JP4692088B2 - アルミニウム合金のろう付け方法 - Google Patents
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Description
また、例えばアルミウム合金製サンドイッチパネルの製造等、ろう付け面積が大きい場合には、ろう材を粉末状とし、フラックスと混合して分散媒に懸濁させ、スラリーにして当該スラリーを被ろう付け面に塗布する技術が特許文献3で提案されている。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、ろう材及びフラックスを被ろう付け面に均一に塗布し、かつろう材を効率的かつ安全に使用できるアルミニウム合金のろう付け方法を提供することを目的とする。
ろう材としては、Cu:23〜37質量%,Si:4〜10質量%を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有するものが好ましい。
また、フッ化物系フラックスとしては、固形分として11質量%以上のCsFを含むK−Cs−Al−F系のフッ化物系非腐食性フラックスを用いることが好ましい。
なお、フッ化物系フラックスを懸濁させる水には界面活性剤が添加されていることが好ましい。
本発明も基本的には、粉末状のろう材を被ろう付け面上に散布するものである。
そこで本発明では、製造時の酸化を抑制するために、真空又は不活性雰囲気中での噴霧・急冷法で製造された平均粒径10〜100μmのアルミニウム合金粉末を用いている。
上記で言う真空とは、真空度が200torr以下の雰囲気であり、また不活性ガスとは、ろう材を酸化させることのないガスで、例えばアルゴン等の希ガス、水素等の還元性ガス、窒素等の非酸化性ガスである。
被ろう付け面上に均一に散布するためには、ろう材は細かな粉末状にすることが好ましい。しかし、あまり細かいと反応性が増し通常での保管が困難になるばかりでなく、製造コストも高騰する。逆に大きすぎると、被ろう付け面上の均一性の確保が難しくなる。したがって、粉末状アルミニウム合金ろう材の平均粒径は10〜100μmの範囲とする。
なお、CsFは水に可溶なため、水を分散媒に用いることで他の分散媒よりもスラリー塗布・乾燥後のろう材密着性を向上させることができる。
上記したように、合金溶湯を真空中又は不活性ガス中に噴霧することで得られた粉末状のアルミニウム合金ろう材、分散媒としての水にフッ化物系フラックスを懸濁させたスラリーを準備する。この際、水には予め界面活性剤を添加しておくことが好ましい。界面活性剤が添加されていると面材表面との濡れ性が向上し、スラリーとしてフラックス成分を被ろう付け面上に供給する際、表面を粗面にすることなくフラックス成分を均一に供給することができる。この界面活性剤にも制限はない。通常のノニオン系界面活性剤が用いられる。
逆に、ろう材粉末を散布した後にフッ化物系フラックス懸濁スラリーを塗布する場合には、散布した粉末の均一性が損なわれないように塗布する必要がある。浸漬法や刷毛塗り法は適用し難い。噴霧法やロールコーティング法を適用することが好ましい。
したがって、ろう材表面での酸化物形成が抑制され、また水素ガスが発生するおそれもなくなり、ろう付け後の余剰のろう材やフラックススラリーを長時間保存できるため、ろう材及びフラックスを効率的に使用できる。結果としてコスト低下に資することになる。
Cu:30.9質量%及びSi:9.3質量%を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金溶湯を、窒素ガス中にて噴霧・急冷することにより、アルミニウム合金粉末を得た。この合金粉末は、平均粒径が40μmの球状を呈し、表面及び内部に欠陥や酸化物は含まれていなかった。なお、この合金の融点は525℃である。
フッ化セシウムを含むK−Cs−Al−F系のフラックスとして、第一稀元素化学工業株式会社製のCF−2ペーストと市販のノコロック(登録商標)粉末を用意した。CF−2ペースト100g(固形分50g)と75gのノコロック粉末を130mlの純水に加えてスラリーを調製した。
また、比較のために、前記ろう材粉末300gを合わせて加えたスラリーも調製した。
被ろう付け性試験材の準備
ろう付け性評価のために、JIS A3003のAl合金からなるサンドイッチパネルを組み立てるための、いずれも同じ上記Al合金からなるL=2000mm,W=1000mm,t=2mmの面材用板材、t=0.5mmの板材を直径25mmの円筒体に成形した高さ40mmのコア材、及びt=2.5mmで,幅30mm,高さ40mmの断面矩形の枠材を用意した。
パネル面材用板材の被ろう付け面表面に、スプレー式の塗布装置を使用してフラックススラリーを塗布した。そして、スラリーが乾燥する前に、ろう材粉末を散布した。比較例にあっては、ろう材粉末をも懸濁させたスラリーを、スプレー式の塗布装置を使用して塗布した。
なお、実施例,比較例とも、スラリー調整後速やかにスプレー式の塗布装置を用いて面材に塗布した例と、スラリー調整後8時間後及び24時間後に塗布した事例の3タイプの例を採った。
次いで面材、コア材及び枠材の組み付けを行い、その組付け体を雰囲気炉に入れ、雰囲気炉の内部を一旦真空にした後に窒素ガスで置換した。その後、この炉内で、パネルを540℃まで約40分で加熱し、540〜560℃で5分保持した後、冷却することでろう付けを行った。
ろう付け後、パネルを切断してろう付け状態を目視で観察してろう付け性を評価した。その結果を表1に示す。
なお、表中の評価は、外観観察により全てのコア材,枠材についてその全てが面材とろう付けされているものを良好として○で、一部に面材とろう付けされていないものがあるものを一部不良として△で表示した。
これに対して、ろう材粉末をスラリー中に混入・懸濁させた比較例では、スラリー調整直後に塗布した場合にはろう付け状況に問題はなかったが、スラリー調製の8時間後に塗布した場合、一部ろう付け不良が見られた。スラリー中のアルミニウム合金ろう材が純水と反応し、混入される酸化物が多くなったためと推測される。また、スラリー調製後24時間経過すると、スラリーに水素ガスの発生によるとみられる気泡が観察されたので、安全性の観点から塗布そのものを中止した。
Claims (6)
- アルミニウム合金ろう材とフッ化物系フラックスを用いてアルミニウム又はアルミニウム合金をろう付けする際に、前記ろう材を、アルミニウム合金溶湯を真空中又は不活性ガス中で噴霧して急冷することにより得られた10〜100μmの平均粒径を有する粉末状態で用いるとともに、前記フッ化物系フラックスを水に懸濁したスラリー状態で用い、当該フッ化物系フラックス懸濁スラリーを被ろう付け面に塗布した後、当該スラリーが乾燥する前に前記アルミニウム合金ろう材粉末を散布することを特徴とするアルミニウム又はアルミニウム合金のろう付け方法。
- アルミニウム合金ろう材とフッ化物系フラックスを用いてアルミニウム又はアルミニウム合金をろう付けする際に、前記ろう材を、アルミニウム合金溶湯を真空中又は不活性ガス中で噴霧して急冷することにより得られた10〜100μmの平均粒径を有する粉末状態で用いるとともに、前記フッ化物系フラックスを水に懸濁したスラリー状態で用い、前記ろう材粉末を被ろう付け面に散布した後、前記フッ化物系フラックス懸濁スラリーを塗布することを特徴とするアルミニウム又はアルミニウム合金のろう付け方法。
- ろう材が、Cu:23〜37質量%,Si:4〜10質量%を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有するものである請求項1又は2に記載のアルミニウム又はアルミニウム合金のろう付け方法。
- フッ化物系フラックスが、固形分として11質量%以上のCsFを含むK−Cs−Al−F系のフッ化物系非腐食性フラックスである請求項1〜3の何れか1項に記載のアルミニウム又はアルミニウム合金のろう付け方法。
- フッ化物系フラックスを懸濁させる水に界面活性剤が添加されている請求項1〜4の何れか1項に記載のアルミニウム又はアルミニウム合金のろう付け方法。
- ろう付け対象のアルミニウム又はアルミニウム合金が、サンドイッチパネルである請求項1〜5の何れか1項に記載のアルミニウム又はアルミニウム合金のろう付け方法。
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