JP2007119610A - 液晶ポリエステル樹脂組成物及び該樹脂組成物から得られるフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた屈曲性を有し且つ寸法安定性に優れ、銅張積層板の作成時にカール抑制性が高い液晶ポリエステルフィルムを得ることができる液晶ポリエステル樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた液晶ポリエステルフィルム、該フィルムの製造方法、該フィルムを有する屈曲性が高く且つカールが少ない銅張積層板、該フィルムを有するフレキシブルプリント配線板の提供。
【解決手段】非プロトン性溶媒、特定の構造を有する液晶ポリエステル樹脂、該液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して0.001〜5重量部の層状無機化合物を含有することを特徴とする液晶ポリエステル樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた液晶ポリエステルフィルム、該フィルムの製造方法、該フィルムを有する屈曲性が高く且つカールが少ない銅張積層板、該フィルムを有するフレキシブルプリント配線板。

【選択図】なし

Description

本発明は、液晶ポリエステル樹脂組成物、該組成物から得られるフィルム、該フィルムの製造方法、該フィルムを有する銅張積層板及びフレキシブルプリント配線板に関するものである。
近年、通信用・民生用の電子機器の小型化、軽量化、高密度化が進んでいる。このような状況下、フレキシブルプリント配線基板は、可とう性を有し、空間的な自由度が大きく、立体的高密度の実装が可能であるため、電子機器への配線、ケーブル、或いはコネクター機能を付与した複合部品としてもその用途が拡大しつつある。
フレキシブルプリント配線板は電気絶縁性のベースフィルムと金属箔とを積層一体化し回路を作製したもので、ベースフィルムには、寸法安定性がよいこと、銅張積層板のカールが少ないこと、高い屈曲性を有することが求められている。
上記のようなフィルムを提供するため、ハロゲン置換フェノール類を含有する溶媒、液晶ポリエステル、カップリング剤及び無機フィラーを含有する組成物が提案され(特許文献1)、特に発明の実施の形態において、チタン酸バリウム、酸化チタン、シリカなど各種無機フィラーを、液晶ポリエステル樹脂及び無機フィラーの合計量100重量部に対して通常10〜140重量部含有する芳香族液晶ポリエステル溶液組成物が提案されている。
更に、芳香族ジアミンやアミン由来の構造単位を含む芳香族液晶ポリエステルと非プロトン性溶媒とを含有してなる溶液を支持体に流延した後、溶媒を除去して得られる芳香族液晶ポリエステルフィルムが提案されている(特許文献2)。
特開2004-285301 特開2004-315678
特許文献1に記載のフィルムは電気特性に優れ、機械的強度にも優れたフィルムであるが、フィルムの屈曲性においてはより一層の向上が望まれており、また、特許文献2に記載のフィルムは、腐食性が低く、取り扱いが容易で異方性が小さいという特性を有しているが、熱膨張などの寸法安定性及び銅張積層板のカールの抑制性においては、より優れたものが求められていた。
本発明の目的は、優れた屈曲性を有し且つ寸法安定性に優れ、銅張積層板の作成時にカール抑制性が高い液晶ポリエステルフィルムを得ることができる液晶ポリエステル樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた液晶ポリエステルフィルム、該フィルムの製造方法、該フィルムを有する屈曲性が高く且つカールが少ない銅張積層板、該フィルムを有するフレキシブルプリント配線板を提供することである。
即ち、本発明は
1.非プロトン性溶媒、芳香族ジアミン由来の構造単位およびフェノール性水酸基を有する芳香族アミン由来の構造単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の構造単位を全構造単位に対して10〜35モル%含む液晶ポリエステル樹脂、該液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して0.001〜5重量部の層状無機化合物を含有することを特徴とする液晶ポリエステル樹脂組成物、
2.非プロトン性溶媒100重量部に対して液晶ポリエステル樹脂が0.01〜100重量部であることを特徴とする上記1項記載の液晶ポリエステル樹脂組成物、
3.更に、液晶ポリエステル樹脂が、芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構造単位及び芳香族ジカルボン酸由来の構造単位を含むことを特徴とする上記1又は2項記載の液晶ポリエステル樹脂組成物、
4.液晶ポリエステル樹脂が以下の式(1)、(2)および(3)で示される構造単位を含むことを特徴とする上記1〜3項のいずれか記載の液晶ポリエステル樹脂組成物、
(1) −O−Ar1−CO−
(2) −CO−Ar2−CO−
(3) ―X−Ar3−Y−
(式中、Ar1は、1,4−フェニレン、2,6−ナフチレンまたは4,4'−ビフェニレンを表わす。Ar2は、1,4−フェニレン、1,3−フェニレンまたは2,6−ナフチレンを表わす。Ar3は、1,4−フェニレンまたは1,3−フェニレンを表し、XはNHを表し、YはOまたはNHを表す。)
5.上記4項において、全構造単位に対して、式(1)で示される構造単位が30〜80モル%、式(2)で示される構造単位が10〜35モル%、式(3)で示される構造単位が10〜35モル%であることを特徴とする上記4項記載の液晶ポリエステル樹脂組成物、
6.上記1〜5項のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂組成物から、非プロトン性溶媒を除去することを特徴とする液晶ポリエステルフィルムの製造方法、
7.上記1〜5項のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂組成物を支持体上に塗布し、液晶ポリエステル樹脂組成物から非プロトン性溶媒を蒸発させることを特徴とする液晶ポリエステルフィルムの製造方法、
8.上記6又は7項に記載される方法で得られることを特徴とする液晶ポリエステルフィルム、
9.上記8項に記載のフィルムを有することを特徴とする銅張積層板及び
10.上記8項に記載のフィルムを有することを特徴とするフレキシブルプリント配線板、
に関するものである。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物から得られるフィルムを銅張積層板またはフレキシブルプリント配線基板に用いると、優れた屈曲性を有し、かつ寸法安定性に優れた銅張積層板又はフレキシブルプリント配線板を得ることができ、また銅張積層板又はフレキシブルプリント配線板の作製時にカールが少ないので、工業的価値が大きい。また、本発明の銅張積層板又はフレキシブルプリント配線板は優れた屈曲性を有し、寸法安定性に優れ、カールが少ない。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、非プロトン性溶媒、芳香族ジアミン由来の構造単位およびフェノール性水酸基を有する芳香族アミン由来の構造単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の構造単位を全構造単位に対して10〜35モル%含む液晶ポリエステル樹脂、該液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して0.001〜5重量部の層状無機化合物を含有することを特徴とする。
本発明に用いられる液晶ポリエステル樹脂は、芳香族ジアミン由来の構造単位およびフェノール性水酸基を有する芳香族アミン由来の構造単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の構造単位を全構造単位に対して10〜35モル%含む液晶ポリエステルであり、更に芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構造単位及び芳香族ジカルボン酸由来の構造単位を含んでいることが好ましい。
ここで液晶ポリエステル樹脂とは、溶融時に光学異方性を示し、450℃以下の温度で異方性溶融体を形成するものであり、構造単位として以下の式(1)、(2)及び(3)で示される構造単位を含んでいるものが好ましい。
(1) −O−Ar1−CO−
(2) −CO−Ar2−CO−
(3) ―X−Ar3−Y−
式中、Ar1は、1,4−フェニレン、2,6−ナフチレンまたは4,4'−ビフェニレンを表わし、Ar2は、1,4−フェニレン、1,3−フェニレンまたは2,6−ナフチレンを表わし、Ar3は、1,4−フェニレンまたは1,3−フェニレンを表わし、XはNHを表し、YはOまたはNHを表わす。
ここで、全構造単位に対して式(1)で示される構造単位が30〜80モル%、式(2)で示される構造単位が10〜35モル%、式(3)で示される構造単位が10〜35モル%であることが好ましい。
式(1)で示される構造単位は、芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構造単位、式(2)で示される構造単位は、芳香族ジカルボン酸由来の構造単位、式(3)で示される構造単位は、芳香族ジアミン由来の構造単位、フェノール性水酸基を有する芳香族アミン由来の構造単位である。本発明には、これらの代わりに、これらのエステルもしくはアミド形成性誘導体を用いてもよい。
カルボン酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、カルボキシル基が、ポリエステルを生成する反応を促進するような、酸塩化物、酸無水物などの反応活性が高い誘導体となっているもの、カルボキシル基が、エステル交換反応によりポリエステルを生成するようなアルコール類やエチレングリコールなどとエステルを形成しているものなどが挙げられる。
フェノール性水酸基のエステル形成性誘導体としては、例えば、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、フェノール性水酸基がカルボン酸類とエステルを形成しているものなどが挙げられる。
アミノ基のアミド形成性誘導体としては、例えば、アミド交換反応によりポリアミドを生成するように、アミノ基がカルボン酸類とアミドを形成しているものなどが挙げられる。
本発明に使用される液晶ポリエステルの繰り返し構造単位としては、下記のものを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
式(1)で示される構造単位としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ−4'−ビフェニルカルボン酸等に由来する構造単位が挙げられ、2種以上の前記構造単位が、全構造単位中に含まれていてもよい。これらの構造単位の中で、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸由来の構造単位を含む液晶ポリエステルを使用することが好ましい。
全構造単位に対して、式(1)で示される構造単位は30〜80モル%であることが好ましく、40〜70モル%であることがより好ましく、45〜65モル%であることがさらに好ましい。式(1)で示される構造単位が多いと溶媒への溶解性が著しく低下する傾向があり、少なすぎると液晶性を示さなくなる傾向がある。
式(2)で示される構造単位としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等に由来する構造単位が挙げられ、2種以上の前記構造単位が、全構造単位中に含まれていてもよい。これらの構造単位の中で、溶媒への溶解性の観点から、イソフタル酸由来の構造単位を含む液晶ポリエステルを使用することが好ましい。
全構造単位に対して、式(2)で表される構造単位は10〜35モル%であることが好ましく、15〜30モル%であることがより好ましく、17.5〜27.5モル%であることがさらに好ましい。式(2)で表される構造単位が多すぎると、液晶性が低下する傾向があり、少ないと溶媒への溶解性が低下する傾向がある。
式(3)で示される構造単位としては、例えば、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル等に由来する構造単位が挙げられ、2種以上の前記構造単位が、全構造単位中に含まれていてもよい。これらの構造単位の中で、反応性の観点から4−アミノフェノール由来の構造単位を含む液晶ポリエステルを使用することが好ましい。
全構造単位に対して、式(3)で示される構造単位は、10〜35モル%であることが好ましく、15〜30モル%であることがより好ましく、17.5〜27.5モル%であることがさらに好ましい。式(3)で示される構造単位が多すぎると、液晶性が低下する傾向があり、少ないと溶媒への溶解性が低下する傾向がある。
式(3)で示される構造単位は式(2)で示される構造単位と実質的に等量用いられることが好ましいが、式(3)で示される構造単位を式(2)で示される構造単位に対して、−10モル%〜+10モル%とすることにより、液晶ポリエステルの重合度を制御することもできる。
本発明で使用される液晶ポリエステルの製造方法は特に限定されないが、例えば、式(1)で示される構造単位に対応する芳香族ヒドロキシカルボン酸、式(3)で示される構成単位に対応するフェノール性水酸基を有する芳香族アミン、芳香族ジアミンのフェノール性水酸基やアミノ基を、過剰量の脂肪酸無水物によりアシル化してアシル化物を得、得られたアシル化物と、式(2)で示される構造単位に対応する芳香族ジカルボン酸とをエステル交換・アミド交換(重縮合)して溶融重合する方法などが挙げられる。
アシル化反応においては、脂肪酸無水物の添加量は、フェノール性水酸基とアミノ基の合計に対して、1.0〜1.2倍当量であることが好ましく、より好ましくは1.05〜1.1倍当量である。脂肪酸無水物の添加量が少なすぎると、エステル交換・アミド交換(重縮合)時にアシル化物や原料モノマーなどが昇華し、反応系が閉塞し易い傾向があり、また、多すぎると、得られる液晶ポリエステルの着色が著しくなる傾向がある。
アシル化反応は、130〜180℃で5分間〜10時間反応させることが好ましく、140〜160℃で10分間〜3時間反応させることがより好ましい。
アシル化反応に使用される脂肪酸無水物は,特に限定されないが、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2エチルヘキサン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水β−ブロモプロピオン酸などが挙げられ、これらは2種類以上を混合して用いてもよい。価格と取り扱い性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸または無水イソ酪酸が好ましく、無水酢酸がより好ましい。
エステル交換・アミド交換(重縮合)においては、アシル化物のアシル基がカルボキシル基の0.8〜1.2倍当量であることが好ましい。
エステル交換・アミド交換(重縮合)は、400℃まで0.1〜50℃/分の割合で昇温しながら行うことが好ましく、350℃まで0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら行うことがより好ましい。
アシル化物とカルボン酸とをエステル交換・アミド交換(重縮合)させる際、平衡を移動させるため、副生する脂肪酸と未反応の脂肪酸無水物は、蒸発させるなどして系外へ留去することが好ましい。
なお、アシル化反応、エステル交換・アミド交換(重縮合)は、触媒の存在下に行ってもよい。該触媒としては、従来からポリエステルの重合用触媒として公知のものを使用することができ、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモンなどの金属塩触媒、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾールなどの有機化合物触媒などを挙げることができる。
これらの触媒の中で、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾールなどの窒素原子を2個以上含む複素環状化合物が好ましく使用される(特開2002−146003号公報参照)。
該触媒は、通常、モノマー類の投入時に投入され、アシル化後も除去することは必ずしも必要ではなく、該触媒を除去しない場合にはそのままエステル交換を行うことができる。
エステル交換・アミド交換による重縮合は、通常、溶融重合により行なわれるが、溶融重合と固相重合とを併用してもよい。固相重合は、溶融重合工程からポリマーを抜き出し、その後、粉砕してパウダー状もしくはフレーク状にした後、公知の固相重合方法により行うことが好ましい。具体的には、例えば、窒素などの不活性雰囲気下、20〜350℃で、1〜30時間固相状態で熱処理する方法などが挙げられる。固相重合は、攪拌しながらでも、攪拌することなく静置した状態で行ってもよい。なお適当な攪拌機構を備えることにより溶融重合槽と固相重合槽とを同一の反応槽とすることもできる。固相重合後、得られた液晶性ポリエステルは、公知の方法によりペレット化し、成形してもよい。
液晶ポリエステルの製造は、例えば、回分装置、連続装置等を用いて行うことができる。
本発明に用いられる層状無機化合物としては、層状構造を持ち、層間に他物質を取り入れうる無機化合物であればいずれであってもよく、例えば、2:1型層状粘土鉱物、1:1型層状粘土鉱物等の層状粘土鉱物、黒鉛等のグラファイト等が挙げられる。1:1型層状粘土鉱物としては、例えば、ケイ素原子に酸素原子が4配位した四面体層と、Mg、Al等の原子を中心として酸素原子が六配位している八面体層とが1枚ずつ層状になっている二層構造の鉱物が挙げられ、2:1型層状粘土鉱物としては、例えば、二枚の四面体層の間に八面体層が挟まった構造の鉱物が挙げられる。
ここで2:1型層状粘土鉱物としては、具体的には、例えば、タルク;バーミキュライト;モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、酸性白土等のスメクタイト;白雲母、金雲母、セリサイト、パラゴナイト、イライト、黒雲母、クリンナイト、マーガライト等の雲母等が挙げられる。1:1型層状粘土鉱物としては、カオリナイト、ディッカナイト、ナクライト、リザーダイト、アンチゴライト、ハロイサイト、クリソタイル、アメサイト等が挙げられる。
上記層状無機化合物の中でも、寸法安定性の観点から好ましくは2:1型層状粘土鉱物であり、より好ましくはスメクタイトであり、更に好ましくはモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライトである。特に好ましくはモンモリロナイトである。
ここで層状無機化合物としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量の少ないものが用いられ、必要に応じ酸処理などによるアルカリ金属およびアルカリ土類金属の除去処理が行われる。ここでいう酸処理とは、液体の酸の中に層状無機化合物を分散させ、しばらく(好ましくは1分間〜24時間)撹拌し、その後、ろ過により層状無機化合物を回収する処理である。使用する酸は硫酸、硝酸、塩酸、燐酸などの無機酸が用いられ、中でも塩酸または硫酸が好ましい。
本発明に用いられる非プロトン性溶媒としては、例えば、1−クロロブタン、クロロベンゼン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエ-テル系溶媒、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、γ―ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、トリエチルアミン、ピリジンなどのアミン系溶媒、アセトニトリル、サクシノニトリルなどのニトリル系溶媒、N,N'−ジメチルホルムアミド、N,N'−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ系溶媒、ジメチルスルホキシド、スルホランなどのスルフィド系溶媒、ヘキサメチルリン酸アミド、トリn−ブチルリン酸などのリン酸系溶媒などが挙げられる。
これらの中で、ハロゲン原子を含まない溶媒が環境への影響面から好ましく、双極子モーメントが3以上5以下の溶媒が溶解性の観点から好ましい。具体的には、N,N'−ジメチルホルムアミド、N,N'−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒またはγ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒がより好ましく、N,N'−ジメチルホルムアミド、N,N'−ジメチルアセトアミドまたはN−メチルピロリドンがさらに好ましく使用される。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、通常液晶ポリエステル樹脂、層状無機化合物及び非プロトン性溶媒を混合することによって得られる。
本発明液晶ポリエステル樹脂組成物を得る方法としては、例えば[1]層状無機化合物が非プロトン性溶媒に分散した分散溶液に液晶ポリエステル樹脂を溶かす方法、[2]非プロトン性溶媒に液晶ポリエステル樹脂が溶解した液晶ポリエステルワニスに層状無機化合物を添加する方法、[3]一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等で液晶ポリエステル樹脂および層状無機化合物を溶融混練し、ついで非プロトン性溶媒と混合する方法、[4]重合により液晶ポリエステル樹脂を製造する前のプレポリマー状態で層状無機化合物を重合槽に投入した後、重合により液晶ポリエステル樹脂を製造し、該樹脂を次いで非プロトン性溶媒と混合する方法等が挙げられる。
上記[1]、[2]又は[4]の方法で層状無機化合物の液晶ポリエステル樹脂への分散性を向上させるために、必要に応じて層状無機化合物を予めエタノール、メタノールなどのアルコール類とラウリン酸、オレイン酸、クエン酸などの有機酸との混合物溶液に分散させた状態で、液晶ポリエステル樹脂の溶液と混合する方法が必要に応じて用いられる。有機酸の濃度は1〜10規定程度が好ましい。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物には、通常非プロトン性溶媒100重量部に対して液晶ポリエステルが0.01〜100重量部、好ましくは1〜50重量部、更に好ましくは2〜40重量部含有される。液晶ポリエステルの濃度が低すぎると溶液粘度が低すぎて均一な塗工がしにくくなり、逆に高すぎると、高粘度化しやすくなる傾向がある。
作業性や経済性の観点から、非プロトン性溶媒100重量部に対して、液晶ポリエステルが、好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは2〜40重量部となるよう含有されるのが良い。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物には、層状無機化合物が、液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して、0.001重量部〜5重量部であり、好ましくは0.05重量部〜3重量部含有される。層状無機化合物の含有量が多すぎると液晶ポリエステル樹脂の機械的物性が減少し、少なすぎると、物性の改善效果が低い傾向がある。
本発明においては、液晶ポリエステル樹脂組成物を必要に応じて、フィルターなどによってろ過し、組成物中に含まれる微細な異物を除去してもよい。
本発明の液晶ポリエステルフィルムの製造方法としては、上記の方法で得られた液晶ポリエステル樹脂組成物を支持体上に塗布し、非プロトン性溶媒を除去する方法が挙げられる。
支持体上に液晶ポリエステル樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、ローラーコート法、ディップコーター法、スプレイコーター法、カーテンコート法、スロットコート法、スクリーン印刷法等の各種手段が挙げられる。
ここで、非プロトン性溶媒の除去方法は、特に限定されないが、非プロトン性溶媒の蒸発により行うことが好ましい。該溶媒を蒸発させる方法としては、加熱、減圧、通風などの方法が挙げられるが、中でも生産効率、取り扱い性の観点から加熱して蒸発させることが好ましく、通風しつつ加熱して蒸発せしめることがより好ましい。このときの条件としては蒸発させる該溶媒の沸点以上で行うことが好ましい。
加熱温度などは、液晶ポリエステル樹脂と層状無機化合物の組み合わせにもよるが、100℃から200℃の範囲で10分から2時間まで、予備乾燥を行って、200℃から350℃の範囲で10分から4時間まで熱処理を行うのが望ましい。
液晶ポリエステル樹脂組成物を塗布する支持体としては、ガラスや金属板が用いられる。該金属板としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケルなどの板が挙げられる。該支持体として好ましくは、銅箔などの金属板が用いられる。
このような方法で得られたフィルムは、通常、厚さ5〜200μm程度であるが、特に高い絶縁性が要求される場合は、200μm以上に厚くしてもよい。該フィルムの表面は、必要に応じて、研磨や酸、あるいは酸化剤などの薬液、紫外線、プラズマ照射などの処理を行ってもよい。
このようにして得られる液晶ポリエステルフィルムの用途としては、該フィルムを使用してなる銅張積層板、フレキシブルプリント配基板、タグテープ用フィルム等が挙げられる。
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
合成例1
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸 941g(5.0モル)、4−アミノフェノール 273g(2.5モル)、イソフタル酸 415.3g(2.5モル)及び無水酢酸 1123g(11モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。
その後、留出する副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら170分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。得られた固形分は室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下250℃で3時間保持し、固相で重合反応を進めた。得られた粉末は350℃で偏光顕微鏡により液晶相に特有のシュリーレン模様が観察された。
合成例2
合成例1で得られた液晶ポリエステル粉末 80gをN−メチル−2−ピロリドン 920gに加え、160℃に加熱し完全に溶解し褐色透明な溶液を得た。
実施例1
合成例2で製造した組成物溶液50gにモンモリロナイト(Cloisite−30B、Southern Clay Products、USA)0.04gを加え、 室温で混合し、攪拌を行い、本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物を得た。次いで、この組成物を電解銅箔(3EC-VLP,18μm、三井金属(株))の上にフィルムアプリケーターを用いてキャスト後、高温熱風乾燥器で120℃で加熱して溶媒を除去した後、330℃で熱処理して1重量部の層状無機化合物含有液晶ポリエステルの銅張積層板を得た。この銅張積層板をエッチングすることにより25μm厚さの液晶ポリエステルフィルムを得た。
実施例2
合成例2で製造した組成物溶液50gにモンモリロナイト(Cloisite−30B、Southern Clay Products、USA)0.08gを加え、室温で混合し、攪拌を行い、本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物を得た。次いで、この組成物を電解銅箔(3EC-VLP,18μm、三井金属(株))の上にフィルムアプリケーターを用いてキャスト後、高温熱風乾燥器で120℃で加熱して溶媒を除去した後、330℃で熱処理して2重量部の層状無機化合物含有液晶ポリエステルの銅張積層板を得た。この銅張積層板をエッチングすることにより25μm厚さの液晶ポリエステルフィルムを得た。
実施例3
合成例2で製造した組成物溶液50gにモンモリロナイト(Cloisite−30B、Southern Clay Products、USA)0.20gを加え、 室温で混合し、攪拌を行い、本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物を得た。次いで、この組成物を電解銅箔(3EC-VLP,18μm、三井金属(株))の上にフィルムアプリケーターを用いてキャスト後、高温熱風乾燥器で120℃で加熱して溶媒を除去した後、330℃で熱処理して5重量部の層状無機化合物含有液晶ポリエステルの銅張積層板を得た。この銅張積層板をエッチングすることにより25μm厚さの液晶ポリエステルフィルムを得た。
比較例1
合成例2で製造した組成物溶液を電解銅箔(3EC-VLP,18μm、三井金属(株))の上にフィルムアプリケーターを用いてキャスト後、120℃で1時間加熱して溶媒を除去した後、330℃で熱処理して液晶性ポリエステルの 銅張積層板を得た。この銅張積層板をエッチングすることにより25μm厚さの液晶ポリエステルフィルムを得た。
比較例2
合成例2で製造した組成物溶液50gにモンモリロナイト(Cloisite−30B、Southern Clay Products、USA)0.30gを加え、 室温で混合し、攪拌を行い、比較組成物を得た。次いで、この比較組成物を電解銅箔(3EC-VLP,18μm、三井金属(株))の上にフィルムアプリケーターを用いてキャスト後、高温熱風乾燥器で120℃で加熱して溶媒を除去した後、330℃で熱処理して7.5重量部の層状無機化合物含有液晶ポリエステルの銅張積層板を得た。この銅張積層板をエッチングすることにより25μm厚さの液晶ポリエステルフィルムを得た。
比較例3
合成例2で製造した組成物溶液50gにモンモリロナイト(Cloisite−30B、Southern Clay Products、USA)0.40gを加え、 室温で混合し、攪拌を行い、比較組成物を得た。次いで、この比較組成物を電解銅箔(3EC-VLP,18μm、三井金属(株))の上にフィルムアプリケーターを用いてキャスト後、高温熱風乾燥器で120℃で加熱して溶媒を除去した後、330℃で熱処理して10重量部の層状無機化合物含有液晶ポリエステルの銅張積層板を得た。この銅張積層板をエッチングすることにより25μm厚さの液晶ポリエステルフィルムを得た。
比較例4
合成例2で製造した組成物溶液50gにホウ酸アルミニウム無機フィラー(M20C、四国化成(株))0.20gを室温で混合し、攪拌を行い、比較組成物を得た。次いで、この比較組成物を電解銅箔(3EC-VLP,18μm、三井金属(株))の上にフィルムアプリケーターを用いてキャスト後、高温熱風乾燥器で120℃で加熱して溶媒を除去した後、330℃で熱処理して5重量部の無機フィラー含有液晶ポリエステルの銅張積層板を得た。この銅張積層板をエッチングすることにより25μm厚さの無機フィラー含有液晶ポリエステルフィルムを得た。
比較例5
合成例2で製造した組成物溶液50gにホウ酸アルミニウム無機フィラー(M20C、四国化成(株))0.30gを室温で混合し、攪拌を行い、比較組成物を得た。次いで、この比較組成物を電解銅箔(3EC-VLP,18μm、三井金属(株))の上にフィルムアプリケーターを用いてキャスト後、高温熱風乾燥器で120℃で加熱して溶媒を除去した後、330℃で熱処理して7.5重量部の無機フィラー含有液晶ポリエステルの銅張積層板を得た。この銅張積層板をエッチングすることにより25μm厚さの無機フィラー含有液晶ポリエステルフィルムを得た。
以上、得られた銅張積層板およびフィルムとにつき、次に記述した方法により性能を測定し、得られた結果を表1に示した。
(1)線膨張率(α)
セイコー電子株式会社製TMAを用いて、窒素気流下、5℃/分で昇温し、50〜100℃の線膨張係数を測定した。引き取り方向をMD、その直角方向をTDとした。
(2)屈曲性
東洋精機製作所製MIT屈曲試験機(JIS-P8815の規則に準じた)を用いて、フィルムの屈曲性を測定した。折り曲げ角135°(R=0.38)でフィルムが破断するまでの屈曲回数が3万回以上は○、1万〜3万回を△、1万回以下を×とした。
(3) 銅張積層板のカール性
330℃1時間でアニールして得られた銅張積層板のカール性を測定した。曲率半径200mm以上を○、100〜200mmを△、100mm以下を×とした。
Figure 2007119610

Claims (10)

  1. 非プロトン性溶媒、芳香族ジアミン由来の構造単位およびフェノール性水酸基を有する芳香族アミン由来の構造単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の構造単位を全構造単位に対して10〜35モル%含む液晶ポリエステル樹脂、該液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して0.001〜5重量部の層状無機化合物を含有することを特徴とする液晶ポリエステル樹脂組成物。
  2. 非プロトン性溶媒100重量部に対して液晶ポリエステル樹脂が0.01〜100重量部であることを特徴とする請求項1記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
  3. 更に、液晶ポリエステル樹脂が、芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構造単位及び芳香族ジカルボン酸由来の構造単位を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
  4. 液晶ポリエステル樹脂が以下の式(1)、(2)および(3)で示される構造単位を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
    (1) −O−Ar1−CO−
    (2) −CO−Ar2−CO−
    (3) ―X−Ar3−Y−
    (式中、Ar1は、1,4−フェニレン、2,6−ナフチレンまたは4,4'−ビフェニレンを表わす。Ar2は、1,4−フェニレン、1,3−フェニレンまたは2,6−ナフチレンを表わす。Ar3は、1,4−フェニレンまたは1,3−フェニレンを表し、XはNHを表し、YはOまたはNHを表す。)
  5. 請求項4において、全構造単位に対して、式(1)で示される構造単位が30〜80モル%、式(2)で示される構造単位が10〜35モル%、式(3)で示される構造単位が10〜35モル%であることを特徴とする請求項4記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂組成物から、非プロトン性溶媒を除去することを特徴とする液晶ポリエステルフィルムの製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂組成物を支持体上に塗布し、液晶ポリエステル樹脂組成物から非プロトン性溶媒を蒸発させることを特徴とする液晶ポリエステルフィルムの製造方法。
  8. 請求項6又は7に記載される方法で得られることを特徴とする液晶ポリエステルフィルム。
  9. 請求項8に記載のフィルムを有することを特徴とする銅張積層板。
  10. 請求項8に記載のフィルムを有することを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
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