JP2007091965A - 透明複合材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属アルコキシドの部分縮合物と熱硬化性樹脂前駆体とを均一混合し、次いで重合およびゲル化して得られる有機無機分子ハイブリッド硬化物をマトリックス樹脂とし、無機繊維を補強材としてなる複合材料であって、該硬化物および無機繊維の屈折率が1.55以上且つアッベ数が40以上であり、該複合材料の光線透過率が80%以上である、透明複合材料。
【選択図】なし
Description
また熱硬化性透明樹脂を、キャスティング、注型等により成形したものも提案されている。たとえば特許文献2には特定の光硬化性樹脂からなる透明タッチパネル、特許文献3には光硬化性樹脂からなる透明樹脂シートおよびその製法等が開示されている。
一般に熱硬化性樹脂は線膨張率が大きく、剛性や靭性も低いため、ガラス繊維などを補強材に用いた繊維強化複合材料として使用される。光学用途に利用する場合は透明性が要求されるが、単に透明な熱硬化性樹脂を使用しただけでは光透過性が低く、透明な複合材料にはならない。
すなわち発明によれば、金属アルコキシドの部分縮合物と熱硬化性樹脂前駆体とを均一混合し、ついで重合およびゲル化して得られる有機無機分子ハイブリッド硬化物をマトリックス樹脂とし、無機繊維を補強材としてなる複合材料であって、該硬化物および無機繊維の屈折率が1.55以上且つアッベ数が40以上であり、該複合材料の光線透過率が80%以上である複合材料を利用することにより、透明基板やレンズシートに好適な複合材料を作成することが可能となった。
(1)金属アルコキシドの部分縮合物と熱硬化性樹脂前駆体とを均一混合し、ついで重合およびゲル化して得られる有機無機分子ハイブリッド硬化物をマトリックス樹脂とし、無機繊維を補強材としてなる複合材料であって、該硬化物および無機繊維の屈折率が1.55以上且つアッベ数が40以上であり、該複合材料の光線透過率が80%以上である、透明複合材料。
(2)前記金属アルコキシドが、少なくともチタニウムアルコキシドを含有することを特徴とする、請求項1記載の透明複合材料。
(3)前記金属アルコキシドが、少なくともチタニウムアルコキシドとシランアルコキシドとを含有することを特徴とする、上記(1)記載の透明複合材料。
(4)金属アルコキシドが、少なくともチタニウムアルコキシドと、下記一般式(1)または一般式(2)で表されるシランアルコキシドからなる群より選ばれる少なくとも一種とからなることを特徴とする、上記(1)記載の透明複合材料。
R1−Si−(OR2)3 ・・・(1)
R3 2−Si−(OR4)2 ・・・(2)
R1は脂環式エポキシ基またはオキセタン基を有する有機鎖、R2、R4はCH3またはC2H5、R3はCH3またはC6H5
(5)前記熱硬化性樹脂前駆体が脂環式エポキシ樹脂前駆体であることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の透明複合材料。
(6)熱硬化性樹脂前駆体が、下記一般式(3)で表される脂環式エポキシ樹脂前駆体であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の透明複合材料。
(8)ガラス繊維がガラスクロスであることを特徴とする、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の透明複合材料。
(9)厚みが50μm以上5mm以下のシート状成形体であることを特徴とする、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の透明複合材料。
本発明で使用する有機無機ハイブリッド硬化物は、まず分子レベルで金属アルコキシドの部分縮合物と熱硬化性樹脂前駆体とを結合させていることを特徴とする。なお通常、熱硬化性樹脂において、原料の低分子前駆体と、硬化後の樹脂との呼称を明確に区別しないで用いる場合も多いが、本発明においては、より明確に発明を規定するために、熱硬化性樹脂前駆体と熱硬化性樹脂硬化物とを区別して記載する。分子レベルで結合させるためには、まず、部分縮合物と熱硬化性樹脂前駆体とを結合反応が進行する前に分子オーダーで均一混合させる必要がある。すなわち、金属アルコキシドの部分縮合物は三次元架橋していない鎖状構造あるいは低分子量のものを用いることが好ましい。熱硬化性樹脂前駆体も同様で、平均分子量2000以下、好ましくは1000以下の流動性のあるものを使用し、互いに分子レベルで相溶させる必要がある。
ここでいうアッベ数(νD)とは、屈折率の波長依存性、すなわち分散の度合いを示すもので、次の式で求めることができる。
νD=(nD−1)/(nF−nC)
ここで、nC、nD、nFは、それぞれフランホーファーの線のC線(656nm)、D線(589nm)、F線(486nm)に対する屈折率である。
一般的なガラス繊維はアッベ数が50以上であり、マトリックス樹脂よりも屈折率の波長依存性が低いため、たとえばD線での屈折率を一致させても、それよりも短波長側のF線では、マトリックス樹脂の屈折率の増加が大きく、マトリックス樹脂とガラス繊維との屈折率の差が広がる。D線での光線透過率が80%以上であっても、短波長側のF線での光線透過率は、乱屈折により減少してしまう。
通常、ガラス繊維と金属アルコキシドの部分縮合物と熱硬化性樹脂前駆体とを均一混合して得られる均一混合体(以下、単に均一混合体と呼ぶ)との濡れ性、親和性を高めるために、シランカップリング剤等により表面処理をしたガラスクロスが使用される。しかし、本発明で使用する有機無機ハイブリッド樹脂では、無処理のガラスクロスを使用することも可能である。本発明において、ガラス繊維はチョップドストランド、マット、ロービングなどさまざまな形態で使用可能であるがガラスクロスは好ましい形態である。
ジルコニウムアルコキシドとしては、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシド、ジルコニウムテトライソブトキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラエトキシドなどを用いることができる。
チタニウムアルコキシド単独の部分縮合物を過剰に使用した場合、部分縮合物と熱硬化性樹脂前駆体とが均一混合しても、重合およびゲル化の段階で粉体状の無機成分の凝集が発生し、有機無機ハイブリッド硬化物の透明性や靭性の著しい低下につながることがあり、凝集防止のためには、シランアルコキシドとの混合使用は有効である。
R1-Si-(OR2)3 ・・・(1)
ここでR1は脂環式エポキシ基またはオキセタン基を有する有機鎖であるが、有機無機ハイブリッド硬化物の透明性向上や耐熱性向上のために、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基や3−(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシプロポキシル基が好ましい。また、R2はCH3またはC2H5である。
R3 2-Si-(OR4)2 ・・・(2)
ここで、R3はCH3またはC6H5(フェニル基)であるが、C6H5の含有率を増やした方が屈折率を高める上で好ましい。しかし、芳香族系の有機鎖を導入することは、高屈折率化への効果が大きいが、高アッベ数化にもつながる。また、R4はCH3またはC2H5である。
シランアルコキシドの添加量は、Si原子とTi原子のモル比でSi/Ti=1以上が均質なマトリックス樹脂を得るためには好ましく、屈折率やアッベ数の光学特性改善のためにはSi/Ti=5以下が好ましい。
100μm以上の厚みの成型体を製造する場合には、100℃以下の温度で乾燥し重合およびゲル化が進んだプレシートを多数積層してプレス成型することも可能である。
透明複合材料の形状は、シート状成形体が好ましい。ガラスクロスを用いる場合、ガラスクロスの取り扱い性を考慮すると、シート状成形体の厚みは、20μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。厚みの上限は、プレス成型時の収縮を考慮すると、5mm以下が好ましい。
[屈折率及びアッベ数の測定]
アタゴ社製の多波長アッベ屈折計DRM−2型を用いて、23℃の温度で、波長589nmの屈折率を測定した。浸漬液には1−ブロモナフタレンを使用した。また、波長656nm、589nm、486nmの屈折率を測定してアッベ数を求めた。
[光線透過率の測定]
日本分光(株)製の紫外可視分光光度計V−560型を用いて、波長589nmの光線透過率を測定し、光線透過率(或いは、D線の光線透過率)とした。
また、広い波長範囲で光線透過率が保持されていることを確認するため、波長656nm及び486nmの屈折率を測定して、それぞれC線及びF線の光線透過率とした。
ジフェニルジメトキシシラン49g、ジメチルジメトキシシラン6g、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン25gに蒸留水6g、蟻酸4g、溶媒(ジエチレングリコールジメチルエーテル)61gの混合溶液を加え、30℃で2hr攪拌した。チタニウムテトラ−n−ブトキサイド34gを攪拌しながら滴下し、40℃で4hr攪拌、70℃で4hr攪拌した。さらに、70℃で攪拌しながら徐々に減圧し、最終的には20Torrの圧力下で揮発成分を除去し、可とう性脂環式エポキシ樹脂前駆体(ダウケミカル社製「ERL X4360」)34gを70℃で攪拌しながら混合し、均一混合体とした。
この均一混合体をEガラス(屈折率1.558、アッベ数59)繊維から成る厚さ50μmのガラスクロス(旭シュエーベル(株)製)に含浸した。次に70℃で20hr真空乾燥後、100℃で2hr、150℃で2hrプレス成型して厚さ100μmの靭性のある透明複合材料を得た。光線透過率は90%であり、広い波長範囲で光線透過率が保持されていた。
また均一混合体をガラスクロスなしで同様にプレス成型して厚さ50〜100nmの硬化物薄片を製作し、屈折率及びアッベ数を測定した。屈折率は1.563、アッベ数は44であった。
ジフェニルジメトキシシラン49g、ジメチルジメトキシシラン6g、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン25gに蒸留水6g、蟻酸4g、溶媒(ジエチレングリコールジメチルエーテル)61gの混合溶液を加え、30℃で2hr攪拌した。チタニウムテトラ−n−ブトキサイド17gとジルコニウム−n−ブトキサイドの80重量%n−ブタノール溶液24g(アズマックス(株)試薬)の混合液を攪拌しながら滴下し、40℃で4hr攪拌、70℃で4hr攪拌した。さらに、70℃で攪拌しながら徐々に減圧し、最終的には20Torrの圧力下で揮発成分を除去し、可とう性脂環式エポキシ樹脂前駆体(ダウケミカル社製「ERL X4360」)21gを70℃で攪拌しながら混合し、均一混合体とした。
この均一混合体を実施例1と同様の条件でプレス成型して厚さ100μmの靭性のある透明複合材料を得た。光線透過率は88%であり、広い波長範囲で光線透過率が保持されていた。また同様に硬化物切片の屈折率及びアッベ数を測定した。屈折率は1.556、アッベ数は44であった。
ジフェニルジメトキシシラン24g、ジメチルジメトキシシラン6g、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン25gに蒸留水5g、蟻酸3g、溶媒(ジエチレングリコールジメチルエーテル)41gの混合溶液を加え、30℃で2hr攪拌した。チタニウムテトラ−n−ブトキサイド68gを攪拌しながら滴下し、40℃で4hr攪拌、70℃で4hr攪拌した。さらに、70℃で攪拌しながら徐々に減圧し、最終的には20Torrの圧力下で揮発成分を除去し、可とう性脂環式エポキシ樹脂前駆体(ダウケミカル社製「ERL X4360」)40gを70℃で攪拌しながら混合し、均一混合体とした。
この均一混合体を実施例1と同様の条件でプレス成型して厚さ110μmの靭性のある透明複合材料を得た。光線透過率は89%であり、広い波長範囲で光線透過率が保持されていた。また同様に硬化物切片の屈折率及びアッベ数を測定した。屈折率は1.568、アッベ数は48であった。
ジフェニルジメトキシシラン49g、ジメチルジメトキシシラン6g、3−エチル−3−(3−トリエトキシシリルプロポキシメチル)オキセタン25gに蒸留水6g、蟻酸4g、溶媒(ジエチレングリコールジメチルエーテル)61gの混合溶液を加え、30℃で2hr攪拌した。チタニウムテトラ−n−ブトキサイド34gを攪拌しながら滴下し、40℃で4hr攪拌、70℃で4hr攪拌した。さらに、70℃で攪拌しながら徐々に減圧し、最終的には20Torrの圧力下で揮発成分を除去し、可とう性脂環式エポキシ樹脂前駆体(ダウケミカル社製「ERL X4360」)34gを70℃で攪拌しながら混合し、均一混合体とした。
この均一混合体を実施例1と同様の条件でプレス成型して厚さ95μmの靭性のある透明複合材料を得た。光線透過率は91%であり、広い波長範囲で光線透過率が保持されていた。また同様に硬化物切片の屈折率及びアッベ数を測定した。屈折率は1.559、アッベ数は43であった。
ジメチルジメトキシシラン6g、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン25gに蒸留水3g、蟻酸2gを溶媒(ジエチレングリコールジメチルエーテル)21gの混合溶液を加え、30℃で2hr攪拌し、70℃で4hr攪拌した。さらに、70℃で攪拌しながら徐々に減圧し、最終的には20Torrの圧力下で揮発成分を除去し、可とう性脂環式エポキシ樹脂前駆体(ダウケミカル社製「ERL X4360」)11gを70℃で攪拌しながら混合し、均一混合体とした。
この均一混合体を実施例1と同様の条件でプレス成型して厚さ100μmの靭性はあるがガラスクロス部分がやや白濁して見える複合体を得た。光線透過率は66%であり、乱屈折により平行光線が減少し、C線、D線、F線いずれの波長でも光線透過率は80%以下であった。また同様に硬化物切片の屈折率及びアッベ数を測定した。屈折率は1.513、アッベ数は51であった。
ジフェニルジメトキシシラン24g、ジメチルジメトキシシラン6g、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン25gに蒸留水5g、蟻酸3g、溶媒(ジエチレングリコールジメチルエーテル)41gの混合溶液を加え、30℃で2hr攪拌した。40℃で4hr攪拌、70℃で4hr攪拌した。さらに、70℃で攪拌しながら徐々に減圧し、最終的には20Torrの圧力下で揮発成分を除去し、芳香族エポキシ樹脂前駆体(ジャパンエポキシレジン(株)「エピコート828」)30gを70℃で攪拌しながら混合し、均一混合体とした。
この均一混合体を実施例1と同様の条件でプレス成型して厚さ120μmの硬くてやや青みのある複合体を得た。全光線透過率は88%であり、F線ではさらに低下し72%であった。また同様に硬化物切片の屈折率及びアッベ数を測定した。屈折率は1.563、アッベ数は37であった。
Claims (9)
- 金属アルコキシドの部分縮合物と熱硬化性樹脂前駆体とを均一混合し、次いで重合およびゲル化して得られる有機無機分子ハイブリッド硬化物をマトリックス樹脂とし、無機繊維を補強材としてなる複合材料であって、該硬化物および無機繊維の屈折率が1.55以上且つアッベ数が40以上であり、該複合材料の光線透過率が80%以上である、透明複合材料。
- 前記金属アルコキシドが、少なくともチタニウムアルコキシドを含有することを特徴とする、請求項1記載の透明複合材料。
- 前記金属アルコキシドが、少なくともチタニウムアルコキシドとシランアルコキシドとを含有することを特徴とする、請求項1記載の透明複合材料。
- 金属アルコキシドが、少なくともチタニウムアルコキシドと、下記一般式(1)または一般式(2)で表されるシランアルコキシドからなる群より選ばれる少なくとも一種とからなることを特徴とする、請求項1記載の透明複合材料。
R1−Si−(OR2)3 ・・・(1)
R3 2−Si−(OR4)2 ・・・(2)
R1は脂環式エポキシ基またはオキセタン基を有する有機鎖、R2、R4はCH3またはC2H5、R3はCH3またはC6H5 - 前記熱硬化性樹脂前駆体が脂環式エポキシ樹脂前駆体であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の透明複合材料。
- ガラス繊維がEガラスであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の透明複合材料。
- ガラス繊維がガラスクロスであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の透明複合材料。
- 厚みが50μm以上5mm以下のシート状成形体であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の透明複合材料。
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