JP2007080725A - 電極−膜接合体 - Google Patents

電極−膜接合体 Download PDF

Info

Publication number
JP2007080725A
JP2007080725A JP2005268288A JP2005268288A JP2007080725A JP 2007080725 A JP2007080725 A JP 2007080725A JP 2005268288 A JP2005268288 A JP 2005268288A JP 2005268288 A JP2005268288 A JP 2005268288A JP 2007080725 A JP2007080725 A JP 2007080725A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
electrode
ion conductive
catalyst layer
cathode electrode
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2005268288A
Other languages
English (en)
Inventor
Kimihiko Yoshii
公彦 吉井
Toshitaka Otsuki
敏敬 大月
Kaoru Fukuda
薫 福田
Ryoichiro Takahashi
亮一郎 高橋
Hiroshi Shinkai
洋 新海
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Honda Motor Co Ltd
JSR Corp
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
JSR Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Honda Motor Co Ltd, JSR Corp filed Critical Honda Motor Co Ltd
Priority to JP2005268288A priority Critical patent/JP2007080725A/ja
Publication of JP2007080725A publication Critical patent/JP2007080725A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells

Landscapes

  • Fuel Cell (AREA)
  • Inert Electrodes (AREA)

Abstract

【課題】高温高加湿の条件においても、十分な耐熱性を持ち、初期出力電圧が高く、高電流域においてもフラッディング現象を起こさないカソード電極を用いた電極−膜接合体を提供する。
【解決手段】
イオン伝導膜と、少なくとも触媒担持カーボン及びイオン伝導性ポリマーとを含む触媒層とガス拡散層を備えたアノード電極と、および少なくとも触媒担持カーボン及びイオン伝導性ポリマーとを含む触媒層とガス拡散層を備えたカソード電極からなる電極−膜接合体であって、カソード電極触媒層のイオン伝導膜の面と平行な面内方向において、イオン交換容量の異なる少なくとも2種以上のイオン伝導性ポリマーを分布させてなることを特徴とし、このイオン交換容量の最も高い値と最も低い値の差が0.2meq/g以上である電極−膜接合体。
【選択図】 図1

Description

本発明は、固体高分子型燃料電池などに用いられる、電極−固体高分子膜接合体に関するものである。
燃料電池は、騒音をほとんど発生せず、低公害および高効率の観点でクリーンな発電装置として、近年特に注目されている。特に、固体高分子型と呼ばれる燃料電池は、小型で高出力が可能であるため、車載用途、定置用途、携帯機器用途などの実用化へ向けての研究が盛んになっている。
固体高分子型燃料電池に求められる運転条件はさまざまであるが、高い出力密度を得るためには高温高加湿条件での運転が行われる。高加湿条件での発電の課題は、カソード電極で生成した水の迅速な系外への排出であり、この排水が不十分であると、生成した水が電極中にたまって細孔を閉塞させるフラッディング現象を招き、出力電圧が低下する。
従って、高温高加湿条件下での発電性能向上のためには、電極−膜接合体において、高温での耐熱性が十分であり、かつカソード電極で生成した水を迅速に排出できる必要がある。しかし、従来用いられているNafion等のフッ素樹脂系ポリマーを用いたカソード電極ではガラス転移点が低く、100℃以上の高温での長期に渡る発電耐久性に課題がある。また、スルホン酸基を含むポリアリーレンを用いたカソード電極は耐熱性は問題ないが、出力密度を維持するためにイオン交換容量を高くする必要があり、それに伴って含水量が増加するために排水性が悪く、フラッディング現象が起きやすいという問題があった。
このような水分の影響を制御するため、カーボンとして、撥水性のものを使用したり、官能基量に変化を設けたりすることが提案されている。
たとえば、特開2004-349076号公報(特許文献1)では、ガス拡散層に、撥水処理を施
したカーボンペーパーやカーボンクロスなどを用いて形成されることが提案され、さらには、触媒層や高分子電解質膜の保湿を目的として、触媒層とガス拡散層との界面に、撥水カーボン層を設けることも開示されている。
また、特開2003-173788号公報(特許文献2)には、ガス拡散層を構成する導電性炭素
粒子において、酸性官能基量が多い方の導電性炭素粒子の量が、ガス拡散層の一端から他端に向かって多くすることで、ガス拡散層の面内での透水機能を調整でき、MEA内において高分子電解質を湿潤状態に保ちつつ、また生成水による過剰な水分を速やかに排水することができることが開示されている。
また、特開2002-124270号公報(特許文献3)には、固体高分子膜の一方側にカソード
触媒層、他方側にアノード触媒層が配されているセルを、前記アノード触媒層に対向して燃料が流通する燃料流路が形成された第1プレートと、前記カソード触媒層に対向して酸化剤が流通する酸化剤流路及びリブが形成された第2プレートとで挟持して構成された燃料電池であって、前記カソード触媒層と第2プレートとの間にガス拡散層が介挿され、当該ガス拡散層及びカソード触媒層の少なくとも一方は、前記酸化剤流路と対向する領域で、前記リブと対向する領域と比べて保水性が高くなるよう構成されている燃料電池が開示され、このように構成とすることで、固体高分子膜及び電極触媒層を、酸化剤ガス流路に対向する領域とリブに対向する領域とで均一的に保湿することを可能となる旨が開示されている。
特開2004-349076号公報 特開2003-173788号公報 特開2002-124270号公報
しかしながら、ガス拡散層のカーボンの官能基量に変化をつけたり、撥水カーボンを使用したりするだけでは、上記した問題をかならずしも解消することは困難であった。また、特許文献3は保水性の改良が目的であり、排水性を改良するにはどのようにしたらよいのか何ら示唆されていない。
本発明の課題は、上記のような従来技術における課題を背景としてなされたものであって、高温高加湿の条件においても、十分な耐熱性を持ち、初期出力電圧が高く、高電流域においてもフラッディング現象を起こさないカソード電極を用いた電極−膜接合体を提供することが求められていた。
本発明者らは高温高加湿の条件における発電性能について鋭意検討したところ、電極−膜接合体において、イオン伝導性ポリマーのイオン交換容量を制御することで、高温下での発電特性が大きく向上し、かつカソード電極触媒層中の細孔容積の分布がカソードにおける水の排出性に大きく影響を与える要因の一つであることを見出した。
さらに、本発明者らは高温高加湿の条件における発電性能について鋭意検討したところ、電極−膜接合体において、スルホン酸基を有するポリアリーレンからなるイオン伝導性ポリマーを含むカソード電極を用い、しかもカソード電極触媒層中に異なるイオン交換容量をもつ少なくとも2種以上のイオン伝導性ポリマーを用いる場合に高加湿下での発電特性が大幅に改良できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)イオン伝導膜と、少なくとも触媒担持カーボン及びイオン伝導性ポリマーとを含む触
媒層とガス拡散層を備えたアノード電極と、および少なくとも触媒担持カーボン及びイオン伝導性ポリマーとを含む触媒層とガス拡散層を備えたカソード電極からなる電極−膜接合体であって、
カソード電極触媒層のイオン伝導膜の面と平行な面内方向において、イオン交換容量の異なる少なくとも2種以上のイオン伝導性ポリマーを分布させてなることを特徴とし、このイオン交換容量の最も高い値と最も低い値の差が0.2meq/g以上であることを特徴とする、電極−膜接合体。
(2)カソード電極触媒層に含有されるイオン交換容量の異なる少なくとも2種以上のイオ
ン伝導性ポリマーにおいて、イオン伝導膜に平行な方向の面内分布において、イオン交換容量の最も高い値のポリマーが5〜95%の面積を占め、最も低い値のポリマーが5〜95%を占めていることを特徴とする、(1)に記載の電極−膜接合体。
(3)カソード電極触媒層中に含まれるイオン伝導成分含有ポリマーが下記一般式(A)で
表される構造単位、および下記一般式(B)で表される構造単位を含むことを特徴とするスルホン酸基を有するポリアリーレンであることを特徴とする(1)に記載の電極−膜接合
体。
(4)イオン伝導膜と、少なくとも触媒担持カーボン及びイオン伝導成分含有ポリマーとを
含む触媒層とガス拡散層を備えたアノード電極と、および少なくとも触媒担持カーボン及びイオン伝導成分含有ポリマーとを含む触媒層とガス拡散層を備えたカソード電極からなる電極−膜接合体であって、
カソード電極触媒層中のイオン伝導成分含有ポリマーが下記一般式(A)で表される構造
単位、および下記一般式(B)で表される構造単位を含むことを特徴とするスルホン酸基を有するポリアリーレンであって、カソード電極触媒層中のイオン伝導成分含有ポリマーのイオン交換容量が、イオン伝導膜に接触している側とガス拡散層に接触している側で異なっていることを特徴とする電極−膜接合体。
(5)カソード電極触媒層のイオン伝導膜に接触している側のイオン交換容量が、ガス拡散
層に接触している側に比べて、0.2meq/g以上高いことを特徴とする、(4)に記載
の電極−膜接合体;
Figure 2007080725
(式中、Yは−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2)l
−(lは1〜10の整数である)、−C(CF3)2−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Zは直接結合または、−(CH2)l−(lは1〜10の整数である)、−C(CH3)2−、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Arは−SO3Hまたは−O(CH2)pSO3Hまたは−O(CF2)pSO3Hで表される置換基
を有する芳香族基を示す。pは1〜12の整数を示し、mは0〜10の整数を示し、nは0〜10の整数を示し、kは1〜4の整数を示す。)
Figure 2007080725
(式中、A、Dは独立に直接結合または、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH
−、−COO−、−(CF2)l−(lは1〜10の整数である)、−(CH2)l−(lは1〜10の整数である)、−CR’2−(R’は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基および
ハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基、フルオレニリデン基、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Bは独立に酸素原子または硫黄原子であり、R1〜R16は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素
原子、アルキル基、一部またはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ニトロ基、ニトリル基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示す。s、tは0〜4の整数を示し、rは0または1以上の整数を示す。)
本発明によれば、高温かつ高加湿の条件においても初期出力電圧が高く、長時間の運転時にも、フラッディング現象による出力電圧の低下の少ない固体高分子型燃料電池用の電極触媒層を形成でき、その効果は絶大である。
以下、本発明についてより詳細に説明する。
本発明に係る電極-膜接合体の一態様は、
イオン伝導膜と、少なくとも触媒担持カーボン及びイオン伝導性ポリマーとを含む触媒
層とガス拡散層を備えたアノード電極と、および少なくとも触媒担持カーボン及びイオン伝導性ポリマーとを含む触媒層とガス拡散層を備えたカソード電極からなる電極−膜接合体であって、
カソード電極触媒層のイオン伝導膜の面と平行な面内方向において、イオン交換容量の異なる少なくとも2種以上のイオン伝導性ポリマーを分布させてなることを特徴としている(第1の態様という)。
かかる態様は、たとえば、図1に示される態様が例示される。図1は本発明の膜-電極
接合体の一態様を表す模式図である。
イオン交換樹脂膜10および該膜表面に設けられた電極触媒層11とからなる膜-電極
接合体であり、イオン伝導膜と平行な面内方向において、細孔容積の異なる少なくとも2種以上の電極触媒層を分布させたものであり、電極触媒層11aと11bとで、電極触媒層中のイオン伝導性ポリマーのイオン交換容量が異なる2種を用いたものである。なお、3種以
上用いてもよい。面内での2種のイオン伝導性ポリマーの分布は、図1に示されるように市松模様であってもよいが、他にも、縞状や斑点状であってもよい。
カソード電極触媒層に用いている、イオン交換容量の異なる少なくとも2種以上のイオン伝導性ポリマーにおいて、最も高い値と最も低い値の差が0.2meq/g以上、好ましくは0.3meq/g以上であることが望ましい。このような範囲で併用すれば、発電出力が高く、またカソード電極がフラッディング現象を起こすこともなく、十分な発電性能が得られる。なお、1種類のイオン交換容量単独の場合や差が小さい場合、ポリマーの種類によって、イオン交換容量が低すぎて発電出力が得られなかったり、イオン交換容量が高すぎてカソード電極がフラッディング現象を起こしたりして、十分な発電性能が得られないことがある。
また、カソード電極触媒層に含有されるイオン交換容量の異なる少なくとも2種以上のイオン伝導性ポリマーは、イオン伝導膜に平行な方向の面内分布において、イオン交換容量の最も高い値のポリマーを含む電極触媒層が5〜95%の面積を占め、イオン交換容量の最も低い値のポリマーを含む電極触媒層が5〜95%を占めていることが好ましく、さらに望ましくは最も高い値のポリマーを含む電極触媒層が7〜93%を占め、最も低いポリマーを含む電極触媒層が7〜93%を占めていることが望ましい。このように併用すれば、上記した効果が十分に発現することができる。
本発明に係る電極−膜接合体に用いられるカソード電極触媒層のもう一つの形態は、イオン伝導膜に接触している側とガス拡散層に接触している側で、電極触媒中のイオン伝導性ポリマーのイオン交換容量が異なっていることである(第2の態様という)。この態様では、カソード電極上に、イオン交換容量の異なる2種以上のイオン伝導性ポリマーを含有する電極触媒層を積層している。この態様ではカソード電極触媒層のイオン伝導膜に接触している側のイオン交換容量が、ガス拡散層に接触している側に比べて、0.2meq/g以上、好ましくは0.3meq/g以上であることが望ましい。このような範囲で併用すれば、発電出力が高く、またカソード電極がフラッディング現象を起こすこともなく、十分な発電性能が得られる。なお、1種類のイオン交換容量単独の場合や差が小さい場合、ポリマーの種類によって、イオン交換容量が低すぎて発電出力が得られなかったり、イオン交換容量が高すぎてカソード電極がフラッディング現象を起こしたりして、十分な発電性能が得られないことがある。また、このときの各電極触媒層の厚さは、イオン交換容量の最も高い値のポリマーを含む電極層の厚さが、全電極触媒層の厚さの5〜95%を占め、イオン交換容量の最も低い値のポリマーを電極触媒の厚さが、5〜95%を占めていることが好ましく、さらに望ましくは最も高い値のポリマーが7〜93%を占め、最も低いポリマーが7〜93%を占めていることが望ましい。このように併用すれば、上記した効果が十分に発現することができる。
本発明に係る電極−膜接合体を得るためのアノードおよびカソード電極触媒層は、少なくとも触媒金属担持カーボンと、イオン伝導性ポリマーとを含む。
本発明に係る電極−膜接合体を得るための電極に含まれる各成分について説明する。
[電極触媒層の構成]
本発明で形成される電極触媒層は、(i)触媒を担持したカーボンおよび(ii)イオン交
換樹脂とを含む。
(i)触媒を担持したカーボン
本発明で用いられる触媒としては、白金、パラジウム、金、ルテニウム、イリジウムなどの貴金属触媒が好ましく用いられる。また、貴金属触媒は、合金や混合物などのように、2種以上の元素が含まれるものであってもよい。
上記触媒を担持するカーボンとしては、電子伝導性と比表面積の大きさの観点から、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましい。
上記オイルファーネスブラックとしては、キャボット社製「バルカンXC−72」、「バルカンP」、「ブラックパールズ880」、「ブラックパールズ1100」、「ブラックパールズ1300」、「ブラックパールズ2000」、「リーガル400」、ライオン社製「ケッチェンブラックEC」、三菱化学社製「#3150、#3250」などが挙げられる。また、上記アセチレンブラックとしては、電気化学工業社製「デンカブラック」などが挙げられる。
また、上記カーボンとして、天然の黒鉛、ピッチ、コークス、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、フラン樹脂などの有機化合物から得られる人工黒鉛や炭素などを用いてもよい。
上記炭素材の形態としては、粒子状のほか繊維状も用いることができる。
上記カーボンに担持される金属触媒の量としては、有効に触媒活性が発揮できる量であれば特に制限されるものではないが、カーボン重量に対する金属触媒担持量が0.1〜9.0g-metal/g-carbon、好ましくは0.25〜2.4g-metal/g-carbonの範囲にあることが望ましい。
(ii)イオン交換樹脂
本発明では、イオン交換樹脂として、吸水率が前記したように異なる2種以上のものを
使用する。
本発明で用いられるイオン交換樹脂は、パーフルオロ系電解質や炭化水素系電解質などを用いることができ、特に限定されないが、耐熱性及び機械的強度向上の観点から、プロトン酸基含有芳香族系ポリマーを好ましく用いることができ、さらに好ましくは下記一般式(A)で表される構成単位と、下記一般式(B)で表される構成単位とを含む下記一般式(C)で表されるスルホン酸基を有するポリアリーレンである。
<スルホン酸ユニット>
Figure 2007080725
一般式(A)において、Yは−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−CO
O−、−(CF2l−(lは1〜10の整数である)、−C(CF32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。このうち、−CO−、−SO2−が好ましい。
Zは直接結合または、−(CH2l−(lは1〜10の整数である)、−C(CH32−、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。このうち直接結合、−O−が好ましい。
Arは−SO3Hまたは−O(CH2pSO3Hまたは−O(CF2pSO3Hで表され
る置換基(pは1〜12の整数を示す)を有する芳香族基を示す。
芳香族基として具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などが挙げられる。これらの基のうち、フェニル基、ナフチル基が好ましい。−SO3
Hまたは−O(CH2pSO3Hまたは−O(CF2pSO3Hで表される置換基(pは1〜12の整数を示す)は、少なくとも1個置換されていることが必要であり、ナフチル基である場合には2個以上置換していることが好ましい。
mは0〜10、好ましくは0〜2の整数であり、nは0〜10、好ましくは0〜2の整数であり、kは1〜4の整数を示す。
m、nの値とY、Z、Arの構造についての好ましい組み合わせとして、
(1)m=0、n=0であり、Yは−CO−であり、Arが置換基として−SO3Hを有
するフェニル基である構造、
(2)m=1、n=0であり、Yは−CO−であり、Zは−O−であり、Arが置換基として−SO3Hを有するフェニル基である構造、
(3)m=1、n=1、k=1であり、Yは−CO−であり、Zは−O−であり、Arが置換基として−SO3Hを有するフェニル基である構造、
(4)m=1、n=0であり、Yは−CO−であり、Arが置換基として2個の−SO3
Hを有するナフチル基である構造、
(5)m=1、n=0であり、Yは−CO−であり、Zは−O−であり、Arが置換基として−O(CH24SO3Hを有するフェニル基である構造などを挙げることができる。
<疎水性ユニット>
Figure 2007080725
一般式(B)において、A、Dは独立に直接結合または、−CO−、−SO2−、−S
O−、−CONH−、−COO−、−(CF2l−(lは1〜10の整数である)、−(CH2l−(lは1〜10の整数である)、−CR’2−(R’は脂肪族炭化水素基、芳
香族炭化水素基およびハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基、フルオレニリデン基、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。ここで、−CR’2−で表される構造の具体的な例として、メチル基、エチル基、プロピル基
、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、プロピル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基、フェニル基、トリフルオロメチル基、などが挙げられる。
これらのうち、直接結合または、−CO−、−SO2−、−CR’2−(R’は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基およびハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基、フルオレニリデン基、−O−が好ましい。
Bは独立に酸素原子または硫黄原子であり、酸素原子が好ましい。
1〜R16は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル
基、一部またはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ニトロ基、ニトリル基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示す。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基などが挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基などが挙げられる。アリル基としては、プロペニル基などが挙げられ、アリール基としては、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
s、tは0〜4の整数を示す。rは0または1以上の整数を示し、上限は通常100、好ましくは1〜80である。
s、tの値と、A、B、D、R1〜R16の構造についての好ましい組み合わせとしては
、(1)s=1、t=1であり、Aが−CR’2−(R’は脂肪族炭化水素基、芳香族炭
化水素基およびハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基、フルオレニリデン基であり、Bが酸素原子であり、Dが−CO−または、−SO2−であり、R1〜R16が水素原子またはフッ素原子である構造、(2)s=1、t=0であり、Bが酸素原子であり、Dが−CO−または、−SO2−であり、R1〜R16が水素原子またはフッ素原子である構造、(3)s=0、t=1であり、Aが−CR’2−(R’は脂肪族炭化水素基、芳
香族炭化水素基およびハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基、フルオレニリデン基、Bが酸素原子であり、R1〜R16が水素原子またはフッ素原子またはニトリ
ル基である構造が挙げられる。
<ポリマー構造>
Figure 2007080725
一般式(C)において、A、B、D、Y、Z、Ar、k、m、n、r、s、tおよびR1〜R16は、それぞれ上記一般式(A)および(B)中のA、B、D、Y、Z、Ar、k
、m、n、r、s、tおよびR1〜R16と同義である。x、yはx+y=100モル%と
した場合のモル比を示す。
本発明で用いられるスルホン酸基を有するポリアリーレンは、式(A)で表される構造単位すなわちxのユニットを0.5〜100モル%、好ましくは10〜99.999モル%の割合で、式(B)で表される構造単位すなわちyのユニットを99.5〜0モル%、
好ましくは90〜0.001モル%の割合で含有している。
<ポリマーの製造方法>
スルホン酸基を有するポリアリーレンの製造には、例えば下記に示すA法、B法、C法の3通りの方法を用いることができる。
(A法)例えば、特開2004−137444号公報に記載の方法で、上記一般式(A)で表される構造単位となりうるスルホン酸エステル基を有するモノマーと、上記一般式(B)で表される構造単位となりうるモノマー、またはオリゴマーとを共重合させ、スルホン酸エステル基を有するポリアリーレンを製造し、このスルホン酸エステル基を脱エステル化して、スルホン酸エステル基をスルホン酸基に変換することにより合成することができる。
(B法)例えば、特開2001−342241に記載の方法で、上記一般式(A)で表される骨格を有しスルホン酸基、スルホン酸エステル基を有しないモノマーと、上記一般式(B)で表される構造単位となりうるモノマー、またはオリゴマーとを共重合させ、この重合体をスルホン化剤を用いて、スルホン化することにより合成することもできる。
(C法)一般式(A)において、Arが−O(CH2pSO3Hまたは−O(CF2p
SO3Hで表される置換基を有する芳香族基である場合には、例えば、特開2005−6
0625号公報に記載の方法で、上記一般式(A)で表される構造単位となりうる前駆体のモノマーと、上記一般式(B)で表される構造単位となりうるモノマー、またはオリゴマーとを共重合させ、次にアルキルスルホン酸またはフッ素置換されたアルキルスルホン酸を導入する方法で合成することもできる。
(A法)において用いることのできる、上記一般式(A)で表される構造単位となりうるスルホン酸エステル基を有するモノマーの具体的な例として、特開2004−137444号公報、特開2004−345997号公報、特開2004−346163号公報に記載されているスルホン酸エステル類を挙げることができる。
(B法)において用いることのできる、上記一般式(A)で表される構造単位となりうるスルホン酸基、またはスルホン酸エステル基を有しないモノマーの具体的な例として、特開2001−342241、特開2002−293889に記載されているジハロゲン化物を挙げることができる。
(C法)において用いることのできる、上記一般式(A)で表される構造単位となりうる前駆体のモノマーの具体的な例として、特開2005−36125号公報に記載されているジハロゲン化物を挙げることができる。
また、いずれの方法においても用いられる、上記一般式(B)で表される構造単位となりうるモノマー、またはオリゴマーの具体的な例として、
r=0の場合、例えば4,4'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンズアニリド、2,2−ビス(4−クロロフェニル)ジフルオロメタン、2,2−ビス(4−クロ
ロフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4−クロロ安息香酸−4−クロロフェニルエステル、ビス(4−クロロフェニル)スルホキシド、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、2,6−ジクロロベンゾニトリルが挙げられる。これらの化合物において塩素原子が臭素原子またはヨウ素原子に置き換わった化合物などが挙げられる。
r=1の場合、例えば特開2003−113136号公報に記載の化合物を挙げることができる。
r≧2の場合、例えば特開2004−137444号公報、特開2004−244517号公報、特開2004−346146号公報、特開2005−112985号公報、特願2003−348524、特願2004−211739、特願2004−211740に記載の化合物を挙げることができる。
スルホン酸基を有するポリアリーレンを得るためは、まず、これらの、上記一般式(A)で表される構造単位となりうるモノマーと、上記一般式(B)で表される構造単位となりうるモノマー、またはオリゴマーとを共重合させ、前駆体のポリアリーレンを得ることが必要である。この共重合は、触媒の存在下に行われるが、この際使用される触媒は、遷移金属化合物を含む触媒系であり、この触媒系としては、(1)遷移金属塩および配位子となる化合物(以下、「配位子成分」という。)、または配位子が配位された遷移金属錯体(銅塩を含む)、ならびに(2)還元剤を必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために、「塩」を添加してもよい。
これらの触媒成分の具体的な例、各成分の使用割合、反応溶媒、濃度、温度、時間等の重合条件としては、特開2001−342241号公報に記載の化合物を挙げることができる。
スルホン酸基を有するポリアリーレンは、この前駆体のポリアリーレンをスルホン酸基を有するポリアリーレンに変換して得ることができる。この方法としては、下記の3通りの方法がある。
(A法)前駆体のスルホン酸エステル基を有するポリアリーレンを、特開2004−137444号公報に記載の方法で脱エステル化する方法。
(B法)前駆体のポリアリーレンを、特開2001−342241号公報に記載の方法でスルホン化する方法。
(C法)前駆体のポリアリーレンに、特開2005−60625号公報に記載の方法で、アルキルスルホン酸基を導入する方法。
上記のような方法により製造される、一般式(C)のスルホン酸基を有するポリアリーレンの、イオン交換容量は通常0.3〜5meq/g、好ましくは0.5〜3meq/g、さらに好ましくは0.8〜2.8meq/gである。0.3meq/g未満では、プロトン伝導度が低く発電性能が低い。一方、5meq/gを超えると、耐水性が大幅に低下してしまうことがあるため好ましくない。
特に、アノード電極中のイオン伝導性ポリマーとしては、イオン交換容量は通常0.3〜5meq/g、好ましくは0.5〜3meq/g、さらに好ましくは0.8〜2.8meq/gである。0.3meq/g未満では、プロトン伝導度が低く発電性能が低い。一方、5meq/gを超えると、耐水性が大幅に低下してしまうことがあるため好ましくない。
上記のイオン交換容量は、例えば一般式(A)で表される構造単位となりうる前駆体のモノマーと、上記一般式(B)で表される構造単位となりうるモノマー、またはオリゴマーの種類、使用割合、組み合わせを変えることにより、調整することができる。
このようにして得られるスルホン酸基を有するポリアリーレンの分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量で、1万〜100万、好ましくは2万〜80万である。
本発明では、このようなイオン伝導性ポリマーを前記したようなイオン交換容量の差と
なるように2種以上使用する。
電極触媒層には、触媒を担持したカーボンを分散させるために、分散剤が含まれていても良い。
(iii)分散剤
分散剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などを挙げることができる。
上記アニオン界面活性剤としては、たとえば、オレイン酸・N−メチルタウリン、オレイン酸カリウム・ジエタノールアミン塩、アルキルエーテルサルフェート・トリエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート・トリエタノールアミン塩、特殊変成ポリエーテルエステル酸のアミン塩、高級脂肪酸誘導体のアミン塩、特殊変成ポリエステル酸のアミン塩、高分子量ポリエーテルエステル酸のアミン塩、特殊変成燐酸エステルのアミン塩、高分子量ポリエステル酸アミドアミン塩、特殊脂肪酸誘導体のアミドアミン塩、高級脂肪酸のアルキルアミン塩、高分子量ポリカルボン酸のアミドアミン塩、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムラウリル硫酸エステルナトリウム塩、セチル硫酸エステルナトリウム塩、ステアリル硫酸エステルナトリウム塩、オレイル硫酸エステルナトリウム塩、ラウリルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、油溶性アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、高級アルコールリン酸モノエステルジナトリウム塩、高級アルコールリン酸ジエステルジナトリウム塩、ジアルキルジチオリン酸亜鉛などが挙げられる。
上記カチオン界面活性剤としては、たとえば、ベンジルジメチル{2−[2−(P−1
,1,3,3−テトラメチルブチルフェノオキシ)エトキシ]エチル}アンモニウムクロ
ライド、オクタデシルアミン酢酸塩、テトラデシルアミン酢酸塩、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、牛脂トリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヤシトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ヤシジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド、1−ヒドロキシエチル−2−牛脂イミダゾリン4級塩、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩、ステアラミドエチルジエチルアミン塩酸塩、トリエタノールアミンモノステアレートギ酸塩、アルキルピリジウム塩、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ポリアクリルアミドアミン塩、変成ポリアクリルアミドアミン塩、パーフルオロアルキル第4級アンモニウムヨウ化物などが挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、たとえば、ジメチルヤシベタイン、ジメチルラウリルベタイン、ラウリルアミノエチルグリシンナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン、アミドベタイン、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、3−[ω−フルオロアクカノイルーN−エ
チルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、N−[3−(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベ
タインなどが挙げられる。
上記非イオン界面活性剤としては、たとえば、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:2型)、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1型)、牛脂肪酸ジエタノールアミド(1:2型)、牛脂肪酸ジエタノールアミド(1:1型)、オレイン酸ジエタノールアミド(1:1型)、ヒドロキシエチルラウリルアミン、ポリエチレングリコールラウリルアミン、ポリエチレングリコールヤシアミン、ポリエチレングリコールステアリルアミン、ポリエチレングリコール牛脂アミン、ポリエチレングリコール牛脂プロピレンジアミン、ポリエ
チレングリコールジオレイルアミン、ジメチルラウリルアミンオキサイド、ジメチルステアリルアミンオキサイド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、ポリビニルピロリドン、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリットの脂肪酸エステル、ソルビットの脂肪酸エステル、ソルビタンの脂肪酸エステル、砂糖の脂肪酸エステルなどが挙げられる。
上記分散剤は、1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、好ましくは塩基性基を有する界面活性剤であり、より好ましくはアニオン性もしくはカチオン性の界面活性剤であり、さらに好ましくは分子量5千〜3万の界面活性剤である。電極用ペースト組成物に上記分散剤を添加すると、保存安定性および流動性に優れ、塗工時の生産性が向上する。
また電極触媒層には、必要に応じてさらに炭素繊維を含んでいてもよい。
(iv)炭素繊維
本発明で用いられる炭素繊維としては、レーヨン系炭素繊維、PAN系炭素繊維、リグニンポバー系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維等を用いることができ、好ましくは、気相成長炭素繊維が用いられる。
電極触媒層にこのような炭素繊維を含んでいると、触媒層中の細孔容積が増加するため、ガスの拡散性が向上し、また、生成する水によるフラッディングなどを改善でき、発電性能が向上する。
(v)イオン交換基を有しない樹脂
電極触媒層には、必要に応じてさらにイオン交換基を有しない樹脂を用いてもよい。前記有機溶媒に溶解、もしくは分散するものであれば特に限定されないが、撥水性の高い樹脂であることが好ましい。例えば含フッ素共重合体、シランカップリング剤、シリコーン樹脂、ワックス、ポリホスファゼンなどを挙げることができるが、好ましくは含フッ素共重合体である。
含フッ素共重合体としては、前記有機溶媒に溶解、あるいは分散するものであれば特に限定されないが、例えばフッ化ビニリデン系の共重合体、分子内に脂肪族環構造を有するパーフルオロカーボン重合体、含フッ素オレフィオンと炭化水素系オレフィンとの共重合体、含フッ素アクリレートとアクリレートまたは/およびメタクリレートとの共重合体などを挙げることができる。これらのイオン交換基を有しない樹脂を用いることで、触媒層中の湿潤状態を適切に維持できるため好ましい。
本発明の電極触媒層は、上記触媒担持カーボンを20〜90重量%、好ましくは40〜85重量%の範囲で含有し、上記イオン交換樹脂を5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%の範囲で含有し、必要に応じて用いられる分散剤を0〜10重量%、好ましくは0〜3重量%の範囲で含有し、また、必要に応じて用いられる炭素繊維を0〜20重量%、好ましくは1〜10重量%の範囲で含有し、必要に応じて用いられるイオン交換基を有しない樹脂は0〜20重量%、好ましくは1〜10重量%で含有することが好ましい。(なお、これらの合計を100重量%とする)。
触媒担持カーボンの含有量が、上記範囲よりも低いと、電極反応率が低下することがあり、上記範囲を超えると、プロトン伝導性効率が低下することがあり、電極触媒層中に発電性能に十分な細孔容積を確保できないことがある。イオン交換樹脂の含有量が、上記範囲よりも低いと、プロトン伝導度が低下することがあり、バインダーとしての役割を果たせなくなり、電極を形成できないことがあり、上記範囲を超えると、電極中の細孔容積が
減少することが。分散剤の含有量が、上記範囲内にあると保存安定性に優れた電極ペーストが得られ、また、分散性に優れた電極触媒層が得られる。炭素繊維が上記範囲内にあると細孔容積が適度に確保され、排水性が良好になり発電出力が向上する。イオン交換基を有しない樹脂の含有量が、上記範囲内にあると、触媒層中の湿潤状態を適切に維持でき、発電出力が向上する。
(電極触媒層の製造方法)
本発明に係る電極−膜接合体を得るための電極触媒層の製造方法としては、特に限定されることはないが、例えば前記の触媒金属担持カーボン、前記のイオン伝導性ポリマーなどの成分を用いて調製した電極ペースト組成物を用いて、電極基材、転写基材、またはイオン伝導膜上に塗布し、乾燥して電極触媒層を作製する方法を挙げることができる。
電極ペーストには、必要に応じて、有機溶媒および水を添加しても良い。
前記電極ペースト組成物の調製に用いる有機溶剤としては、特に限定されることはないが、好ましくは、沸点(b.p.)が75〜250℃、かつ-O-、-OH、-CO-、-SO-、-SO2-
、-COO-、-CONR-(Rは、水素原子、炭化水素基)からなる基を少なくとも1種類以上有する有機溶剤を用いることができる。
上記有機溶剤の沸点が上記範囲未満であると、電極用ペーストの乾燥性が速く、ダイのノズルが詰まり易い等の現象により、塗工時の生産性が低下することがあり、一方、上記有機溶媒の沸点が上記範囲を越えると、溶媒の除去が困難となり、電極中の細孔が閉塞し、発電性能が低下することがある。
上記有機溶剤の具体例としては、エタノール(b.p.78.3℃)、n−プロピルアルコール(b.p.97℃)、2−プロパノール(b.p.82.4℃)、2−メチル−2−プロパノール(b.p.82.5℃)、2−ブタノール(b.p.99.5℃)、n−ブチルアルコール(b.p.117℃)、2−メチル−1−プロパノール(b.p.108℃)、1−ペンタノール(b.p.138℃)、2−ペンタノール(b.p.119℃)、3−ペンタノール(b.p.115℃)、2−メチル−1−ブタノール(b.p.129℃)、3−メチル−1−ブタノール(b.p.131℃)、2−メチル−2−ブタノール(b.p.102℃)、3−メチル−2−ブタノール(b.p.112℃)、2,2−ジメチル1−プロパノール
(b.p.113℃)、シクロヘキサノール(b.p.161℃)、1−ヘキサノール(b.
p.157℃)、2−メチル−1−ペンタノール(b.p.148℃)、2−メチル−2−
ペンタノール(b.p.121℃)、4−メチル−2−ペンタノール(b.p.132℃)、2−エチル−1−ブタノール(b.p.147℃)、1−メチルシクロヘキサノール(b.
p.156)、2−メチルシクロヘキサノール(b.p.168℃)、3−メチルシクロヘ
キサノール(b.p.168℃)、4−メチルシクロヘキサノール(b.p.171℃)、1−オクタノール(bp.195℃)、2−オクタノール(b.p.180℃)、2−エチル−1−ヘキサノール(b.p.184℃)、ジオキサン(b.p.101℃)、ブチルエーテル(b.p.140℃)、フェニルエーテル(b.p.187℃)、イソペンチルエーテル(b.p.173℃)、1,2−ジメトキシエタン(b.p.85.2℃)、ジエトキシエタン(b.p.102℃)、ビス(2−メトキシエチル)エーテル(b.p.160℃)、ビス(2−エトキシエチル)エーテル(b.p.189℃)、シネオール(b.p.176℃)、ベンジルエチルエーテル(b.p.185℃)、アニソール(b.p.154℃)、フェネトール(b.p.170℃)、アセタール(b.p.104℃)、メチルエチルケトン(b.p.79.6℃)、2−ペンタノン(b.p.102℃)、3−ペンタノン(b.p.102℃)、シクロペンタノン(b.p.131℃)、シクロヘキサノン(b.p.156℃)、2−ヘキサノン(b.p.128℃)、4−メチル−2−ペンタノン(b.p.117℃、)、2−ヘプタノン(b.p.151℃)、2,4−ジメチル−3−ペンタノン(b.p.125℃)、
2−オクタノン(b.p.173℃)、γーブチロラクトン(b.p.204℃)、酢酸−n−ブチル(b.p.126℃)、酢酸イソブチル(b.p.126℃)、酢酸sec-ブチル(b
.p.112℃)、酢酸ペンチル(b.p.150℃)、酢酸イソペンチル(b.p.142℃)、3−メトキシブチルアセタート(b.p.173℃)、酪酸メチル(b.p.102℃)、酪酸エチル(b.p.121℃)、乳酸メチル(b.p.145℃)、乳酸エチル(b.p.155℃)、乳酸ブチル(b.p.185℃)、2−メトキシエタノール(b.p.125℃)、2−エトキシエタノール(b.p.136℃)、2−(メトキシメトキシ)エタノール(b.p.168℃)、2−イソプロポキシエタノール(b.p.142℃)、1−メトキシ−2−プロパノール(b.p.120℃)、1−エトキシ−2−プロパノール(b.p.132℃)、ジメチルスルホキシド(b.p.189℃)、N−メチルホルムアミド(b.p.185℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(b.p.153℃)、N,N−ジエチルホルムアミド(b.p.178℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(b.p.166℃)、N−メチ
ル−2−ピロリドン(b.p.202℃)、テトラメチル尿素(b.p.177.5℃)などを挙げることができ、これらは1種類以上を組み合わせて用いることもできる。
上記有機溶剤の使用割合は、電極ペースト組成部中において重量比で5重量%〜95重量%、好ましくは15重量%〜90重量%であることが望ましい。有機溶剤の使用割合が、上記範囲内にあると、発電に必要な電極中の細孔容積が十分確保できる。また上記範囲にあれば、組成物がペースト状となりハンドリングに好適である。
上記電極ペースト組成物は、必要に応じて水を添加することができる。水としては、蒸留水、イオン交換水等を挙げることができる。水の添加により、電極ペースト調製時の発熱を低減する効果がある。水の使用割合は、ペースト組成中において重量日で0重量%〜70重量%、好ましくは2重量%〜30重量%である。水の使用割合が、前記範囲内であると電極ペースト作製時の発熱を効率的に低減できる。
なお、電極ペースト組成物中の(i)触媒が担持されたカーボンの使用割合は、重量比で
1重量%〜20重量%、好ましくは3重量%〜15重量%であることが望ましい。また、組成物中の(ii)イオン伝導性ポリマーは、重量比で0.5重量%〜30重量%、好ましくは
1重量%〜15重量%であることが望ましい。触媒が担持されたカーボンの使用割合が、前記範囲未満であると、電極反応率が低下することがある。また上記範囲より大きい場合、電極ペーストの粘度が増加し、塗工時に塗りむらが発生することがある。また、イオン伝導性ポリマーの使用割合が、上記範囲未満であると、バインダーとしての役割を果たせなくなり、電極触媒を形成できないことがある。また、上記範囲より大きい場合,触媒電極中の細孔容積が減少し、十分な発電性能が得られないことがある。
上記の電極ペースト組成物の調製方法は特に限定はされないが、例えば前記触媒金属担持カーボン、前記イオン伝導性ポリマーを有機溶剤中に分散させ、従来公知の方法で混練することにより調製される。
各成分の混合順序は特定に限定されないが、例えば全ての成分を混合して一定時間攪拌を行うか、分散剤以外の成分を混合して一定時間攪拌を行った後、必要に応じて分散剤を添加して一定時間攪拌を行うことが好ましい。また、必要に応じて、有機溶媒や水の量を調整して、組成物の粘度を調整してもよい。
上記の塗布方法としては、刷毛塗り、筆塗り、バーコーター塗布、ナイフコーター塗布、ドクターブレード法、スクリーン印刷、スプレー塗布などがあり、他の基材(転写基材)上に塗布して触媒電極をいったん形成した後、電極基材またはイオン伝導膜に転写してもよい。この場合の転写基材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のシート、または表面を離型剤処理したガラス板や金属板なども用いることができる。
上記の電極基材としては、燃料電池に一般に用いられる電極基材が特に限定されること
なく用いられる。例えば、導電性物質を主たる構成材とする多孔質導電シートなどが挙げられ、この導電性物質としては、ポリアクリロニトリルからの焼成体、ピッチからの焼成体、黒鉛および膨張黒鉛などの炭素材、ステンレススチール、モリブデン、チタンなどが例示される。導電性物質の形態は繊維状または粒子状など特に限定されないが、繊維状導電性無機物質(無機導電性繊維)特に炭素繊維が好ましい。無機導電性繊維を用いた多孔質導電シートとしては、織布または不織布いずれの構造も使用可能である。織布としては、平織、斜文織、朱子織、紋織、綴織など特に限定されること無く用いられる。また、不織布としては、抄紙法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、ウォータージェットパンチ法、メルトブロー法などの方法で製造されたものが特に限定されること無く用いられる。また無機導電性繊維を用いた多孔質導電シートは編物であっても構わない。
これらの布帛として特に炭素繊維を用いる場合、耐炎化紡績糸を用いた平織物を炭化または黒鉛化した織布、耐炎化糸をニードルパンチ法やウォータージェットパンチ法などによる不織布加工をした後に炭化または黒鉛化した不織布、耐炎化糸または炭化糸または黒鉛化糸を用いた抄紙法によるマット不織布などが好ましい。例えば、東レ製カーボンペーパーTGPシリーズ、SOシリーズ、E−TEK社製カーボンクロスなどが好ましく用いられる。
多孔質導電シートには、導電性向上のために補助剤としてカーボンブラックなどの導電性粒子や、炭素繊維などの導電性繊維を添加することも好ましい実施態様である。
イオン伝導膜上に形成する場合としては、公知にイオン伝導膜であれば特に制限されるものではないが、スルホン酸基を有するポリアリーレンなどの耐熱性に優れたポリマーからなるイオン伝導膜上に形成することが好適である。
塗布された塗膜の厚さ(すなわち触媒電極の厚さ)としては特に制限されるものではないが、触媒として担持された金属が、コーティングの単位表面積当り、0.05〜4.0mg/cm2、好ましくは0.1〜2.0mg/cm2の範囲にあることが望ましい。この範囲にあれば充分に高い触媒活性が発揮され、また、効率的にプロトンを取り出すことができる。
また、塗布した後、ペースト中の前記有機溶媒および水の除去は、乾燥温度20℃〜180℃、好ましくは50℃〜160℃、乾燥時間5分〜600分、好ましくは30分〜400分で行う。必要に応じて、水浸漬により除去することもできる。水浸漬温度5℃〜120℃、好ましくは15℃〜95℃、水浸漬時間は1分〜72時間、好ましくは5分〜48時間である。
本発明に係る電極−膜接合体に用いられるカソード電極触媒層の第1の態様は、細孔容積の異なる電極触媒層をイオン伝導膜と平行な面内方向において2種以上分布させることであるが、例えば撥水処理されたカーボンペーパー上にカソード電極触媒ペーストを塗布する際、塗布面積の一部を所定の形状で覆ったマスク1を用いて、上記触媒金属担持カーボンとイオン伝導性ポリマーを含む電極ペーストAを塗布して電極触媒層を形成し(第一段階)、次に第一段階で塗布された部分がマスクされ第一段階で塗布されなかった部分にペーストが塗布されるような形状のマスク2を用いて電極ペーストAとは異なるイオン交換容量の異なるイオン伝導性ポリマーを含む電極ペーストBを塗布(第二段階)して、イオン交換容量の異なる2種以上の電極部分を面内に持つような電極形成方法を挙げることができる。
このような細孔容積の面内分布を持つ電極触媒層の形成においては、用いるマスクの形状を変えることで、ペーストの塗布作業は何回繰り返してもよいが、通常は2〜5回、好ましくは2〜4回、さらに好ましくは2〜3回繰り返すことができる。
本発明に係る電極−膜接合体に用いられるカソード電極触媒層の第2の態様は、イオン伝導膜に接触している側とガス拡散層に接触している側でイオン交換容量の異なるイオン交換性ポリマーを含むものであるが、例えばポリテトラフルオロエチレン膜上に、あるカソード電極触媒ペーストを塗布し乾燥してカソード電極触媒層1を形成し、イオン伝導膜上にホットプレスで転写する。さらにポリテトラフルオロエチレン膜に、電極触媒層1とは異なるイオン交換容量のイオン交換性ポリマーを含むカソード電極ペーストを塗布し乾燥して、イオン交換容量の異なるカソード電極触媒層2を形成し、前記で得たカソード電極触媒層1の上からホットプレスして転写する方法を挙げることができる。また、撥水処理されたカーボンペーパー上に、カソード電極触媒ペーストを塗布し乾燥してカソード電極触媒層3を形成した後、さらに、重ねてカソード電極ペーストを塗布し乾燥してカソード電極触媒層3の上にカソード電極触媒層3とは異なるイオン交換容量のイオン伝導性ポリマーを含むカソード電極触媒層4を形成し、再度乾燥する方法を用いてもよい。このように積層されたカソード電極触媒層を得た後、イオン伝導膜上にホットプレスし、カソード電極触媒層をイオン伝導膜上に形成できる。本発明では、イオン伝導膜に接触している側のイオン交換容量が、ガス拡散層に接触している側に比べて、0.2meq/g以上高くなるように、まず高めのイオン交換容量のイオン伝導性ポリマーを含むカソード電極触媒層を形成したのち、ついで、低めのイオン交換容量のイオン伝導性ポリマーを含むカソード電極触媒層を形成することが望ましい。
さらには、イオン伝導膜上に、あるカソード電極触媒ペーストを塗布し乾燥してカソード電極触媒層5を形成した後、さらに重ねてカソード電極ペーストを塗布し乾燥して、カソード電極触媒層5の上にカソード電極触媒層5とはイオン交換容量の異なるイオン交換性ポリマーを含むカソード電極触媒層6を形成し、再度乾燥する方法を用いてもよい。このように積層されたカソード電極触媒層を得た後、ガス拡散層をホットプレスで圧着することができる。
このような異なるイオン交換容量の電極触媒層の積層は、何回繰り返してもよいが、通常は2〜5回、好ましくは2〜4回、さらに好ましくは2〜3回繰り返し、イオン伝導膜に接触している側とガス拡散層に接触している側でイオン交換容量の異なるイオン交換性ポリマーを含むカソード電極を得ることができる。
前記電極触媒層は、カソード極に設けられる。なお、アノード極の電極触媒層は特に制限されないが、カソード極と同様の電極触媒層が形成されてもよい。
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、スルホン酸当量、分子量、および燃料電池の作成及び性能の評価は以下のようにして求めた。
1.スルホン酸当量
得られたスルホン酸基を有する重合体の水洗水が中性になるまで洗浄し、フリーに残存している酸を除いて充分に水洗し、乾燥後、所定量を秤量し、THF/水の混合溶剤に溶解したフェノールフタレインを指示薬とし、NaOHの標準液を用いて滴定を行い、中和点からスルホン酸当量を求めた。
2.分子量の測定
スルホン酸基を有しないポリアリーレンの分子量は、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、GPCによってポリスチレン換算の分子量を求めた。スルホン酸基を有するポリアリーレンの分子量は、溶剤として臭化リチウムと燐酸を添加したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶離液として用い、GPCによってポリスチレン換算の分子量を求めた。
3.燃料電池の作成及び性能の評価
後述する合成例1のポリマーからなる膜厚50μmの膜を1枚用意し、撥水処理カーボ
ンペーパー上に形成されたアノードおよびカソードの2枚の電極触媒層で挟み、圧力50kg/cm2下で、160℃×15minの条件でホットプレス成形して、電極接合体を
作製した。次に、作製した電極膜接合体を2枚のチタン製の集電体で挟み、さらにその外側にヒーターを配置し、有効面積25cm2の燃料電池を組み立てた。
燃料電池の温度を80℃に保ち、湿度100%RHで水素および酸素を背圧0.02MPaで供給し、電極触媒層の面積に対して電流密度1.0A/cm2一定で負荷したとき
のセル電圧の初期値、5時間後および10時間後の値を測定した。
[合成例1](1)疎水性ユニットの合成
攪拌機、温度計、Dean-stark管、窒素導入管、冷却管を取り付けた1Lの三口フラスコに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン20.2g(60.2mmol)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン18.1g(51.6mmol)、4,4'−ジクロロジフェニルスルホン2
9.6g(103mmol)、炭酸カリウム20.1g(145mmol)をはかりとった。窒素置換後、スルホラン170ml、トルエン85mlを加えて攪拌し、オイルバスで反応液を150℃で加熱還流させた。反応によって生成する水はDean-stark管にトラップした。3時間後、水の生成がほとんど認められなくなったところで、トルエンをDean-stark管から系外に除去した。徐々に反応温度を200℃に上げ、5時間攪拌を続けた後、4,4'−ジクロロベンゾフェノン10.8g(43mmol)を加え、さらに8時間反
応させた。
反応液を放冷後、トルエン100mLを加えて希釈した。反応液に不溶の無機塩をろ過し、ろ液をメタノール2Lに注いで生成物を沈殿させた。沈殿した生成物をろ過、乾燥後、テトラヒドロフラン250mLに溶解し、これをメタノール2Lに注いで再沈殿させた。沈殿した白色粉末をろ過、乾燥し、疎水性ユニット56.5gを得た。GPCで測定した数平均分子量は7800であった。得られた化合物は、下記式(I)で表されるオリゴマーであることを確認した。下記式(I)中、aとbの比a:bは54:46であった。
Figure 2007080725
(2)スルホン化ポリマーの合成
攪拌機、温度計、窒素導入管を取り付けた1Lのフラスコに、3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル119g(296mmol)、(1)で得られた分子量7800の疎水性ユニット30.4g(3.9mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド5.89g(9.0mmol)、ヨウ化ナトリウム1.35g(9.0mmol)、トリフェニルホスフィン31.5g(120mmol)、亜鉛47.1g(720mmol)をはかりとり、乾燥窒素置換した。ここにN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)350mLを加え、反応温度を80℃に保持しながら、3時間攪拌を続けたあと、DMAc700mLを加えて希釈し、不溶物をろ過した。
得られた溶液を攪拌機、温度計、窒素導入管を取り付けた2Lのフラスコに入れ、115℃に加熱攪拌し、臭化リチウム56.6g(651mmol)を加えた。7時間攪拌後、アセトン5Lに注いで生成物を沈殿させた。次いで、1N塩酸、純水の順に洗浄後、乾燥して目的のスルホン化ポリマー103gを得た。得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は260,000であった。得られた重合体は、式(II)で表されるスルホン化ポリマーと推定される。このポリマーのイオン交換容量は、2.3meq/gであった。
Figure 2007080725
[合成例2] (1)スルホン化ポリマーの合成
攪拌機、温度計、窒素導入管を取り付けた1Lのフラスコに、3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル119g(296mmol)、合成例1の(1)で得られた分子量7800の疎水性ユニット102.3g(13.1mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド5.89g(9.0mmol)、ヨウ化ナトリウム1.35g(9.0mmol)、トリフェニルホスフィン31.5g(120mmol)、亜鉛47.1g(720mmol)をはかりとり、乾燥窒素置換した。ここにN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)350mLを加え、反応温度を80℃に保持しながら、3時間攪拌を続けたあと、DMAc700mLを加えて希釈し、不溶物をろ過した。
得られた溶液を攪拌機、温度計、窒素導入管を取り付けた2Lのフラスコに入れ、115℃に加熱攪拌し、臭化リチウム56.6g(651mmol)を加えた。7時間攪拌後、アセトン5Lに注いで生成物を沈殿させた。次いで、1N塩酸、純水の順に洗浄後、乾燥して目的のスルホン化ポリマー117gを得た。得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は210,000であった。このポリマーのイオン交換容量は、1.6meq/gであった。
[実施例1]
[電極ペーストAの調製]
50mlのガラス瓶に直径5mmのジルコニアボール(商品名:YTZボール、株式会社ニッカトー製)25gを入れ、白金担持カーボン粒子(Pt:46重量%担持、(田中貴金属工業株式会社製:TEC10E50E)1.51g、蒸留水0.88g、合成例1のスルホ
ン化ポリアリーレンの15重量%のN−メチル−2−ピロリドン溶液3.23g、N−メチル−2−ピロリドン15.47gの混合物をウエーブローターで10分間攪拌した後、
分散剤(商品名:DA234、楠本化成株式会社製)0.028gを加え、さらにウエー
ブローターで30分間攪拌し電極ペーストAを得た。
[電極ペーストBの調製]
50mlのガラス瓶に直径5mmのジルコニアボール(商品名:YTZボール、株式会社ニッカトー製)25gを入れ、白金担持カーボン粒子(Pt:46重量%担持、(田中貴金属工業株式会社製:TEC10E50E)1.51g、蒸留水0.88g、合成例2のスルホ
ン化ポリアリーレンの15重量%のN−メチル−2−ピロリドン溶液3.23g、N−メチル−2−ピロリドン15.47gの混合物をウエーブローターで10分間攪拌した後、
分散剤(商品名:DA234、楠本化成株式会社製)0.028gを加え、さらにウエーブローターで30分間攪拌し電極ペーストBを得た。
[アノード電極触媒層1の製造]
撥水化処理されたカーボンペーパー(東レ製)の片面に、電極ペーストAをドクターブレードを用いて塗布し、120℃×60分間乾燥することで白金塗布量が0.20mg/cm2になるアノード電極触媒層1を形成させた。
[カソード電極触媒層2の製造]
撥水化処理されたカーボンペーパー(東レ製)の片面に、電極ペーストAを図2に示すマスク11とドクターブレードを用いて塗布し、120℃×60分間乾燥し、電極触媒層を形成させた。さらに図3に示すマスク12を用い、電極ペーストBを、ドクターブレードを用いて塗布し、120℃×60分間乾燥することで電極触媒層2を形成させた。マスク11と12の使用に際しては、5cm角の塗布部の外形部が一致するように位置あわせをおこなって用いた。塗布面積比は(ペーストA):(ペーストB)=52:48となる。得られた電極触媒層2における白金塗布量は0.50mg/cm2であった。電極触媒
層1をアノードに、電極触媒層2をカソードに用いた場合の燃料電池性能の評価結果を表1に示す。
[実施例2]
[電極ペーストCの調製]
50mlのガラス瓶に直径5mmのジルコニアボール(商品名:YTZボール、株式会社ニッカトー製)25gを入れ、白金担持カーボン粒子(Pt:46重量%担持、(田中貴金属工業株式会社製:TEC10E50E)1.51g、蒸留水0.88g、合成例1のスルホ
ン化ポリアリーレンの15重量%のN−メチル−2−ピロリドン溶液1.62g、合成例2のスルホン化ポリアリーレンの15重量%のN−メチル−2−ピロリドン溶液1.62g、N−メチル−2−ピロリドン15.47gの混合物をウエーブローターで10分間攪
拌した後、分散剤(商品名:DA234、楠本化成株式会社製)0.028gを加え、さらにウエーブローターで30分間攪拌し電極ペーストCを得た。
[カソード電極触媒層3の製造]
撥水化処理されたカーボンペーパー(東レ製)の片面に、電極ペーストCを、ドクターブレードを用いて塗布し、120℃×60分間乾燥することで白金塗布量が0.50mg/cm2になるカソード電極触媒層3を形成させた。電極触媒層1をアノードに、電極触
媒層3をカソードに用いた場合の燃料電池性能の評価結果を表1に示す。
[実施例3]
[カソード電極触媒層4の製造]
撥水化処理されたカーボンペーパー(東レ製)の片面に、電極ペーストBをドクターブレードを用いて塗布し、120℃×60分間乾燥することで電極触媒層を形成させた。さらにこの電極触媒層の上から電極ペーストAを、ドクターブレードを用いて塗布し、120℃×60分間乾燥することで電極触媒層4を形成させた。電極触媒層4における白金塗布量は0.50mg/cm2であった。電極触媒層1をアノードに、電極触媒層4をカソードに用いた場合の燃料電池性能の評価結果を表1に示す。
[比較例1]
[カソード電極触媒層5の製造]
撥水化処理されたカーボンペーパー(東レ製)の片面に、電極ペーストAをドクターブレードを用いて塗布し、120℃×60分間乾燥することで白金塗布量が0.50mg/c
2になる電極触媒層5を形成させた。電極触媒層1をアノードに、電極触媒層5をカソ
ードに用いた場合の燃料電池性能の評価結果を表1に示す。
[比較例2]
[カソード電極触媒層6の製造]
撥水化処理されたカーボンペーパー(東レ製)の片面に、電極ペーストBをドクターブレードを用いて塗布し、120℃×60分間乾燥することで白金塗布量が0.50mg/cm2になる電極触媒層6を形成させた。電極触媒層1をアノードに、電極触媒層6をカソ
ードに用いた場合の燃料電池性能の評価結果を表1に示す。
Figure 2007080725
図1は、本発明に係る膜-電極接合体の一態様を表す概略図を示す。 実施例2において、ドクターブレードで電極ペーストを塗布する際に使用したマスクの概略図を示す。 実施例2において、ドクターブレードで電極ペーストを塗布する際に使用したマスクの概略図を示す。
符号の説明
10・・・イオン伝導膜
11・・・電極触媒層

Claims (5)

  1. イオン伝導膜と、少なくとも触媒担持カーボン及びイオン伝導性ポリマーとを含む触媒層とガス拡散層を備えたアノード電極と、および少なくとも触媒担持カーボン及びイオン伝導性ポリマーとを含む触媒層とガス拡散層を備えたカソード電極からなる電極−膜接合体であって、
    カソード電極触媒層のイオン伝導膜の面と平行な面内方向において、イオン交換容量の異なる少なくとも2種以上のイオン伝導性ポリマーを分布させてなることを特徴とし、このイオン交換容量の最も高い値と最も低い値の差が0.2meq/g以上であることを特徴とする、電極−膜接合体。
  2. カソード電極触媒層に含有されるイオン交換容量の異なる少なくとも2種以上のイオン伝導性ポリマーにおいて、イオン伝導膜に平行な方向の面内分布において、イオン交換容量の最も高い値のポリマーが5〜95%の面積を占め、最も低い値のポリマーが5〜95%を占めていることを特徴とする、請求項1に記載の電極−膜接合体。
  3. カソード電極触媒層中に含まれるイオン伝導成分含有ポリマーが下記一般式(A)で表される構造単位、および下記一般式(B)で表される構造単位を含むことを特徴とするスルホン酸基を有するポリアリーレンであることを特徴とする請求項1に記載の電極−膜接合体。
  4. イオン伝導膜と、少なくとも触媒担持カーボン及びイオン伝導成分含有ポリマーとを含む触媒層とガス拡散層を備えたアノード電極と、および少なくとも触媒担持カーボン及びイオン伝導成分含有ポリマーとを含む触媒層とガス拡散層を備えたカソード電極からなる電極−膜接合体であって、
    カソード電極触媒層中のイオン伝導成分含有ポリマーが下記一般式(A)で表される構造単位、および下記一般式(B)で表される構造単位を含むことを特徴とするスルホン酸基を有するポリアリーレンであって、カソード電極触媒層中のイオン伝導成分含有ポリマーのイオン交換容量が、イオン伝導膜に接触している側とガス拡散層に接触している側で異なっていることを特徴とする電極−膜接合体。
  5. カソード電極触媒層のイオン伝導膜に接触している側のイオン交換容量が、ガス拡散層に接触している側に比べて、0.2meq/g以上高いことを特徴とする、請求項4に記載の電極−膜接合体;
    Figure 2007080725
    (式中、Yは−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2)l
    −(lは1〜10の整数である)、−C(CF3)2−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Zは直接結合または、−(CH2)l−(lは1〜10の整数である)、−C(CH3)2−、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Arは−SO3Hまたは−O(CH2)pSO3Hまたは−O(CF2)pSO3Hで表される置換基
    を有する芳香族基を示す。pは1〜12の整数を示し、mは0〜10の整数を示し、nは0〜10の整数を示し、kは1〜4の整数を示す。)
    Figure 2007080725
    (式中、A、Dは独立に直接結合または、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH
    −、−COO−、−(CF2)l−(lは1〜10の整数である)、−(CH2)l−(lは1〜10の整数である)、−CR’2−(R’は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基および
    ハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基、フルオレニリデン基、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Bは独立に酸素原子または硫黄原子であり、R1〜R16は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素
    原子、アルキル基、一部またはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ニトロ基、ニトリル基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示す。s、tは0〜4の整数を示し、rは0または1以上の整数を示す。)
JP2005268288A 2005-09-15 2005-09-15 電極−膜接合体 Pending JP2007080725A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005268288A JP2007080725A (ja) 2005-09-15 2005-09-15 電極−膜接合体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005268288A JP2007080725A (ja) 2005-09-15 2005-09-15 電極−膜接合体

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2007080725A true JP2007080725A (ja) 2007-03-29

Family

ID=37940792

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005268288A Pending JP2007080725A (ja) 2005-09-15 2005-09-15 電極−膜接合体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2007080725A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE102008000809A1 (de) 2007-03-27 2008-10-02 Advics Co., Ltd., Kariya Fahrzeugbremssystem
JP2015162309A (ja) * 2014-02-26 2015-09-07 凸版印刷株式会社 膜電極接合体の製造方法、膜電極接合体、及び固体高分子形燃料電池
JP7188625B1 (ja) 2022-02-02 2022-12-13 トヨタ自動車株式会社 水電解セル

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE102008000809A1 (de) 2007-03-27 2008-10-02 Advics Co., Ltd., Kariya Fahrzeugbremssystem
JP2015162309A (ja) * 2014-02-26 2015-09-07 凸版印刷株式会社 膜電極接合体の製造方法、膜電極接合体、及び固体高分子形燃料電池
JP7188625B1 (ja) 2022-02-02 2022-12-13 トヨタ自動車株式会社 水電解セル
JP2023112816A (ja) * 2022-02-02 2023-08-15 トヨタ自動車株式会社 水電解セル

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2007080726A (ja) 電極−膜接合体
JP4904812B2 (ja) 膜電極複合体およびそれを用いた固体高分子型燃料電池
JP2007048643A (ja) 電極−膜接合体
JP5132316B2 (ja) 電極触媒層
JP2007026819A (ja) 電極−膜接合体
JP2006278232A (ja) 多孔質電極触媒層およびその製造方法
JP4896435B2 (ja) 固体高分子型燃料電池の電極用電解質
JP2007026774A (ja) 触媒ペーストの製造方法
JP2008277281A (ja) 直接メタノール燃料電池用膜−電極接合体および直接メタノール型燃料電池
JP2006278233A (ja) 電極触媒層
JP4871537B2 (ja) 膜−電極接合体の製造方法
JP5144024B2 (ja) 高分子型燃料電池用電極電解質およびその用途
JP5031340B2 (ja) 膜−電極接合体
JP2007080725A (ja) 電極−膜接合体
JP5515230B2 (ja) 定置または携帯型燃料電池用膜電極接合体、定置または携帯型燃料電池、および、定置または携帯型燃料電池のガス拡散層用樹脂ペースト
JP2007048642A (ja) 電極触媒層の製造方法
JP2007087889A (ja) 電極−膜接合体
JP4846273B2 (ja) 固体高分子型燃料電池用電極電解質
JP5116230B2 (ja) 電極・電解質膜接合体の製造方法
JP2010238373A (ja) 高分子電解質膜、その製造方法、及びこれを用いた電極−膜接合体、固体高分子型燃料電池
JP2008277282A (ja) 直接メタノール燃料電池用膜−電極接合体および直接メタノール型燃料電池
JP2007026709A (ja) 電極触媒層
JP5037196B2 (ja) 高分子型燃料電池用電極電解質およびその用途
JP5144023B2 (ja) 膜−電極接合体
JP4997965B2 (ja) 高分子型燃料電池用電極電解質およびその用途