JP2007083271A - アルミニウム合金鋳物のろう付け方法及びろう付けされた液冷部品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 Cu:23〜37質量%,Si:4〜10質量%を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成と10〜100μmの平均粒径を有する粉末状アルミニウム合金ろう材と、固形分として11質量%以上のCsFを含むフッ化物系フラックスとを分散媒に懸濁させたアルミニウム合金ろう材スラリーを、ろう付けされるアルミニウム合金鋳物又は他方の被ろう付け部材のろう付け部表面に塗布した後、アルミニウム合金ろう材スラリーが塗布されたろう付け部に他方の被ろう付け部材を組み付け、その組み付け体を加熱する。
【選択図】 なし
Description
そして、アルミニウム合金鋳物は、他の展伸材と接合して用いられている。その接合法としてろう付け法が採用されている。
ところが、鋳物材に用いられているアルミニウム合金としては、鋳造性の良さからAl−Si系合金が多用されている。このAl−Si系合金の共晶温度は577℃程度であるため、この温度を超える温度でのAl−Si系合金鋳物のろう付けは適当でない。
そこで、500℃以下の温度でアルミニウム合金鋳物のろう付けを、Zn−Al系のろう材を用いて行う技術が、例えば特許文献1,2で提案されている。
このように、低温ろう付けが要求されるアルミニウム合金の鋳物製品に関しては、信頼できる接合技術が確立していないため、工業的に利用される製品範囲に制限があった。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、濡れ性及び耐食性に強いろう材を使用して、炉内ろう付けでも健全な接合部が得られるアルミニウム合金鋳物の低温ろう付け方法及びそのろう付け方法を利用した製品を提供することを目的とする。
また、加熱は、組み付け体を昇温された炉内、特に530〜570℃の温度に加熱された不活性ガス雰囲気炉に装入することによりなされることが好ましい。
ろう付けされるアルミニウム合金鋳物のろう付け部表面にアルミニウム合金ろう材スラリーが塗布された後、他のアルミニウム合金展伸材或いはアルミニウム合金鋳物を組み付けてろう付けすることもできる。この際、アルミニウム合金鋳物をAl−Si系合金からなるダイカスト製品とすることができる。
当該ろう付け方法を適用すれば、水路構造を有するダイカスト製アルミニウム合金鋳物にアルミニウム合金製蓋を水密接合した液冷部品が容易に得られる。また、アルミニウム合金製水路部材とダイカスト製アルミニウム合金ケースを水密接合した液冷部品が容易に得られる。
したがって、低融点のアルミニウム合金鋳物、殊に共晶点が約577℃であるAl−Si系のダイカスト製品であっても、ろう付け欠陥を発生させることなく、炉中ろう付けすることができる。このため、低温ろう付けが要求されるAl−Si系合金鋳物製品の利用範囲の大幅な拡大に貢献することができる。
その結果、ろう材として低融点のAl−Cu−Si系合金の粉末状物を用いることが好ましいこと、フラックスとしてCsFを含むフッ化物系非腐食性フラックスを用いることが好ましいこと、さらには、前記粉末状ろう材とフッ化物系フラックスをスラリー状で被ろう付け部上に塗布した後、他方の被ろう付け部材を組み付け、組み付け体を所定温度の雰囲気炉に装入することにより生産性良くろう付けできることを見出した。
以下にその詳細を説明する。
本発明では、ろう材として、Cu:23〜37質量%,Si:4〜10質量%を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有するアルミニウム合金を用いる。Al−Cu−Si三元系合金は、このような成分組成の合金とすることで融点を下げ、ろう付け温度を530〜570℃に下げることができる。このため、Al−Si系合金鋳物を部分溶融させることなく、十分な接合部を形成できるろう付けが可能となる。Cu及びSiの含有量が上記数値を外れると、ろう材の融点が高くなり、高いろう付け温度を必要としてろう付け部に部分溶融を生じさせることになる。
上記で言う真空とは、真空度が200torr以下の雰囲気であり、また不活性ガスとは、ろう材を酸化させることのないガスで、例えばアルゴン等の希ガス、水素等の還元性ガス、窒素等の非酸化性ガスである。
フラックスとしては、通常のアルミニウム合金をろう付けする際に使用されるフッ化物系フラックスを用いることができる。フッ化物系非腐食性フラックスの化合物形態としては、KAlF4,K2AlF5,K3AlF6,AlF3,KF,CsF等があるが、従来と同様にその混合物が使用される。しかし、本発明ではろう材自身の融点を低くしているために、フラックス自体もその融点を低くする必要がある。このため、本発明では、CsFを含有させている。CsF含有量がフッ化物系フラックス全体の11質量%に満たないとフラックスの融点を下げる効果が少なく、フラックスの融点がろう材の融点よりも高くなって、ろう付け時にフラックスが溶融しないおそれがある。したがって、本発明にあっては、固形分として11質量%以上のCsFを含むフッ化物系非腐食性フラックスを用いる。
CsFの有無にかかわらずフッ化物系フラックスは、通常、純水やアルコール等の揮発性液体からなる分散媒に懸濁されてスラリー状にされ、被ろう付け面に塗布されている。
粉末状ろう材を被ろう付け面上に均一に供給するためには、粉末状ろう材をも分散媒に懸濁させたスラリー状で塗布することが効果的である。
CsFを含むフッ化物系フラックスと粉末状ろう材との混合割合は、被ろう付け部材の組成や形状、或いは組み合わせる他方の被ろう付け部材によって異なるが、ろう材100重量部に対して、フッ化物系フラックス10〜100重量部程度で十分である。
分散媒として水を用いる場合には、予め界面活性剤を添加しておくことが好ましい。界面活性剤が添加されていると被ろう付け部表面との濡れ性が向上し、被ろう付け部表面を粗面にすることなくフラックス成分及びろう材粉末を均一に供給することができる。この界面活性剤にも制限はない。通常のノニオン系界面活性剤が用いられる。
被ろう付け部表面に、フラックス及びろう材を懸濁させたスラリーの塗布を行う。均一供給性が損なわれない限り、スラリーの塗布方法にも制限はない。刷毛塗り法やロールコーティング法を用いてもよい。浸漬法や噴霧法でもよい。
ろう材スラリーが塗布された被ろう付け鋳物を乾燥後、当該ろう付け部上に他方の被ろう付け材を組み付け、組み付け部を加熱してろう付けする。このろう付け方法に制限はない。通常と同じろう付け方法で十分である。所定温度に加熱された炉内に装入し、所定時間保持することにより十分にろう付けできる。ただし、本発明にあっては、酸化しやすい粉末状のアルミニウム合金ろう材を用いている。したがって、ろう付けも、ろう材が酸化されることのない不活性ガス中で行われることが好ましい。ろう材の酸化をより防止するためには、ろう付け雰囲気を一旦真空にした後、窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。
通常、図1に示すような液冷部品は内部に複雑形状の水路を備えているので、一工程で製造することはできない。そのため、複雑形状の水路部をダイカスト等の鋳造法で作製する方法や鍛造で作製する方法が考えられる。さらに、水路ピッチが小さい場合には、スカイブ或いはワイヤーカットによって作製する場合も考えられる。そして、例えばワイヤーカット法により製造された複雑形状の水路部材2をダイカスト製ケース1の中にセットして液冷部品としている。
この際、ケース素材として流動性に優れたAl−Si系合金を用いると、鋳造欠陥を発生させることなく、複雑で厚さの薄い部材を容易に製作することができる。さらに、ダイカスト工法を採用することにより、低コストで液冷部品を製造することができる。
上記形態は、ダイカスト製ケースと複雑形状の水路部材を組み合わせているが、逆の形態、すなわち、ダイカスト等の鋳造法で作製した複雑形状の水路部材に、展伸材等で製造され、表面にアルミニウム合金ろう材スラリーが塗布された蓋部材を組み合わせ、両者の接合部をろう付けして水密接合してもよい。
ろう材の調製
Cu:30.9質量%及びSi:9.3質量%を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金溶湯を、窒素ガス中にて噴霧・急冷することにより、アルミニウム合金粉末を得た。この合金粉末は、平均粒径が40μmの球状を呈し、表面及び内部に欠陥や酸化物は含まれていなかった。なお、この合金の融点は525℃である。
フッ化セシウムを含むK−Cs−Al−F系のフラックスとして、第一稀元素化学工業株式会社製のCF−2ペーストと市販のノコロック(登録商標)粉末を用意した。このCF−2はCs−K−Al−F化合物で、CsFを約50モル%含有するものである。
CF−2ペースト100g(固形分50g)と75gのノコロック粉末を、300gの前記ろう材粉末とともに130mlの純水に加えてろう材スラリーを調製した。
ろう付け性評価のために、Al−7%Si−0.3%Mg合金(AC4C)からなるL=30mm,W=50mm,t=6mmのダイカスト材と、3003合金からなるL=30mm,W=50mm,t=1mmの板材を用意した。
ダイカスト材の被ろう付け面表面に、刷毛を用いて前記ろう材スラリーを塗布した。その後、約200℃で乾燥した。乾燥後の固形分付着量はろう材:約130g/m2,フラックス:約55g/m2であった。
次いでダイカスト材に板材を立て、逆T字ろう付け試験用組み付け体を作製した。
その組み付け体を雰囲気炉に入れ、雰囲気炉の内部を一旦真空にした後に窒素ガスで置換した。その後、この炉内で、組み付け体を520℃まで約40分で加熱し、さらに520〜580℃の各温度で5分保持した後、冷却することでろう付けを行った。
ろう付け後、逆T字ろう付け試験片を切断してろう付け状態を目視で観察してろう付け性を評価した。その結果を表1に示す。
なお、表中の評価は、外観観察によりダイカスト材と板材が全く問題なくろう付けされているものを良好として○で、一部にでもろう付け不良箇所があるものを不良として×で表示した。
本発明のろう材スラリー利用技術の有効性を確認するために、縦材として、3003合金板の両面にろう材としての固相線温度が577℃の4343合金板を10%の割合でクラッドした、いわゆるろうクラッド材を用い、フラックスとして、通常のノコロック(登録商標)粉末を用いてろう付け試験を行った。
実施例と同じサイズのダイカスト材をベース材とし、このベース材のろう付け箇所表面にノコロックを塗布した後、前記ろうクラッド材を立て、逆T字ろう付け試験用組み付け体を作製した。
その組み付け体を雰囲気炉に入れ、実施例と同様に加熱した。この場合、炉内で、組み付け体を560℃まで約40分で加熱し、さらに560〜590℃の各温度で5分保持した後、冷却することでろう付けを行った。
そして、実施例と同様に、ろう付け後、逆T字ろう付け試験片を切断してろう付け状態を目視で観察してろう付け性を評価した。その結果を併せて表1に示す。
これに対して、ろう付け温度が530℃を下回ると、ろう材が溶融せずにろう付けできないことがわかる。逆に570℃を上回るほどに高い温度でろう付けすると、ベース材であるAC4C材そのものが部分溶融するようになって、良好なろう付けはできていない。
このように、共晶温度が低いAl−Cu−Si系の合金を粉末状態でろう材として用い、さらにCsFを含ませて溶融温度を下げたフッ化物系フラックスを用いることにより、共晶温度が低いアルミニウム合金鋳物も、低いろう付け温度で問題なくろう付けすることが可能になる。
Claims (9)
- Cu:23〜37質量%,Si:4〜10質量%を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成と10〜100μmの平均粒径を有する粉末状アルミニウム合金ろう材と、固形分として11質量%以上のCsFを含むフッ化物系フラックスとを分散媒に懸濁させたアルミニウム合金ろう材スラリーを、ろう付けされるアルミニウム合金鋳物又は他方の被ろう付け部材のろう付け部表面に塗布した後、アルミニウム合金ろう材スラリーが塗布されたろう付け部に他方の被ろう付け部材を組み付け、その組み付け体を加熱することを特徴とするアルミニウム合金鋳物のろう付け方法。
- 粉末状アルミニウム合金ろう材が、アルミニウム合金溶湯を真空中又は不活性ガス中で噴霧して急冷することにより得られたものである請求項1に記載のアルミニウム合金鋳物のろう付け方法。
- 加熱が、組み付け体を昇温された炉内に装入することによりなされる請求項1又は2に記載のアルミニウム合金鋳物のろう付け方法。
- ろう付けが、530〜570℃の温度範囲の加熱により行われる請求項1〜3の何れか1項に記載のアルミニウム合金鋳物のろう付け方法。
- 加熱炉が、不活性ガス雰囲気炉である請求項1〜4の何れか1項に記載のアルミニウム合金鋳物のろう付け方法。
- ろう付けされるアルミニウム合金鋳物のろう付け部表面にアルミニウム合金ろう材スラリーが塗布された後、アルミニウム合金展伸材或いはアルミニウム合金鋳物が組み付けられる請求項1〜5の何れか1項に記載のアルミニウム合金鋳物のろう付け方法。
- アルミニウム合金鋳物がAl−Si系合金からなるダイカスト製品である請求項6に記載のアルミニウム合金鋳物のろう付け方法。
- 請求項1〜7の何れか1項に記載のろう付け方法を利用して、水路構造を有するアルミニウム合金鋳物にアルミニウム合金製蓋を水密接合した液冷部品。
- 請求項1〜7の何れか1項に記載のろう付け方法を利用して、アルミニウム合金製水路部材とダイカスト製アルミニウム合金ケースを水密接合した液冷部品。
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