JP2007101423A - 磁歪式トルクセンサとこれを利用した電動パワーステアリング装置 - Google Patents

磁歪式トルクセンサとこれを利用した電動パワーステアリング装置 Download PDF

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Abstract

【課題】回転軸に形成される磁歪膜と検出コイルとの形状に係る寸法関係を最適にしてセンサ感度特性を向上でき、組立て時の位置ずれ公差を拡大できる磁歪式トルクセンサと電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】この磁歪式トルクセンサは、トルクを加えられて回転する回転軸11と、回転軸の表面の少なくとも1箇所に円周方向に全周に渡って形成された磁歪膜14A,14Bと、磁歪膜のインピーダンス変化を検出する検出コイル13A,13Bと、検出コイルから出力されたインピーダンス変化に係る信号に基づいて回転軸に加わるトルクを算出するトルク算出部17とを備える。磁歪膜幅W1と検出コイル幅W2は、W1とW2が1<(W1/W2)<1.35の関係を満たすように設定されている。
【選択図】図6

Description

本発明は磁歪式トルクセンサとこれを利用した電動パワーステアリング装置に関し、特に、センサ感度特性を高め、装置組立て時の位置ずれ公差を拡大できる磁歪式トルクセンサ、およびこれを利用して作製される電動パワーステアリング装置に関する。
例えば自動車の操舵系として装備される電動パワーステアリング装置では、一般的に、運転者の操舵操作によってステアリングホイールからステアリング軸に加えられる操舵トルクを操舵トルク検出部によって検出する。操舵トルク検出部は、通常、磁歪式トルクセンサにより構成されている。上記のステアリング軸は、操舵操作による回転力を受けて回転する回転軸として機能し、操舵トルク検出部でその回転軸となっている。電動パワーステアリング装置は、操舵トルク検出部から検出されたトルク信号に応じて、操舵力補助用のモータを駆動制御し、運転者の操舵力を軽減して快適な操舵フィーリングを与える。
上記電動パワーステアリング装置に用いられる操舵トルク検出部として、上記のごとく磁歪式トルクセンサがよく知られている。この磁歪式トルクセンサは、ステアリング軸の表面の例えば所定の2箇所に、互いに逆向きの磁気異方性を持つ磁歪膜を備えている。磁歪式トルクセンサは、ステアリング軸にステアリングホイールからトルクが作用したときに、ステアリング軸に生じる捩れに応じた磁歪膜の磁歪特性の変化を非接触で検出するセンサ構成を有している。
上記のごとき磁歪式トルクセンサの製造プロセスでは、上記ステアリング軸の一部の所定表面、すなわち円柱体形状の回転軸における所定の軸方向幅の円周表面に全周に渡って磁歪膜(広義には磁歪領域部)を形成し、この磁歪膜に磁気異方性を付加する工程が必要である。磁歪式トルクセンサの製造において磁歪膜に磁気異方性を付加する従来の方法は、例えば電解めっき処理により磁歪材めっき部(磁歪膜)を形成した回転軸に対して捩りトルクを作用させ、回転軸の円周表面に応力を付与し、この応力付与状態にて恒温槽において当該回転軸を加熱処理するという方法であった(例えば、特許文献1参照)。
特開2002−82000号公報
従来の磁歪式トルクセンサは、磁歪膜の磁歪特性の変化を非接触で検出するセンサ構成として、円柱体形状の回転軸の円周表面に全周に渡って形成された磁歪膜の周囲に当該磁歪膜を囲むように筒形状の検出コイルを備えている。一般的な従来の磁歪式トルクセンサでは、磁歪膜の回転軸の軸方向の幅(以下「磁歪膜幅」と記す)は、検出コイルのその軸方向の長さまたは幅(以下「検出コイル幅」と記す)にほぼ一致させる傾向にあった。磁歪式トルクセンサにおける磁歪膜と検出コイルの各々の大きさと配置関係に関する寸法としては、上記の磁歪膜幅と検出コイル幅、磁歪膜と検出コイルの内周面との距離(以下「隙間」と記す)が定義される。
次に、図9と図10を参照して、磁歪式トルクセンサにおける磁歪膜幅、検出コイル幅、隙間に関する問題を説明する。
図9は、従来の磁歪式トルクセンサにおける磁歪膜と検出コイルの間の回転軸の軸方向での位置ずれ(横軸:mm)とセンサの感度変化率(縦軸)との関係を示している。この場合、隙間は0.5mmである。図10は同磁歪式トルクセンサにおける磁性膜と検出コイルの間の隙間(回転軸の径方向における間隔、横軸:mm)とセンサの感度変化率(縦軸)との関係を示している。
図9のグラフ101によれば、位置ずれがない場合(横軸で0.0、縦軸で感度変化率「1」)を基準にして考えると、上方向(図9で右側)に位置ずれが生じても、下方向に(図9で左側)に位置ずれが生じても、感度変化率は「1」よりも小さくなる。例えば、回転軸の軸方向の位置ずれが例えば±0.68mmを超えた程度で、感度変化率は0.98よりも小さくなるという特性を示している。
磁歪式トルクセンサは、検出精度が高い次元で求められる機器である。このため、その感度変化率が0.98を切ると、実際に自動車等の車載機器として使用する場合には、ステアリング操作で運転者がその追従性について違和感を感じる可能性がある。
図10のグラフ102によれば、同様に、横軸で隙間が0.5mmのときに感度変化率を1.0としている。これを基準とする場合、例えば隙間が2倍の1mmになると、すなわち0.5mmだけずれるだけでも、感度変化率はほぼ0.85程度まで小さくなるという望ましくない特性を有している。
磁歪式トルクセンサにおいて、回転軸に形成された磁歪膜とこの磁歪膜の周囲に設置される検出コイルとの間で、その位置関係に関して位置ずれが生じると、センサの感度性能が低下する。特に、当該磁歪式トルクセンサが自動車の電動パワーステアリング装置に応用されるとき、そのような位置ずれが生じているとすると、電動パワーステアリング装置で操作違和感を生じさせるので、好ましくない。
現在の電動パワーステアリング装置での製造環境では、組立て工程上での位置ずれは、検出コイルの組付けで0.2mm程度、ステアリング軸(回転軸)の組付けで0.2mm程度が見込まれている。そのため、検出コイルとステアリング軸で相対的に位置ずれが生じたときには最大で0.4mm程度の位置ずれが生じる可能性がある。
他方、自動車に組み込まれた電動パワーステアリング装置は、その後の使用環境によって、経年変化や路面からの過剰な入力等により、製造時の位置ずれも含めて最大で1mm程度は位置ずれが生じる可能性がある。そのため、自動車の電動パワーステアリング装置等に利用される磁歪式トルクセンサについては、製造時およびその後の使用時を含めて、最大でも1mm程度の位置ずれしか生じない構造上の耐性が望まれている。
本発明の目的は、上記の課題を鑑み、回転軸に形成される磁歪膜と検出コイルとの形状に係る寸法関係を最適にしてセンサ感度特性を向上することができ、かつ装置組立て時の位置ずれ公差を拡大することができる磁歪式トルクセンサ、およびこれを利用した電動パワーステアリング装置を提供することにある。
本発明に係る磁歪式トルクセンサと電動パワーステアリング装置は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
第1の磁歪式トルクセンサ(請求項1に対応)は、トルクを加えられて回転する回転軸と、回転軸の表面の少なくとも1箇所に円周方向に全周に渡って形成された磁歪領域部と、磁歪領域部のインピーダンス変化を検出する検出コイルと、検出コイルから出力されたインピーダンス変化に係る信号に基づいて回転軸に加わるトルクを算出するトルク算出部とを備える。以上の構成において、磁歪領域部での回転軸の軸方向の幅(W1)と検出コイルでの回転軸の軸方向の幅(W2)は、W1とW2が1<(W1/W2)<1.35の関係を満たすように設定されている。
上記の磁歪式トルクセンサでは、磁歪膜等の磁歪領域部の軸方向幅W1を検出コイルの軸方向幅W2よりも大きくしかつ最適な寸法関係になるように設定することにより、仮に、その後において回転軸すなわちステアリング軸と検出コイルの軸方向に係る位置関係が相対的に1mm程度ずれたとしても、磁歪式トルクセンサのセンサ感度変化率を、電動パワーステアリング装置の使用において支障がない程度に保つことができる。
第2の磁歪式トルクセンサ(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、磁歪領域部は、回転軸の表面に磁歪材めっき部を形成することに基づいて作製される磁歪膜であることを特徴とする。
第3の磁歪式トルクセンサ(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、磁歪膜の材質はNi−Fe合金材であることを特徴とする。
電動パワーステアリング装置(請求項4に対応)は、ステアリング軸と、ステアリング軸を回転軸としてこのステアリング軸に付設され、当該ステアリング軸に加わる操舵トルクを検出するための上記第1から第3のいずれかの磁歪式トルクセンサと、磁歪式トルクセンサで検出された操舵トルクに応じてステアリング軸に補助操舵力を付加するモータと、磁歪式トルクセンサから検出された操舵トルクに係る信号に基づいてモータの駆動を制御する制御部と、から構成されている。
上記電動パワーステアリング装置では、ステアリングホイールからの操舵力を受けるステアリング軸に付設される操舵トルク検出部として、上記の第1から第3のいずれかの磁歪式トルクセンサを利用し、当該磁歪式トルクセンサの特徴的構成に基づき、電動パワーステアリング装置自体の操舵フィーリング特性も長期の使用にわたり良好に維持することが可能である。
本発明によれば、磁歪式トルクセンサで、磁歪領域部の軸方向幅W1を検出コイルの軸方向幅W2を最適な寸法関係になるように設定したため、磁歪式トルクセンサのセンサ感度を高めることができ、かつセンサ装置組立て時に位置ずれの公差を拡大することができ、このためさらにセンサ装置に製造工程における公差管理が容易になる。またこのような特徴を有する磁歪式トルクセンサを利用して構成される電動パワーステアリング装置は、その後の使用環境において仮にステアリング軸と検出コイルの軸方向に係る位置関係が相対的にずれたとしても、磁歪式トルクセンサのセンサ感度変化率が良好に維持され、電動パワーステアリング装置としての操舵フィーリングを長期にわたり良好に維持することができる。
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
最初に、図1〜図3を参照して磁歪式トルクセンサの構成について説明する。図1〜図3は本発明に係る磁歪式トルクセンサの一構造例を示している。図1は磁歪式トルクセンサの基本的構造を示す一部断面側面図を示し、図2は磁歪式トルクセンサの基本的構成を概念的に示す側面図を示し、図3は上記磁歪式トルクセンサを操舵トルク検出部として電動パワーステアリング装置のステアリング軸に組み込んだ具体的構造の縦断面図を示している。
図1と図2に示すように磁歪式トルクセンサ10は、回転軸11と、この回転軸11の周囲に配置される1つの励磁コイル12と2つの検出コイル13A,13Bとから構成されている。回転軸11は、図1と図2では、説明の便宜上、上部および下部を切断し省略して示している。磁歪式トルクセンサ10が、自動車の電動パワーステアリング装置の操舵トルク検出部として利用されるとき、回転軸11はステアリング軸の一部となる。この状態は図3に示されている。
回転軸11は、円柱棒状の形状を有し、その軸心11aの周りに矢印Aのごとく右回転(時計回り)または左回転(反時計回り)の回転力(トルク)を受ける。回転軸11は例えばクロムモリブデン鋼材(SCM材)等の金属棒で形成されている。回転軸11には、軸方向にて上下2箇所に磁歪膜14A,14Bが設けられている。磁歪膜14A,14Bの各々は、回転軸11の軸方向にて後述の条件を満たす所要の幅を有しかつ回転軸11の円周方向の全周に渡って形成されている。2つの磁歪膜14A,14Bの間隔寸法は条件に応じて任意に設定される。
磁歪膜14A,14Bは、例えば電解めっき加工処理等により回転軸11の表面に磁歪材めっき部として形成される。この磁歪材めっき部に磁気異方性加工を施すことにより、磁気異方性を有する磁歪膜14A,14Bが形成される。なお磁歪膜14A,14Bの作り方はこれに限定されない。また回転軸11における磁歪膜が形成される領域は、所要の磁歪特性を有すればよく、磁歪膜に限定されず、磁歪領域部が形成されればよい。
上記の磁歪式トルクセンサ10において、磁歪膜14A,14Bの回転軸11aの軸方向の幅(磁歪膜幅W1)は、検出コイル13A,13Bのその軸方向の長さまたは幅(検出コイル幅W2)に後述する条件を満たすように大きくなるように設定されている。
説明の便宜上、「磁歪膜14A,14B」と「磁歪材めっき部(14A,14B)」は同一物を指すが、製造の段階・状況に応じて使い分けている。原則的に、磁気異方性を付加されて完成した段階を「磁歪膜14A,14B」といい、その前の段階では「磁歪材めっき部」という。
上記の励磁コイル12と検出コイル13A,13Bは、図1に示すごとく、回転軸11の表面に形成された2つの磁歪膜14A,14Bのそれぞれに対応して設けられる。すなわち、図1に示されるように、磁歪膜14Aの周囲には隙間を介在させて検出コイル13Aが配置される。ほぼ筒形状のリング状検出コイル13Aは、磁歪膜14Aの全周囲を囲み、かつ検出コイル13Aの検出コイル幅の寸法は磁歪膜14Aの磁歪膜幅の幅寸法よりも小さくなっている。また磁歪膜14Bの周囲には隙間を介在させて検出コイル13Bが配置される。同様に、検出コイル13Bは、磁歪膜14Bの全周囲を囲み、かつ検出コイル13Bの検出コイル幅の寸法は磁歪膜14Bの磁歪膜幅の幅寸法よりも小さくなっている。さらに、2つの検出コイル13A,13Bのそれぞれの周囲にはリング状の励磁コイル12が配置される。図1では、磁歪膜14A,14Bのそれぞれに対応して個別に励磁コイル12が設けられるように図示されているが、実際には1つの励磁コイル12の2つの部分を分けて示したものである。検出コイル13A,13Bと励磁コイル12は、回転軸11の周囲に回転軸11を囲むように設けられたリング状の支持枠体部15A,15Bを利用して磁歪膜14A,14Bの周囲スペースに巻設されている。
図2では、回転軸11の磁歪膜14A,14Bに対して配置される励磁コイル12と検出コイル13A,13Bを電気的関係として概念的に示している。磁歪膜14A,14Bに対して共通に配置される励磁コイル12には、励磁用交流電流を常時に供給する交流電源16が接続されている。また、磁歪膜14A,14Bのそれぞれに対応して配置される検出コイル13A,13Bの各出力端子からは、検出対象であるトルクに対応する誘導電圧V,Vが出力される。
検出コイル13A,13Bの各出力端子から出力された誘導電圧V,Vはトルク算出部17に入力される。トルク算出部17は、誘導電圧V,Vに基づいて回転軸11に加わったトルクを演算・算出して、当該トルクに係る信号(T)を出力する。トルク算出部17は、マイコン等の演算手段または演算用電気回路で構成される。
上記において、励磁コイル12と検出コイル13A,13Bとの関係は、変圧器の1次巻線と2次巻線との関係になっている。
回転軸11の表面に形成された磁歪膜14A,14Bは、例えばNi−Feめっきによる電解めっき加工処理で作られた磁気異方性を有する磁歪膜である。2つの磁歪膜14A,14Bの各々は、互いに逆方向の磁気異方性を有するように作られている。回転軸11に対して回転力によるトルクが作用したとき、磁歪膜14A,14Bの各々に生じる逆の磁歪特性を、磁歪膜14A,14Bの周囲に配設した検出コイル13A,13Bを利用して検出する。
次に、図3を参照して、上記磁歪式トルクセンサ10を例えば電動パワーステアリング装置のステアリング軸に操舵トルク検出部として組み込んだ具体的構造を説明する。図3において図1と図2で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付している。
図3では、操舵トルク検出部20、ステアリング軸21の支持構造、ラック・ピニオン機構34、動力伝達機構35、操舵力補助用モータ42の具体的構成が示されている。
図3において、ステアリング軸21の上部は車両のステアリングホイール(図示せず)に結合されている。ステアリング軸21の下部は、ラック・ピニオン機構34を介して、ラック軸を備えた車軸に操舵力を伝達するように構成されている。ステアリング軸21の上部に付設された操舵トルク検出部20は、上記の磁歪式トルクセンサ10を利用して構成されている。操舵トルク検出部20は磁歪式トルクセンサ10に対応し、また磁歪膜14A,14Bが形成されたステアリング軸21の部分が上記回転軸11に対応している。
ギヤボックス31を形成するハウジング31aにおいて、ステアリング軸21は、2つの軸受け部32,33によって回転自在になるよう支持されている。ハウジング31aの内部にはラック・ピニオン機構34と動力伝達機構35が収納される。ハウジング31aの上側には、ステアリング軸21(回転軸11)に対して、操舵トルク検出部20(磁歪式トルクセンサ10)が付設されている。ステアリング軸21には前述した磁歪膜14A,14Bが形成され、これらの磁歪膜14A,14Bに対応して励磁コイル12と検出コイル13A,13Bが支持枠体部15A,15Bおよびヨーク部36A,36Bに支持され、設けられている。
なお上記の操舵トルク検出部20において、磁歪膜14A,14Bの磁歪膜幅は、検出コイル13A,13Bの検出コイル幅に対して、相対的に相当に大きく強調して図示されている。しかし、これは図示の便宜上の理由であり、磁歪膜14A,14Bの磁歪膜幅と検出コイル13A,13Bの検出コイル幅との寸法関係は、後述の条件を満たすように設定されている。
ハウジング31aの上部開口はリッド37で塞がれており、このリッド37は図示しないボルトではハウジング31aに固定されている。ステアリング軸21の下端部に設けられたピニオン38は軸受け部32,33の間に位置している。ラック軸39は、ラックガイド40で案内され、かつ圧縮されたスプリング41で付勢され、ピニオン38側へ押し付けられている。動力伝達機構35は、操舵力補助用モータ42の出力軸に結合された伝動軸43に固定されるウォームギヤ44と、ステアリング軸21に固定されたウォームホイール45とによって形成される。操舵トルク検出部20はリッド37の円筒部37aの内部に取り付けられている。
操舵トルク検出部20は、ステアリング軸21に作用する操舵トルクを検出する。その検出値は、制御装置(図3中、図示しない)に入力され、モータ42に適切な補助操舵トルクを発生させるための基準信号として使用される。
操舵トルク検出部20は、ステアリング軸21に対してステアリングホイールからの操舵トルクが作用したとき、ステアリング軸21に生じる捩れに応じた磁歪膜14A,14Bの磁気特性の変化を、検出コイル13A,13Bの各出力端子から誘導電圧V,Vの変化として電気的に検出する。
2つの検出コイル13A,13Bに関しては、それぞれ、後述の図4に示す凸形状の磁歪特性曲線51A,51Bが得られる。この磁歪特性曲線51A,51Bは、それぞれ、検出コイル13A,13Bからの検出出力である誘電電圧の変化特性に対応している。
操舵トルク検出部20は、2つの磁歪特性曲線51A,51Bを基礎に、2つの検出コイルから出力される誘導電圧の差を算出し、その算出値の符号と大きさによってステアリング軸21に加えられた操舵トルクの回転方向(右回転または左回転)と大きさを検出する。
ステアリング軸21に操舵トルクが作用したときステアリング軸21に捩れが生じ、その結果、磁歪膜14A,14Bに磁歪効果が生じる。操舵トルク検出部20では、交流電源16から励磁コイル12に励磁用電流が常に供給されているので、磁歪膜14A,14Bでの磁歪効果に起因する磁界変化を検出コイル13A,13Bによって誘導電圧V,Vの変化として検出する。操舵トルク検出部20によれば、誘導電圧V,Vの変化に基づき、2つの誘導電圧V,Vの差を検出電圧値として出力する。従って操舵トルク検出部20の出力電圧値(V−V)に基づいてステアリング軸21に加えられた操舵トルク(T)の方向と大きさを検出することができる。
図4についてさらに詳述する。図4は、前述のごとく、2つの磁歪膜14A,14Bのそれぞれの磁歪特性曲線51A,51Bを示す図である。図4において、横軸は、ステアリング軸21に加えられた操舵トルクを意味し、正側(+)が右回転に対応し、負側(−)が左回転に対応している。また図4の縦軸は電圧軸を意味する。
磁歪膜14A,14Bについての上記磁歪特性曲線51A,51Bは同時に検出コイル13A,13Bの検出出力特性を表している。すなわち、磁歪特性曲線51A,51Bを有する磁歪膜14A,14Bに対して共通の励磁コイル12により励磁用交流電流を供給し、この励磁用交流電流に感応して検出コイル13A,13Bは誘導電圧を出力していることから、検出コイル13A,13Bの誘導電圧の変化特性は、磁歪膜14A,14Bの磁歪特性曲線51A,51Bに対応している。換言すれば、磁歪特性曲線51Aは検出コイル13Aから出力される誘導電圧Vの変化特性を示し、他方、磁歪特性曲線51Bは検出コイル13Bから出力される誘導電圧Vの変化特性を示している。
磁歪特性曲線51Aによれば、検出コイル13Aから出力される誘導電圧Vの値は、操舵トルクの値が負領域から正領域に変化しさらに操舵トルクの正の値T1に到るにつれて略線形特性にて増加し、操舵トルクが正の値T1となったときにピーク値となり、操舵トルクがT1よりさらに増加すると徐々に減少するという特性を有する。他方、磁歪特性曲線51Bによれば、検出コイル13Bから出力される誘導電圧Vの値は、操舵トルクの値が負の値−T1に到るまでは徐々に増加し、操舵トルクが負の値−T1のときにピーク値をとり、操舵トルクがさらに−T1よりも増加して負領域から正領域に変化すると略線形特性にて減少するという特性を有する。
図4に示すように、検出コイル13Aに関連する磁歪特性曲線51Aと検出コイル13Bに関連する磁歪特性曲線51Bは、磁歪膜14A,14Bのそれぞれで互いに逆方向となる磁気異方性を有することが反映して、両磁歪特性曲線が交わる点を含む縦軸に関して略線対称との関係になっている。
図4において示された線52は、磁歪特性曲線51A,51Bの共通領域であって略線形特性を有する領域において、検出コイル13Aの出力電圧として得られる磁歪特性曲線51Aの各値から、検出コイル13Bの出力電圧として得られる磁歪特性曲線51Bの対応する各値を差し引いた値に基づいて作成されるグラフを示す。操舵トルクがゼロのときに、各検出コイル13A,13Bから出力される誘導電圧は等しいので、その差の値はゼロとなる。操舵トルク検出部20では、上記の磁歪特性曲線51A,51Bにおける操舵トルクの中立点(ゼロ点)付近の略一定勾配とみなされる領域を使用することで、上記線52を略直線特性を有するものとして形成している。なお線52の特性グラフに関しては、図4の縦軸は差電圧の値を示す軸を意味している。特性グラフである直線52は、原点(0,0)を通る直線であって、縦軸および横軸の正側・負側に存在する。操舵トルク検出部20の検出出力値は前述のごとく検出コイル13A,13Bから出力される誘導電圧の差(V−V)として得られることから、上記直線52を利用することに基づいて、ステアリング軸21に加えられた操舵トルクの方向と大きさを検出することができる。
上記のごとく、操舵トルク検出部20の出力値に基づき、ステアリング軸21(回転軸11)に入力された操舵トルクに関してその回転方向と大きさに対応した検出信号を取り出すことが可能となる。すなわち、操舵トルク検出部20から出力される検出値によって、ステアリング軸21に作用した操舵トルクの回転方向と大きさを知ることができる。
換言すれば、操舵トルク検出部20の検出値は、操舵トルクに応じて直線52上のいずれかの点として出力される。当該検出値が、横軸で正側に位置するときには操舵トルクは右回転と判断され、横軸で負側に位置するときには操舵トルクは左回転と判断される。また上記検出値の縦軸上での絶対値が操舵トルクの大きさとなる。このようにして、操舵トルク検出部20によって、直線52の特性を利用することにより、検出コイル13A,13Bの出力電圧値を基礎に操舵トルクを検出することが可能となる。
ここで、図5を参照して、自動車に装備される電動パワーステアリング装置の全体的構成と作用を概略的に説明し、かつ図3の構造と関連づけながら説明する。図5において、図3で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付している。
電動パワーステアリング装置60は、ステアリングホイール61に連結されるステアリング軸21に対して補助用の操舵力(操舵トルク)を与えるように構成される。ステアリング軸21は、上端にステアリングホイール61が連結された上側のステアリング軸21aと、下端にピニオンギヤ38が設けられた下側のステアリング軸21bと、上下のステアリング軸21a,21bを連結する自在軸継手21cとから構成されている。下側のステアリング軸21bのピニオンギヤ38に対して、これに噛み合うラックギヤ39aを設けたラック軸39が配置されている。ピニオンギヤ38とラック軸39(ラックギヤ39a)とによってラック・ピニオン機構34が形成される。ラック軸39の両端にはタイロッド46が設けられ、各タイロッド46の外側端には前輪62が取り付けられている。
下側のステアリング軸21bに対して動力伝達機構35を介してモータ42が設けられている。動力伝達機構42は、ウォームギヤ43とウォームホイール45によって形成されている。モータ42は、操舵トルクを補助する回転力(トルク)を出力し、この回転力を、動力伝達機構35を経由してステアリング軸21bに与える。
ステアリング軸21bには操舵トルク検出部20が設けられる。操舵トルク検出部20は、運転者がステアリングホイール61を操作してその操舵トルクをステアリング軸21に加えたとき、ステアリング軸21に加わった当該操舵トルクを検出する。
なお、図3に示したステアリング軸21は、上記の説明で明かなように、厳密には下側のステアリング軸21bを意味している。
63は自動車の車速を検出する車速検出部であり、64はコンピュータで構成される制御装置である。制御装置64は、操舵トルク検出部20から出力される操舵トルク信号Tと車速検出部63から出力される車速信号Vを取り入れ、操舵トルクに係る情報を車速に係る情報に基づいて、モータ42の動作を制御する駆動制御信号SG1を出力する。
電動パワーステアリング装置60は、通常のステアリング系の装置構成に対し、操舵トルク検出部20、車速検出部63、制御装置64、モータ42、動力伝達機構34等を付加することによって構成される。
運転者がステアリングホイール61を操作して車両の走行運転中に走行方向の操舵を行うとき、ステアリング軸21に加えられた操舵トルクに基づく回転力はラック・ピニオン機構34を介してラック軸39の軸方向の直線運動に変換され、さらにタイロッド46を介して前輪62の走行方向を変化させる。このときに、同時に、ステアリング軸21bに付設された操舵トルク検出部20は、ステアリングホイール61での運転者による操舵に応じた操舵トルクを検出して電気的な操舵トルク信号Tに変換し、この操舵トルク信号Tを制御装置64へ出力する。また車速検出部63は、車速を検出して車速信号Vに変換し、この車速信号Vを制御装置64へ出力する。制御装置64は、操舵トルク信号T、車速信号Vに基づいてモータ42を駆動するためのモータ電流を発生する。モータ電流によって駆動されるモータ42は、動力伝達機構35を介して補助操舵力をステアリング軸21bに作用させる。以上のごとくモータ42を駆動することにより、ステアリングホイール61に加えられる運転者の操舵力が軽減される。
次に、図6〜図8を参照して本発明に係る磁歪式トルクセンサ10の特徴的構成を説明する。図6は、図1等で示した磁歪式トルクセンサ10の構成に関して磁歪膜14A,14Bと検出コイル13A,13Bの取付け位置関係のみを抽出しかつ誇張して示した側面図である。図7は、磁歪膜幅(W1)と検出コイル幅(W2)の比D(=W1/W2)に対する感度変化率の変化を示すグラフである。図8は比Dの感度変化率と位置ずれの関係を示すグラフである。
図6において図1で説明した要素には同一の符号を付している。図6で磁歪膜14A,14Bの磁歪膜幅の寸法はW1として示され、検出コイル13A,13Bの検出コイル幅の寸法はW2として示されている。なお図6で、矢印71は磁歪膜14Aに付加された磁気異方性の方向を示し、矢印72は磁歪膜14Bに付加された磁気異方性の方向を示している。
図1に示すごとく、上記の磁歪式トルクセンサ10では、磁歪膜14A,14Bの磁歪膜幅W1が検出コイル13A,13Bの検出コイル幅W2よりも大きく、かつその比D(=W1/W2)が1.0<D<1.35の条件を満たすように設定されている。この条件を満たすことにより、磁歪式トルクセンサ10のセンサ感度が極めて向上する。上記の条件が最適であることの理由と、上記条件式を導き出す根拠を説明する。
先ず、磁歪膜14A,14Bでは、回転軸11の軸方向の幅内で、感度は均一ではなく、中央部の感度が高く、両端部の感度が低いという特性を有することが見出された。磁歪膜14A,14Bの両端部の感度が低くなる理由は、当該端部では局部的な磁力線が存在し、トルクの印加で磁歪膜に歪みが生じたとき、その磁気異方性71,72によって発生する逆磁歪特性が当該磁力線で低下させられるからである。逆に、検出コイルが狭くなりすぎると、検出コイルと磁歪膜に占める磁力線の割合いが小さくなり、感度が低下することになる。
図7に示した磁歪膜幅W1と検出コイル幅W2の比Dに対する感度変化率の変化については、磁歪膜と検出コイルとの間の隙間を0.5mmに設定して測定を行っている。図7に示される最小二乗法で得たグラフ73では、Dの値について、D=1あたりで感度変化率は1を超え、D=1から増大するに従って感度変化率が増加し、D=1.14のあたりで感度変化率のピークとなる。その後、Dの値の増加に従って感度変化率は減少し、D=1.35を超えたあたりでは感度変化率は1よりも小さくなる。以上のごとく、磁歪式トルクセンサ10のセンサ感度の感度変化率は、比Dの値、すなわち磁歪膜幅W1と検出コイル幅W2の比(W1/W2)に依存して増減し、かつ1.0<D<1.35では感度変化率が1をほぼ上回る。
図8に示した比Dの感度変化率と位置ずれの関係を示すグラフでは、位置ずれが0mmのグラフ81、位置ずれが0.5mmのグラフ82、位置ずれが1.0mmのグラフ83、位置ずれが1.5mmのグラフ84が示されている。この「位置ずれ」は、回転軸11の軸方向における磁歪膜14A,14Bと検出コイル13A,13Bとの間の位置ずれを意味している。図8のグラフ81〜84を参照すれば、位置ずれ0〜1mmの範囲で比Dが1<D<1.3の範囲であるとき、感度変化率が1をほぼ上回ることが分かる。
従来の磁歪式トルクセンサによれば、上記の「位置ずれ」が0.68mmを超えた程度で感度変化率が0.98を切っていた。図8を参照すれば、Dの値を最適に設定することにより位置ずれが1.5mmを超えた場合でも感度変化率が0.98を切らない範囲に設定することができる。
上記のごとく図7と図8のグラフに従えば、従来の磁歪式トルクセンサでのD=1を基準にすると、本実施形態に係る磁歪式トルクセンサ10によれば、その感度変化率を上回る1<D<1.35でDの最適値の範囲を決めることができる。また、より好ましい値として、磁歪式トルクセンサ10を操舵トルク検出部20として自動車に適用した場合に見込まれる最大の位置ずれである処の1.0mmを基準にして、かつ感度変化率が0.98を下回らない1.03<D<1.30を設定することができる。
なお、Dの最大値は図7に示されるごとく1.14程度であるので、上記のごとく磁歪膜幅W1を検出コイル幅W2よりも広くすることにより、最もセンサ感度特性の高い磁歪式トルクセンサを得ることができる。またDの値を最適値にすることにより、図10に示した隙間の増大に対する感度変化率の低下に対しても、感度変化率が0.98を切らないように調整することが可能である。
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさ、材質、および配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
本発明は、操舵トルク検出部として使用される磁歪式トルクセンサ、およびこれを利用した電動パワーステアリング装置であって、センサ感度を向上し、かつ装置組立て時の位置ずれ公差を拡大するのに利用される。
本発明に係る磁歪式トルクセンサの基本的構造を示す一部断面側面図である。 磁歪式トルクセンサの基本的構成を概念的に示す側面図である。 本発明に係る磁歪式トルクセンサを操舵トルク検出部として電動パワーステアリング装置のステアリング軸に組み込んだ具体的構造の要部縦断面図である。 磁歪式トルクセンサにおける各検出コイルに関する磁歪特性曲線とセンサ検出特性を示すグラフである。 本発明に係る磁歪式トルクセンサを操舵トルク検出部として組み込んだ電動パワーステアリング装置の全体的構成を示す図である。 図1で示した磁歪式トルクセンサの構成に関して磁歪膜と検出コイルの取付け位置関係のみを抽出して示した側面図である。 磁歪膜幅(W1)と検出コイル幅(W2)の比D(=W1/W2)に対する感度変化率の変化を示すグラフである。 比Dの感度変化率と位置ずれの関係を示すグラフである。 従来の磁歪式トルクセンサにおける磁歪膜と検出コイルの間の回転軸の軸方向での位置ずれとセンサの感度変化率との関係を示すグラフである。 従来の磁歪式トルクセンサにおける磁性膜と検出コイルの間の隙間とセンサの感度変化率との関係を示すグラフである。
符号の説明
10 磁歪式トルクセンサ
11 回転軸
12 励磁コイル
13A,13B 検出コイル
14A,14B 磁歪膜
20 操舵トルク検出部
21 ステアリング軸
31 ギヤボックス
34 ラック・ピニオン機構
35 動力伝達機構
42 モータ
51A,51B 磁歪特性曲線(インピーダンス特性曲線)
60 電動パワーステアリング装置
61 ステアリングホイール
62 車速検出部
63 制御装置

Claims (4)

  1. トルクを加えられて回転する回転軸と、
    前記回転軸の表面の少なくとも1箇所に円周方向に全周に渡って形成された磁歪領域部と、
    前記磁歪領域部のインピーダンス変化を検出する検出コイルと、
    前記検出コイルから出力されたインピーダンス変化に係る信号に基づいて前記回転軸に加わる前記トルクを算出するトルク算出手段とを備え、
    前記磁歪領域部での前記回転軸の軸方向の幅(W1)と前記検出コイルでの前記回転軸の軸方向の幅(W2)は、W1とW2が1<(W1/W2)<1.35の関係を満たすように設定されることを特徴とする磁歪式トルクセンサ。
  2. 前記磁歪領域部は、前記回転軸の表面に磁歪材めっき部を形成することに基づいて作製される磁歪膜であることを特徴とする請求項1記載の磁歪式トルクセンサ。
  3. 前記磁歪膜の材質はNi−Fe合金材であることを特徴とする請求項2記載の磁歪式トルクセンサ。
  4. ステアリング軸と、
    前記ステアリング軸を回転軸として前記ステアリング軸に付設され、前記ステアリング軸に加わる操舵トルクを検出するための請求項1〜3のいずれか1項に記載された磁歪式トルクセンサと、
    前記磁歪式トルクセンサで検出された前記操舵トルクに応じて前記ステアリング軸に補助操舵力を付加するモータと、
    前記磁歪式トルクセンサから検出された前記操舵トルクに係る信号に基づいて前記モータの駆動を制御する制御手段と、
    から成ることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
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