JP2015208926A - 積層体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】液晶ポリマーを含む基材の表面に高い密着性で銀層が積層されてなる積層体の製造方法であって、前記基材として非シート状のものも使用でき、前記銀層として、エッチングを行わずにパターニングされたものも積層できる積層体の製造方法、及び前記製造方法で製造された積層体の提供。【解決手段】液晶ポリマーを含む基材11の表面11aに紫外線を照射して、表面11aを改質し、紫外線照射後の表面11aに、金属銀の形成材料が配合されてなる銀インク組成物を用いて銀層12を形成し、積層体1とする。【選択図】図1

Description

本発明は、液晶ポリマーを含む基材の表面に銀層が積層されてなる積層体、及びその製造方法に関する。
各種電子機器での電子回路や、光通信機器での配線の接続には、コネクタが使用される。コネクタには、成形が容易で所望の3次元形状が得られ易く、また軽量であることから、樹脂製の部材が使用されることがある。一方で、コネクタには、十分な耐熱性及び耐薬品性が求められることから、部材を構成する樹脂材料にも同様の耐熱性及び耐薬品性が求められる。このような目的に適した樹脂材料としては、液晶ポリマーがある。
このような樹脂部材を備えたコネクタは、基材となる樹脂部材上に金属層が積層された積層構造を有する。そこで、液晶ポリマーを含む基材上に高い密着性で金属層が積層された積層体が得られれば有用である。このような積層体の製造方法としては、液晶ポリマーフィルムの表面が所定量以上の濃度で窒素原子を有するように窒素化処理された高接着性液晶ポリマーフィルムの表面に、熱融着法、スパッタリング法、無電解メッキ法、接着剤を用いる方法等で金属層を積層して、積層体とする方法が開示されている(特許文献1参照)。
特開2003−221456号公報
しかし、特許文献1に記載の方法は、シート状(フィルム状)の基材の表面に金属層を形成するのには適しているが、非シート状の基材の使用には適さないという問題点があった。また、特許文献1に記載の方法では、基材の表面に金属層が一様に形成されるため、金属層を所望の3次元形状とするために、形成された金属層をさらにエッチングでパターニングする必要があり、工程が煩雑で、廃液の発生等に伴い環境負荷が増大するという問題点があった。そして、そもそもエッチングでは、金属層のパターニングの形状に制約が多いという問題点があった。さらに、特許文献1で具体的に開示されている積層体は、金属層が銅層のものだけであるが、近年では金属層が銀層である積層体の需要が増加しており、このような積層体の製造方法の開発が望まれていた。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、液晶ポリマーを含む基材の表面に高い密着性で銀層が積層されてなる積層体の製造方法であって、前記基材として非シート状のものも使用でき、前記銀層として、エッチングを行わずにパターニングされたものも積層できる積層体の製造方法、及び前記製造方法で製造された積層体を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、液晶ポリマーを含む基材の表面に銀層が積層されてなる積層体の製造方法において、前記基材の表面に紫外線を照射して、前記表面を改質する工程と、紫外線照射後の前記表面に、金属銀の形成材料が配合されてなる銀インク組成物を用いて銀層を形成する工程と、を有することを特徴とする積層体の製造方法を提供する。
本発明の積層体の製造方法においては、前記基材の表面にヒドラジン類を接触させながら、前記基材の表面に前記紫外線を照射してもよい。
本発明の積層体の製造方法においては、前記紫外線の照射強度が、前記ヒドラジン類を用いない場合には3200〜54000mJ/cmであり、前記ヒドラジン類を用いる場合には2100〜53000mJ/cmであることが好ましい。
また、本発明は、液晶ポリマーを含む基材の表面に銀層が積層されてなり、前記銀層の金属銀の比率が99質量%以上であることを特徴とする積層体を提供する。
本発明によれば、液晶ポリマーを含む基材の表面に高い密着性で銀層が積層されてなる積層体の製造方法であって、前記基材として非シート状のものも使用でき、前記銀層として、エッチングを行わずにパターニングされたものも積層できる積層体の製造方法、及び前記製造方法で製造された積層体が提供される。
本発明に係る製造方法で得られた積層体の要部の一例を模式的に示す断面図である。
<<積層体及びその製造方法>>
本発明に係る積層体の製造方法は、液晶ポリマーを含む基材の表面に銀層が積層されてなる積層体の製造方法において、前記基材の表面に紫外線を照射して、前記表面を改質する工程(以下、「紫外線照射工程」と略記することがある)と、紫外線照射後の前記表面に、金属銀の形成材料が配合されてなる銀インク組成物を用いて銀層を形成する工程(以下、「銀層形成工程」と略記することがある)と、を有することを特徴とする。
前記製造方法によれば、液晶ポリマーを含む基材の表面に直接銀層を積層しても、密着性が高くて、基材からの銀層の剥離が抑制された積層体が得られる。また、前記製造方法では、基材としてシート状のものだけでなく、非シート状のものも使用できる。そして、前記銀インク組成物を用いて銀層を形成するに際し、印刷法を利用することで、エッチングを行わずに銀層をパターニングすることもできる。したがって、前記製造方法によれば、所望の3次元形状の積層体が容易に得られ、例えば、各種電子機器での電子回路や、光通信機器での配線の接続に用いるためのコネクタも容易に製造できる。
図1は、前記製造方法で得られた積層体の要部の一例を模式的に示す断面図である。
ここに示す積層体1は、基材11の表面(一方の主面)11aに銀層12が積層されてなるものである。
<基材>
基材11は、液晶ポリマーを含むものであれば特に限定されず、液晶ポリマーのみからなるものであってもよいし、液晶ポリマーと液晶ポリマー以外の成分とを含むものであってもよい。
基材11が含む液晶ポリマー以外の成分は、液晶ポリマー以外の樹脂であってもよいし、樹脂以外の成分であってもよい。
前記液晶ポリマーは公知のものでよく、特に限定されない。
液晶ポリマーは、芳香族ポリエステルであることが好ましく、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ヒドロキシアミンからなる群から選択される1種以上を重縮合させてなる芳香族ポリエステルであることがより好ましい。
前記芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸が例示できる。
前記芳香族ジオールとしては、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(4,4’−ビフェノール)が例示できる。
前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸が例示できる。
前記芳香族ヒドロキシアミンとしては、4−アミノフェノールが例示できる。
液晶ポリマーは、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ヒドロキシアミン以外のその他の単量体を重縮合させてなるものでもよい。
液晶ポリマーは、重量平均分子量が1000以上であることが好ましく、1000〜10000であることがより好ましい。
液晶ポリマーは、融点が330℃以上であることが好ましく、上限値は分解温度を超えない限り特に限定されない。
前記液晶ポリマーは、公知の方法で得られ、目的とする繰り返し単位を有するように、対応する単量体を重縮合させることで得られる。重縮合は、触媒を用いて行ってもよい。
基材11の液晶ポリマーの含有量は、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。
基材11の液晶ポリマー以外の成分の含有量は、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが特に好ましく、その種類に応じて、適宜調節することが好ましい。
基材11が含む液晶ポリマー以外の成分は、一種のみでもよいし、二種以上でもよく、二種以上である場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
基材11が含む液晶ポリマー以外の樹脂は特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれでもよい。
液晶ポリマー以外の樹脂として具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリアミド(PA)、ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリアリレート、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂等の合成樹脂が例示できる。
また、液晶ポリマー以外の樹脂としては、ガラスエポキシ樹脂、ポリマーアロイ等の、二種以上の材質を併用したものでもよい。
基材11の液晶ポリマー以外の樹脂の含有量は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
基材11が含む樹脂以外の成分は特に限定されず、目的に応じて任意に選択できるが、好ましいものとして、フィラー、顔料等の各種添加剤が例示できる。
前記フィラーは公知のものでよく、例えば、繊維状でもよいし、粒子状等、繊維状以外の形状でもよい。
フィラーは、無機フィラーであることが好ましい。
フィラーで好ましいものとしては、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ等が例示できる。
基材11のフィラーの含有量は、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが特に好ましい。
前記顔料は公知のものでよく、酸化チタン、カーボンブラック等が例示できる。
基材11の顔料の含有量は、6質量%以下であることが好ましく、4.5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。
基材11の形状は特に限定されず、シート状(フィルム状)であってもよいし、非シート状であってもよい。基材11の形状が非シート状の立体的な3次元形状であっても、シート状の場合と同様に、印刷法を利用することで、基材11の形状にあわせて任意の形状にパターニングされた銀層12を形成できる。
基材11の大きさも特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。例えば、基材11が、シート状である場合には、その厚さは0.5〜5000μmであることが好ましく、0.5〜2500μmであることがより好ましい。
基材11は、単一の部材からなるものでもよいし、二以上の部材からなるものでもよい。基材11が二以上の部材からなる場合、これら部材は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての部材が同一であってもよいし、すべての部材が異なっていてもよく、一部の部材のみが異なっていてもよい。そして、二以上の部材が互いに異なる場合、これら部材の組み合わせは特に限定されない。ここで、二以上の部材が互いに異なるとは、各部材の材質及び大きさの少なくとも一方が互いに異なることを意味する。
基材11の表面11aは、後述する紫外線照射工程等により表面処理された領域を含む面である。
基材11の表面11aのうち、前記表面処理された領域は、銀層12との接触面全面において50面積%以上であることが好ましく、70面積%以上であることがより好ましく、90面積%以上であることでさらに好ましく、100面積%であること、すなわち、銀層12との接触面全面が前記表面されていることが特に好ましい。
基材11の表面11aにおいて、前記表面処理された領域は、表面11aの一部の領域であってもよいし、表面11aの全領域であってもよい。
基材11の表面11aは、後述する紫外線照射工程を行う前の表面粗さが0.5〜10であることが好ましく、0.5〜5であることがより好ましい。
なお、ここでの「表面粗さ」とは、JIS B0601:2001(ISO4287:1997)に基づくものであり、算術平均粗さ(Ra)を意味し、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さlだけを抜き取り、この抜取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=Z(x)で表したときに、以下の式(II)によって求められた値をナノメートル(nm)単位で表示したものである。
Figure 2015208926
<銀層>
銀層12は、基材11の表面11aのうち、前記表面処理された領域に積層されていることで、例えば、基材11と銀層12との密着性を向上させるための受容層を別途設けていなくても、基材11との密着性が高く、基材11からの剥離が抑制されている。
銀層12の形状は、目的に応じて任意に設定でき、基材11の形状にあわせて、シート状(フィルム状)であってもよいし、非シート状であってもよく、非シート状である場合、パターニングされていてもよい。パターニングされた銀層12は、例えば、配線として有用である。
銀層12の大きさも特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。例えば、銀層12が、シート状又は線状である場合には、その厚さは、0.01〜50μmであることが好ましく、0.05〜40μmであることがより好ましい。
銀層12は、単層からなるものでもよいし、二層以上の複数層からなるものでもよい。銀層12が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが異なっていてもよい。そして、複数層が互いに異なる場合、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。ここで、複数層が互いに異なるとは、各層の金属銀の比率及び厚さの少なくとも一方が互いに異なることを意味する。
銀層12は、後述する金属銀の形成材料を用いて形成され、金属銀を主成分とするものであり、金属銀の比率が、見かけ上金属銀だけからなるとみなし得る程度に十分に高く、銀層12中の金属銀の比率は、好ましくは99質量%以上である。
銀層12は導電性に優れ、体積抵抗率を好ましくは100μΩ・cm以下、より好ましくは50μΩ・cm以下、さらに好ましくは20μΩ・cm以下、特に好ましくは10μΩ・cm以下とすることが可能である。銀層12の体積抵抗率は、金属銀の形成材料の種類や、銀層12自体の厚さ等により調節できる。
本発明における積層体は、図1に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、他の構成が追加されたり、一部構成が適宜変更されたものでもよい。例えば、基材11上に銀層12以外のその他の層が設けられたものでもよく、前記その他の層としては、銀層12を被覆するオーバーコート層(図示略)が例示できる。
また、ここでは、積層体1として基材11の一方の主面11a上に銀層12を備えたものを示しているが、本発明における積層体は、基材11の他方の主面11b上にも同様に(基材11の両方の主面上に)銀層12を備えたものでもよい。
また、本発明における積層体は、基材の形状に応じて、基材と銀層との接触面を、銀層の表面の任意の領域に設けることができる。
例えば、積層体は、基材、銀層及び基材がこの順に積層された構造を有するものであってもよく、この場合、銀層の上下に積層されている基材は、互いに別のものであってもよいし、一体となっているものでもよい。
前記積層体は、受容層を設けることなく、基材の表面に直接銀層を積層しても、基材と銀層との密着性が高い。また、前記銀層は導電性に優れる。そこで、前記積層体は、各種電子機器や通信機器等を構成するのに好適であり、特に、電子機器での電子回路や、光通信機器での配線の接続に用いるコネクタを構成するのに適している。コネクタは、十分な耐熱性及び耐薬品性を有することが求められるだけでなく、複雑な3次元形状の基材上に金属層が積層された積層構造を有することがある。これに対して、前記積層体は、基材として液晶ポリマーを含むものを用いることで、十分な耐熱性及び耐薬品性を有する。また、前記積層体は、前記製造方法により銀インク組成物を用いることで、基材としてシート状のものだけでなく、非シート状の所望の3次元形状のものも使用できる。
前記積層体は、前記紫外線照射工程及び銀層形成工程を有する製造方法で製造できる。以下、前記製造方法について説明する。
<紫外線照射工程>
紫外線照射工程では、前記基材の表面(図1においては、基材11の表面11a)に紫外線を照射して、前記表面を改質する(表面処理を行う)。本明細書において「基材の表面の改質」とは、金属銀の形成材料を用いて形成された銀層と基材との密着性が、表面に対して特別な処理が行われていない基材を用いた場合とは異なると認識できる程度に、基材の表面の性質が変化している(改善されている)ことを意味し、必ずしも基材の表面の外観が変化することを意味するものではない。本発明においては、基材の表面に紫外線を照射することにより、オゾンの作用で基材の表面が改質されると推測される。
紫外線としては、例えば、波長が10〜400nm程度のものを用いることができるが、中心波長が100〜260nmのものを用いることが好ましい。
紫外線は、低圧水銀ランプ、エキシマランプ等のランプを用いる方法等、公知の方法で発生させて用いればよい。
紫外線の照射条件は、必要に応じて基材の種類等を考慮して、適宜調節すればよい。
紫外線の照射強度(後述するヒドラジン類を用いない場合の紫外線の照射強度)は、特に限定されないが、3200〜54000mJ/cmであることが好ましく、3500〜52000mJ/cmであることがより好ましい。紫外線の照射強度が前記下限値以上であることで、基材の表面処理(基材の表面の改質)の程度がより向上して、その結果、基材と銀層との密着性がより向上する。また、紫外線の照射強度が前記上限値以下であることで、基材の表面処理の程度が過剰とならずに、基材と銀層との密着性がより向上する。
紫外線の照射時間は、特に限定されないが、1秒〜60分であることが好ましく、5秒〜30分であることがより好ましい。紫外線の照射時間が前記下限値以上であることで、基材の表面処理(基材の表面の改質)の程度がより向上して、その結果、基材と銀層との密着性がより向上する。また、紫外線の照射時間が前記上限値以下であることで、基材の表面処理の程度が過剰とならずに、基材と銀層との密着性がより向上する。
紫外線は、基材の表面に直接照射してもよいし、紫外光透過性を有する媒体を介して照射してもよい。そして、前記媒体は石英ガラス等の固形状のものでもよいし、溶媒又は溶液等の液状のものでもよく、複数種の媒体を組み合わせて用いてもよい。
紫外線照射工程においては、前記基材の表面にヒドラジン類を接触させながら、前記基材の表面に紫外線を照射してもよい。このように、ヒドラジン類を介して基材の表面に紫外線を照射することにより、基材と銀層との密着性がより向上したり、ヒドラジン類を用いなかった場合と同等の基材と銀層との密着性を、より小さい紫外線の照射強度で達成できることがある。基材の表面にヒドラジン類が接触することで、基材の表面に窒素原子が導入され、このような状態の表面に紫外線を照射することにより、基材の表面処理の程度がより向上すると推測される。
本明細書において、ヒドラジン類とは、ヒドラジン(NH−NH)、ヒドラジン一水和物(抱水ヒドラジン、NH−NH・HO)、ヒドラジン又はヒドラジン一水和物の窒素原子に結合している1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたヒドラジン誘導体、及びヒドラジン塩を意味する。
前記ヒドラジン誘導体において、前記水素原子以外の基が2個以上である場合、前記基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての前記基が同一であってもよいし、すべての前記基が異なっていてもよく、一部の前記基のみが異なっていてもよい。前記基としてはアルキル基、アリール基等が例示でき、好ましい前記ヒドラジン誘導体としては、フェニルヒドラジン(C−NH−NH)が例示できる。
前記ヒドラジン塩としては、ヒドラジン又は前記ヒドラジン誘導体が酸と反応してなる塩が例示でき、前記酸は無機酸及び有機酸のいずれでもよいが、無機酸であることが好ましい。
好ましい前記ヒドラジン塩としては、ヒドラジン一塩酸塩(モノ塩酸ヒドラジン、NH−NH・HCl)、ヒドラジン二塩酸塩(ジ塩酸ヒドラジン、NH−NH・2HCl)、ヒドラジン硫酸塩(硫酸ヒドラジン、NH−NH・HSO)、ヒドラジンモノ臭化水素酸塩(モノ臭化水素酸ヒドラジン、NH−NH・HBr)、ヒドラジン炭酸塩(炭酸ヒドラジン、NH−NH・HCO)、ヒドラジン酢酸塩(酢酸ヒドラジン、NH−NH・CHCOOH)等が例示できる。
ヒドラジン類は、それ自体をそのまま基材の表面に接触させてもよいし、希釈して基材の表面に接触させてもよい。
ヒドラジン類自体をそのまま(希釈せずに)基材の表面に接触させる場合には、ヒドラジン類は、液状、気体状(ガス状)及び固形状のいずれの状態で用いてもよく、ヒドラジン類の特性に応じて使い分ければよいが、液状又は気体状で用いることが好ましい。
ヒドラジン類を希釈して基材の表面に接触させる場合には、ヒドラジン類の溶液及び混合ガスのいずれも用いることができる。
ヒドラジン類の溶液を用いる場合、溶媒としては、水を用いることが好ましく、ヒドラジン類の溶液はヒドラジン類の水溶液であることが好ましい。
ヒドラジン類の溶液において、ヒドラジン類の濃度は特に限定されないが、10〜50質量%であることが好ましく、15〜35質量%であることがより好ましい。このような濃度とすることで、ヒドラジン類を溶液として用いることによる効果がより顕著に得られる。
ヒドラジン類の混合ガスを用いる場合、ヒドラジン類と併用するガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスであることが好ましい。
ヒドラジン類の混合ガスにおいて、ヒドラジン類の濃度は特に限定されないが、10〜90モル%であることが好ましい。このような濃度とすることで、ヒドラジン類を混合ガスとして用いることによる効果がより顕著に得られる。
基材の表面に、液状のヒドラジン類又はヒドラジン類の溶液を接触させるときは、基材の表面に液状のヒドラジン類又はヒドラジン類の溶液を付着させ、付着させたヒドラジン類又はその溶液の上に、樹脂製又は石英ガラス製等の紫外光透過性を有するシート状の媒体を載置することが好ましい。このようにすることで、基材の表面にヒドラジン類が高い均一性で広がるため、紫外線の照射による基材の表面処理を、表面の位置によらず高い均一性で行うことができる。
前記基材の表面に接触させたヒドラジン類は、紫外線の照射後に、基材の表面から除去すればよい。このとき、基材の表面は、水、アルコール、水及びアルコールの混合液等の洗浄液で、1回又は二回以上洗浄することが好ましい。
前記基材の表面にヒドラジン類を接触させる場合には、その接触前に、基材の表面のヒドラジン類を接触させる部位にあらかじめ紫外線を照射しておいてもよい。このように、紫外線による前処理を行うことで、基材と銀層との密着性がより向上したり、紫外線による前処理を行わなかった場合と同等の基材と銀層との密着性を、より小さい紫外線の照射強度での前記表面処理によって達成できることがある。
紫外線による前処理は、上述の紫外線の照射条件と同様の条件で行うことができる。
前記基材の表面にヒドラジン類を接触させる場合には、紫外線の照射強度は、2100〜53000mJ/cmであることが好ましく、2500〜50000mJ/cmであることがより好ましい。紫外線の照射強度が前記下限値以上であることで、基材の表面処理(基材の表面の改質)の程度がより向上して、その結果、基材と銀層との密着性がより向上する。また、紫外線の照射強度が前記上限値以下であることで、基材の表面処理の程度が過剰とならずに、基材と銀層との密着性がより向上する。
前記基材の表面にヒドラジン類を接触させる場合の、紫外線の照射強度以外の照射条件は、ヒドラジン類を用いない場合と同様でよい。
<銀層形成工程>
銀層形成工程では、紫外線照射後の前記基材の表面(図1においては、基材11の表面11a)に、金属銀の形成材料が配合されてなる銀インク組成物を用いて銀層を形成する。
銀層は、前記銀インク組成物を基材の表面の所望の箇所に付着させ、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理を適宜選択して行うことで形成できる。加熱処理は、乾燥処理を兼ねて行ってもよい。
銀インク組成物において、配合される金属銀の形成材料は、一種のみでもよいし、二種以上でもよく、二種以上である場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記金属銀の形成材料は、銀原子(元素)を有し、分解等の構造変化によって金属銀を生じるものであればよく、銀塩、銀錯体、有機銀化合物(銀−炭素結合を有する化合物)等が例示できる。前記銀塩及び銀錯体は、有機基を有する銀化合物及び有機基を有しない銀化合物のいずれでもよい。なかでも金属銀の形成材料は、銀塩であることが好ましい。
金属銀の形成材料を用いることで、前記材料から金属銀が生じ、この金属銀を含む銀層が形成される。
銀インク組成物としては、液状のものが好ましく、金属銀の形成材料が均一に分散されたものが好ましい。
[カルボン酸銀]
金属銀の形成材料としては、式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀が例示できる。
本発明において、カルボン酸銀は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記カルボン酸銀は、式「−COOAg」で表される基を有していれば特に限定されない。例えば、式「−COOAg」で表される基の数は1個のみでもよいし、2個以上でもよい。また、カルボン酸銀中の式「−COOAg」で表される基の位置も特に限定されない。
前記カルボン酸銀は、下記一般式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀(以下、「β−ケトカルボン酸銀(1)」と略記することがある)及び下記一般式(4)で表されるカルボン酸銀(以下、「カルボン酸銀(4)」と略記することがある)からなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
なお、本明細書においては、単なる「カルボン酸銀」との記載は、特に断りの無い限り、「β−ケトカルボン酸銀(1)」及び「カルボン酸銀(4)」だけではなく、これらを包括する、「式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀」を意味するものとする。
Figure 2015208926
(式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R−CY −」、「CY −」、「R−CHY−」、「RO−」、「RN−」、「(RO)CY−」若しくは「R−C(=O)−CY −」で表される基であり;
はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;Rは炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり;R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり;
はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基、又は一般式「RO−」、「RS−」、「R−C(=O)−」若しくは「R−C(=O)−O−」で表される基であり;
は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
Figure 2015208926
(式中、Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基又は式「−C(=O)−OAg」で表される基であり、前記脂肪族炭化水素基がメチレン基を有する場合、1個以上の該メチレン基はカルボニル基で置換されていてもよい。)
(β−ケトカルボン酸銀(1))
β−ケトカルボン酸銀(1)は、前記一般式(1)で表される。
式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R−CY −」、「CY −」、「R−CHY−」、「RO−」、「RN−」、「(RO)CY−」若しくは「R−C(=O)−CY −」で表される基である。
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状(脂肪族環式基)のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。また、前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでもよい。そして、前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜6であることがより好ましい。Rにおける好ましい前記脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が例示できる。
Rにおける直鎖状又は分枝鎖状の前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、4,4−ジメチルペンチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、4−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、1−プロピルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、1,1−ジメチルヘキシル基、2,2−ジメチルヘキシル基、3,3−ジメチルヘキシル基、4,4−ジメチルヘキシル基、5,5−ジメチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基が例示できる。
Rにおける環状の前記アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基が例示できる。
Rにおける前記アルケニル基としては、ビニル基(エテニル基、−CH=CH)、アリル基(2−プロペニル基、−CH−CH=CH)、1−プロペニル基(−CH=CH−CH)、イソプロペニル基(−C(CH)=CH)、1−ブテニル基(−CH=CH−CH−CH)、2−ブテニル基(−CH−CH=CH−CH)、3−ブテニル基(−CH−CH−CH=CH)、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基等の、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が二重結合(C=C)に置換された基が例示できる。
Rにおける前記アルキニル基としては、エチニル基(−C≡CH)、プロパルギル基(−CH−C≡CH)等の、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が三重結合(C≡C)に置換された基が例示できる。
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が例示できる。また、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての置換基が同一であってもよいし、すべての置換基が異なっていてもよく、一部の置換基のみが異なっていてもよい。
Rにおけるフェニル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、炭素数が1〜16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、該脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基(−OH)、シアノ基(−C≡N)、フェノキシ基(−O−C)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
置換基である前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるYは、それぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子である。そして、一般式「R−CY −」、「CY −」及び「R−C(=O)−CY −」においては、それぞれ複数個のYは、互いに同一でも異なっていてもよい。
RにおけるRは、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基(C−)であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるRは、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるRは、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるR及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基である。すなわち、R及びRは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1〜18である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるRは、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
Rは、上記の中でも、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、一般式「R−C(=O)−CY −」で表される基、水酸基又はフェニル基であることが好ましい。そして、Rは、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であることが好ましい。
一般式(1)において、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基(C−CH−)、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基(C−O−CH=CH−)、又は一般式「RO−」、「RS−」、「R−C(=O)−」若しくは「R−C(=O)−O−」で表される基である。
における炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基としては、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
におけるフェニル基及びベンジル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ニトロ基(−NO)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
におけるRは、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基(CS−)、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基(ビフェニル基、C−C−)である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜10である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。また、Rにおけるフェニル基及びジフェニル基の前記置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
がチエニル基又はジフェニル基である場合、これらの、Xにおいて隣接する基又は原子(酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基)との結合位置は、特に限定されない。例えば、チエニル基は、2−チエニル基及び3−チエニル基のいずれでもよい。
一般式(1)において、2個のXは、2個のカルボニル基で挟まれた炭素原子と二重結合を介して1個の基として結合していてもよく、このようなものとしては式「=CH−C−NO」で表される基が例示できる。
は、上記の中でも、水素原子、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、ベンジル基、又は一般式「R−C(=O)−」で表される基であることが好ましく、少なくとも一方のXが水素原子であることが好ましい。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、2−メチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CH)−C(=O)−OAg)、アセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−エチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CHCH)−C(=O)−OAg)、プロピオニル酢酸銀(CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、イソブチリル酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、ピバロイル酢酸銀((CHC−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、カプロイル酢酸銀(CH(CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−n−ブチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CHCHCHCH)−C(=O)−OAg)、2−ベンジルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CH)−C(=O)−OAg)、ベンゾイル酢酸銀(C−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、ピバロイルアセト酢酸銀((CHC−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、イソブチリルアセト酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−アセチルピバロイル酢酸銀((CHC−C(=O)−CH(−C(=O)−CH)−C(=O)−OAg)、2−アセチルイソブチリル酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH(−C(=O)−CH)−C(=O)−OAg)、又はアセトンジカルボン酸銀(AgO−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)であることが好ましい。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理により形成された導電体(金属銀)において、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。原料や不純物が少ない程、例えば、形成された金属銀同士の接触が良好となり、導通が容易となり、抵抗率が低下する。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、後述するように、当該分野で公知の還元剤等を使用しなくても、好ましくは60〜210℃、より好ましくは60〜200℃という低温で分解し、金属銀を形成することが可能である。そして、還元剤と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。還元剤については後ほど説明する。
本発明において、β−ケトカルボン酸銀(1)は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
(カルボン酸銀(4))
カルボン酸銀(4)は、前記一般式(4)で表される。
式中、Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基(−COOH)又は式「−C(=O)−OAg」で表される基である。
における前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。ただし、Rにおける前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜15であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。
における前記脂肪族炭化水素基がメチレン基(−CH−)を有する場合、1個以上の該メチレン基はカルボニル基で置換されていてもよい。カルボニル基で置換されていてもよいメチレン基の数及び位置は特に限定されず、すべてのメチレン基がカルボニル基で置換されていてもよい。ここで「メチレン基」とは、単独の式「−CH−」で表される基だけでなく、式「−CH−」で表される基が複数個連なったアルキレン基中の1個の式「−CH−」で表される基も含むものとする。
カルボン酸銀(4)は、ピルビン酸銀(CH−C(=O)−C(=O)−OAg)、酢酸銀(CH−C(=O)−OAg)、酪酸銀(CH−(CH−C(=O)−OAg)、イソ酪酸銀((CHCH−C(=O)−OAg)、2−エチルへキサン酸銀(CH−(CH−CH(CHCH)−C(=O)−OAg)、ネオデカン酸銀(CH−(CH−C(CH−C(=O)−OAg)、シュウ酸銀(AgO−C(=O)−C(=O)−OAg)、又はマロン酸銀(AgO−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)であることが好ましい。また、上記のシュウ酸銀(AgO−C(=O)−C(=O)−OAg)及びマロン酸銀(AgO−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)の2個の式「−COOAg」で表される基のうち、1個が式「−COOH」で表される基となったもの(HO−C(=O)−C(=O)−OAg、HO−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)も好ましい。
カルボン酸銀(4)も、β−ケトカルボン酸銀(1)と同様に、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理により形成された導電体(金属銀)において、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。そして、還元剤と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。
本発明において、カルボン酸銀(4)は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記カルボン酸銀は、2−メチルアセト酢酸銀、アセト酢酸銀、2−エチルアセト酢酸銀、プロピオニル酢酸銀、イソブチリル酢酸銀、ピバロイル酢酸銀、カプロイル酢酸銀、2−n−ブチルアセト酢酸銀、2−ベンジルアセト酢酸銀、ベンゾイル酢酸銀、ピバロイルアセト酢酸銀、イソブチリルアセト酢酸銀、アセトンジカルボン酸銀、ピルビン酸銀、酢酸銀、酪酸銀、イソ酪酸銀、2−エチルへキサン酸銀、ネオデカン酸銀、シュウ酸銀及びマロン酸銀からなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
そして、これらカルボン酸銀の中でも、2−メチルアセト酢酸銀及びアセト酢酸銀は、後述する含窒素化合物(なかでもアミン化合物)との相溶性に優れ、銀インク組成物の高濃度化に、特に適したものとして挙げられる。
銀インク組成物において、前記金属銀の形成材料に由来する銀の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。このような範囲であることで、形成された導電体(金属銀)は品質により優れたものとなる。前記銀の含有量の上限値は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、取り扱い性等を考慮すると25質量%であることが好ましい。
なお、本明細書において、「金属銀の形成材料に由来する銀」とは、特に断りの無い限り、銀インク組成物の製造時に配合された前記金属銀の形成材料中の銀を意味し、配合後に引き続き金属銀の形成材料を構成している銀と、配合後に金属銀の形成材料が分解して生じた分解物中の銀及び銀自体と、の両方を含む概念とする。
[含窒素化合物]
銀インク組成物は、特に前記金属銀の形成材料が前記カルボン酸銀である場合、前記金属銀の形成材料以外に、さらに含窒素化合物が配合されてなるものが好ましい。
前記含窒素化合物は、炭素数25以下のアミン化合物(以下、「アミン化合物」と略記することがある)、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩(以下、「第4級アンモニウム塩」と略記することがある)、アンモニア、炭素数25以下のアミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩(以下、「アミン化合物由来のアンモニウム塩」と略記することがある)、及びアンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩(以下、「アンモニア由来のアンモニウム塩」と略記することがある)からなる群から選択される一種以上のものである。すなわち、配合される含窒素化合物は、一種のみでよいし、二種以上でもよく、二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
(アミン化合物、第4級アンモニウム塩)
前記アミン化合物は、炭素数が1〜25であり、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンのいずれでもよい。また、前記第4級アンモニウム塩は、炭素数が4〜25である。前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、鎖状及び環状のいずれでもよい。また、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子(例えば、第1級アミンのアミノ基(−NH)を構成する窒素原子)の数は1個でもよいし、2個以上でもよい。
前記第1級アミンとしては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいモノアルキルアミン、モノアリールアミン、モノ(ヘテロアリール)アミン、ジアミン等が例示できる。
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、Rにおける前記アルキル基と同様のものが例示でき、炭素数が1〜19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。
好ましい前記モノアルキルアミンとして、具体的には、n−ブチルアミン、n−へキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−アミノペンタン、3−メチルブチルアミン、2−ヘプチルアミン(2−アミノヘプタン)、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミンが例示できる。
前記モノアリールアミンを構成するアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が例示でき、炭素数が6〜10であることが好ましい。
前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、芳香族環骨格を構成する原子として、ヘテロ原子を有するものであり、前記ヘテロ原子としては、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ホウ素原子が例示できる。また、芳香族環骨格を構成する前記へテロ原子の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよい。2個以上である場合、これらへテロ原子は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、これらへテロ原子は、すべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけ異なっていてもよい。
前記ヘテロアリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されないが、3〜12員環であることが好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜4個有する単環状のものとしては、ピロリル基、ピロリニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペリジニル基、ピラゾリジニル基、ピペラジニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1個有する単環状のものとしては、フラニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1個有する単環状のものとしては、チエニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、モルホリニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、チアゾリル基、チアジアゾリル基、チアゾリジニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜5個有する多環状のものとしては、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラゾロピリジル基、テトラゾロピリダジニル基、ジヒドロトリアゾロピリダジニル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ジチアナフタレニル基、ベンゾチオフェニル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ジアミンは、アミノ基を2個有していればよく、2個のアミノ基の位置関係は特に限定されない。好ましい前記ジアミンとしては、前記モノアルキルアミン、モノアリールアミン又はモノ(ヘテロアリール)アミンにおいて、アミノ基(−NH)を構成する水素原子以外の1個の水素原子が、アミノ基で置換されたものが例示できる。
前記ジアミンは炭素数が1〜10であることが好ましく、より好ましいものとしてはエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタンが例示できる。
前記第2級アミンとしては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいジアルキルアミン、ジアリールアミン、ジ(ヘテロアリール)アミン等が例示できる。
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
好ましい前記ジアルキルアミンとして、具体的には、N−メチル−n−ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミンが例示できる。
前記ジアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。また、ジアリールアミン一分子中の2個のアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基と同様であり、6〜12員環であることが好ましい。また、ジ(ヘテロアリール)アミン一分子中の2個のヘテロアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記第3級アミンとしては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいトリアルキルアミン、ジアルキルモノアリールアミン等が例示できる。
前記トリアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、トリアルキルアミン一分子中の3個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、3個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
好ましい前記トリアルキルアミンとして、具体的には、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンが例示できる。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルモノアリールアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。
本発明において、前記第4級アンモニウム塩としては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいハロゲン化テトラアルキルアンモニウム等が例示できる。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19であることが好ましい。また、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム一分子中の4個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、4個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が例示できる。
好ましい前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムとして、具体的には、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドが例示できる。
ここまでは、主に鎖状のアミン化合物及び第4級有機アンモニウム塩について説明したが、前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子が環骨格構造(複素環骨格構造)の一部であるようなヘテロ環化合物であってもよい。すなわち、前記アミン化合物は環状アミンでもよく、前記第4級アンモニウム塩は環状アンモニウム塩でもよい。この時の環(アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子を含む環)構造は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されず、脂肪族環及び芳香族環のいずれでもよい。
環状アミンであれば、好ましいものとして、ピリジンが例示できる。
前記第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム塩において、「置換基で置換されていてもよい水素原子」とは、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子に結合している水素原子以外の水素原子である。この時の置換基の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよく、前記水素原子のすべてが置換基で置換されていてもよい。置換基の数が複数の場合には、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、複数個の置換基はすべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。また、置換基の位置も特に限定されない。
前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩における前記置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、トリフルオロメチル基(−CF)等が例示できる。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、前記アルキル基は、置換基としてアリール基を有する、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は置換基として好ましくは炭素数が1〜5のアルキル基を有する、炭素数が3〜7の環状のアルキル基が好ましく、このような置換基を有するモノアルキルアミンとして、具体的には、2−フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、2,3−ジメチルシクロヘキシルアミンが例示できる。
また、置換基である前記アリール基及びアルキル基は、さらに1個以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、このようなハロゲン原子で置換された置換基を有するモノアルキルアミンとしては、2−ブロモベンジルアミンが例示できる。ここで、前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
前記モノアリールアミンを構成するアリール基が置換基を有する場合、前記アリール基は、置換基としてハロゲン原子を有する、炭素数が6〜10のアリール基が好ましく、このような置換基を有するモノアリールアミンとして、具体的には、ブロモフェニルアミンが例示できる。ここで、前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、前記アルキル基は、置換基として水酸基又はアリール基を有する、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、このような置換基を有するジアルキルアミンとして、具体的には、ジエタノールアミン、N−メチルベンジルアミンが例示できる。
前記アミン化合物は、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−へキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−アミノペンタン、3−メチルブチルアミン、2−ヘプチルアミン、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、2−フェニルエチルアミン、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、N−メチル−n−ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、N−メチルベンジルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン又はN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンであることが好ましい。
そして、これらアミン化合物の中でも、2−エチルヘキシルアミンは、前記カルボン酸銀との相溶性に優れ、銀インク組成物の高濃度化に特に適しており、さらに銀層の表面粗さの低減に特に適したものとして挙げられる。
(アミン化合物由来のアンモニウム塩)
本発明において、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩は、前記アミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩であり、前記酸は、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸でもよいし、酢酸等の有機酸でもよく、酸の種類は特に限定されない。
前記アミン化合物由来のアンモニウム塩としては、n−プロピルアミン塩酸塩、N−メチル−n−ヘキシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン塩酸塩等が例示できるが、これらに限定されない。
(アンモニア由来のアンモニウム塩)
本発明において、前記アンモニア由来のアンモニウム塩は、アンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩であり、ここで酸としては、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩の場合と同じものが例示できる。
前記アンモニア由来のアンモニウム塩としては、塩化アンモニウム等が例示できるが、これに限定されない。
本発明においては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩は、それぞれ一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
そして、前記含窒素化合物としては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩からなる群から選択される一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
銀インク組成物において、前記含窒素化合物の配合量は、前記金属銀の形成材料の配合量1モルあたり0.3〜15モルであることが好ましく、0.3〜5モルであることがより好ましい。前記含窒素化合物の前記配合量がこのような範囲であることで、銀インク組成物は安定性がより向上し、導電体(金属銀)の品質がより向上する。さらに、高温による加熱処理を行わなくても、より安定して導電体を形成できる。
[還元剤]
銀インク組成物は、前記金属銀の形成材料以外に、さらに還元剤が配合されてなるものが好ましい。還元剤を配合することで、前記銀インク組成物は、金属銀をより形成し易くなり、例えば、低温での加熱処理でも十分な導電性を有する導電体(金属銀)を形成できる。
前記還元剤は、シュウ酸、ヒドラジン及び下記一般式(5)で表される化合物(以下、「化合物(5)」と略記することがある)からなる群から選択される一種以上の還元性化合物(以下、単に「還元性化合物」と略記することがある)であることが好ましい。
H−C(=O)−R21 ・・・・(5)
(式中、R21は、炭素数20以下のアルキル基、アルコキシ基若しくはN,N−ジアルキルアミノ基、水酸基又はアミノ基である。)
(還元性化合物)
前記還元性化合物は、シュウ酸(HOOC−COOH)、ヒドラジン(HN−NH)及び前記一般式(5)で表される化合物(化合物(5))からなる群から選択される一種以上のものである。すなわち、配合される還元性化合物は、一種のみでよいし、二種以上でもよく、二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
21における炭素数20以下のアルキル基は、炭素数が1〜20であり、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、前記一般式(1)のRにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
21における炭素数20以下のアルコキシ基は、炭素数が1〜20であり、R21における前記アルキル基が酸素原子に結合してなる一価の基が例示できる。
21における炭素数20以下のN,N−ジアルキルアミノ基は、炭素数が2〜20であり、窒素原子に結合している2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよく、該アルキル基はそれぞれ炭素数が1〜19である。ただし、これら2個のアルキル基の炭素数の合計値が2〜20である。
窒素原子に結合している前記アルキル基は、それぞれ直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、炭素数が1〜19である点以外は、前記一般式(1)のRにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
前記還元性化合物として、ヒドラジンは、一水和物(HN−NH・HO)を用いてもよい。
前記還元性化合物で好ましいものとしては、ギ酸(H−C(=O)−OH);ギ酸メチル(H−C(=O)−OCH)、ギ酸エチル(H−C(=O)−OCHCH)、ギ酸ブチル(H−C(=O)−O(CHCH)等のギ酸エステル;プロパナール(H−C(=O)−CHCH)、ブタナール(H−C(=O)−(CHCH)、ヘキサナール(H−C(=O)−(CHCH)等のアルデヒド;ホルムアミド(H−C(=O)−NH)、N,N−ジメチルホルムアミド(H−C(=O)−N(CH)等のホルムアミド類(式「H−C(=O)−N(−)−」で表される基を有する化合物);シュウ酸が例示できる。
銀インク組成物において、還元剤の配合量は、前記金属銀の形成材料の配合量1モルあたり0.04〜3.5モルであることが好ましく、0.06〜2.5モルであることがより好ましい。還元剤の前記配合量がこのような範囲であることで、銀インク組成物は、より容易に、より安定して導電体(金属銀)を形成できる。
[アルコール]
銀インク組成物は、前記金属銀の形成材料以外に、さらにアルコールが配合されてなるものでもよい。
前記アルコールは、下記一般式(2)で表されるアセチレンアルコール類(以下、「アセチレンアルコール(2)」と略記することがある)であることが好ましい。
Figure 2015208926
(式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。)
(アセチレンアルコール(2))
アセチレンアルコール(2)は、前記一般式(2)で表される。
式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。
R’及びR’’における炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。R’及びR’’における前記アルキル基としては、Rにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
R’及びR’’におけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基としては、炭素数が1〜16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、該脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、シアノ基、フェノキシ基等が例示でき、Rにおけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基と同様である。そして、置換基の数及び位置は特に限定されず、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
R’及びR’’は、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
好ましいアセチレンアルコール(2)としては、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オールが例示できる。
アセチレンアルコール(2)を用いる場合、銀インク組成物において、アセチレンアルコール(2)の配合量は、前記金属銀の形成材料の配合量1モルあたり0.03〜0.7モルであることが好ましく、0.05〜0.3モルであることがより好ましい。アセチレンアルコール(2)の前記配合量がこのような範囲であることで、銀インク組成物の安定性がより向上する。
前記アルコールは、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合で、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
[その他の成分]
銀インク組成物は、前記金属銀の形成材料、含窒素化合物、還元剤及びアルコール以外の、その他の成分が配合されてなるものでもよい。
銀インク組成物における前記その他の成分は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されず、好ましいものとしては、アルコール以外の溶媒が例示でき、配合成分の種類や量に応じて任意に選択できる。
銀インク組成物における前記その他の成分は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合で、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
銀インク組成物において、配合成分の総量に対する前記その他の成分の配合量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0質量、すなわちその他の成分を配合しなくても、銀インク組成物は十分にその効果を発現する。
銀インク組成物は、配合成分がすべて溶解していてもよいし、一部又は全ての成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、配合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
[銀インク組成物の製造方法]
銀インク組成物は、前記金属銀の形成材料、及び前記金属銀の形成材料以外の成分を配合することで得られる。各成分の配合後は、得られたものをそのまま銀インク組成物としてもよいし、必要に応じて引き続き公知の精製操作を行って得られたものを銀インク組成物としてもよい。本発明においては、特に前記金属銀の形成材料としてβ−ケトカルボン酸銀(1)を用いた場合、上記の各成分の配合時において、導電性を阻害する不純物が生成しないか、又はこのような不純物の生成量を極めて少量に抑制できるため、精製操作を行っていない銀インク組成物を用いても、十分な導電性を有する導電体(金属銀)が得られる。
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。ただし、本発明においては、前記還元剤は滴下により配合することが好ましく、さらに滴下速度の変動を抑制することで、金属銀の表面粗さをより低減できる傾向にある。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
銀インク組成物において、溶解していない成分を均一に分散させる場合には、例えば、上記の三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を用いて分散させる方法を適用するのが好ましい。
配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、−5〜60℃であることが好ましい。そして、配合時の温度は、配合成分の種類及び量に応じて、配合して得られた混合物が撹拌し易い粘度となるように、適宜調節するとよい。
また、配合時間も、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、10分〜36時間であることが好ましい。
[二酸化炭素]
銀インク組成物は、さらに二酸化炭素が供給されてなるものでもよい。このような銀インク組成物は高粘度となり、例えば、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等の、インクを厚盛りすることが必要な印刷法への適用に好適である。
二酸化炭素は、銀インク組成物製造時のいずれの時期に供給してもよい。
そして、本発明においては、例えば、前記金属銀の形成材料及び含窒素化合物が配合されてなる第一の混合物に、二酸化炭素を供給して第二の混合物とし、必要に応じて前記第二の混合物に、さらに、前記還元剤を配合して、銀インク組成物を製造することが好ましい。また、前記アルコール又はその他の成分を配合する場合、これらは、第一の混合物及び第二の混合物のいずれか一方又は両方の製造時に配合でき、目的に応じて任意に選択できる。
前記第一の混合物は、配合成分が異なる点以外は、上記の銀インク組成物と同様の方法で製造できる。
第一の混合物は、配合成分がすべて溶解していてもよいし、一部の成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、配合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
第一の混合物製造時の配合温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、−5〜30℃であることが好ましい。また、配合時間は、配合成分の種類や配合時の温度に応じて適宜調節すればよいが、例えば、0.5〜12時間であることが好ましい。
第一の混合物に供給される二酸化炭素(CO)は、ガス状及び固形状(ドライアイス)のいずれでもよく、ガス状及び固形状の両方でもよい。二酸化炭素が供給されることにより、この二酸化炭素が第一の混合物に溶け込み、第一の混合物中の成分に作用することで、得られる第二の混合物の粘度が上昇すると推測される。
二酸化炭素ガスの供給は、液体中にガスを吹き込む公知の各種方法で行えばよく、適した供給方法を適宜選択すればよい。例えば、配管の一端を第一の混合物中に浸漬し、他端を二酸化炭素ガスの供給源に接続して、この配管を通じて二酸化炭素ガスを第一の混合物に供給する方法が例示できる。この時、配管の端部から直接二酸化炭素ガスを供給してもよいが、例えば、多孔質性のものなど、ガスの流路となり得る空隙部が多数設けられ、導入されたガスを拡散させて微小な気泡として放出することが可能なガス拡散部材を配管の端部に接続し、このガス拡散部材を介して二酸化炭素ガスを供給してもよい。また、第一の混合物の製造時と同様の方法で、第一の混合物を撹拌しながら二酸化炭素ガスを供給してもよい。このようにすることで、効率的に二酸化炭素を供給できる。
二酸化炭素ガスの供給量は、供給先の第一の混合物の量や、目的とする銀インク組成物又は第二の混合物の粘度に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、20〜25℃における粘度が5Pa・s以上である銀インク組成物を100〜1000g程度得るためには、二酸化炭素ガスを100L以上供給することが好ましく、200L以上供給することがより好ましい。なお、ここでは銀インク組成物の20〜25℃における粘度について説明したが、銀インク組成物の使用時の温度は、20〜25℃に限定されるものではなく、任意に選択できる。また、本明細書において「粘度」とは、特に断りのない限り、超音波振動式粘度計を用いて測定したものを意味する。
二酸化炭素ガスの流量は、必要とされる二酸化炭素ガスの供給量を考慮して適宜調節すればよいが、第一の混合物1gあたり0.5mL/分以上であることが好ましく、1mL/分以上であることがより好ましい。流量の上限値は特に限定されないが、取り扱い性等を考慮すると、混合物1gあたり40mL/分であることが好ましい。
そして、二酸化炭素ガスの供給時間は、必要とされる二酸化炭素ガスの供給量や、流量を考慮して適宜調節すればよい
二酸化炭素ガス供給時の第一の混合物の温度は、5〜70℃であることが好ましく、7〜60℃であることがより好ましく、10〜50℃であることが特に好ましい。前記温度が前記下限値以上であることで、より効率的に二酸化炭素を供給でき、前記温度が前記上限値以下であることで、不純物が少ないより良好な品質の銀インク組成物が得られる。
二酸化炭素ガスの流量及び供給時間、並びに二酸化炭素ガス供給時の前記温度は、それぞれの値を相互に考慮しながら適した範囲に調節すればよい。例えば、前記温度を低めに設定しても、二酸化炭素ガスの流量を多めに設定するか、二酸化炭素ガスの供給時間を長めに設定することで、あるいはこの両方を行うことで、効率的に二酸化炭素を供給できる。また、二酸化炭素ガスの流量を少なめに設定しても、前記温度を高めにするか、二酸化炭素ガスの供給時間を長めに設定することで、あるいはこの両方を行うことで、効率的に二酸化炭素を供給できる。すなわち、二酸化炭素ガスの流量、二酸化炭素ガス供給時の前記温度として例示した上記数値範囲の中の数値を、二酸化炭素ガスの供給時間も考慮しつつ柔軟に組み合わせることで、良好な品質の銀インク組成物が効率的に得られる。
二酸化炭素ガスの供給は、第一の混合物を撹拌しながら行うことが好ましい。このようにすることで、供給した二酸化炭素ガスがより均一に第一の混合物中に拡散し、より効率的に二酸化炭素を供給できる。
この時の撹拌方法は、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物の製造時における前記混合方法の場合と同様でよい。
ドライアイス(固形状二酸化炭素)の供給は、第一の混合物中にドライアイスを添加することで行えばよい。ドライアイスは、全量を一括して添加してもよいし、分割して段階的に(添加を行わない時間帯を挟んで連続的に)添加してもよい。
ドライアイスの使用量は、上記の二酸化炭素ガスの供給量を考慮して調節すればよい。
ドライアイスの添加中及び添加後は、第一の混合物を撹拌することが好ましく、例えば、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物の製造時と同様の方法で撹拌することが好ましい。このようにすることで、効率的に二酸化炭素を供給できる。
撹拌時の温度は、二酸化炭素ガス供給時と同様でよい。また、撹拌時間は、撹拌温度に応じて適宜調節すればよい。
第二の混合物の粘度は、銀インク組成物又は第二の混合物の取り扱い方法など、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、銀インク組成物をスクリーン印刷法、フレキソ印刷法等の高粘度インクを使用する印刷法へ適用する場合には、第二の混合物の20〜25℃における粘度は、3Pa・s以上であることが好ましい。なお、ここでは第二の混合物の20〜25℃における粘度について説明したが、第二の混合物の使用時の温度は、20〜25℃に限定されるものではなく、任意に選択できる。
前記第二の混合物には、さらに、必要に応じて前記還元剤、アルコール及びその他の成分からなる群から選択される一種以上を配合して、銀インク組成物とすることができる。
このときの銀インク組成物は、配合成分が異なる点以外は、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物と同様の方法で製造できる。そして、得られた銀インク組成物は、配合成分がすべて溶解していてもよいし、一部の成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、配合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
前記還元剤配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、−5〜60℃であることが好ましい。そして、配合時の温度は、配合成分の種類及び量に応じて、配合して得られた混合物が撹拌し易い粘度となるように、適宜調節するとよい。
また、配合時間は、配合成分の種類や配合時の温度に応じて適宜調節すればよいが、例えば、0.5〜12時間であることが好ましい。
前記その他の成分は、先に説明したように、前記第一の混合物及び第二の混合物のいずれかの製造時に配合されてもよく、両方の製造時に配合されてもよい。すなわち、第一の混合物及び第二の混合物を経て銀インク組成物を製造する過程において、二酸化炭素以外の配合成分の総量に対する前記その他の成分の配合量の割合([その他の成分(質量)]/[金属銀の形成材料、含窒素化合物、還元剤、アルコール、及びその他の成分(質量)]×100)は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0質量、すなわちその他の成分を配合しなくても、銀インク組成物は十分にその効果を発現する。
二酸化炭素が供給されてなる銀インク組成物は、例えば、銀インク組成物をスクリーン印刷法、フレキソ印刷法等の高粘度インクを使用する印刷法へ適用する場合には、20〜25℃における粘度が、1Pa・s以上であることが好ましい。
例えば、還元剤の配合時には、得られる配合物(銀インク組成物)は比較的発熱し易い。そして、還元剤の配合時の温度が高い場合、この配合物は、後述する銀インク組成物の加熱処理時と同様の状態になるため、還元剤による前記金属銀の形成材料の分解促進作用によって、金属銀の形成材料の少なくとも一部において金属銀の形成が開始されることがあると推測される。このような金属銀を含有する銀インク組成物は、導電体形成時において、金属銀を含有しない銀インク組成物よりも温和な条件で後処理を行うことにより、導電体を形成できることがある。また、還元剤の配合量が十分に多い場合にも、同様に温和な条件で後処理を行うことにより、導電体を形成できることがある。このように、金属銀の形成材料の分解を促進する条件を採用することで、後処理として、より低温での加熱処理で、あるいは加熱処理を行わずに常温での乾燥処理のみで、導電体を形成できることがある。また、このような金属銀を含有する銀インク組成物は、金属銀を含有しない銀インク組成物と同様に取り扱うことができ、特に取り扱い性が劣ることもない。
なお、本発明における第二の混合物は、上記のように二酸化炭素の供給によって、粘度が通常よりも高い。一方で、第二の混合物への還元剤の配合時には、第二の混合物又は還元剤の種類によっては、上記のように前記金属銀の形成材料の少なくとも一部において金属銀の形成が開始され、金属銀が析出することがある。ここで、第二の混合物の粘度が高い場合には、析出した金属銀の凝集が抑制され、得られた銀インク組成物中での金属銀の分散性が向上する。このような銀インク組成物を用いて、後述する方法で金属銀を形成して得られた導電体は、粘度が低い、すなわち二酸化炭素が供給されていない混合物に還元剤が配合されて得られた銀インク組成物を用いた場合の導電体よりも、導電性が高く(体積抵抗率が低く)、表面粗さも小さくなり、より好ましい特性を有するものとなる。
銀インク組成物は、例えば、印刷法、塗布法、浸漬法等の公知の方法で基材上に付着させることができる。
前記印刷法としては、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、ディップ式印刷法、インクジェット式印刷法、ディスペンサー式印刷法、ジェットディスペンサー式印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等が例示できる。
前記塗布法としては、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター等の各種コーターや、ワイヤーバー等を用いる方法が例示できる。
前記基材として非シート状のものを用い、前記積層体として非シート状の立体的な3次元形状のものを製造する場合には、銀インク組成物はパッド印刷法、ディスペンサー式印刷法又はジェットディスペンサー式印刷法で基材上に付着させることが好ましい。
銀層形成工程においては、基材上に付着させる銀インク組成物の量、又は銀インク組成物における前記金属銀の形成材料の配合量を調節することで、銀層の厚さを調節できる。
基材2上に付着させた銀インク組成物を乾燥処理する場合には、公知の方法で行えばよく、例えば、常圧下、減圧下及び送風条件下のいずれで行ってもよく、大気下及び不活性ガス雰囲気下のいずれでおこなってもよい。そして、乾燥温度も特に限定されず、加熱乾燥及び常温乾燥のいずれでもよい。加熱処理が不要な場合の好ましい乾燥方法としては、18〜30℃で大気下において乾燥させる方法が例示できる。
基材上に付着させた銀インク組成物を加熱(焼成)処理する場合、その条件は、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよい。通常は、加熱温度が60〜370℃であることが好ましく、70〜280℃であることがより好ましい。加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、0.2〜12時間であることが好ましく、0.4〜10時間であることがより好ましい。前記金属銀の形成材料の中でも前記カルボン酸銀、特にβ−ケトカルボン酸銀(1)は、例えば、酸化銀等の金属銀の形成材料とは異なり、当該分野で公知の還元剤等を使用しなくても、低温で分解する。そして、このような分解温度を反映して、前記銀インク組成物は、上記のように、従来のものより極めて低温で金属銀を形成できる。
銀インク組成物の加熱処理の方法は、特に限定されず、例えば、電気炉による加熱、感熱方式の熱ヘッドによる加熱、遠赤外線照射による加熱、高熱ガスの吹き付けによる加熱等で行うことができる。また、銀インク組成物の加熱処理は、大気下で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、加湿条件下で行ってもよい。そして、常圧下及び減圧下のいずれで行ってもよい。
銀インク組成物の加熱処理を加湿条件下で行う場合には、相対湿度40%以上の雰囲気下で行うことが好ましく、相対湿度60%以上の雰囲気下で行うことがより好ましく、相対湿度80%以上の雰囲気下で行うことが特に好ましく、100℃以上に加熱した高圧水蒸気の吹き付けにより行ってもよい。このように加湿条件下で加熱処理することにより、短時間で抵抗値が低い(導電性に優れた)導電体を形成できる。
銀インク組成物の加熱処理は、二段階で行ってもよい。例えば、一段階目の加熱処理では、導電体の形成ではなく銀インク組成物の乾燥を主に行い、二段階目の加熱処理で、導電体の形成を最後まで行う方法が例示できる。
一段階目の加熱処理において、加熱温度は、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよいが、50〜110℃であることが好ましく、70〜90℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、5秒〜12時間であることが好ましく、30秒〜2時間であることがより好ましい。
二段階目の加熱処理において、加熱温度は、導電体が良好に形成されるように、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよいが、60〜280℃であることが好ましく、70〜260℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、1分〜12時間であることが好ましく、1分〜10時間であることがより好ましい。
前記製造方法によれば、銀インク組成物を用いて印刷法等を適用することで、銀層として、エッチングを行わずにパターニングされたものも基材上に積層できる。したがって、パターニング時に廃液の発生が抑制されるので、環境負荷を低減できる。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例等で使用している基材(p1)、基材(p2)、基材(pR1)、基材(pR2)は、それぞれ以下のものである。
また、下記基材の「表面粗さ」は、レーザ顕微鏡(キーエンス社製「VK−X100」)を用いて、JIS B0601:2001(ISO4287:1997)に従い、λs=0.25μm、λc=2.5mmでカットオフして測定したものである。
基材(p1):液晶ポリマーを含む基材(ポリプラスチックス社製「E130i GF30%」、液晶ポリマー66%以上、ガラス繊維30%、厚さ1500μm、表面粗さ1.647μm)
基材(p2):液晶ポリマーを含む基材(厚さ2000μm、表面粗さ0.859μm)
基材(pR1):ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製基材(サンプラテック社製、厚さ5000μm、表面粗さ0.815μm)
基材(pR2):ソーダ石灰ガラス製基材(松浪硝子社製、厚さ1200μm、表面粗さ0.009μm)
[実施例1]
<積層体の製造>
(銀インク組成物の製造)
液温が50℃以下となるように、ビーカー中で2−エチルヘキシルアミン(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して0.4倍モル量)に2−メチルアセト酢酸銀を添加して、メカニカルスターラーを用いて15分間撹拌することにより、液状物を得た。この液状物に、反応液の温度が50℃以下となるように、シリンジポンプを用いてギ酸(2−メチルアセト酢酸銀に対して0.7倍モル量)を30分間かけて滴下した。ギ酸の滴下終了後、25℃にて反応液をさらに1時間撹拌することにより、銀インク組成物を得た。各配合成分の種類と配合比を表1に示す。表1中、「含窒素化合物(モル比)」とは、金属銀の形成材料の配合量1モルあたりの含窒素化合物の配合量(モル数)([含窒素化合物のモル数]/[金属銀の形成材料のモル数])を意味する。「還元剤(モル比)」も同様に、金属銀の形成材料の配合量1モルあたりの還元剤の配合量(モル数)([還元剤のモル数]/[金属銀の形成材料のモル数])を意味する。
(積層体の製造)
基材(p1)の表面に、20%ヒドラジン水溶液を滴下し、その上に厚さ4mmの合成石英板を被せて、前記ヒドラジン水溶液を基材の表面上で広げた。
次いで、低圧水銀ランプを用いて、前記基材の上方から前記合成石英板を介して前記基材の表面に255nmを中心波長とする紫外線を62秒間照射した。このときの紫外線の照射強度は3000mJ/cmとした。
次いで、前記基材から前記合成石英板を外し、水洗することで基材表面のヒドラジン水溶液を除去した後、基材表面を2−プロパノールで洗浄し、乾燥させて、表面処理した基材を得た。
次いで、この表面処理した基材の表面に、上記で得られた銀インク組成物を用いてパッド印刷法によりパターンを形成した。このときのパッドとしては、シリコーンゴム製で溝の深さが40μm、網点線数が150線、網点濃度が95%のものを用いた。
次いで、熱風の吹き付け(風速:15m/秒)により、印刷済みの前記基材を80℃で1分間乾燥させ、さらに、250℃の水蒸気雰囲気下にこの基材を10分間置いて加熱(焼成)処理することで、12.5mm×12.5mmの大きさにパターニングされた、厚さ1μmの銀層を基材上に形成し、積層体を得た。
<積層体の評価>
(銀層の体積抵抗率の測定)
上記で得られた積層体について、レーザ顕微鏡(キーエンス社製「VK−X100」)を用いて、形成した銀層の厚さT(cm)を測定した。また、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製「ロレスタMCP−T610、PSP型プローブ」)を用いて、4端子法により、形成した銀層の表面抵抗値を測定し、この測定値に、銀層のパターン形状とプローブ形状とから算出された抵抗率補正係数(4.04)を乗じて、表面抵抗率R(Ω)を算出した。そして、式「ρ=R×T」により、銀層の体積抵抗率ρ(μΩ・cm)を算出した。結果を表2に示す。
なお、表2中、製造条件の欄の「−」は、その欄の操作を行わなかったことを意味する。また、評価結果の欄の「−」は、その評価を行わなかったことを意味する。
(密着性の評価)
上記で得られた積層体について、JIS K5600−5−6に準拠して、銀層と基材との密着性を評価した。すなわち、銀層において直交する2方向に表面側から切れ込みを1mm間隔で入れてクロスカットすることで、1mm×1mmの領域(マス目)を100個形成した。このクロスカット後の銀層表面にテープを貼付した後、このテープを剥がし、この100個の領域について、銀層の基材からの完全な又は部分的な剥離が見られない領域(銀層が剥離せずに基材上に完全に残っている領域)の数Nを確認して、Nが1以上の場合には○とし、Nが0の場合には×として、銀層と基材との密着性を評価した。結果を表2に示す。表2中には、剥離が見られない領域の数Nも合わせて示す。
[比較例1]
<積層体の製造及び評価>
積層体製造時において、基材の表面に紫外線を照射しなかった点以外は、実施例1と同じ方法で積層体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
[比較例2〜4]
<積層体の製造及び評価>
積層体製造時において、使用したヒドラジン水溶液の濃度を表2に示すとおりとした点以外は、比較例1と同じ方法で積層体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
[実施例2〜6、比較例5〜9]
<積層体の製造及び評価>
積層体製造時において、使用した基材及びヒドラジン水溶液の濃度、並びに紫外線の照射強度を、表2に示すとおりとした点以外は、実施例1と同じ方法で積層体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
[実施例7]
<積層体の製造>
低圧水銀ランプを用いて、基材(p1)の上方から前記基材の表面に255nmを中心波長とする紫外線を79秒間照射した。このときの紫外線の照射強度は3800mJ/cmとした。
以下、実施例1と同じ方法で積層体を得た。
すなわち、本実施例では、ヒドラジン水溶液及び合成石英板を用いずに、前記基材の表面に直接紫外線を照射した。
<積層体の評価>
実施例1と同じ方法で、上記で得られた積層体を評価した。結果を表3に示す。
[比較例10]
<積層体の製造及び評価>
積層体製造時において、基材の表面に紫外線を照射しなかった点以外は、実施例7と同じ方法で積層体を製造し、評価した。結果を表3に示す。
[実施例8〜9、比較例11〜14]
<積層体の製造及び評価>
積層体製造時において、使用した基材、及び紫外線の照射強度を、表3に示すとおりとした点以外は、実施例7と同じ方法で積層体を製造し、評価した。結果を表3に示す。
Figure 2015208926
Figure 2015208926
Figure 2015208926
上記結果から明らかなように、実施例1〜9の積層体は、銀層の体積抵抗率が低く、基材と銀層との密着性が高かった。
これに対して、比較例1〜14の積層体は、液晶ポリマーを含まない基材を使用したか、又は液晶ポリマーを含む基材の表面処理がなされなかったか、若しくはその程度が不十分であったため、基材と銀層との密着性が低かった。
なお、例えば、「特開平9−194615号公報」には、種々の高分子からなる高分子成形品の表面に対して、照射強度を約100mJ/cm以下、具体的には17〜70mJ/cmとして紫外線を照射し、高分子成形品の表面を親水性に改質することが開示されている。また、「特開2000−215734号公報」には、透明導電性膜の表面に対して、照射強度を5〜2000mJ/cmとして紫外線を照射し、透明導電性膜の表面を改質して、銀ペーストとの密着性を改善することが開示されている。また、「特開2003−221456号公報」(特許文献1)には、液晶ポリマーフィルムの表面に対して、15mW/cmで120秒間(照射強度を1800mJ/cmとして)紫外線を照射し、液晶ポリマーフィルムの表面を改質して、銅との接着強度を改善することが開示されている。
しかし、上記実施例及び比較例の結果からも明らかなように、単純にこれら文献に記載の照射強度で液晶ポリマーを含む基材に紫外線を照射しても、本発明の効果は得られない。これは、本発明においては、液晶ポリマーと銀との組み合わせに特有の、適した紫外線の照射条件が求められるからである。
なお、ここでは基材としてシート状のものを用いているが、前記銀インク組成物を用いたパッド印刷法により、基材として非シート状のものを用い、積層体として非シート状の立体的な3次元形状のものも製造可能である。
本発明は、各種電子機器や通信機器等の製造に利用可能であり、特に、電子機器での電子回路や、光通信機器での配線の接続に用いるコネクタの製造に好適である。
1・・・積層体、11・・・基材、11a・・・基材の一方の主面、11b・・・基材の他方の主面、12・・・銀層

Claims (4)

  1. 液晶ポリマーを含む基材の表面に銀層が積層されてなる積層体の製造方法において、
    前記基材の表面に紫外線を照射して、前記表面を改質する工程と、
    紫外線照射後の前記表面に、金属銀の形成材料が配合されてなる銀インク組成物を用いて銀層を形成する工程と、を有することを特徴とする積層体の製造方法。
  2. 前記基材の表面にヒドラジン類を接触させながら、前記基材の表面に前記紫外線を照射することを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造方法。
  3. 前記紫外線の照射強度が、前記ヒドラジン類を用いない場合には3200〜54000mJ/cmであり、前記ヒドラジン類を用いる場合には2100〜53000mJ/cmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
  4. 液晶ポリマーを含む基材の表面に銀層が積層されてなり、前記銀層の金属銀の比率が99質量%以上であることを特徴とする積層体。
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