JP2007084852A - 誘電体膜の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 電気泳動法を利用した方法により基材の表面上に誘電体膜を形成した場合でも基材端部における誘電体膜の厚膜化を抑制することができる誘電体膜の形成方法を提供する。
【解決手段】 誘電体粒子を含む溶媒中に浸漬した基材と電極との間に電圧を印加することによって基材の表面上に誘電体粒子を堆積して誘電体膜を形成する方法であって、誘電体膜の形成期間には、基材に誘電体粒子を堆積させる極性となる第1電圧が基材と電極との間に発生する第1期間と、基材に誘電体粒子を堆積させる極性とは逆極性となる第2電圧が基材と電極との間に発生する第2期間と、が含まれる誘電体膜の形成方法である。
【選択図】 図1
【解決手段】 誘電体粒子を含む溶媒中に浸漬した基材と電極との間に電圧を印加することによって基材の表面上に誘電体粒子を堆積して誘電体膜を形成する方法であって、誘電体膜の形成期間には、基材に誘電体粒子を堆積させる極性となる第1電圧が基材と電極との間に発生する第1期間と、基材に誘電体粒子を堆積させる極性とは逆極性となる第2電圧が基材と電極との間に発生する第2期間と、が含まれる誘電体膜の形成方法である。
【選択図】 図1
Description
本発明は誘電体膜の形成方法に関し、特に電気泳動法を利用した方法により基材の表面上に誘電体膜を形成した場合でも基材端部における誘電体膜の厚膜化を抑制することができる誘電体膜の形成方法に関する。
従来から、焼結セラミックス膜と金属からなる基材とを一体化したバイモルフアクチュエータなどの構造物を作製する方法としては、予め焼結することにより得られた焼結セラミックス膜を基材に接着する方法が用いられている。
しかしながら、この方法では、基材が複雑形状を有している場合には焼結セラミックス膜を基材に接着することが困難であるため、複雑形状の構造物の作製には不適であるという問題があった。
そこで、この問題を解決する方法として、たとえば電気泳動法(たとえば特許文献1などを参照)を利用して、セラミックス粒子が分散された溶媒中に浸漬させた基材の表面にセラミックス粒子を堆積してセラミックス膜を形成し、これを乾燥した後に、セラミックス膜を基材とともに焼結する方法が考えられる。この電気泳動法を利用した方法によれば、基材が複雑形状を有している場合であってもその表面上に焼結セラミックス膜を容易に形成することができる。
なお、電気泳動法を利用した方法においては、互いに向かい合うようにして所定の間隔をあけて設置された基材と電極との間に直流電圧を印加することによって、溶媒中において正または負のいずれかに帯電しているセラミックス粒子が電気泳動して負電極または正電極のいずれかとなる基材の表面に堆積してセラミックス膜が形成される。
特開2003−183391号公報
たとえば電気泳動法を利用した方法によりバイモルフアクチュエータを作製する場合には、まずセラミックス粒子であるPZT粒子が分散された溶媒中に浸漬させた基材と電極との間に直流電圧を印加することによって基材と電極との間に電界を発生させることが必要となる。
ここで、基材と電極との間に、電極の方が基材よりも電位が高くなるように直流電圧を印加した場合には、たとえば図10の模式的平面図に示すように、電極3から基材2に向かう電気力線は基材2の端部に集中することになる。したがって、この直流電圧の印加によって電気泳動するPZT粒子は基材2の中央部よりも端部に多く堆積し、基材2の端部のPZT膜6の膜厚が厚膜化することになる。
しかしながら、基材の端部のPZT膜が厚膜化した場合には、焼結後の基材端部の焼結PZT膜に割れが発生することがあった。
この基材端部における焼結PZT膜の割れは、上記の電気泳動によりPZT膜を形成した後の乾燥工程および/または焼結工程においてPZT膜に発生する割れに主に起因するものと考えられる。
乾燥工程におけるPZT膜の割れの原因は以下のように考えられる。すなわち、厚膜化した基材端部のPZT膜は多くのPZT粒子から構成されており、PZT粒子間の隙間も多くなるため、PZT粒子間の隙間に含まれる溶媒の量も多くなる。そして、乾燥工程において溶媒がPZT粒子間から除去された後には、図11の模式的拡大断面図に示すように基材2の表面上に堆積したPZT粒子1が凝集することによってPZT膜に内部応力が発生するためにPZT膜に割れが発生すると考えられる。
また、焼結工程におけるPZT膜の割れの原因は以下のように考えられる。すなわち、焼結工程においては、加熱によってPZT粒子に変形、ネッキングが生じてPZT粒子間の隙間を埋めながら緻密化が進むが、PZT膜の膜厚が厚くなる程緻密化によるPZT膜の収縮が大きくなると考えられる。したがって、厚膜化した基材端部のPZT膜においては、焼結工程において、図12(A)の模式的拡大断面図に示すPZT粒子1が図12(B)に示すように緻密化することによって割れが発生すると考えられる。
また、基材端部の膜厚が薄くなるようにPZT粒子の1回当たりの電気泳動量を制限した場合においても、所定の膜厚を確保するために繰り返し電気泳動を行なっているうちに基材端部の膜厚が厚くなってしまう。
また、基材の端部はハンドリングや焼結時の基材膨張によって大きな変形力を受けるが、基材端部のPZT膜の膜厚が厚いほど圧縮力や引張りに伴う変形量が拡大して、その結果、基材端部のPZT膜に亀裂のきっかけとなる割れが多数発生し、PZT膜に基材端部から亀裂が広がることがあった。
さらに、たとえば図13の模式的斜視図に示すように、仮に焼結後の基材端部のPZT膜6に割れが発生することなくバイモルフアクチュエータを作製することができたとしても、基材端部のPZT膜6の膜厚が厚い場合には曲げ剛性が大きくなるため、金属板7および金属板8にぞれぞれ電圧を印加した場合にバイモルフアクチュエータの変形が抑制されてしまう。
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、電気泳動法を利用した方法により基材の表面上に誘電体膜を形成した場合でも基材端部における誘電体膜の厚膜化を抑制することができる誘電体膜の形成方法を提供することにある。
本発明は、誘電体粒子を含む溶媒中に浸漬した基材と電極との間に電圧を印加することによって基材の表面上に誘電体粒子を堆積して誘電体膜を形成する方法であって、誘電体膜の形成期間には、基材に誘電体粒子を堆積させる極性となる第1電圧が基材と電極との間に発生する第1期間と、基材に誘電体粒子を堆積させる極性とは逆極性となる第2電圧が基材と電極との間に発生する第2期間と、が含まれる誘電体膜の形成方法である。
また、本発明の誘電体膜の形成方法においては、誘電体膜の形成期間における、第1電圧のエネルギの総和を第2電圧のエネルギの総和よりも大きくすることができる。
また、本発明の誘電体膜の形成方法においては、誘電体膜の形成期間において、第1期間と、第2期間と、が交互に繰り返され、第2電圧が発生してから次の第2電圧が発生するまでの間隔が5秒以下であることが好ましい。
また、本発明の誘電体膜の形成方法においては、電圧として、基材に誘電体粒子を堆積させる極性となる直流電圧を印加するとともに基材に誘電体粒子を堆積させる極性とは逆極性となる逆バイアス電圧を間欠的に重畳して印加することによって第1電圧および第2電圧が発生し、逆バイアス電圧の最大値の絶対値を直流電圧の直流電圧値の絶対値よりも大きくすることができる。
また、本発明の誘電体膜の形成方法において、逆バイアス電圧は、交流電圧の印加により発生させることができる。
また、本発明の誘電体膜の形成方法において、誘電体粒子としてPZT粒子を用いることができる。
また、本発明の誘電体膜の形成方法においては、基材に角があることが好ましい。
また、本発明の誘電体膜の形成方法においては、基材が板状であることが特に好ましい。
また、本発明の誘電体膜の形成方法においては、基材が板状であることが特に好ましい。
また、本発明の誘電体膜の形成方法においては、誘電体粒子の平均粒子径は0.1μm以上4μm以下であることが好ましい。
本発明によれば、電気泳動法を利用した方法により基材の表面上に誘電体膜を形成した場合でも基材端部における誘電体膜の厚膜化を抑制することができる誘電体膜の形成方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は同一部分または相当部分を表わすものとする。
本発明者らは、電気泳動法を利用した方法において、誘電体膜の形成期間(誘電体膜の形成開始から誘電体膜の形成完了までの期間)に、基材に誘電体粒子を堆積させる極性となる第1電圧が基材と電極との間に発生する第1期間と、基材に誘電体粒子を堆積させる極性とは逆極性となる第2電圧が基材と電極との間に発生する第2期間と、を含めることによって、基材端部の誘電体膜の膜厚の厚膜化を抑制できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、基材と電極との間に直流電圧を印加して、電極の方が基材よりも電位が高くなる電圧を発生させた場合には、たとえば図1(A)の模式的平面図に示すように、電極3から基材2に向かう電気力線は基材2の端部に集中するためPZT粒子は基材2の端部に多く堆積し、PZT膜6の膜厚は基材2の中央部よりも基材2の端部の方が厚くなる。
そこで、たとえば図1(A)に示すように基材2にPZT粒子を堆積させる極性となる直流電圧などの第1電圧を基材2と電極3との間に発生させる第1期間とともに、たとえば図1(B)に示すように基材2にPZT粒子を堆積させる極性とは逆極性となる第2電圧を基材2と電極3との間に発生させる第2期間を設ける。これにより、図1(B)に示す第2期間においては、基材2から電極3に向かう電気力線は基材2の中央部と比べて基材2の端部の方から多く発生するため、基材2の端部に多く堆積したPZT粒子は第2期間において基材2の中央部に堆積したPZT粒子よりも多く引き剥がされることになる。
したがって、第1期間における第1電圧の発生によって基材2の端部のPZT膜6が厚膜化した場合であっても、第2期間における第2電圧の発生によって基材2の中央部と比べて基材2の端部から誘電体粒子をより多く引き剥がすことができるため、本発明においては基材2の端部におけるPZT膜6の厚膜化を抑制することができると考えられる。
このような本発明によれば、たとえば図2の模式的斜視図に示すような基材2の端部のPZT膜6の膜厚を低減したバイモルフアクチュエータの作製が可能になる。図2に示すバイモルフアクチュエータにおいては、基材2の端部のPZT膜6の膜厚が低減されているために、乾燥工程および焼結工程における基材2の端部におけるPZT膜6の割れの発生を抑制することができるだけでなく、ハンドリングや焼結時の基材2の変形に伴うPZT膜6の端部のストレスを緩和することができ、さらにPZT膜6の基材2の端部からの亀裂の広がりを抑制することができる。また、金属板7および金属板8が形成されていない部分のPZT膜6の膜厚が低減されているため曲げ剛性を低下することができ、金属板7および金属板8にそれぞれ電圧を印加した場合にバイモルフアクチュエータを大きく変形することができる。
また、図1(A)および図1(B)に示す基材2と電極3との間に印加される電圧としては、たとえば、図3に示す直流電圧値が+Edである直流電圧と、図4に示す最大値が+Ea、−Eaである交流電圧とを重畳して印加することができる。ここで、図4に示す交流電圧においては、電圧値が正の値になる場合には基材2にPZT粒子を堆積させる極性を形成する順バイアス電圧が印加されることになり、負の値になる場合には基材2にPZT粒子を堆積させる極性とは逆極性となる逆バイアス電圧が印加されることになる。したがって、図4に示す交流電圧においては順バイアス電圧と逆バイアス電圧とが交互に印加されることになるため、この場合には逆バイアス電圧は間欠的に印加されることになる。
また、逆バイアス電圧の最大値(−Ea)の絶対値が直流電圧の直流電圧値(+Ed)の絶対値よりも大きい場合には、基材2と電極3との間に図3に示す直流電圧と図4に示す交流電圧とを重畳して印加することによって基材2と電極3との間に発生する電圧としては、図5に示すように、基材2にPZT粒子を堆積させる極性となる第1電圧9と基材2にPZT粒子を堆積させる極性とは逆極性となる第2電圧10とが交互に発生する構成となる。ここで、図5に示す第1電圧9は電圧(V)が0よりも大きくなり、第2電圧10は電圧(V)が0よりも小さくなる。
たとえば、図5に示す横軸の時間0においてPZT膜の形成が開始し、時間t1においてPZT膜の形成が終了するPZT膜の形成期間の場合には、第1電圧9が発生する第1期間11と、第2電圧10が発生する第2期間12とが交互に繰り返されることになる。また、図5に示す波形の電圧の時間t(t=0〜t1)に対する積分値は明らかに正の値をとるので、第1電圧9のエネルギの総和は第2電圧10のエネルギの総和よりも大きくなる。このように、第1電圧9のエネルギの総和が第2電圧10のエネルギの総和よりも大きくなる場合には、基材からPZT粒子が引き剥がされるよりは、基材にPZT粒子が堆積する傾向が大きくなるためにPZT膜がより速く形成されるものと考えられる。
また、図5に示す波形の電圧においては、第2電圧10が発生してから次の第2電圧10が発生するまでの間隔が5秒以下であることが好ましい。この場合には、PZT膜の形成速度が向上する傾向にある。また、第2電圧10が発生してから次の第2電圧10が発生するまでの間隔の下限は、たとえば10-4秒、10-6秒、10-8秒または10-9秒とすることができる。なお、第2電圧10が発生してから次の第2電圧10が発生するまでの間隔は図5に示すように一定であってもよいが、一定でなくてもよい。
また、本発明においては、図4に示す交流電圧の代わりに、図6に示すパルス状の逆バイアス電圧を図3に示す直流電圧と重畳して基材2と電極3との間に印加することによって、基材2と電極3との間に上記の第1電圧および第2電圧を発生させることもできる。図6に示すように、パルス状の逆バイアス電圧の最大値(−Ea)の絶対値が直流電圧の直流電圧値(+Ed)の絶対値よりも大きくなる場合には、図6に示すパルス状の逆バイアス電圧の電圧が−Edよりも低くなるときにPZT粒子の引き剥がし効果が得られることになる。
なお、上記においてはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)粒子を用いた場合について説明したが、本発明においては、PZT粒子だけでなく、PZT粒子以外のたとえば二酸化ケイ素(SiO2)、アルミナ(Al2O3)あるいは酸化ジルコニウム(ZrO2)などのセラミックス粒子または樹脂などの他の誘電体粒子を用いることができる。ただし、本発明の効果が十分に得られる観点からは、本発明においては、誘電体粒子としてセラミックス粒子を用いることが好ましい。
また、本発明において、本発明の効果を十分に得られる観点からは、誘電体粒子の平均粒子径は0.1μm以上4μm以下であることが好ましい。
また、本発明において、溶媒としては、たとえば水、エタノール、アセチルアセトンまたはこれらの2種以上を混合したものなどを用いることができる。
また、本発明において、基材としては、たとえばニッケル、ニッケル合金、白金またはステンレスなどからなる基材を用いることができる。また、本発明の効果が十分に得られる観点からは、基材の形状は、基材の端部に角を有する形状であることが好ましく、板状であることが特に好ましい。
また、本発明において、電極としては、上記の基材と同様のたとえばニッケル、ニッケル合金、白金またはステンレスなどからなる電極などを用いることができる。
(実施例1)
図7の模式的構成図に示す装置を用いて誘電体膜の形成を行なった。図7に示す装置においては、幅1cm、長さ5cmおよび厚さ100μmの板状のニッケルからなる基材2と、基材2と同一の材質および形状からなる電極3とが、60mmの間隔をあけて互いに向かい合うようにして設置されており、基材2と電極3とは電源を介して電気的に接続されている。また、容積200mlの容器5にはアセチルアセトンとエタノールとを体積比で1:1の割合で混合した溶媒4が収容されており、溶媒4にはPZT粒子1(大日本塗料株式会社製:平均粒子径0.4μm)が分散されている。
図7の模式的構成図に示す装置を用いて誘電体膜の形成を行なった。図7に示す装置においては、幅1cm、長さ5cmおよび厚さ100μmの板状のニッケルからなる基材2と、基材2と同一の材質および形状からなる電極3とが、60mmの間隔をあけて互いに向かい合うようにして設置されており、基材2と電極3とは電源を介して電気的に接続されている。また、容積200mlの容器5にはアセチルアセトンとエタノールとを体積比で1:1の割合で混合した溶媒4が収容されており、溶媒4にはPZT粒子1(大日本塗料株式会社製:平均粒子径0.4μm)が分散されている。
そして、この装置における溶媒4のpHを4〜6の範囲の所定の値に調整した後、電源を入れて基材2と電極3との間に直流電圧と交流電圧とを重畳して印加することによって、基材2と電極3との間に図8に示す波形の電圧が発生した。これにより、図8に示す波形の電圧が0Vよりも高くなるとき(すなわち、基材2にPZT粒子を堆積させる極性となる第1電圧が基材2と電極3との間に発生する第1期間内)には基材2の表面上にPZT粒子1が堆積して基材2の端部のPZT膜が基材2の中央部のPZT膜よりも厚膜に形成され、図8に示す波形の電圧が0Vよりも低くなるとき(すなわち、基材2にPZT粒子を堆積させる極性とは逆極性となる第2電圧が基材2と電極3との間に発生する第2期間内)には基材2の端部のPZT膜を構成するPZT粒子1が基材2の中央部よりも多く引き剥がされた。そして、これが繰り返されることによって、基材2の表面上に基材2の端部の膜厚を低減したPZT膜が形成された。なお、図8において、+Edは、基材2と電極3との間に印加された直流電圧の直流電圧値を表わしている。また、基材2と電極3との間に印加された交流電圧の周波数は20kHz(すなわち、第2電圧が発生が発生してから次の第2電圧が発生するまでの間隔は10-8秒で一定)とした。また、図8に示す電圧はPZT膜の形成期間の一部のもののみを示しているが、実際にはPZT膜の形成期間の全体にわたって図8に示す波形の電圧が発生している。したがって、実施例1においては、PZT膜の形成期間における第1電圧のエネルギの総和は第2電圧のエネルギの総和よりも大きくなった。
ここで、実施例1においては、直流電圧の直流電圧値(+Ed)は+350Vに設定され、交流電圧の最大値は+500V、−500Vに設定された。したがって、直流電圧と交流電圧とを重畳した電圧は図8に示すように−150Vから+850Vの範囲で周期的に変動した。また、上記の交流電圧の電圧値が0Vから−500Vのときに逆バイアス電圧が間欠的に印加されることになった。この逆バイアス電圧の最大値の絶対値は上記の直流電圧の直流電圧値の絶対値よりも大きくなった。
その後、溶媒4から基材2を引き上げて、基材2の中央部および端部のぞれぞれのPZT膜の膜厚を測定した。その結果を図9に示す。なお、図9において、縦軸は基材2の中央部および端部のぞれぞれのPZT膜の膜厚の測定値を示しており、横軸は交流電圧の最大値の絶対値を表わしている。
図9に示すように、実施例1においては、基材2の中央部のPZT膜の膜厚と基材2の端部のPZT膜の膜厚との差異は、基材2と電極3との間に直流電圧のみが印加された後述する比較例1と比べて低減できていることが確認された。
(実施例2)
図8に示す交流電圧の最大値を+700V、−700Vに設定したこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件でPZT膜を形成した。そして、図7に示す溶媒4から基材2を引き上げて、基材2の中央部および端部のぞれぞれのPZT膜の膜厚を実施例1と同一の方法および同一の条件で測定した。その結果を図9に示す。
図8に示す交流電圧の最大値を+700V、−700Vに設定したこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件でPZT膜を形成した。そして、図7に示す溶媒4から基材2を引き上げて、基材2の中央部および端部のぞれぞれのPZT膜の膜厚を実施例1と同一の方法および同一の条件で測定した。その結果を図9に示す。
図9に示すように、実施例2においても、基材2の中央部のPZT膜の膜厚と基材2の端部のPZT膜の膜厚との差異は、基材2と電極3との間に直流電圧のみが印加された後述する比較例1と比べて低減できていることが確認された。
(実施例3)
図8に示す交流電圧の最大値を+900V、−900Vに設定したこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件でPZT膜を形成した。そして、図7に示す溶媒4から基材2を引き上げて、基材2の中央部および端部のぞれぞれのPZT膜の膜厚を実施例1と同一の方法および同一の条件で測定した。その結果を図9に示す。
図8に示す交流電圧の最大値を+900V、−900Vに設定したこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件でPZT膜を形成した。そして、図7に示す溶媒4から基材2を引き上げて、基材2の中央部および端部のぞれぞれのPZT膜の膜厚を実施例1と同一の方法および同一の条件で測定した。その結果を図9に示す。
図9に示すように、実施例3においても、基材2の中央部のPZT膜の膜厚と基材2の端部のPZT膜の膜厚との差異は、基材2と電極3との間に直流電圧のみが印加された後述する比較例1と比べて低減できていることが確認された。
(比較例1)
交流電圧を印加しなかったこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件でPZT膜を形成した。したがって、比較例1においては、直流電圧のみが印加されたためにPZT粒子1が引き剥がされる現象は発現しなかった。
交流電圧を印加しなかったこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件でPZT膜を形成した。したがって、比較例1においては、直流電圧のみが印加されたためにPZT粒子1が引き剥がされる現象は発現しなかった。
そして、図7に示す溶媒4から基材2を引き上げて、基材2の中央部および端部のぞれぞれのPZT膜の膜厚を実施例1と同一の方法および同一の条件で測定した。その結果を図9に示す。
図9に示すように、比較例1においては、基材2の端部のPZT膜の膜厚は基材2の中央部のPZT膜の膜厚よりも厚くなっており、基材2の端部のPZT膜の膜厚と基材2の中央部のPZT膜の膜厚との差異は実施例1〜3のいずれと比較しても大きくなることが確認された。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、誘電体膜を用いたバイモルフアクチュエータなどの構造物の作製に好適に利用することができる。
1 PZT粒子、2 基材、3 電極、4 溶媒、5 容器、6 PZT膜、7,8 金属板、9 第1電圧、10 第2電圧、11 第1期間、12 第2期間。
Claims (9)
- 誘電体粒子を含む溶媒中に浸漬した基材と電極との間に電圧を印加することによって前記基材の表面上に前記誘電体粒子を堆積して誘電体膜を形成する方法であって、
前記誘電体膜の形成期間には、前記基材に前記誘電体粒子を堆積させる極性となる第1電圧が前記基材と前記電極との間に発生する第1期間と、前記基材に前記誘電体粒子を堆積させる極性とは逆極性となる第2電圧が前記基材と前記電極との間に発生する第2期間と、が含まれることを特徴とする、誘電体膜の形成方法。 - 前記誘電体膜の形成期間における、前記第1電圧のエネルギの総和が前記第2電圧のエネルギの総和よりも大きくなることを特徴とする、請求項1に記載の誘電体膜の形成方法。
- 前記誘電体膜の形成期間において、前記第1期間と、前記第2期間と、が交互に繰り返され、前記第2電圧が発生してから次の第2電圧が発生するまでの間隔が5秒以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の誘電体膜の形成方法。
- 前記電圧として、前記基材に前記誘電体粒子を堆積させる極性となる直流電圧を印加するとともに前記基材に前記誘電体粒子を堆積させる極性とは逆極性となる逆バイアス電圧を間欠的に重畳して印加することによって前記第1電圧および前記第2電圧が発生し、
前記逆バイアス電圧の最大値の絶対値は前記直流電圧の直流電圧値の絶対値よりも大きいことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の誘電体膜の形成方法。 - 前記逆バイアス電圧は、交流電圧の印加により発生することを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の誘電体膜の形成方法。
- 前記誘電体粒子がPZT粒子であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の誘電体膜の形成方法。
- 前記基材に角があることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の誘電体膜の形成方法。
- 前記基材が板状であることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の誘電体膜の形成方法。
- 前記誘電体粒子の平均粒子径が0.1μm以上4μm以下であることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の誘電体膜の形成方法。
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- 2005-09-20 JP JP2005272229A patent/JP2007084852A/ja active Pending
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