JP2002340146A - 一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置 - Google Patents

一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置

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JP2002340146A JP2001147253A JP2001147253A JP2002340146A JP 2002340146 A JP2002340146 A JP 2002340146A JP 2001147253 A JP2001147253 A JP 2001147253A JP 2001147253 A JP2001147253 A JP 2001147253A JP 2002340146 A JP2002340146 A JP 2002340146A
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clutch
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 サポート軸受4、4を構成する各玉17、1
7の転動面及び外輪、内輪各軌道13、15に、剥離、
フレッチング摩耗、錆びを生じにくくする。 【解決手段】 上記各玉17、17を設置した空間内に
封入するグリースとして、上記課題を解決するのに適当
なものを使用する。具体的には、このグリースの添加剤
として、ナフテン酸塩とコハク酸誘導体とから選択され
る少なくとも1種のもの使用し、且つ、この添加剤の添
加量を0.1〜10重量%とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明の一方向クラッチ内蔵
型回転伝達装置は、例えば、オルタネータ等の自動車用
補機の回転軸や、アイドリングストップ車に搭載するエ
ンジンのクランクシャフト及び補機駆動装置の回転軸等
に装着する、プーリ装置等として使用する。
【0002】
【従来の技術】オルタネータ等の補機を駆動する為のプ
ーリ装置として従来から、一方向クラッチ内蔵型回転伝
達装置の1種である、一方向クラッチ内蔵型プーリ装置
を使用する事が一部で行なわれている。図3は、この一
方向クラッチ内蔵型プーリ装置の1例を示している。こ
の一方向クラッチ内蔵型プーリ装置は、互いに同心に配
置した1対の回転部材である、スリーブ1とプーリ2と
を備える。そして、これらスリーブ1の外周面とプーリ
2の内周面との間に、一方向クラッチであるローラクラ
ッチ3と1対のサポート軸受4、4とを設けている。
【0003】上記スリーブ1は、全体を円筒状に形成し
ており、オルタネータ等の補機の回転軸に外嵌固定し
て、この回転軸と共に回転自在である。一方、上記プー
リ2は、やはり全体を円筒状に形成しており、その外周
面の幅方向に関する断面形状を波形として、ポリVベル
トと呼ばれる無端ベルトの一部を掛け渡し自在としてい
る。そして、上記スリーブ1の外周面と上記プーリ2の
内周面との間に存在する円筒状空間の軸方向中間部に上
記ローラクラッチ3を、同じくこの空間の軸方向両端部
でこのローラクラッチ3を軸方向両側から挟む位置に上
記サポート軸受4、4を、それぞれ配置している。
【0004】このうちのローラクラッチ3は、上記プー
リ2が上記スリーブ1に対して所定方向に相対回転する
傾向となる場合にのみ、これらプーリ2とスリーブ1と
の間での回転力の伝達を自在とする。この様なローラク
ラッチ3は、クラッチ用内輪5と、クラッチ用外輪6
と、複数個のローラ7、7と、クラッチ用保持器8と、
図示しないばねとから成る。このうちのクラッチ用内輪
5は上記スリーブ1の中間部外周面に、上記クラッチ用
外輪6は上記プーリ2の中間部内周面に、それぞれ締り
嵌めで嵌合固定している。又、上記クラッチ用外輪6の
中間部内周面を単なる円筒面とすると共に、上記クラッ
チ用内輪5の外周面をカム面9としている。即ち、この
クラッチ用内輪5の外周面に、それぞれがランプ部と呼
ばれる複数の凹部10、10を、円周方向に関し等間隔
に形成して、このクラッチ用内輪5の外周面を上記カム
面9としている。
【0005】そして、このカム面9と上記クラッチ用外
輪6の中間部内周面との間に、上記複数個のローラ7、
7と、これら各ローラ7、7を転動並びに円周方向に関
する若干の変位自在に支持する、上記クラッチ用保持器
8とを設けている。このクラッチ用保持器8は、全体を
合成樹脂により造っており、その内周縁部を上記カム面
9の一部と係合させる事で、上記クラッチ用内輪5に対
する相対回転を阻止している。これと共に、図示の例で
は、上記クラッチ用保持器8の端部内周面に形成した凸
部11を、上記クラッチ用内輪5の軸方向端面と上記ス
リーブ1の外周面に設けた段差面12との間で挟持する
事により、上記クラッチ用保持器8の軸方向に関する位
置決めを図っている。又、上記クラッチ用保持器8と上
記各ローラ7、7との間には、これら各ローラ7、7を
円周方向に関して同方向(上記各凹部10、10が浅く
なる方向)に押圧する為の、図示しないばねを設けてい
る。
【0006】尚、上述の様なローラクラッチ3を構成す
る場合、上記複数個のローラ7、7と当接する円筒面及
びカム面9は、それぞれ前記プーリ2の内周面及び上記
スリーブ1の外周面に直接形成する場合もある。又、上
記円筒面と上記カム面9との径方向に関する配置は、上
述した構造と逆にする場合もある。何れにしても、この
様なローラクラッチ3の構造及び作用に就いては、従来
から周知である為、これ以上の詳しい説明は省略する。
【0007】又、前記1対のサポート軸受4、4は、上
記プーリ2に加わるラジアル荷重を支承しつつ、このプ
ーリ2と上記スリーブ1との相対回転を自在とする。こ
の様な各サポート軸受4、4として、図示の例では、そ
れぞれ深溝型の玉軸受を使用している。即ち、これら各
サポート軸受4、4はそれぞれ、図4にも詳示する様
に、内周面に深溝型の外輪軌道13を有し、上記プーリ
2の両端部に内嵌固定した外輪14と、外周面に深溝型
の内輪軌道15を有し、上記スリーブ1の両端部に外嵌
固定した内輪16と、これら外輪軌道13と内輪軌道1
5との間に保持器19により保持した状態で転動自在に
設けられた複数個の玉17、17とから成る。又、上記
外輪14の内周面と上記内輪16の外周面との間に存在
する、上記各玉17、17を設置した空間の両端開口部
は、それぞれシールリング18、18により塞いでい
る。これにより、上記各玉17、17を設置した空間内
に封入したグリースが外部に漏洩するのを防止すると共
に、この空間内に塵芥等の異物が侵入するのを防止して
いる。
【0008】上述の様に構成する一方向クラッチ内蔵型
プーリ装置は、上記スリーブ1をオルタネータ等の補機
の回転軸の端部に外嵌固定すると共に、上記プーリ2の
外周面に無端ベルトを掛け渡す。この無端ベルトはエン
ジンのクランクシャフト等の端部に固定された駆動プー
リに掛け渡され、この駆動プーリの回転により駆動す
る。この様な状態で組み付けられる一方向クラッチ内蔵
型プーリ装置は、上記無端ベルトの走行速度が一定若し
くは上昇傾向にある場合には、上記プーリ2から上記回
転軸への回転力の伝達を自在とし、反対に上記無端ベル
トの走行速度が低下傾向にある場合には、これらプーリ
2と回転軸との相対回転を自在とする。この結果、上記
クランクシャフトの回転角速度が変動した場合でも、上
記無端ベルトと上記プーリ2とが擦れ合う事を防止し
て、鳴きと呼ばれる異音の発生や摩耗による無端ベルト
の寿命低下を防止すると共に、オルタネータの発電効率
が低下する事を防止できる。
【0009】又、上記一方向クラッチ内蔵型プーリ装置
をエンジンのアイドルストップ時の補機駆動装置に利用
する場合には、この一方向クラッチ内蔵型プーリ装置を
クランクシャフトや電動モータの駆動軸の端部に装着す
る。これにより、これらエンジンと電動モータとのうち
の一方の装置が運転状態にあり、他方の装置が停止状態
にある場合に、この一方の装置の回転軸から上記プーリ
2への回転力の伝達を自在にすると共に、上記他方の装
置の回転軸が回転しない様にする。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】近年、オルタネータの
高性能化・高出力化が益々進んでおり、これに伴って、
オルタネータの回転軸の端部に装着する一方向クラッチ
内蔵型プーリ装置の使用条件が厳しく(回転速度が高
く、負荷荷重、発生する熱及び振動等が大きく)なって
いる。一方、この様に一方向クラッチ内蔵型プーリ装置
の使用条件が厳しくなると、前記各サポート軸受4、4
の回転時(前記ローラクラッチ3のオーバラン時)に、
これら各サポート軸受4、4を構成する各玉17、17
の転動面及び外輪、内輪各軌道13、14に、水素脆性
による白色組織変化を伴った剥離が生じ易くなったり、
更には、上記各サポート軸受4、4の非回転時(上記ロ
ーラクラッチ3のロック時)に、上記各玉17、17の
転動面と上記外輪、内輪各軌道13、14との接触部で
フレッチング摩耗が生じ易くなる可能性がある。この
為、上記各玉17、17を設置した空間内に封入するグ
リースとして、上記剥離やフレッチング摩耗の発生を防
止できるものを使用する事が望まれている。
【0011】一方、上述の様な一方向クラッチ内蔵型プ
ーリ装置を組み付けた補機等は、エンジンルームの下部
に設置される事が多い。この為、自動車の走行中、上記
一方向クラッチ内蔵型プーリ装置に雨水等がかかり易
い。そして、この様な雨水等が上記各サポート軸受4、
4の各玉17、17を設置した空間内に侵入した場合に
は、これら各玉17、17の転動面及び上記外輪、内輪
各軌道13、14が錆び付き易くなる。この為、上記各
玉17、17を設置した空間内に封入するグリースとし
ては、他の個所に使用されるグリースよりも錆び止め性
能に優れたものを使用する必要がある。本発明の一方向
クラッチ内蔵型回転伝達装置は、上述の様な事情に鑑み
て発明したものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の一方向クラッチ
内蔵型回転伝達装置は、前述の図1に示した一方向クラ
ッチ内蔵型プーリ装置と同様、互いに同心に配置した1
対の回転部材と、これら両回転部材の互いに対向する周
面同士の間の軸方向に関して一部に設けられ、これら両
回転部材同士が所定方向に相対回転する傾向となる場合
にのみ、これら両回転部材同士の間で回転力の伝達を自
在とする一方向クラッチと、これら両回転部材の互いに
対向する周面同士の間でこの一方向クラッチに対し軸方
向に外れた部分に設けられ、これら両回転部材同士の間
に加わるラジアル荷重を支承しつつこれら両回転部材同
士の相対回転を自在とする、転がり軸受であるサポート
軸受とを備える。そして、このサポート軸受を構成する
複数個の転動体を設置した空間内にグリースを封入して
いる。特に、本発明の一方向クラッチ内蔵型回転伝達装
置に於いては、上記グリースを構成する添加剤として、
ナフテン酸塩(ナフテン核を有する飽和カルボン酸塩で
あれば特に制約はない)とコハク酸誘導体とから選択さ
れる少なくとも1種のもの使用すると共に、上記グリー
ス中の上記添加剤の割合を0.1〜10重量%(好まし
くは、0.25〜5重量%)としている。
【0013】尚、本発明の場合、上記グリースを構成す
る基油は、特に限定されるものではない。通常、グリー
スの基油として使用される油は、総て使用できる。但
し、上記サポート軸受の低温での起動時に於ける転がり
接触部での異音の発生や、このサポート軸受の高温での
非回転時に於ける、このサポート軸受を構成する各転動
体の転動面と内輪、外輪両軌道との接触部での油膜切れ
を防止する観点から、上記基油として好ましくは、40
℃での動粘度が、10〜400mm2 /sec のもの{より
好ましくは、12〜160mm2 /sec のもの(更に好ま
しくは、40〜150mm2 /sec のもの)}を使用す
る。又、上記グリースを構成する増ちょう剤は、ゲル構
造を形成し、上記基油をゲル構造中に保持する能力があ
れば、特に限定されるものではない。但し、耐熱性、音
響特性を考慮すると、上記増ちょう剤としては、ジウレ
ア化合物を使用する事が好ましい。
【0014】
【作用】上述の様に構成する本発明の一方向クラッチ内
蔵型回転伝達装置によれば、使用条件が厳しい(回転速
度が高く、負荷荷重、発生する熱及び振動等が大きい)
場合でも、サポート軸受を構成する各転動体の転動面及
び各軌道に剥離やフレッチング摩耗を生じにくくでき
る。又、上記各玉を設置した空間内に雨水等が侵入した
場合でも、これら各転動体の転動面及び各軌道を錆び付
きにくくできる。この為、一方向クラッチ内蔵型回転伝
達装置の耐久性の向上を図れる。
【0015】
【実施例】本発明を完成させる過程で行なった実験に就
いて、以下に説明する。実験では、サポート軸受を構成
する各転動体を設置した空間内に封入したグリースの組
成と、このサポート軸受を構成する軌道の耐剥離性(耐
フレッチング性)並びに防錆性との関係に就いて調べ
た。
【0016】実験では、上記サポート軸受として、単列
深溝玉軸受(内径17mm、外径47mm、幅14mm)を使
用した。又、グリースは、以下の表1にその組成を示し
たもの(グリースA〜Eの5種)を使用した。尚、この
表1中、「PAO」とは、ポリαオレフィンである。
【表1】 これら各グリースA〜Eのうち、グリースA〜Dは、添
加剤としてナフテン酸Zn(ナフテン酸塩)とアルケニル
コハク酸ハーフエステル(コハク酸誘導体)とのうちか
ら選択される少なくとも1種のものを使用したものであ
る。これに対し、グリースEは、添加剤としてナフテン
酸塩及びコハク酸誘導体以外のもの(Baスルフォネー
ト)を使用したものである。尚、上記各グリースA〜E
の調整は、ジイソシアネートを混合した基油に、アミン
を混合した基油を反応させ、撹拌加熱して得られた半固
体状物に、予め基油に溶解したアミン系酸化防止剤を加
えて十分攪拌し、更に徐冷後、ナフテン酸Zn(ナフテン
酸塩)、アルケニルコハク酸ハーフエステル(コハク酸
誘導体)、Baスルフォネートを適宜加え、ロールミルを
通す事により行なった。
【0017】 耐剥離性を評価する為の実験 上記各グリースA〜Eを2.36g封入したサポート軸
受を、それぞれオルタネータの回転軸の端部に装着した
一方向クラッチ内蔵型プーリ装置に組み付けた状態で、
この一方向クラッチ内蔵型プーリ装置をエンジンにより
無端ベルトを介して急加減速させる試験を行なう事によ
り、上記サポート軸受を構成する軌道の剥離発生確率を
評価した。試験条件等は、以下の通りである。又、同種
の試料に就いて、それぞれ10個ずつ試験を行なった。 試験環境 : 室温雰囲気下 プーリの負荷荷重 : 1568N(160kgf ) エンジンの運転条件 : 回転速度を1000〜600
0min-1 (サポート軸受の回転速度を2400〜144
00min-1 )の範囲で繰り返し急速に変化させながら運
転 運転時間 : 500時間(但し、サポート軸受の外輪
軌道に剥離が生じる事により振動が発生した時点で停
止) 試験数 : 各グリースA〜E毎に、それぞれ10個ず
つ 剥離発生確率 : {剥離発生数/試験数(=10)}
×100(%)
【0018】上述の様にして行なった実験の結果を、図
1〜2に実線で示す。先ず、図1から明らかな通り、添
加剤としてナフテン酸塩及びコハク酸誘導体以外のもの
(Baスルフォネート)を使用したグリースEは、この添
加剤の添加量(グリース中の添加剤の割合)に拘らず、
剥離発生確率が50%以上と非常に高い。これに対し、
図1及び図2から明らかな通り、添加剤としてナフテン
酸Zn(ナフテン酸塩)とアルケニルコハク酸ハーフエス
テル(コハク酸誘導体)とのうちから選択される少なく
とも1種のものを使用したグリースA〜Dは、この添加
剤の添加量が前記表1に示した範囲では、剥離発生確率
が何れも0%である。
【0019】 防錆性を評価する為の実験 先ず、サポート軸受を構成する各転動体を設置した空間
内に前記各グリースA〜Eを2.3g封入すると共に、
この空間の両端開口部をゴム接触型のシールリングによ
り密閉した状態で、上記サポート軸受を回転速度180
0min-1 で1分間回転させた。その後、上記空間内に、
濃度0.5重量%の塩水を0.5cc注入した状態で、上
記サポート軸受を、回転速度1800min-1 で1分間回
転させた。次いで、上記サポート軸受を、60℃、10
0%RH(相対湿度)の環境下で120時間放置した
後、上記サポート軸受を構成する軌道にどの程度錆が発
生しているかを観察した。
【0020】上述の様にして行なった実験の結果を、図
1〜2に破線で示す。又、この実験の結果で示した「錆
評価点」の評価基準を、以下の表2に示す。
【表2】 尚、この様な評価基準による錆評価点は、「2」以下で
あれば防錆性が良好であると認められる。図1及び図2
から明らかな通り、上述の耐剥離性に関する実験で優秀
な結果が得られたグリースA〜Dは、添加剤の添加量が
0.1重量%以上であれば、上記錆評価点が「2」以
下、即ち、防錆性が良好になる事が分かる。
【0021】上述した様な各実験の結果から、サポート
軸受を構成する各転動体の転動面及び軌道の耐剥離性、
耐フレッチング性、及び防錆性を良好にする為には、上
記各転動体を設置した空間内に封入するグリースの添加
剤として、ナフテン酸塩とコハク酸誘導体とから選択さ
れる少なくとも1種のもの使用すると共に、この添加剤
の添加量を0.1重量%以上にすれば良い事が分かる。
一方、上述の様な添加剤の添加量が10重量%よりも多
くなると、グリースが軟化してグリース漏れを発生させ
易くなる為、好ましくない。従って、上記添加剤の添加
量は、0.1〜10重量%とすれば良い。尚、防錆性の
確保と、グリース漏れによる焼き付き防止とを、それぞ
れより十分に図る為には、上記添加剤の添加量を0.2
5〜5重量%の範囲に収める事が好ましい。
【0022】次に、本発明を実施する場合に好ましく採
用できる、サポート軸受4の仕様に就いて、前述した図
4を参照しつつ説明する。先ず、このサポート軸受4を
構成する各玉17の直径をDとした場合に、外輪軌道1
3及び内輪軌道15の断面形状の曲率半径Rは、好まし
くは(0.50〜0.54)Dの範囲に、より好ましく
は(0.51〜0.53)Dの範囲に規制する。この理
由は、この様な規制を行なえば、上記各玉17の転動面
と上記各軌道13、15との転がり接触部にグリースを
取り込み易くでき、この転がり接触部で発生する熱を十
分に抑える事ができる為である。
【0023】又、上記各玉17を保持する為の保持器1
9として金属製の保持器を使用する場合には、1対の素
子をリベットにより結合した波形プレス保持器を使用す
るのが好ましい。この理由は、上記1対の素子同士をか
しめ部により結合した構造の場合の様に、運転時に大き
な遠心力が作用した場合にもかしめ部が開く事がない様
にして、上記ポケット20の開口部が広がらない様にす
る為である。
【0024】又、上記保持器19として合成樹脂製の保
持器を使用する場合には、この合成樹脂{ポリアミド4
6、ポリアミド66、ポリフェニレンサルファイド(P
PS)等}に対するガラス繊維の添加量{0〜35重量
%程度(好ましくは20〜30重量%程度)}を調整
し、上記保持器19の強度を十分に確保する。この理由
は、運転時に大きな遠心力及び熱が作用した場合でも、
ポケット20の開口部が広がらない様にして、上記保持
器19が径方向外方に変位又は変形するのを防止する為
である。
【0025】尚、上記保持器19を金属製とする場合に
は、この保持器19と上記各玉17とが摺接する事によ
り金属摩耗粉が発生し、上記サポート軸受4の寿命低下
につながる可能性があるが、上記保持器19を合成樹脂
製とする場合には、この様な不都合が生じない為、上記
サポート軸受4の寿命を長くする事ができる。
【0026】又、上記各玉17を設置した空間の開口部
を塞ぐシールリング18を構成する弾性材21として
は、使用する温度条件にもよるが、ニトリルブタジエン
ゴム(NBR)を好ましく使用でき、更に高温になれ
ば、アクリルゴムや弗素ゴム等を好ましく使用できる。
又、上記弾性材21の先端縁(図示の例では内周縁)
は、全周に亙り内輪16の外周面に摺接させて、外部か
ら上記各玉17を設置した空間内に塵芥や雨水等の異物
を侵入しにくくする。又、上記シールリング18は、上
記各玉17を設置した空間の両端開口部のうち、一方向
クラッチ内蔵型回転伝達装置の外部空間と対向する側の
開口部にのみ設ける事もできる。
【0027】
【発明の効果】本発明の一方向クラッチ内蔵型回転伝達
装置は、以上に述べた通り構成され作用する為、使用条
件が厳しい場合でも、サポート軸受を構成する各転動体
の転動面及び内輪及び外輪の軌道面に剥離やフレッチン
グ摩耗を生じにくくできる。又、これら各転動体を設置
した空間内に雨水等が侵入した場合でも、これら各転動
体の転動面及び各軌道面を錆びにくくできる。この為、
耐久性の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を完成させる過程で行なった実験の結果
を示すグラフ。
【図2】別の試料に関する図1と同様の図。
【図3】従来構造の1例を示す断面図。
【図4】サポート軸受の部分拡大断面図。
【符号の説明】
1 スリーブ 2 プーリ 3 ローラクラッチ 4 サポート軸受 5 クラッチ用内輪 6 クラッチ用外輪 7 ローラ 8 クラッチ用保持器 9 カム面 10 凹部 11 凸部 12 段差面 13 外輪軌道 14 外輪 15 内輪軌道 16 内輪 17 玉 18 シールリング 19 保持器 20 ポケット 21 弾性材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16D 41/06 F16D 41/06 Z // C10N 10:04 C10N 10:04 30:00 30:00 Z 30:12 30:12 40:02 40:02 50:10 50:10 Fターム(参考) 3J031 BA08 BA19 CA03 3J101 AA02 AA32 AA42 AA52 AA62 AA81 CA12 EA63 FA08 FA32 FA35 GA01 GA16 GA24 4H104 BB26 BB35 BD07 FA02 LA06 LA20 PA01 QA18

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 互いに同心に配置した1対の回転部材
    と、これら両回転部材の互いに対向する周面同士の間の
    軸方向に関して一部に設けられ、これら両回転部材同士
    が所定方向に相対回転する傾向となる場合にのみ、これ
    ら両回転部材同士の間で回転力の伝達を自在とする一方
    向クラッチと、これら両回転部材の互いに対向する周面
    同士の間でこの一方向クラッチに対し軸方向に外れた部
    分に設けられ、これら両回転部材同士の間に加わるラジ
    アル荷重を支承しつつこれら両回転部材同士の相対回転
    を自在とする、転がり軸受であるサポート軸受とを備
    え、このサポート軸受を構成する複数個の転動体を設置
    した空間内にグリースを封入している一方向クラッチ内
    蔵型回転伝達装置に於いて、このグリースを構成する添
    加剤として、ナフテン酸塩とコハク酸誘導体とから選択
    される少なくとも1種のもの使用すると共に、上記グリ
    ース中の上記添加剤の割合を0.1〜10重量%とした
    事を特徴とする一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置。
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