JP4932206B2 - 磁歪式トルクセンサの製造方法 - Google Patents
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前記操舵トルクセンサに使用される非接触式のトルクセンサとして、磁歪に起因する磁気特性の変化に基づいてトルクを検出する磁歪式トルクセンサが知られている。磁歪式トルクセンサには、磁気異方性を異にする2つの磁歪膜を回転軸に設けるとともに、各磁歪膜に対向してそれぞれ検出コイルを配置して構成されたものがある(特許文献1参照)。この磁歪式トルクセンサでは、回転軸にトルクが加えられると磁歪膜の透磁率が変化し、これに応じて検出コイルのインピーダンス(またはインダクタンス)が変化し、この変化に基づいてトルクを検出している。
なお、磁歪式トルクセンサの感度(磁歪感度)に関連させて磁歪膜の物性を規制した技術が特許文献2に開示されている。この特許文献2では、磁歪膜の比透磁率μsと、ヤング率Eと、磁歪定数λsに基づき、(μs・E)1/2・λsの値を規制することで、所望の磁歪感度を得ようとしている。
また、磁歪式トルクセンサの性能について論じるとき、そのファクターは磁歪感度だけではなく、磁歪のヒステリシスも重要である。ここで言うヒステリシスとは、トルクの変化によってインピーダンスが変化する磁歪センサにおいて、トルクの経路の変化に対して、同じトルクの値に対するインピーダンスの値が不可逆的に異なる現象を指す。ヒステリシスはトルク検出精度に大きく影響を及ぼし、ヒステリシスが小さいほど検出精度がよくなり、操舵フィーリングも良好となる。
しかしながら、従来、磁歪感度とヒステリシスを両方とも良好にする磁歪膜を選択するには、磁歪膜の組成や磁歪膜の膜厚等を少しずつ変更してテストを行い磁歪感度とヒステリシスを求めていく以外、方法がなかった。
また、この発明は、感度とヒステリシス特性の両方が良好となる磁歪式トルクセンサの製造方法を提供するものである。
Ni−Fe合金の磁歪膜においては、λs・μの値と合金のFe組成(wt%)との相関関係は、磁歪感度と合金のFe組成(wt%)との相関関係に極めて近似する。したがって、λs・μから磁歪感度を推定することができ、λs・μの値が所定値以上となるように規制することにより磁歪感度を設定したNi−Fe合金の磁歪膜をメッキ法にて前記回転軸の外周に形成することによって、電動ステアリング装置の操舵フィーリングを満足させる高感度なセンサを得ることができる。
Ni−Fe合金の磁歪膜の磁歪感度およびヒステリシスはFe組成(wt%)に依存する。Fe組成を所定範囲に規制することで磁歪感度とヒステリシスの両方が良好となり、電動ステアリング装置の操舵フィーリングを満足させる感度およびヒステリシス特性を得ることができる。
請求項3および請求項4に係る発明によれば、磁歪式トルクセンサのヒステリシス特性が良好となる。
図1に示すように、車両用電動パワーステアリング装置(電動ステアリング装置)100はハンドル(操舵手段)2に連結されたステアリングシャフト1を備えている。ステアリングシャフト1は、ハンドル2に一体結合されたメインステアリングシャフト3と、ラック&ピニオン機構のピニオン7が設けられたピニオン軸(回転軸)5とが、ユニバーサルジョイント4によって連結されて構成されている。
ピニオン軸5は例えばクロム−モリブデン鋼に浸炭処理をしてなり、その下部、中間部、上部を軸受6a,6b,6cによって支持され、ピニオン7はピニオン軸5の下端部に設けられている。ピニオン7は、車幅方向に往復動し得るラック軸8のラック8aに噛合し、ラック軸8の両端には、タイロッド9,9を介して転舵輪としての左右の前輪10,10が連結されている。この構成により、ハンドル2の操舵時に通常のラック&ピニオン式の転舵操作が可能であり、前輪10,10を転舵させて車両の向きを変えることができる。ここで、ラック軸8、ラック8a、タイロッド9,9は転舵機構を構成する。
磁歪式トルクセンサ30は、ピニオン軸5の外周面に周方向全周に亘って環状に設けられた2つの磁歪膜31,32と、各磁歪膜31,32に対向配置された第1検出コイル33と第2検出コイル34と、第1検出コイル33および第2検出コイル34にそれぞれ接続された検出回路35,36を主要構成としている。
磁歪膜31,32は、歪みの変化に対して透磁率の変化が大きい素材からなる金属膜であり、例えば、ピニオン軸5の外周にメッキ法で形成したNi−Fe系の合金膜からなる。
ECU50は、検出回路35,36からの出力電圧に基づいて、ピニオン軸5に作用するトルクを検出し、検出されたトルクに応じて電動機11の目標電流を算出し、該目標電流によって電動機11を駆動して補助操舵力を発生させ、車両の転舵を行う。
図2は、前述した電動パワーステアリング装置100に設けた磁歪式トルクセンサ30と同じ構成からなる磁歪式トルクセンサであって、磁歪膜の膜厚は40μmで同一とし、
厚磁歪膜のFe組成(wt%)を異にする多数の磁歪式トルクセンサに対して、励磁周波数を30kHzで実験を行い、その実験結果から磁歪感度およびヒステリシスとFe組成(wt%)との相関関係をまとめた特性図である。
一方、図4は、Ni−Fe合金における磁歪定数λsおよび透磁率μとFe組成(wt%)との相関関係を示す周知の物理特性図である。
ここで、この発明の発明者は、磁歪定数λsと透磁率μとの積(λs・μ)に着目して、前記積λs・μとFe組成(wt%)との相関関係について整理し、図3に示す特性図を得た。その結果、前記積λs・μとFe組成(wt%)との相関関係が、磁歪感度とFe組成(wt%)との相関関係に極めて近似することを知得した。この知見に基づき、λs・μから磁歪感度を推定することができ、λs・μの値を規制することによって磁歪感度を所望に設定することができる。
そこで、前記電動パワーステアリング装置100における磁歪式トルクセンサ30の磁歪膜31,32としては、λs・μが最大値(λs・μ)maxの90%以上のものを採用することで、最大感度の80%以上を得るようにした。ちなみに、Ni−Fe合金では、Feの組成が33%のときにλs・μが最大値(λs・μ)max=471×10−4となる。
そこで、前記電動パワーステアリング装置100における磁歪式トルクセンサ30の磁歪膜31,32としては、磁歪膜31,32のFe組成を30〜38wt%に規制することで、磁歪感度とヒステリシス特性の両方が良好となるようにした。
そこで、前記電動パワーステアリング装置100における磁歪式トルクセンサ30の磁歪膜31,32としては、磁歪膜31,32の膜厚を15〜50μmに規制することで、ヒステリシス特性が良好となるようにした。
なお、この実施例では、磁歪式トルクセンサ30の磁歪膜31,32に対して、磁歪定数λsと透磁率μとの積λs・μと、Fe組成と、膜厚の全てについて規制を設けたが、λs・μだけを規制してもよいし、λs・μとFe組成の二つを規制してもよいし、λs・μと膜厚の二つを規制してもよい。
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
例えば、磁歪膜のFe組成の規制値「30〜38wt%」、および、膜厚の規制値「15〜50μm」については例示であって、この規制値に限るものではなく、所望するヒステリシス特性に応じて規制値を変更することが可能である。
11 電動機
30 磁歪式トルクセンサ
31,32 磁歪膜
100 電動パワーステアリング装置(電動ステアリング装置)
Claims (4)
- 回転軸に設けられた磁歪膜の磁気特性の変化から前記回転軸に加わったトルクを検出する磁歪式トルクセンサの製造方法において、
前記磁歪膜を前記回転軸の外周に設けるステップを備え、
前記ステップは、磁歪定数λsと透磁率μとの積のみに基づいて規定される磁歪膜を設けるものであって、前記積が所定値以上となるように規制することにより磁歪感度を設定したNi−Fe合金の磁歪膜をメッキ法にて前記回転軸の外周に形成することを特徴とする磁歪式トルクセンサの製造方法。 - 前記ステップは、磁歪定数λsと透磁率μとの積が所定値以上となるNi−Fe合金の磁歪膜として、Fe組成が所定範囲内となるように規制した磁歪膜をメッキ法にて前記回転軸の外周に形成することを特徴とする請求項1に記載の磁歪式トルクセンサの製造方法。
- 前記ステップは、ヒステリシスが所定値以下となるように規制された範囲のFe組成の磁歪膜をメッキ法にて前記回転軸の外周に形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁歪式トルクセンサの製造方法。
- 前記ステップは、ヒステリシスが所定値以下となるように規制された範囲の膜厚の磁歪膜をメッキ法にて前記回転軸の外周に形成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の磁歪式トルクセンサの製造方法。
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