JP4306268B2 - 芳香族液晶ポリエステルおよびそのフィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族液晶ポリエステルに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、芳香族液晶ポリエステルは、その優れた低吸水性、耐熱性、薄肉成形性などにより、コネクターなどの表面実装の電子部品に幅広く用いられている。芳香族液晶ポリエステルは高周波域での誘電損失が小さいことから、最近では、移動体通信の使用周波数域の高周波からの電気信号ノイズの低減のため、芳香族液晶ポリエステルフィルムを用いた高周波用の多層プリント基板の用途などにも展開されている。
芳香族液晶ポリエステルフィルムを銅と積層して多層プリント基板に用いる場合、熱による膨張率の違いにより歪を生じないよう、該フィルムのx、y方向の線膨張率を配向制御により銅に近づける工夫がなされているが(非特許文献1参照)、従前の芳香族液晶ポリエステルフィルムでは、配向制御によりx、y方向の線膨張率を下げた歪がz方向に及ぶために、熱による体積膨張が大きいという問題があった。
【0003】
【非特許文献1】
第8回マイクロエレクトロニクスシンポジウム論文集(1998年12月 81〜84頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、熱による体積膨張が小さいフィルムを製造し得る芳香族液晶ポリエステルを提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記したような問題点を解決し得る芳香族液晶ポリエステルを見出すべく、鋭意検討を重ねた結果、2−ヒドロキシー6−ナフトエ酸由来の繰り返し構造単位40〜60mol%、4,4’−ジフェノール由来の繰り返し構造単位30〜20mol%、及び2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の繰り返し構造単位30〜20mol%からなる芳香族液晶ポリエステルが、熱による体積膨張が小さいフィルムを製造し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち、本発明は、2−ヒドロキシー6−ナフトエ酸由来の繰り返し構造単位40〜60mol%、4,4’−ジフェノール由来の繰り返し構造単位30〜20mol%、および2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の繰り返し構造単位30〜20mol%からなることを特徴とする芳香族液晶ポリエステルを提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の芳香族液晶ポリエステルは、2−ヒドロキシー6−ナフトエ酸由来の繰り返し構造単位と、4,4’−ジフェノール由来の繰り返し構造単位と、2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の繰り返し構造単位とからなり、溶融時に光学的異方性を示すサーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルである。
【0008】
2−ヒドロキシー6−ナフトエ酸由来の繰り返し構造単位は、下記の構造単位であることが好ましい。
Figure 0004306268
【0009】
4,4'−ジフェノール由来の繰り返し構造単位は、下記の構造単位であることが好ましい。
Figure 0004306268
【0010】
2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の繰り返し構造単位は、下記の構造単位である。
Figure 0004306268
【0011】
芳香族液晶ポリエステルの製造原料としては、2−ヒドロキシー6−ナフトエ酸、4,4’−ジフェノール、及びナフタレンジカルボン酸が使用されるが、これらの代わりに、該ヒドロキシカルボン酸、4,4’−ジフェノール、2,6−ナフタレンジカルボン酸のエステル形成性誘導体を用いてもよい。
【0012】
2−ヒドロキシー6−ナフトエ酸やナフタレンジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、カルボキシル基がポリエステルを生成するような酸塩化物、酸無水物などの反応性が高い誘導体となっているもの、カルボキシル基がエステル交換反応によりアルコール類やエチレングリコール等とエステルを生成しているものなどが挙げられる。
また、該2−ヒドロキシー6−ナフトエ酸や4,4’−ジフェノールのエステル形成性誘導体としては、例えば、エステル交換反応によりポリエステルを生成するようにフェノール性水酸基がカルボン酸類とエステルを形成しているものなどが挙げられる。
【0014】
2−ヒドロキシー6−ナフトエ酸由来の繰り返し構造単位の芳香族液晶ポリエステル中の割合は、40〜60mol%であることが必要であり、好ましくは50〜60mol%である。該ヒドロキシカルボン酸由来の繰り返し構造単位の割合が少ないと、液晶性が発現されず、60mol%を超えると熱による体積膨張率が大きくなる。
【0015】
4,4’−ジフェノール由来の繰り返し構造単位の芳香族液晶ポリエステル中の割合は、30〜20mol%であることが必要であり、25〜20mol%であることがより好ましい。
【0017】
2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の繰り返し構造単位の芳香族液晶ポリエステル中の割合は、30〜20mol%であることが必要であり、25〜20mol%であることがより好ましい。
2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の繰り返し構造単位と4,4’−ジフェノール由来の繰り返し構造単位とのモル比は、95/100〜100/95であることが好ましい。該モル比がこの範囲を外れると、重合度が上がらず機械強度が低下する傾向がある。
【0018】
本発明の芳香族液晶ポリエステルは、重合度が低いと、機械特性が低下するため、極限粘度が0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。
また、重合度が高いと、溶融粘度や溶液粘度が高くなり、加工性が低下するため、極限粘度は33以下が好ましく、5以下がより好ましい。
機械特性、加工性のバランスから、極限粘度は、0.5〜3であることがさらに好ましい。
【0019】
本発明の芳香族液晶ポリエステルの製造方法は、特に限定されないが、例えば、前記ヒドロキシカルボン酸および4,4'−ジフェノールを過剰量の脂肪酸無水物によりアシル化して対応するアシル化物を得、得られたアシル化物と、前記ヒドロキシカルボン酸およびナフタレンジカルボン酸とをエステル交換(重縮合)することにより溶融重合する方法が挙げられる。アシル化物としては、予めアシル化して得た脂肪酸エステルを用いてもよい。
【0020】
アシル化反応においては、脂肪酸無水物の添加量がフェノール性水酸基の1.0〜1.2倍当量であることが好ましく、より好ましくは1.05〜1.1倍当量である。脂肪酸無水物の添加量が1.0倍当量未満では、エステル交換(重縮合)時にアシル化物や前記ヒドロキシカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などが昇華し、反応系が閉塞し易い傾向があり、また、1.2倍当量を超える場合には、得られる芳香族液晶ポリエステルの着色が著しくなる傾向がある。
【0021】
アシル化反応は、130〜180℃で5分〜10時間反応させることが好ましく、140〜160℃で10分〜3時間反応させることがより好ましい。
【0022】
アシル化反応に使用される脂肪酸無水物は,特に限定されないが、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2エチルヘキサン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水β−ブロモプロピオン酸などが挙げられ、これらは2種類以上を混合して用いてもよい。価格と取り扱い性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸が好ましく、より好ましくは、無水酢酸である。
【0023】
エステル交換においては、アシル化物のアシル基がカルボキシル基の0.8〜1.2倍当量であることが好ましい。
【0024】
エステル交換は、130〜400℃で0.1〜50℃/分の割合で昇温しながら行なうことが好ましく、150〜350℃で0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら行なうことがより好ましい。
【0025】
アシル化して得た脂肪酸エステルとカルボン酸とをエステル交換させる際、平衡を移動させるため、副生する脂肪酸と未反応の脂肪酸無水物は、蒸発させるなどして系外へ留去することが好ましい。
【0026】
なお、アシル化反応、エステル交換は、触媒の存在下に行なってもよい。該触媒としては、従来からポリエステルの重合用触媒として公知のものを使用することができ、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモンなどの金属塩触媒、N,N-ジメチルアミノピリジン、N―メチルイミダゾールなどの有機化合物触媒などを挙げることができる。該触媒は、通常、モノマー類の投入時に投入され、アシル化後も除去することは必ずしも必要ではなく、該触媒を除去しない場合にはそのままエステル交換を行なうことができる。
【0027】
エステル交換による重縮合は、通常、溶融重合により行なわれるが、溶融重合と固層重合とを併用してもよい。固相重合は、溶融重合工程からポリマーを抜き出し、その後、粉砕してパウダー状もしくはフレーク状にした後、公知の固相重合方法により行うことが好ましい。具体的には、例えば、窒素などの不活性雰囲気下、20〜350℃で、1〜30時間固相状態で熱処理する方法などが挙げられる。固相重合は、攪拌しながらでも、攪拌することなく静置した状態で行ってもよい。なお適当な攪拌機構を備えることにより溶融重合槽と固相重合槽とを同一の反応槽とすることもできる。固相重合後、得られた芳香族液晶ポリエステルは、公知の方法によりペレット化し、成形してもよい。
芳香族液晶ポリエステルの製造は、例えば、回分装置、連続装置等を用いて行うことができる。
上記した製造方法は、例えば、特開2002−220444号公報、特開2002−146003号公報、特開2002−146003号公報などに記載されている。
【0028】
本発明の芳香族液晶ポリエステルは、種々の成形方法により成膜してフィルムとすることができる。
成膜方法としては、例えば、溶融押出成形、インフレーション成形などが挙げられる。
溶融押出成形は、芳香族液晶ポリエステルを押出機で溶融混練し、Tダイを通して押出した溶融樹脂を巻き取り機の方向(長手方向)に延伸しながら巻き取る方法である。
該成膜方法により、一軸配向フィルムや二軸延伸フィルムを得ることができる。
【0029】
一軸配向フィルム成膜時における押出機の設定条件は、芳香族液晶ポリエステルのモノマー組成に応じて適宜設定できる。
シリンダーの設定温度は200〜400℃の範囲が好ましく、230〜380℃の範囲がより好ましい。この範囲外であると芳香族液晶ポリエステルの熱分解が生じたり、成膜が困難となる傾向がある。
Tダイのスリット間隔は、0.1〜2mmが好ましい。
一軸配向フィルムのドラフト比は1.1〜45の範囲のものが好ましい。ここでドラフト比とは、Tダイスリットの断面積を長手方向のフィルム断面積で除した値をいう。ドラフト比が1.1未満であると、フィルム強度が不十分となる傾向があり、ドラフト比が45を超えると、フィルムの表面平滑性が不十分となる傾向がある。ドラフト比は押し出し機の設定条件、巻き取り速度などにより適宜調整することができる。
【0030】
二軸延伸フィルム成膜時における押出機の設定条件も、芳香族液晶ポリエステルのモノマー組成に応じて適宜設定できる。
シリンダーの設定温度はは200〜400℃の範囲が好ましく、230〜380℃の範囲がより好ましい。
Tダイのスリット間隔は、0.1〜2mmが好ましい。
二軸延伸フィルムは、上記の条件で溶融押出しを行い、Tダイから押出した溶融体シートを長手方向および長手方向と垂直方向(横手方向)に同時に延伸する方法、またはTダイから押し出した溶融体シートをまず長手方向に延伸し、ついでこの延伸シートを同一工程内で100〜400℃の高温下でテンターより横手方向に延伸する逐次延伸の方法などにより得ることができる。
【0031】
二軸延伸フィルムを製造する際、その延伸比は長手方向に1.1〜20倍、横手方向に1.1〜20倍の範囲が好ましい。延伸比が前記の範囲外であると、該フィルムの強度が不十分となったり、または均一な厚みのフィルムを得るのが困難となる傾向がある。
【0032】
インフレーション成形は、芳香族液晶ポリエステルを溶融し、円筒形のダイから押し出した溶融体シートをインフレーション法で成膜する方法である。
即ち、芳香族液晶ポリエステルを環状スリットのダイを備えた溶融混練押し出し機に供給し、シリンダー設定温度を好ましくは200〜400℃、より好ましくは230〜380℃として溶融混練を行って、押出機の環状スリットから筒状の芳香族液晶ポリエステルフィルムが上方または下方へ押出される。環状スリット間隔は、通常、0.1〜5mmであり、好ましくは0.2〜2mmであり、環状スリットの直径は、通常、20〜1000mmであり、好ましくは25〜600mmである。
【0033】
得られた筒状の芳香族液晶ポリエステルフィルムは、長手方向(MD)にドラフトをかけるとともに、この筒状フィルムの内側から空気や窒素ガス等の不活性ガスを吹き込むにより、長手方向と直角な横手方向(TD)に膨張延伸される。
【0034】
前記インフレーション成形(成膜)においては、ブロー比(最終チューブ径と初期径の比)は1.5〜10が好ましく、MD延伸倍率は1.5〜40であることが好ましい。
インフレーション成膜時の設定条件が上記の範囲外であると厚さが均一でしわのない高強度の芳香族液晶ポリエステルフィルムを得るのが困難となる傾向がある。
膨張したフィルムは、その円周を空冷または水冷した後、ニップロールを通過させて引き取る。
【0035】
インフレーション成膜においては、芳香族液晶ポリエステルの組成に応じて、筒状の溶融体フィルムが均一な厚みで表面平滑な状態で膨張するような条件を適宜選択することができる。
【0036】
本発明の芳香族液晶ポリエステルフィルムの厚みは、特に限定されないが、製膜性や機械特性の観点から0.5〜500μmの範囲であることが好ましく、取り扱い性の観点から1〜100μmであることがより好ましい。
【0037】
本発明の芳香族液晶ポリエステルフィルムは、その表面に金属層を積層することにより金属積層体とすることができる。
金属層を形成する表面には、接着力を高めるため、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理などを行うことが好ましい。
【0038】
芳香族液晶ポリエステルフィルムに金属層を形成する方法としては、例えば、(1)加熱圧着により該フィルムに金属層を貼付する方法、(2)該フィルムと金属層とを接着剤により貼付する方法、(3)該フィルムに金属層を蒸着により形成する方法などが挙げられる。
【0039】
(1)の方法は、芳香族ポリエステルフィルムを、そのフィルムの流動開始温度付近でプレス機または加熱ロールを用いて金属層と容易に圧着できるため好ましい。
【0040】
(2)の方法においては、使用される接着剤は、特に限定されないが、ホットメルト接着剤、ポリウレタン接着剤などを例示することができ、中でもエポキシ基含有エチレン共重合体が接着剤として好ましく使用される。
【0041】
(3)の方法においては、金属層を蒸着する方法は特に限定されないが、例えば、イオンビームスパッタリング法、高周波スパッタリング法、直流マグネトロンスパッタリング法、グロー放電法などが挙げられ、高周波スパッタリング法が好ましく使用される。
【0042】
使用される金属としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウムなどが挙げられる。タブテープ、プリント配線板用途では銅が好ましく、コンデンサー用途ではアルミニウムが好ましい。
【0043】
該金属積層体は、芳香族液晶ポリエステルフィルムと金属層との二層以上の積層体であり、例えば、該フィルムと金属層とのニ層構造、該フィルム両面に金属層を積層させた三層構造、または該フィルムと金属層を交互に積層させた五層構造などが挙げられる。
該金属積層体には、高強度発現の目的で、必要に応じて、熱処理を行ってもよい。
【0044】
本発明の芳香族液晶ポリエステルには、機械強度を向上させるために、繊維状、粒状、板状などの無機または有機充填材を配合することができる。
繊維状の充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカアルミナ繊維、チタン酸カリウム繊維、炭素もしくは黒鉛繊維、さらにアルミニウム、チタン、銅などの金属の繊維状物質が挙げられるが、ガラス繊維が好ましい。
【0045】
粒状充填材としては、例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、タルク、クレー、珪藻土、ウオラスナイトなどのケイ酸塩、あるいは酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナ、硫酸カルシウム、その他各種の金属粉末等、カーボンブラック、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉などが挙げられる。
また板状充填材としては、マイカ、ガラスフレーク、各種金属箔などが挙げられる。
その他、有機充填材としては、例えば、芳香族ポリエステル、芳香族ポリイミド、ポリアミドなどからなる耐熱性高強度繊維などが挙げられる。
これらの充填剤は、必要に応じて予め従来公知の表面処理剤により処理することもできる。繊維状充填剤の場合は収束剤なども使用することができる。
【0046】
充填剤を配合する場合、配合量は組成物全体に対して、10重量%〜80重量%、好ましくは10重量%〜70重量%、さらに好ましくは20〜60重量%である。80重量%よりも多く充填剤を配合すると、機械的強度が低下する傾向がある。充填剤の配合方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
【0047】
また、本発明の芳香族液晶ポリエステル芳香族液晶ポリエステル組成物には、上記以外に従来公知の酸化防止剤、補強剤、顔料、増強剤、熱安定剤等の種々の添加剤を適当量添加してもよい。上記した充填剤および添加剤は2種以上を併用してもよい。
【0048】
さらに、本発明の芳香族液晶ポリエステル芳香族液晶ポリエステル組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、熱可塑性樹脂、例えばポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルエーテル及びその変性物、ポリエーテルイミド等や、熱硬化性樹脂、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等を一種または二種以上を添加することもできる。
【0049】
芳香族液晶ポリエステル組成物は、従来公知の成形方法、例えば、押出成形、射出成形、圧縮成形、ブロー成形などの通常の溶融成形に供し、繊維、フィルム、三次元成形品、容器、ホースなどに加工して成形品を得ることができる。
このようにして得られた成形品は、熱処理によって強度を増大させることができ、弾性率も多くの場合向上させることができる。該熱処理は、不活性雰囲気(例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等)中、酸素含有雰囲気(例えば空気)中または減圧下において、成形品をポリマーの融点温度以下の温度で加熱することによって行うことができる。
【0050】
該成形品は、さらに、繊維、フィルム、各種形状に成形することができ、成形性、機械的性質、電気的性質、耐薬品性、耐熱性、耐油性および耐衝撃性に優れていることから、歯車、ギヤ、軸受け、モーター部品等の機械部品、スイッチ、コイルボビン、リレー、コネクター、スイッチ、ソケット等の電気・電子部品、プリンター、複写機、ファクシミリ、ビデオデッキ、ビデオカメラ、フレキシブルディスクドライブ、ハードディスクドライブ、CD−ROMドライブ、光磁気ディスクドライブ等の事務・情報機器部品、ICトレー、ウエハーキャリヤー等の半導体製造プロセス関連部品、マイクロ波調理用鍋、オーブン用耐熱食器等の調理用器具等の大型成形品や複雑な形状の成形品などとして好適に使用される。また、該成形品をフィルム状またはシート状に成形することにより、表示装置用部品、電気絶縁用フィルム、フレキシブル回路基板用フィルム、包装用フィルム、記録媒体用フィルム等にも好適に使用することができる。
さらに、連続繊維、短繊維、パルプ等の繊維状に成形された成形品は、衣料、耐熱断熱材、FRP用補強材、ゴム補強材、ロープ、ケーブル、不織布等の用途にも好適に使用することができる。
【0051】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて説明するが、本発明が実施例により限定されるものでないことは言うまでもない。
【0052】
実施例A
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシー6−ナフトエ酸564.54g(3.00モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル279.32g(1.50モル)、2,6−ナフタレンジカルボン酸324.49g(1.50モル)、無水酢酸704.42(6.90モル)および触媒として1−メチルイミダゾール0.117gを添加し、室温で15分間攪拌した後、攪拌しながら昇温した。内温が145℃となったところ、同温度を保持したまま1時間攪拌し、触媒である1−メチルイミダゾール1.170gをさらに添加した。
次に、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら、145℃から310℃まで3時間かけて昇温し、同温度で2時間30分保持して芳香族ポリエステルを得た。得られた芳香族ポリエステルを室温に冷却し、粉砕機で粉砕して、芳香族ポリエステルの粉末(粒子径は約0.1mm〜約1mm)を得た。
上記で得た粉末を25℃から250℃まで1時間かけて昇温したのち、同温度から320℃まで8時間かけて昇温し、次いで同温度で5時間保温して固相重合させた。その後、固相重合した後の粉末を冷却し、冷却後の粉末(芳香族液晶ポリエステル)をフローテスター〔島津製作所社製、「CFT−500型」〕を用いて、流動開始温度を測定したところ、326℃であった。
【0053】
参考例A
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸911g(6.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル409g(2.2モル)、テレフタル酸274g(1.65モル)、イソフタル酸91g(0.55モル)及び無水酢酸1235g(12.1モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。
その後、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。得られた固形分は室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から290℃まで5時間かけて昇温し、290℃で3時間保持し、固相で重合反応を進めた。その後、固相重合した後の粉末を冷却し、冷却後の粉末(芳香族液晶ポリエステル)をフローテスター〔島津製作所社製、「CFT−500型」〕を用いて、流動開始温度を測定したところ、336℃であった。
【0054】
実施例1
実施例Aにより得られた芳香族液晶ポリエステルを、120℃で4時間予め乾燥し得られた樹脂を、2軸押出機(池貝鉄工(株)PCM−30)を用いて、320℃で造粒した。得られたペレットを用いて、PVT測定機により0.1MPaでの比容積の測定を行った。体積膨張としては50℃の比容積を基準として、100、150、200、250、300℃の各温度での比容積から算出した。結果を表1に示す。
【0055】
PVT測定方法:
PVT(SWO社製)を用い、等圧冷却試験にて以下の条件でPVT測定を行った。測定温度40℃〜360℃、冷却速度5℃/分、圧力水準20、40、80、120、160MPaで測定を行い、得られた結果より0.1MPaの値を算出し、50℃を基準とする体積膨張率を求めた。
【0056】
比較例1
参考例Aにより得られた芳香族液晶ポリエステルを、2軸押出機(池貝鉄工(株)PCM−30)を用いて、350℃で造粒した。得られたペレットを用いて、実施例1と全く同様にPVT測定機により0.1MPaでの比容積の測定から体積膨張としては50℃の比容積を基準として、100、150、200、250、300℃の各温度での比容積から算出した。結果を表1に示す。
【0057】
実施例2
実施例Aにより得られた芳香族液晶ポリエステルを、単軸押出機(スクリュー径50mm)内で溶融し、押出機の先端のTダイ(リップ長さ300mm、リップクリアランス1mm、ダイ温度360℃)より、ドラフト比4の条件でフィルム状に押出し、冷却して厚さ250μmのフィルムを得た。
【0058】
実施例3
実施例2により得られた芳香族液晶ポリエステルフィルムを、18μm厚みの銅箔と300℃・30kg/cm2で10分間プレスし、樹脂付き銅箔を得た。得られた樹脂付き銅箔の銅箔ピール強度(90°ピール)は0.7N/mmであった。
【0059】
実施例4
実施例Aにより得られた芳香族液晶ポリエステルにセントラルガラス製ミルドガラス(EFH−7501)を40重量%配合し混合した後、2軸押出機(池貝鉄工(株)PCM−30)を用いて、330℃で造粒した。得られたペレットを日精樹脂工業(株)製PS40E5ASE型射出成形機を用いて、シリンダー温度340℃、金型温度130℃で射出成形を行い、射出成形品を得た。
【0060】
【表1】
Figure 0004306268
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、熱による体積膨張が小さいフィルムを製造し得る芳香族液晶ポリエステルを提供することが可能となる。

Claims (6)

  1. 2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸由来の繰り返し構造単位40〜60mol%、4,4’−ジフェノール由来の繰り返し構造単位30〜20mol%、および2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の繰り返し構造単位30〜20mol%からなることを特徴とする芳香族液晶ポリエステル。
  2. 請求項1記載の芳香族液晶ポリエステルを溶融押出成形してなることを特徴とする芳香族液晶ポリエステルフィルム。
  3. 請求項1記載の芳香族液晶ポリエステルをインフレーション成形してなることを特徴とするの芳香族液晶ポリエステルフィルム。
  4. 請求項2または3に記載の芳香族液晶ポリエステルフィルムに金属を積層してなることを特徴とする金属積層体。
  5. 請求項1記載の芳香族液晶ポリエステルとガラス繊維とを含有してなり、該ガラス繊維が10重量%〜80重量%であることを特徴とする芳香族液晶ポリエステル組成物。
  6. 請求項5記載の芳香族液晶ポリエステル組成物を射出成形して得られる成形品。
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