.4〜4、さらに好ましくは1.8〜3.5程度であってもよい。さらに、下記式により算出される粒子径のCV値(変動係数)は、通常、60%以下(例えば、3〜50%)、好ましくは30%以下(例えば、5〜25%)、さらに好ましくは25%以下(例えば、7〜25%)、特に20%以下である。
粒子径のCV値(%)=(数平均粒子径の標準偏差/数平均粒子径)×100
本発明の複合樹脂粒子は、特に限定されないが、通常、前記複合樹脂粒子が、第1の熱可塑性樹脂および第2の熱可塑性樹脂に対して非相溶の助剤中に分散した分散体から、前記非相溶の助剤を溶出して得られる。そのため、本発明には、このような分散体も含まれる。以下に、分散体(複合樹脂粒子を分散相とする分散体)について詳述する。
[分散体]
前記分散体は、前記のように、第1の熱可塑性樹脂および第2の熱可塑性樹脂に対して非相溶の助剤と、この助剤中に分散した前記複合樹脂粒子(無機粒子が偏在した複合樹脂粒子)とで構成されている。すなわち、前記分散体は、分散相(又は分散相粒子)としての前記複合樹脂粒子と、連続相(又はマトリックス)としての前記助剤とで構成されている。
(助剤)
前記助剤としては、通常、第1の熱可塑性樹脂および第2の熱可塑性樹脂の可塑化温度で溶融可能な熱可塑性であり、かつ第1の熱可塑性樹脂および第2の熱可塑性樹脂と非相溶で、第1の熱可塑性樹脂および第2の熱可塑性樹脂を溶解しない溶媒に対して溶解可能な助剤であればよい。このような条件を満たす助剤であれば、例えば、脂肪族ポリエステルなどの非親水性有機固体化合物も使用できる。
助剤は、親水性有機成分(親水性樹脂又は親水性有機固体化合物など)、特に水溶性有機成分であるのが好ましい。助剤として水溶性の熱可塑性成分を選択すると、分散相と連続相との非相溶性の要件を容易に満たすことができる。このような助剤としては、溶融成形可能な水溶性高分子、多糖類などが挙げられる。水溶性高分子は、水溶性で溶融成形が可能な樹脂であれば特に限定されず、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレングリコール又はポリエチレンオキサイドなどが挙げられる。好ましい水溶性高分子は、ポリビニルアルコール系樹脂[特に、オキシアルキレン基を含有するエチレン性不飽和モノマーと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物などのオキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂]が好適に用いられる。
助剤は、特に、多糖類、例えば、カラメル、変性澱粉、エーテル化セルロース、エーテルエステル化セルロース、エステル化セルロースで構成してもよい。助剤は、特に水溶性多糖類、特に、オリゴ糖および少なくとも1つの環状構造を有する水溶性多糖類(環状構造を有する多糖類、環状多糖類などということがある)から選択された少なくとも一種の水溶性多糖類で構成されているのが好ましく、両者を組み合わせて使用してもよい。オリゴ糖及び/又は環状構造を有する多糖類(さらには後述の水溶性可塑化成分)を使い分けることにより、溶融粘度を調整でき、さらには、複合樹脂粒子の粒子径などを効率よくコントロールできる。このような水溶性多糖類を用いると、分散体を溶出又は洗浄して複合樹脂粒子を得る場合に、溶媒に溶解した助剤の溶液粘度が高くなることがなく、簡便に複合樹脂粒子を得ることができる。
(オリゴ糖)
オリゴ糖は、ホモオリゴ糖とヘテロオリゴ糖とに大別され、これらのオリゴ糖は無水物でもよい。また、オリゴ糖において、単糖類と糖アルコールとが結合していてもよい。また、オリゴ糖は複数の糖成分で構成されたオリゴ糖組成物であってもよい。このようなオリゴ糖組成物であっても単にオリゴ糖という場合がある。オリゴ糖(又はオリゴ糖組成物)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。オリゴ糖には、二糖類〜十糖類などが含まれる。
二糖類としては、トレハロース、マルトース、イソマルトース、セロビオースなどのホモオリゴ糖;ラクトース、スクロース、パラチノースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。
三糖類としては、マルトトリオース、イソマルトトリオース、パノース、セロトリオースなどのホモオリゴ糖;マンニノトリオース、ソラトリオース、メレジトース、プランテオース、ゲンチアノース、ウンベリフェロース、ラクトスクロース、ラフィノースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。
四糖類としては、マルトテトラオース、イソマルトテトラオースなどのホモオリゴ糖;スタキオース、セロテトラオース、スコロドース、リキノース、パノースの還元末端に糖又は糖アルコールが結合したテトラオースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。
これらの四糖類のうち、パノースの還元末端に単糖類又は糖アルコールが結合したテトラオースは、例えば、特開平10−215892号公報に開示されており、パノースの還元末端に、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、アラビノースなどの単糖類や、ソルビトール、キシリトール、エリスリトールなどの糖アルコールが結合したテトラオースが例示できる。
五糖類としては、マルトペンタオース、イソマルトペンタオースなどのホモオリゴ糖;パノースの還元末端に二糖類が結合したペンタオースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。パノースの還元末端に二糖類が結合したペンタオースは、例えば、特開平10−215892号公報に開示されており、パノースの還元末端に、スクロース、ラクトース、セロビオース、トレハロースなどの二糖類が結合したペンタオースが例示できる。
六糖類としては、マルトヘキサオース、イソマルトヘキサオースなどのホモオリゴ糖などが挙げられる。
オリゴ糖は、多糖類の分解により生成するオリゴ糖組成物であってもよい。オリゴ糖組成物としては、例えば、デンプン糖(デンプン糖化物)、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー、フルクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖などが挙げられ、これらの成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。例えば、デンプン糖は、複数個のグルコースが結合したオリゴ糖の混合物であってもよい。また、このようなオリゴ糖組成物(オリゴ糖混合物)は、前記と同様に、糖アルコールと結合していてもよい。すなわち、オリゴ糖組成物(又はオリゴ糖組成物を構成するオリゴ糖)は、オリゴ糖単位と、このオリゴ糖単位に結合した糖アルコール単位とを有していてもよい。このような糖アルコール単位は、通常、オリゴ糖単位の末端に位置する場合が多い。すなわち、オリゴ糖組成物を構成するオリゴ糖は、末端が還元された糖アルコール単位を有していてもよい。なお、このような糖アルコール単位を有するオリゴ糖組成物は、例えば、オリゴ糖組成物(デンプン糖など)を還元することにより得られる。
デンプン糖としては、例えば、東和化成工業(株)製の還元デンプン糖化物(商品名:PO−10、四糖類の含有量90重量%以上)などが挙げられる。
これらのオリゴ糖組成物において、オリゴ糖組成物中の三糖類、四糖類(特に四糖類)の含有量は、例えば、60重量%以上(例えば、60〜100重量%程度)、好ましくは70重量%以上(例えば、70〜100重量%程度)、さらに好ましくは80重量%以上(例えば、80〜100重量%程度)、特に90重量%以上(例えば、90〜100重量%程度)であってもよい。
オリゴ糖は、非還元型(トレハロース型)であってもよいが、還元型(マルトース型)のオリゴ糖は、耐熱性に優れるため好ましい。還元型のオリゴ糖としては、遊離のアルデヒド基又はケトン基を有し、還元性を示す糖(二糖類、三糖類、四糖類、五糖類、六糖類など)であれば、特に限定されない。
また、オリゴ糖組成物は、比較的大きい多量体のオリゴ糖を多く含んでいてもよく、例えば、オリゴ糖組成物において、二十糖類以上のオリゴ糖の含有割合は、20重量%以上(例えば、25〜100重量%)、好ましくは30重量%以上(例えば、35〜90重量%)、さらに好ましくは40重量%以上(例えば、45〜80重量%)、特に50〜70重量%程度であってもよく、通常40〜75重量%程度であってもよい。
なお、環状ポリオレフィン系樹脂は、結晶性高分子を融点以上の温度に加熱すると溶融粘度が大きく低下するのと異なり、ガラス転移温度以上の温度で可塑化しても溶融粘度が高い。そのため、所望の粒子径を有する樹脂粒子を得るためには、助剤の粘度を高くするか、混練温度を高くする必要がある場合がある。一方、オリゴ糖と水溶性可塑化成分との組み合わせにおいて、二糖類〜四糖類を主成分として構成されたオリゴ糖を用いると、混練温度での助剤の溶融粘度が低下し、環状ポリオレフィン系樹脂の種類によっては、所望の粒子径を有する樹脂粒子が得られない場合がある。そのため、オリゴ糖と水溶性可塑化成分とで水溶性助剤を構成する場合、五糖類、六糖類あるいはそれ以上の糖数のオリゴ糖を用いてもよい。
混練により、効果的に樹脂成分と助剤成分とを分散させるためには、オリゴ糖の粘度は高いのが望ましい。具体的には、B型粘度計を用いて温度25℃で測定したとき、オリゴ糖の50重量%水溶液の粘度は、0.1Pa・s以上(例えば、0.2〜2Pa・s程度)、好ましくは0.3Pa・s以上(例えば、0.4〜1.5Pa・s、特に0.45〜1Pa・s程度)、さらに好ましくは0.5Pa・s以上(例えば、0.5〜0.9Pa・s程度)であってもよい。
なお、オリゴ糖の種類(例えば、還元デンプン糖化物などのデンプン糖など)によっては、融点又は軟化点を示さず、分解(熱分解)する場合がある。このような場合、分解温度をオリゴ糖の「融点又は軟化点」としてもよい。
オリゴ糖の融点又は軟化点と、樹脂成分(第1の熱可塑性樹脂および第2の熱可塑性樹脂)の熱変形温度との温度差は、例えば、1℃以上(例えば、1〜80℃程度)、好ましくは10℃以上(例えば、10〜70℃程度)、さらに好ましくは15℃以上(例えば、15〜60℃程度)である。オリゴ糖の融点又は軟化点は、樹脂成分の種類などに応じて、70〜300℃の範囲で選択でき、例えば、90〜290℃、好ましくは100〜280℃(例えば、110〜270℃)、さらに好ましくは120〜260℃(例えば、130〜260℃)程度であってもよい。
(環状構造を有する水溶性多糖類)
助剤(又は水溶性媒体)は、少なくとも1つの環状構造を有する水溶性多糖類で構成してもよい。このような助剤を用いると溶融粘度を高めることができる。また、助剤を環状構造を有する水溶性多糖類で構成すると、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との組み合わせ(例えば、環状ポリオレフィン系高分子で少なくとも構成された第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との組み合わせ)によっては、複合樹脂粒子をより小粒径化しやすくなる場合がある。
環状構造を有する水溶性多糖類において、環状構造(環状骨格、環状ユニット、環状部位)は、多糖類を構成する複数のグリコース単位[通常、グルコース単位(特にD−グルコース)]がグルコシド結合(又はグルコシル化)して形成された環であればよい。すなわち、本明細書において、環状構造とは、複数のグリコース単位(およびグルコシド結合)で形成された環を意味し、グルコース環などの単糖類の環を意味するものではない。
環状構造を形成するグリコース単位の平均重合度は、1つの環状構造あたり10以上であってもよい。また、前記環状構造を有する水溶性多糖類において、環状構造は、1,6−グルコシド結合を含む環状構造(又は環、環状ユニット)であってもよく、例えば、α−1,4−グルコシド結合とα−1,6−グルコシド結合とを有する環状構造であってもよい。
代表的には、環状構造を有する水溶性多糖類は、α−1,4−グルコシド結合およびα−1,6−グルコシド結合を有し、1つの環状構造あたりグリコース単位の平均重合度が10以上である環状構造と、この環状構造に結合した非環状構造とを有し、かつ平均重合度(総平均重合度)50以上である多糖類で構成されていてもよい。
環状構造を有する水溶性多糖類は、オリゴ糖などに比べて比較的高分子量であり溶融粘度が高く、しかも、その環状構造によるためか、水溶性を示す。このような特定の多糖類を使用することにより、オリゴ糖などに比べて溶融混練において高い剪断粘度を保持できるため、可塑又は溶融粘度が高く、しかも、水溶性であるため、水などにより容易に除去可能である。
前記多糖類において、環状構造は、複数のグルコシド結合で構成されていればよく、α−グルコシド結合又はβ−グルコシド結合で構成されていてもよく、通常、α−グルコシド結合で構成されていてもよい。
環状構造(1つの環状構造あたり)の平均重合度(数平均重合度、環状構造を形成する平均グルコシド結合数、環状構造を形成するグリコース単位の平均重合度)は、例えば、10以上(例えば、10〜500程度)、好ましくは12以上(例えば、12〜300程度)、さらに好ましくは14以上(例えば、14〜100程度)であってもよい。
また、環状構造を構成するグルコシド結合において環状構造は、通常、少なくとも1,4−グルコシド結合(特に、α−1,4−グルコシド結合)で形成された環であればよく、1,4−グルコシド結合(特に、α−1,4−グルコシド結合)と1,6−グルコシド結合(特に、α−1,6−グルコシド結合)とで形成された環であってもよい。
このような1,6−グルコシド結合を含む環において、環状構造(1つの環状構造あたり)における1,6−グルコシド結合の平均数は、1以上(例えば、1〜700程度)であればよく、例えば、1〜300(例えば、1〜200)、好ましくは1〜100(例えば、1〜50)、さらに好ましくは1〜20(例えば、1〜10)であってもよい。
また、環状構造を有する水溶性多糖類は、少なくとも1つの環状構造(環状ユニット)を有していればよく、複数の環状構造を有していてもよい。
なお、環状構造を有する水溶性多糖類の平均重合度(数平均重合度、総平均重合度、多糖類全体の平均重合度)は、例えば、14以上(例えば、14〜15000)、好ましくは17以上(例えば、17〜10000)、さらに好ましくは20以上(例えば、20〜8000程度)であってもよい。
なお、環状構造を有する水溶性多糖類は、誘導体化(又は変性)されていてもよい。例えば、環状構造を有する水溶性多糖類は、ヒドロキシル基(アルコール性ヒドロキシル基)が誘導体化[例えば、エーテル化(例えば、メチルエーテル化などのアルキルエーテル化;ヒドロキシエチルエーテル化、ヒドロキシプロピルエーテル化などのヒドロキシアルキルエーテル化;グリセリル化など)、エステル化、グラフト化、架橋化など]された誘導体であってもよい。
環状構造を有する水溶性多糖類は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
代表的な環状構造を有する水溶性多糖類には、環状構造(又は環状ユニット)とこの環状構造に結合した非環状構造(非環状骨格、非環状ユニット非環状部位)とを有し、かつ平均重合度50以上である多糖類(多糖類(1)という場合がある)、14以上のα−1,4−グルコシド結合で形成された環状構造を分子内に一つ有する多糖類(多糖類(2)という場合がある)などが挙げられる。
(多糖類(1))
前記多糖類(1)において、環状構造は、通常、α−1,4−グルコシド結合とα−1,6−グルコシド結合とで形成された環であってもよい。
また、環状構造(1つの環状構造あたり)の平均重合度(数平均重合度)は、例えば、10〜500、好ましくは12〜300、さらに好ましくは14〜100であってもよい。環状構造がα−1,6−グルコシド結合を有する場合、環状構造(1つの環状構造あたり)におけるα−1,6−グルコシド結合の平均数は、例えば、1以上(例えば、1〜200)、好ましくは1〜100、さらに好ましくは1〜50程度であってもよい。
なお、多糖類(1)の平均重合度(数平均重合度、総数平均重合度)は、50以上であればよく、例えば、50〜10000、好ましくは60〜7000、さらに好ましくは70〜5000程度であってもよい。
なお、多糖類(1)は、非環状構造を1又は複数有していてもよく、通常、複数(例えば、2〜1000、好ましくは3〜500程度)有していてもよい。このような非環状部位(又は多糖類(1)の環状構造以外の部位)1つあたりの平均重合度(数平均重合度)は、例えば、10以上(例えば、10〜30)、好ましくは10〜20程度であってもよい。また、非環状部位全体の平均重合度(数平均重合度)は、10以上であればよく、例えば、40以上(例えば、50〜5000程度)、好ましくは100〜3000程度であってもよい。なお、非環状部位は、特に、α−1,6−グルコシド結合のグリコース(特にグルコース)単位から分岐している場合が多い。
なお、多糖類(1)において、ヒドロキシル基(アルコール性ヒドロキシル基)は、誘導体化(例えば、エーテル化、エステル化、グラフト化など)されていてもよい。
このような多糖類(1)には、いわゆる「クラスターデキストリン」として知られている多糖類が含まれる。このような多糖類(1)は、例えば、糖類(例えば、澱粉、澱粉の部分分解物、アミロペクチン、グリコーゲン、ワキシー澱粉、ハイアミロース澱粉、可溶性澱粉、デキストリン、澱粉加水分解物、およびホスホリラーゼによる酵素合成アミロペクチンから選択された少なくとも1種の基質など)に、糖類に作用して環状構造を形成可能な酵素(枝作り酵素、D酵素、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼなど)を反応させることにより得てもよい。このようなクラスターデキストリンおよびその製造方法についての詳細は、特開平8−134104号公報などを参照できる。
(多糖類(2))
前記多糖類(2)において、環状構造は、α−1,4−グルコシド結合で少なくとも形成された環であればよく、α−1,4−グルコシド結合とα−1,6−グルコシド結合とで形成された環であってもよい。
また、多糖類(2)において、環状構造の平均重合度(数平均重合度)は、14以上であればよく、例えば、14〜5000、好ましくは15以上(例えば、15〜3000程度)、さらに好ましくは17以上(例えば、17〜1000程度)であってもよい。環状構造がα−1,6−グルコシド結合を有する場合、環状構造におけるα−1,6−グルコシド結合の平均数は、例えば、1〜500、好ましくは1〜300、さらに好ましくは1〜100程度であってもよい。
多糖類(2)は、前記環状構造を有している限り、非環状構造(例えば、直鎖状構造)を有していてもよいが、通常、前記環状構造のみで構成(又は形成)された環状多糖類であってもよい。
なお、多糖類(2)において、ヒドロキシル基(アルコール性ヒドロキシル基)は、誘導体化(例えば、エーテル化、エステル化、グラフト化、架橋化など)されていてもよい。
このような多糖類(2)には、いわゆる「シクロアミロース(又はサイクロアミロース)」として知られている多糖類が含まれる。このような多糖類(2)は、例えば、直鎖状のα−1,4−グルカン又はこのグルカンを含む糖類(例えば、マルトオリゴ糖、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、澱粉、ワキシー澱粉、ハイアミロース澱粉、可溶性澱粉、デキストリン、澱粉枝切り物、澱粉部分加水分解物、ホルホリラーゼによる酵素合成アミロース、およびこれらの誘導体から選択された少なくとも1種など)と、多糖類(2)を形成可能な酵素(例えば、D酵素など)とを、必要に応じて、ホスホリラーゼおよびグルコース1−リン酸の存在下で反応させることにより得ることができる。また、前記反応は、基質としてα−1,6−グルコシド結合を有する基質を用いる場合には、α−1,6−グルコシド結合を切断可能な酵素(例えば、イソアミラーゼ、プルラナーゼなど)の存在下で行ってもよい。このようなサイクロアミロースおよびその製造方法についての詳細は、特開平8−311103号公報などを参照できる。
これらの環状構造を有する多糖類は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。本発明では、環状構造を有する多糖類のうち、特に、前記多糖類(1)(又はクラスターデキストリン)を好適に用いることができる。
助剤において、水溶性多糖類は、オリゴ糖単独、又は環状構造を有する水溶性多糖類単独で構成してもよく、オリゴ糖および環状構造を有する水溶性多糖類で構成してもよい。これらの水溶性多糖類を使い分けることにより、分散体の調製における溶融粘度を調整でき、第1の熱可塑性樹脂および第2の熱可塑性樹脂の組み合わせに応じて、シェルが複数のコアを被覆したコアシェル構造を有する本発明の複合樹脂粒子を効率よく得ることができる。
オリゴ糖と環状構造を有する多糖類とを組み合わせる場合、オリゴ糖と環状構造を有する多糖類との割合は、前者/後者(重量比)=1/99〜99/1、好ましくは5/95〜95/5、さらに好ましくは10/90〜90/10(例えば、15/85〜85/15)程度であってもよい。
(水溶性可塑化成分)
助剤は、さらに、前記水溶性多糖類[オリゴ糖(例えば、六糖類以上の糖数のオリゴ糖)及び/又は環状構造を有する水溶性多糖類]を可塑化するための水溶性可塑化成分を含んでいてもよい。水溶性多糖類と水溶性可塑化成分とを組み合わせると、熱分解する水溶性多糖類(オリゴ糖など)であっても有効に可塑化又は軟化できる。可塑化成分の融点又は軟化点は、前記コアおよびシェルを構成する熱可塑性樹脂(第1の熱可塑性樹脂および第2の熱可塑性樹脂)の熱変形温度(前記ビカット軟化点)以下であってもよい。
水溶性可塑化成分は、糖類(例えば、単糖類、二糖類など)や糖アルコールなどで構成してもよく、このような糖類は、還元糖で構成してもよい。単糖類は、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、オクトース、ノノース、デコース、ドデコースなどで構成してもよく、二糖類は、前記単糖類のホモ及びヘテロ二糖類で構成してもよい。糖アルコールは、テトリトール(例えば、エリスリトールなど)、ペンチトール(例えば、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトールなど)、ヘキシトール(例えば、ソルビトール、ズルシトール、マンニトールなど)、ヘプチトール、オクチトール、ノニトール、デキトール、ドデキトールなどで構成してもよい。これらの糖アルコールのうち、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、ズルシトール及びマンニトールが好ましい。
糖アルコールは、エリスリトール、ペンタエリスリトール、キシリトールから選択された少なくとも1つの糖アルコールを含む場合が多い。好ましい水溶性可塑化成分は、糖アルコールである。
助剤において、水溶性多糖類と可塑化成分との割合は、前者/後者(重量比)=99/1〜20/80、好ましくは95/5〜30/70、さらに好ましくは90/10〜40/60程度であってもよい。なお、助剤のオリゴ糖と可塑化成分の詳細については、特開2004−51942号公報に記載されている。また、糖アルコールの詳細については、特開2005−162841号公報に記載されている。
前記環状構造を有する多糖類と水溶性可塑化成分との割合は、前者/後者(重量比)=99/1〜20/80、好ましくは95/5〜30/70、さらに好ましくは90/10〜40/60程度であってもよい。なお、可塑化成分の割合により、複合樹脂粒子の平均粒子径を調整できる場合があり、可塑化成分の割合が多くなると、平均粒子径の大きな樹脂粒子を生成できる傾向がある。
本発明の分散体において、前記複合樹脂粒子と前記助剤との割合は、例えば、分散体において前記助剤が連続相を構成し、前記複合樹脂粒子が分散相(非連続相)を構成する量的割合であればよく、例えば、前者/後者(重量比)=5/95〜50/50、好ましくは10/90〜40/60、より好ましくは15/85〜35/65程度である。
(分散体の製造方法)
本発明の分散体は、限定されないが、通常、第1の熱可塑性樹脂と、第2の熱可塑性樹脂と、前記助剤と(必要に応じてさらに他の成分(添加剤など)と)を溶融混練(又は溶融混合)することにより製造できる。ここで、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との組み合わせを選択したり、助剤の種類を選択する(さらには混練条件を選択する)などにより、前記複合樹脂粒子(すなわち、シェルに複数のコアを含むコアシェル構造の複合樹脂粒子)を得ることができる。
溶融混練は、慣用の混練機(例えば、単軸もしくは二軸スクリュー押出機、ニーダー、カレンダーロール、ブラベンダーなど)を用いて行なうことができる。特に、極度に剪断力を作用させることなく混練可能な混練機又は混練手段(ブラベンダーなど)を使用するのが好ましい。溶融混練において、ニーダーなどを用いて剪断力を作用させすぎると、複数のコアが一体化するなどして通常のコア(1つのシェルに対して1つのコア)となってしまう虞がある。また、混練に先立ち、各成分を、予め凍結粉砕機などで粉体状に予備加工したり、前記第1の熱可塑性樹脂と、第2の熱可塑性樹脂と、助剤とをヘンシェルミキサー、タンブルミキサー、ボールミルなどで予備混練してもよい。
溶融混練した組成物(分散体)は、塊状などであってもよく、マトリックス成分(すなわち、助剤)を除去するという観点から、成形(予備成形)に供されて、予備成形体を形成してもよい。予備成形体(又は分散体)の形状は、特に制限されず、0次元的形状(粒状、ペレット状など)、1次元的形状(ストランド状、棒状など)、2次元的形状(板状、シート状、フィルム状など)、3次元的形状(管状、ブロック状など)などであってもよい。
なお、混練温度や成形加工温度は、使用される原材料に応じて適宜設定することが可能であり、例えば、90〜300℃、好ましくは110〜260℃(例えば、130〜250℃)、さらに好ましくは140〜240℃(例えば、150〜240℃)、特に170〜230℃(例えば、180〜220℃)程度である。マトリックス成分(例えば、オリゴ糖および可塑化成分)の熱分解を避けるため、混練温度や成形加工温度を230℃以下(例えば、160〜220℃程度)にしてもよい。また、混練時間は、例えば、10秒〜1時間の範囲から選択してもよく、通常30秒〜45分、好ましくは1〜30分(例えば、3〜20分)程度である。
上記のようにして本発明の分散体が調製される。そして、このような分散体には、前記複合樹脂粒子が含まれており、そして、この複合樹脂粒子は、前記のように、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との組み合わせ(コアシェル構造となる組み合わせ)や、助剤の種類を選択することなどにより得られる。
なお、本発明のような複数のコアを持つ構造の複合樹脂粒子は通常のコアシェル型の樹脂粒子では得られない。すなわち、本発明のような複数のコアを持つ構造の複合樹脂粒子を得るためには、少なくとも(1)コアシェルの小さな粒子が集合して表面凹凸形状の複合樹脂粒子となる場合、又は(2)樹脂の混合物から粒子が形成されるときにコアの樹脂のみが溶融状態で分割され、シェル側の樹脂は分割されない場合が想定される。
しかし、(1)の場合には、シェルの樹脂のみが一体となり、コアの樹脂が一体にならないという特殊な条件が必要となる。したがって、本発明の複数のコアを持つ微粒子の生成のメカニズムは完全には解明されていないが、本発明者らは(2)の想定をとっている。
(2)の想定を用いた場合、(2−1)樹脂溶融時の粘性挙動が複数の樹脂間で非常に異なる、すなわち、コア側の樹脂は溶融状態で切れ易く、逆にシェル側の樹脂が切れ難いことにより、複数コアが形成する速度論的なメカニズムと、(2−2)コアのサイズは、コアを形成する樹脂とシェルを形成する樹脂の表面張力比によりある程度支配され、結果として樹脂の組み合わせごとに上限を持ち、コアシェル状粒子のサイズが、制限されたコアのサイズを大きく上回った場合に一つの粒子中に複数コアが形成される平衡論的メカニズムの2つがさらに想定できる。従って、本発明のような複数のコアを有する複合樹脂粒子を得るためには、(2−1)の想定に従って同様の剪断力下で異なった粘弾性挙動を示す樹脂の組み合わせを選択するか、もしくは(2−2)の想定に従って表面張力比(あるいは極性)が大きく異なった樹脂の組み合わせを選択した上で、粒子自体のサイズが平衡論的に支配されるコアのサイズを大きく上回るように粒子化することが必要と想像される。当然のことながら、(2−1)(2−2)両方の効果を同時に勘案することも必要と考えられる。
以下に、本発明の複合樹脂粒子を含む代表的な分散体の例を示す。
(i)少なくとも環状ポリオレフィン系樹脂で構成された第1の熱可塑性樹脂と、極性基を有する熱可塑性樹脂で構成された第2の熱可塑性樹脂と、少なくともオリゴ糖を含む非相溶の助剤[特に、オリゴ糖と水溶性可塑化成分(糖アルコールなど)で構成された非相溶の助剤]とを溶融混練して得られる分散体。
(ii)少なくとも環状ポリオレフィン系樹脂で構成された第1の熱可塑性樹脂と、極性基を有する熱可塑性樹脂で構成された第2の熱可塑性樹脂と、少なくとも環状構造を有する水溶性多糖類を含む非相溶の助剤[特に、環状構造を有する水溶性多糖類と水溶性可塑化成分(糖アルコールなど)で構成された非相溶の助剤]とを溶融混練して得られる分散体。
上記分散体(i)および(ii)において、代表的な第2の熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル系高分子、ポリアミド系高分子およびビニアルコール系高分子から選択された少なくとも1種などが挙げられる。好ましい第2の熱可塑性樹脂には、(a)少なくとも(メタ)アクリル系樹脂で構成された第2の熱可塑性樹脂[(メタ)アクリル系高分子単独、(メタ)アクリル系高分子および極性基を有する熱可塑性樹脂(詳細には、(メタ)アクリル系高分子とは異なる極性基を有する熱可塑性樹脂、ビニルアルコール系高分子など)で構成された第2の熱可塑性樹脂など]、(b)少なくともポリアミド系高分子で構成された第2の熱可塑性樹脂[ポリアミド系高分子単独、ポリアミド系高分子および極性基を有する熱可塑性樹脂(詳細には、ポリアミド系高分子とは異なる極性基を有する熱可塑性樹脂、(メタ)アクリル系高分子及び/又はビニルアルコール系高分子など)などが挙げられる。これらのうち、少なくとも(メタ)アクリル系高分子で構成された第2の熱可塑性樹脂(b)が特に好ましい。
上記分散体(ii)では、助剤を溶融粘度の高い環状構造を有する水溶性多糖類で構成するためか、複合樹脂粒子の粒径を効率よく小さくできる。
なお、上記分散体(i)又は(ii)において、溶融混練は、前記のように極度な剪断力を作用させない混練手段(ブラベンダーなど)を用いて行ってもよい。特に、分散体(ii)では、環状構造を有する水溶性多糖類で助剤を構成しており、溶融粘度が高くなりやすいため、混練は適度な剪断力下で行ってもよい。
なお、分散体において、分散相は、前記複合樹脂粒子(コアが複数のコアで構成されている複合樹脂粒子)で構成されていればよく、前記のように、小割合で、前記複合樹脂履修氏の範疇に属さない粒子を含んでいてもよい。分散相全体に対する前記複合樹脂粒子の割合は、90重量%以上、好ましくは95%以上であってもよい。
そして、上記のようにして得られた分散体から、前記助剤を溶出することにより前記複合樹脂粒子が得られる。すなわち、前記助剤を溶解する溶媒で分散体を溶出処理することにより複合樹脂粒子が得られる。
前記溶媒としては、前記助剤を溶解し、かつ前記複合樹脂粒子に対して不溶性(溶解しない)溶媒であればよく、好適な溶媒は、親水性溶媒(水性溶媒)である。親水性溶媒(水性溶媒)としては、例えば、水、水溶性溶媒(例えば、アルコール類(エタノール、イソプロパノールなど)、エーテル類(セロソルブなど)など)などが使用できる。これらの水性溶媒は、水及び/又はアルコールを主成分とする溶媒が好ましく、単独で又は二種以上組み合わせた混合溶媒であってもよい。溶出溶媒は、少なくとも水を主体とする溶媒(混合溶媒を含む)、特に水で構成した溶媒であるのが好ましい。
助剤として、オリゴ糖及び/又は環状多糖類などで構成された水溶性助剤(水溶性糖組成物)を用いると、水で容易に助剤を溶解して複合樹脂粒子と助剤とを分離することができるとともに、助剤が溶解した抽出液の粘度が高くなるのを防止できる。
助剤の溶出は、慣用の方法、例えば、前記分散体(又は予備成形体)を、前記溶媒中に浸漬、分散して、助剤を溶出または洗浄(溶媒に移行)することに行うことができる。なお、助剤の分散及び溶出を促進するため、撹拌してもよい。助剤は、例えば、加圧下で溶出させてもよいが、通常、常圧下(例えば、10万Pa程度)又は減圧下で溶出できる。また、助剤の溶出温度は、通常、複合樹脂粒子を構成する熱可塑性樹脂の融点又は軟化点未満の温度、例えば、10〜100℃、25〜80℃(例えば、40〜80℃)程度である。複合樹脂粒子は、慣用の分離(回収)方法、例えば、濾過、遠心分離などを用いて分離し、必要により洗浄し、乾燥することにより回収できる。なお、複合樹脂粒子の分離又は回収方法については、特開2005−162797号公報、特開2006−328219号公報などを参照できる。
複合樹脂粒子は、溶出処理後、通常、複合樹脂粒子を含む分散液から回収できる。前記溶出処理では、複合樹脂粒子だけを残して前記助剤を前記溶媒の溶液として排出してもよく、溶媒により分散体を溶出処理又は洗浄処理し、助剤が溶解し、かつ前記複合樹脂粒子が分散した分散液又は抽出液を生成させて回収するのが有用である。
このような回収において、複合樹脂粒子の比重が小さいことを利用して分離回収すると、樹脂粒子を簡便かつ効率よく得ることができる。この方法では、分散液又は抽出液中の前記助剤の濃度(希釈又は濃縮の程度)を調整することにより、前記分散液を、複合樹脂粒子の含有割合(存在比率)が多い上層と、複合樹脂粒子の含有割合(存在比率)が少ない下層とに分離でき、上層から複合樹脂粒子を効率よく回収できる。すなわち、溶質(特に、水溶性の溶質又は助剤)を含む溶液(特に、水溶液などの水性溶液)に複合樹脂粒子が分散した分散液において、前記溶液の粘度および密度を特定の範囲又は条件となるように調整することにより、前記複合樹脂粒子の粒径が小さくても、前記分散液から効率よく粒子を分離回収できるとともに、分散液又は抽出液での前記助剤の濃度が低くても、前記分散液又は溶液から前記溶質を効率よく回収できる。以下に、この方法について詳細に説明する。
一般に水溶性高分子を助剤として用いると、水溶液粘度が高く、濾過などによる樹脂粒子の分別が困難である。しかし、溶質である助剤(B)を含み、かつ複合樹脂粒子(A)が分散した溶液(分散液)又は抽出液(E)に、必要に応じて溶媒(C)を添加し、分散液又は抽出液(E)の特性を、以下の条件(1)、(2)および(3)を充足するように調整すると、樹脂粒子を濾別などにより簡便に分離回収できる。
(1)分散液(E)の粘度が、25℃において、200mPa・s以下
(2)分散液(E)の密度ρDと、助剤(B)の密度ρBとの差ρD−ρBが、25℃おいて、0.02g/cm以上
(3)粒子の数平均粒子径が100μm以下。
このような分散液(E)は、上層液と下層液とに分離し、上層液には複合樹脂粒子が高濃度で存在し、下層液にはほとんど複合樹脂粒子が存在しないので、上層液のみを濾別すればよい。より詳細には、分散液(E)を前記粘度及び密度に調整することにより、複合樹脂粒子を多く含む層と、溶質を多く含む層との層分離を容易にし、複合樹脂粒子の分離効率の高い分散液とすることができる。特に、分散液では、前記粘度および密度に調整することにより、助剤の密度と溶媒の密度との差が小さく、通常の方法では粒子の分離が困難な場合であっても、効率よく粒子を回収することができる。
一般的には、溶融混練分散方法で複合樹脂粒子を製造する場合に助剤(B)として水溶性高分子を用いると抽出液(E)の溶液粘度が高くなりすぎ、溶液粘度を下げようとすると希釈した抽出液(E)の希釈割合が非現実的な希釈割合となり、希釈した抽出液(E)中の複合樹脂粒子(A)の存在比率が極めて小さくなる。従って、希釈した抽出液(E)の濾過効率又は分離効率が極めて低く、工業的に成り立たない。そして、一般的な樹脂と水溶性高分子とを組合せた抽出液(E)では、上記条件(1)と条件(2)とが背反二律となり、条件(1)を満たすために希釈割合を大きくすると、抽出液(E)の比重が小さくなって条件(2)を満たすことができず、条件(2)を満たそうとすると、溶液粘度が高くなりすぎて条件(1)を満たせない。そのため、上記方法はこのような成分の組み合わせによる複合樹脂粒子の回収に適用するのか困難である。
しかし、複合樹脂粒子の密度が低く、抽出液(E)を水などの溶媒で必要に応じて適宜希釈することにより上記条件(1)および(2)を容易に満たすことができる。前記回収方法を用いれば、上層液のみを濾別することにより、水溶性高分子で構成された助剤(B)を用いても、希釈した分散液又は抽出液(E)から複合樹脂粒子(A)を回収することができる。特に、助剤(B)としてオリゴ糖及び/又は環状多糖類で構成された水溶性助剤(水溶性糖組成物)を用いると、分散液又は抽出液(E)の溶液粘度を低減でき、上記(1)および(2)の条件を容易に満たすことができ、希釈率を大きくする必要もなく、効率的に複合樹脂粒子を生産できる。
本発明の複合樹脂粒子は、複数の樹脂で構成されたコアシェル構造を有しており、しかも、コアが複数のコアで形成された構造を有しているため(さらにはそのコア及び/又はシェル表面が凹凸形状を有しているため)、球状(真球状)のコアシェル型樹脂粒子では十分でなかった特性(例えば、光散乱性)を有している。そのため、各種用途において、光拡散効果、つや消し効果、ソフトフォーカス効果(しわ隠し効果)などを実現できる。
このような本発明の複合樹脂粒子は、種々の用途、例えば、トナーやインクなどの画像形成材料、塗料やコート剤(例えば、粉体塗料)、充填剤(例えば、塗料などの充填剤、絶縁性フィラー)、ブロッキング防止剤又は滑剤(例えば、成形体のブロッキング防止剤)、スペーサー(液晶パネル用スペーサなど)、担体、導電性粒子などの二次加工粒子の母粒子、化粧品用材料、圧縮成形やレーザー造型などの粉体を用いた成形加工用の原料、フラットパネルディスプレイ用などの光散乱添加剤(光拡散剤)などとして好適に利用できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例及び比較例では、以下の熱可塑性樹脂及び助剤を用いた。
(熱可塑性樹脂)
樹脂1:シクロオレフィンコポリマー(ティコナ社製、環状ポリオレフィン系樹脂TOPAS(登録商標) 5013S−04)
樹脂2:シクロオレフィンコポリマー(A2)(ティコナ社製、環状ポリオレフィン系樹脂TOPAS(登録商標) 8007F−04) 樹脂3:ポリメタクリル酸メチル(旭化成ケミカルズ(株)製、デルペット720V)
樹脂4:ポリメタクリル酸メチル(旭化成ケミカルズ(株)製、デルペット 540F)
樹脂5:ポリメタクリル酸メチル(ダイセル・デグサ(株)製、PLEXIGLAS 6N)
樹脂6:ポリアミド12(ダイセル・デグサ(株)製、DAIAMID L1800)
樹脂7:エチレン−ビニルアルコール共重合体(日本合成化学(株)製、ソアノール A4412)
樹脂8:エチレン−ビニルアルコール共重合体(日本合成化学(株)製、ソアノール DC3212)
(助剤)
助剤1A:オリゴ糖(デンプン糖、東和化成工業(株)製、還元デンプン糖化物「PO−10」)
助剤1B:環状構造を有する水溶性多糖類(日本食品化工(株)製、商品名「クラスターデキストリン」)
助剤2:糖アルコール(ソルビトール、東和化成工業(株)製、ソルビット)。

また、実施例および比較例において、得られた複合樹脂粒子の特性は以下のようにして測定した。
(複合樹脂粒子の特性)
得られた複合樹脂粒子を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、FE−SEM、JSM−6700F)により撮影し、得られた電子顕微鏡写真を用い、写真上に少なくとも200個の粒子が含まれるように任意のサイズの長方形を描き、その長方形内に存在する全粒子の真球換算時の粒子径を採寸した。得られた少なくとも200個の粒子径より、数平均粒子径(Dn)、体積平均粒子径(Dw)粒子径分布Dw/Dn及び数平均粒子径(Dn)の標準偏差値(CV値%)を得た。
(実施例1〜10および比較例1〜5)
表1に示す組成割合および表1に示す混練条件で、熱可塑性樹脂と、助剤とを混練温度220℃で混練し、分散体を得た。なお、実施例および比較例では混練にブラベンダー(東洋精機(株)製、ラボプラストミル)を使用した。
得られた分散体を25℃の湯水中に浸漬し、複合樹脂粒子の懸濁溶液を得た。メンブレン膜(孔径0.45μm,ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、前記懸濁溶液から不溶分を濾別し複合樹脂粒子を回収した。回収した複合樹脂粒子を、粒子に対し重量比で20倍の蒸留水中に分散し、10分間マグネティックスターラーを用いて攪拌処理し懸濁液を得た。その後、再びメンブレン膜(孔径0.45μm,ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、前記懸濁溶液から不溶分を濾別し複合樹脂粒子を回収した。
実施例および比較例で得られた複合樹脂粒子の外観および特性を表2に示す。
また、実施例4で得られた複合樹脂粒子の透過型電子顕微鏡写真を図1に示し、比較例1で得られた複合樹脂粒子の透過型電子顕微鏡写真を図2に示す。
なお、透過型電子顕微鏡は、日本電子(株)製、TEM、JEM−1200EXIIを用いた。
図1は、実施例4で得られた複合樹脂粒子の透過型電子顕微鏡写真である。 図2は、比較例1で得られた複合樹脂粒子の透過型電子顕微鏡写真である。

Claims (9)

  1. 第1の熱可塑性樹脂で構成されたコアと、前記第1の熱可塑性樹脂とは異なる第2の熱可塑性樹脂で構成され、前記コアを被覆するシェルとを含むコアシェル構造を有する複合樹脂粒子であって、前記コアが複数のコアで構成されている複合樹脂粒子。
  2. 第1の熱可塑性樹脂が環状ポリオレフィン系高分子で構成され、第2の熱可塑性樹脂が極性基を有する熱可塑性樹脂で構成されている請求項1記載の複合樹脂粒子。
  3. 第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との割合が、前者/後者(重量比)=30/70〜95/5である請求項1記載の複合樹脂粒子。
  4. シェルの外形が凹凸状である請求項1記載の複合樹脂粒子。
  5. 請求項1記載の複合樹脂粒子が、第1の熱可塑性樹脂および第2の熱可塑性樹脂に対して非相溶の助剤中に分散した分散体。
  6. 助剤が、オリゴ糖および環状構造を有する水溶性多糖類から選択された少なくとも1種の水溶性多糖類で構成されている請求項5記載の分散体。
  7. 助剤が、さらに、水溶性多糖類を可塑化するための水溶性可塑化成分を含む請求項6記載の分散体。
  8. 少なくとも環状ポリオレフィン系高分子で構成された第1の熱可塑性樹脂と、極性基を有する熱可塑性樹脂で構成された第2の熱可塑性樹脂と、少なくともオリゴ糖を含む非相溶の助剤とを溶融混練して得られる請求項5記載の分散体。
  9. 少なくとも環状ポリオレフィン系高分子で構成された第1の熱可塑性樹脂と、極性基を有する熱可塑性樹脂で構成された第2の熱可塑性樹脂と、少なくとも環状構造を有する水溶性多糖類を含む非相溶の助剤とを溶融混練して得られる請求項5記載の分散体。
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