JP6126487B2 - 積層体及び電子機器 - Google Patents

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Description

本発明は、樹脂構造体上に銀層を備えた積層体、及び該積層体を用いた電子機器に関する。
樹脂構造体からなる基板上に銀の配線を備えた回路基板は、各種電子機器に幅広く利用されており、基板の強度を強化したものが種々検討されている。
一方で、セルロースナノファイバーは、線膨張係数が小さく、これを用いた複合材料は環境温度の変化に伴う歪み、変形等の問題が起こり難いため、基板強度の強化材料として適しており、フェノール樹脂又はアクリル樹脂とセルロースナノファイバーとを含有する基板を用いた回路基板が開示されている(特許文献1参照)。
特開2005−060680号公報
しかし、特許文献1で開示されている回路基板は、銀箔を基板上に圧着するか、又は蒸着若しくはスパッタリングによって銀膜を基板上に成膜することで、基板上に銀層を形成し、次いでエッチングによって銀層をパターニングして得られたものであり、銀層の形成方法が限られるという問題点があった。そして、上記の基板のような、セルロースナノファイバーを含有する樹脂構造体上に、印刷法で形成された銀層については、樹脂構造体との密着強度や、体積抵抗率についての検討がこれまでに十分にはなされていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、樹脂構造体上に印刷法で形成可能で、かつ樹脂構造体との密着強度が高く、体積抵抗率が低い銀層を備えた積層体、及び該積層体を用いた電子機器を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、
本発明は樹脂構造体上にカルボン酸銀を用いて銀層が形成され、前記樹脂構造体が、ポリビニルアセタール及びセルロースナノファイバーを含有することを特徴とする積層体を提供する。
本発明の積層体においては、前記ポリビニルアセタールが、下記式(i)−1、(i)−2及び(i)−3で表される構成単位を有し、ガラス転移点が90℃未満であることが好ましい。
Figure 0006126487
(式中、Ri−1は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。)
本発明の積層体は、JIS K 5600−5−6に準拠した、前記樹脂構造体及び銀層の密着性試験において、分類0又は1を満たすことが好ましい。
また、本発明は、上記本発明の積層体を用い、前記樹脂構造体を筐体として備えたことを特徴とする電子機器を提供する。
本発明によれば、樹脂構造体上に印刷法で形成可能で、かつ樹脂構造体との密着強度が高く、体積抵抗率が低い銀層を備えた積層体、及び該積層体を用いた電子機器が提供される。
本発明の第一の実施形態に係る積層体を例示する概略断面図である。 本発明の第二の実施形態に係る積層体を例示する概略断面図である。
<<積層体>>
本発明に係る積層体は、樹脂構造体上にカルボン酸銀を用いて銀層が形成され、前記樹脂構造体が、ポリビニルアセタール及びセルロースナノファイバー(以下、「CNF」と略記することがある)を含有することを特徴とする。
かかる積層体において、銀層は、カルボン酸銀を用いて形成したものであり、印刷法で簡単なプロセスによって形成可能である。またこの銀層は、例えば、銀粒子及びバインダーを含む銀ペースト等とは異なり、バインダー等を含まない銀層形成用組成物で形成したことにより、銀(金属銀)の純度が顕著に高く、体積抵抗率が低い。また、樹脂構造体がポリビニルアセタール及びCNFを含有することで、樹脂構造体と銀層との密着強度が高い。また、CNFは樹脂構造体の強度を向上させることもできる。
なお、前記積層体において、樹脂構造体の形状は特に限定されない。
◎第一の実施形態
第一の実施形態に係る前記積層体としては、前記樹脂構造体が基材であるものが挙げられる。ここで「基材」とは、配線が設けられた回路基板やアンテナ構造体等において使用されるものが例示できる。
図1は、第一の実施形態に係る積層体を例示する概略断面図である。
ここに示す積層体1は、基材11上に銀層12を備えたものである。そして、基材11は前記樹脂構造体であり、ポリビニルアセタール及びCNFを含有する。また、銀層12はカルボン酸銀を用いて形成されたものである。
<基材>
基材11は、ポリビニルアセタール及びCNFを含有していればよい。
前記ポリビニルアセタールは、特に限定されないが、基材11と銀層12との密着強度がより高くなることから、ガラス転移点(以下、「Tg」と略記することがある)が90℃未満であるものが好ましく、85℃以下であるものがより好ましく、75℃以下であるものが特に好ましい。
また、ポリビニルアセタールのTgの下限値は、積層体1の用途によって異なるが、50℃であることが好ましく、60℃であることがより好ましい。Tgの下限値がこのような範囲であることで、積層体1の使用環境下における温度変化に対して、基材11の安定性がより向上する。
前記ポリビニルアセタールは、下記式(i)−1、(i)−2及び(i)−3で表される構成単位(以下、それぞれ「構成単位(i)−1」、「構成単位(i)−2」、「構成単位(i)−3」と略記することがある)を有する高分子化合物(以下、「ポリビニルアセタール(I)」と略記することがある)であることが好ましく、Tgが90℃未満のポリビニルアセタール(I)であることがより好ましい。
Figure 0006126487
(式中、Ri−1は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。)
[ポリビニルアセタール(I)]
ポリビニルアセタール(I)は、構成単位(i)−1、(i)−2及び(i)−3を有する高分子化合物(ポリビニルアセタール樹脂)であり、構成単位(i)−1、(i)−2及び(i)−3の配列順は特に限定されない。
式中、Ri−1は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。
i−1における前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基が例示でき、直鎖状又は分枝鎖状であることが好ましい。
ポリビニルアセタール(I)の分子量は、53000以上であることが好ましく、54000以上であることがより好ましく、55000以上であることがさらに好ましく、58000以上であることが特に好ましく、62000以上であることが最も好ましい。ポリビニルアセタール(I)の分子量がこのような範囲であることで、基材11と銀層12との密着強度がより高くなる。
ポリビニルアセタール(I)の分子量の上限値は、特に限定されないが、本発明の効果が十分に得られ、且つ基材11をより容易に形成できることから、200000であることが好ましい。
ここで、「分子量」とは、ポリビニルアセタール(I)の合成に用いたモノマーがすべて反応して、ポリビニルアセタール(I)を構成したと仮定した場合に、前記モノマーの分子量を用いて算出される理論値であり、ポリビニルアセタール(I)が構成単位(i)−1、(i)−2及び(i)−3のみを有する場合、前記モノマーとしては、構成単位(i)−1を誘導するもの、構成単位(i)−2を誘導するもの、及び構成単位(i)−3を誘導するもののみを考慮すればよい。
ポリビニルアセタール(I)が有する構成単位(i)−1は、一種のみでもよいし二種以上でもよく、二種以上である場合、その組み合わせ及び比率は特に限定されない。
ポリビニルアセタール(I)は、これを構成する繰り返し単位の総量(繰り返し単位の総モル数)に占める構成単位(i)−2の量(構成単位(i)−2のモル数)の比率が、12モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、8モル%以下であることが特に好ましい。そして、前記比率は0より大きければよく、0.5モル%以上であることが好ましく、0.75モル%以上であることがより好ましく、1モル%以上であることが特に好ましい。
また、ポリビニルアセタール(I)は、これを構成する繰り返し単位の総量(繰り返し単位の総モル数)に占める構成単位(i)−3の量(構成単位(i)−3のモル数)の比率が0より大きく、5〜50モル%であることが好ましく、10〜45モル%であることがより好ましく、15〜40モル%であることが特に好ましい。
また、ポリビニルアセタール(I)は、これを構成する繰り返し単位の総量(繰り返し単位の総モル数)に占める構成単位(i)−1の量(構成単位(i)−1のモル数)の比率が0より大きく、45〜90モル%であることが好ましく、50〜85モル%であることがより好ましく、55〜80モル%であることが特に好ましい。
ポリビニルアセタール(I)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、構成単位(i)−1、(i)−2及び(i)−3以外のその他の構成単位を有していてもよいが、ポリビニルアセタール(I)を構成する繰り返し単位の総量(繰り返し単位の総モル数)に占める、前記その他の構成単位の量(前記その他の構成単位のモル数)の比率が、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることが特に好ましい。そして、ポリビニルアセタール(I)は、構成単位(i)−1、(i)−2及び(i)−3のみを有することが好ましい。
ポリビニルアセタール(I)は、構成単位(i)−1、(i)−2及び(i)−3、並びに必要に応じて前記その他の構成単位を誘導するモノマーを、公知の方法で重合させることにより得られる。重合温度及び重合時間は特に限定されず、重合方法や用いるモノマーの種類に応じて、適宜設定すればよい。重合反応後は、公知の方法でポリビニルアセタール(I)を取り出せばよく、必要に応じて精製してもよい。また、ポリビニルアセタール(I)として、市販品を用いてもよい。
前記CNFは、セルロース又はその誘導体からなる繊維状の物質(フィブリル)であり、各種植物やバクテリアが生成するもの等、公知のものが利用できる。
前記植物は特に限定されず、好ましいものとしては、木、麦、稲、とうもろこし、綿、サトウキビ、葦、竹、じゃがいも、キャッサバ等が例示できる。
CNFの平均繊維幅(直径)は、3.5〜100nmであることが好ましく、このような範囲であることで、基材11と銀層12との密着強度がより高くなる。
CNFの平均繊維長は、0.8μm以上であることが好ましく、0.8〜8μmであることがより好ましい。CNFの平均繊維長が前記下限値以上であることで、基材11と銀層12との密着強度がより高くなる。また、CNFの平均繊維長が前記上限値以下であることで、後述する方法によってCNFが容易に得られる。
なお、CNFの平均繊維幅及び平均繊維長は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)でのCNFの撮像データにおいて、任意に選択した30本のCNFについて、繊維幅及び繊維長の平均値を算出することで求められる。
CNFは公知の方法で製造できる。例えば、植物からCNFを得る場合には、植物原料を水と共に撹拌して、細胞壁に含まれる植物繊維と分散液との混合物を得る離解工程と、超高圧ホモジナイザー等のホモジナイザー又はグラインダーを用いて、得られた植物繊維の繊維束をほぐす解繊工程と、を有する製造方法により、CNFが得られる。
基材11において、ポリビニルアセタールの含有量は、CNFの含有量に対して0.05〜19質量倍であることが好ましく、0.11〜1質量倍であることがより好ましい。ポリビニルアセタールの含有量が前記下限値以上であることで、銀層12と基材11との密着強度がより高くなり、ポリビニルアセタールの含有量が前記上限値以下であることで、基材11の機械的強度がより高くなる。
基材11は、ポリビニルアセタール及びCNF以外のその他の成分を含有していてもよい。
基材11の、ポリビニルアセタール及びCNF以外の含有成分(その他の含有成分)は、一種のみでもよいし、二種以上でもよく、二種以上である場合、その組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
ただし、その他の含有成分の基材11中での含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが特に好ましい。
基材11は、目的に応じて任意の形状を選択でき、例えば、フィルム状又はシート状であることが好ましく、厚さが0.5〜5000μmであることが好ましく、0.5〜2000μmであることがより好ましい。基材11の厚さが前記下限値以上であることで、銀層12の構造をより安定して保持でき、基材11の厚さが前記上限値以下であることで、銀層12形成時の取り扱い性がより良好となる。
基材11は、単層からなるものでもよいし、二層以上の複数層からなるものでもよい。基材11が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが異なっていてもよい。そして、複数層が互いに異なる場合、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。ここで、複数層が互いに異なるとは、各層の材質及び厚さの少なくとも一方が互いに異なることを意味する。
なお、基材11が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい基材11の厚さとなるようにするとよい。
基材11は、例えば、ポリビニルアセタール及びCNFが配合されてなる樹脂構造体用組成物(基材形成用組成物)を調製し、これを、型等を用いる方法によって成形することで形成できる。また、仮基材上に基材形成用組成物を付着させ、必要に応じて加熱処理等の後処理をして成形した後、仮基材を取り除くことでも形成できる。
好ましい基材形成用組成物としては、ポリビニルアセタール、CNF及び溶媒が配合されてなる液状のものが例示できる。
基材形成用組成物の調製に用いる前記溶媒は、各配合成分を著しく劣化させない限り、特に限定されず、好ましいものとしては、水;エタノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール)等の炭素数が2以上のアルコールが例示できる。
前記溶媒は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合で、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
基材形成用組成物において、配合成分の総量に占めるポリビニルアセタール及びCNFの総配合量の比率(濃度)は、0.3〜50質量%であることが好ましく、0.7〜30質量%であることがより好ましい。ポリビニルアセタール及びCNFの総配合量の比率が前記下限値以上であることで、基材をより効率的に形成でき、ポリビニルアセタール及びCNFの総配合量の比率が前記上限値以下であることで、前記組成物の取り扱い性がより向上する。
基材形成用組成物は、ポリビニルアセタール、CNF及び溶媒以外に、その他の成分が配合されてなるものでもよい。ここで、「その他の成分」とは、上記の基材11の「その他の含有成分」に対応するものである。
前記その他の成分は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
前記その他の成分は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合で、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
基材形成用組成物において、配合成分の総量に対する前記その他の成分の配合量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
基材形成用組成物中の成分は、すべて溶解していてもよいし、一部又はすべてが溶解していなくてもよいが、溶解していない成分は、均一に分散されていることが好ましい。
基材形成用組成物は、ポリビニルアセタール、CNF、及びこれら以外の成分を配合することで得られる。
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法、ミキサーを使用して混合する方法、超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
なかでも本発明においては、基材形成用組成物の製造時において、CNFを固形物として添加してもよいが、配合成分がより均一に分散又は溶解された基材形成用組成物が得られる点から、CNFが溶媒に分散されてなるCNF分散液をあらかじめ調製し、このCNF分散液を添加することが好ましい。
CNF分散液は、公知の手法によってCNFを分散溶媒(分散媒)中に分散させて得られたものでもよいし、例えば、上記のCNFの製造方法で解繊工程によって得られた液体をそのまま、又は必要に応じて後処理したものをCNF分散液として用いてもよい。
CNF分散液の分散溶媒は、基材11の形成を阻害しないものであればよく、基材形成用組成物の配合成分として先に挙げた溶媒と同じものが例示できる。
配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、5〜85℃であることが好ましい。
また、配合時間(混合時間)は、配合成分の種類や配合時の温度に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
液状の基材形成用組成物は、例えば、印刷法、塗布法、浸漬法等の公知の方法で仮基材上に付着させることができる。
前記印刷法としては、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、ディップ式印刷法、インクジェット式印刷法、ディスペンサー式印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等が例示できる。
前記塗布法としては、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター等の各種コーターや、ワイヤーバー等を用いる方法が例示できる。
また、基材11は、CNFが溶媒に分散されてなるCNF分散液をろ過してCNFシートを調製し、ポリビニルアセタールを含有する溶液(以下、「ポリビニルアセタール溶液」と略記することがある)にこのCNFシートを浸漬した後、CNFシートをポリビニルアセタール溶液から取り出して、乾燥させることでも形成できる。このような方法によれば、ポリビニルアセタールがCNFの表面に付着、又はCNF中に含浸し、より均質な基材11が容易に得られる。CNFシートは、例えば、ろ紙を通じてCNF分散液をろ過し、このろ紙上に残ったシート状のものを必要に応じて洗浄した後、取り外して乾燥させることで得られる。
ろ過に供するCNF分散液は、例えば、前記基材形成用組成物の製造時に用いるCNF分散液と同様の組成のものでよく、上記のCNFの製造方法で解繊工程によって得られた液体そのもの、又はこの液体を必要に応じて後処理したものもCNF分散液として好適である。ただし、CNF分散液はこれらのものに限定されない。
ろ過に供するCNF分散液のCNFの濃度は、目的とする厚さ及び表面積のCNFシートが得られるよう、任意に調節できる。
前記ポリビニルアセタール溶液は、ポリビニルアセタールがすべて溶解していることが好ましい。
ポリビニルアセタール溶液の溶媒成分は特に限定されず、ポリビニルアセタールを均一に溶解可能なものが好ましく、ポリビニルアセタールの種類に応じて適宜選択すればよい。また、前記溶媒成分は、一種のみでもよいし、二種以上でもよく、二種以上である場合、その組み合わせ及び比率は任意に調節できる。
ポリビニルアセタール溶液のポリビニルアセタールの濃度は、CNFシートの浸漬を妨げない範囲内において、目的とする厚さ及び表面積のCNFシートが得られるよう、任意に調節できる。
ポリビニルアセタール溶液は、ポリビニルアセタール及び溶媒成分以外に、その他の成分を含有していてもよい。ここで、「その他の成分」とは、上記の基材11の「その他の含有成分」に対応するものである。
CNF分散液を浸漬するポリビニルアセタール溶液の温度は5〜85℃であることが好ましく、浸漬時間は2〜15時間であることが好ましい。
基材11は、基材形成用組成物を用いて形成する場合には、基材形成用組成物の使用量、又は基材形成用組成物におけるポリビニルアセタール及びCNFの配合量を調節することで、厚さを調節できる。
また、基材11は、前記CNF分散液(CNFシート)及びポリビニルアセタール溶液を用いて形成する場合には、CNFシートの厚さ、すなわち、CNF分散液の使用量、又はCNF分散液のCNFの濃度を調節することで、厚さを調節できる。基材11の厚さは、ポリビニルアセタール溶液のポリビニルアセタールの濃度でも調節できることがあるが、CNF分散液の使用量又はそのCNFの濃度を調節する方が、容易に調節できる。
<銀層>
銀層12は、カルボン酸銀を用いて形成されたものである。
基材11の主面(銀層12が形成されている表面)を上方から見下ろすように、積層体1を平面視したときの、銀層12の形状は、目的に応じて任意に設定できる。例えば、基材11の表面全面に銀層12が設けられていてもよいし、基材11の表面のうち、一部のみに銀層12が設けられていてもよく、銀層12はパターニングされていてもよい。
銀層12の厚さは、目的に応じて任意に設定できるが、0.01〜10μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがより好ましい。銀層12の厚さが前記下限値以上であることで、銀層12が設けられたことによる効果がより高くなり、銀層12の厚さが前記上限値以下であることで、積層体1の構造をより安定して保持できる。
銀層12は、銀層形成用組成物として、カルボン酸銀が配合されてなる銀インク組成物を調製し、これを基材11上に付着させて、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の後処理を適宜選択して行うことで形成できる。加熱処理は、乾燥処理を兼ねて行ってもよい。
銀インク組成物としては、液状のものが好ましく、カルボン酸銀が均一に分散されたものが好ましい。
銀インク組成物において、カルボン酸銀に由来する銀の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。このような範囲であることで、後述する方法で形成された銀層12は、品質により優れたものとなる。前記銀の含有量の上限値は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、取り扱い性等を考慮すると25質量%であることが好ましい。
なお、本明細書において、「カルボン酸銀に由来する銀」とは、特に断りの無い限り、銀インク組成物の製造時に配合されたカルボン酸銀中の銀を意味し、配合後に引き続きカルボン酸銀を構成している銀と、配合後にカルボン酸銀が分解して生じた分解物中の銀及び銀自体と、の両方を含む概念とする。
[カルボン酸銀]
前記カルボン酸銀は、加熱等によって分解し、金属銀を形成するものである。
本発明において、カルボン酸銀は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記カルボン酸銀は、式「−COOAg」で表される基を有していれば特に限定されない。例えば、式「−COOAg」で表される基の数は1個のみでもよいし、2個以上でもよい。また、カルボン酸銀中の式「−COOAg」で表される基の位置も特に限定されない。
前記カルボン酸銀は、下記一般式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀(以下、「β−ケトカルボン酸銀(1)」と略記することがある)及び下記一般式(4)で表されるカルボン酸銀(以下、「カルボン酸銀(4)」と略記することがある)からなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
なお、本明細書においては、単なる「カルボン酸銀」との記載は、特に断りの無い限り、「β−ケトカルボン酸銀(1)」及び「カルボン酸銀(4)」だけではなく、これらを包括する、「式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀」を意味するものとする。
Figure 0006126487
(式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R−CY −」、「CY −」、「R−CHY−」、「RO−」、「RN−」、「(RO)CY−」若しくは「R−C(=O)−CY −」で表される基であり;
はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;Rは炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり;R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり;
はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基、又は一般式「RO−」、「RS−」、「R−C(=O)−」若しくは「R−C(=O)−O−」で表される基であり;
は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
Figure 0006126487
(式中、Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基又は式「−C(=O)−OAg」で表される基であり、前記脂肪族炭化水素基がメチレン基を有する場合、1個以上の該メチレン基はカルボニル基で置換されていてもよい。)
(β−ケトカルボン酸銀(1))
β−ケトカルボン酸銀(1)は、前記一般式(1)で表される。
式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R−CY −」、「CY −」、「R−CHY−」、「RO−」、「RN−」、「(RO)CY−」若しくは「R−C(=O)−CY −」で表される基である。
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状(脂肪族環式基)のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。また、前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでもよい。そして、前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜6であることがより好ましい。Rにおける好ましい前記脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が例示できる。
Rにおける直鎖状又は分枝鎖状の前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、4,4−ジメチルペンチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、4−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、1−プロピルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、1,1−ジメチルヘキシル基、2,2−ジメチルヘキシル基、3,3−ジメチルヘキシル基、4,4−ジメチルヘキシル基、5,5−ジメチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基が例示できる。
Rにおける環状の前記アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基が例示できる。
Rにおける前記アルケニル基としては、ビニル基(エテニル基、−CH=CH)、アリル基(2−プロペニル基、−CH−CH=CH)、1−プロペニル基(−CH=CH−CH)、イソプロペニル基(−C(CH)=CH)、1−ブテニル基(−CH=CH−CH−CH)、2−ブテニル基(−CH−CH=CH−CH)、3−ブテニル基(−CH−CH−CH=CH)、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基等の、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が二重結合(C=C)に置換された基が例示できる。
Rにおける前記アルキニル基としては、エチニル基(−C≡CH)、プロパルギル基(−CH−C≡CH)等の、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が三重結合(C≡C)に置換された基が例示できる。
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が例示できる。また、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての置換基が同一であってもよいし、すべての置換基が異なっていてもよく、一部の置換基のみが異なっていてもよい。
Rにおけるフェニル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、炭素数が1〜16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、該脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基(−OH)、シアノ基(−C≡N)、フェノキシ基(−O−C)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
置換基である前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるYは、それぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子である。そして、一般式「R−CY −」、「CY −」及び「R−C(=O)−CY −」においては、それぞれ複数個のYは、互いに同一でも異なっていてもよい。
RにおけるRは、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基(C−)であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるRは、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるRは、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるR及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基である。すなわち、R及びRは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1〜18である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるRは、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
Rは、上記の中でも、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、一般式「R−C(=O)−CY −」で表される基、水酸基又はフェニル基であることが好ましい。そして、Rは、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であることが好ましい。
一般式(1)において、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基(C−CH−)、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基(C−O−CH=CH−)、又は一般式「RO−」、「RS−」、「R−C(=O)−」若しくは「R−C(=O)−O−」で表される基である。
における炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基としては、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
におけるフェニル基及びベンジル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ニトロ基(−NO)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
におけるRは、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基(CS−)、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基(ビフェニル基、C−C−)である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜10である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。また、Rにおけるフェニル基及びジフェニル基の前記置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
がチエニル基又はジフェニル基である場合、これらの、Xにおいて隣接する基又は原子(酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基)との結合位置は、特に限定されない。例えば、チエニル基は、2−チエニル基及び3−チエニル基のいずれでもよい。
一般式(1)において、2個のXは、2個のカルボニル基で挟まれた炭素原子と二重結合を介して1個の基として結合していてもよく、このようなものとしては式「=CH−C−NO」で表される基が例示できる。
は、上記の中でも、水素原子、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、ベンジル基、又は一般式「R−C(=O)−」で表される基であることが好ましく、少なくとも一方のXが水素原子であることが好ましい。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、2−メチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CH)−C(=O)−OAg)、アセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−エチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CHCH)−C(=O)−OAg)、プロピオニル酢酸銀(CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、イソブチリル酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、ピバロイル酢酸銀((CHC−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−n−ブチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CHCHCHCH)−C(=O)−OAg)、2−ベンジルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CH)−C(=O)−OAg)、ベンゾイル酢酸銀(C−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、ピバロイルアセト酢酸銀((CHC−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、イソブチリルアセト酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−アセチルピバロイル酢酸銀((CHC−C(=O)−CH(−C(=O)−CH)−C(=O)−OAg)、2−アセチルイソブチリル酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH(−C(=O)−CH)−C(=O)−OAg)、又はアセトンジカルボン酸銀(AgO−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)であることが好ましく、2−メチルアセト酢酸銀、アセト酢酸銀、2−エチルアセト酢酸銀、プロピオニル酢酸銀、イソブチリル酢酸銀、ピバロイル酢酸銀、2−n−ブチルアセト酢酸銀、2−ベンジルアセト酢酸銀、ベンゾイル酢酸銀、ピバロイルアセト酢酸銀、イソブチリルアセト酢酸銀、又はアセトンジカルボン酸銀であることがより好ましい。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の後処理により形成された導電体(金属銀)において、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。原料や不純物が少ない程、例えば、形成された金属銀同士の接触が良好となり、導通が容易となり、抵抗率が低下する。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、後述するように、当該分野で公知の還元剤等を使用しなくても、好ましくは60〜210℃、より好ましくは60〜200℃という低温で分解し、金属銀を形成することが可能である。そして、還元剤と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。
本発明において、β−ケトカルボン酸銀(1)は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
(カルボン酸銀(4))
カルボン酸銀(4)は、前記一般式(4)で表される
式中、Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基(−COOH)又は式「−C(=O)−OAg」で表される基である。
における前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。ただし、Rにおける前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜15であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。
における前記脂肪族炭化水素基がメチレン基(−CH−)を有する場合、1個以上の該メチレン基はカルボニル基で置換されていてもよい。カルボニル基で置換されていてもよいメチレン基の数及び位置は特に限定されず、すべてのメチレン基がカルボニル基で置換されていてもよい。ここで「メチレン基」とは、単独の式「−CH−」で表される基だけでなく、式「−CH−」で表される基が複数個連なったアルキレン基中の1個の式「−CH−」で表される基も含むものとする。
カルボン酸銀(4)は、ピルビン酸銀(CH−C(=O)−C(=O)−OAg)、酢酸銀(CH−C(=O)−OAg)、酪酸銀(CH−(CH−C(=O)−OAg)、イソ酪酸銀((CHCH−C(=O)−OAg)、2−エチルへキサン酸銀(CH−(CH−CH(CHCH)−C(=O)−OAg)、ネオデカン酸銀(CH−(CH−C(CH−C(=O)−OAg)、シュウ酸銀(AgO−C(=O)−C(=O)−OAg)、又はマロン酸銀(AgO−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)であることが好ましい。また、上記のシュウ酸銀(AgO−C(=O)−C(=O)−OAg)及びマロン酸銀(AgO−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)の2個の式「−COOAg」で表される基のうち、1個が式「−COOH」で表される基となったもの(HO−C(=O)−C(=O)−OAg、HO−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)も好ましい。
カルボン酸銀(4)も、β−ケトカルボン酸銀(1)と同様に、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の後処理により形成された導電体(金属銀)において、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。そして、還元剤と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。
本発明において、カルボン酸銀(4)は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
[含窒素化合物]
前記銀インク組成物は、前記カルボン酸銀以外に、さらに、炭素数25以下のアミン化合物及び第4級アンモニウム塩、アンモニア、並びに前記アミン化合物又はアンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩からなる群から選択される一種以上の含窒素化合物(以下、単に「含窒素化合物」と略記することがある)が配合されてなるものが好ましい。
以下、炭素数25以下のアミン化合物を「アミン化合物」、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩を「第4級アンモニウム塩」、炭素数25以下のアミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩を「アミン化合物由来のアンモニウム塩」、アンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩を「アンモニア由来のアンモニウム塩」と略記することがある。
(アミン化合物、第4級アンモニウム塩)
前記アミン化合物は、炭素数が1〜25であり、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンのいずれでもよい。また、前記第4級アンモニウム塩は、炭素数が4〜25である。前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、鎖状及び環状のいずれでもよい。また、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子(例えば、第1級アミンのアミノ基(−NH)を構成する窒素原子)の数は1個でもよいし、2個以上でもよい。
前記第1級アミンとしては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいモノアルキルアミン、モノアリールアミン、モノ(ヘテロアリール)アミン、ジアミン等が例示できる。
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、Rにおける前記アルキル基と同様のものが例示でき、炭素数が1〜19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。
好ましい前記モノアルキルアミンとして、具体的には、n−ブチルアミン、n−へキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−アミノペンタン、3−メチルブチルアミン、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミンが例示できる。
前記モノアリールアミンを構成するアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が例示でき、炭素数が6〜10であることが好ましい。
前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、芳香族環骨格を構成する原子として、ヘテロ原子を有するものであり、前記ヘテロ原子としては、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ホウ素原子が例示できる。また、芳香族環骨格を構成する前記へテロ原子の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよい。2個以上である場合、これらへテロ原子は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、これらへテロ原子は、すべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけ異なっていてもよい。
前記ヘテロアリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されないが、3〜12員環であることが好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜4個有する単環状のものとしては、ピロリル基、ピロリニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペリジニル基、ピラゾリジニル基、ピペラジニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1個有する単環状のものとしては、フラニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1個有する単環状のものとしては、チエニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、モルホリニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、チアゾリル基、チアジアゾリル基、チアゾリジニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜5個有する多環状のものとしては、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラゾロピリジル基、テトラゾロピリダジニル基、ジヒドロトリアゾロピリダジニル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ジチアナフタレニル基、ベンゾチオフェニル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ジアミンは、アミノ基を2個有していればよく、2個のアミノ基の位置関係は特に限定されない。好ましい前記ジアミンとしては、前記モノアルキルアミン、モノアリールアミン又はモノ(ヘテロアリール)アミンにおいて、アミノ基(−NH)を構成する水素原子以外の1個の水素原子が、アミノ基で置換されたものが例示できる。
前記ジアミンは炭素数が1〜10であることが好ましく、より好ましいものとしてはエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタンが例示できる。
前記第2級アミンとしては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいジアルキルアミン、ジアリールアミン、ジ(ヘテロアリール)アミン等が例示できる。
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
好ましい前記ジアルキルアミンとして、具体的には、N−メチル−n−ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミンが例示できる。
前記ジアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。また、ジアリールアミン一分子中の2個のアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基と同様であり、6〜12員環であることが好ましい。また、ジ(ヘテロアリール)アミン一分子中の2個のヘテロアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記第3級アミンとしては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいトリアルキルアミン、ジアルキルモノアリールアミン等が例示できる。
前記トリアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、トリアルキルアミン一分子中の3個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、3個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
好ましい前記トリアルキルアミンとして、具体的には、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンが例示できる。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルモノアリールアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。
本発明において、前記第4級アンモニウム塩としては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいハロゲン化テトラアルキルアンモニウム等が例示できる。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19であることが好ましい。また、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム一分子中の4個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、4個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が例示できる。
好ましい前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムとして、具体的には、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドが例示できる。
ここまでは、主に鎖状のアミン化合物及び第4級有機アンモニウム塩について説明したが、前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子が環骨格構造(複素環骨格構造)の一部であるようなヘテロ環化合物であってもよい。すなわち、前記アミン化合物は環状アミンでもよく、前記第4級アンモニウム塩は環状アンモニウム塩でもよい。この時の環(アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子を含む環)構造は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されず、脂肪族環及び芳香族環のいずれでもよい。
環状アミンであれば、好ましいものとして、ピリジンが例示できる。
前記第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム塩において、「置換基で置換されていてもよい水素原子」とは、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子に結合している水素原子以外の水素原子である。この時の置換基の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよく、前記水素原子のすべてが置換基で置換されていてもよい。置換基の数が複数の場合には、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、複数個の置換基はすべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。また、置換基の位置も特に限定されない。
前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩における前記置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、トリフルオロメチル基(−CF)等が例示できる。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、かかるアルキル基は、置換基としてアリール基を有する、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は置換基として好ましくは炭素数が1〜5のアルキル基を有する、炭素数が3〜7の環状のアルキル基が好ましく、このような置換基を有するモノアルキルアミンとして、具体的には、2−フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、2,3−ジメチルシクロヘキシルアミンが例示できる。
また、置換基である前記アリール基及びアルキル基は、さらに1個以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、このようなハロゲン原子で置換された置換基を有するモノアルキルアミンとしては、2−ブロモベンジルアミンが例示できる。ここで、前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
前記モノアリールアミンを構成するアリール基が置換基を有する場合、かかるアリール基は、置換基としてハロゲン原子を有する、炭素数が6〜10のアリール基が好ましく、このような置換基を有するモノアリールアミンとして、具体的には、ブロモフェニルアミンが例示できる。ここで、前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、かかるアルキル基は、置換基として水酸基又はアリール基を有する、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、このような置換基を有するジアルキルアミンとして、具体的には、ジエタノールアミン、N−メチルベンジルアミンが例示できる。
前記アミン化合物は、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−へキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−アミノペンタン、3−メチルブチルアミン、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、2−フェニルエチルアミン、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、N−メチル−n−ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、N−メチルベンジルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン又はN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンであることが好ましい。
また、後述するように、二酸化炭素を供給して銀インク組成物を調製する場合には、二酸化炭素供給時において、銀インク組成物(第二の混合物)中の成分がより均一に分散して、品質が安定することから、前記アミン化合物は分岐鎖状のアルキル基を有するものが好ましい。
(アミン化合物由来のアンモニウム塩)
本発明において、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩は、前記アミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩であり、前記酸は、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸でもよいし、酢酸等の有機酸でもよく、酸の種類は特に限定されない。
前記アミン化合物由来のアンモニウム塩としては、n−プロピルアミン塩酸塩、N−メチル−n−ヘキシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン塩酸塩等が例示できるが、これらに限定されない。
(アンモニア由来のアンモニウム塩)
本発明において、前記アンモニア由来のアンモニウム塩は、アンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩であり、ここで酸としては、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩の場合と同じものが例示できる。
前記アンモニア由来のアンモニウム塩としては、塩化アンモニウム等が例示できるが、これに限定されない。
本発明においては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩は、それぞれ一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
そして、前記含窒素化合物としては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩からなる群から選択される一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
銀インク組成物において、前記含窒素化合物の配合量は、前記カルボン酸銀の配合量1モルあたり0.4〜15モルであることが好ましく、0.8〜5モルであることがより好ましい。
前記含窒素化合物の配合量を上記のように規定することで、銀インク組成物は安定性がより向上し、銀層(導電体、金属銀)の品質がより向上する。さらに、高温による加熱処理を行わなくても、より安定して銀層を形成できる。
[還元剤]
銀インク組成物は、前記カルボン酸銀以外に、さらに還元剤が配合されてなるものが好ましい。還元剤を配合することで、前記銀インク組成物は、金属銀をより形成し易くなり、例えば、低温での加熱処理でも十分な導電性を有する銀層(導電体、金属銀)を形成できる。
前記還元剤は、シュウ酸、ヒドラジン及び下記一般式(5)で表される化合物(以下、「化合物(5)」と略記することがある)からなる群から選択される一種以上の還元性化合物(以下、単に「還元性化合物」と略記することがある)であることが好ましい。
H−C(=O)−R21 ・・・・(5)
(式中、R21は、炭素数20以下のアルキル基、アルコキシ基若しくはN,N−ジアルキルアミノ基、水酸基又はアミノ基である。)
(還元性化合物)
前記還元性化合物は、シュウ酸(HOOC−COOH)、ヒドラジン(HN−NH)及び前記一般式(5)で表される化合物(化合物(5))からなる群から選択される一種以上のものである。すなわち、配合される還元性化合物は、一種のみでよいし、二種以上でもよく、二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
式中、R21は、炭素数20以下のアルキル基、アルコキシ基若しくはN,N−ジアルキルアミノ基、水酸基又はアミノ基である。
21における炭素数20以下のアルキル基は、炭素数が1〜20であり、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、前記一般式(1)のRにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
21における炭素数20以下のアルコキシ基は、炭素数が1〜20であり、R21における前記アルキル基が酸素原子に結合してなる一価の基が例示できる。
21における炭素数20以下のN,N−ジアルキルアミノ基は、炭素数が2〜20であり、窒素原子に結合している2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよく、該アルキル基はそれぞれ炭素数が1〜19である。ただし、これら2個のアルキル基の炭素数の合計値が2〜20である。
窒素原子に結合している前記アルキル基は、それぞれ直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、炭素数が1〜19である点以外は、前記一般式(1)のRにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
前記還元性化合物として、ヒドラジンは、一水和物(HN−NH・HO)を用いてもよい。
前記還元性化合物は、ギ酸(H−C(=O)−OH)、ギ酸メチル(H−C(=O)−OCH)、ギ酸エチル(H−C(=O)−OCHCH)、ギ酸ブチル(H−C(=O)−O(CHCH)、プロパナール(H−C(=O)−CHCH)、ブタナール(H−C(=O)−(CHCH)、ヘキサナール(H−C(=O)−(CHCH)、ホルムアミド(H−C(=O)−NH)、N,N−ジメチルホルムアミド(H−C(=O)−N(CH)又はシュウ酸であることが好ましい。
銀インク組成物において、還元剤の配合量は、前記カルボン酸銀の配合量1モルあたり0.04〜3.5モルであることが好ましく、0.06〜2.5モルであることがより好ましい。このように規定することで、銀インク組成物は、より容易に、より安定して銀層を形成できる。
[アルコール]
銀インク組成物は、前記カルボン酸銀以外に、さらにアルコールが配合されてなるものでもよい。
前記アルコールは、下記一般式(2)で表されるアセチレンアルコール類(以下、「アセチレンアルコール(2)」と略記することがある)であることが好ましい。
Figure 0006126487
(式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。)
(アセチレンアルコール(2))
アセチレンアルコール(2)は、前記一般式(2)で表される。
式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。
R’及びR’’における炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。R’及びR’’における前記アルキル基としては、Rにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
R’及びR’’におけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基としては、炭素数が1〜16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、該脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、シアノ基、フェノキシ基等が例示でき、Rにおけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基と同様である。そして、置換基の数及び位置は特に限定されず、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
R’及びR’’は、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
好ましいアセチレンアルコール(2)としては、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オールが例示できる。
アセチレンアルコール(2)を用いる場合、銀インク組成物において、アセチレンアルコール(2)の配合量は、前記カルボン酸銀の配合量1モルあたり0.03〜0.7モルであることが好ましく、0.05〜0.3モルであることがより好ましい。このような範囲とすることで、銀インク組成物の安定性がより向上する。
前記アルコールは、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合で、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
銀インク組成物は、前記カルボン酸銀、含窒素化合物、還元剤及びアルコール以外の、その他の成分が配合されてなるものでもよい。
銀インク組成物における前記その他の成分は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されず、好ましいものとしては、アルコール以外の溶媒が例示でき、配合成分の種類や量に応じて任意に選択できる。
銀インク組成物における前記その他の成分は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合で、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
銀インク組成物において、配合成分の総量に対する前記その他の成分の配合量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
銀インク組成物中の成分は、すべて溶解していてもよいし、一部又はすべてが溶解していなくてもよいが、溶解していない成分は、均一に分散されていることが好ましい。
銀インク組成物は、前記カルボン酸銀、及び前記カルボン酸銀以外の成分を配合することで得られる。
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。ただし、本発明においては、還元剤は滴下により配合することが好ましく、さらに滴下速度の変動を抑制することで、金属銀の表面粗さをより低減できる傾向にある。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法、ミキサーを使用して混合する方法、超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、−5〜60℃であることが好ましい。
また、配合時間(混合時間)も、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、5分〜5時間であることが好ましい。
[二酸化炭素]
銀インク組成物は、さらに二酸化炭素が供給されてなるものでもよい。このような銀インク組成物は高粘度となり、例えば、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等の、インクを厚盛りすることが必要な印刷法への適用に好適である。
二酸化炭素は、銀インク組成物製造時のいずれの時期に供給してもよい。
そして、本発明においては、例えば、前記カルボン酸銀及び含窒素化合物が配合されてなる第一の混合物に、二酸化炭素を供給して第二の混合物とし、必要に応じて前記第二の混合物に、さらに、前記還元剤を配合して、銀インク組成物を製造することが好ましい。また、前記アルコール又はその他の成分を配合する場合、これらは、第一の混合物及び第二の混合物のいずれか一方又は両方の製造時に配合でき、目的に応じて任意に選択できる。
前記第一の混合物は、配合成分が異なる点以外は、上記の銀インク組成物と同様の方法で製造できる。
第一の混合物は、配合成分がすべて溶解していてもよいし、一部の成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、配合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
第一の混合物製造時の配合温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、−5〜30℃であることが好ましい。また、配合時間は、配合成分の種類や配合時の温度に応じて適宜調節すればよいが、例えば、0.5〜12時間であることが好ましい。
第一の混合物に供給される二酸化炭素(CO)は、ガス状及び固形状(ドライアイス)のいずれでもよく、ガス状及び固形状の両方でもよい。二酸化炭素が供給されることにより、この二酸化炭素が第一の混合物に溶け込み、第一の混合物中の成分に作用することで、得られる第二の混合物の粘度が上昇すると推測される。
二酸化炭素ガスの供給は、液体中にガスを吹き込む公知の各種方法で行えばよく、適した供給方法を適宜選択すればよい。例えば、配管の一端を第一の混合物中に浸漬し、他端を二酸化炭素ガスの供給源に接続して、この配管を通じて二酸化炭素ガスを第一の混合物に供給する方法が例示できる。この時、配管の端部から直接二酸化炭素ガスを供給してもよいが、例えば、多孔質性のものなど、ガスの流路となり得る空隙部が多数設けられ、導入されたガスを拡散させて微小な気泡として放出することが可能なガス拡散部材を配管の端部に接続し、このガス拡散部材を介して二酸化炭素ガスを供給してもよい。また、第一の混合物の製造時と同様の方法で、第一の混合物を撹拌しながら二酸化炭素ガスを供給してもよい。このようにすることで、効率的に二酸化炭素を供給できる。
二酸化炭素ガスの供給量は、供給先の第一の混合物の量や、目的とする銀インク組成物又は第二の混合物の粘度に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、20〜25℃における粘度が5Pa・s以上である銀インク組成物を100〜1000g程度得るためには、二酸化炭素ガスを100L以上供給することが好ましく、200L以上供給することがより好ましい。なお、ここでは銀インク組成物の20〜25℃における粘度について説明したが、銀インク組成物の使用時の温度は、20〜25℃に限定されるものではなく、任意に選択できる。
二酸化炭素ガスの流量は、必要とされる二酸化炭素ガスの供給量を考慮して適宜調節すればよいが、第一の混合物1gあたり0.5mL/分以上であることが好ましく、1mL/分以上であることがより好ましい。流量の上限値は特に限定されないが、取り扱い性等を考慮すると、混合物1gあたり40mL/分であることが好ましい。
そして、二酸化炭素ガスの供給時間は、必要とされる二酸化炭素ガスの供給量や、流量を考慮して適宜調節すればよい
二酸化炭素ガス供給時の第一の混合物の温度は、5〜70℃であることが好ましく、7〜60℃であることがより好ましく、10〜50℃であることが特に好ましい。前記温度が前記下限値以上であることで、より効率的に二酸化炭素を供給でき、前記温度が前記上限値以下であることで、不純物が少ないより良好な品質の銀インク組成物が得られる。
二酸化炭素ガスの流量及び供給時間、並びに二酸化炭素ガス供給時の前記温度は、それぞれの値を相互に考慮しながら適した範囲に調節すればよい。例えば、前記温度を低めに設定しても、二酸化炭素ガスの流量を多めに設定するか、二酸化炭素ガスの供給時間を長めに設定することで、あるいはこの両方を行うことで、効率的に二酸化炭素を供給できる。また、二酸化炭素ガスの流量を少なめに設定しても、前記温度を高めにするか、二酸化炭素ガスの供給時間を長めに設定することで、あるいはこの両方を行うことで、効率的に二酸化炭素を供給できる。すなわち、二酸化炭素ガスの流量、二酸化炭素ガス供給時の前記温度として例示した上記数値範囲の中の数値を、二酸化炭素ガスの供給時間も考慮しつつ柔軟に組み合わせることで、良好な品質の銀インク組成物が効率的に得られる。
二酸化炭素ガスの供給は、第一の混合物を撹拌しながら行うことが好ましい。このようにすることで、供給した二酸化炭素ガスがより均一に第一の混合物中に拡散し、より効率的に二酸化炭素を供給できる。
この時の撹拌方法は、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物の製造時における前記混合方法の場合と同様でよい。
ドライアイス(固形状二酸化炭素)の供給は、第一の混合物中にドライアイスを添加することで行えばよい。ドライアイスは、全量を一括して添加してもよいし、分割して段階的に(添加を行わない時間帯を挟んで連続的に)添加してもよい。
ドライアイスの使用量は、上記の二酸化炭素ガスの供給量を考慮して調節すればよい。
ドライアイスの添加中及び添加後は、第一の混合物を撹拌することが好ましく、例えば、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物の製造時と同様の方法で撹拌することが好ましい。このようにすることで、効率的に二酸化炭素を供給できる。
撹拌時の温度は、二酸化炭素ガス供給時と同様でよい。また、撹拌時間は、撹拌温度に応じて適宜調節すればよい。
第二の混合物の粘度は、銀インク組成物又は第二の混合物の取り扱い方法など、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、銀インク組成物をスクリーン印刷法、フレキソ印刷法等の高粘度インクを使用する印刷法へ適用する場合には、第二の混合物の20〜25℃における粘度は、3Pa・s以上であることが好ましい。なお、ここでは第二の混合物の20〜25℃における粘度について説明したが、第二の混合物の使用時の温度は、20〜25℃に限定されるものではなく、任意に選択できる。
前記第二の混合物には、さらに、必要に応じて前記還元剤、アルコール及びその他の成分からなる群から選択される一種以上を配合して、銀インク組成物とすることができる。
このときの銀インク組成物は、配合成分が異なる点以外は、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物と同様の方法で製造できる。そして、得られた銀インク組成物は、配合成分がすべて溶解していてもよいし、一部の成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、配合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
前記還元剤配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、−5〜60℃であることが好ましい。また、配合時間は、配合成分の種類や配合時の温度に応じて適宜調節すればよいが、例えば、0.5〜12時間であることが好ましい。
前記その他の成分は、先に説明したように、前記第一の混合物及び第二の混合物のいずれかの製造時に配合されてもよく、両方の製造時に配合されてもよい。すなわち、第一の混合物及び第二の混合物を経て銀インク組成物を製造する過程において、二酸化炭素以外の配合成分の総量に対する前記その他の成分の配合量の割合([その他の成分(質量)]/[カルボン酸銀、含窒素化合物、還元剤、アルコール、及びその他の成分(質量)]×100)は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0質量、すなわちその他の成分を配合しなくても、銀インク組成物は十分にその効果を発現する。
二酸化炭素が供給されてなる銀インク組成物は、例えば、銀インク組成物をスクリーン印刷法、フレキソ印刷法等の高粘度インクを使用する印刷法へ適用する場合には、20〜25℃における粘度が、1Pa・s以上であることが好ましい。
例えば、還元剤の配合時には、得られる配合物(銀インク組成物)は比較的発熱し易い。そして、還元剤の配合時の温度が高い場合、この配合物は、後述する銀インク組成物の加熱処理時と同様の状態になるため、還元剤による前記カルボン酸銀の分解促進作用によって、前記カルボン酸銀の少なくとも一部において金属銀の形成が開始されることがあると推測される。このような金属銀を含有する銀インク組成物は、銀層形成時において、金属銀を含有しない銀インク組成物よりも温和な条件で後処理を行うことにより、銀層(導電体)を形成できることがある。また、還元剤の配合量が十分に多い場合にも、同様に温和な条件で後処理を行うことにより、銀層を形成できることがある。このように、前記カルボン酸銀の分解を促進する条件を採用することで、後処理として、より低温での加熱処理で、あるいは加熱処理を行わずに常温での乾燥処理のみで、銀層を形成できることがある。また、このような金属銀を含有する銀インク組成物は、金属銀を含有しない銀インク組成物と同様に取り扱うことができ、特に取り扱い性が劣ることもない。
銀インク組成物は、例えば、印刷法、塗布法、浸漬法等の公知の方法で基材上に付着させることができる。
前記印刷法としては、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、ディップ式印刷法、インクジェット式印刷法、ディスペンサー式印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等が例示できる。
前記塗布法としては、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター等の各種コーターや、ワイヤーバー等を用いる方法が例示できる。
銀層12の厚さは、基材11上に付着させる銀インク組成物の量、又は銀インク組成物におけるカルボン酸銀の配合量を調節することで調節できる。
基材11上に付着させた銀インク組成物を乾燥処理する場合には、公知の方法で行えばよく、例えば、常圧下、減圧下及び送風条件下のいずれで行ってもよく、大気下及び不活性ガス雰囲気下のいずれでおこなってもよい。そして、乾燥温度も特に限定されず、加熱乾燥及び常温乾燥のいずれでもよい。加熱処理が不要な場合の好ましい乾燥方法としては、18〜30℃で大気下において乾燥させる方法が例示できる。
基材11上に付着させた銀インク組成物を加熱(焼成)処理する場合、その条件は、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよい。通常は、加熱温度が60〜200℃であることが好ましく、70〜180℃であることがより好ましい。加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、0.2〜12時間であることが好ましく、0.4〜10時間であることがより好ましい。前記カルボン酸銀の中でもβ−ケトカルボン酸銀(1)は、例えば、酸化銀等の金属銀形成材料とは異なり、当該分野で公知の還元剤等を使用しなくても、低温で分解する。そして、このような分解温度を反映して、前記銀インク組成物は、上記のように、従来のものより極めて低温で金属銀を形成できる。
銀インク組成物の加熱処理の方法は特に限定されず、例えば、電気炉による加熱、感熱方式の熱ヘッドによる加熱、遠赤外線照射による加熱等で行うことができる。また、銀インク組成物の加熱処理は、大気下で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。そして、常圧下及び減圧下のいずれで行ってもよい。
銀インク組成物を用いた場合の銀層12は、銀インク組成物の前記後処理により形成された導電体からなる層で、金属銀を主成分とするものである。ここで「金属銀を主成分とする」とは、金属銀の比率が、見かけ上金属銀だけからなるとみなし得る程度に十分に高いことを意味し、例えば、前記導電体中の金属銀の比率は99質量%以上であることが好ましい。
積層体1は、ポリビニルアセタールとしてポリビニルアセタール(I)を用いるなど、各層の構成を調節することで、JIS K 5600−5−6に準拠した、基材11(樹脂構造体)及び銀層12の密着性試験において、分類0又は1を満たす、特に密着強度が高いものとすることが可能である。
本発明の第一の実施形態に係る積層体は、図1に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、他の構成が追加されたり、一部構成が適宜変更されたものでもよい。
例えば、基材11及び銀層12以外に、銀層12を被覆してその変質及び破損を抑制するためのオーバーコート層等、その他の層を備えた積層体でもよい。
また、ここでは、基材11の主面のうち、一方の面のみに銀層12を備えた積層体を示しているが、両方の主面(前記一方の面と、これとは反対側の他方の面と、の両方)に銀層12を備えた積層体でもよい。
◎第二の実施形態
第二の実施形態に係る前記積層体としては、前記樹脂構造体が銀層と銀層以外の他の層との間に設けられた中間層であるものが挙げられる。ここで「中間層」とは、二層(上層及び下層)間に設けられたものであり、二層の密着強度を向上させるための密着層が例示できる。また、「他の層」とは、銀層以外の層であれば特に限定されず、配線が設けられた回路基板やアンテナ構造体等において使用される基材が例示できる。
図2は、第二の実施形態に係る積層体を例示する概略断面図である。
ここに示す積層体2は、基材21上に密着層23を介して銀層22を備える。すなわち、積層体2は、基材21上に密着層23及び銀層22がこの順に積層されたものである。そして、密着層23は前記樹脂構造体であり、ポリビニルアセタール及びCNFを含有する。また、銀層22はカルボン酸銀を用いて形成されたものである。
基材21の材質は特に限定されず、目的に応じて選択すればよいが、前記銀インク組成物の加熱処理による銀層形成時に変質しない耐熱性を有するものが好ましい。
基材21の材質として具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリアミド(PA)、ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリアリレート、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂等の合成樹脂が例示できる。
また、基材21の材質としては、上記以外にも、ガラス、シリコン等のセラミックスや、紙が例示できる。
また、基材21は、ガラスエポキシ樹脂、ポリマーアロイ等の、二種以上の材質を併用したものでもよい。
基材21は、材質以外は、積層体1における基材11と同様のものである。例えば、基材21の厚さは0.5〜5000μmであることが好ましく、0.5〜2000μmであることがより好ましく、前記下限値以上であることで、密着層23の構造をより安定して保持でき、前記上限値以下であることで、密着層23形成時の取り扱い性がより良好となる。
密着層23は、厚さが0.001〜20μmであることが好ましく、0.002〜5μmであることがより好ましい。密着層23の厚さが前記下限値以上であることで、銀層22との密着強度がより向上し、密着層23の厚さが前記上限値以下であることで、密着層23の構造をより安定して維持できる。
密着層23は、厚さ以外は、積層体1における基材11と同様のものである。
例えば、基材21の主面(密着層23が形成されている表面)を上方から見下ろすように、積層体2を平面視したときの、密着層23の形状は、目的に応じて任意に設定でき、後述する銀層22の形状を考慮して設定すればよい。例えば、基材21の表面全面に密着層23が設けられていてもよいし、基材21の表面のうち、一部のみに密着層23が設けられていてもよく、この場合、密着層23はパターニングされていてもよい。
密着層23は、基材11と同様に、例えば、ポリビニルアセタール及びCNFが配合されてなる樹脂構造体用組成物(密着層形成用組成物)を用いて形成できるが、かかる組成物を基材21上に付着させ、必要に応じて加熱処理等の後処理を行うことで形成することが好ましい。この場合の密着層23の形成方法は、前記組成物の付着対象が仮基材ではなく基材21である点以外は、基材11の形成方法と同様とすることができる。
銀層22は、積層体1における銀層12と同様のものであり、銀層12と同様の方法で形成できる。
積層体2は、ポリビニルアセタールとしてポリビニルアセタール(I)を用いるなど、各層の構成を調節することで、JIS K 5600−5−6に準拠した、密着層23(樹脂構造体)及び銀層22の密着性試験において、分類0又は1を満たす、特に密着強度が高いものとすることが可能である。
本発明の第二の実施形態に係る積層体は、図2に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、他の構成が追加されたり、一部構成が適宜変更されたものでもよい。
例えば、基材21、密着層23及び銀層22以外に、銀層22を被覆してその変質及び破損を抑制するためのオーバーコート層等、その他の層を備えていてもよい。
また、ここでは、基材21の主面のうち、一方の面のみに密着層23及び銀層22を備えた積層体を示しているが、両方の主面(前記一方の面と、これとは反対側の他方の面と、の両方)に密着層23及び銀層22を備えた積層体でもよいし、他方の面に密着層23を備えず、銀層22が基材21上に直接形成された積層体でもよい。
本発明に係る積層体においては、上記のように、銀層は体積抵抗率が低く、また、樹脂構造体と銀層との密着強度が高い。したがって、本発明に係る積層体は、長期に渡って品質及び構造が安定して維持されるので、各種電子機器の構成要素として極めて有用である。例えば、パターニングされた銀層を回路とすることで、前記積層体を回路基板とすることができる。また、パターニングされた銀層をアンテナとすることで、前記積層体をアンテナ構造体とすることができ、かかるアンテナ構造体を用いること以外は、公知のデータ受送信体と同様の構成とすることで、データ受送信体とすることができる。例えば、図1に示す積層体1において、基材11上に銀層12と電気的に接続されたICチップを設けてアンテナ部とすることにより、非接触型データ受送信体を構成できる。これは、図2に示す積層体2においても同様である。
<<電子機器>>
本発明に係る電子機器は、前記積層体を用い、前記基材を筐体として備えたことを特徴とし、例えば、前記積層体中の基材で筐体の少なくとも一部を構成したこと以外は、公知の電子機器と同様の構成とすることができる。例えば、前記積層体を回路基板として用いることができ、また、前記積層体に加え、音声入力部、音声出力部、操作スイッチ、表示部等を組み合わせることにより、携帯電話機を構成できる。また、銀層を低温で形成することも可能であり、基材等の材質を幅広く選択できるので、設計の自由度が飛躍的に向上し、より合理的な構造とすることも可能である。
本発明に係る電子機器は、長期に渡って安定した性能を維持することが可能である。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
[実施例1]
<積層体の製造>
(銀インク組成物の製造)
液温が50℃以下となるように、2−エチルヘキシルアミン(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して1倍モル量)に2−メチルアセト酢酸銀を添加して、15分間撹拌することにより、液状物を得た。この液状物に、反応液の温度が50℃以下となるように、ギ酸(2−メチルアセト酢酸銀に対して0.8倍モル量)を30分間かけて滴下した。ギ酸の滴下終了後、25℃にて反応液をさらに1.5時間撹拌することにより、銀インク組成物を得た。各成分の配合比を表1に示す。表1中、「含窒素化合物(モル比)」とは、カルボン酸銀の配合量1モルあたりの含窒素化合物の配合量(モル数)([含窒素化合物のモル数]/[カルボン酸銀のモル数])を意味する。「還元剤(モル比)」も同様に、カルボン酸銀の配合量1モルあたりの還元剤の配合量(モル数)([還元剤のモル数]/[カルボン酸銀のモル数])を意味する。
(樹脂構造体の製造)
文献「Masaya Nogi et al,Nanoscale,2013,5,4395−4399」に記載の方法を参考に、以下の方法でCNFシートを調製した。
撹拌機(Vita Mix社製「ABS−BU」)を用いて、2質量%の濃度で広葉樹のサルファイトパルプが懸濁した状態のスラッシュパルプ(日本製紙ケミカル社製)を、3700rpmで5分間撹拌した。
次いで、得られた撹拌物(懸濁液)を、パルプの濃度が0.5質量%となるように水で希釈し、超高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製「HJP−25005E」)を用いて、この希釈した懸濁液を直径0.15mmのノズルから245MPaの圧力で、セラミックボールに衝突させ、この操作を50回繰り返した。
次いで、ろ紙を用いて得られた懸濁液を吸引ろ過し、ろ紙の上に残った固形分(CNF)をエタノールで洗浄した後、そのまま常温で24時間放置し、ろ紙から引き剥がすことにより、厚さ14μmのCNFシートを得た。
また、Ri−1がプロピル基(−C)である構成単位(i)−1を72〜74モル%有し、構成単位(i)−2を4〜6モル%有し、構成単位(i)−3を22モル%有し、下記方法で測定したTgが64℃であり、分子量が110000であるポリビニルアセタール(I)と、エタノールとを用いて、濃度が5質量%である、ポリビニルアセタール(I)の溶液を調製し、その温度を23℃として、ここに上記のCNFシートを12時間浸漬した後、取り出し、乾燥させた。
以上により、ポリビニルアセタール(I)及びCNFを含有する、厚さが15μmの樹脂構造体を得た。なお、この樹脂構造体のポリビニルアセタール(I)の含有量を求めたところ、CNFの含有量に対して0.43質量倍であった。
(Tgの測定方法)
示差走査熱量測定(DSC)により測定した。すなわち、下記装置を用いて、試料(約10g)を昇温速度10℃/分で20℃から150℃まで昇温させて水分を除去した後、降温速度10℃/分で150℃から20℃まで降温させ、再度、昇温速度10℃/分で20℃から150℃まで昇温させて、この間、試料が相転移し、比熱が変化した温度を求めてTgとした。
測定装置:示差熱分析装置(SII社製「DSC6200R」)
容器:アルミニウム製
リファレンス:アルミナ
(積層体の製造)
上記で得られた樹脂構造体上にスクリーン印刷法により、上記で得られた銀インク組成物を塗布した後、これを80℃で2時間、オーブン内で加熱(焼成)処理することにより、導電層として銀層(厚さ1〜2μm)を樹脂構造体の表面上に、線幅0.5mm、線長30mmとなるようにライン状にパターニングして形成した。
<積層体の評価>
(密着強度の評価)
得られた積層体について、JIS K5600−5−6に準拠して、銀層と樹脂構造体との密着強度を評価した。すなわち、面積が同等の領域が25個形成されるように、銀層において直交する2方向に表面側から切れ込みを入れてクロスカットし、このクロスカット後の銀層表面にテープを貼付した後、このテープを剥がし、25個の領域のうち、銀層の樹脂構造体からの剥離が見られない領域の数を確認し、その数に基づいて銀層と樹脂構造体との密着強度を評価した。結果を表2に示す。表2中、○及び×はそれぞれ以下のことを意味する。
○:分類0〜1
×:分類2〜5
<積層体の評価>
(体積抵抗率の測定及び評価)
銀層について、線抵抗値R(Ω)、断面積A(cm)、及び線長L(cm)を測定し、式「ρ=R×A/L」により体積抵抗率ρ(Ω・cm)を算出した。線抵抗値Rはデジタルマルチメータ(三和電気計器社製「PC5000a」)を用いて測定し、断面積Aは形状測定レーザマイクロスコープ(キーエンス社製「VK−X100」)を用いて測定した。そして、下記基準に従って、銀層の体積抵抗率を評価した。結果を表2に示す。
○:測定値が10μΩ・cm以下である。
×:測定値が10μΩ・cmより大きい。
[比較例1]
<積層体の製造及び評価>
ポリビニルアセタール(I)及びCNF(1)を含有する樹脂構造体に代えて、フェノール樹脂(1)及びCNF(1)を含有する樹脂構造体(厚さ15μm)を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で積層体を製造及び評価した。樹脂構造体は、フェノール樹脂(群栄化学社製「PL4414」、熱硬化タイプ、固形分40%エタノール溶液)とCNF(1)とを含有する分散液を調製し、型を用いて、この分散液を風乾後、150℃で2時間加熱して重合させることによって得た。また、前記分散液において、重合開始前のフェノール樹脂の含有量は、CNF(1)の含有量に対して0.43質量倍とした。結果を表2に示す。
[比較例2]
<積層体の製造及び評価>
ポリビニルアセタール(I)及びCNF(1)を含有する樹脂構造体に代えて、アクリル樹脂(1)及びCNF(1)を含有する樹脂構造体(厚さ15μm)を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で積層体を製造及び評価した。樹脂構造体は、アクリル樹脂(三菱化学社製「UV3000A」、紫外線硬化タイプ)とCNF(1)を含有する分散液を調製し、型を用いて、この分散液に紫外線を8分間照射して重合させ、その後加熱することなく得た。また、前記分散液において、重合開始前のアクリル樹脂の含有量は、CNF(1)の含有量に対して0.43質量倍とした。結果を表2に示す。
[比較例3]
<積層体の製造及び評価>
ポリビニルアセタール(I)及びCNF(1)を含有する樹脂構造体に代えて、アクリル樹脂(2)及びCNF(1)を含有する樹脂構造体(厚さ15μm)を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で積層体を製造及び評価した。樹脂構造体は、アクリル樹脂(東亜合成社製「アニロックスUV3701」、紫外線硬化タイプ)とCNF(1)を含有する分散液を調製し、型を用いて、この分散液に紫外線を8分間照射して重合させ、その後加熱することなく得た。また、前記分散液において、重合開始前のアクリル樹脂の含有量は、CNF(1)の含有量に対して0.43質量倍とした。結果を表2に示す。
[比較例4]
<積層体の製造及び評価>
2−エチルヘキシルアミン、2−メチルアセト酢酸銀及びギ酸が配合されてなる上記の銀インク組成物に代えて、銀粒子及びバインダーを含む市販品の銀ペースト(トーヨーケム社製「RAFS039」)を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で積層体を製造及び評価した。結果を表2に示す。
[比較例5]
<積層体の製造及び評価>
ポリビニルアセタール(I)及びCNF(1)を含有する樹脂構造体に代えて、フェノール樹脂(1)及びCNF(1)を含有する樹脂構造体を用い、2−エチルヘキシルアミン、2−メチルアセト酢酸銀及びギ酸が配合されてなる上記の銀インク組成物に代えて、銀粒子及びバインダーを含む市販品の銀ペースト(トーヨーケム社製「RAFS039」)を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で積層体を製造及び評価した。ここで樹脂構造体は、比較例1と同じものである。結果を表2に示す。
[比較例6]
<積層体の製造及び評価>
ポリビニルアセタール(I)及びCNF(1)を含有する樹脂構造体に代えて、アクリル樹脂(1)及びCNF(1)を含有する樹脂構造体を用い、2−エチルヘキシルアミン、2−メチルアセト酢酸銀及びギ酸が配合されてなる上記の銀インク組成物に代えて、銀粒子及びバインダーを含む市販品の銀ペースト(トーヨーケム社製「RAFS039」)を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で積層体を製造及び評価した。ここで樹脂構造体は、比較例2と同じものである。結果を表2に示す。
[比較例7]
<積層体の製造及び評価>
ポリビニルアセタール(I)及びCNF(1)を含有する樹脂構造体に代えて、アクリル樹脂(2)及びCNF(1)を含有する樹脂構造体を用い、2−エチルヘキシルアミン、2−メチルアセト酢酸銀及びギ酸が配合されてなる上記の銀インク組成物に代えて、銀粒子及びバインダーを含む市販品の銀ペースト(トーヨーケム社製「RAFS039」)を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で積層体を製造及び評価した。ここで樹脂構造体は、比較例3と同じものである。結果を表2に示す。
Figure 0006126487
Figure 0006126487
上記結果から明らかなように、実施例1では、銀層形成用組成物として銀インク組成物を用いたことにより、銀層の体積抵抗率が低かった。また、ポリビニルアセタール及びCNFを含有する樹脂構造体を用いたことにより、銀層と樹脂構造体との密着強度が高く、JIS K 5600−5−6に準拠した前記密着性試験において、分類0又は1を満たしていた。
これに対して、比較例1〜3の積層体は、銀層形成用組成物として銀インク組成物を用いたことにより、銀層の体積抵抗率が低かったが、フェノール樹脂又はアクリル樹脂及びセルロースナノファイバーを含有する樹脂構造体を用いたことにより、銀層と樹脂構造体との密着強度が低かった。
また、比較例4〜7の積層体は、銀層形成用組成物として上記の銀ペーストを用いたことにより、銀層と樹脂構造体との密着強度は高かったが、銀層の体積抵抗率が高かった。
本発明は、電子機器において、銀の配線回路を備えた回路基板に利用可能である。
1,2・・・積層体、11,21・・・基材、12,22・・・銀層、23・・・密着層

Claims (4)

  1. 樹脂構造体上にカルボン酸銀を用いて銀層が形成され、
    前記樹脂構造体が、ポリビニルアセタール及びセルロースナノファイバーを含有することを特徴とする積層体。
  2. 前記ポリビニルアセタールが、下記式(i)−1、(i)−2及び(i)−3で表される構成単位を有し、ガラス転移点が90℃未満であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
    Figure 0006126487
    (式中、Ri−1は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。)
  3. JIS K 5600−5−6に準拠した、前記樹脂構造体及び銀層の密着性試験において、分類0又は1を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体を用い、前記樹脂構造体を筐体として備えたことを特徴とする電子機器。
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