JP2007093244A - 磁歪式トルクセンサと電動ステアリング装置 - Google Patents

磁歪式トルクセンサと電動ステアリング装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 磁歪式トルクセンサの感度設定が簡単に行えるようにする。
【解決手段】 ピニオン軸5に設けられた磁歪膜31,32の磁気特性の変化からピニオン軸5に加わっているトルクを検出する磁歪式トルクセンサ30において、磁歪膜31,32は、磁歪定数λsと透磁率μとの積がその最大値の90%以上となる組成範囲にあるNi−Fe合金とする。
【選択図】 図1

Description

この発明は、磁歪式トルクセンサとこれを用いた電動ステアリング装置に関するものである。
周知のように、電動ステアリング装置は、操舵トルクセンサによって検出された操舵トルクに基づいて目標電流を算出して電動機を駆動し、ステアリング系に転舵トルクを付与して車両の転舵を行う。
前記操舵トルクセンサに使用される非接触式のトルクセンサとして、磁歪に起因する磁気特性の変化に基づいてトルクを検出する磁歪式トルクセンサが知られている。磁歪式トルクセンサには、磁気異方性を異にする2つの磁歪膜を回転軸に設けるとともに、各磁歪膜に対向してそれぞれ検出コイルを配置して構成されたものがある(特許文献1参照)。この磁歪式トルクセンサでは、回転軸にトルクが加えられると磁歪膜の透磁率が変化し、これに応じて検出コイルのインピーダンス(またはインダクタンス)が変化し、この変化に基づいてトルクを検出している。
なお、磁歪式トルクセンサの感度(磁歪感度)に関連させて磁歪膜の物性を規制した技術が特許文献2に開示されている。この特許文献2では、磁歪膜の比透磁率μsと、ヤング率Eと、磁歪定数λsに基づき、(μs・E)1/2・λsの値を規制することで、所望の磁歪感度を得ようとしている。
特開2004−239652号公報 特開平10−260092号公報
しかしながら、特許文献2に開示された方法では、(μs・E)1/2・λsの値と磁歪感度との対応関係が余り一致していないため、前記値を規制しても期待した感度が得られないという問題がある。
また、磁歪式トルクセンサの性能について論じるとき、そのファクターは磁歪感度だけではなく、磁歪のヒステリシスも重要である。ここで言うヒステリシスとは、トルクの変化によってインピーダンスが変化する磁歪センサにおいて、トルクの経路の変化に対して、同じトルクの値に対するインピーダンスの値が不可逆的に異なる現象を指す。ヒステリシスはトルク検出精度に大きく影響を及ぼし、ヒステリシスが小さいほど検出精度がよくなり、操舵フィーリングも良好となる。
しかしながら、従来、磁歪感度とヒステリシスを両方とも良好にする磁歪膜を選択するには、磁歪膜の組成や磁歪膜の膜厚等を少しずつ変更してテストを行い磁歪感度とヒステリシスを求めていく以外、方法がなかった。
そこで、この発明は、感度の良好な磁歪式トルクセンサと、これを備えた電動ステアリング装置を提供するものである。
また、この発明は、感度とヒステリシス特性の両方が良好となる磁歪式トルクセンサと、これを備えた電動ステアリング装置を提供するものである。
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、回転軸(例えば、後述する実施例におけるピニオン軸5)に設けられた磁歪膜(例えば、後述する実施例における磁歪膜31,32)の磁気特性の変化から前記回転軸に加わったトルクを検出する磁歪式トルクセンサ(例えば、後述する実施例における磁歪式トルクセンサ30)において、前記磁歪膜は、磁歪定数λsと透磁率μとの積がその最大値の90%以上となる組成範囲にあるNi−Fe合金であることを特徴とする。
Ni−Fe合金の磁歪膜においては、λs・μの値と合金のFe組成(wt%)との相関関係は、磁歪感度と合金のFe組成(wt%)との相関関係に極めて近似する。したがって、λs・μから磁歪感度を推定することができ、λs・μの値をその最大値(λs・μ)maxの90%以上と規制することによって、電動ステアリング装置の操舵フィーリングを満足させる高感度なセンサを得ることができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記Ni−Fe合金の組成はFeが30〜38wt%であることを特徴とする。
Ni−Fe合金の磁歪膜の磁歪感度およびヒステリシスはFe組成(wt%)に依存し、Fe30wt%以下では磁歪感度が急激に低下し、Fe38wt%以上ではヒステリシスが急激に増大する。したがって、Fe組成を30〜38wt%にすることで磁歪感度とヒステリシスの両方が良好となり、電動ステアリング装置の操舵フィーリングを満足させる感度およびヒステリシス特性を得ることができる。
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記Ni−Fe合金の膜厚は15〜50μmであることを特徴とする。
Ni−Fe合金の磁歪膜のヒステリシスは磁歪膜の膜厚に依存し、膜厚が15μm未満でも、50μmを越えても、ヒステリシスが急激に増大する。したがって、磁歪膜の膜厚を15〜50μmにするとヒステリシスが更に良好となる。
請求項4に係る発明は、操舵トルクセンサによって検出された操舵トルクに基づいて目標電流を算出して電動機(例えば、後述する実施例における電動機11)を駆動し、車両の転舵を行う電動ステアリング装置(例えば、後述する実施例における電動パワーステアリング装置100)において、前記操舵トルクセンサは請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の磁歪式トルクセンサ(例えば、後述する実施例における磁歪式トルクセンサ30)であることを特徴とする。
このように構成することにより、磁歪感度が良好な操舵トルクセンサを用いているので、または磁歪感度とヒステリシス特性の両方が良好な操舵トルクセンサを用いているので、電動ステアリング装置の操舵フィーリングが向上する。
請求項1に係る発明によれば、磁歪膜のλs・μをパラメータとすることで精度よく所望の磁歪感度に設定することができ、その最大値(λs・μ)maxの90%以上に規制することによって、電動ステアリング装置に好適な高感度の磁歪式トルクセンサを得ることができる。
請求項2に係る発明によれば、磁歪膜であるNi−Fe合金のFe組成を30〜38wt%に規制することにより、電動ステアリング装置に好適な磁歪式トルクセンサのヒステリシス特性を得ることができる。
請求項3に係る発明によれば、磁歪膜の膜厚を15〜50μmに規制することにより、磁歪式トルクセンサのヒステリシス特性が良好となる。
請求項4に係る発明によれば、電動ステアリング装置の操舵フィーリングが向上する。
以下、この発明に係る磁歪式トルクセンサと電動ステアリング装置の実施例を図1から図5の図面を参照して説明する。
図1に示すように、車両用電動パワーステアリング装置(電動ステアリング装置)100はハンドル(操舵手段)2に連結されたステアリングシャフト1を備えている。ステアリングシャフト1は、ハンドル2に一体結合されたメインステアリングシャフト3と、ラック&ピニオン機構のピニオン7が設けられたピニオン軸(回転軸)5とが、ユニバーサルジョイント4によって連結されて構成されている。
ピニオン軸5は例えばクロム−モリブデン鋼に浸炭処理をしてなり、その下部、中間部、上部を軸受6a,6b,6cによって支持され、ピニオン7はピニオン軸5の下端部に設けられている。ピニオン7は、車幅方向に往復動し得るラック軸8のラック8aに噛合し、ラック軸8の両端には、タイロッド9,9を介して転舵輪としての左右の前輪10,10が連結されている。この構成により、ハンドル2の操舵時に通常のラック&ピニオン式の転舵操作が可能であり、前輪10,10を転舵させて車両の向きを変えることができる。ここで、ラック軸8、ラック8a、タイロッド9,9は転舵機構を構成する。
また、電動パワーステアリング装置100は、ハンドル2による操舵力を軽減するための補助操舵力を供給する電動機11を備えており、この電動機11の出力軸に設けられたウォームギヤ12が、ピニオン軸5において中間部の軸受6bの下側に設けられたウォームホイールギヤ13に噛合している。
また、ピニオン軸5において中間部の軸受6bと上部の軸受6cとの間には、操舵トルクセンサとして、磁歪に起因する磁気特性の変化に基づいてトルクを検出する磁歪式トルクセンサ30が配置されている。
磁歪式トルクセンサ30は、ピニオン軸5の外周面に周方向全周に亘って環状に設けられた2つの磁歪膜31,32と、各磁歪膜31,32に対向配置された第1検出コイル33と第2検出コイル34と、第1検出コイル33および第2検出コイル34にそれぞれ接続された検出回路35,36を主要構成としている。
磁歪膜31,32は、歪みの変化に対して透磁率の変化が大きい素材からなる金属膜であり、例えば、ピニオン軸5の外周にメッキ法で形成したNi−Fe系の合金膜からなる。
一方の磁歪膜31は、ピニオン軸5の軸線に対して約45度傾斜した方向に磁気異方性を備えるように構成されており、他方の磁歪膜32は、磁歪膜31の磁気異方性の方向に対して約90度傾斜した方向に磁気異方性を備えるように構成されている。すなわち、2つの磁歪膜31,32の磁気異方性は互いに約90度位相を異にしている。これら磁歪膜31,32は、良好な磁歪感度および磁歪のヒステリシス特性を得るために、組成や膜厚や物性が規制されている。これについては後で詳述する。
第1検出コイル33は磁歪膜31の周囲にこれと所定の隙間を有した状態で同軸状に配置されており、第2検出コイル34は磁歪膜32の周囲にこれと所定の隙間を有した状態で同軸状に配置されている。
磁歪膜31,32の磁気異方性を前述のように設定したことにより、ピニオン軸5にトルクが作用しない状態でも、磁歪膜31,32の主応力方向の一方に圧縮力が作用し、他方に引っ張り力が作用するようになるが、磁歪膜31,32の透磁率は概ね等しく設定されている。そして、ピニオン軸5にトルクが作用した状態では、一方の磁歪膜の透磁率が増加し、他方の磁歪膜の透磁率が減少する。そして、これに応じて検出コイル33,34の一方のインピーダンス(またはインダクタンス)が増加し、他方のインピーダンス(またはインダクタンス)が減少する。
第1検出コイル33は変換回路を備えた検出回路35に接続され、第2検出コイル34は変換回路を備えた検出回路36に接続されており、これら検出回路35,36において各検出コイル33,34のインダクタンス変化は電圧変化に変換されて電子制御装置(ECU)50に出力される。
ECU50は、検出回路35,36からの出力電圧に基づいて、ピニオン軸5に作用するトルクを検出し、検出されたトルクに応じて電動機11の目標電流を算出し、該目標電流によって電動機11を駆動して補助操舵力を発生させ、車両の転舵を行う。
次に、磁歪式トルクセンサ30における磁歪膜31,32が良好な磁歪感度および磁歪のヒステリシス特性を備えるようにするための、磁歪膜31,32の組成や膜厚や物性の規制について詳しく説明する。
図2は、前述した電動パワーステアリング装置100に設けた磁歪式トルクセンサ30と同じ構成からなる磁歪式トルクセンサであって、磁歪膜の膜厚は40μmで同一とし、
厚磁歪膜のFe組成(wt%)を異にする多数の磁歪式トルクセンサに対して、励磁周波数を30kHzで実験を行い、その実験結果から磁歪感度およびヒステリシスとFe組成(wt%)との相関関係をまとめた特性図である。
一方、図4は、Ni−Fe合金における磁歪定数λsおよび透磁率μとFe組成(wt%)との相関関係を示す周知の物理特性図である。
ここで、この発明の発明者は、磁歪定数λsと透磁率μとの積(λs・μ)に着目して、前記積λs・μとFe組成(wt%)との相関関係について整理し、図3に示す特性図を得た。その結果、前記積λs・μとFe組成(wt%)との相関関係が、磁歪感度とFe組成(wt%)との相関関係に極めて近似することを知得した。この知見に基づき、λs・μから磁歪感度を推定することができ、λs・μの値を規制することによって磁歪感度を所望に設定することができる。
そこで、前記電動パワーステアリング装置100における磁歪式トルクセンサ30の磁歪膜31,32としては、λs・μが最大値(λs・μ)maxの90%以上のものを採用することで、最大感度の80%以上を得るようにした。ちなみに、Ni−Fe合金では、Feの組成が33%のときにλs・μが最大値(λs・μ)max=471×10−4となる。
また、図2に示す磁歪感度およびヒステリシスとFe組成(wt%)の特性図からわかるように、Ni−Feメッキの磁歪膜の磁歪感度およびヒステリシスはFe組成(wt%)に依存し、Fe30wt%以下では磁歪感度が急激に低下し、Fe38wt%以上ではヒステリシスが急激に増大する。
そこで、前記電動パワーステアリング装置100における磁歪式トルクセンサ30の磁歪膜31,32としては、磁歪膜31,32のFe組成を30〜38wt%に規制することで、磁歪感度とヒステリシス特性の両方が良好となるようにした。
また、図5は、前述した電動パワーステアリング装置100に設けた磁歪式トルクセンサ30と同じ構成からなる磁歪式トルクセンサであって、Fe組成は31.5wt%で同一とし、磁歪膜の膜厚(すなわち、メッキの膜厚)を異にする多数の磁歪式トルクセンサに対して実験を行い、その実験結果から磁歪感度およびヒステリシスと膜厚との相関関係をまとめた特性図である。この特性図からわかるように、Ni−Feメッキの磁歪膜のヒステリシスは磁歪膜の膜厚に依存し、膜厚が15μmよりも小さくなると、および、50μmを越えると、ヒステリシスが急激に増大する。
そこで、前記電動パワーステアリング装置100における磁歪式トルクセンサ30の磁歪膜31,32としては、磁歪膜31,32の膜厚を15〜50μmに規制することで、ヒステリシス特性が良好となるようにした。
このように、この実施例における電動パワーステアリング装置100においては、磁歪式トルクセンサ30の磁歪膜31,32に対して、磁歪定数λsと透磁率μとの積λs・μを400×10ー4以上に規制し、Fe組成を30〜38wt%に規制し、膜厚を15〜50μmに規制しているので、磁歪式トルクセンサ30の感度とヒステリシス特性の両方を良好にすることができ、操舵トルクの検出精度も向上する。その結果、電動パワーステアリング装置100の操舵フィーリングが良好になる。
なお、この実施例では、磁歪式トルクセンサ30の磁歪膜31,32に対して、磁歪定数λsと透磁率μとの積λs・μと、Fe組成と、膜厚の全てについて規制を設けたが、λs・μだけを規制してもよいし、λs・μとFe組成の二つを規制してもよいし、λs・μと膜厚の二つを規制してもよい。
〔他の実施例〕
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
例えば、磁歪膜のFe組成の規制値「30〜38wt%」、および、膜厚の規制値「15〜50μm」については例示であって、この規制値に限るものではなく、所望するヒステリシス特性に応じて規制値を変更することが可能である。
この発明に係る磁歪式トルクセンサを備えた電動ステアリング装置の概略構成図である。 磁歪感度およびヒステリシスとFe組成(wt%)との関係を示す磁歪膜の特性図である。 λs・μとFe組成(wt%)との関係を示す磁歪膜の特性図である。 Ni−Fe合金における磁歪定数λsおよび透磁率μとFe組成(wt%)との関係を示す磁歪膜の特性図である。 磁歪感度およびヒステリシスと膜厚との関係を示す磁歪膜の特性図である。
符号の説明
5 ピニオン軸(回転軸)
11 電動機
30 磁歪式トルクセンサ
31,32 磁歪膜
100 電動パワーステアリング装置(電動ステアリング装置)

Claims (4)

  1. 回転軸に設けられた磁歪膜の磁気特性の変化から前記回転軸に加わったトルクを検出する磁歪式トルクセンサにおいて、
    前記磁歪膜は、磁歪定数λsと透磁率μとの積がその最大値の90%以上となる組成範囲にあるNi−Fe合金であることを特徴とする磁歪式トルクセンサ。
  2. 前記Ni−Fe合金の組成はFeが30〜38wt%であることを特徴とする請求項1に記載の磁歪式トルクセンサ。
  3. 前記Ni−Fe合金の膜厚は15〜50μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁歪式トルクセンサ。
  4. 操舵トルクセンサによって検出された操舵トルクに基づいて目標電流を算出して電動機を駆動し、車両の転舵を行う電動ステアリング装置において、
    前記操舵トルクセンサは請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の磁歪式トルクセンサであることを特徴とする電動ステアリング装置。
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