JP2007190906A - 銅張積層板から発生するガスの低減方法、並びに、ディスクドライブ用銅張積層板及びフレキシブルプリント配線板 - Google Patents

銅張積層板から発生するガスの低減方法、並びに、ディスクドライブ用銅張積層板及びフレキシブルプリント配線板 Download PDF

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Abstract

【課題】簡便的に決定された温度条件での熱処理を行うことで、高温環境下において樹脂層から発生するガスを十分に低減する方法、並びに、この方法により高温環境下において発生するガス量が十分に低減化されたディスクドライブ用銅張積層板及びフレキシブルプリント配線板を提供すること。
【解決手段】液晶ポリエステルを含有する樹脂層と、この樹脂層上に設けられた銅箔とを備える銅張積層板から発生するガスの低減方法であって、樹脂層の破断点引張強さが110MPa以上となる温度で銅張積層板を加熱する工程を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は銅張積層板から発生するガスの低減方法、並びに、ディスクドライブ用銅張積層板及びフレキシブルプリント配線板に関する。
近年、電子機器の小型化や軽量化に伴い、内蔵される電子部品を実装する基板としてフレキシブルプリント配線板(以下、場合により「FPC」と呼ぶ。)が多用されている。FPCは、一般に、樹脂層とその表面に設けられた銅箔とからなる銅張積層板から製造される。すなわち、銅張積層板の銅箔を導体パターンに形成し、必要に応じて、これを覆うカバーレイフィルムを更に積層することで得ることができる。
FPCを製造する工程においては、溶剤や接着剤などの有機物が使用される。例えば、樹脂層を構成する材料としてポリイミドを使用する場合、樹脂層の形成にはポリイミド前駆体(ポリアミック酸など)の溶液が使用されるため、これを調製するための溶剤が用いられる。また、FPCを構成する各層を貼り合わせる工程では接着剤が用いられる場合がある。さらに、場合により、製造されたFPCを洗浄する工程において溶剤が使用される。
ところで、FPCは、光ディスク、磁気ディスク、又はハードディスク等のコンピューターの外部記憶装置のディスクドライブにおいて、その内部部品として使用されている。稼動時のディスクドライブの内部は、高温となるため、FPCを製造する工程において用いられた接着剤や溶剤の残留成分がガス化するおそれがある。これらの成分がガス化した場合、発生したガスがディスク表面に付着し、付着したガスが粉塵などの異物の吸着を促進して、読み取り不良を引き起こすという問題が生じていた。
100℃程度の高温環境下において使用されるFPCから発生するガスの量を少なくする方法としては、例えば、特許文献1記載の方法が知られている。特許文献1記載の方法は、FPCに用いられた接着剤や樹脂の溶剤を予め除去するため、製造したFPCを温度300℃以下、保持時間10分以上の条件で熱処理することを特徴としている。
特開平7−307548号公報
特許文献1には、樹脂層を構成する材料としてポリイミドを使用し、FPCを製造する工程で使用した接着剤や溶剤の残留成分を除去する方法が具体的に記載されている。ところが、本発明者らが、樹脂層を構成する材料としてポリイミドの代わりに液晶ポリエステルを使用してFPCを製造し、高温環境下にて当該FPCから発生するガスの原因物質について鋭意検討したところ、ガスの発生は、接着剤や溶剤の残留成分よりも、主としてFPCの樹脂層に含まれる低沸点化合物に起因しているとの知見を得た。
ところで、樹脂層に含まれる低沸点化合物を熱処理によって除去するには、樹脂層を構成する材料の熱特性に応じて熱処理温度を決定する必要がある。熱処理温度が高すぎると材料が熱分解してしまい、他方、熱処理温度が低いと低沸点化合物の除去が不十分となるためである。従来、好適な熱処理温度を決定するため、種々の温度条件にて銅張積層板の熱処理を行い、熱処理後の銅張積層板から発生するガス量(以下、「脱ガス量」という。)の測定を数多く行う必要があった。
そこで、本発明は、簡便的に決定された温度条件での熱処理を行うことで、高温環境下において樹脂層から発生するガスを十分に低減する方法、並びに、この方法により高温環境下において発生するガス量が十分に低減化されたディスクドライブ用銅張積層板及びフレキシブルプリント配線板を提供することを目的とする。
本発明者らは、液晶ポリエステルを含有する樹脂層の熱処理後の特性を種々測定し、高温環境下において発生するガス量と相関関係がある特性について検討した。その結果、熱処理後の樹脂層の破断点引張強さが、発生するガス量と相関関係を有していることを見出し、熱処理後の破断点引張強さが所定値以上となる温度で熱処理した場合に発生するガスを十分に低減できることを見出した。
すなわち、本発明は、液晶ポリエステルを含有する樹脂層と、この樹脂層上に設けられた銅箔とを備える銅張積層板から発生するガスの低減方法であって、樹脂層の破断点引張強さが110MPa以上となる温度で銅張積層板を加熱する工程を備えるものである。
本発明に係るガスの低減方法によれば、熱処理後の樹脂層の破断点引張強さが110MPa以上となる温度で銅張積層板を熱処理することで、樹脂層に含まれている低沸点化合物のみならず、製造時に使用した接着剤や溶剤の残留成分に起因するガスの発生を十分に低減することができる。また、本発明によれば、測定が比較的容易な破断点引張強さを実測することで熱処理温度を決定することができ、測定に時間を要する、高温環境下におけるガスの発生量の測定回数を必要最低限とすることができる。
本発明において使用する液晶ポリエステルとしては、−Ar−、−Ar−及び−Ar−の構造単位が、−COO−(又は−OCO−)、−CONH−(又は−NHCO−)で連結した液晶ポリエステルを用いることができる。特に、以下の式(i)、(ii)及び(iii)で示される構造単位を含み、全構造単位に対して、式(i)で示される構造単位が30〜80モル%、式(ii)で示される構造単位が10〜35モル%、式(iii)で示される構造単位が10〜35モル%であるものが好ましい。
(i) −O−Ar−CO−
(ii) −CO−Ar−CO−
(iii)−X−Ar−Y−
ここで、上記式中、Arは、フェニレン、ナフチレン又はビフェニレンを表し、Ar及びArは、それぞれ独立に、下記式(1)で表される2価の基を表す。X及びYは、同一又は異なりO又はNHを表わす。なお、Ar、Ar及びArの芳香環に結合している水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。
Figure 2007190906
なお、式(1)中、Arはフェニレン又はナフチレンであり、ZはO,S,CO、SO、炭素数1〜4のアルキレン基、O(CHO[ただし、mは1〜4の整数]又は単結合を表し、nは0以上3以下の整数を表す。Arが複数ある場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよく、Zが複数ある場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。
上記液晶ポリエステルは気体もしくは液体の吸着性が低いという性質を有しているため、銅張積層板を熱処理した後の工程でガス化した低沸点化合物や溶剤に曝されたとしても、これらの吸着量を十分に低くすることができる。
とりわけ、本発明で用いる液晶ポリエステルは、上記式(iii)で示される構造単位のX及び/又はYがNHである構造単位、すなわち、芳香族ジアミン由来の構造単位及び/又は水酸基を有する芳香族アミン由来の構造単位を全構造単位に対して10〜35モル%含有ものが好ましい。
上記液晶ポリエステルは溶媒に対する溶解性が良好であるため、溶媒に液晶ポリエステルを溶解させることにより、液晶ポリエステルの溶液を容易に調製することができる。当該溶液を所定の箇所に塗布した後、溶媒を除去することで液晶ポリエステルを含有する樹脂層を容易に形成することができる。
また、樹脂層は、無機フィラーを含有してもよい。樹脂層が無機フィラーを含有するものであると、樹脂層の弾性率、寸法精度などの機械的特性及び電気絶縁性、誘電特性などの電気特性をより高めることができる。さらに、樹脂層に無機フィラーを含有させることで樹脂層から発生するガス量を低減できるという利点がある。高温環境下においてガスを発生し得る液晶ポリエステルの体積が相対的に減少するためである。
本発明のディスクドライブ用銅張積層板は、上記本発明に係るガスの低減方法により、発生するガスが低減化された銅張積層板であって、液晶ポリエステルを含有し且つ破断点引張強さが110MPa以上である樹脂層と、この樹脂層上に設けられた銅箔とを備える。
本発明のディスクドライブ用銅張積層板によれば、高温環境下において発生するガス量を十分に低減することができる。さらに、本発明の銅張積層板は、屈曲性、柔軟性及び機械的強度のすべてが高水準である。
ディスクドライブ用フレキシブルプリント配線板は、本発明に係る銅張積層板の銅箔の一部を除去することで導体パターンが形成され、製造される。当該配線板は、樹脂層から発生するガス量が十分に低減化されているため、ハードディスクドライブ内など、高度なクリーン度が要求される電子機器への利用に好適である。
本発明によれば、簡便的に決定された温度条件での熱処理を行うことで、高温環境下において樹脂層から発生するガスを十分に低減する方法、並びに、この方法により高温環境下において発生するガス量が十分に低減化されたディスクドライブ用銅張積層板及びフレキシブルプリント配線板が提供される。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は本発明の銅張積層板の一実施形態を示す模式部分断面図である。図1に示す銅張積層板10は、銅箔1の一方の表面に液晶ポリエステルを含有する液晶ポリエステル層(樹脂層)2が形成されている。
銅箔1の膜厚は3〜70μmであることが好ましく、9〜35μmであることがより好ましい。銅箔1の膜厚が3μm未満であると銅張積層板10の製造時に銅箔1のテンションの調整が困難になる傾向がある。他方、銅箔1の膜厚が70μmを超えると銅張積層板10の屈曲性が不十分となる傾向がある。
銅箔1として、電解銅箔、圧延銅箔のいずれを用いてもよい。市販されている銅箔を用いてもよく、例えば、3EC−VLP銅箔(商品名、三井金属鉱業社製)、SQ−VLP銅箔(商品名、三井金属鉱業社製)、SQ−HTE銅箔(商品名、三井金属鉱業社製)、3EC−M3S−HTE銅箔(商品名、三井金属鉱業社製)、NS−HTE銅箔(商品名、三井金属鉱業社製)、3EC−HTE銅箔(商品名、三井金属鉱業社製)、F−WL銅箔(商品名、古河サーキットフォイル社製)、F2−WS銅箔(商品名、古河サーキットフォイル社製)、HLB銅箔(商品名、日本電解社製)、RCF−T5B−HPC(商品名、福田金属箔粉社製)、BHY−22B−T(商品名、日鉱マテリアルズ社製)が挙げられる。なお、銅箔1に用いる銅箔としては、表面粗さが4.0μm以下の低粗化銅箔が好ましい。導体パターン形成時のエッチング性が良好なためである。
次に、液晶ポリエステル層2について説明する。液晶ポリエステル層2に含まれる液晶ポリエステルは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルであり、450℃以下の温度で光学的に異方性を示す溶融体を形成するものである。
液晶ポリエステル層2に含まれる液晶ポリエステルは、構造単位として以下の式(i)、(ii)、(iii)で示される構造単位を含み、式(i)で示される構造単位が30〜80モル%、式(ii)で示される構造単位が10〜35モル%、式(iii)で示される構造単位が10〜35モル%であることが好ましく、芳香族ジアミン由来の構造単位及び/又はフェノール性水酸基を有する芳香族アミン由来の構造単位を全構造単位に対して10〜35モル%含有していることがより好ましい。
(i)−O−Ar−CO−
(ii)−CO−Ar−CO−
(iii)−X−Ar−Y−
ここで、上記式中、Arは、フェニレン、ナフチレン又はビフェニレンを表し、Ar及びArは、それぞれ独立に、下記式(1)で表される2価の基を表す。X及びYは、同一又は異なりO又はNHを表わす。なお、Ar、Ar及びArの芳香環に結合している水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。
Figure 2007190906
なお、式(1)中、Arはフェニレン又はナフチレンであり、ZはO,S,CO、SO、炭素数1〜4のアルキレン基、O(CHO[ただし、mは1〜4の整数]又は単結合を表し、nは0以上3以下の整数を表す。Arが複数ある場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよく、Zが複数ある場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。
具体的に、液晶ポリエステルを例示すると、
(1)芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、及び芳香族ジオールを重合させて得られるもの、
(2)同種又は異種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させて得られるもの、
(3)芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジオールを重合させて得られるもの、
(4)芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジオール、並びに、フェノール性水酸基を有する芳香族アミン及び/又は芳香族ジアミンを重合させて得られるもの、
(5)芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、及びフェノール性水酸基を有する芳香族アミンを重合させて得られるもの、
(6)芳香族ジカルボン酸及びフェノール性水酸基を有する芳香族アミンを重合させて得られるもの、
(7)芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、及び芳香族ジアミンを重合させて得られるもの、
(8)芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジアミンを重合させて得られるもの(但し、分子中に液晶性のポリエステル部分を含む重合物)
が挙げられる。
上記(1)〜(8)の液晶ポリエステルのなかでも、(5),(6),(7)及び(8)から選ばれる液晶ポリエステルを用いることが好ましい。これらの液晶ポリエステルを用いると耐熱性及び寸法安定性に優れた樹脂層を得ることができるためである。
上記の芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール及びフェノール性水酸基を有する芳香族アミンの代わりに、これらのエステル形成性誘導体又はアミド形成性誘導体を用いてもよい。
カルボン酸のエステル形成性誘導体又はアミド形成性誘導体としては、ポリエステル生成反応もしくはポリアミド生成反応が促進される誘導体、例えば、反応活性が向上した酸塩化物、酸無水物などの誘導体、エステル交換反応もしくはアミド交換反応によりポリエステルもしくはポリアミドが生成可能な、エステルもしくはアミド誘導体(カルボキシル基が、アルコール類やエチレングリコール、アミンなどと反応して形成されるもの)が挙げられる。
フェノール性水酸基のエステル形成性誘導体としては、例えば、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、フェノール性水酸基がカルボン酸類とエステルを形成しているものなどが挙げられる。
アミノ基のアミド形成性誘導体としては、例えば、アミド交換反応によりポリアミドを生成するようなカルボン酸類とアミドを形成しているものなどが挙げられる。
また、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール及びフェノール性水酸基を有する芳香族アミン、芳香族ジアミンは、エステル形成性もしくはアミド形成性を阻害しない程度であれば、塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子、メチル基、エチル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基などで置換されていてもよい。
本発明に使用される液晶ポリエステルの繰り返し構造単位としては、下記のものを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
式(i)で示される構造単位(芳香族ヒドロキシ酸由来の構造単位)としては、以下の化学式(A)〜(A)で表されるものが挙げられる。なお、下記の構造単位は、芳香環に結合している水素原子がハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。
Figure 2007190906
全構造単位に対して、構造単位(i)は30〜80モル%であることが好ましく、40〜70モル%であることがより好ましく、45〜65モル%であることがさらに好ましい。構造単位(i)が80モル%を超えると溶解性が著しく低下する傾向があり、30モル%未満では液晶性を示さない傾向がある。
式(ii)で示される構造単位(芳香族ジカルボン酸由来の構造単位)としては、以下の化学式(B)〜(B)で表されるものが挙げられる。なお、下記の構造単位は、芳香環に結合している水素原子がハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。
Figure 2007190906
全構造単位に対して、構造単位(ii)は35〜10モル%であることが好ましく、30〜15モル%であることがより好ましく、27.5〜17.5モル%であることがさらに好ましい。構造単位(ii)が35モル%を超えると、液晶性が低下する傾向があり、10モル%未満では溶解性が低下する傾向がある。
式(iii)で示される構造単位としては、芳香族ジオールに由来する構造単位、フェノール性水酸基を有する芳香族アミン由来の構造単位、及び芳香族ジアミンに由来する構造単位、が挙げられる。
芳香族ジオールに由来する構造単位としては、以下の化学式(C)〜(C10)で表されるものが挙げられる。なお、下記の構造単位は、芳香環に結合している水素原子がハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。
Figure 2007190906
フェノール性水酸基を有する芳香族アミン由来の構造単位としては、以下の化学式(D)〜(D)で表されるものが挙げられる。なお、下記の構造単位は、芳香環に結合している水素原子がハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。
Figure 2007190906
芳香族ジアミンに由来する構造単位としては、以下の化学式(E)〜(E)で表されるものが挙げられる。なお、下記の構造単位は、芳香環に結合している水素原子がハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。
Figure 2007190906
全構造単位に対して、構造単位(iii)は、35〜10モル%であることが好ましく、30〜15モル%であることがより好ましく、27.5〜17.5モル%であることがさらに好ましい。構造単位(iii)が35モル%を超えると、液晶性が低下する傾向があり、10モル%未満では溶解性が低下する傾向がある。
なお、上記の構造単位に置換されていてもよいアルキル基としては、例えば、炭素数1〜10のアルキル基が通常用いられ、中でもメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基が好ましい。構造単位に置換されていてもよいアリール基としては、例えば、炭素数6〜20のアリール基が通常用いられ、中でもフェニル基が好ましい。
液晶ポリエステル層の耐熱性及び寸法安定性の両方を高水準で達成するためには、液晶ポリエステルは、上記の(A)及び/又は(A)で表される芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構造単位と、(B),(B),(B)及び(B)から選ばれる芳香族ジカルボン酸由来の構造単位とを含むことが好ましい。これらの構造単位の好ましい組み合せとしては、例えば、以下の(P1)〜(P12)が挙げられる。
(P1):構造単位(A),(B)及び(D)の組み合せ、
(P2):構造単位(A),(B)及び(D)の組み合せ、
(P3):構造単位(A),(B)及び(D)の組み合せ、
(P4):構造単位(A),(B)及び(D)の組み合せ、又は
(P5):構造単位(B),(B)もしくは(B)及び(D)の組み合せ。
(P6):上記(P1)〜(P5)の組み合せのそれぞれにおいて、(D)の一部又は全部を(D)に置換した組み合せ。
(P7):上記(P1)又は(P3)の組み合せのそれぞれにおいて、(A)の一部又は全部を(A)に置換した組み合せ。
(P8):上記(P1)〜(P5)の組み合せのそれぞれにおいて、(D)の一部又は全部を(E)もしくは(E)に置換した組み合せ。
(P9):上記(P1)〜(P5)の組み合せのそれぞれにおいて、(D)の一部を(C)もしくは(C)に置換した組み合せ。
(P10):上記(P1)又は(P2)の組み合せのそれぞれにおいて、(B)の一部又は全部を(B)に置換した組み合せ。
(P11):上記(P3)の組み合せにおいて、(B)の一部又は全部を(B)に置換した組み合せ。
(P12):上記(P4)の組み合せにおいて、(B)の一部又は全部を(B)に置換した組み合せ。
構造単位のさらに好ましい組み合せとしては、p−ヒドロキシ安息香酸及び2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する構造単位30〜80モル%、4−ヒドロキシアニリン及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する構造単位10〜35モル%、テレフタル酸及びイソフタル酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する構造単位10〜35モル%からなるものが挙げられ、特に好ましい組み合せとしては、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸に由来する構造単位30〜80モル%、4−ヒドロキシアニリンに由来する構造単位10〜35モル%、イソフタル酸に由来する構造単位10〜35モル%からなるものが挙げられる。
本発明で使用される液晶ポリエステルの製造方法は、特に限定されないが、例えば、構造単位(i)に対応する芳香族ヒドロキシ酸、構成単位(iii)に対応する、芳香族ジオール、水酸基を有する芳香族アミン又は芳香族ジアミンのフェノール性水酸基やアミノ基を過剰量の脂肪酸無水物によりアシル化してアシル化物を得、得られたアシル化物と、構造単位(ii)に対応する芳香族ジカルボン酸とをエステル交換・アミド交換(重合)して溶融重合する方法などが挙げられる。
アシル化反応においては、脂肪酸無水物の添加量は、フェノール性水酸基とアミノ基の合計に対して、1.0〜1.2倍当量であることが好ましく、より好ましくは1.05〜1.1倍当量である。脂肪酸無水物の添加量が1.0倍当量未満では、エステル交換・アミド交換による重縮時にアシル化物や芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などが昇華し、反応系が閉塞し易い傾向があり、また、1.2倍当量を超える場合には、得られる液晶ポリエステルの着色が著しくなる傾向がある。
アシル化反応は、130〜180℃で5分〜10時間反応させることが好ましく、140〜160℃で10分〜3時間反応させることがより好ましい。
アシル化反応に使用される脂肪酸無水物は,特に限定されないが、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2エチルヘキサン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水β−ブロモプロピオン酸などが挙げられ、これらは2種類以上を混合して用いてもよい。価格と取り扱い性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸が好ましく、より好ましくは、無水酢酸である。
エステル交換・アミド交換による重合においては、アシル化物のアシル基がカルボキシル基の0.8〜1.2倍当量であることが好ましい。
エステル交換・アミド交換による重合は、130〜400℃で0.1〜50℃/分の割合で昇温しながら行うことが好ましく、150〜350℃で0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら行うことがより好ましい。また、この際、平衡を移動させるため、副生する脂肪酸と未反応の脂肪酸無水物は、蒸発させるなどして系外へ留去することが好ましい。
なお、アシル化反応、エステル交換・アミド交換による重合は、触媒の存在下に行ってもよい。該触媒としては、従来からポリエステルの重合用触媒として公知のものを使用することができ、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモンなどの金属塩触媒、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾールなどの有機化合物触媒などを挙げることができる。触媒は、通常、アシル化反応時に存在させ、アシル化後も除去することは必ずしも必要ではなく、該触媒を除去しない場合にはそのまま次の処理を行うことができる。また、次の処理を行うときに、上記のような触媒をさらに添加してもよい。
エステル交換・アミド交換による重合は、通常、溶融重合により行なわれるが、溶融重合と固層重合とを併用してもよい。固相重合は、溶融重合工程からポリマーを抜き出し、固化後、粉砕してパウダー状もしくはフレーク状にした後、公知の固相重合方法により行うことができる。具体的には、例えば、窒素などの不活性雰囲気下、20〜350℃で、1〜30時間固相状態で熱処理する方法などが挙げられる。固相重合は、攪拌しながらでも、攪拌することなく静置した状態で行ってもよい。なお適当な攪拌機構を備えることにより溶融重合槽と固相重合槽とを同一の反応槽とすることもできる。固相重合後、得られた液晶ポリエステルは、公知の方法によりペレット化して使用してもよい。
液晶ポリエステルの製造は、例えば、回分装置、連続装置等を用いて行うことができる。液晶ポリエステルの重量平均分子量は、通常、100000〜500000程度である。
次に、本発明に適用する銅張積層板について図1を参照して説明する。
液晶ポリエステル層2は上記のようにして製造される液晶ポリエステルからなるものであるが、液晶ポリエステルの他に無機フィラーを含有していてもよい。液晶ポリエステル層2が無機フィラーを含有していると、液晶ポリエステル層2の弾性率、寸法精度などの機械的特性及び電気絶縁性、誘電特性などの電気特性をより高めることができる。無機フィラーとしては、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ガラス繊維及びアルミナ繊維などを使用することができる。なお、無機フィラーと液晶ポリエステルとの相溶性及び接着性を高めるために、表面がシランカップリング剤等によって処理された無機フィラーを用いてもよい。
液晶ポリエステル層2が無機フィラーを含有する場合、その含有率は、液晶ポリエステル層2に含まれる液晶ポリエステルを100体積部とすると、5〜30体積部であることが好ましく、10〜20体積部であることがより好ましい。無機フィラーの含有率が5体積部未満であると無機フィラーを添加したことによる効果が十分に得られない傾向があり、30体積部を超えると銅張積層板の耐折性が不十分になる傾向がある。
液晶ポリエステル層2の膜厚は、製膜性や機械特性の観点から、0.5〜500μmであることが好ましく、取り扱い性の観点から1〜100μmであることがより好ましい。液晶ポリエステル層2の膜厚は当該層の形成時の塗布回数又は塗布液の粘度によって調整することができる。なお、銅箔の膜厚(TCu)に対する液晶ポリエステルの膜厚(TCP)の比率は、TCP/TCu=0.7〜20の範囲内にあることが好ましい。
以下、銅張積層板の製造方法について説明する。まず、液晶ポリエステル層用の塗布液の調製方法について説明する。
塗布液は液晶ポリエステルを溶媒に溶解させて得ることができる。溶媒としては、液晶ポリエステルを溶解するものであれば特に限定されないが、非プロトン性溶媒が好適である。非プロトン性溶媒としては、ハロゲン系溶媒(1−クロロブタン、クロロベンゼン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタン等)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、ケトン系溶媒(アセトン、シクロヘキサノン等)、エステル系溶媒(酢酸エチル等)、ラクトン系溶媒(γ−ブチロラクトン等)、カーボネート系溶媒(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、アミン系溶媒(トリエチルアミン、ピリジン等)、ニトリル系溶媒(アセトニトリル、サクシノニトリル等)、アミド系溶媒(N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドン等)、ニトロ系溶媒(ニトロメタン、ニトロベンゼン等)、含硫黄溶媒(ジメチルスルホキシド、スルホラン等)、リン酸系溶媒(ヘキサメチルリン酸アミド、トリn−ブチルリン酸等)などが挙げられる。また、プロトン溶媒の中では、ハロゲン化フェノール系溶媒(パラフルオロフェノール、パーフルオロフェノール等)を用いてもよい。これらの溶媒は単独又は混合して使用できる。
上記の溶媒のうちでも、ハロゲン原子を含まない溶媒が環境への影響を配慮するとより好適である。また、液晶ポリエステルの溶解性の観点から、双極子モーメントが3〜5の溶媒が更に好適である。具体的には、アミド系溶媒(N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドン等)又はラクトン系溶媒(γ−ブチロラクトン等)を使用することが好ましく、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド又はN−メチルピロリドンを使用することがより好ましい。
溶媒の使用量は、形成するポリエステル層2の膜厚に応じて適宜選択することができるが、溶媒100質量部に対して液晶ポリエステル0.01〜100質量部であることが好ましく、作業性や経済性の観点から1〜50質量部であることがより好ましく、2〜40質量部であることが更に好ましい。液晶ポリエステルが0.01質量部未満であると溶液粘度が低すぎて均一に塗工できない傾向があり、100質量部を超えると、高粘度化する傾向がある。
なお、液晶ポリエステルを上記の溶媒に溶解させた溶液を塗布液として用いてもよいが、フィルターなどを通過させ、溶液中に含まれる微細な異物を除去しておくことが好ましい。
また、無機フィラーを含有する液晶ポリエステル層2を形成する場合は、液晶ポリエステルが溶解している溶液に対し、所定量の無機フィラーを添加したものを塗布液とすればよい。この場合、無機フィラーの添加量は、溶媒の除去後に液晶ポリエステル層2中の無機フィラーの含有量が所望の値となるように調整すればよい。
次に図2を参照しながら、上記のようにして調製された塗布液を用いて銅張積層板10を製造する方法を説明する。
図2(a)は、銅箔1の表面に液晶ポリエステルを含有する塗布液が塗布され、塗膜2aが形成された状態を示す模式断面図である。塗布液を塗布する方法としては、例えば、ローラーコート法、ディップコート法、スプレイコーター法、スピナーコート法、カーテンコート法、スロットコート法、スクリーン印刷法等の各種手段が挙げられる。これらの手段によって塗布液を平坦かつ均一に流延して塗膜2aを形成する。
図2(b)は、塗膜2a中の溶媒を除去し、銅箔1の表面に非配向状態の液晶ポリエステル層2bが形成された状態を示す模式断面図である。溶媒の除去方法は、溶媒の蒸発により行うことが好ましい。溶媒を蒸発する方法としては、加熱、減圧、通風などの方法が挙げられるが、中でも生産効率、取り扱い性の点から加熱して蒸発せしめることが好ましく、通風しつつ加熱して蒸発せしめることがより好ましい。加熱により溶媒を除去する場合、温度80〜200℃において10〜120分間保持すればよい。
図2(c)は、熱処理によって非配向状態の液晶ポリエステルの分子が配向状態となり且つ破断点引張強さが向上した液晶ポリエステル層2が形成された状態を示す模式断面図である。熱処理の温度は、後述する方法によって決定する。なお、溶媒を除去する工程を実施せずに、上記の熱処理を実施してもよい。だたし、塗膜2a中の溶媒が急激に蒸発して、液晶ポリエステル層2にボイドなどが発生することを十分に防止するためには、上記のような溶媒を除去する工程を実施してから熱処理をすることが好ましい。
熱処理の方法は特に限定されるものではなく、所定の加熱条件(温度及び保持時間)を設定可能な熱風オーブン、減圧オーブン、ホットプレート等の装置を用いて行うことができる。また、熱処理は、大気圧下、あるいは、銅箔1及び/又は液晶ポリエステル層2が劣化しない範囲であれば加圧下又は減圧下で行ってもよい。また、ポリエステル層2の劣化を抑制する観点から、熱処理を不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては窒素が好適である。
銅張積層板10は上記のような熱処理を経て製造されるが、熱処理温度は、液晶ポリエステル層2と同一の組成からなる液晶ポリエステルフィルムを用いて以下のように決定することができる。すなわち、熱処理温度が異なる複数の銅張積層板を上記の方法によって製造する。各銅張積層板の銅箔を除去して複数の液晶ポリエステルフィルムを得る。各液晶ポリエステルフィルムの破断点引張強さをそれぞれ測定する。破断点引張強さが110MPa以上である液晶ポリエステルフィルムの熱処理温度を銅張積層板の熱処理温度と決定する。なお、液晶ポリエステルフィルムの脱ガス量は破断点引張強さと相関関係を有しているため、脱ガス量の測定は破断点引張強さが110MPa以上である液晶ポリエステルフィルムに対して確認的に行えばよく、必ずしも各液晶ポリエステルフィルムに対して脱ガス量の測定を実施する必要はない。つまり、測定が比較的容易な破断点引張強さの測定結果及び必要最低限の脱ガス量の測定結果から熱処理の条件を決定すればよい。
なお、本発明に係る銅張積層板においては、樹脂層が無機フィラーを含有してもよいが、樹脂層が無機フィラーを含有する場合、無機フィラーを含有しない場合と比較し、一般に、樹脂層からの脱ガス量は少なくなる傾向がある。高温環境下においてもガスを発生し得る樹脂の相対的な体積が減少するためである。他方、樹脂層が無機フィラーを含有する場合、無機フィラーを含有しない場合と比較し、一般に、樹脂層の破断点引張強さは同等もしくは低下する傾向がある。このため、樹脂層の破断点引張強さが110MPa以上となる温度で熱処理された銅張積層板は、樹脂層が無機フィラーの含有の有無に関わらず、十分に脱ガス量が低減される。
上記のようにして決定された温度で熱処理を行うことで、樹脂層の破断点引張強さが110MPa以上であり且つ脱ガス量が十分に低減化された銅張積層板を容易に製造することができる。また、樹脂層の破断点における伸び率が4%以上(より好ましくは10%以上)である銅張積層板を容易に製造することができる。上記特性を有する銅張積層板は、屈曲性、柔軟性及び機械的強度の点においても優れる。
以下、フレキシブルプリント配線板について説明する。銅張積層板の銅箔の一部を除去して導体パターンを形成する方法により、フレキシブルプリント配線板が得られる。図3及び図4は、それぞれ、本発明のフレキシブルプリント配線板の一実施形態を示す断面図である。
図3に示すフレキシブルプリント配線板30は、液晶ポリエステル層2と、液晶ポリエステル層2の一面上に形成された導体パターン20とを備える。導体パターン20は、銅張積層板10が有する銅箔1の一部を除去してこれをパターン化することにより形成される。銅箔1のパターン化は、エッチング等の方法により行われる。
図4に示すフレキシブルプリント配線板40は、液晶ポリエステル層2と、液晶ポリエステル層2の一面上に形成された導体パターン20と、導体パターン20の保護及び絶縁性を確保するためのカバーレイ25とを備える。カバーレイ25を構成する材料としては特に限定されるものではなく、従来公知の材料を用いることができる。
本発明のフレキシブルプリント配線板は、高度なクリーン度が要求されるディスクドライブへの利用に好適である。また、その用途はディスクドライブ内に限られず、高温環境下においてガスの発生が問題となる電子機器への利用に好適である。
以下、本発明について実施例を用いて説明するが、本発明が実施例により限定されるものでないことは言うまでもない。
(実施例1〜4及び比較例1〜3)
<液晶ポリエステル1の合成>
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸941g(5.0モル)、4−アミノフェノール273g(2.5モル)、イソフタル酸415.3g(2.5モル)及び無水酢酸1123g(11モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。
その後、留出する副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら170分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。得られた樹脂を室温まで冷却し、これを粗粉砕機で粉砕して液晶ポリエステル1を粉末で得た。なお、得られた粉末が光学的に異方性を示すことを以下のようにして確認した。すなわち、得られた粉末の一部を窒素雰囲気下250℃で3時間保持し、偏光顕微鏡で観察しながら10℃/分で昇温して固相で重合反応させた結果、350℃で液晶相特有のシュリーレン模様を示した。
<銅張積層板及び液晶ポリエステルフィルムの製造>
銅張積層板を以下の方法で製造した。すなわち、上記合成により得られた液晶ポリエステル1の粉末8gをN−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」という。)92gに加え、160℃に加熱することで液晶ポリエステルが完全に溶解し褐色透明な溶液が得た。この溶液を攪拌及び脱泡し、液晶ポリエステル溶液(以下、「溶液1」という。)を調製した。溶液1を表面粗さ3.6μmの電解銅箔(三井金属鉱業社製)上にフィルムアプリケーターを用いて塗布し、ホットプレート上で80℃、1時間乾燥した。
その後、窒素雰囲気下の熱風オーブン中で昇温速度5℃/分で30℃から300℃まで昇温し、300℃にて1時間保持する熱処理を行い、銅張積層板(以下、「銅張積層板1」という。)を製造した。
製造した銅張積層板1を塩化第二鉄水溶液(ボーメ度40°、木田株式会社製)に浸漬することで、銅箔をエッチングした後、水洗して液晶ポリエステルフィルム(以下、「フィルム1」という。)を得た。
300℃での熱処理の代わりに280℃、320℃、340℃、230℃、250℃及び380℃にて熱処理を行ったこと以外は、銅張積層板1と同様にして6枚の銅張積層板(以下、それぞれ「銅張積層板2」、「銅張積層板3」、「銅張積層板4」、「銅張積層板5」、「銅張積層板6」及び「銅張積層板7」という。)を製造した。更に、銅張積層板1からフィルム1を得た方法と同様の方法によって、銅張積層板2、銅張積層板3、銅張積層板4、銅張積層板5、銅張積層板6及び銅張積層板7から、6枚の液晶ポリエステルフィルム(以下、それぞれ「フィルム2」、「フィルム3」、「フィルム4」、「フィルム5」、「フィルム6」及び「フィルム7」という。)を製造した。
<破断点引張強さ及び伸び率の測定>
フィルム1〜7の破断点引張強さ及び伸び率を以下のようにして測定した。すなわち、JIS C2151(1990年)に記載の引張強さ及び伸び率の試験方法に基づき、液晶ポリエステルフィルムの破断点引張強さ及び伸び率を測定した。なお、破断点引張強さ及び伸び率の測定は、試験装置として定速緊張形引張試験機を使用し、引張速度は5mm/分とした。測定結果を表1に示す。
Figure 2007190906
(実施例1)
銅張積層板1と同様にして300℃にて熱処理された銅張積層板を製造した。この銅張積層板の脱ガス量を以下のようにして測定した。
<脱ガス量の測定>
銅張積層板の液晶ポリエステル層を構成する液晶ポリエステル5mgを被測定試料として熱抽出−GC測定を行い、発生するガスを同定後、絶対検量線法で定量した。熱抽出は被測定試料を温度250℃にて1時間保持することで行った。検出された成分の総質量をフェノール質量に換算し、被測定試料単位質量から発生するフェノール質量を脱ガス量(ppm)とした。測定条件の詳細を以下に示す。
パイロライザー:PY−2020D(フロンティア・ラボ製)、
クライオトラップ:MJT−1030E(フロンティア・ラボ製)、
GCMS:Agilent5973N(FID付き)、
カラム:UA−5(内径0.25mm×30m、膜厚0.25μm、フロンティア・ラボ製)、
熱抽出条件:250℃、60分間保持、
トラップ温度:77K(液体窒素温度)、
インターフェース温度:320℃、
注入モード:スプリット(ratio50:1)、
注入口温度:320℃、
キャリアガス:He(流速1.0ml/分、定流量モード)、
オーブン温度設定:50℃から170℃に昇温(昇温レート:20℃/分)後、170℃から360℃に昇温(昇温レート:40℃/分)、
検出器:MSD、Aux.温度320℃。
(実施例2〜4)
銅張積層板2、3、4と同様にして、280℃、320℃、340℃にてそれぞれ熱処理された銅張積層板を製造した。なお、これらの銅張積層板が備える液晶ポリエステル層の破断点引張強さはいずれも110MPa以上である(表1参照)。3枚の銅張積層板の脱ガス量を実施例1と同様の方法でそれぞれ測定した。
(比較例1〜3)
銅張積層板5、6、7と同様にして、230℃、250℃、380℃にてそれぞれ熱処理された銅張積層板を製造した。なお、これらの銅張積層板が備える液晶ポリエステル層の破断点引張強さはいずれも110MPa未満である(表1参照)。3枚の銅張積層板の脱ガス量を実施例1と同様の方法でそれぞれ測定した。
実施例1〜4及び比較例1〜3の銅張積層板の脱ガス量の測定結果を表2に示す。なお、実施例1〜4及び比較例1〜3の銅張積層板の液晶ポリエステル層は、それぞれフィルム1〜4及びフィルム5〜7と材料及び熱処理温度が同一である。このため、実施例1〜4及び比較例1〜3の銅張積層板の液晶ポリエステル層の破断点引張強さ及び伸び率の値は、それぞれフィルム1〜4及びフィルム5〜7の値とそれぞれ同一である(表1参照)。
Figure 2007190906
(実施例5)
<液晶ポリエステル2の合成>
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸84.7g(0.45モル)、4−ヒドロキシアセトアニリド41.6g(0.275モル)、イソフタル酸12.5g(0.075モル)、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸51.7g(0.20モル)及び無水酢酸181.7g(1.1モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。
その後、留出する副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら170分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。得られた樹脂を室温まで冷却し、これを粗粉砕機で粉砕して、液晶ポリエステル2を粉末で得た。なお、得られた粉末が光学的に異方性を示すことを以下のようにして確認した。すなわち、得られた粉末の一部を窒素雰囲気下250℃で3時間保持し、偏光顕微鏡で観察しながら10℃/分で昇温して固相で重合反応させた結果、350℃で液晶相特有のシュリーレン模様を示した。
<銅張積層板及び液晶ポリエステルフィルムの製造>
銅張積層板を以下の方法で製造した。すなわち、上記合成により得られた液晶ポリエステル2の粉末8gをN−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」という。)92gに加え、160℃に加熱することで液晶ポリエステルが完全に溶解し褐色透明な溶液が得た。この溶液を攪拌及び脱泡し、液晶ポリエステル溶液(以下、「溶液2」という。)を調製した。溶液2を表面粗さ3.6μmの電解銅箔(三井金属鉱業社製)上にフィルムアプリケーターを用いて塗布し、ホットプレート上で80℃、1時間乾燥した。
その後、窒素雰囲気下の熱風オーブン中で昇温速度5℃/分で30℃から320℃まで昇温し、320℃にて3時間保持する熱処理を行い、銅張積層板(以下、「銅張積層板8」という。)を製造した。製造した銅張積層板8を塩化第二鉄水溶液(ボーメ度40°、木田株式会社製)に浸漬することで、銅箔をエッチングした後、水洗して液晶ポリエステルフィルム(以下、「フィルム8」という。)を得た。このフィルム8の破断点引張強さ及び伸び率をフィルム1と同様に測定した。結果を表3に示す。
Figure 2007190906
銅張積層板8と同様にして、320℃にて熱処理された銅張積層板を製造した。なお、この銅張積層板が備える液晶ポリエステル層の破断点引張強さは110MPa以上である(表3参照)。この銅張積層板の脱ガス量を実施例1と同様の方法で測定した。
実施例5の銅張積層板の脱ガス量の測定結果を表4に示す。なお、実施例5の銅張積層板の液晶ポリエステル層は、フィルム8と材料及び熱処理温度が同一である。このため、実施例5の銅張積層板の液晶ポリエステル層の破断点引張強さ及び伸び率の値は、フィルム8の値と同一である(表3参照)。
Figure 2007190906
本発明の銅張積層板の一実施形態を示す模式部分断面図である。 本発明の銅張積層板の製造方法の工程断面図である。 本発明のフレキシブルプリント配線板の一実施形態を示す模式部分断面図である。 本発明のフレキシブルプリント配線板の他の実施形態を示す模式部分断面図である。
符号の説明
1…銅箔、2…液晶ポリエステル層(樹脂層)、10…銅張積層板、20…導体パターン、30,40…フレキシブルプリント配線板。

Claims (6)

  1. 液晶ポリエステルを含有する樹脂層と、前記樹脂層上に設けられた銅箔とを備える銅張積層板から発生するガスの低減方法であって、
    前記樹脂層の破断点引張強さが110MPa以上となる温度で前記銅張積層板を加熱する工程を備える、方法。
  2. 前記液晶ポリエステルが、以下の式(i)、(ii)及び(iii)で示される構造単位を含み、全構造単位に対して、式(i)で示される構造単位が30〜80モル%、式(ii)で示される構造単位が10〜35モル%、式(iii)で示される構造単位が10〜35モル%である、請求項1記載の方法。
    (i)−O−Ar−CO−
    (ii)−CO−Ar−CO−
    (iii)−X−Ar−Y−
    (式中、Arは、フェニレン、ナフチレン又はビフェニレン;Ar及びArは、それぞれ独立に、下記式(1)で表される2価の基;X及びYは、同一又は異なりO又はNH;をそれぞれ表わす。なお、Ar、Ar及びArの芳香環に結合している水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。
    Figure 2007190906
    式(1)中、Arはフェニレン又はナフチレン;ZはO,S,CO、SO、炭素数1〜4のアルキレン基、O(CHO[ただし、mは1〜4の整数]又は単結合;nは0以上3以下の整数をそれぞれ表す。Arが複数ある場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよく、Zが複数ある場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。)
  3. 前記液晶ポリエステルが、芳香族ジアミン由来の構造単位及び/又は水酸基を有する芳香族アミン由来の構造単位を全構造単位に対して10〜35モル%含む、請求項1又は2項記載の方法。
  4. 前記樹脂層が無機フィラーを含有する、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項記載の方法により、発生するガスが低減化された銅張積層板であって、
    液晶ポリエステルを含有し且つ破断点引張強さが110MPa以上である樹脂層と、前記樹脂層上に設けられた銅箔とを備える、ディスクドライブ用銅張積層板。
  6. 請求項5に記載の銅張積層板の銅箔の一部を除去することにより導体パターンが形成された、ディスクドライブ用フレキシブルプリント配線板。
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