JP4732473B2 - 磁歪式トルクセンサおよび車両用操舵装置 - Google Patents

磁歪式トルクセンサおよび車両用操舵装置 Download PDF

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本発明は、回転軸の表面に形成された磁歪膜の外周にボビンに巻回されたコイルを配置し、前記コイルの外周に円筒状のバックヨークを配置し、前記磁歪膜の磁気特性の変化を前記コイルで検出することで前記回転軸に加えられたトルクを検出する磁歪式トルクセンサと、その磁歪式トルクセンサを操舵トルクセンサとして用いた車両用操舵装置とに関する。
シャフトに加わるトルクを検出する磁歪式トルクセンサが、シャフトの外周に相互に逆方向の磁気異方性を有するように形成された一対の磁歪膜と、各々の磁歪膜の外周を囲む励磁コイルおよび検出コイルとを備え、シャフトの捩じれ変形に応じて変化する一対の磁歪膜の透磁率の変化を前記励磁コイルおよび前記検出コイルの交流抵抗の変化に基づいて検出することで、シャフトに入力されるトルクを検出するものが、下記特許文献1により公知である。
特開平11−132877号公報
ところで、かかる磁歪式トルクセンサは、励磁コイルおよび検出コイルの周囲を囲んで磁路を構成するためのバックヨークを備えているが、上記特許文献1に記載された磁歪式トルクセンサのバックヨークは、励磁コイルおよび検出コイルの周囲を360°に亘って囲繞しているため、渦電流が発生し易くなって検出精度に悪影響を及ぼす可能性があった。
また磁束はバックヨークのエッジ部に集中して発生し易いため、バックヨークのエッジ形状が不規則であったり、そのエッジ形状にばらつきがあったりすると、コイルの交流抵抗もばらついてしまう可能性があった。
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、磁歪式トルクセンサのコイルの外周にバックヨークを配置した場合に、そのバックヨークに渦電流が発生するのを抑制するとともにコイルの交流抵抗を安定させて検出精度を高めることを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、回転軸の表面に形成された磁歪膜の外周にボビンに巻回されたコイルを配置し、前記コイルの外周に円筒状のバックヨークを配置し、前記磁歪膜の磁気特性の変化を前記コイルで検出することで前記回転軸に加えられたトルクを検出する磁歪式トルクセンサであって、前記バックヨークは矩形状の一様断面の磁性体製金属板を円筒状に湾曲させて形成され、前記バックヨークの対向する一対の端面間に、径方向に一定の幅を有して軸線方向に延びるスリットが構成されることを特徴とする磁歪式トルクセンサにおいて、前記バックヨークの軸線方向両端部を覆う一対のヨークリングを備え、前記バックヨークおよび前記ヨークリングは相互に非接触に配置されることを特徴とする磁歪式トルクセンサが提案される。
また請求項に記載された発明によれば、請求項の構成に加えて、前記ボビンは径方向外側に延出する環状の延出部を備え、前記延出部が前記バックヨークおよび前記ヨークリング間に挟持されることを特徴とする磁歪式トルクセンサが提案される。
また請求項に記載された発明によれば、請求項1または請求項2に記載の磁歪式トルクセンサを用いた車両用操舵装置であって、前記磁歪式トルクセンサを、ステアリングシャフトに入力される操舵トルクを検出する操舵トルクセンサとして使用し、前記操舵トルクセンサで検出した操舵トルクに基づいて電動パワーステアリング装置のアクチュエータの作動を制御することを特徴とする車両用操舵装置が提案される。
尚、実施の形態の上部ステアリングシャフト12および下部ステアリングシャフト14は本発明のステアリングシャフトに対応し、実施の形態のピニオンシャフト17は本発明の回転軸に対応し、実施の形態の第1、第2磁歪膜39A,39Bは本発明の磁歪膜に対応し、実施の形態の第1、第2励磁コイル41A,41Bおよび第1、第2検出コイル42A,42Bは本発明のコイルに対応し、実施の形態の操舵トルクセンサStは本発明の磁歪式トルクセンサに対応し、実施の形態の電動モータMは本発明のアクチュエータに対応する。
請求項1の構成によれば、回転軸の表面に形成された磁歪膜の外周に配置されたコイルの外周に更に円筒状のバックヨークを配置したので、バックヨークおよび磁歪膜を通る磁気回路を構成してコイルの出力ゲインを増加させ、磁歪式トルクセンサの感度を高めることができる。しかもバックヨークに径方向に一定の幅を有して軸線方向に延びる一対の平坦な端面に挟まれたスリットを形成したので、バックヨークに発生する渦電流をスリットにより遮断して抑制することでコイルの交流抵抗を安定させ、磁歪式トルクセンサの検出精度を高めることができる。また矩形状の一様断面の磁性体製金属板を円筒状に湾曲させてバックヨークを形成し、その対向する一対の端面間にスリットを構成したので、バックヨークの構造が極めて単純になって安価に製造することができる。またバックヨークの軸線方向両端部を覆う一対のヨークリングを設けたので、コイルの出力ゲインを更に増加させることができるだけでなく、バックヨークおよびヨークリングを相互に非接触に配置したので、バックヨークおよびヨークリング間の接触状態による透磁率のばらつきを減少させて磁歪式トルクセンサの検出精度を更に高めることができる。
また請求項の構成によれば、ボビンに径方向外側に延出するように設けた環状の延出部をバックヨークおよびヨークリング間に挟持したので、バックヨークおよびヨークリング間の距離を均一に保持して透磁率のばらつきを防止し、磁歪式トルクセンサの感度を高めながら検出精度をより一層高めることができる。
また請求項の構成によれば、磁歪式トルクセンサを車両用操舵装置の操舵トルクセンサとして使用するので、ステアリングシャフトに入力される操舵トルクを高精度で検出してパワーステアリング装置のアクチュエータの作動を制御することで、操舵フィーリングを向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。
図1〜図6は本発明の第1の実施の形態を示すもので、図1は電動パワーステアリング装置の全体斜視図、図2は図1の2−2線拡大断面図、図3は図2の3−3線断面図、図4は図2の4部拡大図、図5はバックヨークの斜視図、図6は操舵トルクに対するトルク検出信号の変化特性を示す図である。
図1に示すように、ステアリングホイール11と一体に回転する上部ステアリングシャフト12は、上部ユニバーサルジョイント13、下部ステアリングシャフト14および下部ユニバーサルジョイント15を介して、減速機16から上方に突出するピニオンシャフト17に接続される。減速機16の下端に接続されたステアリングギヤボックス18の左右両端から突出するタイロッド19,19が、左右の車輪WL,WRの図示せぬナックルに接続される。減速機16にはモータMが支持されており、このモータMの作動が、減速機16の内部に収納した操舵トルクセンサStからの信号が入力される電子制御ユニットUにより制御される。
図2および図3に示すように、減速機16はステアリングギヤボックス18と一体の下部ケース21と、その上面にボルト22…で結合された上部ケース23とを備えており、ステアリングギヤボックス18および上部ケース23にボールベアリング26,27で前記ピニオンシャフト17が回転自在に支持される。ピニオンシャフト17の下端に設けられたピニオン28が、ステアリングギヤボックス18の内部に左右移動自在に支持したラックバー29に設けられたラック30に噛合する。ステアリングギヤボックス18に形成した貫通孔18aに押圧部材31が摺動自在に収納されており、貫通孔18aを閉塞するナット部材32との間に配置したスプリング33で押圧部材31をラックバー29の背面に向けて付勢することで、ラックバー29の撓みを抑制してラック30をピニオン28に正しく噛合させることができる。
減速機16の内部に延びるモータMの回転軸34は、一対のボールベアリング35,36で下部ケース21に回転自在に支持される。モータMの回転軸34に設けられたウオーム37は、ピニオンシャフト17に固定されたウオームホイール38に噛合する。
図2および図4に示すように、ステアリングホイール11に入力される操舵トルクを検出する操舵トルクセンサStは、ピニオンシャフト17の表面を所定幅で覆うように形成された、例えばNi−Feメッキよりなる第1、第2磁歪膜39A,39Bと、第1磁歪膜39Aの周囲を囲繞するように合成樹脂製のボビン40の上部に巻回された第1励磁コイル41Aおよび第1検出コイル42Aと、第2磁歪膜39Bの周囲を囲繞するように前記ボビン40の下部に巻回された第2励磁コイル41Bおよび第2検出コイル42Bと、第1励磁コイル41A、第1検出コイル42A、第2励磁コイル41Bおよび第2検出コイル42Bを囲む磁性体製の概略円筒状のバックヨーク43とを備える。
図5から明らかなように、バックヨーク43は磁性体で形成された矩形状の板材を略円筒状に湾曲させたもので、その対向する二つの端面の間にスリット43aが形成される。バックヨーク43のスリット43aを挟む二つの端面は平坦な細長い長方形で構成される。
ボビン40は、円筒状のボビン本体40aから径方向外向きに張り出す第1〜第6フランジ40b〜40gを備えており、第1、第2フランジ40b,40c間に第1検出コイル42Aが巻回され、第2、第3フランジ40c,40d間に第1励磁コイル41Aが巻回され、第4、第5フランジ40e,40f間に第2励磁コイル41Bが巻回され、第5、第6フランジ40f,40g間に第2検出コイル40Bが巻回される。
第1、第2励磁コイル41A,41Bには励磁回路44が接続され、第1、第2検出コイル42A,42Bにはそれぞれ第1、第2変換回路45A,45Bが接続され、第1、第2変換回路45A,45Bにはアンプ46が接続される。
ピニオンシャフト17にトルクが作用して捩じれ変形すると第1、第2磁歪膜39A,39Bの透磁率が変化するため、第1、第2励磁コイル41A,41Bに励磁回路44から高周波の交流電圧を印可することで、第1、第2磁歪膜39A,39Bの透磁率の変化を第1、第2検出コイル42A,42Bのインピーダンスの変化として検出することができる。
そして図2に示すように、バックヨーク43およびボビン40は、ステー47を介して上部ケース23に支持される。
図6に示すように、上記第1、第2検出コイル42A,42Bのインピーダンスの変化を第1、第2変換回路45A,45Bでそれぞれ電圧信号VT1,VT2に変換し、アンプ46が二つの電圧信号VT1,VT2の差を増幅率kで増幅し、それに所定のバイアス電圧Vb(例えば、2.5V)を加えたトルク検出信号VT3を出力する。このトルク検出信号VT3はピニオンシャフト17に入力されるトルクに応じて変化する。
VT3=k(VT1−VT2)+Vb
このようにして、ステアリングホイール11に入力される操舵トルクによりピニオンシャフト17が第1、第2磁歪膜39A,39Bと共に捩じれ変形すると、第1、第2磁歪膜39A,39Bおよびバックヨーク43で構成される二つの磁路に沿う磁束密度が変化することで、その磁束密度の変化に基づいて操舵トルクを検出することができる。
また第1、第2励磁コイル41A,41Bの出力電圧をそれぞれVT12(インピーダンス小),VT21(インピーダンス小)とし、第1、第2検出コイル42A,42Bの出力電圧をそれぞれVT11(インピーダンス大),VT22(インピーダンス大)としたとき、メインのトルク検出値:V31=VT12/(VT12+VT22)と、冗長系であるサブのトルク検出値:V32=VT21/(VT11+VT21)とを比較し、不一致の場合に故障判定をすることで、操舵トルクセンサStの中立点のばらつきをなくして検出精度を高めることができる。
以上のように、第1、第2励磁コイル41A,41Bおよび第1、第2検出コイル42A,42Bを囲むバックヨーク43に軸方向に延びるスリット43aを形成したので、第1、第2励磁コイル41A,41Bを励磁したときにバックヨーク43に渦電流が発生するのをスリット43aにより抑制し、操舵トルクセンサStの検出精度を高めることができる。しかも、バックヨーク43を1枚の矩形状の板部材を円筒状に曲げ加工して構成したので、曲げ加工時にバックヨーク43の相対向する二つの端面の間に前記スリット43aを自動的に形成することができ、その構造が極めて簡素化されて製造コストが削減される。更に、バックヨーク43の端面が平坦であるので、エッジの影響を受け難くなって第1、第2励磁コイル41A,41Bおよび第1、第2検出コイル42A,42Bの交流抵抗を安定させ、検出精度を一層高めることができる。
次に、図7に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
第2の実施の形態は、第1の実施の形態のバックヨーク43の軸方向両端に、円環状の板体よりなるヨークリング48,48を付加することで、より一層有効な磁路を形成して第1、第2検出コイル42A,42Bの出力ゲインを更に高めることを狙ったものである。このとき、仮にバックヨーク43の軸方向端面にヨークリング48,48の内面を直接接触させると、その接触部の面粗度や平行度のばらつきによって透磁率の大きさが不安定になり、かえって操舵トルクセンサStの検出精度を低下させる可能性がある。
しかしながら、第2の実施の形態では、ボビン40の軸方向両端のフランジ40b,40gを径方向に延長して一定厚さの板状の延出部40h,40hを形成し、それらの延出部40h,40hをバックヨーク43およびヨークリング48,48間に挟持することで、バックヨーク43およびヨークリング48,48を相互に非接触にしている。そのためにバックヨーク43およびヨークリング48,48間の透磁率は多少減少するが、接触部の状態による透磁率のばらつきが解消され、かつ両者間の距離が一定に保たれることで透磁率を均一化し、結果的に操舵トルクセンサStの検出精度を向上させることができる。
しかして、第1、第2の実施の形態で説明した操舵トルクセンサStを車両用操舵装置に使用すれば、ステアリングホイール11に入力される操舵トルクを高精度で検出してパワーステアリング装置の電動モータMを制御することで、操舵フィーリングを向上させることができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、実施の形態では磁歪式トルクセンサを操舵トルクセンサStに適用しているが、本発明の磁歪式トルクセンサは回転軸に入力されるトルクを検出する任意の用途のトルクセンサに適用することができる。
第1の実施の形態に係る電動パワーステアリング装置の全体斜視図 図1の2−2線拡大断面図 図2の3−3線断面図 図2の4部拡大図 バックヨークの斜視図 操舵トルクに対するトルク検出信号の変化特性を示す図 第2の実施の形態に係る、前記図4に対応する図
12 上部ステアリングシャフト(ステアリングシャフト)
14 下部ステアリングシャフト(ステアリングシャフト)
17 ピニオンシャフト(回転軸)
39A 第1磁歪膜(磁歪膜)
39B 第2磁歪膜(磁歪膜)
40 ボビン
40h 延出部
41A 第1励磁コイル(コイル)
41B 第2励磁コイル(コイル)
42A 第1検出コイル(コイル)
42B 第2検出コイル(コイル)
43 バックヨーク
43a スリット
48 ヨークリング
M 電動モータ(アクチュエータ)
St 操舵トルクセンサ(磁歪式トルクセンサ)

Claims (3)

  1. 回転軸(17)の表面に形成された磁歪膜(39A,39B)の外周にボビン(40)に巻回されたコイル(41A,41B;42A,42B)を配置し、前記コイル(41A,41B;42A,42B)の外周に円筒状のバックヨーク(43)を配置し、前記磁歪膜(39A,39B)の磁気特性の変化を前記コイル(41A,41B;42A,42B)で検出することで前記回転軸(17)に加えられたトルクを検出する磁歪式トルクセンサであって、
    前記バックヨーク(43)は矩形状の一様断面の磁性体製金属板を円筒状に湾曲させて形成され、前記バックヨーク(43)の対向する一対の端面間に、径方向に一定の幅を有して軸線方向に延びるスリット(43a)が構成されるものにおいて、
    前記バックヨーク(43)の軸線方向両端部を覆う一対のヨークリング(48)を備え、前記バックヨーク(43)および前記ヨークリング(48)は相互に非接触に配置されることを特徴とする磁歪式トルクセンサ。
  2. 前記ボビン(40)は径方向外側に延出する環状の延出部(40h)を備え、前記延出部(40h)が前記バックヨーク(43)および前記ヨークリング(48)間に挟持されることを特徴とする、請求項1に記載の磁歪式トルクセンサ。
  3. 請求項1または請求項2に記載の磁歪式トルクセンサを用いた車両用操舵装置であって、
    前記磁歪式トルクセンサを、ステアリングシャフト(12,14)に入力される操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ(St)として使用し、前記操舵トルクセンサ(St)で検出した操舵トルクに基づいて電動パワーステアリング装置のアクチュエータ(M)の作動を制御することを特徴とする車両用操舵装置。
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