JP2002130433A

JP2002130433A - 一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置

Info

Publication number: JP2002130433A
Application number: JP2000320242A
Authority: JP
Inventors: Takeo Okuma; 健夫大熊
Original assignee: NSK Ltd
Current assignee: NSK Ltd
Priority date: 2000-10-20
Filing date: 2000-10-20
Publication date: 2002-05-09

Abstract

(57)【要約】【課題】一方向クラッチ１０ａのロック性能と各部の
耐久性向上とを図る。【解決手段】この一方向クラッチ１０ａ内に、滑り摩
擦に適したグリースを封入する。これに対して、この一
方向クラッチ１０ａの両側に設けたサポート軸受９ａ、
９ａ内に、転がり摩擦に適したグリースを封入する。運
転時に於ける各部の挙動に適したグリースを使用する事
により、上記課題を解決する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明の一方向クラッチ内蔵
型プーリ装置は、例えば自動車用の発電機であるオルタ
ネータの回転軸の端部に固定し、エンジンのクランクシ
ャフトの端部に固定した駆動プーリとの間に無端ベルト
を掛け渡す事により、上記オルタネータを駆動する為に
利用する。

【０００２】

【従来の技術】自動車の走行用エンジンを駆動源とし
て、自動車に必要な発電を行なうオルタネータの構造
が、例えば特開平７−１３９５５０号公報に記載されて
いる。図２は、この公報に記載されたオルタネータ１を
示している。ハウジング２の内側に回転軸３を、１対の
転がり軸受４、４により、回転自在に支持している。こ
の回転軸３の中間部には、ロータ５と整流子６とを設け
ている。又、この回転軸３の一端部（図２の右端部）で
上記ハウジング２外に突出した部分には、プーリ７を固
定している。エンジンへの組み付け状態では、このプー
リ７に無端ベルトを掛け渡し、エンジンのクランクシャ
フトにより、上記回転軸３を回転駆動自在とする。

【０００３】上記プーリ７として従来一般的には、単に
上記回転軸３に固定しただけのものを使用していた。こ
れに対して近年、無端ベルトの走行速度が一定若しくは
上昇傾向にある場合には、無端ベルトから回転軸への動
力の伝達を自在とし、無端ベルトの走行速度が低下傾向
にある場合には、プーリと回転軸との相対回転を自在と
する、オルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置
が各種提案され、一部で使用されている。例えば、特開
昭５６−１０１３５３号公報、同８−２２６４６２号公
報、同９−２２９０９７号公報、同１１−２２７５３号
公報、同１１−１５９５９９号公報、特公平７−７２５
８５号公報、フランス特許公報ＦＲ２７２６０５９Ａ１
等に、上述の様な機能を有するオルタネータ用一方向ク
ラッチ内蔵型プーリ装置が記載されている。又、一部で
はこの様なオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ
装置が、実際に使用されている。

【０００４】図３は、このうちの特開平１１−２２７５
３号公報に記載されているオルタネータ用一方向クラッ
チ内蔵型プーリ装置を示している。このオルタネータ用
一方向クラッチ内蔵型プーリ装置は、オルタネータ１の
回転軸３（図２）の先端部に外嵌固定自在なスリーブ８
を有する。そして、このスリーブ８の周囲にプーリ７ａ
を、このスリーブ８と同心に配置している。そして、こ
れらスリーブ８の外周面とプーリ７ａの内周面との間
に、１対のサポート軸受９、９と一方向クラッチ１０と
を設けている。このうちのサポート軸受９、９は、転が
り軸受の一種である玉軸受であって、上記プーリ７ａに
加わるラジアル荷重を支承しつつ、上記スリーブ８とプ
ーリ７ａとの相対回転を自在とする。又、上記一方向ク
ラッチ１０は、上記プーリ７ａが上記スリーブ８に対し
て所定方向に相対回転する傾向となる場合にのみ、この
プーリ７ａから上記スリーブ８への回転力の伝達を自在
とする。

【０００５】上記一方向クラッチ１０を構成し、上記ス
リーブ８の軸方向中間部に外嵌固定した一方向クラッチ
用内輪１１の外周面には、ランプ部と呼ばれる複数の凹
部１２を、円周方向に関して等間隔に形成し、上記外周
面をカム面１３としている。これに対して、上記プーリ
７ａの内周面には、外輪１４を内嵌固定している。この
外輪１４の軸方向中間部が、上記一方向クラッチ１０を
構成する一方向クラッチ用外輪としての役目を果たす。
この為に、上記外輪１４の軸方向中間部の内周面は、単
なる円筒面としている。又、これら外輪１４の軸方向中
間部及び一方向クラッチ用内輪１１と共に上記一方向ク
ラッチ１０を構成する複数本のローラ１５は、クラッチ
用保持器１６に転動及び円周方向に関しての若干の変位
自在に支持している。そして、このクラッチ用保持器１
６に設けた柱部と上記各ローラ１５との間にばねを設け
ている。これら各ばねは上記各ローラ１５を、上記カム
面１３の外周面と上記外輪１４の軸方向中間部内周面と
の間に形成される円筒状隙間のうち、直径方向に関する
幅が狭くなった部分に向け、弾性的に押圧している。

【０００６】一方、上記プーリ７ａの内周面に内嵌固定
した外輪１４の軸方向両端寄り部分の内周面と上記スリ
ーブ８の軸方向両端寄り部分外周面とに、前記各サポー
ト軸受９、９を構成する、軸受用外輪１８と軸受用内輪
１９とを、それぞれ嵌合固定している。そして、上記各
軸受用外輪１８の内周面に形成した外輪軌道２０と、上
記各軸受用内輪１９の外周面に形成した内輪軌道２１と
の間に、複数の転動体（玉）２２を転動自在に設けてい
る。又、上記クラッチ用保持器１６の軸方向一端部（図
３の右端部）内周面の円周方向一部に、内径側に突出す
る係止突部１７を形成している。そして、上記一方向ク
ラッチ用内輪１１の端面と、一方（図３の右方）のサポ
ート軸受９を構成する軸受用内輪１９の端面との間で、
上記係止突部１７を挟持している。

【０００７】上述の様なオルタネータ用一方向クラッチ
内蔵型プーリ装置を使用する第一の理由は、上記プーリ
７ａに掛け渡した無端ベルト２３の耐久性を確保する為
である。即ち、前記走行用エンジンのクランクシャフト
には爆発に同期した回転速度の変動があるが、この走行
用エンジンがディーゼルエンジン或は直噴式のガソリン
エンジンの場合、アイドリング時等、低回転時にはクラ
ンクシャフトの回転角速度の変動が特に大きくなる。こ
の結果、上記クランクシャフトの端部に固定した駆動プ
ーリに掛け渡した上記無端ベルト２３の走行速度も細か
く変動する事になる。

【０００８】一方、この無端ベルト２３によりプーリ７
ａを介して回転駆動されるオルタネータ１の回転軸３
は、この回転軸３並びにこの回転軸３に固定したロータ
５及び整流子６（図２）等の慣性質量に基づき、それ程
急激には変動しない。従って、上記プーリ７ａを回転軸
３に対し単に固定しただけの場合には、ベルトの走行速
度低下時に上記回転軸３の回転速度がそのまま低下す
る。そして、クランクシャフトの回転角速度の変動に伴
い、上記無端ベルト２３とプーリ７ａとが両方向に擦れ
合う傾向となる。この結果、このプーリ７ａと擦れ合う
無端ベルト２３に、繰り返し異なる方向の応力が作用し
て、この無端ベルト２３とプーリ７ａとの間に滑りが発
生し易くなったり、或はこの無端ベルト２３の寿命が短
くなったりする原因となる。

【０００９】又、上述の様な、プーリ７ａの外周面と無
端ベルト２３の内周面との摩擦に基づく無端ベルト２３
の寿命低下は、走行時に加減速を繰り返す事によっても
生じる。即ち、加速時には無端ベルト２３側からプーリ
７ａ側に駆動力が伝達されるのに対し、減速時には上述
の様に慣性に基づいて回転し続けようとするプーリ７ａ
に、上記無端ベルト２３側から制動力が作用する。この
制動力に基づいて発電効率が低下するだけでなく、この
制動力と上記駆動力とは、上記無端ベルト２３の内周面
に対し逆方向の摩擦力として作用するので、やはりこの
無端ベルト２３の寿命低下の原因となる。特に、トラッ
クの様に排気ブレーキを備えた車両の場合には、アクセ
ルオフ時に於けるクランクシャフトの回転低下の減速度
が著しく、上記制動力に基づいて上記無端ベルト２３の
内周面に加わる摩擦力が大きくなる結果、上記無端ベル
ト２３の寿命の低下が著しい。

【００１０】そこで、上述の様なプーリ７ａとして、前
記オルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置を使
用する。これにより、上記無端ベルト２３の走行速度が
一定若しくは上昇傾向にある場合には、一方向クラッチ
１０を構成する各ローラ１５が、一方向クラッチ用内輪
１１の外周面と外輪１４の軸方向中間部内周面との間に
形成される円筒状隙間の寸法のうち、直径方向に関する
幅が狭くなった部分に食い込んで（ロック状態となっ
て）、上記プーリ７ａから回転軸３への回転力の伝達を
自在とする。反対に上記無端ベルト２３の走行速度が低
下傾向にある場合には、上記各ローラ１５が上記円筒状
隙間のうちの幅が広くなった部分に移動し、これら各ロ
ーラ１５が当該部分で転動自在となって（オーバラン状
態となって）、上記プーリ７ａと回転軸３との相対回転
を自在とする。

【００１１】即ち、上記無端ベルト２３の走行速度が低
下傾向にある場合には、上記プーリ７ａの回転角速度を
上記回転軸３の回転角速度よりも遅くして、上記無端ベ
ルト２３とプーリ７ａとの当接部が強く擦れ合う事を防
止する。この様にして、プーリ７ａと無端ベルト２３と
の擦れ合い部に作用する応力の方向を一定にし、この無
端ベルト２３とプーリ７ａとの間に滑りが発生したり、
或はこの無端ベルト２３の寿命が低下する事を防止す
る。

【００１２】又、オルタネータ用一方向クラッチ内蔵型
プーリ装置を使用する第二の理由は、オルタネータの発
電効率を向上させる為である。即ち、オルタネータ１の
ロータ５を固定した回転軸３は、自動車の駆動用エンジ
ンにより、無端ベルト２３と従動プーリとを介して回転
駆動する。固定式の従動プーリを使用すると、上記駆動
用エンジンの回転速度が急激に低下した場合に、上記ロ
ータ５の回転速度も急激に低下して、上記オルタネータ
１による発電量も急激に減少する。

【００１３】これに対して、上記オルタネータに付属の
従動プーリとして、上記オルタネータ用一方向クラッチ
内蔵型プーリ装置を使用すれば、上記駆動用エンジンの
回転速度が急激に低下した場合でも、上記ロータ５の回
転速度が慣性力により徐々に低下して、その間も発電を
続ける。この結果、固定式の従動プーリを使用した場合
に比べ、上記回転軸及びロータの運動エネルギを有効に
利用して、オルタネータの発電量の増大を図れる。

【００１４】尚、上述した様な従来構造の場合、前記各
サポート軸受９、９の両端開口部のうち、外端開口（一
方向クラッチ１０と反対側の端部開口）部にのみシール
リング２４を装着し、内端開口（一方向クラッチ１０側
の端部開口）にはシールリングを装着していなかった。
そして、上記各サポート軸受９、９及び前記一方向クラ
ッチ１０の内部に、同種の潤滑剤（グリース）を封入し
ていた。

【００１５】

【発明が解決しようとする課題】従来の一方向クラッチ
内蔵型回転伝達装置の場合には、各サポート軸受９、９
と一方向クラッチ１０とに同種の潤滑剤を封入していた
為、必ずしも十分な耐久性を確保する事が難しかった。
この理由は、上記各サポート軸受９、９と上記一方向ク
ラッチ１０とで、構成部材同士の接触状態が異なる為で
ある。即ち、上記各サポート軸受９、９を構成する複数
の転動体２２、２２の転動面と外輪軌道２０及び内輪軌
道２１との接触状態は殆ど転がり接触状態であり、滑り
接触状態は極く僅かである。これに対して、上記一方向
クラッチ１０を構成するローラ１５と外輪１４の内周面
とは、この一方向クラッチ１０のオーバラン状態で滑り
接触する。

【００１６】転がり接触状態での潤滑に適する潤滑剤
と、滑り接触状態での潤滑に適する潤滑剤とでは、動粘
度等の物性が異なる。又、一方向クラッチ１０に封入す
る潤滑剤は、滑り接触部の潤滑性を要求されるだけでな
く、ロック状態を実現できるものである事が要求され
る。即ち、上記一方向クラッチ１０に封入する潤滑剤に
は、潤滑剤の流動性が乏しくなる低温時に於いても、上
記ロック状態を確実に実現できる性能が要求される。

【００１７】この様に、上記転がり軸受９、９部分で潤
滑剤に要求される性能と、上記一方向クラッチ部分で潤
滑剤に要求される性能とが異なるにも拘らず、上記各サ
ポート軸受９、９と上記一方向クラッチ１０とに同種の
潤滑剤を封入すると、この潤滑剤の耐久性、及び、これ
ら各サポート軸受９、９と一方向クラッチ１０との一方
又は双方の耐久性を、必ずしも十分に確保できなくなる
可能性がある。又、使用する潤滑剤の種類によっては、
低温時に上記一方向クラッチのロック動作が不確実にな
る可能性もある。本発明の一方向クラッチ内蔵型回転伝
達装置は、上述の様な事情に鑑みて発明したものであ
る。

【００１８】

【課題を解決するための手段】本発明の一方向クラッチ
内蔵型回転伝達装置は、前述の図３に示した従来構造と
同様に、内径側部材と、外径側部材と、一方向クラッチ
と、サポート軸受とを備える。このうちの内径側部材
は、回転軸の端部に固定するものである。又、上記外径
側部材は、筒状で、上記内径側部材の周囲にこの内径側
部材と同心に配置されたものである。又、上記一方向ク
ラッチは、上記内径側部材の外周面と外径側部材の内周
面との間に設けられ、この外径側部材が上記内径側部材
に対し所定方向に相対回転する傾向となる場合にのみ、
これら外径側部材と内径側部材との間での回転力の伝達
を自在とするものである。更に、上記サポート軸受は、
玉軸受等の転がり軸受であって、上記一方向クラッチに
隣接する位置で上記内径側部材の外周面と上記外径側部
材の内周面との間に設けられており、この外径側部材に
加わるラジアル荷重を支承しつつこれら内径側部材と外
径側部材との相対回転を自在とするものである。

【００１９】特に、本発明の一方向クラッチ内蔵型回転
伝達装置に於いては、上記サポート軸受を構成する複数
個の転動体を設置した軸受内部空間と、上記一方向クラ
ッチを構成する複数個のクラッチ部材を設置したクラッ
チ内部空間との間に、これら両内部空間同士を仕切る密
封手段を設けている。そして、上記軸受内部空間に転が
り接触部の潤滑に適した第一種の潤滑剤を、上記クラッ
チ内部空間に滑り接触部の潤滑に適した第二種の潤滑剤
を、それぞれ封入している。これら第一種の潤滑剤及び
第二種の潤滑剤として好ましくは、何れもグリースを使
用する。そして、第一種の潤滑剤であるグリースを構成
する基油の動粘度及び混和ちょう度を、第二種の潤滑剤
であるグリースを構成する基油の動粘度及び混和ちょう
度に比べて何れも大きくする。

【００２０】

【作用】上述の様に、本発明の一方向クラッチ内蔵型回
転伝達装置の場合には、一方向クラッチとサポート軸受
とに、それぞれの挙動に応じた最適の潤滑剤を封入して
いるので、この潤滑剤及び上記一方向クラッチ及びサポ
ート軸受の耐久性を十分に確保できる。又、低温時に於
いても、この一方向クラッチのロック動作を確実に行な
わせる事ができる。

【００２１】

【発明の実施の形態】図１は、本発明の実施の形態の１
例を示している。尚、本発明の特徴は、サポート軸受９
ａ、９ａに封入する潤滑剤の種類と、一方向クラッチ１
０ａに封入する潤滑剤の種類とを、これらサポート軸受
９ａ、９ａと一方向クラッチ１０ａとの挙動の相違に応
じて異ならせた点にある。その他の部分の構造及び作用
は、前述の図３に示した従来構造と同様である。この
為、同等部分には同一符号を付して、重複する部分の説
明を省略若しくは簡略にし、以下、本発明の特徴部分及
び前述の従来構造と異なる部分を中心に説明する。

【００２２】本例の場合には、クラッチ用保持器１６ａ
の内周面に設けた複数の凸部２５、２５と一方向クラッ
チ用内輪１１の外周面に設けた複数の凹部１２とを係合
させる事に基づき、このクラッチ用保持器１６ａをこの
一方向クラッチ用内輪１１と共に回転自在としている。
又、オルタネータ１の回転軸３（図２）の先端部に外嵌
固定自在なスリーブ８ａの軸方向中間部に設けた大径部
２６の一端寄り部分（図１の左寄り端部分）の外周面に
段差面２７を、この大径部２６の一端部外周面を直径方
向外方に突出させる事により形成している。又、一方向
クラッチ１０ａを構成する上記クラッチ用保持器１６ａ
の一端部（図１の左端部）内周面に凸部２８を、直径方
向内方に突出する状態で、全周に亙り、或は円周方向の
少なくとも１個所位置に形成している。そして、この凸
部２８の先端側（内径側）部分を、上記段差面２７と上
記大径部２６の中間部に外嵌固定した一方向クラッチ用
内輪１１の一端面（図１の左端面）との間に配置してい
る。

【００２３】これにより、上記クラッチ用保持器１６ａ
の軸方向の変位を規制して、このクラッチ用保持器１６
ａの軸方向両端面が、このクラッチ用保持器１６ａと相
対回転する一方向クラッチ用外輪３０の軸方向両端部に
設けた１対の鍔部２９ａ、２９ｂの内側面と接触するの
を防止している。即ち、上記クラッチ用保持器１６ａが
軸方向に変位する傾向となった場合、このクラッチ用保
持器１６ａの軸方向端面と何れか一方の鍔部２９ａ（２
９ｂ）の内側面とが接触するよりも先に、上記凸部２８
の側面と上記段差面２７又は上記一方向クラッチ用内輪
１１の一端面とが当接する様に、各部の寸法を規制して
いる。

【００２４】プーリ７ａの両端部内周面とスリーブ８ａ
の両端部外周面との間で上記一方向クラッチ１０ａを軸
方向両側から挟む位置には、それぞれが転がり軸受の一
種の深溝型玉軸受である、１対のサポート軸受９ａ、９
ａを設けている。本例の場合には、これら各サポート軸
受９ａ、９ａを構成する軸受用内輪１９、１９の軸方向
片面を、それぞれ前記大径部２６の軸方向両端面（段差
面）に当接させている。又、本発明の一方向クラッチ内
蔵型回転伝達装置に組み込む上記各サポート軸受９ａ、
９ａの場合には、各軸受用外輪１８、１８の両端部内周
面と上記各軸受用内輪１９、１９の両端部外周面との間
に、それぞれシールリング３１、３１を設ける事によ
り、上記各サポート軸受９ａ、９ａの内部で転動体２２
を設置した空間の両端開口部を塞いでいる。

【００２５】そして、上記各サポート軸受９ａ、９ａを
構成する複数個の転動体２２を設置した軸受内部空間３
２内、即ち、これら各サポート軸受９ａ、９ａ毎に１対
ずつ設けた上記各シールリング３１、３１同士の間に、
第一種の潤滑剤を封入している。この第一種の潤滑剤と
しては、増ちょう剤がウレアであり、基油がエーテル系
合成油であり、この基油の４０℃に於ける動粘度が１０
０〜１１０ mm²/s、混和ちょう度が２８０〜３００であ
るグリースが、好ましく使用できる。この様なグリース
は、高温時に優れた転がり耐久性能を発揮するものであ
る。そして、この様なグリースを上記軸受内部空間３２
内に、この軸受内部空間３２の空間容積（１対のシール
リング３１、３１の間に存在する空間容積から転動体２
２及び保持器の容積を引いたもの）の３０％程度（一般
的なオルタネータ用プーリに組み込む構造で１．４ｇ程
度）封入する。

【００２６】一方、上記１対のサポート軸受９ａ、９ａ
同士の間に設けた前記一方向クラッチ１０ａのクラッチ
内部空間３３内には、第二種の潤滑剤を封入している。
この第二種の潤滑剤としては、増ちょう剤がジウレアで
あり、基油がエステル系合成油であり、この基油の４０
℃に於ける動粘度が３０〜３５ mm²/s、混和ちょう度が
２５０〜２８０であるグリースが、好ましく使用でき
る。この様なグリースは、優れた耐フレッチング性、耐
熱性を有する為、オーバラン時に滑り摩擦が発生した場
合でも十分な耐久性を発揮する他、低温時に上記一方向
クラッチ１０ａのロック状態を実現する性能に関しても
優れている。そして、この様なグリースを上記クラッチ
内部空間３３内に、このクラッチ内部空間３３の空間容
積（鍔部２９ａ、２９ｂの間に存在する空間容積からロ
ーラ１５及びクラッチ用保持器１６ａの容積を引いたも
の）の７０％程度（一般的なオルタネータ用プーリに組
み込む構造で１．４ｇ程度）封入する。

【００２７】上述の様に、本発明の一方向クラッチ内蔵
型回転伝達装置の場合には、上記各サポート軸受９ａ、
９ａと上記一方向クラッチ１０ａとに、それぞれの挙動
に応じた最適の潤滑剤を封入しているので、この潤滑剤
及び上記各サポート軸受９ａ、９ａ及び上記一方向クラ
ッチ１０ａの耐久性を十分に確保できる。又、低温時に
於いても、この一方向クラッチ１０ａのロック動作を確
実に行なわせる事ができる。即ち、ローラクラッチであ
る一方向クラッチ１０ａの低温時に於けるロック性能
（動力伝達時に於けるロックの確実性）と、玉軸受であ
るサポート軸受９ａ、９ａの低温時に於ける回転トルク
（回転抵抗）との間には相関関係がある事が分かってい
る。具体的には、上記一方向クラッチ１０ａの低温時に
於けるロック性能を向上させる為には、上記サポート軸
受９ａ、９ａの低温時に於ける回転トルクが少し大きめ
の方が好ましい事が分かっている。これら各サポート軸
受９ａ、９ａの軸受内部空間３２内に封入する、前述の
グリースは、低温時（−４０℃）の回転トルクが大きめ
（ＪＩＳＫ２２００による測定で０．２Ｎ・ｍ）で
ある。従って、上記一方向クラッチ１０ａに封入する、
前述の様なグリースとの組み合わせを考慮すれば、上記
一方向クラッチ１０ａの低温時のロック性能を向上させ
る面から好ましいグリースである。

【００２８】又、図示の例の場合には、前記クラッチ用
保持器１６ａの両端面が、このクラッチ用保持器１６ａ
と相対回転する、前記１対の鍔部２９ａ、２９ｂの内側
面と接触（摺接）する事を防止できる。従って、このク
ラッチ用保持器１６ａの軸方向両端面が摩耗したり、或
は、このクラッチ用保持器１６ａの軸方向両端面部分で
摩擦熱が発生する事はない。この為、上記一方向クラッ
チ１０ａを潤滑する為のグリースに上記クラッチ用保持
器１６ａの摩耗粉が混入したり、或は、このグリースが
高温に曝されたりして、このグリースが早期に劣化する
事を防止できる。

【００２９】更に、本例の場合、上記１対の鍔部２９
ａ、２９ｂの内側面と上記クラッチ用保持器１６ａの軸
方向両端面との間に、常に隙間が存在する様になる。こ
の為、この隙間部分をグリース溜りとして利用し、上記
一方向クラッチ１０ａの潤滑を十分に行なえる。即ち、
一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置の使用時には、上記
隙間部分に溜まったグリースに遠心力が作用する。そし
て、この様に遠心力を受けたグリースが前記一方向クラ
ッチ用外輪３０の内周面に均一に広がる。この結果、前
記プーリ７ａと前記スリーブ８ａとが相対回転するオー
バラン時に、グリースを必要とする部分である、上記一
方向クラッチ１０ａを構成する複数個のローラ１５の転
動面と上記一方向クラッチ用外輪３０の内周面との間部
分に、グリースを十分に供給できる。この為、上記一方
向クラッチ１０ａの潤滑状態を長期間に亙り良好に保持
して、十分な耐久性を有する一方向クラッチ内蔵型回転
伝達装置を実現できる。

【００３０】尚、本発明を実施する場合に、一方向クラ
ッチとしては、図示の様なローラクラッチに限らず、ス
プラグクラッチ、カムクラッチ等、他の型式の一方向ク
ラッチを使用する事も可能である。又、前記各サポート
軸受９ａ、９ａと上記一方向クラッチ１０ａとに封入す
るグリースの種類は、上述したものに限らず、使用条件
に応じて適宜最適なものを選択使用できる。又、図示の
例では、一方向クラッチ１０ａの両側に１対のサポート
軸受９ａ、９ａを設ける場合に就いて示したが、サポー
ト軸受を一方向クラッチの片側に１個のみ設ける事も可
能である。更に、上述した実施の形態では、本発明をオ
ルタネータ用プーリに適用した例に就いて示したが、本
発明はこれに限るものではない。例えば、本発明を自動
車用補機の駆動装置の駆動軸となるクランク軸、或は従
動軸となるコンプレッサ、ウォータポンプ、冷却ファン
の回転軸に組み付ける事も可能である。又、外径側部材
として、プーリに代えて歯車を使用する事も可能であ
る。

【００３１】

【発明の効果】本発明は、以上に述べた通り構成され作
用する為、動力伝達時に確実にロックでき、しかも優れ
た耐久性を有する一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置の
実現を図れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施の形態の１例を示す半部断面図。

【図２】従来から知られているオルタネータの１例を示
す断面図。

【図３】従来構造の１例を示す半部断面図。

【符号の説明】

１オルタネータ２ハウジング３回転軸４転がり軸受５ロータ６整流子７、７ａ従動プーリ８、８ａスリーブ９、９ａサポート軸受１０、１０ａ一方向クラッチ１１一方向クラッチ用内輪１２凹部１３カム面１４外輪１５ローラ１６、１６ａクラッチ用保持器１７係止突部１８軸受用外輪１９軸受用内輪２０外輪軌道２１内輪軌道２２転動体（玉）２３無端ベルト２４シールリング２５凸部２６大径部２７段差面２８凸部２９ａ、２９ｂ鍔部３０一方向クラッチ用外輪３１シールリング３２軸受内部空間３３クラッチ内部空間

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】回転軸の端部に固定する内径側部材と、
この内径側部材の周囲にこの内径側部材と同心に配置さ
れた筒状の外径側部材と、これら内径側部材の外周面と
外径側部材の内周面との間に設けられ、この外径側部材
が上記内径側部材に対し所定方向に相対回転する傾向と
なる場合にのみ、これら外径側部材と内径側部材との間
での回転力の伝達を自在とする一方向クラッチと、この
一方向クラッチに隣接する位置で上記内径側部材の外周
面と上記外径側部材の内周面との間に設けられ、この外
径側部材に加わるラジアル荷重を支承しつつこれら内径
側部材と外径側部材との相対回転を自在とする、転がり
軸受であるサポート軸受とを備えた一方向クラッチ内蔵
型回転伝達装置に於いて、このサポート軸受を構成する
複数個の転動体を設置した軸受内部空間と、上記一方向
クラッチを構成する複数個のクラッチ部材を設置したク
ラッチ内部空間との間に、これら両内部空間同士を仕切
る密封手段を設けると共に、上記軸受内部空間に転がり
接触部の潤滑に適した第一種の潤滑剤を、上記クラッチ
内部空間に滑り接触部の潤滑に適した第二種の潤滑剤
を、それぞれ封入した事を特徴とする一方向クラッチ内
蔵型回転伝達装置。
【請求項２】第一種の潤滑剤及び第二種の潤滑剤が何
れもグリースであり、第一種の潤滑剤であるグリースを
構成する基油の動粘度及び混和ちょう度が、第二種の潤
滑剤であるグリースを構成する基油の動粘度及び混和ち
ょう度に比べて何れも大きい、請求項１に記載した一方
向クラッチ内蔵型回転伝達装置。