JP2007119456A - 難溶性薬物のナノ微粒子を含有する水性懸濁液剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】
難溶性薬物を局所製剤化する方法は確立されておらず、治療に充分な量の薬物を局所へ投与可能とする水性懸濁液剤を提供すること。さらには、高圧蒸気滅菌が可能であり、局所刺激性が低く、経時安定性および分散安定性に優れた水性懸濁液剤、とりわけ、点眼剤を提供すること。
【解決手段】
難溶性薬物のナノ微粒子および解粒剤を含有することを特徴とする水性懸濁液剤ならびにこの水性懸濁液剤に難溶性薬物を飽和溶解度以上に可溶化させた溶液を合わせた水性懸濁液剤は、局所における薬物濃度を治療に充分な濃度まで増加させ、有効濃度を維持することを可能とし、優れた治療効果を発揮し、局所刺激性が低く、経時安定性および分散安定性に優れ、高圧蒸気滅菌が可能な優れた薬剤であり、種々の疾患の局所投与製剤として有用である。
【選択図】なし

Description

本発明は、難溶性薬物のナノ微粒子および解粒剤を含有することを特徴とする水性懸濁液剤に関する。
薬物が薬効を発揮するためには、薬物が作用部位で有効濃度を持続することが必要である。たとえば、眼感染症、上気道感染症、歯周病、腟感染症などの細菌性感染症の治療においては、抗細菌薬が眼、耳、鼻、歯周、腟などの感染部位に局所投与される。たとえば、点眼剤を眼に投与した場合、薬物は、涙液により希釈・流出する。そのため、通常、投与された薬物の1〜10%のみが、有効に利用され、薬物のバイオアベイラビリティはきわめて低い。患者の症状、菌種、薬物の種類などにより、薬効が得られない場合や頻回に投与する必要が生じる(非特許文献1)。
難溶性薬物を眼、耳、鼻などの局所製剤とする手法としては、軟膏剤にする方法、油に溶解する方法、溶解補助剤を添加し、水系溶媒に溶解する方法などがあげられる。たとえば、難溶性薬物である1−シクロプロピル−8−メチル−7−[5−メチル−6−(メチルアミノ)ピリジン−3−イル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸(以下、T−3912とする。)を可溶化する方法として、シクロデキストリン類およびマグネシウム塩を利用する方法が知られている(特許文献1)。シクロデキストリン類を点眼剤に用いる場合、シクロデキストリン類の眼刺激性のため、シクロデキストリン類の濃度は、約15%以下とする必要がある(非特許文献2)。難溶性薬物を可溶化して局所に投与できる用量には限界がある。
難溶性薬物を点眼剤などの局所製剤とする別の方法としては、薬物を懸濁させた水性懸濁液剤が知られている。水性懸濁液剤は、多量の薬物を含有することができる。たとえば、フルオロメトロン、酢酸プレドニゾロン、デキサメタゾンおよびピマリシンなどの水性懸濁点眼剤が市販されている。これらの水性懸濁点眼剤中の難溶性薬物の粒子は、数μmから数十μmであり、長時間放置すると、薬物粒子が凝集および沈降する。そのため、投与前によく振盪して薬物粒子を再分散させなければならず、患者にとって煩雑である。また、これらの懸濁剤は、ろ過滅菌ができず、無菌製剤を製造するには非常に複雑な製造工程が必要となる(特許文献2)。
水性懸濁点眼剤の別の滅菌方法としては、高圧蒸気滅菌が挙げられる。しかしながら、大小の粒子が混在した状態においては、小さな粒子は、溶解して消滅し、大きな粒子は、より成長する現象(オストワルド熟成)が起こることは周知であり、苛烈な温度変化を伴う高圧蒸気滅菌では、さらに粒子の粗大化が進行する。また、滅菌中に微粒子の表面改質剤/解粒剤が析出し、これに伴い粒子が粗大化する(特許文献3)。微粒子を含む水性懸濁液剤を高圧蒸気滅菌した場合、薬物粒子が粗大化し、分散性を保つことは難しい。
従来、T−3912などの合成抗菌剤のナノ微粒子を含んだ水性懸濁液剤は知られていない。特に、難溶性薬物のナノ微粒子および難溶性薬物を飽和溶解度以上に可溶化させた溶解部で構成される水性懸濁液剤は、全く知られていない。
特開2003−226643公報 特開平10−287552号公報 特開平06−227967号公報 ドラッグ・アンド・ザ・ファーマシューティカル・サイエンス(Drugs and The Pharmaceutical Sciences)、2003年、第130巻、オフサルミック・ドラッグ・デリバリー・システムズ(Ophthalmic Drug Delivery Systems)、マーセル・デッカー社編(Marcel Dekker, Inc.)p.6-8、142、437 ドラッグ・デベロップメント・アンド・インダストリアル・ファーマシィ(Drug Development and Industrial Pharmacy)、1997年、第23巻、p.473-481
難溶性薬物を局所製剤化する方法は確立されておらず、治療に充分な量の薬物を局所へ投与可能とする水性懸濁液剤が強く望まれている。さらには、高圧蒸気滅菌が可能であり、局所刺激性が低く、経時安定性および分散安定性に優れた水性懸濁液剤、とりわけ、点眼剤が強く望まれている。
このような状況下において、本発明者らは、鋭意検討を行った結果、解粒剤を含む難溶性薬物のナノ微粒子分散液を用いて調製された水性懸濁液剤が、局所における薬物濃度を治療に充分な濃度まで増加させ、維持し、優れた治療効果を発揮することを見出した。本発明の水性懸濁液剤は、局所刺激性が低く、経時安定性および分散安定性に優れ、高圧蒸気滅菌が可能な優れた液剤である。さらに、本発明者らは、難溶性薬物のナノ微粒子分散液および難溶性薬物を飽和溶解度以上に可溶化させた溶液を配合した水性懸濁液剤が、局所における薬物濃度のプロファイルを調節し、優れた治療効果を発揮することを見出し、本発明を完成した。
本発明によれば、解粒剤を含む難溶性薬物のナノ微粒子分散液を用いて、水性懸濁液剤とすることにより、薬物の投与量を増加させ、治療に充分な用量まで薬物を局所投与することができる。さらに、難溶性薬物のナノ微粒子および難溶性薬物が飽和溶解度以上に可溶化された溶解部を組み合わせることにより、極めて高い治療効果を示す優れた局所製剤を提供することができる。
本発明の水性懸濁液剤は、ろ過滅菌および高圧蒸気滅菌が可能であり、局所刺激性が低い。また、経時安定性および分散安定性に優れることから、投与前に再分散する必要がない。本発明の水性懸濁液剤は、局所製剤において必要とされる条件を具備し、たとえば、点眼剤などの無菌性を必要とする局所製剤にも適用できる。
さらに、本発明の水性懸濁液剤中の難溶性薬物のナノ微粒子および難溶性薬物の飽和溶解度以上に可溶化された溶解部の含量および比率を適宜変化させることにより、局所における薬物濃度のプロファイルを調節することが可能となる。これにより、適応部位や病態などに応じた合理的な製剤設計を提供することができる。
以下、発明について詳述する。
本発明で用いられる難溶性薬物とは、日本薬局方14通則の性状の項において溶解性を示す用語、「極めて溶けにくい」および「ほとんど溶けない」に該当する薬物を意味し、具体的には、20℃の水に対する溶解性が、1mg/mL未満の薬物を意味する。より具体的には、たとえば、セフジトレンピボキシル、セフテラムピボキシル、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、テリスロマイシンおよびアジスロマイシンなどの抗生剤;ノルフロキサシン、トスフロキサシン、スパルフロキサシン、ナジフロキサシン、エノキサシン、シノキサシン、フレロキサシン、プルリフロキサシン、ナリジクス酸、ピペミド酸、ピロミド酸およびT−3912などのピリドンカルボン酸系合成抗菌剤;ミコナゾール、クロトリマゾールおよび硝酸エコナゾールなどのイミダゾール系、イトラコナゾールなどのトリアゾール系、アムホテリシンBおよびその誘導体などのポリエン系ならびにグリセオフルビンなどの抗真菌剤;サキナビル、リトナビル、ロピナビル、ネビラピン、ビダラビン、アンプレナビルおよびエファビレンツなどの抗ウイルス剤;イブプロフェン、ケトプロフェンおよびプラノプロフェンなどのプロピオン酸系、インドメタシンなどのアリール酢酸系ならびにピロキシカム、アンピロキシカムおよびロルノキシカムなどのオシキカム系などの抗炎症剤;レフルノミド、メトトレキサート、サラゾスルファピリジン、オーラノフィンおよびイグラチモドなどの抗リウマチ剤;フマル酸クレマスチン、ロラタジン、メキタジン、ザフィルルカスト、プランルカスト、エバスチン、タザノラスト、トラニラスト、ラマトロバンおよびオキサトミドなどの抗アレルギー剤;オメプラゾール、ランソプラゾール、テプレノン、メトクロプラミドおよびソファルコンなどの消化器管用薬などが挙げられる。
好ましい難溶性薬物としては、ピリドンカルボン酸系合成抗菌剤、抗真菌剤および抗ウイルス剤が挙げられ、より好ましくは、ピリドンカルボン酸系合成抗菌剤および抗真菌剤が挙げられ、さらに好ましくは、ピリドンカルボン酸系合成抗菌剤が挙げられる。具体的に好ましい難溶性薬物としては、ノルフロキサシン、トスフロキサシン、T−3912、イトラコナゾール、アムホテリシンBおよびグリセオフルビンなどが挙げられ、より好ましくは、T−3912およびイトラコナゾールが挙げられ、さらに好ましくはT−3912が挙げられる。
本発明の難溶性薬物の水性懸濁液剤は、難溶性薬物のナノ微粒子分散液を用いて調製される。より好ましくは、難溶性薬物の可溶化液および難溶性薬物のナノ微粒子分散液を配合することにより調製される。難溶性薬物の可溶化液とは、一種以上の溶解補助剤を添加して飽和溶解度以上に可溶化された難溶性薬物が含まれる溶液を意味する。なお、「飽和溶解度以上に可溶化された」とは、特定の温度で、その温度の水に対する溶解度以上に溶解している状態、たとえば、難溶性薬物がそれ自身の20℃の水に対する溶解度以上に溶解している状態を意味する。
また、本発明で用いられる難溶性薬物としては、20℃の水に対する溶解性が、0.1mg/mL未満の薬物が好ましく、0.01mg/mL未満の薬物がさらに好ましい。
本発明の水性懸濁液剤中の難溶性薬物の含率は、0.01〜20%であればよく、好ましくは0.1〜10%であればよい。
溶解部の薬物の濃度は、薬理効果を発揮するのに必要な濃度以上であればよい。たとえば、T−3912の可溶化液およびT−3912のナノ微粒子分散液を配合する場合、T−3912の水性懸濁液の溶解部のT−3912の濃度は、0.001〜0.5%であればよく、好ましくは、0.01〜0.3%であればよい。
本発明において難溶性薬物のナノ微粒子とは、水性懸濁液剤における難溶性薬物の粒子の90%(体積)以上が粒子径1000nm未満の微粒子から構成されることを意味し、具体的には、レーザー回折散乱式の粒子径分布測定において、体積分布の90%累積径(D90)が、1000nm未満であることを意味する。また、「水性懸濁液剤中の難溶性薬物のナノ微粒子の90%(体積)以上が、粒子径500nm未満の大きさである」とは、水性懸濁液剤における難溶性薬物粒子の90%(体積)以上が粒子径500nm未満の微粒子から構成されることを意味し、具体的には、レーザー回折散乱式の粒子径分布測定において、体積分布の90%累積径(D90)が、500nm未満であることを意味する。
本発明で得られた難溶性薬物の水性懸濁液剤は、そのまま局所製剤とすることができる。また、常法により、さらに他の局所製剤とすることができる。
局所製剤としては、たとえば、(1)点眼剤、(2)点鼻剤、(3)点耳剤、(4)口腔粘膜または皮膚に投与される液剤、軟膏剤および硬膏剤ならびに(5)肛門または膣に投与される坐剤、軟膏剤および液剤などが挙げられ、好ましくは、点眼剤が挙げられる。
本発明の水性懸濁液剤は、たとえば、難溶性薬物を微粒化し、解粒剤を加え、必要に応じて添加剤を加えることによって製造することができる。
水性懸濁液剤の溶解部が、一種以上の溶解補助剤および飽和溶解度以上に可溶化された難溶性薬物を含有することを特徴とする水性懸濁液剤は、たとえば、以下の手順で製造することができる。
(1)難溶性薬物を微粒化し、解粒剤を加え、難溶性薬物のナノ微粒子分散液を製造する。
(2)難溶性薬物を溶解補助剤により、飽和溶解度以上に溶解させ、難溶性薬物の可溶化液を製造する。
(3)難溶性薬物のナノ微粒子分散液および難溶性薬物の可溶化液を混合する。また、必要に応じて添加剤などを加える。
ここで、解粒剤とは凝集粒を分散する効果のある添加剤を意味する。
以下に、各製造法について詳述する。
[製造法1]
難溶性薬物のナノ微粒子および解粒剤からなる本発明の水性懸濁液剤は、後述する製造法Aにより製造される難溶性薬物のナノ微粒子分散液に、必要に応じて、水、添加剤、解粒剤および粘稠剤ならびにそれらを含有する溶液を加えることにより製造することができる。
[製造法2]
難溶性薬物のナノ微粒子、解粒剤ならびに溶解部に一種以上の溶解補助剤および飽和溶解度以上に可溶化された難溶性薬物を含有する本発明の水性懸濁液剤は、後述する製造法Aにより製造される難溶性薬物のナノ微粒子分散液および後述する製造法Bにより製造される難溶性薬物の可溶化液を混合し、製造することができる。また、必要に応じて、水、添加剤、解粒剤および粘稠剤ならびにそれらの溶液を加えることができる。
本製造法において各成分の混合比は、特に限定されず、任意の比率で行えばよい。
本発明に用いられる添加剤としては、たとえば、防腐剤、等張化剤、pH調整剤および緩衝剤などが挙げられる。
本発明に用いられる防腐剤としては、たとえば、パラオキシ安息香酸メチルおよびパラオキシ安息香酸エチルなどのパラオキシ安息香酸エステル類;ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウムならびに塩化ベンゼトニウムなどが挙げられる。これらは、単独または二種以上混合して使用してもよい。防腐剤の濃度は、たとえば、水性懸濁液剤に対して、0.001〜3%であればよく、好ましくは、0.01〜1%であればよい。
本発明に用いられる等張化剤としては、たとえば、塩化ナトリウム、ブドウ糖、果糖、乳糖、D−マンニトール、D−ソルビトール、キシリトールおよびグリセリンなどが挙げられ、グリセリンが好ましい。
本発明に用いられるpH調整剤としては、塩酸、酢酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、ホウ酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、モノエタノールアミン、メグルミンおよびトロメタモールなどが挙げられる。これらは、単独または二種以上混合して使用してもよい。
本発明に用いられる緩衝剤としては、酸、塩基、酸と塩基の塩およびアミノ酸などが挙げられる。より具体的には、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸および炭酸などの鉱酸;シュウ酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、乳酸、酢酸および安息香酸などの有機カルボン酸;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの無機塩基;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メグルミンおよびトロメタモールなどの有機塩基;塩化ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素カルシウム、ホウ砂、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの鉱酸と無機塩基の塩;クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウムなどの有機カルボン酸と無機塩基の塩;メタンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸と無機塩基の塩;タウリンなどのアミノスルホン酸;アスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性アミノ酸;グルタミン、グリシンなどの中性アミノ酸;アルギニン、リジンなどの塩基性アミノ酸などが挙げられる。これらは、単独または二種以上混合して使用してもよい。
[製造法A]難溶性薬物のナノ微粒子分散液の製造方法
難溶性薬物のナノ微粒子分散液の製造方法としては、媒体ミルあるいは高圧ホモジナイザーなどで処理する方法が挙げられる。医薬品においては、汚染が重要な問題であるが、その点で高圧ホモジナイザーは適している。一方、媒体ミルで処理する方法は、媒体の混入などが起こることが周知であり、汚染を完全に防ぐのは非常に困難である。したがって、本発明の水性懸濁液剤に使用する難溶性薬物のナノ微粒子分散液の製造方法としては、高圧ホモジナイザーで難溶性薬物の懸濁液を処理する方法が好ましい。さらに好ましくは、解粒剤を含まない液に難溶性薬物を懸濁後、高圧ホモジナイザーで高圧処理を行い(第1工程)、ついで、解粒剤を添加し、凝集粒を解粒する(第2工程)方法が挙げられる。
ナノ微粒子分散液に対する難溶性薬物の含有率は、高圧ホモジナイザーにて高圧処理が可能であれば特に制限されないが、たとえば、ナノ微粒子分散液に対し、難溶性薬物が0.01〜50%が好ましく、0.01〜30%がより好ましい。
この製造に用いられる解粒剤としては、天然多糖類または合成高分子化合物から選ばれる一種以上の高分子化合物が好ましい。
この製造に用いられる天然多糖類としては、アラビアゴム、キサンタンガム、プルランなどが挙げられ、アラビアゴムおよびプルランが好ましい。
この製造に用いられる合成高分子化合物としては、天然多糖類誘導体、ビニルポリマー誘導体およびポリアルキレングリコールの共重合体が挙げられる。
この製造に用いられる天然多糖類誘導体としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース誘導体ならびにヒドロキシプロピルスターチなどのデンプン誘導体などが挙げられ、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体が好ましい。さらに好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。
この製造に用いられるビニルポリマー誘導体としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびカルボキシビニルポリマーなどが挙げられ、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンが好ましく、ポリビニルアルコールがさらに好ましい。
この製造に用いられるポリアルキレングリコールの共重合体としては、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーが好ましい。
この製造に用いられる解粒剤の濃度は、解粒剤の種類および添加方法によっても異なるが、通常、ナノ微粒子分散液に対して、0.001〜20%、好ましくは、0.01〜10%、さらに好ましくは、0.1〜3%であればよい。解粒剤は、第1工程で得られた分散液に、あらかじめ溶媒に解粒剤を溶解した溶液として添加してもよいし、解粒剤が速やかに溶解する場合は、溶媒に溶解せずに添加してもよい。また、第1工程で得られた分散液を遠心分離して得られる難溶性薬物の粒子を含む沈殿または第1工程で得られた分散液の溶媒を減圧乾燥等により留去して得られる難溶性薬物の粒子を含む残渣に、解粒剤をあらかじめ溶媒に溶解した溶液を添加してもよい。
第1工程の解粒剤を含まない液としては、たとえば、水、含水有機溶媒または有機溶媒などが挙げられる。より具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノ−ル、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、アセトン、アセトニトリル、ジクロロメタンおよびクロロホルムならびにこれらの混合液などが挙げられ、水、エタノール、プロパノ−ル、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンおよびアセトンならびにこれらの混合液が好ましく、水、エタノール、2−プロパノールおよびアセトンならびにこれらの混合液がさらに好ましく、水が特に好ましい。
この製造に用いられる高圧ホモジナイザーとしては、加圧粉砕法に用いられるものであれば、特に制限されないが、たとえば、ピストンギャップ型、液体ジェットミル型および高圧ジェット流反転型などが挙げられ、液体ジェットミル型および高圧ジェット流反転型が好ましく、液体ジェットミル型がさらに好ましい。より具体的には、ピストンギャップ型としては、マントンゴーリン(APV社製)などが挙げられる。液体ジェットミル型としては、マイクロフルイダイザー(みづほ工業社製)、アルティマイザー(スギノマシン社製)およびナノマイザー(吉田機械興業社製)などが挙げられる。高圧ジェット流反転型としては、DeBEE(日本ビーイーイー社製)などが挙げられる。
第1工程において、解粒剤を含まない液に難溶性薬物を懸濁した液を高圧ホモジナイザーで高圧処理を行う際の圧力は、100MPa以上が好ましく、150〜300MPaがさらに好ましい。
第2工程において、解粒剤を添加した後、解粒処理する方法としては、たとえば、高圧ホモジナイザーで高圧処理する方法、超音波照射を行う方法および回転式ホモジナイザーで回転処理する方法などが挙げられる。高圧ホモジナイザーで高圧処理する方法および超音波照射を行う方法が好ましく、高圧ホモジナイザーで高圧処理する方法がさらに好ましい。
第2工程において、高圧ホモジナイザーで高圧処理を行う際の圧力は、50〜150MPaが好ましい。
[製造法B]難溶性薬物の可溶化液の製造方法
難溶性薬物の可溶化液は、難溶性薬物および溶解補助剤を溶媒中で混合する方法などにより得ることができる。たとえば、特開2003−226643記載の方法などにより得ることができる。具体的には、以下の手順で製造することができる。
(a)水、難溶性薬物、塩基および溶解補助剤を混合し、溶解させる。
(b)必要に応じて析出防止剤を加える。
(c)酸または酸性の水溶液を加え、pHを4〜8に調整する。
または、上記の(a)において、塩基に代えて、酸を用い、難溶性薬物を溶解させ、(c)において塩基または塩基性の水溶液を加え、pHを4〜8に調整してもよい。
この製造に用いられる塩基としては、たとえば、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムなどの無機塩基;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、メグルミンおよびトロメタモールなどの有機塩基などが挙げられ、好ましくは、水酸化ナトリウムなどの無機塩基が挙げられる。
この製造に用いられる酸としては、たとえば、塩酸、硝酸、リン酸、ホウ酸および硫酸などの鉱酸;クエン酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、乳酸および酢酸などの有機カルボン酸;メタンスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸などのスルホン酸が挙げられ、好ましくは、塩酸、リン酸、ホウ酸、クエン酸、酢酸およびメタンスルホン酸が挙げられ、さらに好ましくは、クエン酸が挙げられる。
この製造に用いられる溶解補助剤としては、たとえば、シクロデキストリン類、金属塩および界面活性剤などが挙げられ、単独または二種以上混合して使用してもよい。好ましくは、シクロデキストリン類が挙げられ、さらに好ましくは、シクロデキストリン類および金属塩を混合して使用することが挙げられ、シクロデキストリン類およびマグネシウム塩を混合して使用することが特に好ましい。
シクロデキストリン類としては、たとえば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンなどの天然シクロデキストリンおよびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン塩などのシクロデキストリン誘導体が挙げられ、好ましくは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン塩などのシクロデキストリン誘導体が挙げられ、さらに好ましくは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン塩が挙げられる。これらは、単独または二種以上混合して使用してもよい。シクロデキストリン類の濃度は、たとえば、水性懸濁液剤に対して、0.05〜15%であればよく、好ましくは、0.1〜10%であればよい。
この製造に用いられる金属塩としては、たとえば、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、L−アスパラギン酸マグネシウムおよび乳酸マグネシウムなどのマグネシウム塩;塩化アルミニウム、乳酸アルミニウム、硫酸アルミニウムおよび硫酸アルミニウムカリウムなどのアルミニウム塩ならびにこれらの水和物などが挙げられる。好ましくは、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、L−アスパラギン酸マグネシウムおよび乳酸マグネシウムなどのマグネシウム塩およびこれらの水和物が挙げられ、より好ましくは、塩化マグネシウム6水和物が挙げられる。これらは、単独または二種以上混合して使用してもよい。金属塩の濃度は、たとえば、水性懸濁液剤に対して、0.01〜10%であればよく、好ましくは、0.1〜5%であればよい。
この製造に用いられる界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、カプリル酸ナトリウム、デスオキシコール酸ナトリウムおよび精製大豆レシチンなどが挙げられる。好ましくは、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油およびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。これらは、単独または二種以上混合して使用してもよい。
難溶性薬物の可溶化液には、必要に応じて、析出防止剤として粘稠剤を添加することができる。具体的には、薬理学的に許容される多糖類、ポリビニル化合物、多価アルコールなどの水溶性高分子が挙げられる。多糖類としては、たとえば、セルロース誘導体およびアルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。セルロース誘導体としては、たとえば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが挙げられる。ポリビニル化合物としては、たとえば、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールなどが挙げられる。多価アルコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびこれらの共重合体などが挙げられる。好ましくは、セルロース誘導体およびポリビニル化合物が挙げられ、さらに好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンが挙げられる。これらは、単独または二種以上混合して使用してもよい。粘稠剤の濃度は、たとえば、水性懸濁液剤に対して、0.05〜10%であればよく、好ましくは、0.1〜5%であればよく、さらに好ましくは、0.1〜3%であればよい。
難溶性薬物の可溶化液の溶媒としては、水、医薬に許容される有機溶媒およびそれらの混合液を用いることができる。
本発明で製造される水性懸濁液剤は、必要に応じて滅菌することができる。具体的には、難溶性薬物のナノ微粒子分散液、難溶性薬物の可溶化液および他の添加剤などを、それぞれ別々に高圧蒸気滅菌またはろ過滅菌した後に混合する方法;難溶性薬物のナノ微粒子分散液と難溶性薬物の可溶化液を混合し、他の添加剤などを配合し、調製した水性懸濁液剤を高圧蒸気滅菌またはろ過滅菌する方法などが挙げられる。好ましくは、難溶性薬物のナノ微粒子分散液と難溶性薬物の可溶化液を混合し他の添加剤などを配合し、調製した水性懸濁液剤を高圧蒸気滅菌する方法が挙げられる。
高圧蒸気滅菌する場合の解粒剤および粘稠剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールが好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルアルコールがより好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロースがさらに好ましい。
本発明の水性懸濁液剤の粘度は、0.5〜800mPa・sが好ましく、1〜500mPa・sがより好ましく、1〜200mPa・sがさらに好ましい。
本発明の水性懸濁液剤のpHは、生理的に許容される範囲であればよく、具体的には3〜9が好ましく、4〜8がさらに好ましい。
つぎに、本発明を実施例、比較例および試験例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例中のT−3912は、国際公開WO02/062805号に記載の方法に従って製造した。
試験例1 T−3912水性懸濁液剤の物性
粒子径分布の測定は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(ベックマン・コールター製、LS 13 320)を用いて行い、50%累積径および90%累積径を示した。全含率とは、水性懸濁液剤中の溶解している薬物と懸濁している薬物を併せた含率を示す。全含率は、水性懸濁液剤を水−アセトニトリル−リン酸緩衝液の混液で溶解した後、適宜希釈し、得られた液につき、高速液体クロマトグラフィで測定し、算出した。また、溶解部濃度は、水性懸濁液剤を超遠心分離によりナノ微粒子を沈降させ、その上澄みを高速液体クロマトグラフィで測定し、算出した。
実施例1のT−3912水性懸濁液剤の調製時および高圧蒸気滅菌処理後の物性を表1に示す。実施例2のT−3912水性懸濁液剤の調製時および高圧蒸気滅菌処理後の物性を表2に示す。実施例3、4および5のT−3912水性懸濁液剤の調製時の物性ならびに実施例3および実施例5のT−3912水性懸濁液剤の高圧蒸気滅菌処理後の物性を表3に示す。なお、実施例1、2および3は冷蔵で1週間保存した後に、高圧蒸気滅菌処理を施した。実施例1、2、3および5のT−3912水性懸濁液剤は、高圧蒸気滅菌処理(121℃で20分間)を施した。実施例4のT−3912水性懸濁液剤は、ろ過滅菌処理を施した。表中、N.T.は、未測定を意味する。
Figure 2007119456
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いずれの実施例においてもT−3912のナノ微粒子を含有する水性懸濁液剤は、高圧蒸気滅菌処理の前後で物性に大きな変化は認められず、水性懸濁液剤中の微粒子の90%以上が粒子径500nm未満のナノ微粒子で構成される状態を維持した。また、ろ過滅菌処理したものは、高圧蒸気滅菌処理を施したものと同等の品質を示した。以上の結果より、本発明のT−3912水性懸濁液剤は、ろ過滅菌操作および高圧蒸気滅菌操作に対して安定であった。
試験例2 T−3912水性懸濁液剤の経時安定性
(1)実施例6で得られたT−3912水性懸濁液剤の調製時の物性ならびに40℃および冷蔵で1ヶ月間保存した後の物性を評価した。結果を表4に示す。いずれの保存条件においても、外観、粒子径分布、溶解部濃度、全含率およびpHに大きな変化は認められず、経時安定性に優れていた。
Figure 2007119456
(2)実施例12で得られた高圧蒸気滅菌処理を施したT−3912水性懸濁液剤の調製時の物性ならびに25℃および冷蔵で6ヶ月間保存した後の物性を評価した。結果を表5に示す。いずれの保存条件においても、外観において少量の沈殿は見られるものの、粒子径分布、溶解部濃度、全含率およびpHに大きな変化は認められず、経時安定性に優れていた。
Figure 2007119456
試験例3 イトラコナゾール水性懸濁液剤の物性
実施例9で得られたイトラコナゾール水性懸濁液剤の粒子径分布を高圧蒸気滅菌の前後で比較した。結果を表6に示す。高圧蒸気滅菌の前後で、粒子径分布に大きな変化は認められなかった。
Figure 2007119456
試験例4 インビボ(in vivo)有効性試験
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によるマウス眼感染症モデルを用いて評価した。37℃で一夜培養したミューラー ヒントン アガー(Mueller-Hinton Agar:以下、MHAとする)平板上の緑膿菌S-2350(日本化学療法学会標準法に準じた微量液体希釈法によるT−3912の最小発育阻止濃度(MIC)4μg/mL)の菌体を滅菌綿棒でかきとり、滅菌生理食塩液に0.5 McFarland相当になるように懸濁して接種菌液(約6×108colony forming unit(CFU)/mL)とした。
2.5mL/kgの混麻酔液(ケタミン:キシラジン:滅菌生理食塩液=2:1:3)を大腿筋内に投与した麻酔下のマウス両眼(一群6匹、12眼)を26G注射針で穿刺し、眼房水をふき取った後、接種菌液2μL/眼を点眼することで感染を惹起した。感染2、4、6、24、26および28時間後に同麻酔下のマウスに被験製剤各2μL/眼を点眼した。同様に対照群には滅菌生理食塩液を点眼した。感染48時間後、安楽死させたマウスの両眼を摘出し、滅菌生理食塩液500μLを加えてホモジナイズ後、得られたホモジナイズ液中の生菌数を寒天平板表面塗抹法により測定した。すなわち、ホモジナイズ液を滅菌生理食塩液にて適宜希釈後、40μLずつMHA平板に塗沫し、出現したコロニー数から眼内生菌数(log CFU/眼)を算出した。結果を表7に示す。数値は、眼内生菌数(log CFU/眼)の平均値を示した。なお、検出限界値は、1.10log CFU/眼であった。
Figure 2007119456
実施例1の水性懸濁液剤は、溶解部におけるT−3912の濃度が3μg/mLであるが、4μg/mLのMICを示す菌によるマウス眼感染症モデルにおいて、対照に比べ、明らかに眼内生菌数を減少させた。また、実施例1の水性懸濁液剤は、比較例1(溶解部濃度1000μg/mL)および比較例2(溶解部濃度2000μg/mL)に比べ、明らかに眼内生菌数を減少させた。
実施例2の水性懸濁液剤は、溶解部におけるT−3912の濃度がほぼ同じである比較例1に比べ、明らかに眼内生菌数を減少させた。
実施例3の水性懸濁液剤は、溶解部におけるT−3912の濃度がほぼ同じである比較例2に比べ、明らかに眼内生菌数を減少させた。
試験例5 インビボ(in vivo)有効性試験
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によるマウス眼感染症モデルを用いて評価した。37℃で一夜培養したMHA平板上の緑膿菌S-2350(日本化学療法学会標準法に準じた微量液体希釈法によるT−3912の最小発育阻止濃度(MIC)は4μg/mL)をミューラー ヒントン ブロス(Mueller-Hinton broth:以下、MHBとする)に接種し、37℃で一夜静置培養した。その菌液1mLを新鮮なMHB 9mLに添加し、37℃で2時間振とう培養後、培養液を20℃、3000rpm、10分間遠心して上清を除去した。得られた菌体に滅菌生理食塩液5mLを加え、懸濁し、接種菌液(4.5×108CFU/mL)とした。
混麻酔液(ケタミン:キシラジン:滅菌生理食塩液=2:1:3)を2.5mL/kgの容量で大腿筋内に投与した麻酔下のマウス両眼(一群8匹、16眼)に接種菌液2μLを点眼した後、接種菌液を満たした26G注射針で穿刺することにより感染を惹起した。感染2、4、6、24、26および28時間後に同麻酔下のマウス両眼に各被験製剤を2μL/眼で点眼した。対照群には、同様に滅菌生理食塩液を点眼した。
感染48時間後、頚椎脱臼により安楽死させたマウスの両眼球を摘出し、一眼ごとに滅菌生理食塩液500μLを加えてホモジナイズ後、得られたホモジナイズ液中の生菌数を寒天平板表面塗抹法により測定した。すなわち、ホモジナイズ液を滅菌生理食塩液で適宜希釈後、40μLずつMHA平板に塗沫し、出現したコロニー数から眼内生菌数(log CFU/眼)を算出した。試験に用いたT−3912のナノ微粒子を含有する水性懸濁液剤(実施例10)およびマイクロサイズの粒子を含有する水性懸濁液剤(比較例3)の物性を表8、試験結果を表9に示す。表9の数値は、眼内生菌数(log CFU/眼)の平均値を示した。なお、検出限界値は、1.10log CFU/眼であった。
Figure 2007119456
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T−3912のナノ微粒子を含有する実施例10の水性懸濁液剤は、T−3912のマイクロサイズの粒子を含有する比較例3の水性懸濁液剤および対照に比べ、明らかに眼内生菌数を減少させた。
試験例6 マウス感染眼を用いた有効性試験
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)によるマウス感染眼を用いて評価した。37℃で一夜培養したMHA平板上のMRSA F-1659(日本化学療法学会標準法に準じた寒天平板希釈法によるT−3912のMIC、0.025μg/mL)の菌体を滅菌綿棒でかきとり、滅菌生理食塩液に0.5McFarland相当になるように懸濁後、その菌液25mLを新鮮なMHB225mLに添加し、37℃で3時間振とう培養した。培養液を25℃、6000rpm、10分間遠心後、上清を除去した。得られた菌体に滅菌生理食塩液2.5mLを加え、懸濁し、接種菌液(1.13×1010CFU/mL)とした。
混麻酔液(ケタミン:キシラジン:滅菌生理食塩液=2:1:3)を2.5mL/kgの容量で大腿筋内に投与した麻酔下のマウス両眼に接種菌液2μLを点眼した後、接種菌液を満たした26G注射針で穿刺することにより感染を惹起した。感染2時間後に、頚椎脱臼により安楽死させたマウスの眼球(一群12又は13眼)を摘出し、各被験製剤100μLに1分間浸漬した。眼球を滅菌生理食塩液1mLに移し、15秒間ボルテックスすることで被験製剤を除去した後、新たな滅菌生理食塩液0.5mLに移し、37℃で24時間培養した。培養後、眼球を滅菌生理食塩液1mLに浸漬し、さらに、滅菌生理食塩液500μLに移してホモジナイズ後、得られたホモジナイズ液中の生菌数を寒天平板表面塗抹法により測定した。すなわち、ホモジナイズ液を滅菌生理食塩液で適宜希釈後、40又は100μLずつマンニット食塩培地平板に塗沫し、出現したコロニー数から眼内生菌数(log CFU/眼)を算出した。試験に用いたT−3912のナノ微粒子を含有する水性懸濁液剤(実施例11)および可溶化液(比較例4)の物性を表10、試験結果を表11に示す。表11の数値は、眼内生菌数(log CFU/眼)の平均値を示した。なお、検出限界値は、0.70log CFU/眼であった。
Figure 2007119456
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T−3912の全含率が2026μg/mLであり、溶解部濃度が988μg/mLである実施例11の水性懸濁液剤は、対照に比べ、明らかに眼内生菌数を減少させ、T−3912の全含率がほぼ同じである比較例4の可溶化液に比べ、眼内生菌数を減少させた。
実施例1
(1)T−3912ナノ微粒子分散液の調製
T−3912 3.0gを注射用水(大塚製薬)47.0gに懸濁した。この懸濁液に高圧ホモジナイザー(吉田機械興業製、ナノマイザー、YSNM−2000AR)を用いて200MPaの高圧処理を300回行った。得られた液48.5gに6%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)水溶液24.3gを添加し、高圧ホモジナイザー(吉田機械興業製、ナノマイザー、YSNM−2000AR)を用いて100MPaの高圧処理を10回行い、T−3912を3.5%(w/v)含有するナノ微粒子分散液69.2gを得た。
(2)T−3912水性懸濁液剤の調製
実施例1(1)で得られたT−3912ナノ微粒子分散液4.27gに、撹拌しながら、1.5%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)水溶液24.0gおよび注射用水(大塚製薬)1.85gを加えた。得られた液にグリセリン(丸石製薬)を添加し、等張化した。得られた液3mLをバイアルに充填、ゴム栓にて閉塞し、高圧蒸気滅菌(トミー精工製、蒸気滅菌器、SS−320、121℃、20分間)し、T−3912を0.5%(w/w)含有する水性懸濁液剤3mLを得た。
実施例2
(1)T−3912可溶化液の調製
T−3912 0.150gおよびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(日本食品加工、セルデックス)1.50gを0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業)17.6gおよび注射用水(大塚製薬)26.8gの混液に加え、撹拌し、溶解した。得られた溶液に20%(w/v)塩化マグネシウム6水和物(和光純薬工業)水溶液7.5mLおよび6%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)水溶液25.0gを加え、撹拌した。得られた液に注射用水(大塚製薬)10mLを加えた後、撹拌しながら、1mol/Lおよび0.2mol/Lクエン酸(和光純薬工業)水溶液を添加し、pH7.32に調整した後、注射用水(大塚製薬)にて全量を100gとし、さらに0.2mol/Lクエン酸(和光純薬工業)水溶液を加え、pH7.32に調整し、T−3912を0.15%(w/w)含有する可溶化液を得た。
(2)T−3912可溶化液およびT−3912ナノ微粒子分散液の混合
実施例1(1)で得られたT−3912ナノ微粒子分散液3.78gに1.5%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)6.01gおよび注射用水(大塚製薬)1.26gを加え、撹拌した。さらに実施例2(1)で得られたT−3912可溶化液22.0gを加え、撹拌した後、グリセリン(丸石製薬)を添加し、等張化した。得られた液3mLをバイアルに充填、ゴム栓にて閉塞し、高圧蒸気滅菌(トミー精工製、蒸気滅菌器、SS−320、121℃、20分間)し、T−3912を0.5%(w/w)含有する水性懸濁液剤3mLを得た。
実施例3
(1)T−3912可溶化液の調製
T−3912 0.250gおよびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(日本食品化工、セルデックス)2.51gを0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業)29.5gおよび注射用水(大塚製薬)12.6gの混液に加え、撹拌し、溶解した。得られた溶液に20%(w/v)塩化マグネシウム6水和物(和光純薬工業)水溶液6.25mLおよび6%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)水溶液25.0gを加え、撹拌した。得られた液に注射用水(大塚製薬)10mLを加えた後、撹拌しながら1mol/Lおよび0.2mol/Lクエン酸(和光純薬工業)水溶液を用いてpH7.41に調整し、注射用水(大塚製薬)にて全量を100gとし、さらに0.2mol/Lクエン酸(和光純薬工業)および0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業)を加え、pH7.35に調整し、T−3912を0.25%(w/w)含有する可溶化液を得た。
(2)T−3912可溶化液およびT−3912ナノ微粒子分散液の混合
実施例1(1)で得られたT−3912ナノ微粒子分散液2.57gに1.5%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)水溶液2.80gおよび注射用水(大塚製薬)0.640gを加え、撹拌した。得られた液に実施例3(1)で得られたT−3912可溶化液24.0gを加え、撹拌した後、グリセリン(丸石製薬)を添加し、等張化した。得られた液3mLをバイアルに充填、ゴム栓にて閉塞し、高圧蒸気滅菌(トミー精工製、蒸気滅菌器、SS−320、121℃、20分間)を施し、T−3912を0.5%(w/w)含有する水性懸濁液剤3mLを得た。
実施例4
(1)T−3912可溶化液の調製
T−3912 0.150gおよびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(日本食品加工、セルデックス)0.751gを、0.1mol/L水酸化ナトリウム(和光純薬工業)90mLに加え、撹拌し、溶解した。得られた溶液に20%(w/v)塩化マグネシウム6水和物(和光純薬工業)水溶液7.5mLを加え、撹拌した。得られた液に1mol/Lおよび0.2mol/Lクエン酸(和光純薬工業)水溶液を添加し、pH7.08に調整し、注射用水(大塚製薬)にて全量を100mLとした。得られた液をフィルターろ過(ミリポア製、マイレクスGV、孔径0.22μm)し、T−3912を0.15%(w/v)含有する可溶化液を得た。
(2)T−3912ナノ微粒子分散液の調製
T−3912 3.1gを注射用水(大塚製薬)47.2gに懸濁した。この懸濁液に高圧ホモジナイザー(吉田機械興業製、ナノマイザー、YSNM−2000AR)を用いて200MPaの高圧処理を300回行った。得られた液22.1gに6%(w/w)ポリビニルアルコール(日本合成化学、ゴーセノールEG−25)水溶液11.3gを添加し、高圧ホモジナイザー(吉田機械興業製、ナノマイザー、YSNM−2000AR)を用いて100MPaの高圧処理を10回行い、T−3912を3.5%(w/v)含有するナノ微粒子分散液30.8gを得た。
(3)T−3912可溶化液およびT−3912ナノ微粒子分散液の混合
実施例4(2)で得られたT−3912ナノ微粒子分散液2mLを遠心分離(久保田製作所製、KS−5000、1690×g、10分間)し、上層をフィルターろ過(ポール製、アクロディスク、孔径0.2μm)することにより、T−3912を2.3%(w/v)含有するナノ微粒子分散液を得た。得られたナノ微粒子分散液0.863gに注射用水(大塚製薬)0.772gおよび実施例4(1)で得られたT−3912可溶化液3.37gを加え、撹拌した。得られた液にグリセリン(丸石製薬)を添加して等張化し、T−3912を0.5%(w/w)含有する水性懸濁液剤5.01gを得た。
実施例5
(1)T−3912可溶化液の調製
T−3912 0.074gおよびスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンナトリウム塩(サイデックス、カプチゾル)1.01gを0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業)8.81gおよび注射用水(大塚製薬)13.2gの混液に加え、撹拌し、溶解した。得られた溶液に20%(w/v)塩化マグネシウム6水和物(和光純薬工業)水溶液3.25mLおよび6%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)水溶液12.5gを加え、撹拌した。得られた液に注射用水(大塚製薬)5mLを加えた後、1mol/Lクエン酸(和光純薬工業)水溶液、0.5mol/Lおよび0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業)を添加し、pH7.36に調整し、注射用水(大塚製薬)にて全量を50.0gとした。得られた液をフィルターろ過(ミリポア製、マイレクスHV、孔径0.45μm)し、T−3912を0.15%(w/w)含有する可溶化液を得た。
(2)T−3912可溶化液およびT−3912ナノ微粒子分散液の混合
実施例1(1)で得られたT−3912ナノ微粒子分散液2.26gに1.5%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)水溶液3.64gおよび注射用水(大塚製薬)0.813gを加え、撹拌した。さらに、実施例5(1)で得られたT−3912可溶化液13.3gを加え、撹拌した。得られた液3mLをバイアルに充填、ゴム栓にて閉塞し、高圧蒸気滅菌(トミー精工製、蒸気滅菌器、SS−320、121℃、20分間)し、T−3912を0.5%(w/w)含有する水性懸濁液剤3mLを得た。
実施例6
(1)T−3912可溶化液の調製
T−3912 0.152gおよびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(日本食品加工、セルデックス)1.51gを0.2mol/L水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業)44mLに加え、撹拌し、溶解した。得られた溶液に、20%(w/v)塩化マグネシウム6水和物(和光純薬工業)水溶液7.5mLおよび6%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)水溶液41.6gを加え、撹拌した。1mol/Lおよび0.2mol/Lクエン酸(和光純薬工業)水溶液および0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業)を添加し、pH7.36に調整し、注射用水(大塚製薬)にて全量を100mLとした。得られた液をフィルターろ過(ミリポア製、マイレクスHV、孔径0.45μm)し、T−3912を0.15%(w/v)含有する可溶化液を得た。
(2)T−3912ナノ微粒子分散液の調製
T−3912 1.8gを注射用水(大塚製薬)28.2gに懸濁した。この懸濁液に高圧ホモジナイザー(吉田機械興業製、ナノマイザー、YSNM−2000AR)を用いて200MPaの高圧処理を300回行った。その後、6%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)水溶液15.0gを添加し、高圧ホモジナイザー(吉田機械興業製、ナノマイザー、YSNM−2000AR)を用いて100MPaの高圧処理を10回行い、T−3912を3.1%(w/v)含有するナノ微粒子分散液43.7gを得た。
(3)T−3912可溶化液およびT−3912ナノ微粒子分散液の混合
実施例6(2)で得られたT−3912ナノ微粒子分散液7.68gに6%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、60SH−50)水溶液5.82gおよび注射用水(大塚製薬)6.55gを加え、撹拌した。さらに、実施例6(1)で得られたT−3912可溶化液40.0gを加え、撹拌した。得られた液にグリセリン(丸石製薬)を添加し、等張化し、T−3912を0.5%(w/w)含有する水性懸濁液剤60.1gを得た。
実施例7
(1)T−3912ナノ微粒子分散液の調製
T−3912 3.0gを注射用水(大塚製薬)27.0gに懸濁した。この懸濁液を用い、実施例1(1)と同様にしてT−3912を5.4%(w/v)含有するナノ微粒子分散液39.2gを得た。
(2)T−3912可溶化液およびT−3912ナノ微粒子分散液の混合
実施例7(1)で得られたT−3912ナノ微粒子分散液1.90gに実施例3(1)で得られたT−3912可溶化液8.00gおよび注射用水(大塚製薬)0.112gを加え、均一に混合し、T−3912を1.2%(w/w)含有する水性懸濁液剤10.0gを得た。
実施例8
実施例7(1)で得られたT−3912ナノ微粒子分散液3.51gに実施例3(1)で得られたT−3912可溶化液6.01gおよび注射用水(大塚製薬)0.513gを加え、均一に混合し、T−3912を2.0%(w/w)含有する水性懸濁液剤10.0gを得た。
実施例9
(1)イトラコナゾール可溶化液の調製
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(日本食品加工、セルデックス)2.02gに注射用水(大塚製薬)を添加し、全量を10.1gとした。得られた液4.01gに、撹拌しながらイトラコナゾール(LKT laboratories)0.020gを添加し、6mol/Lおよび0.1mol/Lの塩酸(和光純薬工業)を滴下して溶解させた。得られた溶液に6%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)水溶液3.32gを加え、撹拌した。得られた液に5mol/Lおよび0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液(和光純薬)および6mol/L塩酸(和光純薬)を添加し、pH4.51に調整した後、注射用水(大塚製薬)を加えて全量を10.0gとし、イトラコナゾール0.2%(w/w)を含有する可溶化液を得た。
(2)イトラコナゾールナノ微粒子分散液の調製
イトラコナゾール(LKT laboratories)0.5gを注射用水(大塚製薬)24.5gに懸濁した。この懸濁液に高圧ホモジナイザー(吉田機械興業製、ナノマイザー、YSNM−2000AR)を用いて200MPaの高圧処理を600回行った。得られた液18.0gに6%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)水溶液9.0gを添加し、高圧ホモジナイザー(吉田機械興業製、ナノマイザー、YSNM−2000AR)を用いて100MPaの高圧処理を10回行い、イトラコナゾールのナノ微粒子分散液24.1gを得た。
(3)イトラコナゾール可溶化液およびイトラコナゾールナノ微粒子分散液の混合
実施例9(1)で得られたイトラコナゾール可溶化液2.07gに、実施例9(2)で得られたイトラコナゾールナノ微粒子分散液1.96gを加え、撹拌した。得られた液2mLをバイアルに充填、ゴム栓にて閉塞し、高圧蒸気滅菌(トミー精工製、蒸気滅菌器、SS−320、121℃、20分間)し、イトラコナゾールの水性懸濁液剤2mLを得た。
実施例10
(1)T−3912ナノ微粒子分散液の調製
T−3912 1.5gを注射用水(大塚製薬)23.5gに懸濁した。この懸濁液に高圧ホモジナイザー(吉田機械興業製、ナノマイザー、YSNM−2000AR)を用いて150MPaの高圧処理を300回行った。得られた液24.1gに6%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)水溶液12.1gを添加し、高圧ホモジナイザー(吉田機械興業製、ナノマイザー、YSNM−2000AR)を用いて100MPaの高圧処理を10回行い、T−3912を3.3%(w/v)含有するナノ微粒子分散液34.3gを得た。
(2)T−3912水性懸濁液剤の調製
実施例10(1)で得られたT−3912ナノ微粒子分散液4.56gに、0.2mol/Lクエン酸(和光純薬工業)水溶液でpH7.5に調整した1.5%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)水溶液23.9gを添加し、撹拌した。得られた液にグリセリン(丸石製薬)を添加し、等張化し、さらに、注射用水(大塚製薬)にて全量を30.0gとした。得られた液5mLをバイアルに充填、ゴム栓にて閉塞し、高圧蒸気滅菌(トミー精工製、蒸気滅菌器、SS−320、121℃、20分間)し、T−3912を0.5%(w/w)含有する水性懸濁液剤5mLを得た。
実施例11
(1)T−3912ナノ微粒子分散液の調製
T−3912 1.5gを注射用水(大塚製薬)23.5gに懸濁した。この懸濁液に高圧ホモジナイザー(吉田機械興業製、ナノマイザー、YSNM−2000AR)を用いて150MPaの高圧処理を300回行った。得られた液20.0gに6%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)水溶液10.0gを添加し、高圧ホモジナイザー(吉田機械興業製、ナノマイザー、YSNM−2000AR)を用いて100MPaの高圧処理を10回行い、T−3912を3.4%(w/v)含有するナノ微粒子分散液24.5gを得た。
(2)T−3912水性懸濁液剤の調製
実施例11(1)で得られたT−3912ナノ微粒子分散液5.89gに、6%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)水溶液23.0gおよび注射用水(大塚製薬)68.0gを添加し、撹拌した。得られた液にグリセリン(丸石製薬)を添加し、等張化し、さらに、注射用水(大塚製薬)にて全量を100gとし、T−3912を0.2%(w/w)含有する水性懸濁液剤を得た。
(3)T−3912可溶化液の調製
T−3912 0.201gおよびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(日本食品加工、セルデックス)2.00gを0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業)23.6gおよび注射用水(大塚製薬)20.0gの混液に加え、撹拌し、溶解した。得られた溶液に20%(w/v)塩化マグネシウム6水和物(和光純薬工業)水溶液10.0mLおよび6%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)水溶液25.0gを加え、撹拌した。得られた液に注射用水(大塚製薬)10.0gを加えた後、撹拌しながら、1mol/Lおよび0.2mol/Lクエン酸(和光純薬工業)水溶液を添加し、pH7.54に調整した後、注射用水(大塚製薬)にて全量を100gとした。得られた液をフィルターろ過(ミリポア製、マイレクスHV、孔径0.45μm)し、この液14mLをバイアルに充填、ゴム栓にて閉塞し、高圧蒸気滅菌(トミー精工製、蒸気滅菌器、SS−320、121℃、20分間)し、T−3912を0.2%(w/w)含有する可溶化液14mLを得た。
(4)T−3912可溶化液およびT−3912ナノ微粒子分散液の混合
実施例11(2)で得られたT−3912水性懸濁液剤6.0gをバイアルに充填、ゴム栓にて閉塞し、高圧蒸気滅菌(トミー精工製、蒸気滅菌器、SS−320、121℃、20分間)した。このバイアルに、実施例11(3)で得られたT−3912可溶化液6.0gを加え、撹拌し、T−3912を0.2%(w/w)含有する水性懸濁液剤12.0gを得た。
実施例12
(1)T−3912ナノ微粒子分散液の調製
T−3912 6.0gを注射用水(大塚製薬)44.0gに懸濁した。この懸濁液に高圧ホモジナイザー(吉田機械興業製、ナノマイザー、YSNM−2000AR)を用いて200MPaの高圧処理を300回行った。得られた液48.5gに6%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)水溶液24.3gを添加し、高圧ホモジナイザー(吉田機械興業製、ナノマイザー、YSNM−2000AR)を用いて100MPaの高圧処理を10回行い、T−3912を7.2%(w/v)含有するナノ微粒子分散液66.0gを得た。
(2)T−3912可溶化液の調製
T−3912 0.375gおよびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(日本食品加工、セルデックス)3.75gを0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業)44.0gおよび注射用水(大塚製薬)66.0gの混液に加え、撹拌し、溶解した。得られた溶液に20%(w/v)塩化マグネシウム6水和物(和光純薬工業)水溶液18.8mLおよび6%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)水溶液62.5gを加え、撹拌した。得られた液に注射用水(大塚製薬)30.0gを加えた後、撹拌しながら、1mol/Lおよび0.2mol/Lクエン酸(和光純薬工業)水溶液を添加し、pH7.41に調整した後、注射用水(大塚製薬)にて全量を250gとした。得られた液をフィルターろ過(ミリポア製、マイレクスHV、孔径0.45μm)し、T−3912を0.15%(w/w)含有する可溶化液を得た。
(3)T−3912可溶化液およびT−3912ナノ微粒子分散液の混合
6.0%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)15.5gおよび注射用水(大塚製薬)45.0gを加え、撹拌した後、実施例12(1)で得られたT−3912ナノ微粒子分散液13.4gを加え、撹拌した。さらに実施例12(2)で得られたT−3912可溶化液160gを加え、撹拌した後、グリセリン(丸石製薬)を添加し、等張化し、さらに、注射用水(大塚製薬)にて全量を240gとした。得られた液12mLをバイアルに充填、ゴム栓にて閉塞し、高圧蒸気滅菌(トミー精工製、蒸気滅菌器、SS−320、121℃、20分間)し、T−3912を0.5%(w/w)含有する水性懸濁液剤12mLを得た。
比較例1
実施例2(1)の可溶化液20.0gに1.5%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)水溶液10.0gを加え、撹拌した。得られた液にグリセリン(丸石製薬)を添加し、等張化した。得られた液3mLをバイアルに充填、ゴム栓にて閉塞し、高圧蒸気滅菌(トミー精工製、蒸気滅菌器、SS−320、121℃、20分)し、T−3912を0.1%(w/w)含有する溶液3mLを得た。
比較例2
実施例3(1)の可溶化液24.0gに1.5%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)水溶液6.01gを加え、撹拌した。得られた液にグリセリン(丸石製薬)を添加し、等張化した。得られた液3mLをバイアルに充填、ゴム栓にて閉塞し、高圧蒸気滅菌(トミー精工製、蒸気滅菌器、SS−320、121℃、20分)し、T−3912を0.2%(w/w)含有する溶液3mLを得た。
比較例3
T−3912 0.150gを0.2mol/Lクエン酸(和光純薬工業)水溶液でpH7.5に調整した1.5%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学、メトローズ60SH−50)水溶液28.9gに懸濁した。得られた液にグリセリン(丸石製薬)を添加し、等張化し、さらに、注射用水(大塚製薬)にて全量を30.0gとした。得られた液5mLをバイアルに充填、ゴム栓にて閉塞し、高圧蒸気滅菌(トミー精工製、蒸気滅菌器、SS−320、121℃、20分間)し、T−3912を0.5%(w/w)含有する水性懸濁液剤5mLを得た。
比較例4
実施例11(3)と同様にして得られた液14mLをバイアルに充填、ゴム栓にて閉塞し、高圧蒸気滅菌(トミー精工製、蒸気滅菌器、SS−320、121℃、20分間)し、T−3912を0.2%(w/w)含有する可溶化液14mLを得た。

Claims (10)

  1. 難溶性薬物のナノ微粒子および解粒剤を含有することを特徴とする水性懸濁液剤。
  2. 水性懸濁液剤の溶解部が、一種以上の溶解補助剤および飽和溶解度以上に可溶化された難溶性薬物を含有することを特徴とする請求項1記載の水性懸濁液剤。
  3. 水性懸濁液剤中の難溶性薬物のナノ微粒子の90%(体積)以上が、粒子径500nm未満の大きさであることを特徴とする請求項1または2記載の水性懸濁液剤。
  4. 解粒剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項1から3記載の水性懸濁液剤。
  5. 溶解補助剤が、シクロデキストリン類である請求項2から4記載の水性懸濁液剤。
  6. 溶解補助剤が、シクロデキストリン誘導体およびマグネシウム塩である請求項2から4記載の水性懸濁液剤。
  7. 難溶性薬物が、ピリドンカルボン酸系合成抗菌剤である請求項1から6記載の水性懸濁液剤。
  8. 難溶性薬物が、1−シクロプロピル−8−メチル−7−[5−メチル−6−(メチルアミノ)ピリジン−3−イル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸である請求項1から6記載の水性懸濁液剤。
  9. 難溶性薬物が、抗真菌剤である請求項1から5記載の水性懸濁液剤。
  10. 水性懸濁液剤が、点眼剤である請求項1から9記載の水性懸濁液剤。
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