JP2007084399A - 炭素繊維複合スピネルセラミックスおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
スピネルの本来有する優れた特性を著しく低下させることなく、靱性および導電性の高いスピネルセラミックスを提供する。
【解決手段】
スピネルを母相とし、当該母相に、マイカと、繊維の平均径が1μm未満の炭素繊維とを複合して成り、スピネル、マイカおよび炭素繊維の総重量を100重量部とした場合に、炭素繊維を6重量部以下含む炭素繊維複合スピネルセラミックスとする。
Description
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る炭素繊維複合スピネルセラミックスの製造工程の一例である。
この工程の好適な例は、以下の通りである。まず、微細な炭素繊維をPVA等の分散剤を入れた水溶液(溶媒)に混ぜたものをボールミルに入れて混合し、所定時間の混合後、微細な炭素繊維を入れた溶媒を静置し、上澄み液を採取する。これによって、凝集した微細な炭素繊維を低減し、単一分散状態にある微細な炭素繊維をより多く集めることができる。溶媒には、PEG等の分散剤を含む水溶液を用いても良い。
この工程の好適な例は、以下の通りである。スピネル組成(MgAl2O4)となるように酸化マグネシウム粉末(MgO粉末)と酸化アルミニウム粉末(Al2O3粉末)とを用意し、これら2種類の粉末と、マイカ組成のガラス粉末と、微細な炭素繊維を含む溶媒の上澄み液とを混合する。混合方法としては、微細な炭素繊維をより均一に混合するように湿式で行うのが好ましい。ただし、乾式混合を採用しても良い。微細な炭素繊維としては、繊維の平均径が1μm未満で、長径/短径の比(アスペクト比)の平均が50〜200の範囲の繊維を用いるのが好ましい。ただし、アスペクト比は、上記範囲外でも良い。なお、繊維の形態は、チューブ状であるか否かを問わない。この実施の形態では、長さ方向に筒状の空洞を有するカーボンナノファイバあるいはカーボンナノチューブを好適に用いている。
この工程では、原料混合工程後の混合物を乾燥する工程であり、特に、湿式混合を経た混合物を乾燥させて乾燥粉体とするのに用いられる工程である。
この工程では、乾燥後の混合物中に存在する粗めの粒子を除外する工程である。好適には、100メッシュの網が篩に用いられる。篩は、一段であっても、複数段であっても良い。
この工程では、PVA等の分散剤を揮発させることを主目的に行われる工程である。仮焼温度としては、粉末が焼結しない温度で、かつ分散剤を揮発させるのに十分な温度を選択するのが好ましい。この実施の形態において、仮焼温度としては300〜700℃が好ましく、さらに480〜560℃の範囲の仮焼温度とするのが好ましい。
この工程は、混合物の賦形と生密度を上げる工程である。成形方法としては、金型成形、冷間等方圧加圧成形(Cold Isostatic Pressing: CIP)等を採用できる。この実施の形態では、高い等方圧力を粉体に加えて成形できるCIPを採用している。
この工程は、炭素繊維複合スピネルセラミックスの焼結を行う工程である。焼結方法としては、常圧焼結、その他の焼結法を採用することができる。この実施の形態では、一例として常圧焼結を採用している。また、微細な炭素繊維の酸化分解を防止するため、成形体の焼成は、実質的に非酸化雰囲気となるようにして行われる。例えば、耐酸化性に優れたセラミックス材の中で成形体を焼成したり、真空に引いた雰囲気中あるいは不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス等)の雰囲気中で焼成すると良い。また、耐酸化性に優れたセラミックス材中に成形体を埋入して、当該セラミックス材の外側を不活性ガス雰囲気下として焼成を行うとさらに良い。
以下、本発明の第1の実施の形態において一実施例(この実施例を、実施例1とする。)について説明する。
a.原料
微細な炭素繊維には、昭和電工株式会社製のカーボンナノファイバ(Vapor Growth Carbon Fiber: VGCF)を用いた。VGCFは、繊維径150nm、繊維長10〜20μmの多層円筒形状の炭素繊維である。また、スピネル組成となるような比率で、岩谷化学工業株式会社製の酸化マグネシウム粉末(平均粒子径:0.36μm、製品名:MJ−30)と、住友化学株式会社製の酸化アルミニウム粉末(平均粒子径:0.52μm、製品名:AES−12)とを用いた。さらに、フッ素雲母(マイカ)組成(KMg3AlSi3O10F2)のガラス粉末を用意した。
VGCF1g、70g/lのPVA水溶液20gおよび蒸留水80gを、ボールを入れた円筒形のポットに入れ、24時間のボールミル混合を行った。得られたスラリーを10日間(240時間)静置した後、上澄み液を分取し、これを、VGCF分散溶液とした。
VGCFが炭素繊維複合スピネルセラミックスの各構成材の総重量に対して1.5重量%となるように、VGCF分散溶液を採取した。続いて、当該VGCF分散溶液と、酸化マグネシウム粉末と、酸化アルミニウム粉末と、マイカ組成のガラス粉末とを、ボールおよび蒸留水を入れた円筒形のポットに入れ、24時間のボールミル混合を行った。マイカ組成のガラス粉末は、VGCFが炭素繊維複合スピネルセラミックスの各構成材の総重量に対して40重量%となる量を配合した。なお、比較のため、VGCFを添加していない混合物も用意した。
上記工程を経て得られたスラリーは、ホットスターラーを用いて攪拌しながら加温して乾燥させ、乾燥後に解砕した粉末を、100メッシュの篩を用いて1〜数回ふるった。
続いて、篩下の粉末をるつぼに入れて、520℃で40分の条件で仮焼した。
次に、仮焼後の粉末をラバーに封入してCIP成形した。CIP成形時の圧力は、98MPaとした。次に、得られた成形体を常圧にて焼成した。焼成温度は、1200〜1550℃の範囲とした。焼成時間は、2時間とした。また、焼成は、成形体が非酸化雰囲気下にて行うようにした。
次に、得られた焼結体を、曲げ強度、破壊靱性等の評価に供するに適した形状に研削しあるいはその後に鏡面研磨に供した。なお、焼結前にある程度の形態を付与することによって加工に要する労力を小さくした。
各種の焼結体は、相対密度、曲げ強度、破壊靱性および硬度の測定の他、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope: SEM)を用いた鏡面あるいは破断面の組織観察に供した。曲げ強度は、3点曲げにより測定した。曲げ強度の測定に用いた試験片は、高さ3mm、幅3mm、長さ23mmの直方体とした。3点の支点の内の横方向の2点間距離は20mmとした。破壊靱性は、鏡面状態のサンプル(直径7〜10mm、厚さ2〜3mmのペレット形状のサンプル)にマイクロビッカースの圧子を打ち込み、ビッカースの四角から走るクラックの長さに基づいて測定するIM法により測定した。硬度は、ビッカースを用いて測定した。
VGCFを添加しなかった比較材は、1200℃以上で緻密化した。一方、VGCFを添加して作製した炭素繊維複合スピネルセラミックスは、1450℃以上で緻密化した。
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る炭素繊維複合スピネルセラミックスの製造工程の一例である。
この工程では、第1の実施の形態と同様の条件にてボールミル混合を行った後、2種類の静置時間を採用した。1つは10日間(240時間)の静置であり、もう1つは21日(504時間)の静置である。
この工程では、仮焼後の混合物を、再度、ボールミル等の方法により混合する工程であり、湿式混合を採用するのが好ましい。湿式混合の際に用いる好適な媒体は、エタノールあるいは水であるが、これらに限定されない。
以下、本発明の第2の実施の形態において一実施例(この実施例を、実施例2とする。)について説明する。ただし、前述の実施例1と共通する部分については、その説明を省略する。
a.原料
実施例1と同様の原料を用いた。
VGCF1g、70g/lのPVA水溶液20gおよび蒸留水80gを、ボールを入れた円筒形のポットに入れ、24時間のボールミル混合を行った。得られたスラリーを10日間(240時間)静置した後、上澄み液を分取した。また、これとは別に、得られたスラリーを21日間(504時間)静置した後、上澄み液を分取した。なお、分散処理を行わない方法も、比較のため採用した。すなわち、実施例2では、VGCFの未分散処理、分散処理(240時間静置)、分散処理(504時間)の3つの手法を採用した。
VGCFが炭素繊維複合スピネルセラミックスの各構成材の総重量に対して、1.0〜8重量%となるように、複数のVGCF分散溶液を採取した。その他は、実施例1と共通するので、その説明を省略する。
実施例1と同様の条件で行った。
実施例1と同様の条件で行った。
仮焼工程の前に、篩下の混合物を、ボールを入れた円筒形のポットに入れ、24時間のボールミル混合を行った。また、仮焼工程と第二原料混合工程との前後関係の差を確認するため、仮焼工程の後にも、仮焼後の混合物を、ボールおよびエタノールを入れた円筒形のポットに入れ、24時間のボールミル混合を行った。なお、比較のために、原料の再混合を行わないで製造する方法も採用した。
次に、仮焼後の粉末をラバーに封入してCIP成形した。CIP成形時の圧力は、98MPaとした。次に、得られた成形体を常圧にて焼成した。焼成温度は、1300〜1600℃の範囲とした。また、焼成は、成形体が非酸化雰囲気下にて行うようにした。それ以外の条件は、実施例1と同様の条件とした。
実施例1と同様の条件で行った。
各種の焼結体は、相対密度、曲げ強度、破壊靱性、硬度および電気抵抗の測定の他、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope: SEM)を用いた鏡面あるいは破断面の組織観察に供した。その他については、実施例1と同様とした。
図5は、仮焼工程の前に、第二原料混合工程を行って作製したサンプルと、第二原料混合工程を行わずに作製したサンプルとの緻密化の差異を示すグラフである。
静置することは、焼結体の緻密化を図るのに有力な手段であることがわかった。気孔を少なく、かつその大きさを小さくすることは、強度の向上にも寄与する。
2 容器
3 ふた
4 容器
5 酸化アルミニウム粉末
6 炭化ケイ素粉末
7 成形体
Claims (5)
- スピネルを母相とし、当該母相に、マイカと、繊維の平均径が1μm未満の炭素繊維とを複合して成り、上記スピネル、上記マイカおよび上記炭素繊維の総重量を100重量部とした場合に、上記炭素繊維を6重量部以下含むことを特徴とする炭素繊維複合スピネルセラミックス。
- 前記炭素繊維は、長径/短径の比(アスペクト比)の平均が50〜200の範囲にあるチューブ形状の繊維であることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維複合スピネルセラミックス。
- 前記炭素繊維は、前記母相の粒内および粒界に分散されてなる組織を有することを特徴とする請求項1または2に記載の炭素繊維複合スピネルセラミックス。
- スピネルを母相とし、当該母相に、マイカと、繊維の平均径が1μm未満の炭素繊維とを複合して成り、上記スピネル、上記マイカおよび上記炭素繊維の総重量を100重量部とした場合に、上記炭素繊維を6重量部以下含む炭素繊維複合スピネルセラミックスの製造方法であって、
上記炭素繊維を溶媒中に入れて混合後、静置して上記炭素繊維を分散させる炭素繊維分散工程と、
上記炭素繊維分散工程を経た上記炭素繊維と、マイカ組成物と、スピネル組成となる原料とを混合する原料混合工程と、
上記原料混合工程を経て得られた混合物を、その焼結温度より低い温度で仮焼する仮焼工程と、
上記仮焼工程を経て得られた混合物を所定形状に成形する成形工程と、
上記成形工程を経て得られた成形体を焼結する焼結工程と、
を含むことを特徴とする炭素繊維複合スピネルセラミックスの製造方法。 - 前記仮焼工程の前または後に、前記原料混合工程を経た混合物を再度混合する第二原料混合工程を行うことを特徴とする請求項4に記載の炭素繊維複合スピネルセラミックスの製造方法。
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