JP2007100758A - 一方向クラッチ - Google Patents

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Abstract

【課題】 過酷な環境下で使用された場合であっても、転がり面に焼付きが生じ難く、優れた音響特性及びトルク特性を有する一方向クラッチを提供する。
【解決手段】 一方向クラッチの潤滑を行うグリース組成物として、長さが1μm以下の繊維状物と長さが5μm以上の繊維状物とを含有する増ちょう剤を用いたグリース組成物を用いる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、同心に配置された一対の回転部材の一方を他方に対して所定方向に相対回転させる回転力のみを伝達する一方向クラッチに関する。
オルタネータ等の自動車用補機の回転軸や、アイドリングストップ車に搭載するエンジンのクランクシャフト及び補機駆動装置の回転軸には、所定方向の駆動力のみを伝達するプーリ装置として一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置が装着されている。このような一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置の一例として、図4に示すものが知られている。
この一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置は、図4に示すように、スリーブ(回転部材)11とプーリ(回転部材)12とが同心に配置され、このスリーブ11の外周面とプーリ12の内周面との間には、転がり軸受20及び一方向クラッチ30が軸方向に並列に配置されている。
スリーブ11は、オルタネータの回転軸Sに外嵌固定された筒状部材であり、この回転軸Sに回転力を伝達する。スリーブ11の軸方向中間部は、その軸方向両端部よりも外径寸法の大きな大径部11Aとなっており、この大径部11Aの軸方向一端部には、さらに外径寸法の大きな突部11Bが形成されている。なお、回転軸Sには発電用ローターが固定されており、オルタネータは回転軸Sを回転させることにより発電するようになっている。
プーリ12の外周面には、軸方向に沿う断面が波形となるように凹凸が形成されており、図示しない無端ベルト(Vベルト)が掛け渡される。無端ベルトは、図示しない補機駆動装置の駆動によって移動するものであり、この無端ベルトの移動に従ってプーリ12が回転する。
転がり軸受20は、スリーブ11の軸方向両端部にそれぞれ嵌合している。各転がり軸受2は、内輪21、外輪22、玉(転動体)23、保持器24、及び、一対のシール部材25を備えた深溝玉軸受である。そして、内輪21と外輪22の間の転がり面は、グリース組成物Gで潤滑されている。
一方向クラッチ30は、スリーブ11の軸方向中間部(軸方向両端部に嵌合させた一対の転がり軸受20の間)に設けられている。この一方向クラッチ30は、クラッチ用内輪31と、クラッチ用外輪32と、クラッチ用内輪31の外周面31a及びクラッチ用外輪32の内周面32aの間に配置された複数のローラ33と、ローラ33を保持するクラッチ用保持器34とを備えている。そして、クラッチ用内輪31とクラッチ用外輪32の間の転がり面は、グリース組成物Gで潤滑されている。
クラッチ用内輪31は、スリーブ11の大径部11Aに外嵌されている。このクラッチ用内輪31の外周面は、図4(b)に示すように、円筒面にローラ33と同数の凹部31bを円周方向に等間隔に形成したカム面となっている。
クラッチ用外輪32は、クラッチ用内輪31に対向するプーリ12の内周面に嵌合している。このクラッチ用外輪32の両端部には、図4(a)に示すように、フランジ状の一対の鍔32bが形成されている。
複数のローラ33は、クラッチ用内輪31の凹部31bとクラッチ用外輪32の内周面32aとの間で円周方向に移動可能に配置され、クラッチ用内輪31の凹部31b及びクラッチ用外輪32の内周面32aは、ローラ33の摺動面となっている。
クラッチ用内輪31の凹部31bは、図4(b)に示すように、対向するクラッチ用外輪32の内周面32aとの間隙が円周方向に向かうにつれて徐々に広く(若しくは狭く)なるように形成されている。この間隙は、最も狭い部分ではローラ33の直径よりも小さく、最も広い部分ではローラ33の直径よりも大きい。このため、ローラ33は、最も狭い間隙では挟み込まれて転がらなくなり、最も広い間隙ではすべり接触或いは回転しながらすべり接触する。
クラッチ用保持器34は、図4(b)に示すように、複数のローラ33を円周方向に移動可能に配置している。このクラッチ用保持器34は、複数のローラ33間に配置される柱部34aと、この柱部34aに固定された板状部材からなるバネ34bと、を備えている。ローラ33は、バネ34bによってクラッチ用内輪31とクラッチ用外輪32との間隔が狭くなる方向に弾性的に押圧されている。また、図4(a)に示すように、クラッチ用保持器34の一端部にはスリーブ11側に突起した係止突部34Aが形成されており、この係止突部34Aがスリーブ11の突部11Bとクラッチ用内輪31との間に配設されることで、クラッチ用保持器34の軸方向への移動が抑制されている。
このような構成の一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置は、無端ベルトの移動によって、プーリ12が所定方向に相対回転すると、これに内嵌したクラッチ用外輪32も所定方向に回転し、これに伴ってローラ33がクラッチ用内輪31の凹部31bとクラッチ用外輪32の内周面32aとの間隙が狭くなる方へ移動する。この際、ローラ33は、クラッチ用保持器34のバネ34bに押し出されることで、クラッチ用内輪31の凹部31bとクラッチ用外輪32の内周面32aとの間隙に食い込み、自転を止めてクラッチ用内輪31とクラッチ用外輪32とを接続する(クラッチロック状態)。これにより、プーリ12からスリーブ11へ回転力が伝達されるようになる。この状態は、無端ベルトの移動速度が一定又は上昇する限り継続する。
一方、無端ベルトの移動速度が減速すると、これに伴いプーリ12には前記所定方向とは逆方向への制動力が作用するが、スリーブ11は慣性により一定速度で前記所定方向への回転を継続しようとする。これに従って、ローラ33は、クラッチ用内輪31の凹部31bとクラッチ用外輪32の内周面32aとの間隙が広くなる方向にすべり接触しつつ移動して、ロック状態が解除され、クラッチ用内輪31とクラッチ用外輪32との接続が切断される(オーバラン状態)。この状態では、プーリ12がスリーブ11に対して前記所定方向とは逆方向に相対回転する。
これにより、オルタネータの回転軸Sの回転速度が変動した場合であっても、無端ベルトとプーリ12とが触れ合うことが防止され、鳴きと呼ばれる異音の発生や摩耗による無端ベルトの寿命低下を防止できるとともに、オルタネータの発電効率低下を防止できる。 このような一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置における一方向クラッチの潤滑に用いるグリース組成物Gとしては、特許文献1及び特許文献2に記載のグリース組成物が提案されている。
特許文献1には、増ちょう剤として、長さ1μm以下の繊維状物を含む金属石けんを用いたグリース組成物が提案されている。
特許文献2には、増ちょう剤として、長さ3μm以上の繊維状物を含むウレア化合物を用いたグリース組成物が提案されている。
特開2002−256279号公報 特開2003−222144号公報
近年、オルタネータ等自動車用補機の回転軸の高性能化及び高出力化が益々進むにつれて、回転軸に装着される一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置の使用条件も厳しくなってきている。このため、特に、一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置における一方向クラッチには、低温で優れた動作性を有し、且つ、高速回転、高荷重、高温、高振動等の過酷な環境下での耐久性が要求されている。
しかしながら、上述した過酷な環境下で使用される一方向クラッチを特許文献1に記載のグリース組成物で潤滑した場合には、繊維構造が破断され易く、転がり面からグリース組成物が漏洩して、転がり面に焼付きが生じ易いという問題がある。
同様に、特許文献2に記載のグリース組成物で潤滑した場合には、グリース全体が塊で動き易く(チャネリングし易く)、転がり面からグリース組成物が漏洩して、転がり面に焼付きが生じ易いという問題や、回転時に転がり面に繊維状物が入り込み、音響特性及びトルク特性が劣化し易いという問題がある。
そこで、本発明は、上述した従来の問題を解決するためになされたものであり、上述した過酷な環境下で使用された場合であっても、転がり面に焼付きが生じ難く、優れた音響特性及びトルク特性を有する一方向クラッチを提供することを課題としている。
このような課題を解決するために、本発明は、同心に配置された一対の回転部材の一方を他方に対して所定方向に相対回転させる回転力のみを伝達する一方向クラッチにおいて、長さ1μm以下の繊維状物と長さ5μm以上の繊維状物とを含有する増ちょう剤を用いたグリース組成物で潤滑することを特徴とする一方向クラッチを提供する。
本発明の一方向クラッチは、例えば、オルタネータや、コンプレッサ、ウォータポンプ、冷却ファン等自動車用補機の回転軸等に装着され、補機駆動装置やエンジンからの所定方向の回転力を伝達させる一方向クラッチとして好適に用いることができる。また、本発明の一方向クラッチは、例えば、アイドリングストップ車に搭載するエンジンのクランクシャフト及び補機駆動装置の回転軸等に装着され、エンジン及び補機駆動装置の一方が運転状態で、他方が停止状態である場合に、運転状態にある一方の回転力のみを伝達し、停止状態にある他方の駆動軸を回転させないようにする一方向クラッチとして好適に用いることができる。
このような一方向クラッチとしては、例えば、上述した図4に示す一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置や、クラッチ用外輪として鍔がない円筒形状の構造を採用した一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置や、プーリの内周面及びスリーブの外周面を、直接一方向クラッチの外輪軌道面及び内輪軌道面として利用した一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置や、クラッチ用内輪及び外輪と転がり軸受の内輪及び外輪とをそれぞれ一体的に形成した一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置に備えることができる。
また、本発明の一方向クラッチを構成する回転部材としては、例えば、上述した図4に示すプーリや歯車が挙げられる。
以下、本発明の一方向クラッチで潤滑に用いるグリース組成物について説明する。
本発明に係る一方向クラッチでは、長さ1μm以下の繊維状物と長さ5μm以上の繊維状物とを含有する増ちょう剤を用いたグリース組成物で潤滑する。このグリース組成物は、長さの異なる二種類の繊維状物が互いに絡み合った繊維構造を有し、長さ1μm以下の繊維状物が長さ5μm以上の繊維状物で補強されており、この繊維構造の網の目の間に基油が含有されている。このため、長さ1μm以下の繊維状物を含む増ちょう剤を用いたグリース組成物(上述した特許文献1参照)や、長さ3μm以上の繊維状物を含む増ちょう剤を用いたグリース組成物(上述した特許文献2参照)で潤滑する場合と比べて、グリース組成物を構成する増ちょう剤の繊維構造の強度が向上する。よって、高荷重及び高温下等の過酷な環境下で使用された場合であっても、転がり面にグリース組成物を安定して保持することができるため、転がり面に焼付きが生じ難く、優れた音響特性及びトルク特性を有する一方向クラッチを提供できる。
増ちょう剤の種類としては、例えば、ウレア化合物,ベントナイト,ナトリウムテレフタレート,銅フタロシアニン,テフロン(登録商標),マイカ,シリカゲル等の非石けん系や、カルシウム石けん,複合アルミニウム石けん,リチウム石けん,複合リチウム石けん等の石けん系グリースが挙げられる。特に、過酷な環境下での耐焼付き性を向上させるために、耐熱性や耐水性に優れたウレア化合物を用いることが好ましい。
このようなウレア化合物としては、特に限定されないが、下記式(1)で示されるものであることが好ましい。
但し、上記式(1)中のR1は炭素数6〜20のアルキル基、シクロヘキシル基、又は炭素数7〜12のアルキルシクロヘキシル基からなり、2つのR1は同一であっても異なっていてもよい。また、上記式(1)中のR2は、炭素数6〜15の2価の芳香族炭化水素基からなる。
炭素数6〜20のアルキル基の具体例としては、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基からなる直鎖構造又は分岐構造を有するものが挙げられる。
また、炭素数7〜12のアルキルシクロヘキシル基の具体例としては、例えば、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、イソプロピルシクロヘキシル基、1−メチル−3−プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ペンチルシクロヘキシル基、ペンチルメチルシクロヘキシル基、ヘキシルシクロヘキシル基が挙げられる。
さらに、炭素数6〜15の2価の芳香族炭化水素基の具体例としては、下記式(2)〜(4)に示すものが挙げられる。
本発明の一方向クラッチで潤滑に用いられるグリース組成物において、長さ1μm以下の繊維状物の含有率は、増ちょう剤全体に対して6質量%以上95質量%以下とすることが好ましい。ここで、長さ1μm以下の繊維状物が6質量%未満となると、グリース組成物全体が塊で移動し易くなり、グリース組成物の漏洩を抑制し難くなる。一方、長さ1μm以下の繊維状物が増ちょう剤全体に対して95質量%よりも大きくなると、グリース組成物から基油が分離し易くなるとともに、焼付き性・耐久性が悪化する。
また、焼付き性・耐久性の悪化を防止するために、長さ1μm以下の繊維状物は、その下限値を0.1μm以下とし、その太さを0.2μm以下とすることが好ましい。
本発明の一方向クラッチで潤滑に用いられるグリース組成物において、長さ5μm以上の繊維状物の含有率は、増ちょう剤全体に対して5質量%以上94質量%以下とすることが好ましい。ここで、長さ5μm以上の繊維状物が5質量%未満となると、増ちょう剤の繊維構造が破壊され易くなり、優れた耐焼付き性が得られ難くなる。一方、長さ5μm以上の繊維状物が増ちょう剤全体に対して94質量%よりも大きくなると、グリース組成物全体が塊で動き、転がり面から漏洩し易くなるとともに、転がり面に繊維状物が入り込み、音響特性及びトルク特性が劣化し易くなる。
また、繊維状物が転がり面に入り込むことによる音響特性及びトルク特性の劣化を防止するために、長さ5μm以上の繊維状物は、その上限値を20μm以下とし、その太さを1μm以下とすることが好ましい。
なお、増ちょう剤の長さや太さは、グリース組成物をヘキサン等の溶剤で希釈し、コロジオン膜を貼った銅製メッシュに付着させたものを、透過型電子顕微鏡(6000〜20000倍程度の倍率)で観察することにより測定できる。
本発明の一方向クラッチで潤滑に用いられるグリース組成物において、上述した増ちょう剤とともに構成される基油としては、例えば、鉱油や合成潤滑油が挙げられる。
鉱油としては、例えば、パラフィン系鉱油やナフテン系鉱油を単独又は組み合わせたものが挙げられる。
合成潤滑油としては、例えば、ポリーα−オレフィン油等の合成炭化水素油や、ジアルキルジフェニルエーテル油,アルキルトリフェニルエーテル油,アルキルテトラフェニルエーテル油等のエーテル油や、ジエステル油及びネオペンチル型ポリオールエステル油を単独又は組み合わせたコンプレックスエステル油,芳香族エステル油等のエステル油や、フッ素油を単独又は組み合わせたものが挙げられる。
特に、高温及び高速回転等の過酷な環境下で使用された場合において、一方向クラッチの潤滑性能及び耐久性を向上させるために、基油として合成潤滑油を用いることが好ましく、合成炭化水素油、エステル油、及びエーテル油を単独又は組み合わせて用いることがより好ましい。
また、基油の40℃における動粘度は、20〜100mm2 /sであることが好ましく、30〜50mm2 /sであることがより好ましい。ここで、基油の40℃における動粘度が20mm2 /s未満であると、形成される潤滑油膜が薄くなり、十分な耐久性が得られなくなる。一方、基油の40℃における動粘度が100mm2 /sを超えると、低温での係合性が問題となる。また、オルタネータ等の自動車用補機で用いられる一方向クラッチは、エンジンの始動時等に−40℃付近で使用される場合もあるため、基油の流動点は−40℃以下とすることが好ましい。
本発明の一方向クラッチで潤滑に用いられるグリース組成物において、上述した増ちょう剤の配合率は、基油とともにグリース組成物を形成し得る範囲であれば特に限定されないが、例えば、グリース組成物全体に対して、10質量%以上25質量%以下とすることが好ましく、12質量%以上20質量%以下とすることがより好ましい。
また、グリース組成物の混和ちょう度は、250以上340以下とすることが好ましい。ここで、混和ちょう度が250未満となると、主にクラッチ部の摺動面に必要な潤滑性能が得られなくなるとともに、クラッチ部のクラッチロック/オーバランに使用されるバネの作動性が劣化する。一方、グリース組成物の混和ちょう度が340を超えると、ベルトの振動等でグリース組成物が漏洩し易くなる。
本発明の一方向クラッチで潤滑に用いられるグリース組成物は、上述した増ちょう剤及び基油に加えて、各種性能を向上させるための添加剤を加えてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、防錆剤、極圧剤、油性向上剤、金属不活性化剤、腐食防止剤を単独又は二種以上組み合わせたものが挙げられる。
これらの添加剤の配合割合は、本発明の効果を損なわない程度であれば特に限定されないが、グリース組成物全体に対して0.1〜10質量%とするのが一般的である。ここで、添加剤の配合割合が0.1質量%未満であると、添加剤による効果を十分に得ることが困難になり、一方、添加剤の配合割合が10質量%を超えると、添加剤による効果が飽和するとともに、グリース組成物に対する基油の配合率が相対的に少なくなるため、潤滑性が低下するおそれがある。
酸化防止剤としては、例えば、フェニル−1−ナフチルアミン等のアミン系や、2,6−ジ−tert−ジブチルフェノール等のフェノール系、硫黄系、ジチオリン酸亜鉛が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属等の有機スルフォン酸塩や、アルキル及びアルケニルこはく酸エステル等のアルキルエステルや、アルケニルこはく酸誘導体及びソルビタンモノオレエート等の多価アルコールの部分エステル等が挙げられる。
極圧剤としては、例えば、リン系や、硫黄−リン系や、ジチオリン酸亜鉛や、有機モリブデンが挙げられ、金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾールが挙げられ、油性向上剤としては、例えば、脂肪酸や動植物油が挙げられる。
このようなグリース組成物の製造方法の具体例としては、基油と、増ちょう剤と、添加剤等とを混合させた後、加熱攪拌して完全に溶解させ、さらに急冷する方法が挙げられる。この製造方法では、基油や増ちょう剤や添加剤等の種類、配合率、混合時期、加熱温度、及び冷却温度等の条件を変えることで、繊維状物の長さや含有率を調節することができる。
本発明の一方向クラッチによれば、長さ1μm以下の繊維状物と長さ5μm以上の繊維状物とを含有する増ちょう剤を用いたグリース組成物で潤滑することにより、転がり面に焼付きが生じ難く、優れた音響特性及びトルク特性を得ることができる。このため、低温での動作性に優れ、且つ、高速回転、高荷重、高温、高振動等の過酷な環境下での耐久性に優れた一方向クラッチを提供できる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態では、表1に示す基油、増ちょう剤、及び防錆剤(添加剤)を、表1に示す各方法a〜dで調製して、各種グリース組成物を作製した。
なお、表1に示す基油「TE」とは、トリメリット酸エステルを指し、同様に、「PE」はピロメリット酸エステルを、「PET」はペンタエリスリトールエステル(40℃における動粘度:30mm2 /s)を、「ADE」はジアルキルジフェニルエーテル(40℃における動粘度:100mm2 /s)を、「PAO」はポリ−α−オレフィン(40℃における動粘度:47mm2 /s)をそれぞれ指す。
また、表1に示す増ちょう剤「A」とは、オクタデシルアミン(以下、「アミン1」と記す。)のみで構成されたジウレア化合物を指し、同様に、増ちょう剤「B」とはアミン1とシクロヘキシルアミン(以下、「アミン2」と記す。)とをモル比で1対9の割合で配合したジウレア化合物を、増ちょう剤「C」とはアミン1とアミン2とをモル比で3対7の割合で配合したジウレア化合物を、増ちょう剤「D」とはアミン1とアミン2とをモル比で8対2の割合で配合したジウレア化合物をそれぞれ指す。
さらに、表1に示す防錆剤「A」とはナフテン酸亜鉛を指し、同様に、防錆剤「B」とはソルビタンモノオレエートを、防錆剤「C」とはコハク酸ハーフエステルを、防錆剤「D」とはソルビタントリオレエートを、防錆剤「E」とはナフテン酸カルシウムを、防錆剤「F」とはアルケニルコハク酸無水物を、防錆剤「G」とはカルシウムスルフォネートを、防錆剤「H」とは亜鉛スルフォネートをそれぞれ指す。
さらに、表1に示す調整方法「a」とは、以下に示す手順で行った方法を指す。まず、半量(425.4g)の基油を入れた第一の容器内に、アミン1を全量(102g)添加して80〜90℃で加熱溶解した。次に、残り半量(425.4g)の基油を入れた第二の容器内に、ジフェニルメタンジイソシアネートを47.2g添加して80〜90℃で加熱溶解した。次に、第二の容器内に第一の容器の内容物を混合した後15分間攪拌することでアミン1の反応を完結させた後、80℃まで冷却した。次に、得られた混合物に防錆剤を添加した後、ロールミルを通過させることにより、増ちょう剤としてウレア化合物を含むグリース組成物を作製した。
また、表1中で示す調整方法「b」とは、以下に示す手順で行った方法を指す。まず、200gの基油を入れた第一の容器内に、アミン1を全量(20g)添加して80〜90℃で加熱溶解した。次に、200gの基油を入れた第二の容器内に、ジフェニルメタンジイソシアネートを9g添加して80〜90℃で加熱溶解した。次に、第二の容器内に第一の容器の内容物を混合した後攪拌しつつ、80〜90℃で反応させた。次に、得られた混合物を175℃まで昇温させて15分間保持することでアミン1の反応を完結させた後、80℃まで冷却した。次に、220gの基油を入れた第三の容器内に、アミン2を全量(67g)添加して80〜90℃で加熱溶解した。次に、200gの基油を入れた第四の容器内に、ジフェニルメタンジイソシアネートを84g添加して80〜90℃で加熱溶解した。次に、第二の容器内に第四及び第三の容器の内容物を混合し、80〜90℃で15分間攪拌することでアミン2の反応を完結させた後80℃まで冷却した。次に、得られた混合物に防錆剤を添加した後、ロールミルを通過させることにより、増ちょう剤としてウレア化合物を含むグリース組成物を作製した。
さらに、表1中で示す調整方法「c」とは、以下に示す手順で行った方法を指す。まず、400gの基油を入れた第一の容器内に、アミン1を全量(44g)添加して80〜90℃で加熱溶解した。次に、450gの基油を入れた第二の容器内に、ジフェニルメタンジイソシアネートを68g添加して80〜90℃で加熱溶解した。次に、第二の容器内に第一の容器の内容物を混合して15分間攪拌することでアミン1の反応を完結させた後、アミン2を全量(38g)添加して80〜90℃で加熱溶解することでアミン2の反応を完結させた。次に、得られた混合物を170℃まで昇温して15分間保持した後、80℃まで冷却した。次に、得られた混合物に防錆剤を添加した後、ロールミルを通過させることにより、増ちょう剤としてウレア化合物を含むグリース組成物を作製した。
さらに、表1中で示す調整方法「d」とは、以下に示す手順で行った方法を指す。まず、470gの基油を入れた第一の容器内に、アミン1の全量(78g)とアミン2の全量(7g)を同時に添加して、80〜90℃で加熱溶解した。次に、400gの基油を入れた第二の容器内に、ジフェニルメタンジイソシアネートを45g添加して、80〜90℃で加熱溶解した。次に、第二の容器内に第一の容器の内容物を加えて15分間攪拌した後、さらに170℃まで昇温させて15分間保持することでアミン1及びアミン2の反応を完結させた後、80℃まで冷却した。次に、得られた混合物に防錆剤を添加した後ロールミルを通過させることにより、増ちょう剤としてウレア化合物を含むグリース組成物を作製した。
なお、グリース組成物をなす増ちょう剤の繊維状物の長さは、基油の構成(例えば、種類や40℃での動粘度)により調節することができる。本実施形態では、四種類の増ちょう剤A〜Dと組み合わせる基油の構成を変えることで、増ちょう剤の繊維状物の長さを調節した。
このようにして得られたグリース組成物のうち一部を、ヘキサンで希釈した後コロジオン膜を張った銅製メッシュに付着させて、透過型電子顕微鏡(1000倍)で観察することにより、増ちょう剤を構成する繊維状物の長さを測定した。この結果は、繊維状物の長さ別(0.1μm以下、0.2μm以上0.5μm以下、0.6μm以上1.4μm以下、1.5μm以上4.4μm以下、4.5μm以上9.4μm以下、9.5μm以上14.4μm以下、14.5μm以上20.4μm以下)に存在の有無を確認し、表1に併せて示した。
なお、表1に示す長さが1μm以下(1.4μm以下)の繊維状物の太さはいずれも0.1〜0.3μmで、長さが5μm以上(4.5μm以上)の繊維状物の太さはいずれも0.5〜1.0μmであった。また、No.7とNo.8以外のグリース組成物において、長さが1μm以下の繊維状物と長さが5μm以上の繊維状物の含有率は、いずれも40:60〜80:20であった。
図1は、No.1のグリース組成物を示す電子顕微鏡写真であり、長さが1μm以下の繊維状物と長さが5μm以上の繊維状物とが絡み合って増ちょう剤の繊維構造を形成していることが分かる。図2は、No.7のグリース組成物を示す電子顕微鏡写真であり、長さが5μm以上の繊維状物のみで増ちょう剤の繊維構造を形成していることが分かる。図3は、No.8のグリース組成物を示す電子顕微鏡写真であり、長さが1μm以下の繊維状物のみで増ちょう剤の繊維構造を形成していることが分かる。
次に、このようにして得られたNo.1〜No.9のグリース組成物を、上述した図4に示す一方向クラッチ30の潤滑に用いるグリース組成物Gとして、クラッチ用内輪31とクラッチ用外輪32との間に形成される内部空間内に、この内部空間全体の35体積%となるように充填した。
次に、上述したグリース組成物が充填された一方向クラッチ30に対して、過酷な環境下で使用することを想定した以下に示す条件で耐焼付き試験及び漏洩試験を行った。
耐焼付き試験は、1000時間を上限として、以下に示す条件でクラッチ用内輪31を回転させることで行い、クラッチ用外輪32が170℃に達するまでの回転時間を焼付き寿命とした。また、この耐焼付き試験では、各実施例毎に4回づつ行い、その平均値を算出した。そして、この結果を、表1に併せて示した。
〔耐焼付き試験条件〕
軸受温度:160℃
ラジアル荷重:98N
アキシャル荷重:98N
回転速度:10000min-1
また、漏洩試験は、上述と同様の条件でクラッチ用内輪31を24時間連続して回転させることで行い、回転前後の一方向クラッチ30の質量差により、グリース組成物の漏洩率を算出した。そして、グリース組成物の漏洩率が10%以下であったものを「合格 (○)」とし、漏洩率が10%を超えていたものを「不合格 (×)」として、表1に併せて示した。
表1に示すように、No.1〜No.6のグリース組成物を用いた一方向クラッチ30では、No.7〜No.9のグリース組成物を用いた場合と比べて、グリース組成物の漏洩が見られず、且つ、優れた耐焼付き性が得られた。
以上の結果より、長さが1μm以下の繊維状物と長さが5μm以上の繊維状物とを含有するNo.1〜No.6のグリース組成物で一方向クラッチ30を潤滑することにより、グリース組成物の漏洩を抑制できるとともに、一方向クラッチ30に優れた耐焼付き性を付与できることが確認できた。
No.1のグリース組成物を示す電子顕微鏡写真である。 No.7のグリース組成物を示す電子顕微鏡写真である。 No.8のグリース組成物を示す電子顕微鏡写真である。 一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置の一例を示し、(a)は一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置の全体を示す断面図、(b)は一方向クラッチを示す図4(a)のA−A断面図である。
符号の説明
11 スリーブ
11a 外周面
11A 大径部
11B 突部
12 プーリ
12a 内周面
20 転がり軸受
21 内輪
22 外輪
24 保持器
25 シール
30 一方向クラッチ
31 クラッチ用内輪
31a 外周面
31b 凹部
32 クラッチ用外輪
32a 内周面
32b 鍔
33 ローラ
34 クラッチ用保持器
G グリース組成物

Claims (3)

  1. 同心に配置された一対の回転部材の一方を他方に対して所定方向に相対回転させる回転力のみを伝達する一方向クラッチにおいて、
    長さ1μm以下の繊維状物と長さ5μm以上の繊維状物とを含有する増ちょう剤を用いたグリース組成物で潤滑することを特徴とする一方向クラッチ。
  2. 前記増ちょう剤は、ウレア化合物であることを特徴とする請求項1に記載の一方向クラッチ。
  3. 前記ウレア化合物は、下記式(1)で示されるものであることを特徴とする請求項2に記載の一方向クラッチ。
    但し、上記式(1)中のR1は炭素数が6〜20のアルキル基、シクロヘキシル基、又は炭素数が7〜12のアルキルシクロヘキシル基からなり、2つのR1は同一であっても異なっていてもよい。また、上記式(1)中のR2は、炭素数が6〜15の2価の芳香族炭化水素基からなる。
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