JP2008251452A - 熱可塑性樹脂からなる導電性微粒子 - Google Patents

熱可塑性樹脂からなる導電性微粒子 Download PDF

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Abstract

【課題】 金属皮膜の強度が高い、金属被覆樹脂微粒子とその効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】 金属被覆樹脂微粒子で、微粒子を構成する熱可塑性樹脂の内少なくとも金属メッキ層と接触する層を構成する熱可塑性樹脂がポリアミド結合またはポリエステル結合を含む高分子で微粒子を構成する。そして前記高分子粒子を得る方法として、熱可塑性樹脂(A)を水溶性助剤成分(B)からなる水溶性乳化媒体中に熱可塑性樹脂(A)が分散している分散体を水性溶媒で溶解又は溶出処理して得られる高分子微粒子が特に金属との接着性に優れる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、半導体の素子、電極基板等を、導電性微粒子を介して導電性を維持しつつ接合する方法における使用に適した導電性微粒子、及び該導電性微粒子を用いて接合された配線基板に関する。
電子機器を製造する際に集積回路等の半導体チップと電極を有する基板とを接合する方法として、ボールグリッドアレイを用いる実装方法、フリップチップボンディング法等の導電性微粒子を介して導電性を維持しつつ接合する方法、即ち導電接合方法が知られている。これらの方法では、導電性微粒子としてハンダ粒子が広く使用されているが、ハンダ粒子を用いると、加熱溶融させて接合する際に接合部のハンダが拡がり易く、隣接する電極をショートさせやすいという欠点がある。
すなわち鉛とすずとからなるハンダ粒子は、リード電極、配線基板等を、加熱により簡便に接合することができるものである。しかし、ハン樹脂微粒子を基材とし、錫−銀合金めっき、錫−ビスマス合金めっき、錫−銅合金めっき及び錫−亜鉛合金めっきから選ばれた少なくとも一種の錫系合金めっき皮膜を最外層に形成してなる導電性微粒子。ハンダ粒子はその性質上硬質であり、例えば、異種基材を接合する場合、基材間の熱膨張率の違い等によって生ずる接合部分にかかる応力をハンダ粒子では吸収できない。このため、ハンダ粒子と基材との界面に剥がれが生じて満足な接合を得ることが難しい等の問題があった。
近年、この問題を解決するために、非導電性材料からなる粒子が導電性材料で被覆されてなる導電性微粒子が提案されている。この微粒子はは、使用される非導電性材料からなる粒子が耐熱性を有し、加熱による接合精度の低下等が生じにくいので、近年では、電子部品の小型化、薄型化の進行に伴い、その使用が盛んになっている。このような、樹脂微粒子を芯材とし、その表面にめっき層を形成した導電性微粒子を用いて導電接合を行うことについては、例えば、特開平9−306231号公報(特許文献1)に記載されている。前記公報には、樹脂からなる基材微粒子の表面にニッケルめっき層を有する導電性微粒子、及び該導電性微粒子の表面に更にハンダめっき層を有する導電性微粒子が開示され、更に、これらの導電性微粒子を介して導電接合された基板が記載されている。
また、非導電性材料からなる粒子を導電性材料で被覆する方法は、例えば特開昭61−277105号公報(特許文献2)、特開平5−287582号公報(特許文献3)に記載されている。前記特許文献2では単量体が,テトラメチロールメタンテトラアクリレート,テトラメチロールメタンテトラメタクリレート,テトラメチロールメタントリアクリレート,テトラメチロールメタントリメタクリレート.テトラメチロールメタンジアクリレート,テトラメチロールメタンジメタクリレート,テトラメチロールメタンモノアクリレート.テトラメチロールメタンモノメタクリレート,トリメチロールメタントリアクリレート,I−リメチロールエタントリアクリレートおよびトリメチロールプロパントリアクリレートのうちの少なくとも一種から選ばれた単量体をパール重合させて得られる樹脂微球体と、その表面に形成された導電メッキ層からなる導電性微球体が記載されている。
そして、前記特許文献2の実施例には単量体としてテトラメチロールメタンテトラアクリレート,ジビニルベンゼン,エチルビニルベンゼンおよび重合開始剤としてペンゾイルパーオキサイドを反応させた樹脂微粒子や、テトラメチロールメタントリアクリレート,ジビニルベンゼン.エチルビニルベンゼンおよび重合開始剤としてペンゾイルバーオキサイドを反応させた樹脂微粒子、ジビニルベンゼン,エチルビニルベンゼンおよび重合開始剤としてペンゾイルバーオキサイドを反応させた樹脂微粒子が開示されている。
また前記特許文献3では、電気銅メッキ工程によって銅メッキ層を非導電性材料表面に直接形成する方法が記載されている。この方法は、従来の無電解銅メッキ工程を必要とせず、電気銅メッキのみによって銅メッキ層を形成することができるものであるので、処理工程の簡略化、処理時間の短縮化、作業環境の改善等により生産性の向上を図ることができるものであることが記載されている。
また、特開2001−220691号公報(特許文献4)には、導電性微粒子を介して半導体素子や基板の電極部を接合する方法における使用に適した導電性微粒子であって、高い信頼性を有する導電接合が可能であり、しかも環境に対する悪影響が少ない導電性微粒子が記載されている。すなわち、前記公報には樹脂微粒子を基材とし、錫−銀合金めっき、錫−ビスマス合金めっき、錫−銅合金めっき及び錫−亜鉛合金めっきから選ばれた少なくとも一種の錫系合金めっき皮膜を最外層に形成してなる導電性微粒子が提案されている。
前記公報には基材とする樹脂の種類については、特に限定はされず、導電接合用の導電性微粒子として用いる際に、接合特性を損なわないものであれば、特に限定無く使用できる。この様な樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の架橋型又は非架橋型合成樹脂;有機−無機ハイブリッド重合体等を挙げている。(段落番号[0009])
また、実施例では、ポリアクリルとジビニルベンゼンを主成分とする共重合体からなる樹脂微粒子が記載されている。
前記文献には更に、導電性を有する皮膜の形成方法としては無電解めっき用の触媒液として、貴金属化合物及び第一錫化合物を含有するコロイド溶液を用いて、被処理物に無電解めっき用触媒を付与することが記載されている。(段落番号[0043])そして、触媒を付与した樹脂微粒子に、銅化合物、還元性を有する糖類、錯化剤及びアルカリ金属水酸化物を含有する無電解銅めっき液を用いて導電性を有する皮膜を形成することが記載されている。(段落番号[0049])
しかし、導電性微粒子の中心部を構成する非導電性材料とその表面を被覆する金属との間では熱膨張係数、圧縮変形性等の差が大きいため、使用中の温度変化や圧縮変形等により、形成されたメッキ層が破壊、剥離しやすい等の問題があった。
また別の問題点として、メッキが均一な厚みに形成されないという問題があった。更に、メッキ中に被メッキ粒子が凝集するという問題があった。この凝集した導電粒子は凝集が解ける際に、金属層の一部が損傷を受けるという問題点があった。また更に、部分的あるは全く金属層が形成されない微粒子が存在するという問題点があった。
前記のメッキ層の破壊、剥離の問題については、ハンダ層の厚みを球状微粒子の半径に対して限定することで、メッキ層が剥離する問題を解決しようとする試みも行われている。例えば特開2004−156145号公報(特許文献5)には導電層で被覆された球状高分子粒子の表面が、該導電層で被覆された球状高分子粒子の半径の5〜30%の厚みを有する半田により被覆されてなり、前記球状高分子粒子がポリスチレン、ポリスチレン共重合体、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル共重合体、及びポリ塩化ビニルの内の少なくとも一種であるか、もしくは、ジビニルベンゼン系共重合体である導電性微粒子、又は、上記半田により被覆されてなる導電性微粒子であって、半田の厚みが球状高分子粒子の半径の5〜30%かつ12.5〜150μmであるとともに導電層が無電解メッキ法により形成されたメッキ導電層である導電性微粒子が記載されている。
前記文献には、球状高分子粒子がジビニルベンゼンを主成分とする架橋共重合物からなるものである導電性微粒子が実施例に記載されている。(実施例)
しかしながら、前記文献の方法であってもメッキ層の剥離を十分に防止することはできなかった。
そこで、このようなメッキ層の剥離を防止するために、樹脂とメッキ層の膨張係数に着目して、この膨張係数を一定の範囲内あるいは測定のパラメータで規定された範囲内にすることによりメッキ層の剥離を防止しようとする試みが行われた。すなわち、国際公開番号WO2002/013205号公報(特許文献6)には、基材微粒子の表面が1層以上の金属層に覆われてなる導電性微粒子であって、前記樹脂の線膨張率が3×10−5〜7×10−5(1/K)であることを特徴とする導電性微粒子が記載されている。(特許請求の範囲)
そして各金属層と前記基材微粒子との熱膨張率の比(基材微粒子の熱膨張率/金属層の熱膨張率)がそれぞれ0.1〜10であることを特徴とする導電性微粒子が記載されている。そして基材微粒子に用いる樹脂の線膨張率が上記の範囲内であるので、温度変化の影響を受けずに、基板間の距離を一定に維持することができること、また各金属層と基材微粒子との熱膨張率の比(基材微粒子の熱膨張率/金属層の熱膨張率)がそれぞれ0.1〜10であるものである。第3の本発明の導電性微粒子は、上記の条件を満たすものであるので、温度変化によっても、基材微粒子の膨張・収縮により、金属層が破壊されず、基材微粒子と金属層とが剥離することがなく、接続安定性を担保することができることが記載されている。
また、前記文献の実施例には、比較例1にウレタン樹脂からなる基材微粒子を用いた例が、比較例2にはエチレンー酢酸ビニル共重合体樹脂からなる基材微粒子を用いた例が、記載されてはいるが、具体的にどのようにしてそれらの基材微粒子を得たかについては何ら記載されていない。
樹脂微粒子の表面を改質することにより金属皮膜の欠陥がない金属被覆微粒子を得る試みも行われている。
例えば、特開2002−266075号公報には、表面に陽イオン交換基を有する樹脂を金属イオン含有液で処理することにより、金属イオンを陽イオン交換基に吸着させ、その後還元処理をすることを経た樹脂製品に無電解メッキを行うことにより金属皮膜を形成させる方法が記載されている。前記文献では実施例としてジビニルベンゼンとテトラメルチロールメタンテトラアクリレートからなる網目状重合体をスルホン化処理する様態が開示されている。
しかしながら、煩雑な操作を必要とし生産性が高くなく、また得られる樹脂の金属皮膜の強度も十分なものではなかった。
従来、樹脂粒子を製造する方法としては、機械的な粉砕法、例えば、樹脂や樹脂組成物を、クラッシャーなどで粗粉砕した後、ジェットミルなどを用いて微粉砕し、その後風力分級機などにより分級する方法が利用されている。しかし、このような方法では、製造機器が高価であることに加え、得られた粒子も不定形で、粒子サイズにばらつきがある。樹脂粒子のサイズを揃えるためには、分級する必要があり、分級により、利用できないサイズの樹脂粒子が大量に生成するため、経済的にも不利である。また、粒子同士のブロッキング、分散性、流動性などの観点から、球状の粒子が好ましいものの、機械的な粉砕法では、球状の微粒子を得ることは不可能である。
一方、半導体チップと電極を有する基板とを接合する方法として、ボールグリッドアレイを用いる実装方法、フリップチップボンディング法等の導電性微粒子を介して導電性を維持しつつ接合する方法に用いられる微粒子としてはほぼ球状の微粒子であることが要求されている。また、微粒子の粒径のバラツキが小さいことも求められている。すなわち、この様な真球状の微粒子を得るための最も簡便な方法として、縣濁重合が用いられている。縣濁重合ではモノマー及び生成重合体の何れも溶解しない溶媒中でモノマーを小滴状に縣濁させ、モノマーに可溶性の開始剤を用いる。
このため、重合物(ポリマー)は真球状の球状で得ることができ、粒径のバラツキが少なく、形状がほぼ真球状の高分子微粒子を簡便に得ることができる。このため、真球状微粒子を製造する方法としては、縣濁重合は優れた方法ではあるが、イオン重合には一般的には用いられない。またモノマー及び生成重合体の何れも溶解しない溶媒が存在することや、生成重合体の融点以下の温度で反応が進行する必要などがあり、この方法を適用できる高分子は限られている。
このため、縣濁重合ではアクリル系誘導体をモノマーをする高分子から微粒子を得ているが、アクリル系の誘導体からなる高分子の強度は不足する。このため、アクリル誘導体とジビニルベンゼンとの共重合により架橋高分子として微粒子に要求される硬さや強度を得るのが前記特許文献4などに記載された従来の技術である。
一方、溶液重合により微粒子を得る方法としては、ラクタムを溶媒に溶解し、溶液状態でアルカリ性触媒、助触媒の存在下にアニオン重合を行い縣濁状に重合すると微粒子状のポリアミドが得られることが知られている。そして、特公昭45−29832号(特許文献7)にはラウリルラクタムを流動パラフィンに加熱溶解して、アルカリ性触媒、助触媒、炭素数11以上の脂肪族物カルボン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩からなる分散剤を用いてアニオン重合させることによりナイロン12の微細な粉末を製造する技術も記載されている。
しかしながら、前記文献にはこの方法で得られた微粒子に金属をメッキすることについては何ら記載がない。
そして、アミド結合を有する高分子に金属をメッキすることで高分子層とメッキ層の層間接着力が向上することについては示唆も開示もない。
一方、生成した高分子から粉砕法以外の方法で熱可塑性樹脂の微粒子を得る技術も知られている。例えば特開昭60−13816号公報(特許文献8)及び特開昭61−9433号公報(特許文献9)には、熱可塑性樹脂と水溶性高分子(ポリエチレンオキサイドなど)とを溶融混練した後、水溶性高分子を水で溶解して熱可塑性樹脂粒子を製造することが記載されている。
また、特開平10−176065号公報(特許文献10)には、微粉末化する熱可塑性樹脂(a)に、他の1種類以上の熱可塑性樹脂(b)を溶融混練することにより、熱可塑性樹脂(a)が分散相を形成し、熱可塑性樹脂(b)が連続相を形成する組成物を生成させ、熱可塑性樹脂(a)は溶解せず、熱可塑性樹脂(b)が溶解する溶媒及び条件で前記組成物を洗浄することにより、熱可塑性樹脂(a)の球状微粒子を得る方法が開示されている。さらには、特許第3176925号公報(特許文献11)には、(A)不相溶性である第一の固体材料と第二の固体材料を溶融し;(B)この第一材料と第二材料の溶融混合物に剪断を適用して第一材料と第二材料の乳濁物を生成し、それによって第一材料の微細球状液粒が他方の材料の中に分散され:(C)この分散物を冷却して少なくとも第一材料を固体化し;(D)そしてこの冷却された分散物から第二材料を除去して第一材料の球状粒子を生じる;工程を含む、球状粒子の製造方法が開示され、第二材料が重合体材料(ポリエチレングリコールなど)やカラメルであること、第二材料が水溶性であり、溶剤が水であることが記載されている。これらの文献には、水溶性高分子として、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどが記載されている。
しかし、これらの方法では、水溶性高分子を樹脂粒子から溶出するため、親水性ポリマーの微粒子を得ることが難しくなる。また前記特許文献7と同様にこの方法で得られた微粒子に金属をメッキすることについては何ら記載がない。
そして、アミド結合を有する高分子に金属をメッキすることで高分子層とメッキ層の層間接着力が向上することについては示唆も開示もない。
特開2004−51942号公報(特許文献12)には、熱可塑性樹脂などの樹脂成分と少なくともオリゴ糖で構成された水溶性助剤成分とで分散体を形成し、熱可塑性樹脂粒子を製造すること、助剤成分はオリゴ糖と水溶性可塑化成分とで構成できることが開示されている。しかし、この文献に記載の方法でも、この方法で得られた微粒子に金属をメッキすることについては何ら記載がない。
そして、アミド結合を有する高分子に金属をメッキすることで高分子層とメッキ層の層間接着力が向上することについては示唆も開示もない。
特開2006−328245号公報(特許文献13)には、溶融可能な有機固体成分(A)と、少なくともオリゴ糖(B3)を含む水溶性助剤成分(B)とで構成され、前記有機固体成分(A)が粒子状に分散した分散体から、水溶性助剤成分(B)の残存量が全体に対して重量基準で10000ppm以上(例えば、15000〜50000ppm程度)になるように調整しつつ前記水溶性助剤成分(B)を溶出して有機固体粒子を得る。前記助剤成分(B)は、さらに、糖類及び糖アルコールから選択された少なくとも一種の水溶性可塑化成分(B2)を含んでいてもよい微粒子が開示されている。しかし、この文献に記載の方法でも、この方法で得られた微粒子に金属をメッキすることについては何ら記載がない。
そして、水溶性助剤成分(B)の残存量が高分子層とメッキ層の層間接着力に影響を与えることは示唆も開示もない。
また別の問題点であるメッキが均一な厚みに形成されないという問題があった。更に、メッキ中に被メッキ粒子が凝集するという問題があった。この凝集した導電粒子は凝集が解ける際に、金属層の一部が損傷を受けるという問題点があった。また更に、部分的あるは全く金属層が形成されない微粒子が存在するという問題点についても様々な取り組みが行われている。
例えば、特開2003−293191号公報(特許文献14)には、メッキ槽内に回転可能なバレルを有するバレルメッキ装置を用いて被メッキ粒子の表面にメッキ層を形成する製造方法で、バレル内に前記被メッキ粒子よりも大きなダミー粒子を入れて振動させながらメッキ層を形成する技術が開示されている。(要約)しかしながら、この技術は電解メッキに関連するものであり、数十分から数時間かけてメッキ層を形成する場合には有効であるものの、無電解メッキのように数分でメッキ層を形成する場合には効果が得られない。
また部分的あるいは全く金属層が形成されない微粒子が存在するという問題点については、特開2003−240745号公報(特許文献15)で導電性微粒子の電気抵抗値を測定することにより、部分的あるいは全く金属層が形成されない微粒子を除去するという技術が開示されている。(要約)
しかしながら、導電性微粒子の金属層の形成と基材となる高分子微粒子の素材に着目した検討は行われていなかった。
特開平9−306231号公報 特開昭61−277105号公報 特開平5−287582号公報 特開2001−220691号公報 特開2004−156145号公報 国際公開番号WO2002/013205号公報 特公昭45−29832号( 特開昭60−13816号公報( 特開昭61−9433号公報 特開平10−176065号公報 特許第3176925号公報 特開2004−51942号公報 特開2006−328245号公報 特開2003−293191号公報 特開2003−240745号公報
従って、本発明の目的は、金属皮膜の強度が高い、金属被覆樹脂微粒子とその効率的な製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、基材粒子に用いる高分子を架橋高分子、網目状高分子ではなく、溶融可能な熱可塑性樹脂(A)を鎖状高分子にすることにより応力を緩和できることを見出し本発明を完成した。
更に、本発明者らは、前記熱可塑性樹脂(A)の内少なくとも金属メッキ層と接触する層を構成する熱可塑性樹脂(A2)がポリアミド結合またはポリエステル結合を含む高分子(A3)である場合金属メッキ層と高分子層との密着力が発現することを見出し本発明を完成した。
そして、前記ポリアミド結合またはポリエステル結合を含む高分子(A3)はポリアミド(A4)から構成されることにより、金属メッキ層と高分子層との密着力がより向上することを見出し本発明を完成した。
更に、本発明者らは、前記高分子粒子を得る方法として、熱可塑性樹脂(A)を水溶性助剤成分(B)からなる水溶性乳化媒体中に熱可塑性樹脂(A)が分散している分散体を水性溶媒で溶解又は溶出処理して得られる高分子微粒子を用いることにより、金属メッキ層と高分子層との密着力が向上することを見出し本発明を完成した。
更に、本発明者らは、熱可塑性樹脂(A)を水溶性乳化媒体中に熱可塑性樹脂が分散している分散体を水性溶媒で溶解又は溶出処理して得られる高分子微粒子において、水溶性助剤成分(B)の少なくとも一つの構成成分として糖(B1)を用いることにより、より優れた金属メッキ層と高分子層との密着力が発現することを見出し本発明を完成した。
更に、本発明者らは、前記水溶性助剤成分(B)の少なくとも一つに糖(B1)を用い、かつ前記少なくとも金属メッキ層と接触する層を構成する熱可塑性樹脂(A2)はポリアミド(A4)用いることにより、更に金属メッキ層と高分子層との密着力が向上することを見出し本発明を完成した。
また、本発明者らは、溶融可能な熱可塑性樹脂(A)と、少なくとも糖(B1)を含む水溶性助剤成分(B)とで構成され、前記熱可塑性樹脂(A)が粒子状に分散した分散体から、水溶性助剤成分(B)を溶出して得られた有機固体粒子であって、全体に対して、10000ppm(重量基準)以上の糖(B1)が残存しているポリマー微粒子を用いることで、最も優れた金属メッキ層と高分子層との密着力が得られることを見出し本発明を完成した。
更に本発明においては、金属皮膜の強度が高い、金属被覆樹脂微粒子にハンダを被覆させてなる導電性微粒子がボールグリッドアレイの実装方法、フリップチップボンディング法等の導電性微粒子を介して半導体素子や基板の電極部を接合する方法における導電性微粒子として用いる場合に、高い信頼性を有する導電接合が可能であり、しかも、安価であることを見出しここに本発明を完成するに至った。
すなわち本発明においては、従来のジビニルベンゼンを主成分とする架橋共重合物からなる球状微粒子を用い金属メッキした該導電性微粒子をボールグリッドアレイの実装方法、フリップチップボンディング法等の導電性微粒子を介して半導体素子や基板の電極部を接合する方法における導電性微粒子として用いる場合に温度変化によって、基材微粒子の膨張・収縮により、金属層が破壊され、基材微粒子と金属層とが剥離し、接続安定性が十分ではない原因を検討した結果、微粒子の基材の硬さが原因であることを見出した。
すなわち、前記の通り真球状の微粒子を得るための最も簡便な方法として、縣濁重合が用いられている。真球状微粒子を製造する方法としては、縣濁重合は優れた方法ではあるが、生成物(ポリマー)の強度が十分ではないという問題点をもっている。このため、ジビニルベンゼンとの共重合により架橋高分子として強度を確保している。架橋高分子とすることにより、強度についてはこれらの用途に用いられる微粒子に要求される性能を確保できてはいる。しかしながら、架橋高分子は硬いが脆いという性質がある。
前記特許文献6では、樹脂の線膨張係数を小さくすることにより、熱変化時の膨張を小さくして、微粒子の基材が膨張することを抑制し、膨張・収縮により、金属層が破壊され、基材微粒子と金属層とが剥離することを防止する試みである。しかしながら、一般に金属の膨張係数は高分子の膨張係数に比較して1桁から2桁小さいものである。例えばニッケルは線膨張係数が1.25×10−3(1/K)であり、前記特許文献6で規定されている樹脂の線膨張率が3×10−5〜7×10−5(1/K)と比較して、2桁小さい。
このため、前記特許文献6の技術では多少の改善効果は見込めるものの、尚不十分である。事実上、上記の通り金属と高分子の線膨張係数は100倍近く異なるので、高分子の線膨張率を選択した程度では膨張・収縮による金属層の破壊を防止することは困難である。
本発明者らは、鎖状高分子を用いた場合に上記の膨張による金属層の破壊が生じない原因については、以下のように推定した。
すなわち、導電微粒子が膨張した場合に容易に金属層を破壊する現象の要因のひとつとして、微粒子(基材)を構成する高分子の硬さが起因している可能性がある。高分子が硬い場合には、金属層の塑性変更する強度以上に膨張力が生じた場合に、高分子層と金属層との界面に割れが生じる。一方、高分子自体が柔軟な場合には、膨張はするが高分子層と金属層との層間(界面)の接着は維持される。
この現象については、温度の上昇による膨張時よりもむしろ温度低下に伴う冷却時に作用する応力もまた重要であると思われる。すなわち、基材微粒子(すなわち樹脂微粒子)が温度上昇に伴い膨張する。この過程で金属層も引き伸ばされる。次に、冷却に伴い基材微粒子は収縮する。その時点では、金属層の膨張係数は低いので、引き伸ばされたもとの形状を保とうとするが、基材粒子は収縮しようとする。この段階で高分子層と金属層の層界面に応力が作用し、高分子層と金属層との層間が剥離する。
次に、再度、加熱された膨張した場合に、高分子と金属との層間の接着が維持されていない場合には、金属は金属の膨張に伴う少ない変形を維持しようとする。一方、高分子はその膨張率に見合う大きな変形をしようとして、最終的に金属層を破壊する。
このため、前記の膨張での金属層の破壊を防止するためには、基材微粒子と金属層との接着強度もまた大きな要因となる。接着強度が低い場合には、高分子層と金属層が剥離し易くなる。前記熱可塑性樹脂(A)の内少なくとも金属メッキ層と接触する層を構成する熱可塑性樹脂(A2)がポリアミド結合またはポリエステル結合を含む高分子である場合に高分子層と金属層の密着力が向上することを見出した。ポリアミド結合またはポリエステル結合を含む高分子が金属層との密着力が向上する理由については、前記高分子の分子末端のアミド基およびまたは水酸基が金属と相互作用をするためと考えられる。
更に、前記ポリアミド結合またはポリエステル結合を含む高分子(A3)がポリアミド(A4)から構成されると更に効果的である。なぜならば、ポリアミドは水酸基末端のみならず、アミド末端を有する。アミド末端はまた金属元素と相互作用を発現するため、より一層高分子層と金属層の密着力が向上する。
更に、このような熱可塑性樹脂(A)を微粒子に加工する方法としては、粉砕法よりも熱可塑性樹脂(A)を水溶性助剤成分(B)からなる水溶性乳化媒体中に熱可塑性樹脂(A)が分散している分散体を水性溶媒で溶解又は溶出処理して得られる方法(以下記載を簡便にするためにこの方法を「強制乳化法」と表記する場合がある。)が優れていることを見出した。
すなわち、前記の通り粉砕法では、粒子の形状が均一ではなく、このような粒子を導電性微粒子とした場合は、球状ではない形状のため所定の空間を充填できず、通電不良が発生する。一方、強制乳化法の場合は、得られる粒子が球状であるので、導電性微粒子にした場合に所望の通電特性を得やすい。
更に、強制乳化法であれば基材となる高分子は熱可塑性があれば原理的に加工可能であり、粒子の基材となる高分子の選択の幅が広くなる。
強制乳化法で、水溶性助剤成分(B)の少なくとも一つの構成成分として糖(B1)を用いることは更に良好な効果を得る。すなわち、強制乳化法では前記熱可塑性樹脂(A)と水溶性助剤成分(B)を溶融混合して、水溶性乳化媒体中に熱可塑性樹脂(A)が粒子状に分散している分散体を得る。このときに、前記熱可塑性樹脂(A)からなる粒状物(ドメイン、すなわち分散体を水性溶媒で溶解又は溶出処理した場合に球状微粒子となる部分)の最外層では熱可塑性樹脂(A)と水溶性助剤成分(B)の相互作用がある。前記粒状物(すなわち分散体のドメイン)の連続相との界面においてはポリマーブレンドの平衡界面を形成する。
水溶性助剤成分(B)が例えば水溶性ポリマーのように大きな分子量をもつ物である場合は、ポリマーブレンドの界面における高分子鎖の重なり合いのエントロピー損が生じるために、平衡界面はほとんど形成されない。一方、水溶性助剤成分(B)が糖(B1)のような低分子量成分を含んでいる場合は、この低分子量成分はエントロピー損が小さくなるので、平衡界面を形成することができる。
この結果、分散体の前記粒状物(ドメイン)の最外層では糖(B1)を含んだ平衡界面が存在する。この、平衡界面の糖は粒子のメッキ時に還元剤として作用する。この結果、平衡界面での金属の還元が進み、平衡界面(すなわち粒子の最外層)での金属の還元を促進する効果がある。この結果、糖を含んだ強制乳化法を用いた場合には、平衡界面部分に金属の量が多くなる。
上記の通り、糖(B1)は低分子であるので、平衡界面はある程度厚みがある、そして導電粒子の金属層と高分子層の密着力が高くなる。無電解金属メッキでは還元剤を含む部分でより多くの金属が析出する。そのため、平衡界面で金属が還元され、これは金属と高分子の平衡界面となる。そして、この平衡界面は金属層と高分子層の層間強度を高くする。
そして、このような糖(B1)を水溶性助剤成分(B)に含む強制乳化法で作成された高分子微粒子で、高分子微粒子を構成する熱可塑性樹脂の内少なくとも金属メッキ層と接触する層を構成する熱可塑性樹脂(A2)がポリアミド(A4)である場合は上記の糖(B1)を水溶性助剤成分(B)に含む強制乳化法との組み合わせで最も優れた効果を発揮する。
ポリアミド(A4)ではラウリルラクタムを少なくともモノマー成分のひとつとして含むポリアミドが好ましい。ラウリルラクタムは長鎖であるのでラウリルラクタムをモノマー成分のひとつとして含むポリアミドは融点が低くなり前記の糖(B1)を水溶性助剤成分(B)に含む強制乳化法で微粒子に加工する場合に熱可塑性樹脂の粘度と水溶性助剤成分の粘度を近づけることができ、生成した高分子微粒子の粒径の分布を揃え易い。共重合ポリアミドにおいては、アミド基濃度(アミド基数/100原子)と共重合ポリアミドの融点は正の相関関係を有するが、ラウリルラクタムをモノマー成分のひとつとして含むポリアミドはこの正の相関関係の中で結晶構造が変わるためかアミド基濃度に対して低い融点を示すことが知られている。
尚、本発明においては、他の様態も含まれる。特に高分子微粒子は2種以上の熱可塑性樹脂からなる複合高分子微粒子であってもよい。
例えば微粒子を構成する熱可塑性樹脂(A)は少なくともその一部は疎水性ポリマーであってもよい。この場合、熱可塑性樹脂(A)として相溶性がある二種類の樹脂を用いたポリマーアロイであってもよい。また使用する熱可塑性樹脂(A)として金属メッキ層と接触する層を構成する熱可塑性樹脂(A2)と他の熱可塑性樹脂(A)との混合物であってもよい。
高分子微粒子は2種以上の熱可塑性樹脂からなる複合高分子微粒子の場合、微粒子は芯部と殻部とで構成されたコア−シェル構造を有していてもよい。
コア−シェル構造を有する高分子微粒子の場合は、コア層を構成する熱可塑性樹脂(A5)には、主鎖が飽和炭素鎖である炭化水素系ポリマーが含まれる。また、前記熱可塑性樹脂(A5)は環状オレフィンモノマー重合体であってもよい。そしてシェル層の熱可塑性樹脂は少なくとも金属メッキ層と接触する層を構成する熱可塑性樹脂(A2)であってもよい。
特に、コア層を構成する熱可塑性樹脂(A5)を環状オレフィンモノマー重合体である場合には環状オレフィンモノマー重合体はガラス転移点(温度)で加工されるが、ガラス転移点が高温であるため実装されてからの使用環境での温度変化はガラス転移点以下である。このため線膨張率が低く(0.5×10-4〜0.9×10-4)なり、粒子の大きさの変化が少なくなるので好適である。特に、内少なくとも金属メッキ層と接触する層を構成する熱可塑性樹脂(A2)がポリアミドであり、かつコア層を構成する熱可塑性樹脂(A5)を環状オレフィンモノマー重合体の組み合わせであるコアーシェル構造の高分子微粒子を用いた場合には、より一層本発明の効果を発揮する。
なお、本明細書において、「高分子」「鎖状高分子」「架橋高分子」「疎水性ポリマー」「水溶性高分子」「プラスチック」「熱可塑性樹脂」という用語は「新版高分子辞典」(朝倉書店発行 高分子学会編:19988年11月25日初版)の定義による。但し、高分子微粒子、あるいは高分子微粒子の構成物質として「高分子」という用語を用いている場合は上記の「新版高分子辞典」の「プラスチック」という用語と同義であり、天然および合成樹脂を主原料に、これに充填剤、可塑剤、安定剤、顔料などの添加剤を加えたものを意味する。また「樹脂」という用語はJIS工業用大辞典 (財団法人 日本規格協会発行・編集:1996年10月20日発行 第3刷)の広義の意味、すなわち「プラスチック用の基盤材料であるいくつかの重合体を明示するためにも使用される。」と同一の意味である。
また本明細書において、「糖」(B1)は「化学大辞典」(共立出版株式会社発行 化学大辞典編集委員会編:1963年縮刷版第18刷)の1項の広義の定義による。すなわち、単糖類と大多数の小糖類であり、糖アルコールも含めるものである。
本発明の導電性微粒子は、ハンダ濡れ性が良好であって、弾力性に優れた導電性粒子であり、フリップチップボンディング法、ボールグリッドアレイを用いる接合方法等の導電性微粒子を介して接合する方法における導電性粒子として用いる場合に、良好な導電性を有し、接合強度の劣化の少ない、高い信頼性を有する接合が可能となる。しかも、本発明の導電性は高分子微粒子に用いる熱可塑性樹脂を任意に選択することができ、しかも比較的安価であり、樹脂微粒子の粒径やめっき皮膜の膜厚を調節することによって、用途に応じた任意の大きさのものを容易に得ることができるという利点もある。
本発明の導電性微粒子を介して半導体素子、電極を有する基板等の接合部分を接合することにより、良好な導電性を維持し、信頼性に優れた導電接合が可能となり、例えば、高い信頼性を有する高密度実装された配線基板を得ることができる。
本発明の導電性粒子では熱可塑性樹脂を微粒子の基材として用いる。
[熱可塑性樹脂(A)]
微粒子を構成する熱可塑性樹脂(A)としては、特に限定されず、種々の熱可塑性樹脂が使用できる。代表的な熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド、ビニルポリマー[ポリスチレン(スチレン系高分子)、ポリオレフィン(オレフィン系高分子)、アクリル樹脂(アクリル系高分子)、ハロゲン含有樹脂、ビニルエステル樹脂又はその誘導体など)]などが例示できる。これらの樹脂は単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
スチレン系高分子としては、スチレン系単量体の単独又は共重合体、スチレン系単量体と共重合性単量体との共重合体(スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、スチレン−無水マレイン酸共重合体など;スチレン−ブタジエンブロック共重合体などのブロック共重合体など;ゴム成分の存在下、少なくともスチレン系単量体をグラフト重合したグラフト重合体、例えば、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS、又はゴムグラフトポリスチレン系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、このABS樹脂のブタジエンゴムBに代えて、エチレンプロピレンゴムE、アクリルゴムA、塩素化ポリエチレンC、酢酸ビニル重合体などのゴム成分を用いたグラフト共重合体(AES樹脂,AAS樹脂,ACS樹脂などのAXS樹脂)、アクリロニトリルに代えて(メタ)アクリル系単量体(メタクリル酸メチルなど)を用いたグラフト共重合体(例えば、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム−スチレン共重合体(MBS樹脂)など)などが挙げられる。
オレフィン系高分子としては、α−C2−6オレフィンの単独又は共重合体、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(メチルペンテン−1)などのオレフィンの単独又は共重合体、オレフィンと共重合性単量体との共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)が挙げられる。
アクリル系高分子としては、(メタ)アクリル系単量体((メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリロニトリルなど)の単独又は共重合体、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)などが挙げられる。
ハロゲン含有高分子としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン系樹脂、フッ素樹脂などが例示できる。ビニルエステル系樹脂又はその水不溶性誘導体としては、例えば、カルボン酸ビニルエステルの単独又は共重合体(ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、これらのケン化物(ケン化度50%以下のポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系樹脂)、ケン化物(ビニルアルコール系樹脂)からの誘導体(例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール系樹脂など)などが例示できる。エチレン−ビニルアルコール共重合体において、エチレン含量は10〜40重量%程度であってもよい。
ポリ(チオ)エーテル系樹脂としては、例えば、ポリオキシアルキレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンエーテルケトン樹脂、ポリスルフィド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂をなどが含まれる。
ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂などのビスフェノール類をベースとする芳香族ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートなどの脂肪族ポリカーボネートなどが含まれる。
ポリスルホン系樹脂としては、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリールスルホン樹脂などが例示できる。ポリイミド系樹脂としては、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリベンズイミダゾール系樹脂などが例示できる。
セルロース誘導体としては、セルロースエステル類(例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート(酢酸セルロース)、セルロースアセテートプロピオネートなど)、セルロースカーバメート類(セルロースフェニルカーバメートなど)などが挙げられる。
本発明でいうポリエステル結合を含む高分子(A3)とは下記のポリエステル系樹脂かまたはポリアミド系樹脂である。またポリエステルとポリアミドのブロック共重合体もこのポリエステル結合を含む高分子(A3)に含められる。

[ポリエステル系樹脂]
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合により得られるホモポリエステル又はコポリエステル;オキシカルボン酸を重縮合させて得られるホモポリエステル又はコポリエステル;ラクトンを開環重合させて得られるホモポリエステル又はコポリエステルが挙げられる。これらのポリエステル系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
ジカルボン酸成分としては、例えば、芳香族ジカルボン酸[例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸;メチルテレフタル酸、メチルイソフタル酸などのアルキル置換フタル酸;ナフタレンジカルボン酸(2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸など);4,4′−ジフェニルジカルボン酸、3,4′−ジフェニルジカルボン酸などのジフェニルジカルボン酸;4,4′−ジフェノキシエタンジカルボン酸などのジフェノキシエタンジカルボン酸;ジフェニルエーテル−4,4′−ジカルボン酸などのジフェニルエーテルジカルボン酸;ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸などのジフェニルアルカンジカルボン酸;ジフェニルケトンジカルボン酸などの炭素数8〜20程度の芳香族ジカルボン酸など]、脂肪族ジカルボン酸(例えば、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸などの炭素数2〜40程度の脂肪族ジカルボン酸など)、脂環族ジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸などの炭素数8〜12程度の脂環族ジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
なお、ジカルボン酸成分には、エステル形成可能な誘導体、例えば、ジメチルエステルなどの低級アルキルエステル、酸無水物、酸クロライドなどの酸ハライドなども含まれる。
ジオール成分としては、例えば、脂肪族C2-12ジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、(ポリ)オキシC2-4アルキレングリコール等)、脂環族C6-12ジオール(例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族C6-20ジオール(例えば、レゾルシノール、ヒドロキノン、ナフタレンジオール、ビスフェノールA,F,ADなどのビスフェノール類、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体など)などが挙げられる。これらのジオール成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
オキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、乳酸、オキシプロピオン酸、オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸などの脂肪族C2-6オキシカルボン酸;ヒドロキシ安息香酸、オキシナフトエ酸などの芳香族オキシカルボン酸などが挙げられる。これらのオキシカルボン酸は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
ラクトンとしては、例えば、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン等のC3-12ラクトンが挙げられる。これらのラクトンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのラクトンのうち、C4-10ラクトン、特にカプロラクトン(例えば、ε−カプロラクトンなど)が好ましい。
ポリエステル系樹脂には、芳香族ポリエステル系樹脂や脂肪族ポリエステル系樹脂などが含まれる。
芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば、前記芳香族ジカルボン酸(好ましくは、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの炭素数8〜20程度の芳香族ジカルボン酸など)と、前記脂肪族ジオール(好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオールなどの脂肪族C2-12ジオールなど)又は前記脂環族ジオール(好ましくは、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族C6-20ジオールなど)との重縮合により得られたホモポリエステル又はコポリエステルなどが挙げられ、好ましくは、アルキレンテレフタレートやアルキレンナフタレートなどのアルキレンアリレート単位を主成分(例えば、50重量%以上)とするホモポリエステル又はコポリエステルなどが例示できる。共重合成分には、繰り返し数が2〜4程度のオキシアルキレン単位を有するポリオキシC2-4アルキレングリコール[ジエチレングリコールなどのポリ(オキシ−C2-4アルキレン)単位を含むグリコールなど]や炭素数6〜12程度の脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸など)などが含まれていてもよい。
具体的には、芳香族ポリエステル系樹脂としては、ポリアルキレンテレフタレート[例えば、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)などのポリシクロアルカンジC1-4アルキレンテレフタレート;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリC2-4アルキレンテレフタレート]、このポリアルキレンテレフタレートに対応するポリC2-4アルキレンナフタレート(例えば、ポリエチレンナフタレートなど)、エチレンテレフタレート単位を主成分として含有するポリエチレンテレフタレートコポリエステル、ブチレンテレフタレート単位を主成分として含有するポリブチレンテレフタレートコポリエステルなどが例示できる。芳香族ポリエステル系樹脂は液晶性ポリエステルであってもよい。
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、前記脂肪族ジカルボン酸成分(例えば、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸などの炭素数2〜6程度の脂肪族ジカルボン酸、好ましくはシュウ酸、コハク酸などの炭素数2〜4程度の脂肪族ジカルボン酸など)と、前記脂肪族ジオール成分(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族C2-6ジオール、好ましくはエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族C2-4ジオール)との重縮合により得られるホモポリエステル又はコポリエステルや、前記脂肪族オキシカルボン酸(例えば、グリコール酸、乳酸、オキシプロピオン酸、オキシ酪酸などの脂肪族C2-6オキシカルボン酸、好ましくはグリコール酸や乳酸などの脂肪族C2-4オキシカルボン酸)のホモポリエステル又はコポリエステル、開始剤(2官能や3官能の開始剤、例えば、アルコールなどの活性水素化合物)を用いて前記ラクトン(好ましくは、カプロラクトンなどのC4-10ラクトン)を開環重合して得られるホモポリラクトン又はコポリラクトンが挙げられる。共重合成分には、繰り返し数が2〜4程度のオキシアルキレン単位を有するポリオキシC2-4アルキレングリコール[ジエチレングリコールなどのポリ(オキシ−C2-4アルキレン)単位を含むグリコールなど]や、炭素数6〜12程度の脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸など)などが含まれていてもよい。
具体的には、脂肪族ポリエステル系樹脂としては、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合から得られるポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンオギザレート、ポリブチレンオギザレート、ポリネオペンチレンオギザレートなどのポリC2-6アルキレンオギザレート;ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリネオペンチレンサクシネートなどのポリC2-6アルキレンサクシネート;ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリネオペンチレンアジペートなどのポリC2-6アルキレンアジペートなど)、ポリオキシカルボン酸系樹脂(例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、乳酸−グリコール酸共重合体などのヒドロキシC2-10アルカンカルボン酸の単独又は共重合体など)、ポリラクトン系樹脂[例えば、ポリカプロラクトン(ダイセル化学工業(株)製,PCLH7、PCLH4、PCLH1など)などのポリC3-12ラクトン系樹脂など]などが挙げられる。コポリエステルの具体例としては、例えば、2種類のジカルボン酸成分を用いたコポリエステル(例えば、ポリエチレンサクシネート−アジペート共重合樹脂、ポリブチレンサクシネート−アジペート共重合樹脂などのポリC2-4アルキレンサクシネート−アジペート共重合樹脂など)、ジカルボン酸成分とジオール成分とラクトンとから得られるコポリエステル(例えば、ポリカプロラクトン−ポリブチレンサクシネート共重合樹脂など)などが例示できる。
[ポリアミド系樹脂]
ポリアミド系樹脂としては、例えば、脂肪族ポリアミド系樹脂、脂環族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂などが挙げられ、通常、脂肪族ポリアミド系樹脂が使用される。これらのポリアミド系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
脂肪族ポリアミド系樹脂としては、脂肪族ジアミン成分(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC4-10アルキレンジアミン)と脂肪族ジカルボン酸成分(アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC4-20アルキレンジカルボン酸など)との縮合物(例えば、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1212など)、ラクタム(ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのC4-20ラクタムなど)又はアミノカルボン酸(ω−アミノウンデカン酸などの炭素数C4-20アミノカルボン酸など)の単独又は共重合体(例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12など)、これらのポリアミド成分が共重合したコポリアミド(例えば、ポリアミド6/11,ポリアミド6/12,ポリアミド66/11,ポリアミド66/12など)などが挙げられる。
ラウリルラクタムを少なくともモノマー成分のひとつとして含むポリアミドとしては前記のポリアミドの内ポリアミド1012、ポリアミド1212、ポリアミド1012、ポリアミド612などが挙げられる。
さらに、ポリアミド系樹脂は更に他のモノマーとの共重合体であってもよい。例えば前記脂肪族ジアミン成分(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC4-10アルキレンジアミン)と前記脂肪族ジカルボン酸成分(アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC4-20アルキレンジカルボン酸など)、前記脂肪族ジオール成分(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールなどのC2-12アルキレングリコールなど)との縮合物であるポリエステルアミドが挙げられる
[環状オレフィンモノマー重合体]
本発明においては、熱可塑性樹脂(A)の中でコア層を構成する熱可塑性樹脂(A5)として、環状オレフィンモノマー重合体およびその共重合体を用いるのが好ましい。環状オレフィンモノマー重合体およびその共重合体は、環内にエチレン性二重結合を有する重合性の環状オレフィンをモノマー単位として構成されるポリマーの総称であり、環状オレフィンの単独又はその共重合体[環状オレフィン単独の開環重合体、2種以上の環状オレフィンの開環重合体(単環式オレフィンとノルボルネン類などの多環式オレフィンとの共重合体など)など]、環状オレフィンと共重合性単量体との共重合体の他環状オレフィンモノマー重合体およびその共重合体を主体としたポリマーブレンド又はポリマーアロイ(上記重合体と各種ポリマーとのブレンド物など)が例示される。
このような重合体又は共重合体は、例えば、特開昭60−168708号公報、特開昭61−120816号公報、特開昭62−252406号号公報、特開平2−167318号号公報、特開平4−35653号公報などに開示されている。本発明においては環状オレフィンモノマー重合体およびその共重合体を含めて環状オレフィンモノマー重合体と称する。環状オレフィンモノマー重合体は第3級炭素原子を有しているので、後述の処理の点でも好ましい。
代表的な環状オレフィンとしては、例えば、ノルボルネン類、シクロペンタジエン類又はジシクロペンタジエン類、ノルボルネン類とシクロペンタジエンとの縮合により得られる1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン類、ヘキサシクロ[6.6.1.1.1.0.0]ヘプタデセン−4類、エチレンとシクロペンタジエンとから合成される6−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどが例示できる。環状オレフィンは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。環状オレフィンはノルボルネン類であってもよい。
環状オレフィンモノマー共重合体において共重合される単量体としては、共重合可能な限り特に限定されないが、鎖状オレフィン[アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどのC2−20アルケン)、アルカジエン(例えば、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役C5−20アルカジエン)など]などが例示できる。
これらの共重合性単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。共重合性単量体は、α−オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどのC2−10α−オレフィン類、特にC2−6α−オレフィン類)であってもよい。
さらに、本発明の目的を損なわない範囲内で、共重合性単量体として、重合性ニトリル化合物(例えば、(メタ)アクリロニトリルなど)、(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸など)、不飽和ジカルボン酸又はその誘導体(無水マレイン酸など)などを用いてもよい。これらの共重合性単量体も単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
好ましい環状オレフィンモノマー重合体は、α−オレフィンと環状オレフィンとの共重合体(例えば、エチレン−環状オレフィン系共重合体などのα−C2−4オレフィンと環状オレフィンとの共重合体)である。このような共重合体は、オレフィン系重合体(エチレン系重合体など)と環状オレフィンホモポリマーとの性質を兼ね備えており、α−オレフィンの共重合比率を調整することにより、所望のガラス転移温度を有し、かつ高分子量の重合体を得ることができる。耐熱性の点からは、ノルボルネン類とシクロペンタジエン(又はジシクロペンタジエン類)とを縮合した環状ポリオレフィンモノマー重合体、ノルボルネン類とシクロペンタジエン(又はジシクロペンタジエン類)と、共重合性単量体(例えば、α−オレフィン類)とを重合した環状ポリオレフィン系共重合体が好ましい。なお、後者の環状ポリオレフィン系共重合体において共重合性単量体(例えば、α−オレフィン類)の使用量は特に制限されず少量(例えば、1〜25モル%、好ましくは2〜20モル%程度)であってもよい。
熱可塑性樹脂(A)の熱変形温度(例えば、JIS K 7206で規定されるビカット軟化点)は、60〜300℃の範囲から選択でき、例えば、80〜260℃、好ましくは100〜240℃(例えば110〜240℃)、さらに好ましくは120〜230℃(例えば130〜220℃)程度である。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる熱可塑性樹脂(A)の数平均分子量は、例えば、ポリスチレン換算で5,000〜500,000、好ましくは10,000〜300,000、さらに好ましくは20,000〜150,000程度である。
熱可塑性樹脂(A)は、好ましくは水不溶性樹脂である。水不溶性樹脂は、親水性樹脂であってもよいが、通常、非親水性樹脂又は疎水性樹脂である場合が多い。さらに、熱可塑性樹脂(A)は、混練性などの観点から、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エーテル基、オキシアルキレン基、エステル基、アミノ基、置換アミノ基、イミノ基、アミド基、およびフェニル基から選択された少なくとも1種(特に、アミノ基、ヒドロキシル基やカルボキシル基などの極性基)を有していてもよい。
尚、高分子微粒子としては芯部と殻部とで構成されたコア−シェル構造微粒子は2種以上の熱可塑性樹脂からなる複合高分子微粒子で形成される。例えば、微粒子は、異なる樹脂である熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(A5)とで構成されていてもよい。この場合、芯部は熱可塑性樹脂(A5)、殻部は熱可塑性樹脂(A2)で構成されていてもよい。なお、後述の方法、すなわち水溶性乳化媒体中に熱可塑性樹脂が分散している分散体を水性溶媒で溶解又は溶出処理する方法によりこのようなコア−シェル構造の微粒子を得る場合には、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(A5)の樹脂同士の親和性が、熱可塑性樹脂[(A)、(A5)]と水溶性乳化媒体の親和性よりも高いことが好ましい。
[熱可塑性樹脂微粒子の調製]
熱可塑性樹脂からなる微粒子の調製法としては特に制限はなく、公知の方法を採用できる。熱可塑性樹脂からなる微粒子の好ましい調製法として、水溶性乳化媒体(以下、「水溶性乳化媒体(B)」と称する場合がある)中に熱可塑性樹脂(A)が分散している分散体を水性溶媒で溶解又は溶出処理して微粒子を得る方法が挙げられる。前記分散体は、主に、水溶性乳化媒体(B)で構成されたマトリックスと、このマトリックス中に分散した分散相とで構成された海島構造を有しており、分散相は、熱可塑性樹脂(A)で構成され、樹脂粒子を形成している。
[水溶性乳化媒体(B)]
水溶性乳化媒体(B)としては、熱可塑性樹脂(A)に対して非相溶である種々の水溶性成分を使用できる。特に、熱可塑性樹脂(A)として熱可塑性樹脂(A1)及び(A2)を用いる場合には、水溶性乳化媒体(B)として、熱可塑性樹脂(A1)及び(A2)と溶融混合又は混練可能な水溶性成分が用いられる。この場合、溶融混合又は混練可能な水溶性成分は、熱可塑性樹脂(A1)及び(A2)との溶融混合又は混練により、水溶性乳化媒体(B)で構成されたマトリックスに、熱可塑性樹脂(A1)及び(A2)で構成された分散相が分散した分散体を形成する。
水溶性乳化媒体(B)としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、水溶性アクリル系樹脂、水溶性スチレン系樹脂、ポリビニルピロリドン、セルロースエーテル系樹脂などの水溶性樹脂であってもよいが、溶媒(水)に対する溶解性、樹脂粒子のコントロール性及び製造効率、広範な熱可塑性樹脂(A)に対する適用性などの観点から、少なくともオリゴ糖(B3)を含む水溶性糖組成物が好ましい。
水溶性糖組成物は、少なくとも糖(B1)を含んでいることが好ましい。溶解性及び糖の熱溶融特性を調整するため、水溶性糖組成物は、さらに前記糖を可塑化するための水溶性可塑化成分(B2)を含んでいてもよい。糖(B1)と水溶性可塑化成分(B2)とを組み合わせると、充填剤複合樹脂組成物との混練等において、水溶性糖組成物(B)の溶融粘度を調整できる。なお、水溶性糖組成物については、特開2004−51942号公報を参照できる。
[糖(B1)]
前記の通り、本発明においては単糖類と大多数の小糖類であり、糖アルコールも含めるものである。これらの中でもオリゴ糖(B3)を用いるのが好ましい。
オリゴ糖(B3)は、ホモオリゴ糖であってもよくヘテロオリゴ糖であってもよい。オリゴ糖(B3)としては、例えば、二糖類〜十糖類が挙げられ、通常、二糖類〜六糖類のオリゴ糖が使用される。なお、オリゴ糖(B3)は無水物でもよい。また、オリゴ糖(B3)において、単糖類と糖アルコールとが結合していてもよい。さらに、オリゴ糖(B3)は複数の糖成分で構成されたオリゴ糖組成物であってもよく、多糖類の分解により生成するオリゴ糖組成物であってもよい。このようなオリゴ糖組成物であっても単にオリゴ糖(B3)という場合がある。
二糖類としては、例えば、トレハロース、マルトースなどのホモオリゴ糖;ラクトース、スクロース、パラチノースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。三糖類としては、セロトリオースなどのホモオリゴ糖;マンニノトリオースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。
四糖類としては、例えば、マルトテトラオースなどのホモオリゴ糖;スタキオース、セロテトラオース、スコロドース、リキノース、パノースの還元末端に糖又は糖アルコールが結合したテトラオースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。これらの四糖類のうち、パノースの還元末端に単糖類又は糖アルコールが結合したテトラオースは、例えば、特開平10−215892号公報に開示されており、パノースの還元末端に、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、アラビノースなどの単糖類や、ソルビトール、キシリトール、エリスリトールなどの糖アルコールが結合したテトラオースが例示できる。
五糖類としては、例えば、マルトペンタオース、イソマルトペンタオースなどのホモオリゴ糖;パノースの還元末端に二糖類が結合したペンタオースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。パノースの還元末端に二糖類が結合したペンタオースは、例えば、特開平10−215892号公報に開示されており、パノースの還元末端に、スクロース、ラクトース、セロビオース、トレハロースなどの二糖類が結合したペンタオースが例示できる。六糖類としては、例えば、マルトヘキサオース、イソマルトヘキサオースなどのホモオリゴ糖などが挙げられる。
これらのオリゴ糖(又はオリゴ糖組成物)のうち、少なくとも四糖類で構成されたオリゴ糖は、溶融粘度特性、樹脂成分との溶融混合又は混練性の観点から好ましい。
このようなオリゴ糖又はオリゴ糖組成物としては、例えば、デンプン糖(デンプン糖化物)、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー、フルクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖などが挙げられ、これらの成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。例えば、デンプン糖は、デンプンに酸又はグルコアミラーゼなどを作用させて得られるオリゴ糖組成物であり、複数個のグルコースが結合したオリゴ糖の混合物であってもよい。デンプン糖としては、例えば、東和化成工業(株)製の還元デンプン糖化物(商品名:PO−10、四糖類の含有量90重量%以上)などが挙げられる。ガラクトオリゴ糖は、ラクトースにβ−ガラクトシダーゼなどを作用させて得られるオリゴ糖組成物であり、ガラクトシルラクトースとガラクトース−(グルコース)の混合物(mは1〜4の整数)であってもよい。カップリングシュガーは、デンプンとスクロースにシクロデキストリン合成酵素(CGTase)を作用させて得られるオリゴ糖組成物であり、(グルコース)−スクロースの混合物(mは1〜4の整数)であってもよい。フルクトオリゴ糖(フラクトオリゴ糖)は、砂糖にフルクトフラノシダーゼを作用させて得られるオリゴ糖組成物であり、スクロース−(フルクトース)の混合物(mは1〜4の整数)であってもよい。好ましいオリゴ糖(B3)には、デンプン糖のほか、環状多糖類(クラスターデキストリン等)などが含まれる。
これらのオリゴ糖(B3)において、溶融混合又は混練での急激な粘度低下を防止するため、オリゴ糖組成物中の三糖類及び四糖類(特に四糖類)の含有量は、例えば、60重量%以上(例えば、60〜100重量%程度)、好ましくは70重量%以上(例えば、70〜100重量%程度)、さらに好ましくは80重量%以上(例えば、80〜100重量%程度)、特に90重量%以上(例えば、90〜100重量%程度)であってもよい。
オリゴ糖(B3)は還元型(マルトース型)のオリゴ糖は、耐熱性に優れるため好ましい。また還元性に優れるため、本発明においては特に好ましい。還元型のオリゴ糖としては、遊離のアルデヒド基又はケトン基を有し、還元性を示す糖、例えば、コージービオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、パラチノース、メリビオース、ルチノース、プリメベロース、ツラノースなどの二糖類;マルトトリオース、イソマルトトリオース、パノース、セロトリオース、マンニノトリオース、ソラトリオースなどの三糖類;マルトテトラオース、イソマルトテトラオース、セロテトラオース、リキノースなどの四糖類;マルトペンタオース、イソマルトペンタオースなどの五糖類;マルトヘキサオース、イソマルトヘキサオースなどの六糖類などが挙げられる。
混合又は混練により熱可塑性樹脂(A)成分を分散させるためには、オリゴ糖の粘度は高いのが望ましい。具体的には、B型粘度計を用いて温度25℃で測定したとき、オリゴ糖の50重量%水溶液の粘度は、例えば、1〜500Pa・s、好ましくは2〜250Pa・s(例えば、3〜100Pa・s)、さらに好ましくは4〜50Pa・s(例えば、6〜50Pa・s)程度である。
オリゴ糖の融点又は軟化点は、熱可塑性樹脂(A)成分の熱変形温度(例えば、JIS K 7206で規定されるビカット軟化点)より高いのが好ましい。なお、融点又は軟化点を示さず、熱分解するオリゴ糖[例えば、還元デンプン糖化物などのデンプン糖など]では、分解温度をオリゴ糖の「融点又は軟化点」としてもよい。明瞭な融点や軟化点を示さない熱分解性オリゴ糖であっても、水溶性可塑化成分(A2)で可塑化できるため、有効に使用できる。オリゴ糖の融点又は軟化点は、熱可塑性樹脂(A)の種類などに応じて、70〜300℃の範囲で選択でき、例えば、90〜290℃、好ましくは100〜280℃(例えば、110〜270℃)、さらに好ましくは120〜260℃(例えば、130〜260℃)程度であってもよい。なお、一般にオリゴ糖の無水物は、高い融点又は軟化点を示す。オリゴ糖の融点又は軟化点と、熱可塑性樹脂(A)の熱変形温度との温度差は、例えば、1〜80℃、好ましくは10〜70℃、さらに好ましくは15〜60℃程度である。
(B2)水溶性可塑化成分
水溶性可塑化成分(B2)としては、糖(B1)としてオリゴ糖(B3)を用いる場合にこれが、可塑化して水飴状態となる現象を発現できればよく、例えば、糖類、糖アルコールなどが使用できる。これらの水溶性可塑化成分(B2)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。尚、本発明においては水溶性可塑化成分として、糖類、糖アルコールなどを用いる場合には、水溶性可塑化成分(B2)も糖(B1)の構成成分となる。すなわち、糖を含む強制乳化法においてはオリゴ糖(B3)と水溶性可塑化成分(B2)の合計量が糖(B1)の量として取り扱われる。
(a)糖類
糖類としては、通常、単糖類及び/又は二糖類が使用される。単糖類としては、例えば、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、オクトース、ノノース、デコースなどが挙げられる。アシル基(特にアセチル基などのC2-4アシル基など)を有する単糖類(アルドースのアセチル体、例えば、アルデヒドグルコースペンタアセチル化合物などのアセチル体など)、カルボキシル基が導入された糖類(糖酸またはウロン酸など)、チオ糖、アミノ糖、デオキシ糖などであってもよい。
単糖類の具体例としては、例えば、テトロース(エリトロース、トレオロース等)、ペントース(アラビノース、リボース、リキソース、デオキシリボース、キシロース等)、ヘキソース(アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、フコース、ラムノース、タロース、ガラクチュロン酸、グルクロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン等)などが例示できる。
(b)糖アルコール
糖アルコールとしては、イノシットなどの環式糖アルコールであってもよいが、通常、アルジトール(グリシトール)などの鎖状糖アルコールが使用される。これらの糖アルコールは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの糖アルコールのうち、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、ズルシトール及びマンニトールから選択された少なくとも一種が好ましい。糖アルコールは、エリスリトール、ペンタエリスリトール、キシリトールから選択された少なくとも1つの糖アルコールを含む場合が多い。
水溶性乳化媒体(B)又は水溶性糖組成物において、オリゴ糖と可塑化成分との重量割合は、例えば、前者/後者=99/1〜50/50、好ましくは95/5〜60/40、さらに好ましくは90/10〜65/35(例えば、85/15〜70/30)程度である。
水溶性乳化媒体の融点又は軟化点は、樹脂の熱変形温度と同等又は低くてもよく高くてもよい。例えば、水溶性乳化媒体の融点又は軟化点と、樹脂成分の熱変形温度との温度差は、0〜100℃程度の範囲から選択でき、例えば、3〜80℃(例えば5〜60℃)、好ましくは7〜50℃、さらに好ましくは10〜40℃(例えば、15〜35℃)程度であってもよい。
水溶性乳化媒体のメルトフローレートは、例えば、樹脂成分の熱変形温度(例えば、前記ビカット軟化点)より30℃高い温度でJIS K 7210に従って測定したとき、1〜40、好ましくは5〜30、さらに好ましくは10〜20程度であってもよい。
[糖が残存している高分子微粒子]
以下に本発明において、溶融可能な熱可塑性樹脂(A)と、少なくとも糖(B1)を含む水溶性助剤成分(B)とで構成され、前記熱可塑性樹脂(A)が粒子状に分散した分散体から、水溶性助剤成分(B)を溶出して得られた高分子微粒子であって、全体に対して、10000ppm(重量基準)以上の糖(B1)が残存している高分子微粒子について詳細に記す。

本発明の糖が残存している高分子微粒子において、糖(B1)の含有量(又は残存量)は、高分子微粒子全体に対して、重量基準で、10000ppm以上(例えば、11000〜100000ppm)、好ましくは13000ppm以上(例えば、15000〜50000ppm程度)、さらに好ましくは18000ppm以上(例えば、20000〜40000ppm程度)、特に21000ppm以上(例えば、22000〜35000ppm程度)である。なお、糖(B1)の残存量が少ないと十分な還元性能を高分子微粒子に付与できず、また、残存量が大きすぎると粒子の分離の際にケーキングなどが生じる虞がある。
なお、前記分散体において、助剤成分として、オリゴ糖(B1)と可塑化成分(B2)とを組み合わせる場合、高分子微粒子に残存するオリゴ糖(B1)と可塑化成分(B2)との割合は、前者/後者(重量比)=99/1〜50/50から選択でき、好ましくは95/5〜60/40、さらに好ましくは90/10〜70/30程度であってもよい。
このような本発明の高分子微粒子は、前記分散体(すなわち、熱可塑性樹脂(A)が水溶性助剤成分(B)に粒子状に分散した分散体)から、前記水溶性助剤成分(B)を溶出して得られる。溶出は、通常、前記分散体と溶媒とを接触させることにより行うことができ、例えば、溶媒に分散体を浸漬することにより行うことができる。
溶媒としては、水性媒体、例えば、水、水溶性溶媒(例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、エーテル類(セロソルブ、ブチルセロソルブなど)などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。環境への負荷が少なく、工業コストを低減できるため、溶媒は水(水単独)が好ましい。
なお、糖(B1)は、溶媒(特に水)に対する溶解性に優れており、単に溶出するだけでは、前記範囲(例えば、粒子全体に対して11000〜100000ppm程度)で残存させることは困難である。そのため、本発明では、前記分散体からの前記糖(B1)の溶出量を前記所定の濃度(10000ppm以上)になるように調整(又はコントロール)しつつ溶出することにより、前記所定の濃度の糖(B1)を含有する高分子微粒子を調製する。
溶出量の調整は、分散体(前記予備成形体)の形状などにもよるが、溶媒の量、溶出温度、溶出時間などの溶出条件を適宜調整することにより行うことができる。
溶出に用いる溶媒の量は、前記分散体1重量部に対して、例えば、1〜50重量部、好ましくは3〜30重量部、さらに好ましくは5〜20重量部、さらに好ましくは8〜15重量部程度である。また、助剤成分の溶出温度は、有機固体成分及び助剤成分に応じて、適宜設定することができ、有機固体成分の融点又は軟化点未満の温度であって、過度に溶出させない温度、例えば、3〜80℃、好ましくは5〜60℃、さらに好ましくは10〜40℃(例えば、15〜35℃)、特に20〜30℃程度で行ってもよい。なお、助剤成分の溶出は、例えば、常圧下(例えば、1atm又は10万Pa程度)、減圧下、又は加圧下で行うことができ、通常、常圧下で行ってもよい。
溶出時間は、例えば、1分〜5時間、好ましくは5分〜4時間、さらに好ましくは10分〜3時間、特に20分〜2時間(例えば、30〜90分)程度であってもよい。なお、助剤成分(B)の水への溶解性は、重量半減時間Tを指標として表すことができ、例えば、水中での重量半減時間Tは、25mm×25mm×3mmの板状成形体を25℃の蒸留水500mL中に600秒間浸漬したとき、下記式 T=W1/(W1−W2)×600×0.5(式中、W1は浸漬前の板状成形体の重量、W2は板状成形体を600秒間浸漬した後、乾燥により水分を除去した後の重量を示す)で表される。具体的には、助剤成分(B)の重量半減時間は、1500秒以下(例えば、10〜1500秒)、好ましくは1200秒以下(例えば、20〜1200秒)、さらに好ましくは1000秒以下(例えば、30〜1000秒)であってもよい。好ましい態様において、水溶性助剤(B)の重量半減時間は、800秒以下(例えば、10〜800秒)、好ましくは780秒以下(例えば、10〜750秒)、特に720秒以下(例えば、10〜720秒)である。このように、水溶性助剤(B)は、水に対する溶解速度が大きく、溶解性または溶出性が高い。本発明では、このような重量半減時間を指標として、水溶性助剤成分の含有量を10000ppm以上となるように溶出時間を調整してもよい。
さらに、溶出時間は、溶媒に浸漬した分散体の一部をサンプリングして助剤成分の含有量を測定し、得られた測定値に基づいて調整することもできる。
なお、溶出は、攪拌下で行ってもよい。また、溶出回数は、一回であってもよく、複数回(例えば、2〜5回程度)行ってもよい。複数回行う場合、濾過、遠心分離などの方法に高分子微粒子を回収した後、さらに同様の溶出操作を繰り返すことができる。溶出回数は、助剤成分を残存させるという観点から、通常、1回である場合が多い。
溶出後の高分子微粒子は、濾過、遠心分離などの回収方法を用いて回収できる。得られた高分子微粒子中には、所定の濃度で助剤成分が残留しているが、助剤成分が天然物由来の化合物であるため、高分子微粒子に与える悪影響は少ない。
なお、溶媒で抽出された助剤成分は、慣用の分離手段(例えば、蒸留、濃縮、再結晶、乾燥(フリーズドライ)など)を用いて回収できる。
なお、必要であれば、分散相(例えば、非水溶性樹脂、あるいは非水溶性樹脂及び水溶性樹脂で構成された粒子状分散相)は、種々の添加剤(溶融混練温度で融解してもよい添加剤など)、例えば、可塑剤又は軟化剤、滑剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候(光)安定剤など)、着色剤[水不溶性(又は難溶性)染料(油溶性染料(ソルベント染料)、分散染料、バット染料、硫化染料、アゾイック染料(ナフトール染料)など]、分散剤、有機又は無機充填剤(有機又は無機着色剤も含む)、難燃剤、帯電防止剤、電荷制御剤(ニグロシン染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、アミン系化合物などの正荷電制御剤;サリチル酸金属錯体、アゾ染料金属錯体、銅フタロシアニン染料、ニトロイミダゾール誘導体、尿素誘導体などの負電荷制御剤など)、流動化剤、ワックス類[ポリエチレンワックス、エチレン共重合体ワックス、ポリプロピレンワックスなどのオレフィン系ワックス;パラフィンワックス;高級脂肪酸又はその誘導体(塩、多価アルコールエステル、アミド(高級脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどのアルキレンビス高級脂肪酸アミド、ステアロアミドエチルステアレートなどのN−(C2−6アルキル−C16−34アルカンカルボン酸エステル)C16−34アルカンカルボン酸アミドなどのエステルアミド類など)など);エステル系ワックスなど]、架橋剤、結晶核剤、抗菌剤、防腐剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤は、例えば、非水溶性樹脂又は非水溶性樹脂と水溶性樹脂とで構成された樹脂組成物に、予め含有させていてもよく、非水溶性樹脂、水溶性樹脂及び水溶性乳化媒体の溶融混合又は混連過程で含有させてもよい。なお、前記添加剤を含有する非水溶性樹脂又はその樹脂組成物を用いると、添加剤がマトリックス(乳化媒体)中に分散するのを抑制でき、添加剤を含有する複合樹脂粒子を得ることができる。
前記添加剤は、最終製品である複合樹脂粒子の用途などに応じて選択でき、例えば、化粧品(ファンデーション、白粉、頬紅など)などの用途では、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系吸収剤、ケイ皮酸系吸収剤、p−アミノ安息香酸系吸収剤、サリチル酸系吸収剤、ジベンゾイルメタン系吸収剤、ウロカニン酸又はそのエステル、β−イソプロピルフラノン、β−カロチン、酸化チタン、酸化亜鉛など)、紫外線散乱剤などを使用してもよい。トナーなどの画像記録材料用途では、例えば、電荷制御剤、流動化剤、ワックス類などを用いてもよい。また、塗料やコーティング剤などの用途では、例えば、架橋剤、耐候(光)安定剤、紫外線吸収剤、流動化剤などを使用してもよい。
前記分散体は、熱可塑性樹脂(A)[熱可塑性樹脂(A1)と(A2)との組み合わせであってもよい]と、該熱可塑性樹脂(A)に対して相溶性を有さない水溶性乳化媒体(B)とを溶融混合又は混練することにより調製できる。
前記溶融混合又は混練は、慣用の混練機(例えば、単軸もしくは二軸スクリュー押出機、ニーダー、カレンダーロール、バンバリーミキサー、など)を用いて行なうことができる。また、混練に先だって、各成分は、予め凍結粉砕機などで粉体状に予備加工したり、ヘンシェルミキサー、タンブルミキサー、ボールミル、リボンミキサーなどで予備混合又は混練してもよい。混練温度は、例えば、90〜300℃程度の範囲から選択でき、通常、110〜260℃、好ましくは150〜240℃(例えば、170〜230℃)、特に180〜220℃程度であってもよい。また、熱分解を避けるため、混練温度を230℃以下にしてもよい。混練時間は、例えば、10秒〜1時間程度の範囲から選択できる。
分散体は、通常、冷却され、分散相が固定化される。そして、分散体の水溶性乳化媒体(B)を、常圧、減圧又は加圧下で、水性溶媒(水;水と水溶性有機溶媒との混合液)で溶解又は溶出し、通常、乾燥することにより、熱可塑性樹脂からなる微粒子(高分子微粒子)を生成できる。
高分子微粒子の平均粒子径(体積平均粒子径)は、特に制限されず、用途に応じて、0.1μm〜500μm(例えば、0.1〜200μm)程度の範囲から選択でき、例えば、0.2〜100μm、好ましくは0.5〜50μm、さらに好ましくは0.7〜30μm、特に1〜20μm程度であってもよい。
[金属層の形成]
本発明における導電性微粒子では、高分子微粒子の表面が一層以上の金属層に覆われてなるで導電性の微粒子である。高分子微粒子の上に形成されるは金属層は、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、鉛、錫、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム、珪素、錫−鉛合金、錫−銅合金、及び、錫−銀合金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなる導電性微粒子である。
上記金属層を構成する金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、鉛、錫、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム、珪素、錫−鉛合金、錫−銅合金、錫−銀合金等が挙げられる。なかでも、ニッケル、銅、金、錫−鉛合金、錫−銅合金、錫−銀合金が好ましい。上記金属層は、一層からなるものであっても、多層からなるものであってもよく、これらの金属は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの金属が2種以上併用される場合は、複数の層状構造を形成するように用いられてもよく、合金として用いられてもよい。
本発明の導電性微粒子の表面に金属層を形成する方法としては特に限定されず、例えば、無電解メッキによる方法、金属微粉を単独又はバインダーに混ぜ合わせて得られるペーストを基材微粒子にコーティングする方法;真空蒸着、イオンプレーティング、イオンスパッタリング等の物理的蒸着方法等が挙げられる。これらの方法でも無電解メッキによる方法が好ましく用いることができる。以下に無電解メッキによる高分子微粒子表面への金属メッキについて詳細に述べる。
[無電解メッキ法による金属層の形成]
国際公開WO98/45505号公報に記載されている方法によれば、貴金属化合物及び第一錫化合物を含有するコロイド溶液を用いて樹脂微粒子に無電解めっき用触媒を付与した後、該樹脂微粒子を、銅化合物、還元性を有する糖類、錯化剤及びアルカリ金属水酸化物を含有する無電解銅めっき液に接触させることによって、導電性皮膜を形成することができる。
この方法について具体的に説明すると、まず、必要に応じて、国際公開公報WO98/33959号公報に記載されている方法と同様にして、被処理物である樹脂微粒子表面の清浄化とエッチング処理を行う。
次いで、無電解めっき用の触媒液として、貴金属化合物及び第一錫化合物を含有するコロイド溶液を用いて、被処理物に無電解めっき用触媒を付与する。触媒液として用いるコロイド溶液としては、無電解めっき用の触媒液として公知のものを使用できる。この様な公知の触媒液は、通常、無電解めっきに対する触媒能を有する化合物として知られている白金化合物、金化合物、パラジウム化合物、銀化合物等の貴金属化合物を含有するものである。この様な触媒液に配合される白金化合物の具体例としては塩化白金塩等、金化合物の具体例としては塩化金塩、亜硫酸金塩等、パラジウム化合物の具体例としては塩化パラジウム、硫酸パラジウム等、銀化合物の具体例としては硝酸銀、硫酸銀等を挙げることができる。貴金属化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
本発明では、特に、貴金属化合物としてパラジウム化合物を含有する触媒液を用いることが好ましい。貴金属化合物の配合量については、特に限定的ではないが、通常、金属量として100〜500mg/l程度の範囲が好適である。
上記コロイド溶液に配合する第一錫化合物としては、塩化第一錫、硫酸第一錫等が好ましく、これらを一種単独又は適宜混合して配合することができる。特に、塩化第一錫が好ましい。第一錫化合物の配合量は、通常、錫金属として10〜50g/l程度で、貴金属量の50〜120重量倍程度とすればよい。
上記コロイド溶液は、一般に、pH1程度以下の強酸性のコロイド溶液であり、常法に従って製造することができる。例えば、貴金属化合物と第一錫化合物を、それぞれ別個に酸溶液に溶解し、これらの溶液を混合してコロイド溶液とし、使用時に適度な濃度に調整して用いることができる。この際に用いる酸溶液としては、塩酸溶液、硫酸溶液、塩酸と硫酸の混酸、塩化ナトリウムを含有する塩酸、塩化ナトリウムを含有する硫酸、塩化ナトリウムを含有する塩酸と硫酸の混酸等が挙げられる。
上記コロイド溶液には、更に、必要に応じて、低級脂肪族モノカルボン酸銅、臭化銅等を配合してもよい。特に、銅化合物については、溶解性が良好であること等から、2価の銅化合物を用いることが好ましい。また、低級脂肪族モノカルボン酸銅のうちでは、ギ酸銅、酢酸銅等が好ましく、これらを用いることによって、安定なコロイド溶液が形成されて、均一なコロイド膜として被処理物に付着させ易くなる。銅化合物の配合量は、銅金属として0.2〜3g/l程度が好ましく、0.5〜2g/l程度がより好ましい。
特に、本発明では、触媒液として用いるコロイド溶液としては、パラジウム化合物をパラジウム金属量として150〜300ppm程度含有し、第一錫化合物を錫金属量として10〜22g/l程度含有する塩酸水溶液を用いることが好ましい。
コロイド溶液による処理方法としては、通常、10〜50℃程度、好ましくは、25〜45℃程度のコロイド溶液中に、被処理物を2〜10分程度、好ましくは3〜5分程度浸漬すればよい。この処理により、被処理物の表面に均一な触媒膜を付着させることができる。
次いで、触媒を付与した樹脂微粒子に、銅化合物、還元性を有する糖類、錯化剤及びアルカリ金属水酸化物を含有する無電解銅めっき液を用いて導電性を有する皮膜を形成する。
上記無電解銅めっき液では、銅化合物としては、硫酸銅、塩化銅、炭酸銅、酸化銅、水酸化銅等を使用できる。銅化合物の含有量は、銅金属量として0.1〜5g/l程度、好ましくは0.8〜1.2g/l程度とすればよい。銅金属量が0.1g/lを下回ると、無電解銅めっき皮膜の形成が不十分となり、次工程での電気めっきの析出が悪くなるので好ましくない。一方、銅金属量が5g/lを上回ると、銅濃度を上げた効果がなく、銅濃度に比例して必要な錯化剤量が増加し、経済的に不利であり、排水処理性も悪くなる。
上記無電解銅めっき液に配合する還元性のある糖類の具体例としては、ブドウ糖、グルコース、ソルビット、マンニット、グルコノラクトン等を挙げることができる。糖類の含有量は3〜50g/l程度とし、好ましくは10〜20g/l程度とする。糖類の含有量が3g/l未満では無電解銅めっき皮膜の形成が不十分であり、次工程での電気めっきの析出性が悪くなるので好ましくない。一方、50g/lを上回ると、無電解銅めっき液の安定性が低下すると共に、電気めっき皮膜の外観不良を発生し易くなるので好ましくない。
該無電解銅めっき液に配合する錯化剤としては、ヒダントイン類、有機カルボン酸類等を用いることができる。ヒダントイン類の具体例としては、ヒダントイン、1−メチルヒダントイン、1,3−ジメチルヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、アラントイン等を挙げることができ、有機カルボン酸類の具体例としては、クエン酸、酒石酸、コハク酸及びこれらの塩類等を挙げることができる。錯化剤は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
錯化剤の配合量は、2〜50g/l程度とし、好ましくは10〜40g/l程度とする。配合量が2g/l未満では錯化力が不十分となって銅の溶解力が不足するので好ましくない。一方、50g/lを上回ると、銅の溶解性は向上するが、経済的に不利であり、排水処理性も悪くなるので好ましくない。
特に、上記無電解めっき液では、還元力の弱い糖類を還元剤として用いることにより、めっき液の安定性を低下させることなく、比較的弱い錯化力を有するヒダントイン類を錯化剤として用いることができる。この様な比較的弱い錯化力を有するヒダントイン類を錯化剤として配合しためっき液は、析出性が良好となり、又排水処理も容易となる。更に、このヒダントイン類は、前工程の触媒液から持ち込まれる錫塩に対しても弱い錯化力を示し、錫塩の持ち込みによる弊害を防止することができる。このため、錯化剤としては、ヒダントイン類を単独で用いるか、或いは、ヒダントイン類と有機カルボン酸類とを混合して用いる場合には、有機カルボン酸類の配合量をヒダントイン類の配合量の50重量%以下、好ましくは20重量%以下とすることが特に好適である。
上記無電解銅めっき液には、更に、アルカリ金属水酸化物を配合することが必要である。アルカリ金属水酸化物としては、入手の容易性、コストなどの点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を用いることが適当である。アルカリ金属水酸化物は、一種単独又は適宜混合して用いることができる。アルカリ金属水酸化物の配合量は、10〜80g/l程度とし、好ましくは30〜50g/l程度とする。アルカリ金属水酸化物の配合量が10g/l未満では、無電解銅めっき皮膜の形成が不十分であり、次工程での電気めっきにおいて、低電流密度域のめっきの析出性が悪くなるので好ましくない。一方、アルカリ金属水酸化物の配合量が80g/lを上回ると、濃度の上昇に従って銅の溶解性が低下し、めっき液の安定性が悪くなるので好ましくない。
尚、該無電解銅めっき液では、上記した各成分の配合割合の範囲内において、めっき浴のpHが10.0〜14.0の範囲、好ましくは11.5〜13.5の範囲となるように、使用成分の組み合わせ、具体的な配合割合などを適宜調整することが好ましい。
上記無電解めっき液には、更に、必要に応じて、安定剤として黄血塩、ロダン塩等を配合できるが、特に、該無電解めっき液は、安定性が非常に良好であるので、安定剤を使用しないか、又は安定剤を使用する場合にも、非常に弱い安定剤であるタンニン酸、ロダニン等を数mg/l程度の少量配合するだけで、良好な安定性を維持できる。
無電解めっき液による処理工程では、無電解銅めっき液の液温を、20〜70℃程度、好ましくは35〜50℃程度とし、このめっき液中に被処理物を30秒〜20分程度、好ましくは3〜5分程度浸漬すればよい。めっき液の液温が20℃未満では無電解めっき皮膜の形成が不十分であり、一方70℃を上回るとめっき液の安定性が低下するので好ましくない。また、めっき液中への浸漬時間が30秒未満では、無電解銅めっき皮膜の形成が不十分であり、一方、20分を上回っても、最適範囲以上の効果が認められず、生産性が低下するので好ましくない。
この工程により、被処理物である樹脂微粒子の表面に非常に薄い膜厚の導電性皮膜が形成され、この皮膜上に直接電気めっきを行うことが可能となる。
[ハンダ層の形成]
上記の通り、本発明の導電性微粒子は更に、ハンダ層を形成することができる。ハンダ層を設けることにより金属層が厚くなり、すなわち導電層が厚くなる。ハンダ層の形成は電気メッキ法がもっとも好ましい。すなわち本発明の粒子の基材は熱可塑性樹脂であり、非導電性物質であるが、表層に金属層を形成しているので、導電性が発現する。したがって、金属層を形成した後、電気メッキは容易に行うことができる。本発明における最も好ましい態様の一例は、国際公開WO98/33959号公報又は国際公開WO98/45505号公報に記載されている方法に従って導電性皮膜を形成した後、電気めっき法によって銅めっき皮膜を形成し、更に、電気めっき法によって、錫−銅合金めっきを形成する方法である。本発明の導電性微粒子は、ボールグリッドアレイを用いる実装方法、フリップチップボンディング法等の導電性微粒子を介して半導体の素子、電極を有する基板等を導電性を維持しつつ接合する方法、即ち、導電接合方法において、導電性微粒子として好適に使用し得るものである。
本発明の導電性微粒子は、半導体素子、電極を有する基板等の接合部分を接合することに利用できる。
以下実施例を用いて本発明を詳細に説明する。

なお、実施例及び比較例で得られた粒子の平均粒子径、残存する水溶性助剤成分量、吸湿性、および保湿量は以下のようにして測定した。
(粒子の平均粒子径)
得られた粒子を走査型電子顕微鏡により観察し、全体形状の写真を得た。得られた写真を用い、写真上に少なくとも200個の粒子が含まれるように任意のサイズの長方形を描き、その長方形内に存在する全粒子の真球換算時の粒子径を採寸した。得られた少なくとも200個の粒子径より、数平均粒子径を得た。
(粒子に残存する水溶性助剤成分量)
得られた粒子を重量比で100倍の純水中に取り、60℃で一時間超音波処理した後、メンブレン膜(孔経0.2μm,セルロースアセテート製)を用いて、固形分(粒子)を除去した。ろ過液中に含まれる成分(溶出成分)を、全有機探索計(TOC−V、島津製作所(株))製を用いて、以下の分析条件で溶出した助剤成分の量を測定した。
TC炉温度:680℃ キャリア:高純度エア(流量150ml/分)
(分散体の調製)
ポリアミド12樹脂(ダイセル・デグサ(株)製、ダイアミドL1640)、オリゴ糖(東和化成工業(株)製、還元デンプン糖化物PO−10)、ソルビトール(東和化成工業(株)製、ソルビット)を、ナイロン12/オリゴ糖/ソルビトールが重量比率で、それぞれ、30/75/25となるように混合し、二軸押出機(L/D=14)を用いて温度190℃で混練、押出し、冷却して、直径4mmのストランド状に成形された分散体を得、ペレタイザーによりカットしてペレットを得た。
(実施例1)
得られたペレット状の分散体10gを、100mlの純水中に浸漬し、25℃で1時間、マグネティックスターラーを用いて撹拌することにより樹脂粒子の懸濁液を得た。メンブレン膜(孔経0.45μm、ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、前記懸濁液から不溶分を濾別し樹脂の微粒子を回収した。回収した樹脂粒子を、熱風乾燥機中に静置して、45℃で8時間乾燥し、その後、メノウ乳鉢とすり棒を用いて目視上凝集部分がなくなるまで粉砕した。
(実施例2)
得られたペレット状の分散体10gを、100mlの純水中に浸漬し、25℃で1時間、マグネティックスターラーを用いて撹拌することにより樹脂粒子の懸濁液を得た。メンブレン膜(孔経0.45μm、ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、前記懸濁液から不溶分を濾別して樹脂の微粒子を回収した。回収した樹脂粒子を再び100mlの純水中に分散させ、超音波槽にて15分間処理した後、再び、メンブレン膜(孔経0.45μm、ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、樹脂の微粒子を回収した。回収した微粒子をさらに再び100mlの純水中に分散させ、超音波槽にて30分間処理した後、再び、メンブレン膜(孔経0.45μm、ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、微粒子を回収した。回収した樹脂粒子を、熱風乾燥機中に静置して、45℃で8時間乾燥し、その後、メノウ乳鉢とすり棒を用いて目視上凝集部分がなくなるまで粉砕した。
(実施例3)
ポリスチレン樹脂(G100C 東洋スチレン例)、ポリアミド12樹脂(ダイセル・デグサ(株)製、ダイアミドL1640)、オリゴ糖(東和化成工業(株)製、還元デンプン糖化物PO−10)、ソルビトール(東和化成工業(株)製、ソルビット)を、ポリスチレン樹脂/ポリアミド12樹脂/オリゴ糖/ソルビトールが重量比率で、それぞれ、22.5/7.5/75/25となるように混合し、二軸押出機(L/D=14)を用いて温度190℃で混練、押出し、冷却して、直径4mmのストランド状に成形された分散体を得、ペレタイザーによりカットしてペレットを得た。
分散体からの高分子微粒子の回収方法は実施例2と同様に行った。
表1に、実施例1から4で得られた粒子の粒径、TOCにより得た粒子に残留した糖成分量を示す。
Figure 2008251452
(比較例1)
[金属層形成工程]上記の実施例1から4で得られた粒子に対して以下の通りの方法で金属層を無電解メッキ処理することにより形成した。

(1)脱脂工程
高分子微粒子を、エースクリンA−220(奥野製薬工業株式会社製)50g/L水溶液の液温40℃に10分間浸漬した。その後メンブレンフィルタでろ過し、ろ過物を再度水中に投入攪拌して水洗して再度メンブレンフィルタでろ過した。

(2)酸による処理工程
1.0規定の塩酸100ml中に高分子微粒子を10グラム投入し、液温を40℃として5分間浸漬して酸による接触処理を行った。その後、メンブレンフィルタでろ過し、ろ過物を再度水中に投入攪拌して水洗して再度メンブレンフィルタでろ過した。

(3)触媒付与工程
35重量%の塩酸150mlを1リットルの水に溶解した液を作成した。触媒としてキャタリストC(奥野製薬工業株式会社製)40mlを1リットルの水に溶解した液を作成した。これらの液を等量の混合して触媒溶液を作成した。この触媒溶液に上記の高分子微粒子を液温40℃で3分間浸漬して攪拌して触媒を付与した。その後、メンブレンフィルタでろ過し、ろ過物を再度水中に投入攪拌して水洗して再度メンブレンフィルタでろ過した。

(4)第1活性化工程
98重量%硫酸100mlを1リットルの水に溶解した液を作成した。この液に液温40℃で上記の高分子微粒子を3分間浸漬した。その後、メンブレンフィルタでろ過し、ろ過物を再度水中に投入攪拌して水洗して再度メンブレンフィルタでろ過した。

(5)第2活性化工程
上記の高分子微粒子を、水酸化ナトリウム15グラムを1リットルの水に溶解した液に液温40℃で2分間浸漬した。その後、メンブレンフィルタでろ過し、ろ過物を再度水中に投入攪拌して水洗して再度メンブレンフィルタでろ過した。

(6)ニッケルの無電解メッキ工程
メッキ溶液として アルカリ性の無電解ニッケルメッキ液を用いた。化学ニッケルHR−TA(奥野製薬工業株式会社製)と化学ニッケルHR−TB(奥野製薬工業株式会社製)を用いた。HR−TA150mlを水1リットルに溶解した。また、HR−TB150mlを水1リットルに溶解した。これらの液を等量の混合してメッキ溶液を作成した。この液に液温40℃で上記の高分子微粒子を5分間浸漬した。その後、メンブレンフィルタでろ過し、ろ過物を再度水中に投入攪拌して水洗して再度メンブレンフィルタでろ過した。

[金属層の観察]
上記の操作で得られた実施例1から4の金属層を形成した導電性微粒子について、走査電子顕微鏡で金属層の形成の状態を観察した。観察方法としては表面についてはそのまま観察した。また断面についてはUV硬化剤で導電性微粒子を包埋後、粗研磨を行った後、0.5μmの研磨剤で20分間研磨を行い断面を析出させた。その結果を表2に記す。
Figure 2008251452

Claims (8)

  1. 熱可塑性樹脂(A)からなる高分子微粒子と、その表面に形成された金属層(D)からなる導電性微粒子。
  2. 高分子微粒子を形成する熱可塑樹脂(A)の金属層(D)と接触する層(A2)を構成する熱可塑性樹脂がポリアミド結合またはポリエステル結合を含む高分子(A3)である請求項1に記載の導電性微粒子。
  3. ポリアミド結合またはポリエステル結合を含む高分子(A3)がポリアミド(A4)である請求項1に記載の導電性微粒子。
  4. 熱可塑性樹脂(A)を水溶性助剤成分(B)からなる水溶性乳化媒体中に熱可塑性樹脂(A)が分散している分散体を水性溶媒で溶解又は溶出処理して得られた高分子微粒子と、その表面に形成された金属層からなる請求項1から4何れかに記載の導電性微粒子。
  5. 熱可塑性樹脂(A)をその少なくとも一つの構成成分として糖(B1)を有する水溶性助剤成分(B)からなる水溶性乳化媒体中に熱可塑性樹脂(A)が分散している分散体を水性溶媒で溶解又は溶出処理して得られた高分子微粒子と、その表面に形成された金属層からなる請求項1から5何れかに記載の導電性微粒子。
  6. 溶融可能な熱可塑性樹脂(A)と、少なくとも糖(B1)を含む水溶性助剤成分(B)とで構成され、前記熱可塑性樹脂(A)が粒子状に分散した分散体から、水溶性助剤成分(B)を溶出して得られた高分子微粒子であって、全体に対して、10000ppm(重量基準)以上の糖(B1)が残存している高分子微粒子とその表面に形成された金属層からなる請求項1から6何れかに記載の導電性微粒子。
  7. 熱可塑性樹脂(A)を水溶性助剤成分(B)からなる水溶性乳化媒体中に熱可塑性樹脂(A)が分散している分散体を水性溶媒で溶解又は溶出処理して高分子微粒子を得る工程と、その表面に金属層を形成する工程からなる導電性微粒子の製造方法。
  8. 高分子微粒子の表面に金属メッキで形成された金属層(D1)を形成し、更に金属層(D1)上にハンダ層(D2)を形成した請求項1に記載の導電性微粒子。
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