JP2007117783A - 廃液処理方法及び廃液処理システム - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な方法で、また安価に処理可能な化学的酸素要求量の原因となる成分を含む廃液の廃液処理方法及び廃液の処理システムを提供する。
【解決手段】化学的酸素要求量の原因となる成分を含有する廃液に過酸化水素水を所定量添加し、過酸化水素水を所定量添加した廃液を湿式排煙脱硫装置20に送水し、該廃液を湿式排煙脱硫装置20の補給水として利用する。これにより廃液は、湿式排煙脱硫装置20の補給水に利用され、最終的には湿式排煙脱硫装置20の排水と一体となって処理される。
【選択図】図1

Description

本発明は、石炭又は重油を燃料とする火力発電所のボイラの化学洗浄廃液など化学的酸素要求量の原因となる成分を含む廃液の処理方法及び廃液の処理システムに関する。
石炭又は重油焚きの火力発電所では、石炭又は重油を燃料としてボイラでスチームを発生させ、発生したスチームでタービン、タービンに連結された発電機を駆動し発電を行っている。石炭又は重油の燃焼に伴う燃焼排ガスは、脱硝装置で窒素酸化物が無害化、さらに脱硫装置で硫黄酸化物が無害化された後に大気に放出される。脱硫装置には、種々の形式の装置があるが、火力発電所等では湿式処理方法の一つである石灰石石膏法が多く使用されている。この他にも発電所内には、スチームを冷却するための取水設備、発電所内で発生する排水(廃水)を処理するための排水処理設備などが設けられており、これら設備はほぼ定常的に使用されている。
石炭又は重油焚きの火力発電所で使用される貫流型ボイラでは、不純物を除去した純水が使用されるが、長期間の稼動に伴い、蒸発管の内面に酸化鉄を主体とするいわゆるスケールが付着する。スケールは、伝熱性能の低下などの不具合をもたらすため、ボイラの定期検査の際、蒸発管に付着するスケールの量を測定し、所定の量のスケールが付着していることが確認されると、スケールを除去するための化学洗浄が行われる。
貫流型ボイラは、鋼材の応力腐食割れの原因となる塩化物イオンを嫌うため、有機酸による化学洗浄が行われる。ボイラを化学洗浄した後に発生する有機酸洗浄廃液は、鉄等の金属類を多量に含み、化学的酸素要求量(COD)も非常に高いことから、無処理のまま排水することはできない。またこのようなスポット的に発生する高濃度のCOD成分(化学的酸素要求量の原因となる成分)を含む廃液を、既存の発電所内の排水処理設備で処理することは容易ではなく、一般的には、湿式薬品処理法や逆浸透法などを採用し、処理を行い排水基準に適合する水質に改善している。
しかし、湿式薬品処理法は非常に高コストで産業廃棄物(汚泥)の発生量が多く、また逆浸透膜法は濃縮液を産業廃棄物として焼却処分するが、処理コストが高く、新たな産業廃棄物の発生として自治体への届出等が必要となる。このため汚泥の発生量を抑制する方法として、次ぎのような技術も開示されている(例えば特許文献1参照)。この方法は、発電用ボイラを有機酸で洗浄したとき排出される洗浄廃液に過酸化水素水を接触させた後、この廃液に他の廃液を供給して希釈し、この希釈廃液に凝集剤を添加して希釈廃液中に存在する重金属類を凝集沈殿させる方法である。
特開2001−276845号公報
特許文献1に記載の技術は、過酸化水素水を被処理液に添加し、CODを低減するとともに、この廃液に10倍量程度の希釈液を添加した後、凝集剤を添加し、廃液中の重金属類を凝集沈殿させるもので、廃液処理時に生じる汚泥の発生量を低減できるとする。さらに後工程として、活性炭吸着工程を設けることでCODをより低減できるとする。特許文献1に記載の技術は、多くの希釈液が必要となり、さらに処理工程も多いことから、操作も容易ではなく、多くの設備も必要となる。また比較的多くの薬品、薬剤を必要とし、これらのコストも高くなる。
本発明の目的は、簡単な方法で、また安価に処理可能な化学的酸素要求量の原因となる成分を含む廃液の廃液処理方法及び廃液の処理システムを提供することにある。
本発明は、化学的酸素要求量の原因となる成分を含有する廃液に過酸化水素水を所定量添加し、
過酸化水素水を所定量添加した廃液を湿式排煙脱硫装置に送水し、該廃液を湿式排煙脱硫装置の補給水として利用することを特徴とする廃液処理方法である。
また本発明は、前記過酸化水素水を所定量添加した廃液の上澄み液のみ前記湿式排煙脱硫装置に送水することを特徴とする請求項1に記載の廃液処理方法である。
また本発明で、前記化学的酸素要求量の原因となる成分を含有する廃液に添加する過酸化水素は、35重量%の過酸化水素水を前記廃液に1容量%添加することを特徴とする請求項1又2に記載の廃液処理方法である。
また本発明は、前記化学的酸素要求量の原因となる成分を含有する廃液に前記過酸化水素水を所定量添加し、少なくとも24時間以上経過した後、この廃液を前記湿式排煙脱硫装置に送水することを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載の廃液処理方法である。
また本発明で、前記化学的酸素要求量の原因となる成分を含有する廃液は、ボイラの化学洗浄廃液であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1に記載の廃液処理方法である。
また本発明は、前記化学的酸素要求量の原因となる成分を含有する廃液に含まれる油分及びリンの濃度を測定し、油分及び/又はリンが所定の濃度以上存在するときは、油分及び/又はリンを所定の濃度まで低下させる処理を行った後、この廃液を前記湿式排煙脱硫装置に送水することを特徴とする請求項1から5のいずれか1に記載の廃液処理方法である。
また本発明は、湿式排煙脱硫装置と、
該湿式排煙脱硫装置から排出される脱硫排水を処理する排水処理装置と、
化学的酸素要求量の原因となる成分を含有する廃液を貯留する貯槽と、
該貯槽に過酸化水素水を供給する過酸化水素水供給手段と、
該貯槽内の底部から所定の距離を有する位置に設けられた吸入口を備える、該貯槽内の廃液を該湿式排煙脱硫装置へ送水可能なポンプと、
を含むことを特徴とする廃液処理システムである。
本発明の廃液処理方法は、化学的酸素要求量の原因となる成分を含有する廃液に過酸化水素水を添加することで、過酸化水素水の酸化作用により、廃液中の化学的酸素要求量の原因となる成分(COD成分)が酸化分解されCOD濃度が低減する。さらにこのCOD濃度の低減した廃液を、湿式排煙脱硫装置に送水することで、この廃液は、湿式排煙脱硫装置の補給水として利用され、最終的には湿式排煙脱硫装置の排水と一体となって処理される。湿式排煙脱硫装置内の液中のCOD濃度は高く、また湿式排煙脱硫装置の保有液量も大きいため、廃液を投入しても湿式排煙脱硫プロセスに殆ど影響を及ぼすことはない。このような構成を採用することで処理方法が非常に簡単になる。また操作も容易で、コスト的にも安価に廃液処理を行うことができる。
また本発明の廃液処理方法は、廃液に過酸化水素水を添加することで、廃液に含まれる金属類が凝集沈澱する。このため過酸化水素水を所定量添加した廃液を湿式排煙脱硫装置に送水するとき、過酸化水素水を所定量添加した廃液の上澄み液のみ湿式排煙脱硫装置に送水することで、湿式排煙脱硫装置に持ち込まれる金属類の量が大きく低減する。この結果、湿式排煙脱硫装置で生成する石膏の着色など、石膏の生成に影響を及ぼさない。
また本発明の廃液処理方法は、化学的酸素要求量の原因となる成分を含有する廃液に35重量%過酸化水素水を1容量%添加するので、添加量が非常に少なく薬品代が非常に安価である。また、添加する量が少ないことから、過酸化水素水を添加するとき発生する発熱量が小さく、短時間で過酸化水素水の添加操作を完了させることができる。
また本発明の廃液処理方法は、化学的酸素要求量の原因となる成分を含有する廃液に過酸化水素水を所定量添加し、少なくとも24時間以上経過した後、この廃液を湿式排煙脱硫装置に送水するので、廃液中のCODを十分に低減させることが可能であるとともに、溶解している金属類を凝集沈澱させることができる。また化学的酸素要求量の原因となる成分を含有する廃液に過酸化水素水を所定量添加した後の保持時間も比較的短く、全体として短時間で廃液処理を完了することができる。
また本発明によれば、化学的酸素要求量の原因となる成分を含有する廃液は、ボイラの化学洗浄廃液であるので、ボイラ化学洗浄廃液を本発明の方法により処理することできる。
また本発明の廃液処理方法は、廃液に含まれる油分及びリンの濃度を測定し、油分及び/又はリンが所定の濃度以上存在するときは、油分及び/又はリンを所定の濃度まで低下させる処理を行うので、湿式排煙脱硫プロセスに悪影響を及ぼすことがない。
また本発明の廃液処理システムは、湿式排煙脱硫装置と、湿式排煙脱硫装置から排出される脱硫排水を処理する排水処理装置と、化学的酸素要求量の原因となる成分を含有する廃液を貯留する貯槽と、貯槽に過酸化水素水を供給する過酸化水素水供給手段と、貯槽内の底部から所定の距離を有する位置に設けられた吸入口を備える、貯槽内の廃液を湿式排煙脱硫装置へ送水可能なポンプと、を含むので、本廃液処理システムを用いて、化学的酸素要求量の原因となる成分を含有する廃液を処理することができる。特にポンプは、貯槽内の底部から所定の距離を有する位置に設けられた吸入口を備えるので、上澄み液のみ湿式排煙脱硫装置へ送ることができる。
図1は本発明の実施の一形態としての廃液処理システム1の概略的構成を示す図である。本発明の廃液処理方法は、化学的酸素要求量の原因となる成分(以下COD成分と記す)を含有する廃液に過酸化水素水を所定量添加し、過酸化水素水を所定量添加した廃液を湿式排煙脱硫装置に送水し、廃液を排煙脱硫装置の補給水として利用し、最終的には湿式排煙脱硫装置の排水と一体として処理する点に特徴を有する。ここでは、ボイラの化学洗浄廃液を被処理廃液として説明する。なお、被処理廃液がボイラの化学洗浄廃液に限定されないことは言うまでもない。
廃液処理システム1は、廃液を貯留する貯槽10、廃液を湿式排煙脱硫装置20へ送水する廃液払出ポンプ11、硫黄酸化物を除去する湿式排煙脱硫装置20、及び湿式排煙脱硫装置20から排出される脱硫排水を処理する排水処理装置40を主に構成される。湿式排煙脱硫装置20は、石灰石石膏法を採用している。発電所で使用されている貫流型ボイラの蒸発管の化学洗浄には、クエン酸、グリコール酸などの有機酸が使用され、洗浄に伴い排出される洗浄廃液には、蒸発管に付着したスケールを溶解させたことに伴う金属類、有機酸などCOD成分を多く含む。発電所の貫流型ボイラの化学洗浄に伴い排出される洗浄廃液の量は、850m程度であり、これら洗浄廃液は、貯槽10に貯留される。この貯槽10に貯留する洗浄廃液に対して、過酸化水素水を添加することで、洗浄廃液に含まれる有機酸などCOD成分を酸化分解させることができる。
洗浄廃液に添加する過酸化水素水の濃度は、特に限定されないため、工業用の過酸化水素水である35重量%過酸化水素水を使用すれば、入手が容易である。洗浄廃液に対して、添加する過酸化水素水の量は、過酸化水素水の添加量とCODの分解速度の関係、過酸化水素水で処理されたこの洗浄廃液を受入れる湿式排煙脱硫装置内20の液中のCOD濃度、及びコストを考慮して決定することが望ましい。よって湿式排煙脱硫装置内20の液中のCOD濃度が比較的低い場合にあっては、洗浄廃液のCOD濃度を低下させた後、湿式排煙脱硫装置20に投入することが好ましい。
次に、過酸化水素水の添加量とボイラ洗浄廃液のCOD分解速度の実験結果を示す。実験は次の要領で行った。ボイラの洗浄廃液は、貫流型ボイラを1.5重量%のクエン酸、1.5重量%のグリコール酸を主成分とする有機酸で洗浄し得た洗浄廃液であり、COD濃度は、約2400mg/Lであった。洗浄廃液に含まれる金属類の濃度は表1に示す通りであり、鉄が1024mg/Lと非常に高く、ついで高いのがナトリウムで、ナトリウムの濃度は34.1mg/Lであった。また、洗浄廃液の色は、褐色であった。なお、COD濃度、金属類の濃度測定は、JISK0102に基づき行った。
Figure 2007117783
この洗浄廃液と35重量%の過酸化水素水とを、1リットルのガラス製のビーカーに所定の量投入し、短時間撹拌した後所定の時間室温下で放置し、所定の間隔でサンプルを採取し、COD濃度を測定した。また併せて上澄み液に含まれる金属類の濃度を測定した。洗浄廃液に対する35重量%過酸化水素水の添加割合は、1容量%、3容量%、5容量%とした。COD濃度の測定結果を図2に示した。また上澄み液に含まれる金属類の濃度測定結果を表1に示した。
図2に示すように過酸化水素水の添加割合が高いほど、CODの分解速度が大きい結果となった。また、CODの濃度が低下するとともに、COD成分の分解速度も低下し、過酸化水素水を添加し96時間経過後のCOD削減率は、過酸化水素水の添加割合1容量%で85%、過酸化水素水の添加割合3容量%で90%、過酸化水素水の添加割合5容量%で94%であった。過酸化水素水の添加濃度が1容量%の場合、過酸化水素水を添加し24時間経過後のCODの削減率は、約80%であった。
洗浄廃液に過酸化水素水を添加した後の上澄み液に含まれる金属類の濃度は、表1に示すように原液に比較して大幅に低下した。特に鉄については、原液中の濃度が1024mg/Lであったのに対し、処理後の上澄み液では1.51mg/Lと大幅に低下した。カルシウム、マンガン等、他の金属類も濃度を低下させていた。
洗浄廃液の色については、過酸化水素水を添加し24時間経過後には、薄茶色の透明な状態となっていた。ビーカの底には鉄が酸化されて生成したと見られる沈殿物が堆積していた。以降24時間毎に目視観察を行ったが、目視観察上大きな変化は見られなかった。よって、洗浄廃液中の鉄の大部分は、比較的短時間で沈殿物となるものと推察される。
また洗浄廃液の原液、及び35重量%過酸化水素水を1容量%添加し24時間経過した後の上澄み液を各々蒸発乾固させ、各々の重量を測定した結果、原液中の固形分の濃度は、約3200mg/L、上澄み液中の残留固形分の濃度は、230mg/Lであった。よって洗浄廃液に対して、35重量%過酸化水素水を1容量%添加し24時間静置することで、850mの洗浄廃液から、約2.5トンの沈澱物(スラッジ)を回収することがわかった。
上記の実験結果、及びコストの点から洗浄廃液に添加する35重量%過酸化水素水の添加割合は、1容量%とすることができる。湿式排煙脱硫装置内の吸収液、又は石膏を分離したろ液は、比較的COD濃度が高く、また湿式脱硫装置20の保有液量が多いことから、洗浄廃液に過酸化水素水を添加した後、直ちに過酸化水素水を添加した洗浄廃液を、脱硫装置20の補給水経路を構成するろ過水槽21へ送ることも可能であるが、洗浄廃液のCOD濃度、金属類の濃度の点から、洗浄廃液に対して35重量%過酸化水素水を添加し、24時間経過した後に湿式排煙脱硫装置20の補給水経路に送水することが効率的と言える。
先の実験結果によれば、洗浄廃液に35重量%過酸化水素水を1容量%添加し、24時間経過すれば、COD濃度が2400mg/Lから約500mg/Lに低下する。これにより、湿式排煙脱硫装置に及ぼす影響が少なくなる。また洗浄廃液中の金属類も、原液に比較して大幅に減少するので、金属類の少なくなった洗浄廃液を送水することが可能となり、湿式排煙脱硫装置で生成される石膏に及ぼす影響が少なくなる。
洗浄廃液に対する過酸化水素水の添加方法は、特に限定されないけども、洗浄廃液と過酸化水素水とが、略均一に混合されるように過酸化水素水を添加することが望ましい。図3に貯槽10に過酸化水素水を添加する方法の一例を示す。タンクローリ車50から、管路51を経由して過酸化水素水を貯槽10に圧送する。貯槽10内の過酸化水素水の出口部52を分岐させることで過酸化水素水を貯槽10内で分散させることができる。特に過酸化水素水の吹き込み流速を大きくし、貯槽内に循環流が形成するように供給すればさらに好ましい。なお、貯槽10内を均一に撹拌する方法は、特に限定されないので、常法である撹拌機による撹拌、ケミカルポンプなどによる液循環などを行ってもよいことは言うに及ばない。
本発明では、上記に記したように過酸化水素水の添加量を、洗浄廃液に対して1容量%とすることが可能なことから、過酸化水素水の添加を比較的短時間で完了することができる。洗浄廃液に過酸化水素水を添加すると、酸化反応により反応熱が発生する。このため多量の過酸化水素水を添加するには、時間を掛けて少量づつ添加するか、洗浄廃液を冷却しながら添加する必要がある。しかしながら本発明のように、過酸化水素水の添加量が少ない場合は、過酸化水素水を短時間で添加しても、貯槽内の温度が大きく上昇することはない。この点については実際に行った作業において、洗浄廃液に対して1容量%の過酸化水素水を添加しても貯槽内の温度が殆ど上昇しないことを確認済みである。
過酸化水素水が添加された洗浄廃液は、廃液払出ポンプ11で湿式排煙脱硫装置20のろ過水槽21へ送られる。上澄み液のみを湿式排煙脱硫装置20のろ過水槽21に送るには、廃液払出ポンプ11の吸入管12の吸入口を、貯槽10の底部に沈殿堆積している沈殿物の高さ、廃液払出ポンプ11の吸い込み速度などを考慮して、貯槽10の底部から一定の距離隔てた位置に設置すればよい。これにより、容易に洗浄廃液の上澄み液のみ、湿式排煙脱硫装置20のろ過水槽21に送水することができる。
湿式排煙脱硫装置20は、石炭又は重油などの燃料排ガスを処理する装置であり、ここで示す方式は、石灰石―石膏法である。ボイラ(図示を省略)を出た燃焼排ガスは、窒素酸化物を無害化する脱硝装置(図示を省略)などを経由して、ガス、ガスヒータ(GGH)で処理後の排ガスと熱交換を行い、温度を低下させ冷却塔22に送られる。排ガスは、冷却塔22及び吸収塔23で吸収液である石灰石スラリーと気液接触し、排ガスから硫黄酸化物が取り除かれる。硫黄酸化物は、式(1)で示される反応より石膏となる。
Figure 2007117783
石灰石スラリーは、石灰石スラリー槽24で石灰石と、ろ過水槽21から送られるろ過水とで調整され、吸収塔23及び冷却塔22の下部に設けられる吸収液貯槽25、26に送られる。吸収液貯槽25、26に送られた吸収液である石灰石スラリーは、ポンプ27、28を介して、冷却塔22及び吸収塔23の塔上部からスプレーされ、排ガスと気液接触する。スプレーされた吸収液は、吸収液貯槽25、26に集められ、循環使用される。
硫黄酸化物が除去された排ガスは、GGHを経由した後、図示を省略した煙突から大気に放出される。一方、生成した石膏はシックナ29に送られ、ここで石膏を沈降分離させる。上澄み液はろ過水槽21へ送られ、石灰石スラリーの調整に使用される。シックナ29で回収された石膏スラリーは、石膏スラリー槽30に貯留された後、ベルトフィルタ31に送られ脱水された後、石膏として回収される。ベルトフィルタ31から排出される排水は、排水槽32に貯留された後、一部はシックナ29に返送される。
湿式排煙脱硫装置20に導入される排ガス中には塩素化合物が含まれており、これらが吸収液に溶解してしまう。上記のように湿式排煙脱硫装置20では、石膏を分離した後のろ液の大半は循環使用されるため、吸収液中の塩素イオンが濃縮されやすくなる。吸収液中の塩素イオン濃度が高濃度になると、機器が腐食するため、湿式排煙脱硫装置20では、石膏を分離した後のろ液の一部は系外に抜出されている。この抜出し量、及び吸収塔での蒸発量に伴う量に相当する量の補給水が補給され液量のバランスを保っている。
補給水には、一般的に工業用水が使用されるが、本発明では工業用水の代わりに、又は工業用水とともに予め過酸化水素水を添加した洗浄廃液を使用する。この点に本発明の特徴を有する。過酸化水素水が添加された洗浄廃液であっても、前記のように有機酸などのCOD成分を含有するが、一般に湿式排煙脱硫装置で循環使用される石膏分離後のろ液も、懸濁物質、溶解性金属、アンモニア性窒素、COD成分等を含んでおり、有機酸などのCOD成分及び溶解性金属を含有する廃液を、湿式排煙脱硫装置の補給水として使用しても、湿式排煙脱硫装置に及ぼす影響は小さい。また湿式排煙脱硫装置の保有液量が多いことも、洗浄廃液の影響を小さくする。
なお本実施形態では、過酸化水素水を添加した洗浄廃液をろ過水槽21へ送水しているが、送水先はろ過水槽21に限定されるものではなく、工業用水の補給水管路33がある場合は、補給水管路33であってもよく、またろ過水の供給管路34であってもよい。要すれば、ろ過水又は補給水の経路に過酸化水素水を添加した洗浄廃液を送水すればよいのである。
補給水に洗浄廃液を使用しない場合であっても、脱硫排水には排ガス中の燃料灰などの懸濁物質(SS)、溶解性金属、アンモニア性窒素、及びジチオン酸、窒素―硫黄化合物などの無機性COD、工業用水中の有機性物質からなるCOD成分等が含まれているため、直接放流することができないため、排水処理を行う必要がある。本発明のように有機酸などのCOD成分及び溶解性金属を含有する廃液を、湿式排煙脱硫装置の補給水として使用するであっても、これらは最終的には脱硫排水の一部として処理されるため、洗浄廃液を処理するための設備が不要となる。
図4は、脱硫排水の処理フローを示すブロック図である。このブロック図は、排水処理工程の一例を示すものであって、これに限定されないことは言うまでもない。凝集沈殿工程41ではポリ塩化アルミニウム、水酸化ナトリウムなど添加し、排水中のSS分、重金属を除去する。硝化窒化工程42では、亜硝酸菌、硝酸菌、脱窒菌を利用して排水に含まれるアンモニウムイオンを無害化させる。また砂ろ過工程43では、アンスライサト等の粒子層を通過させることで、液中に懸濁するSS分を除去する。さらに活性炭吸着工程44では、有機物を吸着除去する。
湿式排煙脱硫装置20へ投入する洗浄廃液に油分とリンが含まれている場合は、湿式排煙脱硫装置内で発泡が生じたり、材料の腐食など悪影響を及ぼすことから、これら成分を含む廃液を補給水とすることはできない。よって、補給水に利用しようとする廃液であって、油分及びリンが含まれている廃液、又はこれら成分が含まれていると予想される廃液にあっては、これら成分の濃度を測定し、所定の濃度を超える濃度が検出された場合は、油分、リンの除去操作を行った後、湿式排煙脱硫装置に投入する必要がある。なお、貫流式ボイラの有機酸による化学洗浄廃液のように、油分、リンが含まれていないことが明白な廃液にあっては、これら成分の測定が必要ないことは言うに及ばない。
また、過酸化水素水を添加した廃液を湿式排煙脱硫装置20へ投入すると、湿式排煙脱硫装置20の吸収液、又はろ液に含まれる塩素イオンと残留過酸化水素とが反応し、揮発性有機化合物(VOC)を生成する懸念もあるが、次に示すようにビーカースケールの実験を行った結果、VOCの生成は認められなかった。
還流型ボイラを有機酸で洗浄した洗浄廃液に、35重量%過酸化水素水を1容量%添加し、過酸化水素水を添加した洗浄廃液に残留する過酸化水素水が、湿式排煙脱硫装置の石膏を分離した後のろ液に含まれる塩素化合物と反応し、VOCを生成するか否かを、次ぎ要領で実験を行い確認した。ボイラの洗浄廃液は、貫流型ボイラを1.5重量%のクエン酸、1.5重量%のグリコール酸を主成分とする有機酸で洗浄し得た洗浄廃液であり、COD濃度は、約2400mg/Lであった。洗浄廃液に含まれる金属類の濃度は表1に示す通りであり、鉄が1024mg/Lと非常に高く、ついで高いのがナトリウムで、ナトリウムの濃度は34.1mg/Lであった。また、洗浄廃液の色は、褐色であった。
この洗浄廃液に35重量%過酸化水素水を1容量%の添加し、24時間放置した後、洗浄廃液の上澄み液を採取した。この上澄み液と湿式排煙脱硫装置の石膏分離後のろ液(脱硫ろ過水)を、第一のケースでは、脱硫ろ過水と上澄み液とを1:1(容量)の割合で混合した。また第二ケースでは、脱硫ろ過水と上澄み液とを1:10(容量)の割合で混合した。分析の結果、第一、第二のケースともVOCは検出されなかった。なお、湿式排煙脱硫装置の石膏分離後のろ液(脱硫ろ過水)には、弊社玉島発電所の脱硫ろ過水を使用した。
上記のように本発明の廃液の処理方法にあっては、廃液に少量の過酸化水素水を添加した後、これを湿式排煙脱硫装置の補給水として使用するので、廃液処理が簡単で、安価に廃液を処理することができる。
図1では冷却塔と吸収塔とを備える形式の湿式排煙脱硫装置を示したけれども、湿式排煙脱硫装置には、酸化塔を備えるもの、冷却塔がなく吸収塔のみからなるものなど種々の形式のものが使用されている。また吸収剤として、石灰石に代り生石灰を使用するタイプものもある。いずれのタイプの湿式排煙脱硫装置であっても、湿式排煙脱硫装置内で石膏スラリーを石膏とろ液とに分離し、ろ液を循環使用すると、不純物が濃縮されるため一定量のろ液が脱硫排水として排出されるため、本発明は湿式排煙脱硫装置の形式によらず適用することができる。
また脱硫排水の処理フローの一例を図4に示したけれども、脱硫排水の処理フローはこれに限定されるものではなく、金属類又はCOD成分を除去可能な機能を備える排水処理設備であれば本発明の廃液の処理方法を適用することができる。近年、湿式排煙脱硫装置の液中のCODを抑制し、液中のCOD濃度を低くした湿式排煙脱硫装置が開発されているが、これらにあっては、過酸化水素水を添加し長時間経過した後に、湿式排煙脱硫装置の補給水として利用すればよい。また過酸化水素で処理した洗浄廃液を湿式排煙脱硫装置に投入する投入速度を調整することで対処することができる。
さらに本発明の実施形態では、ボイラの有機酸による洗浄廃液を例に取り説明したけれども、本発明が適用可能な廃液は、ボイラの洗浄廃液に限定されるものではない。この他にも、熱交換器を洗浄した際の廃液など有機酸、金属類を含有する廃液の処理に適用することができる。
本発明の実施の一形態としての廃液の処理システム1の概略的構成を示す図である。 過酸化水素水の添加量とボイラ洗浄廃液のCOD分解速度の実験結果を示す図である。 図1の貯槽10に過酸化水素水を添加する方法を示す図である。 脱硫排水の処理フローを示すブロック図である。
符号の説明
1 廃液処理システム
10 貯槽
11 廃液払出ポンプ
12 吸入管
20 湿式排煙脱硫装置
21 ろ過水槽
30 石膏スラリー槽
33 工業用水の補給水管路
34 ろ過水の供給管路
40 脱硫排水処理装置
50 タンクローリ車
52 出口部

Claims (7)

  1. 化学的酸素要求量の原因となる成分を含有する廃液に過酸化水素水を所定量添加し、
    過酸化水素水を所定量添加した廃液を湿式排煙脱硫装置に送水し、該廃液を湿式排煙脱硫装置の補給水として利用することを特徴とする廃液処理方法。
  2. 前記過酸化水素水を所定量添加した廃液の上澄み液のみ前記湿式排煙脱硫装置に送水することを特徴とする請求項1に記載の廃液処理方法。
  3. 前記化学的酸素要求量の原因となる成分を含有する廃液に添加する過酸化水素は、35重量%の過酸化水素水を前記廃液に1容量%添加することを特徴とする請求項1又2に記載の廃液処理方法。
  4. 前記化学的酸素要求量の原因となる成分を含有する廃液に前記過酸化水素水を所定量添加し、少なくとも24時間以上経過した後、この廃液を前記湿式排煙脱硫装置に送水することを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載の廃液処理方法。
  5. 前記化学的酸素要求量の原因となる成分を含有する廃液は、ボイラの化学洗浄廃液であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1に記載の廃液処理方法。
  6. 前記化学的酸素要求量の原因となる成分を含有する廃液に含まれる油分及びリンの濃度を測定し、油分及び/又はリンが所定の濃度以上存在するときは、油分及び/又はリンを所定の濃度まで低下させる処理を行った後、この廃液を前記湿式排煙脱硫装置に送水することを特徴とする請求項1から5のいずれか1に記載の廃液処理方法。
  7. 湿式排煙脱硫装置と、
    該湿式排煙脱硫装置から排出される脱硫排水を処理する排水処理装置と、
    化学的酸素要求量の原因となる成分を含有する廃液を貯留する貯槽と、
    該貯槽に過酸化水素水を供給する過酸化水素水供給手段と、
    該貯槽内の底部から所定の距離を有する位置に設けられた吸入口を備える、該貯槽内の廃液を該湿式排煙脱硫装置へ送水可能なポンプと、
    を含むことを特徴とする廃液処理システム。
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