JP2007291168A - 熱処理された有機固体粒子 - Google Patents

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Abstract

【目的】結晶性樹脂からなる粒子関する。特には、結晶性樹脂からなる微粒子の機能向上、品質安定性の向上、特には二次凝集の発生や、滑り性の変化を抑制する。
【構成】溶融可能な結晶性樹脂成分(A)からなる粒子を、該結晶性樹脂成分(A)のガラス転移点温度以上かつ融点以下の温度で熱処理することにより得られる粒子。特に好適には樹脂成分(A)で構成された分散相が、マトリックス成分(C)で構成されたマトリックスに分散している分散体から、マトリックス成分(C)を溶出する方法で得られた樹脂粒子を熱処理する。

Description

本発明は、結晶性樹脂からなる粒子関する。特には、結晶性樹脂からなる微粒子の機能向上、品質安定性の向上に関する。
従来、樹脂粒子に耐熱性や耐薬品性を付与する手段として、樹脂粒子を構成する高分子成分を架橋する方法が用いられているが、一方で結晶性を有する樹脂を粒子化することによりこれらの機能が付与された粒子を得ることも可能である。
結晶性樹脂の粒子を得る方法としては、機械的な粉砕法、例えば、クラッシャーなどで粗粉砕した後、ジェットミルなどを用いて微粉砕し、その後風力分級機などにより分級する方法が利用されている。
しかし、機械的な方法では、一般的に靭性に優れる結晶性樹脂を微粉砕することは困難であり、微粒子を得ることは難しい。さらに、このような方法では、製造機器が高価であることに加え、得られた粒子も不定形で、粒子サイズにばらつきがある。樹脂粒子のサイズを揃えるために分級する手段もあるが、分級前の樹脂粒子のサイズのばらつきが大きい場合には、分級により、利用できないサイズの樹脂粒子が大量に生成するため、経済的にも不利である。また、粒子同士のブロッキング、分散性、流動性などの観点から、球状の粒子が好ましいものの、機械的な粉砕法では不定形になり易く、球状の微粒子を得ることは不可能である。
一方、マトリックスに分散した樹脂粒子を含む分散体から、マトリックスを除去することにより樹脂粒子を得る方法が知られている。例えば、特開平10−176065号公報(特許文献1)には、微粉末化する熱可塑性樹脂(a)に、他の1種類以上の熱可塑性樹脂(b)を溶融混練することにより、樹脂(a)が分散相を形成し、樹脂(b)が連続相を形成する樹脂組成物を生成させ、樹脂(a)は溶解せず、樹脂(b)が溶解する溶媒及び条件で前記樹脂組成物を洗浄することにより、樹脂(a)の球状微粒子を得る方法が開示されている。この文献には樹脂(a)の例として、結晶性を有すると思われる樹脂が開示されているが、樹脂粒子の結晶性制御に関する開示、あるいは樹脂粒子の結晶性を制御することによりもたらされる効果についての開示は無い。
また、特開2004−51942号公報(特許文献2)には、樹脂成分(A)及び水溶性助剤成分(B)で構成された分散体であって、助剤成分(B)が、少なくともオリゴ糖で構成されている分散体、およびこの分散体から、助剤成分(B)を溶出し、樹脂成分(A)で構成された成形体を製造する方法が開示されている。この文献には、上記と同様に、樹脂成分(A)の例として、結晶性樹脂が開示されている。
しかしながら、樹脂からなる微粒子の場合には、二次凝集や滑り性不良の問題を生じ易く、これらは樹脂微粒子を搬送あるいは添加するなどのさまざまな工程での閉塞やケーキングあるいは、輸送量の変動などの問題を生じ易る。このような現象が生じた場合には、樹脂微粒子の添加量が変動し、微粒子を添加した最終製品の性状を不安定にしたり、甚だしい場合には目的とする最終製品中の性状すら変動させてしまう。
特に問題となるのが、これらの樹脂微粒子の二次凝集や滑り性不良の度合いは、微粒子の製造履歴や製造後の保管条件などにより変動し、このため対策が難しいという点である。
上記の問題点を解決するために特開2002−220474号公報(特許文献3)には、流動パラフィンを媒体とするラクタム類のアニオン重合により得られたポリアミド微粒子懸濁液に、ポリアミドに対し、0.2重量%以上、1.0重量%未満のポリシロキサンオイルを添加して撹拌した後ポリアミド微粒子を取り出すことにより、表面がポリシロキサンオイルで被覆されたポリアミド微粒子を製造する方法が開示されている。
しかしながら、このような滑り性改良剤を樹脂に添加した微粒子の場合には、樹脂微粒子を用いる用途によっては、それらの滑り性改良剤が問題となる場合もあり、何ら添加剤を添加することなく樹脂の滑り性を改良したり、二次凝集の発生を抑制したりすることができる技術が求められていた。そして特には、製造後の履歴や製造後の保管条件などにより、樹脂微粒子の滑り性や二次凝集性が変化しない樹脂微粒子が求められていた。
特開平10−176065号公報 特開2004−51942号公報 特開2002−220474号公報
本発明の発明者は上記の問題点について検討を行った結果、二次凝集の発生や、滑り性の変化は樹脂の結晶性の度合いが強く影響していることを見出し本発明に到達した。従って、本発明の目的は、結晶性が制御された結晶性樹脂からなる樹脂粒子を提供することにある。
本発明の他の目的は、結晶性が制御されたことで、結晶性により樹脂粒子にもたらされる機能が最大限発揮された粒子を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、粒子が製造された後の、周囲の熱的、温度的環境の変化によって、その結晶性が影響を受けない粒子を提供することにある。
本発明の別の目的は、結晶性が制御されかつ球状で小さい粒径サイズを有する樹脂粒子を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、結晶性の制御された樹脂粒子を、簡便にかつ効率よく製造できる方法および得られる粒子を提供することにある。
本発明者は、前記課題を達成するために鋭意検討した結果、結晶性樹脂で構成された樹脂粒子を適切な条件で熱処理することにより、簡便にかつ効率よく、樹脂粒子の結晶性を制御でき、さらには結晶性の変化により、粒子の特定の機能が向上することを見出し、本発明を完成した。
一般に結晶性樹脂すなわち結晶性高分子物質において、結晶化度によりその性質が変化することは公知である。そして、その製造装置の構造上、急冷される場合は多いフィルムなどにおいては製膜後、エージングをされることが常用技術となっている。
しかしながら、結晶性樹脂微粒子においてはその微粒子という形状のため、結晶性樹脂の占める空間は当初から限定されたものである。そして、このような限定された領域内での結晶すなわち、球晶あるいは板状晶(ラメラ)大きさが決定されているため、所謂通常のエージングによる結晶化度の変化は極めて小さいものの、その結晶化度の僅かの変化が二次凝集の発生や、滑り性の変化に影響を及ぼすことを見出したものである。
すなわち、本発明の粒子は、溶融可能な結晶性樹脂成分(A)からなる粒子を、樹脂成分(A)のガラス転移点温度以上かつ融点以下の温度で熱処理することにより得られる粒子である。
結晶性樹脂は、溶融可能であれば特に限定されず、例えば、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテルから選ばれる少なくとも1種であっても良い。
本発明の粒子を得る手段として、樹脂成分(A)で構成された分散相が、マトリックス成分(C)で構成されたマトリックスに分散している分散体から、マトリックス成分(C)を溶出する方法を用いても良い。
本発明の粒子を得るための熱処理は、前記樹脂成分(A)とマトリックス成分(C)からマトリックス成分を溶出する前の工程で行っても良い。
本発明の粒子において、前記マトリックス成分(C)は、水溶性のマトリックス成分であってもよく、代表的には、前記分散体は、非水溶性結晶性樹脂(A)で構成された粒子状の分散相が、水溶性のマトリックス成分(C)で構成されたマトリックスに分散している分散体であってもよい。前記水溶性のマトリックス成分は、例えば、少なくともオリゴ糖で構成されていてもよい。特に、マトリックス成分(C)は、オリゴ糖(C1)と、糖類及び糖アルコールから選択された少なくとも一種の水溶性可塑化成分(C2)とで構成されていてもよい。
マトリックス成分(C)は固体でなくても良い。すなわち、結晶性高分子(A)の融点が高い場合にはマトリックス成分(C)が溶融した状態で熱処理する形態であっても良い。
本発明の樹脂成分(A)で構成された粒子は、平均粒子径が0.1〜100μmであっても良く、また化粧品などに用いることができる。
本発明の樹脂粒子は、粒子を樹脂成分(A)の融点より20℃〜30℃低い温度において少なくとも2時間以上の熱処理した後、粒子の示差熱量分析における樹脂成分(A)に由来する融解ピークのピークトップ温度及び融解熱量が、熱処理しない粒子の示差熱量分析における樹脂成分(A)に由来する融解ピークのピークトップ温度及び融解熱量と比較して5%以下の変化率であっても良い。
本発明では、溶融可能な結晶性樹脂成分(A)からなる粒子を、樹脂成分(A)のガラス転移点温度以上の温度で熱処理することにより得られるので、粒子を構成する樹脂成分の結晶性が有効に制御された粒子を得ることができる。また本発明では、粒子を構成する樹脂成分の結晶性を制御できるので、結晶性によって粒子に付与される様々な機能を最大限かつ安定して発揮させることができる。さらに、前記のように結晶性が制御された樹脂成分からなる粒子を、球状でかつ小さい粒子サイズで得ることもできる。しかも、粒子製造後に粒子周囲の熱的、温度的環境が変化しても粒子を構成する樹脂成分の結晶性が変化せず、付与された機能を安定して発揮することができる。そして本発明では、上記のような結晶性が制御された樹脂成分からなり、結晶性によりもたらされる機能を有効に発現できる粒子を、予め調整された結晶性樹脂からなる樹脂粒子を熱処理するという方法により、簡便にかつ効率よく製造できる。
[粒子]
本発明の粒子は、溶融可能な結晶性樹脂成分(A)で構成されている粒子を、、樹脂成分(A)のガラス転移点温度以上かつ融点以下の温度で熱処理することにより得られる。本発明の熱処理された結晶性樹脂微粒子の製造方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知のさまざまな方法で作ることができる。例えば、特公 昭45−29832号公報に記載されている方法を用いることもできるし、特開平10−176065号公報に記載されている方法を用いることができる。
微粒子の製造方法として本発明に好適な方法としては、特開2004−51942号公報に記載されている方法を用いることができる。該公報に記載の方法によれば樹脂成分(A)で構成された分散相が、マトリックス成分(C)で構成されたマトリックスに分散している分散体から、マトリックス成分(C)を溶出することで本発明の熱処理を施す樹脂微粒子が簡便に得られる。更には得られた微粒子の粒径は均一であり、かつ粒子の形状は実質的に球状となる。
更に、本発明の熱処理を適用する微粒子の製造方法として、上記の特開2004−51942号公報の発明を適用した場合には、本発明の粒子を得るための熱処理は、前記樹脂成分(A)とマトリックス成分(C)からマトリックス成分を溶出する前の工程で行うことも可能となる。即ち、樹脂成分(A)で構成された分散相が、マトリックス成分(C)で構成されたマトリックスに分散している分散体を巻き取りあるは、シート状に裁断し重ね置いた状態で熱処理をすることもできる。
[分散体]
以下に樹脂成分(A)で構成された分散相が、マトリックス成分(C)で構成されたマトリックスに分散している分散体について記載する。前記粒子は、溶融可能な結晶性樹脂成分(A)で構成された粒子状の分散相が、マトリックス成分(C)で構成されたマトリックスに分散している分散体から、マトリックス成分(C)を溶出することにより得られる。そして、このような分散体は、樹脂成分(A)と、マトリックス成分(C)とを溶融混合することにより得られる。
(A)結晶性樹脂成分
溶融可能な結晶性樹脂成分(A)としては、通常の結晶性の有無の評価法、測定法による判別で結晶性を示す樹脂であれば良く、例えば示差走査型熱量分析計(DSC)による測定で、昇温時に、結晶の融解による識別可能な吸熱ピーク(溶解ピーク)、あるいは降温時に、結晶化による識別可能な発熱ピーク(結晶化ピーク)を示す樹脂であれば特に限定されない。前記樹脂には、熱可塑性樹脂[ポリエステル系樹脂(例えば、芳香族ポリエステル系樹脂や脂肪族ポリエステル系樹脂など)、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ(チオ)エーテル系樹脂(例えば、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂などの縮合系熱可塑性樹脂;ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂(例えば、ハロゲン含有ビニル系樹脂、ビニルエステル系樹脂又はその誘導体など)などのビニル重合系熱可塑性樹脂;熱可塑性エラストマー;セルロース誘導体などの天然物由来樹脂;熱可塑性シリコーン樹脂など]、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂(シリコーンゴム、シリコーンワニスなど)など)などが含まれる。
これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。樹脂成分(A)としては、通常、熱可塑性樹脂、非水溶性樹脂(又は疎水性樹脂、非水溶性熱可塑性樹脂など)を好適に使用できる。以下、代表的な結晶性熱可塑性樹脂を例示する。
(1)ポリエステル系樹脂
ポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸成分、ジオール成分、オキシカルボン酸、ラクトン類を用いた種々の樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロへキシルジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリC2-6アルキレン−アリレート系樹脂、C2-6アルキレン−アリレート単位を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステル(例えば、共重合成分が、オキシアルキレン単位を有するポリオキシC2-4アルキレングリコールやC6-12脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸などの非対称性芳香族ジカルボン酸などのコポリエステル)、ポリアリレート系樹脂、液晶性ポリエステルなどの芳香族ポリエステル系樹脂;ポリC2-6アルキレン−オギザレート、ポリC2-6アルキレン−サクシネート、ポリC2-6アルキレン−アジペートなどのポリ(C2-6アルキレングリコール−C2-10脂肪族ジカルボン酸エステル)、ポリオキシカルボン酸系樹脂(例えば、ポリグリコール酸やポリ乳酸、グリコール酸−乳酸共重合体など)、ポリラクトン系樹脂(例えば、ポリカプロラクトンなどのポリC3-12ラクトン系樹脂など)、これらのコポリエステル(例えば、ポリカプロラクトン−ポリブチレンサクシネート共重合樹脂など)などが挙げられる。ポリエステル系樹脂はウレタン結合を含んでいてもよい。さらに、ポリエステル系樹脂は生分解性を有していてもよい。
(2)ポリアミド系樹脂
ポリアミド系樹脂としては、例えば、脂肪族ポリアミド系樹脂、脂環族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂などが挙げられ、通常、脂肪族ポリアミド系樹脂が使用される。これらのポリアミド系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
脂肪族ポリアミド系樹脂としては、脂肪族ジアミン成分(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC4-10アルキレンジアミン)と脂肪族ジカルボン酸成分(アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC4-20アルキレンジカルボン酸など)との縮合物(例えば、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1212など)、ラクタム(ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのC4-20ラクタムなど)又はアミノカルボン酸(ω−アミノウンデカン酸などの炭素数C4-20アミノカルボン酸など)の単独又は共重合体(例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6/11、ポリアミド6/12など)、これらのポリアミド成分が共重合したコポリアミド(例えば、ポリアミド66/11,ポリアミド66/12など)などが挙げられる。ポリアミド系樹脂のジカルボン酸成分はダイマー酸単位を含んでいてもよい。さらに、ポリアミド系樹脂は生分解性を有していてもよい。
(3)エーテル系樹脂
エーテル系樹脂、特にはポリ(チオ)エーテル系樹脂としては、例えば、ポリオキシアルキレン系樹脂(安定化されたポリオキシメチレングリコール又はホモ又はコポリアセタール系樹脂、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体などのポリオキシC2-4アルキレングリコール)、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンエーテルケトン系樹脂、ポリスルフィド系樹脂(ポリフェニレンスルフィド又はその共重合体などのポリチオエーテル系樹脂)、ポリエーテルケトン系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン系樹脂を含む)などが含まれる。
(4)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂には、α−C2-6オレフィンの単独又は共重合体、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(メチルペンテン−1)などのオレフィンの単独又は共重合体、オレフィンと共重合性単量体との共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
(5)ハロゲン含有ビニル系樹脂
ハロゲン含有ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン系樹脂、フッ素樹脂などが例示できる。
(6)ビニルエステル系樹脂又はその誘導体
ビニルエステル系樹脂又はその誘導体としては、例えば、カルボン酸ビニルエステルの単独又は共重合体(ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、これらのケン化物(ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系樹脂)、ケン化物(ビニルアルコール系樹脂)からの誘導体(例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール系樹脂など)などが例示できる。エチレン−ビニルアルコール共重合体において、エチレン含量は5〜40重量%程度であってもよい。
好ましい樹脂としては、非水溶性樹脂、特に、非水溶性(又は水不溶性)熱可塑性樹脂(又は疎水性熱可塑性樹脂)などが挙げられる。特に、これらの樹脂の中でも、汎用性、コスト、環境適応性などの面から、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂などを好適に用いることができる。
樹脂成分(熱可塑性樹脂など)の平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量で、例えば、5,000〜500,000、好ましくは10,000〜300,000、さらに好ましくは20,000〜150,000程度であってもよい。なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量の測定が困難なセルロース誘導体などの熱可塑性樹脂については、粘度平均分子量を採用できる。なお、樹脂成分の重量平均分子量は、樹脂成分の混練時間や混練温度などによっても調節できる。
[ガラス転移点温度]
本発明のおいて結晶性樹脂成分(A)のガラス転移点温度と称されているものは熱示差走査熱量計(DSC)にてJIS K 7121で規定される測定方法を用いた場合に測定されるガラス転移点温度を示す。測定装置としては入力補償型装置であってもよく、また熱流束型であってもよい。
測定においては、予想される融点以上に昇温する操作を行い2回目の昇温時に観測された結晶融解の吸熱ピークより低い温度領域に現れるベースラインの吸熱側への変曲点(オンセット温度)を以って樹脂成分のガラス転移点温度とした。昇温速度としては20℃/分で測定を行うのが望ましい。測定に際しては、窒素でパージし、窒素流量としては40ml/分程度で測定するのが望ましい。
上記の方法で測定されたガラス転移温度としては、特に制限されないが、例えば、−100℃〜180℃、好ましくは−40℃〜150℃(例えば−40〜140℃)、さらに好ましくは−30℃〜120℃(例えば−20℃〜120℃)程度である。
[融点]
本発明のおいて結晶性樹脂成分(A)の融点と称されているものは熱示差走査熱量計(DSC)にてJIS K 7121で規定される測定方法を用いた場合に測定される融解温度を示す。測定装置としては入力補償型装置であってもよく、また熱流束型であってもよい。
測定においては、予想される融点以上に昇温する操作を行い2回目の昇温時に観測吸熱ピークのピークトップ温度を、樹脂成分の融点とした。樹脂の種類や状態によっては微結晶の存在に起因して主たる融解ピークより低い温度に吸熱量の小さいピークが現れる場合があるが、この場合は、主融解ピークのピークトップ温度を融点とした。
融点は、特に制限されないが、例えば、30℃〜350℃、好ましくは40℃〜280℃(例えば45〜260℃)、さらに好ましくは50℃〜240℃(例えば60℃〜220℃)程度である。
(C)マトリックス成分
本発明の粒子を得る際の分散体において、マトリックスを構成するマトリックス成分は、樹脂成分(A)を分散可能な成分であればよい。すなわち、前記マトリックス成分(C)は、樹脂成分(A)に対して、通常、相溶性を有しない(又は非相溶性の)成分であればよい。なお、マトリックス(又はマトリックス成分)は、通常、固体(常温で固体)である。このような固体マトリックス成分は、固体であれば、液体のマトリックス成分を含んでいてもよい。なお、水溶性マトリックス成分と、樹脂成分及び改質剤とを組み合わせて分散体を形成した後、後述するように、適宜溶出又は洗浄するなどの方法により、本発明の粒子となる樹脂粒子(樹脂粒子など)を形成できる。
マトリックス成分としては、樹脂成分(A)と相溶性を有さない成分であって、樹脂成分(A)との溶融混練が可能であれば特に限定されず、非水溶性(又は疎水性)の成分であってもよいが、工業的な観点あるいは環境負荷の観点から、水溶性であることが好ましい。すなわち、マトリックス成分を水溶性のマトリックス成分とすることにより、分散体から、水によりマトリックスを除去できるため、経済的および環境的に有利である。
このような水溶性のマトリックス成分としては、樹脂成分や改質剤の種類にもよるが、例えば、水溶性樹脂[例えば、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体など)、ビニルアルコール系重合体(例えば、ポリビニルアルコールなど)水溶性アクリル系樹脂、水溶性スチレン系樹脂、ポリビニルピロリドンなどの水溶性合成樹脂;セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースなどのアルキル−ヒドロキシアルキルセルロースなどのヒドロキシル基を有するセルロース誘導体、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロース、エチルセルロースなどのアルキルセルロースなどのセルロースエーテル類など)など]、糖類又はその誘導体[例えば、単糖類(例えば、グルコースなど)、オリゴ糖、多糖類(例えば、デンプンなど)、糖アルコールなど]などが挙げられる。これらのマトリックス成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
特に、樹脂粒子のコントロール性及び製造効率、広範な樹脂粒子(例えば、樹脂)に対する適用性などの観点から、マトリックス成分は、少なくともオリゴ糖(C1)で構成していてもよい。すなわち、オリゴ糖は、糖類でありながら、樹脂成分などと均一に混練可能である場合が多く、幅広い種類の樹脂成分(樹脂)との組み合わせであっても、効率よくマトリックスを形成できる。また、オリゴ糖は、糖類であるので、前記水溶性樹脂などに比べて、分散体から溶出により除去しやすく、後述する樹脂粒子の生産性を高めることができる。オリゴ糖で構成されたマトリックス成分については、特開2004−51942号公報を参照することもできる。
(C1)オリゴ糖
オリゴ糖(C1)は、2〜10分子の単糖類が、グリコシド結合を介して脱水縮合したホモオリゴ糖と、少なくとも2種類以上の単糖類及び/又は糖アルコールが、2〜10分子グリコシド結合を介して脱水縮合したヘテロオリゴ糖とに大別される。オリゴ糖(C1)としては、例えば、二糖類乃至十糖類が挙げられ、通常、二糖類乃至六糖類のオリゴ糖が使用される。オリゴ糖は、通常、常温で固体である。なお、これらのオリゴ糖は、無水物でもよい。また、オリゴ糖において、単糖類と糖アルコールとが結合していてもよい。なお、オリゴ糖は複数の糖成分で構成されたオリゴ糖組成物であってもよい。このようなオリゴ糖組成物であっても単にオリゴ糖という場合がある。オリゴ糖(又はオリゴ糖組成物)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
二糖類としては、トレハロース(例えば、α,α−トレハロース、β,β−トレハロース、α,β−トレハロースなど)、コージービオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオースなどのホモオリゴ糖;ラクトース、スクロース、パラチノース、メリビオース、ルチノース、プリメベロース、ツラノースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。
三糖類としては、マルトトリオース、イソマルトトリオース、パノース、セロトリオースなどのホモオリゴ糖;マンニノトリオース、ソラトリオース、メレジトース、プランテオース、ゲンチアノース、ウンベリフェロース、ラクトスクロース、ラフィノースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。
四糖類としては、マルトテトラオース、イソマルトテトラオースなどのホモオリゴ糖;スタキオース、セロテトラオース、スコロドース、リキノース、パノースの還元末端に糖又は糖アルコールが結合したテトラオースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。
これらの四糖類のうち、パノースの還元末端に単糖類又は糖アルコールが結合したテトラオースは、例えば、特開平10−215892号公報に開示されており、パノースの還元末端に、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、アラビノースなどの単糖類や、ソルビトール、キシリトール、エリスリトールなどの糖アルコールが結合したテトラオースが例示できる。
五糖類としては、マルトペンタオース、イソマルトペンタオースなどのホモオリゴ糖;パノースの還元末端に二糖類が結合したペンタオースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。パノースの還元末端に二糖類が結合したペンタオースは、例えば、特開平10−215892号公報に開示されており、パノースの還元末端に、スクロース、ラクトース、セロビオース、トレハロースなどの二糖類が結合したペンタオースが例示できる。
六糖類としては、マルトヘキサオース、イソマルトヘキサオースなどのホモオリゴ糖などが挙げられる。
オリゴ糖は、樹脂成分との溶融混練性の観点から、少なくとも四糖類で構成されているのが好ましい。
オリゴ糖は、多糖類の分解により生成するオリゴ糖組成物であってもよい。オリゴ糖組成物は、通常、四糖類を含んでいる。オリゴ糖組成物としては、例えば、デンプン糖(デンプン糖化物)、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー、フルクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖などが挙げられる。
例えば、デンプン糖は、デンプンに酸又はグルコアミラーゼなどを作用させて得られるオリゴ糖組成物であり、複数個のグルコースが結合したオリゴ糖の混合物であってもよい。デンプン糖としては、例えば、東和化成工業(株)製の還元デンプン糖化物(商品名:PO−10、四糖類の含有量90重量%以上)などが挙げられる。
ガラクトオリゴ糖は、ラクトースにβ−ガラクトシダーゼなどを作用させて得られるオリゴ糖組成物であり、ガラクトシルラクトースとガラクトース−(グルコース)nの混合物(nは1〜4の整数)であってもよい。
カップリングシュガーは、デンプンとスクロースにシクロデキストリン合成酵素(CGTase)を作用させて得られるオリゴ糖組成物であり、(グルコース)n−スクロースの混合物(nは1〜4の整数)であってもよい。
フルクトオリゴ糖(フラクトオリゴ糖)は、砂糖にフルクトフラノシダーゼを作用させて得られるオリゴ糖組成物であり、スクロース−(フルクトース)nの混合物(nは1〜4の整数)であってもよい。
これらのオリゴ糖組成物において、溶融混練での急激な粘度低下を防止するため、オリゴ糖組成物中の三糖類、四糖類(特に四糖類)の含有量は、例えば、60重量%以上(60〜100重量%)、好ましくは70重量%以上(70〜100重量%)、さらに好ましくは80重量%以上(80〜100重量%)、特に90重量%以上(90〜100重量%)であってもよい。
オリゴ糖は還元型(マルトース型)であってもよく、非還元型(トレハロース型)であってもよいが、還元型のオリゴ糖は、耐熱性に優れるため好ましい。
還元型のオリゴ糖としては、遊離のアルデヒド基又はケトン基を有し、還元性を示す糖であれば、特に限定されず、例えば、コージービオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、パラチノース、メリビオース、ルチノース、プリメベロース、ツラノースなどの二糖類;マルトトリオース、イソマルトトリオース、パノース、セロトリオース、マンニノトリオース、ソラトリオースなどの三糖類;マルトテトラオース、イソマルトテトラオース、セロテトラオース、リキノースなどの四糖類;マルトペンタオース、イソマルトペンタオースなどの五糖類;マルトヘキサオース、イソマルトヘキサオースなどの六糖類などが挙げられる。
一般的に、前記オリゴ糖は、天然物である多糖類の誘導体あるいはそれらの還元によって製造される天然物由来の製造物であるため、環境への負荷を低減できる。
混練により、効果的に樹脂成分と助剤成分とを分散させるためには、オリゴ糖の粘度は高いのが望ましい。具体的には、B型粘度計を用いて温度25℃で測定したとき、オリゴ糖の50重量%水溶液の粘度は、例えば、1〜500Pa・s、好ましくは2〜250Pa・s(例えば、3〜100Pa・s)、さらに好ましくは4〜50Pa・s(例えば、6〜50Pa・s)程度である。
また、オリゴ糖(C1)の融点又は軟化点は、樹脂成分(A)の融点より高い方が好ましい。なお、融点又は軟化点を示さず、熱分解するオリゴ糖[例えば、還元デンプン糖化物などのデンプン糖など]では、分解温度をオリゴ糖の「融点又は軟化点」としてもよい。オリゴ糖の融点又は軟化点は、樹脂成分(A)の種類などに応じて、70〜300℃の範囲で選択でき、例えば、90〜290℃、好ましくは100〜280℃(例えば、110〜270℃)、さらに好ましくは120〜260℃(例えば、130〜260℃)程度であってもよい。なお、一般にオリゴ糖の無水物は、高い融点又は軟化点を示す。オリゴ糖の融点又は軟化点と、樹脂成分(A)の融点との温度差は、例えば、1〜80℃、好ましくは10〜70℃、さらに好ましくは15〜60℃程度である。
また、水溶性マトリックス成分は、さらに前記オリゴ糖を可塑化するための水溶性可塑化成分(C2)を含んでいてもよい。オリゴ糖(C1)と水溶性可塑化成分(C2)とを組み合わせると、樹脂成分(A)との混練において、水溶性マトリックス成分(C)の粘度を調整できる。
(C2)水溶性可塑化成分
水溶性可塑化成分(C2)としては、オリゴ糖(C1)が水和して水飴状態となる現象を発現できるものであればよく、例えば、糖類、糖アルコールなどが使用できる。これらの可塑化成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
(a)糖類 糖類としては、オリゴ糖(C1)を有効に可塑化するために、通常、単糖類及び/又は二糖類が使用される。これらの糖類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
単糖類としては、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、オクトース、ノノース、デコースなどが挙げられる。これらの化合物は、アルドースやケトースであってもよく、ジアルドース(糖の誘導体であって炭素鎖両末端がアルデヒド基である化合物、例えば、テトラアセチルガラクトヘキソジアルドース、イドヘキソジアルドース、キシロペントジアルドース等)、複数のカルボニル基を有する単糖類(オソン、オノース等のアルドアルコケトース等)、メチル基を有する単糖類(アルトロメチロースなどのメチル糖等)、アシル基(特にアセチル基などのC2-4アシル基等)を有する単糖類(前記アルドースのアセチル体、例えば、アルデヒドグルコースペンタアセチル化合物などのアセチル体など)、カルボキシル基が導入された糖類(糖酸またはウロン酸等)、チオ糖、アミノ糖、デオキシ糖などであってもよい。
このような単糖類の具体例としては、例えば、テトロース(エリトロース、トレオロース等)、ペントース(アラビノース、リボース、リキソース、デオキシリボース、キシロース等)、ヘキソース(アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、フコース、ラムノース、タロース、ガラクチュロン酸、グルクロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン等)などが例示できる。
また、単糖類は、ヘミアセタール結合により環状構造を形成した環状異性体であってもよい。単糖類は、旋光性を有している必要はないが、D形、L形、DL形のいずれであってもよい。これらの単糖類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
二糖類としては、オリゴ糖(C1)を可塑化できるものであれば、特に制限されず、例えば、前記二糖類のうち、低融点または低軟化点を有する二糖類(例えば、ゲンチオビオース、メリビオース、トレハロース(二水化物)など)、前記単糖類のホモ及びヘテロ二糖類に相当する二糖類(例えば、グルクロン酸とグルコースとがα−1,6グリコシド結合したグルクロノグルコースなどのアルドビオウロン酸など)が例示できる。
糖類は、熱安定性に優れるため、還元糖が好ましく、そのような糖類としては、遊離の単糖類の他、前記二糖類のうち、低融点又は低軟化点の還元糖(例えば、ゲンチオビオース、メリビオースなど)が挙げられる。
(b)糖アルコール
糖アルコールとしては、アルジトール(グリシトール)などの鎖状糖アルコールであってもよく、イノシットなどの環式糖アルコールであってもよいが、通常は、鎖状糖アルコールが使用される。これらの糖アルコールは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
鎖状糖アルコールとしては、テトリトール(トレイトール、エリスリトールなど)、ペンチトール[ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール(アドニトール)、キシリトール、リキシトールなど]、ヘキシトール[ソルビトール、マンニトール、イジトール、グリトール、タリトール、ズルシトール(ガラクチトール)、アロズルシトール(アリトール)、アルスリトール]、ヘプチトール、オクチトール、ノニトール、デキトール、及びドデキトールなどが挙げられる。
これらの糖アルコールのうち、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、ズルシトール、マンニトールなどが好ましい。糖アルコールは、エリスリトール、ペンタエリスリトール、キシリトール、およびソルビトールから選択された少なくとも1つの糖アルコールを含む場合が多い。
可塑化成分(C2)は、常温(例えば、15〜20℃程度)で液体(シロップ状)であってもよいが、取扱い性などの点から、通常、固体である場合が多い。マトリックス成分(C)をオリゴ糖(C1)と可塑化成分(C2)とで構成すると、オリゴ糖(C1)が明瞭な融点や軟化点を示さない熱分解性オリゴ糖であっても、有効に可塑化又は軟化できる。
可塑化成分(C2)の融点又は軟化点は、通常、樹脂成分(A)の融点以下である。なお、可塑化成分の中には、高融点(例えば200℃以上)を有するにも拘わらず、オリゴ糖と共存すると、実際の融点よりも低い温度で融解する物質が存在する。例えば、ペンタエリスリトールは、実際の融点(260℃)より低温(例えば160〜180℃程度)でオリゴ糖に対する可塑化効果を発揮するとともに、自身も融解状態となる。このような高融点の可塑化成分は、単独では樹脂成分(樹脂成分など)の熱変形温度において融解しないため利用できないが、オリゴ糖と組み合わせることによって有効に利用できる。なお、実際の融点より低温でオリゴ糖に対する可塑化効果を発揮する可塑化成分(例えば、ペンタエリスリトールなど)においては、オリゴ糖に対して可塑化効果を発揮する温度を、可塑化成分(C2)の「融点又は軟化点」としてもよい。
マトリックス成分(C)の融点又は軟化点は、樹脂成分(A)の融点以上であってもよく、融点以下であってもよい。樹脂成分(A)及びマトリックス成分(C)は、少なくとも混練温度(又は成形加工温度)において溶融又は軟化すればよい。例えば、マトリックス成分(C)の融点又は軟化点と、樹脂成分(A)の融点との温度差は、0〜100℃の範囲で選択してもよく、例えば、3〜80℃(例えば3〜55℃)、好ましくは5〜60℃(例えば、5〜45℃)、さらに好ましくは5〜40℃(例えば、10〜35℃)程度であってもよい。なお、マトリックス成分(C)の融点又は軟化点と、樹脂成分(A)の融点との温度差が小さい場合(例えば前記温度差が0〜20℃程度である場合)、固化速度の高いマトリックス成分(C)(例えば、糖成分)により短時間で分散形態を固定化できるという利点がある。
さらに、マトリックス成分(C)(例えば、オリゴ糖(C1)と可塑化成分(C2)とを含む成分)のメルトフローレートは、例えば、樹脂成分(A)の融点より30℃高い温度でJIS K 7210で規定されるメルトフローレートを測定したとき、1以上(例えば、1〜40程度)、好ましくは5以上(例えば、5〜30程度)、さらに好ましくは10以上(例えば、10〜20程度)であってもよい。
マトリックス成分(C)において、可塑化成分(C2)の割合(重量比)は、溶融混練に伴って、可塑化成分が凝集などにより局在化せず、オリゴ糖(C1)を効率的に可塑化できる量、例えば、オリゴ糖(C1)/可塑化成分(C2)=99/1〜50/50から選択でき、好ましくは95/5〜60/40、さらに好ましくは90/10〜70/30程度である。
樹脂成分(A)とマトリックス成分(C)との割合(重量比)は、樹脂成分及びマトリックス成分の種類や粘度などに応じて選択でき、特に制限されないが、通常、成形性を損なわない量、例えば、樹脂成分(A)/マトリックス成分(C)=55/45〜1/99、好ましくは50/50〜5/95、さらに好ましくは45/55〜10/90程度である。
[溶融混錬で分散させて樹脂微粒子を得る製造方法]
本発明の粒子の製造方法は前記の通り特に限定されるものではないが、好ましくは、結晶性樹脂成分(A)と、マトリックス成分(C)とを溶融混合することにより得られる分散体から、マトリックス成分(C)を溶出することにより得られる粒子を用いることが好ましい。即ち、結晶性樹脂成分(A)と、マトリックス成分(C)溶融混錬し、マトリックス成分(C)中に結晶性樹脂成分(A)が実質球状に分散した分散体を製作し、さらに樹脂成分(A)のガラス転移点温度以上かつ融点以下で熱処理することにより得られる。また場合によっては、例えば、特公 昭45−29832号公報に記載されている方法により得られた微粒子をマトリックス成分(C)と溶融混合あるいは、マトリックス成分(C)のみが溶融する温度で混合し、微粒子をマトリックス成分(C)に分散させて分散体を得る方法でも良い。
以下本発明に用いるのに好適な粒子の製造方法について記載する。
(マトリックス成分(C)との溶融混合)
そして、本発明では、樹脂成分(A)とマトリックス成分(C)とを溶融混合(溶融混練)することにより分散体を調製できる。なお、樹脂成分(A)とマトリックス成分との溶融混合(溶融混練)は、少なくとも一方を溶融させることにより行うことができ、特に樹脂成分(A)およびマトリックス成分を溶融させて行うことが多い。溶融混合は、慣用の混練機(例えば、単軸もしくは二軸スクリュー押出機、ニーダー、カレンダーロール、オープンロール混練機など)を用いて行なうことができる。また、混練に先立ち、各成分を、予め凍結粉砕機などで粉体状に予備加工したり、樹脂成分(A)とマトリックス成分とをヘンシェルミキサー、タンブルミキサー、ボールミルなどで予備混練することでもよい。
溶融混練した分散体は、塊状などであってもよいが、マトリックス成分を除去するという観点から、通常、成形(予備成形)に供されて、予備成形体を形成する場合が多い。溶融混練物(分散体)の成形法としては、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、カレンダー成形などが挙げられ、通常、生産性や加工の容易さの点から、押出成形又は射出成形が使用される。予備成形体(又は分散体)の形状は、特に制限されず、0次元的形状(粒状、ペレット状など)、1次元的形状(ストランド状、棒状など)、2次元的形状(板状、シート状、フィルム状など)、3次元的形状(管状、ブロック状など)などであってもよい。マトリックス成分の溶出性を考慮すると、ストランド状、棒状、シート状、フィルム状などに加工(成形)することが望ましい。 熱処理する場合においてはこれらの3次元的形状の分散体を熱処理することでも良い。
なお、混練温度や成形加工温度は、使用される原材料(例えば、樹脂成分、マトリックス成分)に応じて適宜設定することが可能であり、例えば、90〜300℃、好ましくは110〜260℃(例えば、130〜250℃)、さらに好ましくは140〜240℃(例えば、150〜240℃)、特に170〜230℃(例えば、180〜220℃)程度である。マトリックス成分(例えば、オリゴ糖および可塑化成分)の熱分解を避けるため、混練温度や成形加工温度を230℃以下(例えば、160〜220℃程度)にしてもよい。また、混練時間は、例えば、10秒〜1時間の範囲から選択してもよく、通常30秒〜45分、好ましくは1〜30分(例えば、3〜20分)程度である。
混練及び/又は成形加工により得られた溶融物(例えば、予備成形体)は、必要により適宜冷却してもよい。溶融物を冷却すると、分散相と連続相とを効率よく形成できる。また、冷却すると、溶融状態において、樹脂成分(A)と、マトリックス成分(C)とが相溶していても、冷却に伴って、表面張力、結晶化などの固化速度の相違などにより分散相を形成できる。
冷却温度は、樹脂成分(A)の融点、又はマトリックス成分(C)の融点若しくは軟化点よりも少なくとも10℃程度低い温度であればよく、例えば、上記温度(樹脂成分の融点、又はマトリックス成分の融点若しくは軟化点)より10〜100℃程度低い温度、好ましくは前記温度より15〜80℃程度低い温度、さらに好ましくは前記温度より20〜60℃程度低い温度であってもよい。具体的には、冷却温度は、樹脂成分の種類に応じて5〜150℃の範囲から選択でき、例えば、10〜120℃(例えば、10〜60℃)、好ましくは15〜100℃(例えば、15〜50℃)、さらに好ましくは20〜80℃(例えば、20〜40℃)程度であってもよい。冷却時間は、樹脂成分やマトリックス成分の種類、冷却温度等に応じて適宜設定でき、例えば、30秒〜20時間の広い範囲から選択してもよく、例えば、45秒〜10時間、好ましくは1分〜5時間(例えば、1分〜1時間)、さらに好ましくは1.5〜30分程度であってもよい。
また、樹脂成分とマトリックス成分との相溶性、混練条件(例えば、混練時間、混練温度など)、成形加工温度、冷却条件(例えば、冷却時間、冷却温度など)などを調整することにより、分散相(又は粒子、又は熱処理された粒子)の平均粒子径を変化させたり、粒度分布幅をさらに狭めることもできる。
このようにして得られた分散体は、マトリックス成分(C)が、海島構造における連続相を形成すると共に、樹脂成分(A)で構成された分散相が独立して分散相を形成した相分離構造を有している。
前記分散体(又は粒子、又は熱処理された粒子)において、分散相(又は粒子、又は熱処理された粒子)の平均粒子径(例えば、数平均粒子径)は、特に制限されず、用途に応じて0.1μm〜1mm(例えば、0.1〜800μm)程度の範囲から選択でき、例えば、0.1〜500μm、好ましくは0.1〜100μm(例えば、0.2〜80μm)、さらに好ましくは0.3〜70μm(例えば、0.5〜50μm)、特に0.7〜30μm、通常1〜40μm(例えば、1〜20μm)程度であってもよい。また、分散相(又は粒子、又は熱処理された粒子)の平均粒子径は、用途に応じて、例えば、0.1〜15μm(例えば、0.2〜12μm)、好ましくは0.5〜10μm(例えば、1〜8μm)程度であってもよい。
本発明では、分散相(又は粒子)の粒子サイズを均一にして最終的に得られる熱処理された粒子の粒度分布を小さくできる。分散相(又は粒子)の平均粒子径の変動係数(%)([粒子径の標準偏差/平均粒子径]×100)は、例えば、60以下(例えば5〜60程度)、好ましくは55以下(例えば、5〜55程度)、さらに好ましくは50以下(例えば、10〜50程度)であってもよい。
また、本発明の粒子の形状は、粒子状であればよく、例えば、球状、楕円体状、多角体状、角柱状、円柱状、棒状、不定形状などであってもよい。好ましい粒子の形状は、球状である。球状粒子には、真球状に限らず、例えば、長径と短径との長さ比が、例えば、長径/短径=1.5/1〜1/1程度である形状も含まれる。長径と短径との長さ比は、好ましくは長径/短径=1.3/1〜1/1(例えば、1.2/1〜1/1)、さらに好ましくは1.1/1〜1/1程度であってもよい。
そして、このような粒子は、熱処理する前の粒子として、分散体からマトリックス成分を速やかに溶出又は抽出することにより、前記分散相(樹脂成分を含む分散相)から得ることができる。
[粒子の製造方法]
本発明では、前記分散体(例えば、予備成形体)から、マトリックス成分(C)を除去し、樹脂成分(A)で構成された粒子(樹脂粒子)を製造し、この粒子を樹脂成分(A)のガラス転移点温度以上で熱処理することにより粒子を製造する。
マトリックス成分の除去方法は、マトリックス成分を除去できる限り限定されないが、通常、前記分散体から、マトリックス成分を溶出する場合が多い。マトリックス成分(C)の溶出(又は洗浄)に用いる溶媒は、分散相を溶解せず、かつマトリックス成分を溶解可能な溶媒であればよく、マトリックス成分の種類に応じて適宜選択できる。特に、マトリックス成分が、水溶性である場合には、溶出のための溶媒として、水性溶媒(又は水性媒体)、例えば、水、水溶性溶媒[例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、エーテル類(セロソルブ、ブチルセロソルブなど)など]などを用いることができる。これらの水性溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。環境への負荷が少なく、工業コストを低減できるため、溶出溶媒として水(特に水単独)を用いるのが好ましい。
マトリックス成分(C)の溶出は、慣用の方法、例えば、前記分散体(又は予備成形体)を、前記溶媒(特に、水性溶媒)中に浸漬、分散して、マトリックス成分を溶出または洗浄(溶媒に移行)することにより行うことができる。前記分散体(又は予備成形体)を溶媒中に浸漬すると、分散体のマトリックスを形成するマトリックス成分が徐々に溶出し、分散相(又は粒子又はケーク)が、溶出液中に分散される。マトリックス成分の分散及び溶出を促進するため、適宜、撹拌などを行ってもよい。
マトリックス成分は、例えば、加圧下において、溶出させてもよいが、通常、常圧下(例えば、10万Pa程度)又は減圧下において溶出できる。また、マトリックス成分の溶出温度は、樹脂成分及びマトリックス成分の種類に応じて、適宜設定することができ、通常、樹脂成分の融点未満の温度、例えば10〜100℃、好ましくは25〜90℃、さらに好ましくは30〜80℃(例えば、40〜80℃)程度である。特に、マトリックス成分としてのオリゴ糖(又は少なくともオリゴ糖で構成されたマトリックス成分)は、水性溶媒(特に水)に易溶であるため、大量の水性溶媒を必要としない。また、オリゴ糖は、低分子量であるため、得られる溶出液の粘度も低く、容易に回収できる。
樹脂粒子は、慣用の分離(回収)方法、例えば、濾過、遠心分離などを用いて前記粒子が分散された分散液から回収できる。得られた樹脂粒子中には、マトリックス成分が実質的に残留していないことが望ましいが、例えば、洗浄過程のコスト削減などの点から、マトリックス成分が粒子に少量残存していても、得られた粒子に与える悪影響は小さく、特に、オリゴ糖で構成されたマトリックス成分は天然物由来の化合物(食品又は食品添加物なども含む)であるため、安全性も高い。なお、樹脂粒子におけるマトリックス成分(C)の割合は、例えば、3重量%以下であってもよい。
なお、溶媒で溶出又は抽出されたマトリックス成分は、慣用の分離手段(例えば、蒸留、濃縮、再結晶、乾燥(フリーズドライ)など)を用いて回収できる。
(熱処理)
本発明では、このようにして得られた樹脂粒子を熱処理することにより粒子を製造する。熱処理は、樹脂粒子を構成する樹脂成分(A)のガラス転移点温度以上で行えば良いが、そのガラス転移点温度あるいは樹脂成分(A)の融点などを勘案し、かつ粒子製造工程におけるどの段階で熱処理を行うかを考慮して、適切な温度を選定することが出来る。
熱処理を上記分散体よりマトリックス成分(C)を溶出して回収した粒子に対して行う場合は、熱処理による粒子同士の融着を防ぐ必要があり、例えば熱処理温度は、樹脂成分(A)のガラス転移点温度以上で、かつ樹脂成分(A)の融点未満であり、好ましくは樹脂成分(A)のガラス転移点温度以上で、かつ樹脂成分(A)の融点より5℃以上低い温度、さらに好ましくは樹脂成分(A)のガラス転移点温度以上で、かつ樹脂成分(A)の融点より10℃以上低い程度である。この熱処理する温度は、上記の通り粒子に融着の有無により制限される。融着が生じない温度で熱処理をする必要がある。
熱処理を上記分散体を得た後に行い、熱処理後に上記処理により分散体よりマトリックス成分(C)を溶出して樹脂粒子を回収する場合は、マトリックス成分(C)の存在により粒子同士の融着を抑制できることから、マトリックス成分(C)の粘度が下がり過ぎない範囲で熱処理温度を高くしても良い。その場合、例えば熱処理温度の上限は、樹脂成分(A)の融点であり例えば熱処理を樹脂成分(A)の融点よりわずかに低い温度(例えば樹脂成分(A)の融点より2℃程度低い温度)で長時間行うことにより、粒子中の結晶サイズを大きくすることができる場合もある。
熱処理を行う時間は、熱処理温度と同様に樹脂成分(A)の諸物性や、あるいは粒子の製造効率などを考慮して任意に選択することが出来るが、発明の効果を十分に発揮させることを勘案すると、例えば30分以上、好ましくは60分以上(例えば75分)、さらに好ましくは90分以上(例えば120分)である。熱処理工程においては、熱処理温度に応じて融解と結晶化が進行する。即ち、熱処理温度に以下の融解温度である微小結晶は融解し、熱処理温度に応じた融解温度を持つ結晶に再構成される。このため、熱処理温度が高いほど、再構成される結晶の融解熱量は大きくなり、即ち形成される結晶核は大きくなり、微粒子の性状の安定化に寄与する。一方、本発明微粒子の性状の安定性はこの熱処理温度に依存し、熱処理温度よりも高い温度に晒された場合には性状は変化する。この意味でも熱処理温度は高い方が好ましい。
なお、熱処理を上記分散体よりマトリックス成分(C)を溶出して回収した粒子に対して行う場合、熱処理工程は、粒子の乾燥工程を兼ねても良い。
なお、本発明粒子は、必要に応じて、分級などの手段により、粒子サイズを揃えてもよい。分級は、熱処理を行う前の粒子に対して行っても、熱処理を施した後の粒子に対して行っても良い。
本発明では、樹脂の種類や結晶化度に応じて、種々の機能を有効に樹脂粒子に付与できる。
例えば、本発明の粒子は高温での処理を経ても粒子の状態(例えば結晶性)が変化しないことを利用し、二次加工工程においてホモジナイズなどの高温処理過程を経る用途に用いることが出来る。これらの用途としては、例えば化粧品用途や塗料用途などが上げられる。さらにこれらの特性は、粒子は倉庫など環境が著しく変化する環境下で保存、使用する際に有用である。
また、本発明の粒子は、特定の樹脂成分(例えばポリアミド系)では、熱処理により詳細な理由は不明であるが、表面の硬度の変化や、表面形状の変化などの理由によって、滑り性等の表面特性が変化する。熱処理によって滑り性が向上した粒子は例えば化粧品用途などに好適である。
さらに本発明の粒子は、結晶性が安定していることから、例えばトナー用途や、選択的レーザー焼結法などのレーザーを用いた加工などにおける加熱による融解挙動をより精密滑安定に制御できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1〜4 ブラベンダー(東洋精機(株)製、ラボプラストミル)を用いて、表1に示す組成で、樹脂成分(A)及びマトリックス成分(C)をブラベンダー(東洋精機(株)製、ラボプラストミル)を用いて、表1に示す混練温度および回転速度50rpmで10分間溶融混合(溶融混練)し、冷却して塊状の分散体を得たのち、約5mm角に裁断した。
得られた分散体(裁断物)を、25℃の純水中に浸漬し、樹脂粒子の懸濁溶液を得た。メンブレン膜(孔径0.45μm,ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、前記懸濁液から不溶分を濾別し樹脂の微粒子を回収した。回収した微粒子を微粒子に対して重量比で20倍の蒸留水中に分散し、超音波槽において5分間超音波処理して懸濁液を得た。その後、再びメンブレン膜(孔径0.45μm,ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、前記懸濁液から不溶分を濾別し、樹脂粒子を回収した。
回収した樹脂粒子を、熱風乾燥機中に放置して、35℃で24時間乾燥し、その後、メノウ乳鉢とすり棒とを用いて、目視で凝集した部分がなくなるまで粉砕した。
続いて、得られた樹脂粒子を、表1に示す条件で乾燥機中にて、アニール処理を行った。得られた樹脂粒子の各特性を表1に示す。なお、各特性は、下記に示す方法で評価又は測定した。
Figure 2007291168
比較例1 最後に得られる樹脂粒子のアニール処理を行わないこと以外は、実施例1〜4と同様にして樹脂粒子を得た。なお、各特性は、下記に示す方法で評価又は測定した。
実施例5 実施例2の粒子を150℃で2時間熱処理し、熱処理前後の粒子の融点及び融解熱を測定し、|熱処理前の融点/熱処理後の融点−1|×100、|熱処理前の融解熱/熱処理後の融解熱−1|×100をそれぞれ、融点及び融解熱の変化率とした。結果を表2に示す。
Figure 2007291168
比較例2 比較例1の粒子を用いた以外は実施例5と同様の操作、算出を行った。結果を表2に示す。
(樹脂成分の融点及びガラス転移点温度)
樹脂成分4〜8mgをアルミニウム製のパンに取り、アルミニウム製の蓋をして示差走査熱量計(DSC)測定に供した。以下の測定条件にて測定を行い2回目の昇温時に観測された吸熱ピークのピークトップ温度を、樹脂成分の融点とした。樹脂の種類や状態によっては微結晶の存在に起因して主たる融解ピークより低い温度に吸熱量の小さいピークが現れる場合があるが、この場合は、主融解ピークのピークトップ温度を融点とした。また、結晶融解の吸熱ピークより低い温度に現れる吸熱側への変曲点(オンセット温度)を以って樹脂成分のガラス転移点温度とした。
使用機器:セイコーインスツル(株)製DSC6200R
昇温速度:20℃/分
降温速度:20℃/分
測定温度域:23〜220℃
窒素還流:40ml/分

(樹脂粒子の融点及び吸熱量)
樹脂粒子4〜8mgをアルミニウム製のパンに取り、アルミニウム製の蓋をして示差走査熱量計(DSC)測定に供した。以下の測定条件にて測定を行い1回目の昇温時に観測された吸熱ピークのピークトップ温度を、樹脂成分の融点とし、吸熱ピークの面積より吸熱量を算出して、融解熱量とした。樹脂粒子を構成する樹脂成分の種類や状態によっては微結晶の存在に起因して主たる融解ピークより低い温度に吸熱量の小さいピークが現れる場合があるが、この場合は、主融解ピークのピークトップ温度を融点とし、融解熱量は主ピークと微結晶に起因するピーク面積より合算して算出した。
使用機器:セイコーインスツル(株)製DSC6200R
昇温速度:20℃/分
測定温度域:23〜220℃
窒素還流:40ml/分
(粒子の外観および平均粒子径)
得られた粒子を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、FE−SEM、JSM−6700F)により観察し、表面形状及び全体形状の写真を得た。得られた走査型電子顕微鏡写真を用い、写真上に少なくとも200個の粒子が含まれるように任意のサイズの長方形を描き、その長方形内に存在する全粒子の真球換算時の粒子径を採寸した。得られた少なくとも200個の粒子径より、体積平均粒子径および数平均粒子径を得た。
(粒子の凝集力及び伸展性)
得られた樹脂粒子1gを、直径20mmの円状の型枠を用いて円柱状のタブレット(直径20mm、高さ3〜5mm)に成形した。成形は23℃で行い、油圧式の手動ポンプを用い、圧力60MPaまで加圧後2分間静置することによりタブレットを得た。
得られたタブレットを用い、引張圧縮試験機(テンシロンUCT−5、東洋精機(株)製)を用い、圧縮試験時の歪み−応力曲線を得た。圧縮試験は、直径250mmのステンレス製の台座上にタブレットを置き、圧縮冶具として直径250mmのアルミニウム製の円盤、最大荷重500kgf(500×9.8N)のロードセルを用い、圧縮速度1mm/分、サンプリングレート1μmの条件で測定を行った。
上記測定により採取した歪み−応力曲線より下記数値を算出し、粒子の凝集力及び伸展性の指標とした。
粒子の凝集力:
歪み−応力曲線上で、応力が上昇から下降に移行する最初の点を上降伏点とし、このときの応力(上降伏点応力)をタブレットの降伏点、すなわち凝集が崩れ粒子の流動が始まる点として、粒子の凝集力の指標の一つとして用いた。また、上降伏点に至るまでの、歪み応力曲線の直線部分の傾き(見かけの弾性率)より、下記に示す式を用いて体積弾性率を算出し、粒子の凝集力の別の指標とした。
体積弾性率K=E(*)×L0/A
(式中、E(*)は見かけの弾性率、L0はタブレットの厚み(mm)、Aはタブレットの底面積(mm2)を示す。)
粒子の伸展性:
上記の上降伏点以降において、応力が最も小さくなる点を下降伏点とし、このときの応力(下降伏点応力)を、粒子を流動させるときに要する初期応力として、粒子の伸展性の指標として用いた。
なお、実施例及び比較例では、下記の成分を用いた。
(A)樹脂
樹脂1:ナイロン12樹脂(ダイセル・デグサ(株)製、ダイアミドL1640、ガラス転移点温度43℃、融点178℃)
(C)マトリックス成分
(C1)オリゴ糖 C1−1:デンプン糖(東和化成工業(株)製、還元デンプン糖化物PO−10、50%水溶液粘度 0.55Pa・sec)
(C2)水溶性可塑化成分 C2−1:糖アルコール ソルビトール(東和化成工業(株)製、ソルビット、融点 103℃)。

Claims (6)

  1. 溶融可能な結晶性樹脂成分(A)からなる粒子を、該結晶性樹脂成分(A)のガラス転移点温度以上かつ融点以下の温度で熱処理することにより得られる粒子。
  2. 樹脂成分(A)が、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる請求項1記載の粒子。
  3. 結晶性樹脂成分(A)からなる分散相が、マトリックス成分(C)で構成されたマトリックスに分散している分散体から、マトリックス成分(C)を溶出する方法より得られる請求項1記載の粒子。
  4. マトリックス成分(C)が、少なくともオリゴ糖で構成されている請求項4記載の粒子。
  5. 平均粒子径が0.1〜100μmである請求項1記載の粒子。
  6. 粒子の示差熱量分析における結晶性樹脂成分(A)に由来する融解熱量が、熱処理しない粒子の該融解熱量と比較して5%以下の変化率である請求項1記載の粒子。
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