JP4466217B2 - 芳香族液晶ポリエステルフィルムおよび積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、芳香族液晶ポリエステルフィルムならびにそれからなる層および金属層を有する積層体に関する。
芳香族液晶ポリエステルは、吸水性が低く、耐熱性、薄肉成形性などに優れていることから、射出成形して得られるコネクターなどの電子部品に幅広く用いられている。最近では、芳香族液晶ポリエステルは、誘電損失が小さく電気特性にも優れる材料であることから、Tダイ法やインフレーション法等の溶融押出法や、溶液キャスト法などでフィルム状に成形され、金属層との積層体が多層プリント基板などにも利用されるようになり、例えば、パラヒドロキシ安息香酸に由来する繰り返し構造単位を主成分とする芳香族ポリエステルからなる溶液キャストフィルムが提案されている(特許文献1)。
特開2002−359145号公報
しかしながら、該芳香族液晶ポリエステルからなる溶液キャストフィルムは、ギガヘルツ帯域の周波数での誘電損失は小さいものの、メガヘルツ帯域の周波数での誘電損失には改善の余地が残されていた。
また、フィルムの製法としては生産性により優れる溶融押出フィルム成形法が好ましい。ところで、芳香族液晶ポリエステルは溶融成形可能な温度が高いことが多いが、溶融押出フィルム成形においては、345℃を超える温度での加工は、芳香族液晶ポリエステルの熱安定性の点で好ましくなかった。
本発明の目的は、ギガヘルツ帯域およびメガヘルツ帯域のいずれの周波数域においても誘電損失が小さく、かつ低い加工温度で溶融押出フィルム成形により製造し得る芳香族液晶ポリエステルフィルム、ならびにその用途を提供することにある。
即ち本発明は、溶融時に光学異方性を示す芳香族液晶ポリエステルを溶融成形して得られる芳香族液晶ポリエステルフィルムであって、該芳香族液晶ポリエステルが、下式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)で表される構成単位を含み、これら(I)〜(V)の構成単位の合計に対して(I)+(II)の構成単位が40〜75mol%、(III)の構成単位が12.5〜30mol%、(IV)の構成単位が4.5〜30mol%、(V)の構成単位が0〜8mol%であり、かつ(I)と(II)の構成単位のmol量が(I)/{(I)+(II)}≧0.6の関係を満足し、流動開始温度が280〜345℃の範囲である芳香族液晶ポリエステルである芳香族液晶ポリエステルフィルムにかかるものであり、また本発明は、該芳香族液晶ポリエステルフィルムからなる層および金属層を有する積層体にかかるものである。
Figure 0004466217
(ここで、Ar1およびAr2は、1,4−フェニレン、またはパラ位でつながるフェニレン数2以上の化合物の残基である。)
本発明によれば、ギガヘルツ帯域およびメガヘルツ帯域のいずれの周波数域においても誘電損失が小さく、かつ低い加工温度で溶融押出フィルムにより成形し得る芳香族液晶ポリエステルフィルム、ならびに該芳香族液晶ポリエステルフィルムからなる層および金属層を有する積層体が提供される。
本発明で用いられる芳香族液晶ポリエステルは、溶融時に光学異方性を示す芳香族液晶ポリエステルであって、下式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)で表される構成単位を含み(但し、(V)は含んでいなくてもよい。)、これら(I)〜(V)の構成単位の合計に対して(I)+(II)の構成単位が40〜75mol%、(III)の構成単位が12.5〜30mol%、(IV)の構成単位が4.5〜30mol%、(V)の構成単位が0〜8mol%であり、かつ(I)と(II)の構成単位のmol量が(I)/{(I)+(II)}≧0.6の関係を満足し、流動開始温度が280〜345℃の範囲である芳香族液晶ポリエステルである。
Figure 0004466217
(ここで、Ar1およびAr2は、1,4−フェニレン、またはパラ位でつながるフェニレン数2以上の化合物の残基である。)
本発明で用いられる芳香族液晶ポリエステルは、より好ましくは全構成単位に対して(I)+(II)の構成単位が45〜65mol%、(III)の構成単位が17.5〜27.5mol%、(IV)の構成単位が11.5〜27.5mol%、(V)の構成単位が0〜6mol%であり、かつ(I)と(II)の構成単位のmol量が(I)/{(I)+(II)}≧0.8の関係を満足する芳香族液晶ポリエステルである。
式(I)で表される構成単位に導く原料としては、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸が挙げられ、またこれらのエステル形成性誘導体が使用されることもある。
式(II)で表される構成単位に導く原料としては、パラヒドロキシ安息香酸が挙げられ、またこれらのエステル形成性誘導体が使用されることもある。
式(III)で表される構成単位に導く原料としては、ハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニルなどの芳香族ジオールが挙げられ、またこれらのエステル形成性誘導体が使用されることもある。これらは単独でも2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中で、ハイドロキノンまたは4,4’−ジヒドロキシビフェニルが、得られる芳香族液晶ポリエステルの耐熱性が高められるためさらに好ましい。
式(IV)で表される構成単位に導く原料としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸が挙げられ、またこれらのエステル形成性誘導体が使用されることもある。
式(V)で表される構成単位に導く原料としては、テレフタル酸、4,4’−ビフェニルカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられ、またこれらのエステル形成性誘導体が使用されることもある。これらは単独でも2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中で、テレフタル酸または4,4’−ビフェニルカルボン酸が、得られる芳香族液晶ポリエステルの耐熱性が高められるためさらに好ましい。
芳香族ジオールのエステル形成性誘導体としては、カルボン酸類とのエステルであって、エステル交換反応によりポリエステルを生成するような誘導体となっているものが挙げられる。
また、芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、酸塩化物、酸無水物などの反応活性が高くポリエステルを生成する反応を促進するような誘導体となっているもの、アルコール類やエチレングリコール等とのエステルであって、エステル交換反応によりポリエステルを生成するような誘導体となっているものが挙げられる。
本発明で用いられる芳香族液晶ポリエステルの原料である芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとのモル比は、85/100〜100/85の範囲にすることが好ましい。この範囲内であれば、得られる芳香族液晶ポリエステルの重合度が上がり、該芳香族液晶ポリエステルフィルムの機械的強度が向上するので好ましい。
本発明で用いられる芳香族液晶ポリエステルは、原料としてアシル化物を用いて得ることが好ましい。
次に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、パラヒドロキシ安息香酸および芳香族ジオールのフェノール性水酸基を、脂肪酸無水物でアシル化する工程について説明する。
該脂肪酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2エチルヘキサン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水β−ブロモプロピオン酸等が挙げられる。これらは2種類以上を混合して用いてもよい。
価格と取り扱い性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、または無水イソ酪酸が好ましく使用され、無水酢酸がより好ましく使用される。
2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸およびパラヒドロキシ安息香酸および芳香族ジオールのフェノール性水酸基に対する該脂肪酸無水物の使用量は、1.0〜1.2倍当量が好ましい。
該脂肪酸無水物の使用量が、該フェノール性水酸基に対して少ないと、アシル化反応時の平衡が脂肪酸無水物側にずれてポリエステルへの重合時に未反応の芳香族ジオールまたは芳香族ジカルボン酸が昇華し、反応系が閉塞する傾向があり、また逆に多いと、得られる芳香族液晶ポリエステルの着色が著しくなる傾向がある。
該アシル化反応は、130℃〜180℃で30分間〜20時間反応させることが好ましく、140℃〜160℃で1時間〜5時間反応させることがより好ましい。
次に、アシル化物と、2,6−ナフタレンジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸ならびに2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸およびパラヒドロキシ安息香酸とを、エステル交換する工程について説明する。
エステル交換(重縮合)反応は、130〜330℃の範囲の温度まで0.1〜50℃/分の割合で昇温させながら反応させることが好ましく、150〜320℃の範囲の温度まで0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら反応させることがより好ましい。反応を高すぎる温度で行うと、芳香族液晶ポリエステルの高溶融粘度、高融点化が促進され反応装置からのエステル交換(重縮合)反応物の全量排出が困難となるため好ましくない。
アシル化された脂肪酸エステルとカルボン酸とをエステル交換反応させる際、平衡をずらすために、副生する脂肪酸と未反応の脂肪酸無水物は、蒸発させて系外へ留去することが好ましい。また、留出する脂肪酸の一部を還流させて反応器に戻すことによって、脂肪酸と同伴して蒸発または昇華する原料などを凝縮または逆昇華し、反応器に戻すこともできる。この場合、析出したカルボン酸を脂肪酸とともに反応器に戻すことが可能である。
なお、アシル化反応、エステル交換は、触媒の存在下に行ってもよい。該触媒としては、従来からポリエステルの重合用触媒として公知のものを使用することができ、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモンなどの金属塩触媒、N,N−ジメチルアミノピリジン、1―メチルイミダゾールなどの有機化合物触媒などを挙げることができる。
該触媒は、通常、モノマー類の投入時に投入され、アシル化後も除去することは必ずしも必要ではなく、該触媒を除去しない場合にはそのままエステル交換を行うことができる。
これらの触媒の中で、N,N−ジメチルアミノピリジン、1−メチルイミダゾールなどの窒素原子を2個以上含む複素環状有機塩基化合物が好ましく使用される。
該窒素原子を2個以上含む複素環状化合物を用いた芳香族液晶ポリエステルの製造方法としては、特開2002−146003号公報に記載の方法が推奨される。
本発明において、溶融重縮合工程が、バッチ式繰返し重合法により行われることが生産性の向上という観点から好ましい。
溶融重縮合により得られたプレポリマーは、高重合度の芳香族液晶ポリエステルを得る目的で、固相重合に供される。固相重合させるには、得られたプレポリマーを粉末とし、加熱すればよい。加熱によって、微粉状態のまま芳香族液晶ポリエステルの重合が進行して、その重合度が高くなる。
溶融重縮合により得られたプレポリマーを粉末とするには、例えばプレポリマーを冷却固化した後に粉砕すればよい。粉末の粒子径は、0.05mm以上3mm程度以下が好ましく、特に0.05mm以上1.5mm程度以下が芳香族液晶ポリエステルの高重合度化が促進されることからより好ましく、0.1mm以上1.0mm程度以下であれば粉末の粒子間のシンタリングを生じることなく芳香族液晶ポリエステルの高重合度化が促進されるため更に好ましい。
固相重合における加熱は、通常昇温しながら行われ、例えば室温からプレポリマーの流動開始温度より20℃以上低い温度まで昇温させる。このときの昇温時間は、特に限定されるものではないが、反応時間の短縮といった観点から1時間以内で行うことが好ましい。
その後、プレポリマーの流動開始温度より20℃以上低い温度から300℃以上の温度まで、0.3℃/分以下の昇温速度で昇温させることが好ましい。当該昇温速度は、好ましくは0.1〜0.15℃/分である。該昇温速度が0.3℃/分以下であれば、粉末の粒子間のシンタリングが生じにくいため高重合度の芳香族液晶ポリエステルの製造が容易となるので好ましい。
このときの終点温度は、得ようとする芳香族液晶ポリエステルの芳香族ジオールや芳香族ジカルボン酸成分のモノマー種によって異なるが、300℃以上の温度で、好ましくは300℃〜400℃の範囲で30分間以上反応させることが好ましい。とりわけ、芳香族液晶ポリエステルの熱安定性の点から、反応温度300℃〜350℃で30分間〜30時間反応させることが好ましく、反応温度300℃〜340℃で30分間〜20時間反応させることがさらに好ましい。
ここで流動開始温度とは、内径1mm、長さ10mmのダイスを取付けた毛細管型レオメーターを用い、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下において昇温速度4℃/分で芳香族ポリエステルをノズルから押出すときに、溶融粘度が4800Pa・s(48000ポイズ)を示す温度である。
本発明で用いられる芳香族液晶ポリエステルの流動開始温度は280〜345℃の範囲であり、290℃以上340℃以下であれば耐熱性が高くかつ成形時のポリマーの分解劣化が抑えられて溶融押出フィルム加工性がよく、好ましい。特に300℃以上330℃以下であることが好ましい。
本発明の芳香族液晶ポリエステルフィルムは、このようにして得られた芳香族液晶ポリエステルを用いてフィルム状に溶融成形したものであり、成形法として、具体的には、溶融して成膜する方法などが挙げられる。
溶融して成膜する芳香族液晶ポリエステルフィルムとしては、例えば、芳香族液晶ポリエステルを押し出し機で溶融混練し、Tダイを通して押し出した溶融樹脂を巻き取り機の方向(長手方向)に延伸しながら巻き取って得られる一軸配向フィルム、または二軸延伸フィルム、円筒形のダイから押し出した溶融体シートをインフレーション法で成膜するインフレーションフィルムなどが挙げられる。
一軸配向フィルムの製造時の押し出し機の設定温度は、芳香族液晶ポリエステルのモノマー組成に応じて異なるが、通常200℃〜350℃程度、好ましくは280℃〜340℃程度である。シリンダーの設定温度がこの範囲内であると、芳香族液晶ポリエステルの熱分解を抑制し、成膜が容易になる傾向があることから好ましい。
Tダイのスリット間隔は、0.1〜2mmが好ましい。
本発明における一軸配向フィルムのドラフト比は、通常、1.1〜45程度の範囲である。ここでいうドラフト比とは、Tダイスリットの断面積を長手方向のフィルム断面積で除した値をいう。ドラフト比が1.1以上であると、フィルム強度が向上する傾向があり、ドラフト比が45以下であると、フィルムの表面平滑性に優れる傾向があることから好ましい。ドラフト比は、押し出し機の設定条件、巻き取り速度などにより調整することができる。
二軸延伸フィルムは、一軸配向フィルムと同様の押し出し機の設定条件、即ちシリンダーの設定温度が、通常、200〜350℃程度、好ましくは280〜340℃程度であり、Tダイのスリット間隔は、通常、0.1〜2mmの範囲で溶融押し出しを行う。
二軸延伸方法としては、Tダイから押し出した溶融体シートを長手方向および長手方向と垂直方向(横手方向)に同時に延伸する方法、Tダイから押し出した溶融体シートをまず長手方向に延伸し、ついでこの延伸シートを同一工程内で100〜350℃の高温下でテンターより横手方向に延伸する逐次延伸の方法などが挙げられる。
二軸延伸フィルムの延伸比は、長手方向に1.1〜20倍、横手方向に1.1〜20倍の範囲であることが好ましい。延伸比が上記の範囲内であると、得られるフィルムの強度に優れ、均一な厚みのフィルムを得ることが容易になる傾向がある。
次に、インフレーションフィルムの製造方法について説明する。
本発明の芳香族液晶ポリエステルを環状スリットのダイを備えた溶融混練押し出し機に供給して、シリンダー設定温度を、通常、200〜350℃程度、好ましくは280〜350℃程度で溶融混練を行って、押し出し機の環状スリットから筒状の芳香族ポリエステルフィルムを上方または下方へ押し出す。環状スリットの間隔は、通常、0.1〜5mm、好ましくは0.2〜2mm、環状スリットの直径は、通常、20〜1000mm、好ましくは25〜600mmである。
溶融押し出された筒状の溶融樹脂フィルムに、長手方向(MD)にドラフトをかけるとともに、この筒状溶融樹脂フィルムの内側から空気または不活性ガス、例えば、窒素ガス等を吹き込むにより、長手方向と直角な横手方向(TD)にフィルムを膨張延伸させる。
ブローアップ比(最終チューブ径と初期径の比)は、通常、1.5〜10である。
MD延伸倍率は、通常、1.5〜40であり、この範囲内であると厚さが均一でしわのない高強度の芳香族液晶ポリエステルフィルムを得る傾向にあることから好ましい。
膨張延伸させたフィルムは、空冷または水冷させた後、ニップロールを通過させて引き取る。
インフレーション成膜に際しては、芳香族液晶ポリエステルの組成に応じて、筒状の溶融体フィルムが均一な厚みで表面平滑な状態に膨張するような条件を選択することが好ましい。
このようにして得られた芳香族液晶ポリエステルフィルムの厚みは、製膜性や機械特性の観点から、通常、0.5〜500μmであり、取り扱い性の観点から1〜100μmであることが好ましい。
本発明の芳香族液晶ポリエステルフィルムには、金属層を積層してもよい。
金属層を積層するにあたって、芳香族液晶ポリエステルフィルムの金属層を積層する面には、接着力を高めるためコロナ放電処理、紫外線照射処理、またはプラズマ処理を実施してもよい。
本発明の芳香族液晶ポリエステルフィルムに金属層を積層する方法としては、例えば、
(1)芳香族液晶ポリエステルフィルムを加熱圧着により金属箔に貼付する方法、
(2)芳香族液晶ポリエステルフィルムと金属箔とを接着剤により貼付する方法、
(3)芳香族液晶ポリエステルフィルムに金属層を蒸着により形成する方法
等が挙げられる。
中でも、(1)の積層方法は、プレス機または加熱ロールを用いて芳香族液晶ポリエステルフィルムの流動開始温度付近で金属箔と圧着する方法であり、容易に実施できることから推奨される。
(2)の積層方法において使用される接着剤としては、例えば、ホットメルト接着剤、ポリウレタン接着剤などが挙げられる。中でもエポキシ基含有エチレン共重合体などが接着剤として好ましく使用される。
(3)の積層方法としては、例えば、イオンビームスパッタリング法、高周波スパッタリング法、直流マグネトロンスパッタリング法、グロー放電法などが挙げられる。中でも高周波スパッタリング法が好ましく使用される。
本発明で金属層に使用される金属としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウムなどが挙げられる。タブテープ、プリント配線板用途では銅が好ましく、コンデンサー用途ではアルミニウムが好ましい。
このようにして得られる積層体の構造としては、例えば、芳香族液晶ポリエステルフィルムと金属層との二層構造、芳香族液晶ポリエステルフィルム両面に金属層を積層させた三層構造、芳香族液晶ポリエステルフィルムと金属層を交互に積層させた五層構造などが挙げられる。
また、該積層体には、高強度発現の目的で、必要に応じて、熱処理を行ってもよい。
本発明の芳香族液晶ポリエステルフィルムには、本発明の目的を損なわない範囲で、フィラー、添加剤等を添加してもよい。
フィラーとしては、例えば、エポキシ樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、尿素樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリエステル樹脂粉末、スチレン樹脂などの有機系フィラー、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ジルコニア、カオリン、炭酸カルシウム、燐酸カルシウムなどの無機フィラーなどが挙げられる。
添加剤としては、例えば、カップリング剤、沈降防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などが挙げられる。
また、本発明の芳香族液晶ポリエステルフィルムには、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルエーテルおよびその変性物、ポリエーテルイミドなどの熱可塑性樹脂、グリシジルメタクリレートとポリエチレンの共重合体などのエラストマーなどを一種または二種以上を添加してもよい。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
[流動開始温度測定法]
フローテスター〔島津製作所社製、「CFT−500型」〕を用いて試料量約2gを内径1mm、長さ10mmのダイスを取付けた毛細管型レオメーターに充填させる。9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下において昇温速度4℃/分で芳香族ポリエステルをノズルから押出すときに、溶融粘度が4800Pa・s(48000ポイズ)を示す温度を流動開始温度とした。
実施例1
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸 903.26g(4.8モル)、p−ヒドロキシ安息香酸 27.62g(0.2モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル 512.08g(2.75モル)、2,6−ナフタレンジカルボン酸 540.48g(2.5モル)、無水酢酸 1232.74(12.08モル)および触媒として1−メチルイミダゾール 0.198gを添加し、室温で15分間攪拌した後、攪拌しながら昇温した。内温が145℃となったところで、同温度を保持したまま1時間攪拌し、触媒である1−メチルイミダゾール 5.93gをさらに添加した。
次に、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら、145℃から310℃まで3時間30分かけて昇温した。同温度で2時間30分保温して芳香族ポリエステルを得た。得られた芳香族ポリエステルを室温に冷却し、粉砕機で粉砕して、芳香族ポリエステルの粉末(粒子径は約0.1mm〜約1mm)を得た。
この粉末(芳香族液晶ポリエステル)についてフローテスターを用いて、流動開始温度を測定したところ、257℃であった。
得られた粉末を25℃から250℃まで1時間かけて昇温したのち、同温度から315℃まで8時間かけて昇温し、次いで同温度で10時間保温して固相重合させた。その後、固相重合した後の粉末を冷却し、冷却後の粉末(芳香族液晶ポリエステル)をフローテスターを用いて、流動開始温度を測定したところ、318℃であった。
実施例2
実施例1と同様の反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸 846.81g(4.5モル)、p−ヒドロキシ安息香酸 69.06g(0.5モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル 512.08g(2.75モル)、2,6−ナフタレンジカルボン酸 540.48g(2.5モル)、無水酢酸 1232.74(12.08モル)および触媒として1−メチルイミダゾール 0.197gを添加し、室温で15分間攪拌した後、攪拌しながら昇温した。内温が145℃となったところで、同温度を保持したまま1時間攪拌し、触媒である1−メチルイミダゾール 5.91gをさらに添加した。
次に、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら、145℃から310℃まで3時間30分かけて昇温した。同温度で3時間保温して芳香族ポリエステルを得た。得られた芳香族ポリエステルを室温に冷却し、粉砕機で粉砕して、芳香族ポリエステルの粉末(粒子径は約0.1mm〜約1mm)を得た。
この粉末(芳香族液晶ポリエステル)についてフローテスターを用いて、流動開始温度を測定したところ、251℃であった。
得られた粉末を25℃から250℃まで1時間かけて昇温したのち、同温度から310℃まで8時間かけて昇温し、次いで同温度で10時間保温して固相重合させた。その後、固相重合した後の粉末を冷却し、冷却後の粉末(芳香族液晶ポリエステル)をフローテスターを用いて、流動開始温度を測定したところ、310℃であった。
比較例1
実施例1と同様の反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸 911g(6.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル 409g(2.2モル)、テレフタル酸 274g(1.65モル)、イソフタル酸 91g(0.55モル)および無水酢酸 1235g(12.1モル)を仕込んだ。室温で15分間攪拌した後、攪拌しながら昇温した。内温が145℃となったところで、同温度を保持したまま1時間攪拌した。
その後、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら3時間30分かけて305℃まで昇温した。同温度で1時間保温して芳香族ポリエステルを得た。得られた芳香族ポリエステルを室温に冷却し、粉砕機で粉砕して、芳香族ポリエステルの粉末(粒子径は約0.1mm〜約1mm)を得た。この粉末(芳香族液晶ポリエステル)についてフローテスターを用いて、流動開始温度を測定したところ、255℃であった。
得られた粉末を25℃から250℃まで1時間かけて昇温したのち、同温度から290℃まで5時間かけて昇温し、次いで同温度で3時間保温して芳香族液晶ポリエステルを得た。固相重合させた。その後、固相重合した後の粉末を冷却し、冷却後の粉末(芳香族液晶ポリエステル)をフローテスターを用いて、流動開始温度を測定したところ、336℃であった。
比較例2
実施例1と同様の反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸 987.95g(5.25モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル 486.47g(2.612モル)、2,6−ナフタレンジカルボン酸 513.45g(2.375モル)、無水酢酸 1174.04(11.5モル)および触媒として1−メチルイミダゾール 0.194gを添加し、室温で15分間攪拌した後、攪拌しながら昇温した。内温が145℃となったところで、同温度を保持したまま1時間攪拌し、触媒である1−メチルイミダゾール 5.83gをさらに添加した。
次に、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら、145℃から310℃まで3時間30分かけて昇温した。同温度で2時間保温して芳香族ポリエステルを得た。得られた芳香族ポリエステルを室温に冷却し、粉砕機で粉砕して、芳香族ポリエステルの粉末(粒子径は約0.1mm〜約1mm)を得た。
この粉末(芳香族液晶ポリエステル)についてフローテスターを用いて、流動開始温度を測定したところ、273℃であった。
得られた粉末を25℃から250℃まで1時間かけて昇温したのち、同温度から325℃まで10時間かけて昇温し、次いで同温度で12時間保温して固相重合させた。その後、固相重合した後の粉末を冷却し、冷却後の粉末(芳香族液晶ポリエステル)をフローテスターを用いて、流動開始温度を測定したところ、349℃であり、345℃以下の温度では溶融成形は困難であった。
比較例3
実施例1と同様の反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸 1034.99g(5.5モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル 460.87g(2.475モル)、2,6−ナフタレンジカルボン酸 486.43g(2.25モル)、無水酢酸 1174.04(11.5モル)および触媒として1−メチルイミダゾール 0.194gを添加し、室温で15分間攪拌した後、攪拌しながら昇温した。内温が145℃となったところで、同温度を保持したまま1時間攪拌し、触媒である1−メチルイミダゾール 5.82gをさらに添加した。
次に、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら、145℃から310℃まで3時間30分かけて昇温した。同温度で2時間保温して芳香族ポリエステルを得た。得られた芳香族ポリエステルを室温に冷却し、粉砕機で粉砕して、芳香族ポリエステルの粉末(粒子径は約0.1mm〜約1mm)を得た。
この粉末(芳香族液晶ポリエステル)についてフローテスターを用いて、流動開始温度を測定したところ、273℃であった。
得られた粉末を25℃から250℃まで1時間かけて昇温したのち、同温度から325℃まで10時間かけて昇温し、次いで同温度で12時間保温して固相重合させた。その後、固相重合した後の粉末を冷却し、冷却後の粉末(芳香族液晶ポリエステル)をフローテスターを用いて、流動開始温度を測定したところ、352℃であり、345℃以下の温度では溶融成形は困難であった。
比較例4
実施例1と同様の反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸 94.09g(0.5モル)、p−ヒドロキシ安息香酸 621.54g(4.5モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル 512.08g(2.75モル)、2,6−ナフタレンジカルボン酸 540.48g(2.5モル)、無水酢酸 1232.74(12.08モル)および触媒として1−メチルイミダゾール 0.177gを添加し、室温で15分間攪拌した後、攪拌しながら昇温した。内温が145℃となったところで、同温度を保持したまま1時間攪拌し、触媒である1−メチルイミダゾール 5.31gをさらに添加した。
次に、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら、145℃から310℃まで3時間30分かけて昇温した。同温度で3時間保温して芳香族ポリエステルを得た。得られた芳香族ポリエステルを室温に冷却し、粉砕機で粉砕して、芳香族ポリエステルの粉末(粒子径は約0.1mm〜約1mm)を得た。
この粉末(芳香族液晶ポリエステル)についてフローテスターを用いて、流動開始温度を測定したところ、253℃であった。
得られた粉末を25℃から250℃まで1時間かけて昇温したのち、同温度から310℃まで8時間かけて昇温し、次いで同温度で7時間保温して固相重合させた。その後、固相重合した後の粉末を冷却し、冷却後の粉末(芳香族液晶ポリエステル)をフローテスターを用いて、流動開始温度を測定したところ、307℃であった。
実施例1〜2、比較例1、および比較例4において固相重合して得られた芳香族ポリエステルの粉末を、それぞれ一軸押し出し機(スクリュー径50mm)内で溶融し、その押し出し機先端のTダイ(リップ長さ300mm、リップクリアランス1mm、実施例1〜2はダイ温度340℃、比較例1はダイ温度360℃、比較例4はダイ温度340℃)より、ドラフト比4の条件でフィルム状に押し出し、冷却して厚さ250μmの芳香族液晶ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムのそれぞれについて、誘電率、誘電損失をヒューレットパッカード(株)製インピーダンス・マテリアルアナライザーにより測定した。
得られたフィルムのそれぞれについて、280℃のH60Aハンダ(スズ60%、鉛40)に120秒浸漬し、フィルムの耐発泡性(ブリスター)を調べた。発泡が見られない場合を○とした。
実施例1〜2および比較例1〜4の条件および結果について、表1に取りまとめた.
Figure 0004466217
表1中の略号の説明
POB:p―ヒドロキシ安息香酸
BON:2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸
DOD:4,4’−ジヒドロキシビフェニル
NDCA:2,6−ナフタレンジカルボン酸
TPA:テレフタル酸
IPA:イソフタル酸
NI:1−メチルイミダゾール
本発明の芳香族液晶ポリエステルは、ギガヘルツ帯域およびメガヘルツ帯域のいずれの周波数域においても誘電損失が小さく、かつフィルム成形性に優れるので、該芳香族液晶ポリエステルを溶融成形して得られる芳香族液晶ポリエステルフィルムは、好適にフレキシブルプリント配線板やリジッドプリント配線板、モジュール基盤などの電子基盤用の基板材料、層間絶縁材料および表面保護フィルムなどに使用することができる。また、本芳香族液晶ポリエステルフィルムと金属層との積層体は、コンデンサーや電磁波シールド材として使用することができる。

Claims (2)

  1. 溶融時に光学異方性を示す芳香族液晶ポリエステルを溶融成形して得られる芳香族液晶ポリエステルフィルムであって、該芳香族液晶ポリエステルが、下式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)で表される構成単位を含み、これら(I)〜(V)の構成単位の合計に対して(I)+(II)の構成単位が40〜75mol%、(III)の構成単位が12.5〜30mol%、(IV)の構成単位が4.5〜30mol%、(V)の構成単位が0〜8mol%であり、かつ(I)と(II)の構成単位のmol量が(I)/{(I)+(II)}≧0.6の関係を満足し、流動開始温度が280〜345℃の範囲である芳香族液晶ポリエステルである芳香族液晶ポリエステルフィルム。
    Figure 0004466217
    (ここで、Ar1およびAr2は、1,4−フェニレン、またはパラ位でつながるフェニレン数2以上の化合物の残基である。)
  2. 請求項1に記載の芳香族液晶ポリエステルフィルムからなる層および金属層を有する積層体。
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