JP4122898B2 - 自動車の電装補機用転がり軸受とオルタネータ - Google Patents

自動車の電装補機用転がり軸受とオルタネータ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明の転がり軸受は、自動車用オルタネータのプーリ等の自動車の電装補機の回転部材を、回転自在に支持する為の自動車の電装補機用転がり軸受の耐久性確保を図るものである。特に本発明の自動車の電装補機用転がり軸受は、アルミニウム合金製の様な剛性の低いハウジングに固定する場合でも、内輪軌道及び外輪軌道と各転動体の転動面との転がり接触部に早期剥離が生じる事を防止するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の駆動用エンジンを駆動源とした各種補機は、ハウジングに対し回転軸を回転自在に支持すると共に、この回転軸の一端部で上記ハウジング外に突出した部分に、従動プーリを固定している。そして、この従動プーリに、無端ベルトを介してエンジンのクランクシャフトの回転を伝達する事により、各種補機を駆動自在としている。図5は、この様な各種補機のうち、自動車に必要な発電を行なうオルタネータの1例を示している。このオルタネータ1は、アルミニウム合金等の軽量金属により造られたハウジング2の内側に回転軸3を、1対の転がり軸受4、4により回転自在に支持している。これら各転がり軸受4、4は、外周面に内輪軌道5を形成した内輪6と、内周面に外輪軌道7を形成した外輪8と、これら内輪軌道5と外輪軌道7との間に転動自在に配置した、それぞれが転動体である複数個の玉9、9とを備える。
【0003】
又、上記回転軸3の中間部には、ロータ10と整流子11とを設けている。又、この回転軸3の一端部で上記ハウジング2外に突出した部分には、従動プーリ12を固定している。上記ハウジング2を図示しないエンジンに固定した状態で、上記従動プーリ12に図示しない無端ベルトを掛け渡し、この無端ベルトを介して、上記エンジンのクランクシャフトの回転を上記回転軸3に伝達自在としている。又、上記ハウジング2の内側で上記ロータ10の周囲に存在する部分には、ステータ13を固定している。この様に構成するオルタネータ1は、上記エンジンの回転により、上記ロータ10を設けた回転軸3を回転させ、このロータ10と対向する上記ステータ13に電流を生じさせる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述の様に構成するオルタネータ1の場合、使用時に、各転がり軸受4、4を構成する内輪6、6が回転しつつ、無端ベルトの張力に基づいて、これら各内輪6、6に常に同一方向のラジアル荷重が付与される。そして、この様なラジアル荷重が各玉9、9を介して外輪8に加わると、この外輪8を固定したハウジング2の剛性が低い場合に、このハウジング2と共に上記外輪8が弾性変形する可能性がある。この様な外輪8の弾性変形は、この外輪8に早期剥離等の損傷を生じる原因と考えられている。
【0005】
即ち、上記ラジアル荷重に基づいて上記ハウジング2と共にこの外輪8が弾性変形すると、このラジアル荷重が上記外輪8に偏荷重として加わると共に、この外輪8が振動し易くなると考えられている。この様な偏荷重並びに振動は、内輪軌道5及び外輪軌道7と各玉9、9の転動面との転がり接触部にグリースや潤滑油等の潤滑剤の油膜を形成しにくくする。又、上記潤滑剤に水分が含まれていたり、外部から水分が侵入したりすると、やはり上記転がり接触部に油膜が形成されにくくなる可能性がある。そして、この様に転がり接触部に油膜が形成されにくくなると、上記内輪軌道5及び外輪軌道7と上記各玉9、9の転動面とが金属接触し易くなり、上記内輪軌道5及び外輪軌道7や各玉9、9の転動面に早期剥離が生じる可能性がある。
【0006】
この様な早期剥離を防止すべく、例えば特開2001−221238号公報には、外輪の材料成分を規制する事により、又、特開平5−98280号公報には、グリースの材料成分を規制する事により、それぞれ早期剥離を防止する発明が記載されている。ところが、オルタネータや電磁クラッチ等の自動車用補機(電装部品=自動車の電装補機)に組み込まれる転がり軸受の場合には、近年の技術革新に伴うエンジンの高性能化による高温化、高速化、及び、ベルトの張力増大に伴う高荷重化等の影響で、使用条件が一段と厳しくなっている。この為、転がり軸受や潤滑剤を構成する成分を規制するのみでは、こうした使用条件の変化に対応しきれず、早期剥離による寿命低下が生じる可能性が出てきた。
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、早期剥離を有効に抑えられる構造を実現すべく発明したものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の自動車の電装補機用転がり軸受は、前述した従来から知られている転がり軸受と同様に、外周面に内輪軌道を形成した内輪と、内周面に外輪軌道を形成した外輪と、これら内輪軌道と外輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを備える。又、上記外輪をハウジングに内嵌支持し、上記内輪を回転軸に外嵌支持して、この回転軸を上記ハウジングに回転自在に支持する。
【0008】
特に、本発明の自動車の電装補機用転がり軸受に於いては、上記ハウジングがアルミニウム合金製である。又、転がり接触部をグリースにより潤滑するものである。又、上記外輪の外径をDとし、この外輪の軸方向に関する幅をWとし、この外輪の軸方向中央部で上記外輪軌道を設けた部分の最小肉厚をhとし、上記各転動体の直径をDaとした場合に、1.20≦{(h1.5 ・W)/(Da1.1 ・D0.5 )}≦2.00を満たす。
【0009】
【作用】
上述の様に構成する本発明の自動車の電装補機用転がり軸受によれば、剛性の低いアルミニウム合金製のハウジングに外輪を固定する場合でも、この外輪延いては転がり軸受を徒に大型化する事なく、この外輪の剛性を十分に確保して、この外輪の弾性変形に基づく早期剥離を防止できる。
即ち、上記ハウジングの剛性が低いと、上記外輪はこのハウジングと共に無視できない程に弾性変形して負荷圏が狭くなる。即ち、この外輪が荷重の加わる部分を中心に径方向外側に広がる様に弾性変形して、広がった部分が荷重を支承しなくなる為、上記荷重が加わる部分に荷重が集中する傾向となる。そして、この様に荷重が集中する部分に上記各転動体が非負荷圏から突入すると、これら各転動体に急激に拘束力が加わり(拘束される程度が著しくなり)、これら各転動体の転動面と外輪軌道及び内輪軌道とで著しい滑りを生じ易くなる。そして、この滑りに伴って、これら各転動体の転動面と内輪軌道及び外輪軌道との転がり接触部に形成されていたグリースの油膜が破断し易くなり、これら各転動体の転動面と内輪軌道及び外輪軌道とが金属接触し易くなる。又、上記各転動体が負荷圏から飛び出す場合にも、大きな拘束力から急に開放される為、同様に滑りが生じ、この滑りに伴って金属接触が生じ易くなる。そして、この様な金属接触に基づいて、上記各転動体の転動面と内輪軌道及び外輪軌道との転がり接触部に早期剥離が生じ易くなる。尚、上記ハウジングの剛性が低い場合には、負荷圏に存在する(通過する)各転動体からの荷重に基づいて、上記外輪軌道も(円周方向に関する溝形状が径方向に波打つ様に)弾性変形し易くなる。そして、この様な軌道面の弾性変形によっても上記滑りが生じ易くなり、早期剥離を加速する可能性がある。
【0010】
そこで、上記外輪の肉厚h及び幅Wの適正化を図る事により、前述の様に1.20≦{(h1.5 ・W)/(Da1.1 ・D0.5 )}≦2.00に規制し、この外輪を弾性変形しにくくして、上述の様な機構により生じる早期剥離を防止する。尚、上記式{(h1.5 ・W)/(Da1.1 ・D0.5 )}で計算される値(以下「K」とする)が1.20未満の場合には、上記外輪の剛性が低くなり過ぎて、この外輪を剛性の低いアルミニウム合金製のハウジングに固定した場合に、この外輪が弾性変形し易くなり、上述の様な剥離が早期に生じる可能性がある。一方、上記Kが2.00を超える場合には、上記外輪の剛性が大きくなり過ぎて、転がり軸受に転動体を組み付ける際に、この外輪が弾性変形領域を超えて塑性変形したり、この外輪に損傷が生じたりする可能性がある。
又、本発明の場合、上記外輪の肉厚h及び幅Wの適正化を図りこの外輪を弾性変形しにくくする事で、上述の様な早期剥離と共に外輪のクリープ現象も防止できる。即ち、この外輪の剛性を確保する事により、この外輪とハウジングとの間の局部的な面圧の増大を抑えられ、この局部的な面圧の増大に起因して生じる外輪のクリープを防止できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の形態の1例を示している。深溝型玉軸受である、本例の転がり軸受4aは、外周面に内輪軌道5を形成した、回転輪である内輪6と、内周面に外輪軌道7を形成した、固定輪である外輪8と、これら内輪軌道5と外輪軌道7との間に転動自在に設けた、それぞれが転動体である複数個の玉9とを備える。又、上記外輪8の内周面と内輪6の外周面との間で複数個の玉9を設置した部分の両端開口部に、シールリング14を設けている。又、本例の場合、転がり接触部をグリースにより潤滑する。
【0012】
特に、本例の転がり軸受4aの場合には、上記外輪8は、アルミニウム合金製のハウジングに固定される。又、この外輪8の外径をDとし、この外輪8の軸方向に関する幅をWとし、この外輪8の軸方向中央部で上記外輪軌道7を設けた部分の最小肉厚をhとし、上記各玉9の直径をDaとした場合に、{(h1.5 ・W)/(Da1.1 ・D0.5 )}で計算される値Kが、1.20≦K≦2.00を満たす様に、各寸法を規制している。
【0013】
上述の様に構成する本例の転がり軸受4aによれば、剛性の低いアルミニウム合金製のハウジングに外輪8を固定する場合でも、この外輪8延いては転がり軸受4aを徒に大型化する事なく、この外輪8の剛性を十分に確保して、この外輪8の弾性変形に基づく早期剥離を防止できる。
即ち、上記ハウジングの剛性が低いと、上記外輪8はこのハウジングと共に無視できない程に弾性変形し、この様な弾性変形に起因して早期剥離が生じる事が、本発明者の研究により分かった。具体的には、この外輪8を固定するハウジングの剛性が大きい場合には、転がり軸受に荷重が加わると、各玉9、9からの荷重分布が図2に矢印で示す様になる。一方、このハウジングの剛性が低い場合には、同じく各玉9、9からの荷重分布が図3に矢印で示す様になる。これら図2、3から明らかな様に、上記ハウジングの剛性が大きい場合には、上記外輪8に多くの玉9、9から平均的に荷重が加わる(負荷圏が広い)のに対して、上記ハウジングの剛性が低い場合には、少ない玉9、9に荷重が集中した状態で上記外輪8に加わる(負荷圏が狭くなる)事なる。即ち、上記外輪8が荷重の加わる部分(ラジアル荷重負荷圏最下点)を中心に径方向外側に広がる様に弾性変形してこの広がった部分が荷重を支承しなくなるので、上記荷重の加わる部分に荷重が集中する傾向なる。そして、この様に荷重が集中する部分に上記各玉9、9が非負荷圏から突入すると、これら各玉9、9に急激に拘束力が加わり(拘束される程度が著しくなり)、これら各玉9、9の転動面と上記外輪軌道7及び内輪軌道5とで著しい滑りを生じ易くなる。
【0014】
そして、この滑りに伴って、これら各玉9、9の転動面と内輪軌道5及び外輪軌道7との転がり接触部に形成されていたグリースの油膜が破断し易くなり、これら各玉9、9の転動面と内輪軌道5及び外輪軌道7とが金属接触し易くなる。又、上記各玉9、9が負荷圏から飛び出す場合にも、大きな拘束力から急に開放される為、同様に滑りが生じ、この滑り伴って金属接触が生じ易くなる。そして、この様な金属接触に基づいて、上記各玉9、9の転動面と内輪軌道5及び外輪軌道7との転がり接触部に早期剥離が生じ易くなる。尚、上記ハウジングの剛性が低い場合には、負荷圏に存在する(通過する)各玉9、9からの荷重に基づいて、上記外輪軌道7が(円周方向に関する溝形状が径方向に波打つ様に)弾性変形し易くなる。そして、この様な軌道面の弾性変形によっても上述の様な滑りが生じ易くなり、早期剥離を加速する可能性もある。又、上記金属接触は、高振動、高温、潤滑油に含まれる水分や結露等による水分の混入が多い程発生し易くなる。
【0015】
そこで、上記外輪8の肉厚h及び幅Wの適正化を図る事により、前述の様に{(h1.5 ・W)/(Da1.1 ・D0.5 )}で計算される値Kを、1.20≦K≦2.00の範囲内に規制し、上記外輪8を弾性変形しにくくして、上述の様な機構により生じる早期剥離を防止している。即ち、負荷圏の両端部で上記各玉9、9を拘束したり、拘束を解除したりするのを比較的緩徐に行なわせて、上記早期剥離を防止している。尚、上記Kが1.20未満の場合には、上記外輪8の剛性が低くなり過ぎて、この外輪8を剛性の低いアルミニウム合金製のハウジングに固定した場合に、この外輪8が弾性変形し易くなって、上述の様な剥離が早期に生じる可能性がある。一方、上記Kが2.00を超える場合には、上記外輪8の剛性が大きくなり過ぎて、転がり軸受4aに上記各玉9を組み付ける際に、この外輪8が弾性変形領域を超えて塑性変形したり、この外輪8に損傷が生じたりする可能性がある。
【0016】
又、本発明者は、転がり軸受4aの回転抵抗に基づいて上記外輪8が上記内輪6の回転方向と同方向に回転する、外輪のクリープ現象にも着目した。そして、上述の様に外輪8の肉厚h及び幅Wの適正化を図りこの外輪8を弾性変形しにくくする事で、上述の様な早期剥離と共に外輪のクリープ現象も防止できる事が分かった。即ち、外輪8の剛性を確保する事により、上記外輪8とハウジングとの間の局部的な面圧の増大を抑えられ、この局部的な面圧の増大に起因して生じる外輪のクリープを防止できる事が分かった。
【0017】
【実施例】
次に、本発明の効果を確認する為に行なった実験に就いて説明する。実験は、下記の表1及び表2にそれぞれ示す試料に就いて、それぞれの耐久性を測定した。尚、これら表1及び表2中、本発明の技術的範囲に属する試料を実施例1〜3とし、本発明の技術的範囲からは外れる試料を、比較例1〜4としている。又、表2には、本発明に関係する参考例1〜3の試料を示している。又、下記の表1に示す各試料は、JIS名番6204(内径d=20mm、外径D=47mm、幅W=14mm、玉径Da=7.937mm、外輪の最小肉厚h=2.781mm)の標準軸受鋼2種(SUJ2)の深溝型玉軸受を基(ベース)にし、同じく表2に示す各試料は、JIS名番6207(内径d=35mm、外径D=72mm、幅W=17mm、玉径Da=11.112mm、外輪の最小肉厚h=3.694)の標準軸受鋼2種(SUJ2)の深溝型玉軸受を基にし、それぞれの外輪の外径Dを変える事により、{(h1.5 ・W)/(Da1.1 ・D0.5 )}で計算されるKの値を調整した。
【0018】
【表1】
Figure 0004122898
【0019】
【表2】
Figure 0004122898
【0020】
そして、これら各表1、2に記載した各寸法の転がり軸受を、次述する条件の下で、目標時間をそれぞれ500時間(表1の場合)、710時間(表2の場合)とする耐久試験を行ない、剥離が発生するまでの時間を調べた。尚、目標時間をこの様に設定した理由は、本実験条件の場合のL10寿命(定格疲れ寿命)がそれぞれ494時間(表1の場合)、705時間(表2の場合)となる為である。又、今回行なった実験では、外輪をハウジングに固定すると共に、内輪を回転させる、内輪回転とした。又、表1の試料の場合には、外輪の内周面と内輪の外周面との間で複数個の玉を設置した部分の両端開口部にシールリングを設けると共に、グリースによる潤滑とした。又、表2の試料の場合には、シールリングを設けずに複数個の玉を設置した部分の両端開口部を開放すると共に、この部分に潤滑油を流通させる事による強制潤滑とした。
実験条件は次の通りである。
【0021】
▲1▼ 表1の試料の場合
試料個数 : 各試料毎に5個
内部隙間 : C3
内輪軌道及び外輪軌道の曲率半径 : 玉の直径の52%
荷重 : P(軸受荷重)/C(動定格荷重)=0.15
内輪の回転速度 : 10000min-1
潤滑剤 : EA2グリース、封入量35%
雰囲気温度 : 100℃
水の混入 : グリース中にこのグリースの1重量%の割合で混入
【0022】
▲2▼ 表2の試料の場合
試料個数 : 各試料毎に5個
内部隙間 : C3
内輪軌道及び外輪軌道の曲率半径 : 玉の直径の52%
荷重 : P(軸受荷重)/C(動定格荷重)=0.15
内輪の回転速度 : 7000min-1
潤滑剤 :ATFフルード{40℃での動粘度=35mm2/sec =35×10-6m2/s (35cSt )、100℃での粘度=7mm2/sec =7×10-6m2/s (7cSt )}
油温 : 100℃
水の混入 : 潤滑油3L中に1重量%の割合(30cc)で混入
【0023】
上述の様な条件で行なった実験の結果から、次の事が分かる。
先ず、上記表1に関しては、標準の外輪の外径であり、本発明の技術的範囲からは外れる比較例1(D=47mm、k=0.97)の場合、総ての試料が計算寿命(L10寿命)の494時間に至らず、早期剥離が発生した。一方、本発明の技術的範囲に属する実施例1〜3の場合は、大部分(15個中14個)が計算寿命を満足した。尚、外輪の外径Dが49mmを越えるものに関しても、早期剥離を防止できる事を確認しているが、この外輪の外径Dが51mm(K=2.10)、即ち、Kが2.00を超える場合には、転がり軸受に玉を組み込む際に外輪が塑性変形してしまう為、好ましくない。
【0024】
又、上記表2に関しても、標準の外輪の外径であり、本発明の技術的範囲からは外れる比較例3(D=72mm、k=1.01)の場合、総ての試料が計算寿命(L10寿命)の705時間に至らず、早期剥離が発生した。一方、本発明に関係する参考例1〜3の場合は、大部分(15個中14個)が計算寿命を満足した。尚、外輪の外径Dが74mmを越えるものに関しても、早期剥離を防止できる事を確認しているが、この外輪の外径Dが77mm(K=2.11)、即ち、Kが2.00を超える場合には、転がり軸受に玉を組み込む際に外輪が塑性変形してしまう為、好ましくない。
【0025】
図4に、転がり軸受の寿命とKの値との関係を示す。この図4からも明らかな様に、剛性の低いアルミニウム合金製のハウジングに外輪を固定する場合でも、Kを1.20〜2.00に規制する事によりこの外輪を弾性変形しにくくし、寿命を十分に確保できる。
【0026】
【発明の効果】
本発明は、以上に述べた通り構成され作用するので、剛性の低いアルミニウム合金製のハウジングに外輪を固定する場合でも、この外輪を徒に大型化する事なく、早期剥離が生じる事を防止する。特にオルタネータ等の自動車の電装補機の様に、プーリ等の回転部材を設けた回転軸を上述の様な、アルミニウム合金により造られた剛性の低いハウジングに支持する場合に好適であり、この様なオルタネータ等の自動車の電装補機の耐久性、信頼性の向上に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の1例を示す部分断面図。
【図2】ハウジングの剛性が高い場合に転動体を介して外輪に加わる荷重を模式的に示す図。
【図3】ハウジングの剛性が低い場合に転動体を介して外輪に加わる荷重を模式的に示す図。
【図4】効果を確認する為に行なった実験結果を示す線図。
【図5】従来から知られているオルタネータの1例を示す略断面図。
【符号の説明】
1 オルタネータ
2 ハウジング
3 回転軸
4 転がり軸受
5 内輪軌道
6 内輪
7 外輪軌道
8 外輪
9 玉
10 ロータ
11 整流子
12 従動プーリ
13 ステータ
14 シールリング

Claims (2)

  1. 外周面に内輪軌道を形成した内輪と、内周面に外輪軌道を形成した外輪と、これら内輪軌道と外輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを備え、上記外輪をハウジングに内嵌支持し、上記内輪を回転軸に外嵌支持して、この回転軸を上記ハウジングに回転自在に支持する自動車の電装補機用転がり軸受に於いて、上記ハウジングがアルミニウム合金製であり、転がり接触部をグリースにより潤滑するものであり、上記外輪の外径をDとし、この外輪の軸方向に関する幅をWとし、この外輪の軸方向中央部で上記外輪軌道を設けた部分の最小肉厚をhとし、上記各転動体の直径をDaとした場合に、1.20≦{(h1.5 ・W)/(Da1.1 ・D0.5 )}≦2.00を満たす事を特徴とする自動車の電装補機用転がり軸受。
  2. 回転部材を設けた回転軸をハウジングに対し、転がり軸受により回転自在に支持するオルタネータに於いて、この転がり軸受が請求項1に記載した自動車の電装補機用転がり軸受であるオルタネータ。
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