JP2007061673A - 医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートおよびそれを用いた医用分離膜 - Google Patents

医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートおよびそれを用いた医用分離膜 Download PDF

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Abstract

【課題】医療の分野、特に医用分離膜に適用可能である高分画性能、高透水性能、高物理的強度にも優れた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートおよびそれを用いた医用分離膜を提供する。
【解決手段】透水量が1×10−11/(sec・m・Pa)以上であり、実質的に無核の孔を有し、β晶活性を有し、かつ120℃で15分間保持した時の長手方向と幅方向の熱収縮率の和が0〜20%であることを特徴とする医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシート。
【選択図】なし

Description

本発明は、医療の分野、特に医用分離膜に適用可能であるβ晶活性を有する医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートおよびそれを用いた医用分離膜に関するものであり、より詳しくは、高分画性能、高透水性能、高物理的強度にも優れた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートに関する。
近年、腎不全、激症肝炎、多臓器不全、重症筋無力症、高脂血症などの多くの難病に対して血液浄化法が行なわれている。これは、患者の血管から循環血液を連続的に体外に取り出して血液中の病因物質や老廃物を分離膜や吸着材で分離除去する治療法である。分離膜を用いた分離法は血液透析や血液ろ過、血漿分離などに広く用いられている。
血液透析膜や血液ろ過膜では、血液中の尿素、クレアチニン、水などの低分子量物質から分子量11800のβミクログロブミン(βMG)に代表される低分子量タンパク質までの広い分子量領域の物質の分離・除去が要求される。また、血漿分離膜では、血液から血漿成分を出来るだけ効率よく、かつ、赤血球を破壊(溶血)させることなく分離することが要求される。
また、現在では、プロテオーム解析と言う血漿から特定の血漿成分を分離して特定の血漿成分と患者の病気の因果関係を明らかにする解析の研究も進んでいる。血漿から特定の血漿成分を分離する場合も分離膜として血漿成分分離膜が使用されており、効率よく特定の血漿成分を分離することが要求される。
このような、医用分離膜の分野において、共通して必要とされる性能は、出来るだけ選択的に分離物質を分離できる分画性能である。
また、上記のような分離膜は、併せて透水性能も求められる。透水性能が向上すれば、膜面積を減らすことが可能となり、医用装置や器具がコンパクトになるためである。
また、分離膜のハンドリング性として、機械強度や伸度等の物理的強度も求められる。物理的強度がない場合、水圧が掛かると、分離膜が破れたり、ファウリングを起こしてしまう。
このように、医用分離膜には、優れた分画性能、透水性能、物理的強度が求められる。
これらの性能を満たす素材としてセルロースアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン等が挙げられる(非特許文献1)。しかし、これらの素材で製造する多孔質膜あるいは中空糸膜は、湿式又は乾湿式によって製造するため、孔径制御や孔構造の制御に関しては有利であり、分画性能も優れているが、製造時において工程が煩雑でコストが高くなる傾向があった。また、酸、アルカリおよび有機溶剤等による耐性が劣っており、また熱や圧力等により容易に変形する等の問題があった。(特許文献1〜3)。特に現行品であるセルロースアセテートは水と接触すると膨潤するため、多孔質膜の変形や膜表面のシワの形成が発生するため、長期使用という点では問題があった。
その分離膜の素材として、その他にポリオレフィンが挙げられる。ポリオレフィンは、上記素材に比較して、耐薬品性にも優れ、溶媒等も吸収しないため、膨張せず、寸法安定性にも優れている。そのため、ポリオレフィンの多孔質膜化技術は多々研究開発されている。ポリオレフィンの多孔質膜の製造方法としては、ラメラ延伸開孔法(特許文献4)や相分離法(特許文献5、6)を挙げることが出来る。しかし、いずれも湿式法によるため、コストが高くなる傾向にある。また、いずれの方法も、孔径が大きすぎて、血球成分が透過しやすいという問題もある。一方、乾式法として、ポリプロピレンに流動パラフィンを添加して多孔質膜を製造する方法も開示されているが、孔径分布が大きく、孔径制御が困難で、血球成分が透過しやすいという問題があった(特許文献7)。添加剤として無機もしくは有機粒子を添加して多孔質膜を製造する方法もあるが、添加剤による孔生成は、上記の血球成分透過の問題の他に、添加剤と血液中の物質が反応し、補体系の活性化を引き起こす恐れもあるため、使用できない問題があった(特許文献8)。
乾式法として、もう一つ挙げられるのが、ポリプロピレンに特有な結晶形態を利用して孔を形成させるβ晶法が挙げられる。β晶核剤をポリプロピレンに添加することによりキャスト時にβ晶分率を高めておき、延伸させてβ晶(結晶密度:0.922g/cm)をα晶(結晶密度:0.936g/cm)に転移させる。β晶とα晶は密度差があるために孔が生じる。β晶法は、コストを抑えることが出来るが、透水性能が不十分であるという問題があったため、添加剤を加える必要があった(特許文献9〜14)。
国際公開パンフレットWO2002/087735 特開2004−182919号公報 特開2004−217900号公報 特開平5−49878号公報 特開2004−16930号公報 特開昭55−131028号公報 特開昭62−262705号公報 特公平3−2893号公報 特開平9−176352号公報 特開平9−255804号公報(請求項1) 特開平7−118429号公報(請求項1または2) 特許第3443934号公報(請求項1〜5) 特許第3341358号公報(請求項1〜3) 特許第2509030号公報(請求項1〜8) シーエムシー出版"医療用高分子材料の展開"、1998年、p105
そこで、本発明は、医療の分野、特に医用分離膜に適用可能であるβ晶活性を有する医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートおよびそれを用いた医用分離膜に関するものであり、より詳しくは、高分画性能、高透水性能、高物理的強度にも優れた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートおよびそれを用いた医用分離膜を提供することにある。
本発明は、上記問題点を解決するために、主として、以下の構成を有する。
すなわち、本発明は、透水量が1×10−11/(sec・m・Pa)以上であり、実質的に無核の孔を有し、β晶活性を有し、かつ120℃で15分間保持した時の長手方向と幅方向の熱収縮率の和が0〜20%であることを特徴とする医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートである。
また、上記医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの好ましい態様として、空孔率が55〜80%であること、また、長手方向と幅方向の2%伸張時の応力(F2値)の和が10〜50MPaであること、また、長手方向と幅方向の破断点伸度の和が50〜200%であること、また、親水化処理が施されていることがあげられる。また、本発明は、上記のいずれかに記載の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを用いる医用分離膜である。
本発明は、医療の分野、特に医用分離膜に適用可能である高分画性能、高透水性能、高物理的強度にも優れた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートおよびそれを用いた医用分離膜を提供することが出来る。本発明は、血液透析や血液ろ過、血漿分離、血漿成分分離などに幅広く用いることができる。
以下、本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートおよびそれを用いた医用分離膜の最良の形態について説明する。
本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの透水量は1×10−11/(sec・m・Pa)以上であることが必要である。透水量は平均孔径に左右されるため、透水量のみで一概に優劣を評価することは出来ないが、上記の範囲を有することによって、効率的に血液中の血漿成分と赤血球を分離することができる。上限の範囲は、平均孔径に左右されるため、特に規定していないが、透水量が向上すると物理的強度が劣る傾向があるため、1×10−8/(sec・m・Pa)以下が好ましい。透水量制御は、β晶核剤の種類、β晶核剤濃度、製膜時のキャスト温度、キャスト速度、縦延伸倍率、縦延伸予熱温度、横延伸予熱温度、延伸温度、熱固定温度等を変更することによって制御することができる。
本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、孔(ボイド)が実質的に無核であることが必要である。ここで“孔が実質的に無核”とは、延伸により孔を形成するための核(孔形成剤)が存在しない孔のことである。このような実質的に無核の孔では、シート断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際の断面像において、孔内には何も観察されない。孔の形成のために、孔形成剤となる非相溶性樹脂や無機または有機粒子を添加すると、該樹脂や粒子が核となり孔を安定して形成することができ、透水性能に優れた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを得ることができるが、製造工程や加工工程において工程汚れの原因となるほか、孔径分布が大きく、孔径制御が困難である問題の他、孔形成剤と血液中の物質が反応し、補体系の活性化を引き起こす恐れもあるため、使用できない。また、孔形成剤がクラックの原因となり、分離膜として使用した際に破れてしまう場合がある。孔が実質的に無核である医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートはβ晶法を使用することにより達成することが出来る。
本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、β晶活性を有することが必要である。ここで、“β晶活性を有する”とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、JIS K 7122(1987)に準じて窒素雰囲気下で5mgの試料を10℃/分の速度で280℃まで昇温させ、その後5分間保持した後に10℃/分の冷却速度で30℃まで冷却し、次いで再度10℃/分の速度で昇温した際に得られる熱量曲線(以下セカンドランの熱量曲線と称する場合がある)に、140〜160℃にβ晶の融解に伴う吸熱ピークが存在し、該吸熱ピークのピーク面積から算出される融解熱量が10mJ/mg以上であることをいう。また、上記温度範囲に吸熱ピークが存在するがβ晶の融解に起因するか不明確な場合などは、DSCの結果と併せて、当該サンプルを下記に示す特定条件で溶融結晶化させたサンプルについて、広角X線回折法を用いてβ晶に起因する2θ=16°付近に観測される(300)面の回折ピークが存在することをもって“β晶活性を有する”と判定してもよい。β晶活性を有することにより、孔が実質的に無核となり、工程を汚さない他に孔径分布が小さく、孔径制御が容易となる。また、補体系の活性化の問題も生じないため、医用分離膜として最適である。
このようにβ晶活性を付与するために、本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートには所謂β晶核剤を添加することが好ましい。β晶核剤が添加されない場合、キャストの際にβ晶が生じない場合があり、孔を生成させることができず、本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートが得られない場合がある。
本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートに好ましく添加できるβ晶核剤としては、例えば、1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩;N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレン ジカルボキサミドなどに代表されるアミド系化合物;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二または三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;テトラオキサスピロ化合物類;イミドカルボン酸誘導体;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;キナクリドン、キナクリドンキノンなどに代表されるキナクリドン系顔料;有機二塩基酸である成分Aと周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物または塩である成分Bとからなる二成分系化合物などが挙げられるが、これらに限定されるわけではなく、1種類のみを用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートに添加するβ晶核剤としては、上記のなかでは特に下記化学式で表され、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレン ジカルボキサミドなどに代表されるアミド系化合物、
−NHCO−R−CONH−R
[ここで、式中のRは、炭素数1〜24の飽和もしくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和もしくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基または炭素数6〜28の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R、Rは同一または異なる炭素数3〜18のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基またはこれらの誘導体である。]
−CONH−R−NHCO−R
[ここで、式中のRは、炭素数1〜24の飽和もしくは不飽和の脂肪族ジアミン残基、炭素数4〜28の飽和もしくは不飽和の脂環族ジアミン残基または炭素数6〜12の複素環式ジアミン残基または炭素数6〜28の芳香族ジアミン残基を表し、R、Rは同一または異なる炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基またはこれらの誘導体である。]
有機二塩基酸である成分Aと周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物または塩である成分Bとからなる二成分系化合物が、β晶を生成させることができ、本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを得ることが出来る。
かかる特に好ましいβ晶核剤もしくはβ晶核剤添加ポリプロピレンの具体例としては、新日本理化(株)社製β晶核剤“エヌジェスター”(タイプ名:NU−100など)、SUNOCO社製β晶核剤添加ポリプロピレン“BEPOL”(タイプ名:B022−SPなど)などが挙げられる。
本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、120℃15分間保持したシートの長手方向と幅方向の熱収縮率の和が0〜20%であることが必要である。熱収縮率はJIS A 6111(2004)の透湿防水シートの7.8の熱収縮性に準じて測定した。上記の範囲を有することによって、医用分離膜として蒸気滅菌をする際に、寸法安定性が保たれるため、分離膜のしわ等が生じたり、縮んで短絡が生じたりすることなく正確に血液中の血漿成分と赤血球を分離することが出来る。好ましくは15%以下である。
本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、空孔率が55〜80%であることが好ましい。空孔率は比重から算出することが出来る。比重はJIS K 7112のA法(1999)に準じて高精度電子比重計(ミラージュ貿易(株)製 SD−120L)を用いて測定した。より好ましくには、60%以上である。空孔率が55%未満の場合には、透過性能が低下し、医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートに適用できない場合がある。空孔率が80%を超える場合には、物理的強度が劣るため、水圧を掛けたときに容易に破れてしまい、医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートに適用できない場合がある。
本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、シートの長手方向と幅方向の2%伸張時の応力(F2値)の和が10〜50MPaであることが好ましい。F2値はJIS K 7127(1999、試験片タイプ2)準じてフィルム強伸度測定装置((株)オリエンテック社製 AMF/RTAー100)を用いて測定した。好ましくは15MPa以上であり、また好ましくは30MPa以下である。上記の範囲未満では、物理的強度が劣るため、水圧を掛けたときに容易に破れてしまい医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートに適用できない場合がある。上記の範囲を超えると、医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートとしてモジュール等に加工する際に、加工が困難となり、医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートに適用できない場合がある。
本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、シートの長手方向と幅方向の破断点伸度の和が50〜200%であることが好ましい。破断点伸度はJIS K 7127(1999、試験片タイプ2)準じてフィルム強伸度測定装置((株)オリエンテック社製 AMF/RTAー100)を用いて測定した。好ましくは60%以上であり、また好ましくは110%以下である。上記の範囲未満では、物理的強度が劣るため、水圧を掛けたときに容易に破れてしまい、医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートに適用できない場合がある。上記の範囲を超えると、医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートとして使用する際に、容易にしわ等が生じてしまい、正確に分離すべき物質を分離できず、医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートとして適用できない場合がある。
本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、主としてポリプロピレン樹脂から構成される。上記ポリプロピレン樹脂としては、主としてプロピレンの単独重合体からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でプロピレンと他の不飽和炭化水素の単量体成分が共重合された重合体であってもよいし、ポリプロピレンの単量重合体にプロピレンとプロピレン以外の単量体成分が共重合された重合体がブレンドされてもよいし、ポリプロピレンの単量重合体にプロピレン以外の不飽和炭化水素の単量体成分の共重合体がブレンドされてもよい。このような共重合成分やブレンド物を構成する単量体成分として、例えば、エチレン、プロピレン(共重合されたブレンド物の場合)、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチルブテン−1、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、5−エチルヘキセン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、アクリル酸およびそれらの誘導体などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
また、本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートに用いられるポリプロピレン樹脂に透水性能を向上させるために高溶融張力ポリプロピレン(High Melt Strength−PP:以下、HMS−PPと略称する場合がある)を添加しても構わない。HMS−PPを添加することによって、溶融押出が安定して製膜性が向上し、高倍率延伸することができる。高倍率延伸をすることによって透水性能を向上することができ、なおかつ高物理的強度を有する本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを製膜することができる。
本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートに含まれるHMS−PPは、溶融押出の安定性、製膜性の向上効果、それに伴う透水性能および物理的強度向上の効果が大きい傾向にあることから、主鎖骨格中に長鎖分岐を有するHMS−PPであることが好ましい。主鎖骨格中に長鎖分岐を有するHMS−PPとは、ポリプロピレン主鎖骨格から枝分かれしたポリプロピレン鎖を有するポリプロピレンである。具体例としては、Basell社製HMS−PP(タイプ名:PF―814、PF―633、PF―611、SD―632など)、Borealis社製HMS−PP(タイプ名:WB130HMSなど)、Dow社製HMS−PP(タイプ名:D114、D201、D206など)などが挙げられる。
本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートに含まれるHMS−PPの混合量は、特に制限されないが、1〜30重量%であることが好ましく、少量添加でも効果がみられるのが特徴である。混合量が上記範囲未満であると、製膜性が悪化したり、特に縦高倍率延伸持の横延伸性が悪化する場合があったり、縦高倍率延伸して得られる医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの透水性能および物理的強度が劣化したりする場合がある。上記範囲を超えると、製膜性が悪化したり、特に縦高倍率延伸時の縦延伸性が悪化する場合があったり、溶融押出時の溶融ポリマーの安定吐出性やシートの耐衝撃性などが悪化する場合があったり、下記で定義するβ晶分率が必要以上に低下する場合がある。HMS−PPの混合量は、好ましくは1重量%以上であり、また好ましくは15重量%以下である。
本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを構成するポリプロピレンには、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、塩素補足剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、粘度調整剤、銅害防止剤、抗菌剤などの公知の添加剤を混合しても良い。この際、特に添加した場合と添加しない場合で、得られる医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートのβ晶分率が実質的に同様であることが好ましい。
抗菌剤として、現在臨床で広く使用されている公知の抗菌剤が好ましく用いられる。具体的には、例えば硝酸銀、pーアミノベンゼンスルファミド、ゲンタマイシン、銀スルファジアミン、ナリジクス酸、ピロミド酸、ピペミド酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシンなどが好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの製膜方法としては、その製法は特に制限されないが、口金より押し出したポリプロピレンを一軸若しくは二軸に延伸してシートを得る方法がある。本発明の目的を達成するには、口金より押し出したポリプロピレンを二軸に延伸してシートを得ることが好ましい。また口金より押し出したポリプロピレンを二軸に延伸する方法としては、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法、チューブラー延伸法があるが、経済性および均一に孔を形成する観点から、逐次もしくは同時二軸延伸法が好ましい。
本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの製膜条件として、延伸後に熱固定処理を施すことが好ましい。その熱固定温度は135〜180℃である。延伸後に熱固定処理を施すことにより、熱収縮率が著しく小さくなり、蒸気滅菌耐性が向上する。また、熱固定処理により医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの表層の凹凸が緩やかになることから、溶血問題も生じなくなり、医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートに好ましい形態となる。
本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、親水化処理を施すことが好ましい。本来、疎水性である医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートに親水性を付与する処理を施すことにより、血液等の水系のろ過対象液をろ過することが可能となる。親水化処理の順序は特に限定しない。親水化処理の方法としては、グラフト処理、コーティング処理、または酸化処理の何れかを施すことが好ましい。
グラフト処理とは、医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートへの放射線の照射によりポリプロピレン分子中に生成したラジカルに、親水性官能基を有するモノマーを反応させる処理のことである。モノマーとして、N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリビニルアルコールなどがある。コーティング処理とは、ドデシル硫酸ナトリウム、グリセリン、ポリビニルアルコール等の界面活性剤または親水性ポリマーを医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートのマトリックスの表層にコートして、親水性コート層を形成させる処理のことである。酸化処理とは、例えばオゾンや酸などの酸化剤を使用したり、紫外線やプラズマ等を使用して、医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを構成するポリプロピレン分子に直接的に酸素含有官能基を導入する処理のことである。
本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、原液流入口や透過液流出口などを備えたケースに収容され、医用分離膜モジュールとして使用される。医用分離膜モジュールは、医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートがチューブ状に成形できた場合には、チューブを複数本束ねて円筒状の容器に納め、両端または片端をポリウレタンやエポキシ樹脂等で固定し、透過液を回収できるようにしたり、平板状にチューブの両端を固定して透過液を回収できるようにして組み立てる。医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートが平膜状である場合には、平膜を集液管の周りに封筒状に折り畳みながらスパイラル状に巻き取り、円筒状の容器に納め、透過液をできるようにしたり、集液板の両面に平膜を配置して透過液を回収できるようにしてもよい。平膜状であるならば、遠心分離機に使用される遠沈管に組み込んで、血漿成分を分離できるようにしても構わない。上記のような医用分離膜モジュールもしくは遠沈管を医用分離膜と称する。本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、血液透析や血液ろ過、血漿分離、血漿成分分離等の医用分離膜に幅広く使用することが出来る。
上記の医用分離膜の滅菌方法は、放射線滅菌、蒸気滅菌やエチレンオキシド滅菌を行っても構わない。もちろん医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートのまま、上記滅菌方法を実施しても構わない。放射線滅菌の場合、放射線としてはコバルト60等のγ線、電子線等が使用できる。照射量は1〜100kGyが好ましい。
本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートおよび医用分離膜は、その形態により、血液透析や血液ろ過、血漿分離、血漿成分分離などに広く用いることができる。
本発明の特性値は、次の評価方法、評価基準により求めた。
(1)透水量
平膜用全面ろ過装置(日本ミリポア工業株式会社製 攪拌式セル)に親水化処理後の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシート(透過面積1cm)をセットして、10cmの純水を入れ、差圧0.3×10Paを掛ける。すべての純水が透過した時の時間を測定して、透水量を算出した。(n=3)(単位:m/(sec・m・Pa))
(2)孔(ボイド)内の核の有無
凍結ミクロトーム法を用い、−100℃で医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの横方向―厚み方向断面を採取した。得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの断面に、Ptをコートした後、下記条件にて走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて断面を観察し、断面像を採取した。なお、サンプル調製および断面観察は、(株)東レリサーチセンター(TRC)にて行った。
・装置 :(株)日立製作所製超高分解能電解放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM S−900H
・加速電圧:2kV
・観察倍率:2000倍。
得られた断面像を用いて、断面の1000μm当たりに存在する全ての孔(ボイド)(境界線を有する単独孔)を計測した。さらに、全ての孔(ボイド)のうち、内部に核を有する孔(ボイド)を計測し、全ての孔(ボイド)数に占める内部に核を有する孔(ボイド)数の割合を百分率で算出した(単位:%)。なお、断面像は、1000μmの観察面積が得られるように必要なだけを、観察箇所を変えて採取した。
本発明では、横方向―厚み方向断面を上記手法で観察し、全ての孔(ボイド)数に占める内部に核を有する孔(ボイド)数の割合が、5%以下である場合、該A層が実質的に無核の孔(ボイド)を有すると判定し、無とした。また、5%を越える場合を有とした。
なお、“核を有する”ことは、ポリプロピレンに孔(ボイド)を形成しうる、球状、または繊維状、または不定形状、またはその他の形状をした、非相溶性樹脂、または無機粒子、または有機粒子が、1個の境界線を有する単独孔中に、1個以上存在することを意味する。
(3)β晶活性の有無
Seiko Instruments社製熱分析装置RDC220型を用いて、JIS K 7122(1987)に準じて測定した。サンプル重量5mgとしてアルミニウムパンに封入して装填し、当該装置にセットし、窒素雰囲気下で10℃/分の速度で30℃から280℃まで昇温し、昇温完了後280℃で5分間待機させ、引き続き10℃/分の速度で30℃まで冷却し、冷却完了後30℃で5分間待機させ、次いで再度10℃/分の速度で280℃まで昇温する際に得られる熱量曲線において、140℃以上160℃未満にβ晶の融解に伴う吸熱ピークが観測される場合に、該シート(原料ポリプロピレン)がβ晶活性を有するものと判定した。なお、ここでいう吸熱ピークとは、融解熱量が10mJ/mg以上であるものをいう。また、融解熱量は、熱量曲線が昇温に伴いベースラインから吸熱側にずれ、次いでベースラインの位置に戻るまでのベースラインと熱量曲線で囲まれる面積であり、融解開始温度位置からベースライン上に熱量曲線の交点まで高温側に直線を引き、この面積をコンピュータ処理して求めた。
なお、上記の手法で140〜160℃に融解ピークが存在するが、β晶の融解に起因するものか不明確な場合は、140〜160℃に融解ピークが存在することと、広角X線回折法による回折プロファイルでβ晶に起因する回折ピークが存在することをもってβ晶活性を有するものと判定すればよい。
下記に広角X線回折法の測定条件を示す。
・サンプル:本発明のシートの方向を揃えて、熱プレス調整後のサンプル厚さが1mm程度になるよう重ね合わせた後、これを0.5mm厚みのアルミ板で挟み、280℃で熱プレスして融解・圧縮させた。得られたシートを、アルミ板ごと100℃の沸騰水中に5分間浸漬して結晶化させ、その後25℃の雰囲気下で冷却して得られるシートを幅1mmに切り出したものを測定に供した。
・X線回折装置:理学電気(株)社製 4036A2
・X線源:CuKα線(Niフィルター使用)
・出力:40kV、20mA
・スリット系:2mmφ−1°−1°
・検出器:シンチレーションカウンター
・計数記録装置:理学電気(株)社製 RAD−C型
・測定方法:2θ/θスキャン(ステップスキャン、2θ範囲10〜55°、0.05°ステップ、積算時間2秒)。
得られた回折プロファイルに、2θ=16.1〜16.4°付近にβ晶の(300)面による最も回折強度が強い回折ピークが観測されればよい。なお、ポリプロピレンの結晶型(α晶、β晶)の構造、得られる広角X線回折プロファイルなどは、例えば、エドワード・P・ムーア・Jr.著、“ポリプロピレンハンドブック”、工業調査会(1998)、p.135−163;田所宏行著、“高分子の構造”、化学同人(1976)、p.393;ターナージョーンズ(A.Turner−Jones)ら, “マクロモレキュラー ケミ”(Macromol.Chem.),75,p.134−158や、これらに挙げられた参考文献なども含めて多数の報告があり、それを参考にすればよい。本発明では、β晶活性を有するものを有、有さないものを無とした。
(4)120℃15分間保持したシートの長手方向と幅方向の熱収縮率の和
医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの熱収縮率の和はJIS A 6111(2004)の透湿防水シートの7.8の熱収縮性に準じて測定した熱収縮率を使用した。
医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートに長手方向と幅方向に100mmの標線を引き、その標線間の距離を測定した後、ギアオーブンにより120℃、15分の条件下で熱処理を行なった。その後、ギアオーブンから医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを取り出して、再び標線間の距離を測定した後、次の式から長手方向と幅方向の熱収縮率を求めた。
長手方向(または幅方向)の熱収縮率(%)=[(未処理の長手方向(または幅方向)の標線間距離−熱処理後の長手方向(または幅方向)の標線間距離)/未処理の長手方向(または幅方向)の標線間距離]×100
標線は平行に引き、医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの中央を測定した。(n=3)(単位:%)長手方向と幅方向の熱収縮率の和はそれぞれの熱収縮率を加えた値である。
(5)空孔率
空孔率は、医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの比重を測定することにより算出することが出来る。医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの比重は、シートを30mm×40mmの大きさにカットして得た試料サンプルを、ミラージュ貿易(株)製高精度電子比重計SD−120Lを用い、水中置換法(JIS K 7112のA法(1999))に準じて測定した。なお、測定は温度23℃、相対湿度65%の条件下にて行なった。また、前記の方法にて求めたシートの見かけ比重(d)を測定する。さらに、この微孔性ポリプロピレンシートを280℃の熱プレスによって熱融解して圧縮し、完全に空孔を排除したシート作製し、該シートを30℃の水に浸漬して急冷したシートの見掛け比重(d)を同様に測定する。医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの空孔率は下記式:
空孔率(%)=(1−d/d)×100
にて求めた。(n=3)(単位:%)。
(6)2%伸張時の応力(F2値)値および破断点伸度
(株)オリエンテック社製フィルム強伸度測定装置(AMF/RTAー100)を用いて、JIS K 7127(1999、試験片タイプ2)に準じて測定した。サンプルを長手方向に15cm、幅方向に1cmのサイズに切り出し、原長50mm、引張り速度300mm/分で伸張して、長手方向の2%伸張時の応力であるF2値(単位:MPa)、長手方向の破断点伸度(単位:%)を測定した。(n=3)。同様に幅方向の破断点応力および破断点伸度はサンプルを幅方向に15cm、幅方向に1cmのサイズに切り出したものを測定して求めた。長手方向と幅方向のF2値の和はそれぞれのF2値を加えた値である。破断点伸度も同様である。
(7)厚み
ダイヤルゲージ式厚み計(JIS B 7503(1997)、PEACOCK社製UPRIGHT DIAL GAUGE(0.001×2mm)、No.25、測定子5mmφ平型、125gf荷重)を用いて、医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの長手方向および幅方向に10mm間隔で10点測定し、それらの平均値を当該サンプルのシート厚みとした(単位:μm)。
(8)分画性能の有無
分画性能は阻止率で規定される。阻止率は次式で算出できる。
阻止率(%)=(1−透過液濃度/仕込み液濃度)×100
仕込み液としては分子量約1000〜100000までの分布を有するデキストラン水溶液を用いた。医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを平膜用全面ろ過装置(日本ミリポア工業株式会社製)にセットしてデキストラン水溶液を透過させた。得られた透過液を2mL採取して高速GPC装置(東ソー株式会社製 HLC−8220GPC)により標準ポリスチレン(東ソー株式会社製 TSK標準ポリスチレン)で換算した各分子量の頻度(濃度)を得た。あらかじめ仕込み液の各分子量の頻度(濃度)を測定しておき、上式より各分子量の阻止率を算出した。分画性能の有無は、血液中の代表的な分離物質であるアルブミンを分画できるかどうかで判断した。アルブミンの分子量は69000であるため、その分子量の阻止率を算出し、70%以上である場合は有を、70%より小さい場合は無と判断した。
(9)蒸気滅菌耐性の有無
医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの熱収縮率の和はJIS A 6111(2004)の透湿防水シートの7.8の熱収縮性に準拠して測定した熱収縮率を使用した。
医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートに長手方向と幅方向に100mmの標線を引き、その標線間の距離を測定した後、電気式自動高圧蒸気滅菌機(株式会社テックジャム製)により2気圧下で、121℃、20分の条件下で熱処理を行なった。その後、電気式自動高圧蒸気滅菌機から医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを取り出して、再び標線間の距離を測定した後、次の式から長手方向と幅方向の熱収縮率を求めた。
長手方向(または幅方向)の熱収縮率(%)=[(滅菌前の長手方向(または幅方向)の標線間距離−滅菌後の長手方向(または幅方向)の標線間距離)/滅菌前の長手方向(または幅方向)の標線間距離]×100
標線は平行に引き、医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの中央を測定した(n=3)(単位:%)。長手方向と幅方向の熱収縮率の和が20%以下である場合は有を、20%を超える場合は無と判断した。
(10)抽出物の有無
医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートをその重量の10倍量の65℃の温水中に浸水し、200時間保持して、その温水中の全有機炭素量を炭素分析装置(LECO社製 WR-112型)を使用して測定した。その測定値は、ポリプロピレン由来であると仮定して、医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの全重量に対してポリプロピレンがどれだけ抽出されたかを示す抽出率(重量%)を算出した。その抽出量が0.1%以下である場合は、抽出物は無いと判断して無を、0.1%を超える場合は、ポリプロピレンの他に違う物質も抽出されている可能性があるため、抽出物は有を判断した。
(11)血球成分損傷の有無
医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを直径13mmに切断し、市販のフィルターカートリッジ(ミリポア社製、品名:スフィネクスフィルタホルダー SX0130000)にセットした。健常人から採血した得た血液を生理食塩水を用いて10%に希釈し、その希釈血液を100μLを用いて、40kPaの圧力を掛けてろ過を行った。得られた血漿の状態を、上記希釈血液を遠心分離機(株式会社久保田製作所製)と遠心式フィルターユニット(ミリポア社製 MWCO30000)を使用して、3000rpm×10分の遠心分離条件で遠心分離して得られた血漿と比較し、血球成分損傷(溶血)の有無を確認した。遠心分離して得られた血漿状態よりもフィルターカートリッジを使用して得られた血漿状態の方が赤色であれば、血球成分損傷が有りと判断して有を、赤色でなければ無と判断した。
本発明を実施例に基づいて説明する。なお、所望の厚みのシートを得るためには、特に断りのない限り、ポリマーの押出量と金属ドラムの周速を所定の値に調節した。
(実施例1)
医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを構成するポリプロピレンとして、メルトフローレイト(MFR):7g/10分であるポリプロピレン(住友化学(株)製 WF836DG3)96.95重量%に、MFR:3g/10分であるHMS−PP(Basell製 PF−814)を3重量%、β晶核剤として、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレン ジカルボキサミド(新日本理化(株)製NU−100)を0.05重量%の比率で添加混合したポリプロピレン樹脂を二軸押出機に供給して300℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却してチップカッターで5mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥した。
そのポリプロピレン原料チップを、一軸押出機に供給して220℃で溶融・混練し、200メッシュの単板ろ過フィルターを経た後に200℃に加熱されたTダイ口金内を通して、溶融ポリマーをシート状に押出し、表面温度120℃に加熱された金属ドラムに巻き付け、シートのドラムに接する面とは逆側の面からエアーナイフを用いて120℃に加熱された熱風を吹き付けて密着させながら、シート状に成形した。この時の金属ドラムの速度は2m/分とした。
得られた未延伸シートを100℃に保たれたロール群に通して予熱し、100℃に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に4倍延伸して100℃のロールで冷却した。引き続き、この縦延伸積層シートの両端をクリップで把持しつつテンターに導入して135℃で予熱し、135℃で幅方向に8倍延伸し(面積倍率:縦延伸倍率×横延伸倍率=32倍)、次いで幅方向に5%の弛緩を与えつつ、155℃で熱固定をし、均一に徐冷した後、室温まで冷却して巻き取り、厚さ37μmの医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを得た。
次に医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの両面に界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製)をメタノール(ナカライテスク社製)で濃度3wt%に調整した溶液を、ガラス棒で両面コーティングし、常温乾燥させて親水化処理を行い、本発明の実施例1とした。
得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの特性結果を表1に示す。得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、透水性能、分画性能および物理的強度も良好であり、医用分離膜に適した医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートであった。
(実施例2)
医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを構成するポリプロピレンとして、MFR:3g/10分であるHMS−PP(Basell社製 PF−814)を3重量%、β晶核剤添加ポリプロピレンとしてMFR:1.8g/10分であるポリプロピレン(SUNOCO社製“BEPOL” タイプ:B022−SP)97重量%の比率で添加混合したポリプロピレン樹脂を二軸押出機に供給して300℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却してチップカッターで5mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥した。
そのポリプロピレン原料チップを、一軸押出機に供給して220℃で溶融・混練し、200メッシュの単板ろ過フィルターを経た後に200℃に加熱されたスリット状口金内に導入した。次いで、押出機の溶融ポリマーをシート状に押出し、表面温度120℃に加熱された金属ドラムに巻き付け、シートの非ドラム面側からエアーナイフを用いて140℃に加熱された熱風を吹き付けて密着させながら、シート状に成形した。この時の金属ドラムの速度は2m/分とした。
得られた未延伸シートを110℃に保たれたロール群に通して予熱し、110℃に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に5倍延伸して110℃のロールで冷却した。引き続き、この縦延伸積層シートの両端をクリップで把持しつつテンターに導入して135℃で予熱し、135℃で幅方向に8倍延伸し(面積倍率:縦延伸倍率×横延伸倍率=40倍)、次いで幅方向に5%の弛緩を与えつつ、155℃で熱固定をし、均一に徐冷した後、室温まで冷却して巻き取り、厚さ25μmの微孔性ポリプロピレンシートを得た。
次に医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの両面に界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製)をメタノール(ナカライテスク社製)で濃度3wt%に調整した溶液を、ガラス棒で両面コーティングし、常温乾燥させて親水化処理を行い、本発明の実施例2とした。
得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの特性結果を表1に示す。得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、透水性能、分画性能および物理的強度も良好であり、医用分離膜に適した医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートであった。
(実施例3)
実施例1において、長手方向の延伸倍率を5倍に上げ、厚みをポリマーの押出量と金属ドラムの周速で調節したこと以外は同様の条件で作製した医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを実施例3とした。
得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの特性結果を表1に示す。得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、透水性能、分画性能および物理的強度も良好であり、医用分離膜に適した医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートであった。
(実施例4)
実施例1において、MFR:7g/10分であるポリプロピレン(住友化学(株)社製 WF836DG3)94.8重量%に、MFR:3g/10分であるHMS−PP(Basell社製 PF−814)を5重量%、β晶核剤として、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレン ジカルボキサミド(新日本理化(株)社製NU−100)を0.2重量%とし、160℃で熱固定をしたこと以外は同様の条件で作製した医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを実施例4とした。
得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの特性結果を表1に示す。得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、透水性能、分画性能および物理的強度も良好であり、医用分離膜に適した医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートであった。
(実施例5)
実施例4において、長手方向の延伸倍率を5倍に上げ、155℃で熱固定をしたこと以外は同様の条件で作製した医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを実施例5とした。
得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの特性結果を表1に示す。得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、透水性能、分画性能および物理的強度も良好であり、医用分離膜に適した医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートであった。
(実施例6)
実施例1において、MFR:7g/10分であるポリプロピレン(住友化学(株)社製 WF836DG3)99.95重量%に、MFR:3g/10分であるHMS−PP(Basell社製 PF−814)を加えずに、β晶核剤として、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレン ジカルボキサミド(新日本理化(株)社製NU−100)を0.05重量%とした以外は同様の条件で作製した医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを実施例6とした。
得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの特性結果を表1に示す。得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、透水性能、分画性能および物理的強度も良好であり、医用分離膜に適した医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートであった。
(実施例7)
実施例5において、MFR:7g/10分であるポリプロピレン(住友化学(株)社製 WF836DG3)99.8重量%に、MFR:3g/10分であるHMS−PP(Basell社製 PF−814)を加えずに、β晶核剤として、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレン ジカルボキサミド(新日本理化(株)社製NU−100)を0.2重量%とし、160℃で熱固定をした以外は同様の条件で作製した医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを実施例7とした。
得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの特性結果を表1に示す。得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、透水性能、分画性能および物理的強度も良好であり、医用分離膜に適した医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートであった。
(実施例8)
実施例1において、MFR:7g/10分であるポリプロピレン(住友化学(株)社製 WF836DG3)96.8重量%に、MFR:3g/10分であるHMS−PP(Basell社製 PF−814)を3重量%に、β晶核剤として、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレン ジカルボキサミド(新日本理化(株)社製NU−100)を0.2重量%とし、ポリマーの押出量と金属ドラムの周速を調節することによって、厚みを10μmにした以外は同様の条件で作製した医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを実施例8とした。
得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの特性結果を表1に示す。得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、透水性能、分画性能および物理的強度も良好であり、医用分離膜に適した医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートであった。
(実施例9)
医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを構成するポリプロピレンとして、メルトフローレイト(MFR):7g/10分であるポリプロピレン(住友化学(株)製 WF836DG3)94.8重量%に、MFR:3g/10分であるHMS−PP(Basell製 PF−814)を5重量%、β晶核剤として、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレン ジカルボキサミド(新日本理化(株)製NU−100)を0.2重量%の比率で添加混合したポリプロピレン樹脂を二軸押出機に供給して300℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却してチップカッターで5mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥した。
そのポリプロピレン原料チップを、一軸押出機に供給して220℃で溶融・混練し、200メッシュの単板ろ過フィルターを経た後に200℃に加熱されたTダイ口金内を通して、溶融ポリマーをシート状に押出し、表面温度120℃に加熱された金属ドラムに巻き付け、シートのドラムに接する面とは逆側の面からエアーナイフを用いて120℃に加熱された熱風を吹き付けて密着させながら、シート状に成形した。この時の金属ドラムの速度は2m/分とした。
得られた未延伸シートを100℃に保たれたロール群に通して予熱し、100℃に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に5倍延伸して100℃のロールで冷却した。引き続き、この縦延伸積層シートの両端をクリップで把持しつつテンターに導入して135℃で予熱し、135℃で幅方向に8倍延伸し(面積倍率:縦延伸倍率×横延伸倍率=32倍)、次いで幅方向に5%の弛緩を与えつつ、155℃で熱固定をし、均一に徐冷した後、室温まで冷却して巻き取り、厚さ20μmの医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを得た。
次に十分脱気させた純水にポリビニルアルコール(ナカライテスク社製、重合度500、分子量2万)を1000ppmの濃度に調整し、あらかじめメタノールに浸水させておいた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートをその溶液に浸水させ、(株)コーガアイソトープにてコバルト60γ線照射装置(ノーディオンインターナショナル社製)で25kGyのγ線を照射して、親水化処理を行い、本発明の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの実施例9とした。
得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの特性結果を表1に示す。得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、透水性能、分画性能および物理的強度も良好であり、医用分離膜に適した医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートであった。
(実施例10)
実施例1において、長手方向に6倍延伸としたこと以外は同様の条件で作製した医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを実施例10とした。
得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの特性結果を表1に示す。得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、透水性能、分画性能および物理的強度も良好であり、医用分離膜に適した医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートであった。
(実施例11)
実施例6において、金属ドラムの表面温度を100℃としたこと以外は同様の条件で作製した医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを実施例11とした。
得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの特性結果を表1に示す。得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、透水性能、分画性能および物理的強度も良好であり、医用分離膜に適した医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートであった。
(比較例1)
医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを構成するポリプロピレンとして、メルトフローレイト(MFR):7g/10分であるポリプロピレン(住友化学(株)製 WF836DG3)69.8重量%に、平均粒径1.8μである炭酸カルシウム((株)イプロス TK−1)を30重量%、β晶核剤として、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレン ジカルボキサミド(新日本理化(株)製NU−100)を0.2重量%の比率で添加混合したポリプロピレン樹脂を二軸押出機に供給して300℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却してチップカッターで5mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥した。
そのポリプロピレン原料チップを、一軸押出機に供給して220℃で溶融・混練し、200メッシュの単板ろ過フィルターを経た後に200℃に加熱されたTダイ口金内を通して、溶融ポリマーをシート状に押出し、表面温度120℃に加熱された金属ドラムに巻き付け、シートのドラムに接する面とは逆側の面からエアーナイフを用いて120℃に加熱された熱風を吹き付けて密着させながら、シート状に成形した。この時の金属ドラムの速度は2m/分とした。
得られた未延伸シートを100℃に保たれたロール群に通して予熱し、100℃に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に4倍延伸して100℃のロールで冷却した。引き続き、この縦延伸積層シートの両端をクリップで把持しつつテンターに導入して135℃で予熱し、135℃で幅方向に8倍延伸し(面積倍率:縦延伸倍率×横延伸倍率=32倍)、次いで幅方向に5%の弛緩を与えつつ、155℃で熱固定をし、均一に徐冷した後、室温まで冷却して巻き取り、厚さ27μmの医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを得た。
次に医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの両面に界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製)をメタノール(ナカライテスク社製)で濃度3wt%に調整した溶液を、ガラス棒で両面コーティングし、常温乾燥させて親水化処理を行い、本発明の比較例1とした。
得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの特性結果を表1に示す。得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、分画性能が無く、抽出物が有り、血球成分の損傷が見られ、医用分離膜に不適な医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートであった。
(比較例2)
医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを構成するポリマーとして、エチレン−プロピレンブロックコポリマー(Himont社製 Hifax(登録商標) RA−061)75重量%に、β晶核剤キナクリドン含有のホモポリプロピレン(Acomo Chemical Company製)15重量%と低重量分子量ポリプロピレン10重量%を二軸押出機に添加混合し供給して200℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却してチップカッターで5mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥した。
その原料チップを、一軸押出機に供給して220℃で溶融・混練し、200メッシュの単板ろ過フィルターを経た後に200℃に加熱されたTダイ口金内を通して、溶融ポリマーをシート状に押出し、表面温度90℃に加熱された金属ドラムに巻き付け、シートのドラムに接する面とは逆側の面からエアーナイフを用いて90℃に加熱された熱風を吹き付けて密着させながら、シート状に成形した。この時の金属ドラムの速度は2m/分とした。
得られた未延伸シートを90℃のトルエンバスに通し、118℃の熱風で乾燥させ、118℃に保たれたロール群に通して予熱し、118℃に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に4倍延伸して118℃のロールに通した。引き続き、この縦延伸積層シートの両端をクリップで把持しつつテンターに導入して118℃で予熱し、118℃で幅方向に2倍延伸し(面積倍率:縦延伸倍率×横延伸倍率=8倍)、次いで幅方向に5%の弛緩を与えつつ、123℃で熱固定をし、均一に徐冷した後、室温まで冷却して巻き取り、厚さ83μmの医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを得た。
次に医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの両面に界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製)をメタノール(ナカライテスク社製)で濃度3wt%に調整した溶液を、ガラス棒で両面コーティングし、常温乾燥させて親水化処理を行い、本発明の比較例2とした。
得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの特性結果を表1に示す。得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、蒸気滅菌耐性が無く、医用分離膜に不適な医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートであった。
(比較例3)
医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを構成するポリプロピレンとして、エチレン−プロピレンブロックコポリマー(Himont社製 Hifax RA−061)50重量%に、平均粒径2μである炭酸カルシウムポリメタクリルサンメチルを15重量%、β晶核剤キナクリドン含有のホモポリプロピレン(Acomo Chemical Company製)15重量%の比率で添加混合したポリプロピレン樹脂を二軸押出機に供給して300℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却してチップカッターで5mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥した。
そのポリプロピレン原料チップを、一軸押出機に供給して220℃で溶融・混練し、200メッシュの単板ろ過フィルターを経た後に200℃に加熱されたTダイ口金内を通して、溶融ポリマーをシート状に押出し、表面温度120℃に加熱された金属ドラムに巻き付け、シートのドラムに接する面とは逆側の面からエアーナイフを用いて120℃に加熱された熱風を吹き付けて密着させながら、シート状に成形した。この時の金属ドラムの速度は2m/分とした。
得られた未延伸シートを100℃に保たれたロール群に通して予熱し、100℃に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に3倍延伸して100℃のロールで冷却した。引き続き、この縦延伸積層シートの両端をクリップで把持しつつテンターに導入して135℃で予熱し、135℃で幅方向に3倍延伸し(面積倍率:縦延伸倍率×横延伸倍率=9倍)、次いで幅方向に5%の弛緩を与えつつ、135℃で熱固定をし、均一に徐冷した後、室温まで冷却して巻き取り、厚さ31μmの医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを得た。
次に医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの両面に界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製)をメタノール(ナカライテスク社製)で濃度3wt%に調整した溶液を、ガラス棒で両面コーティングし、常温乾燥させて親水化処理を行い、本発明の比較例3とした。
得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの特性結果を表1に示す。得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、分画性能も蒸気滅菌耐性も無く、抽出物や血球成分損傷も有り、医用分離膜に不適な医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートであった。
(比較例4)
医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを構成するポリプロピレンとして、メルトフローレイト(MFR):7g/10分であるポリプロピレン(住友化学(株)製 WF836DG3)99.9重量%に、β晶核剤として、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレン ジカルボキサミド(新日本理化(株)製NU−100)を0.1重量%の比率で添加混合したポリプロピレン樹脂を二軸押出機に供給して300℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却してチップカッターで5mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥した。
そのポリプロピレン原料チップを、一軸押出機に供給して220℃で溶融・混練し、200メッシュの単板ろ過フィルターを経た後に200℃に加熱されたTダイ口金内を通して、溶融ポリマーをシート状に押出し、表面温度110℃に加熱された金属ドラムに巻き付け、シートのドラムに接する面とは逆側の面からエアーナイフを用いて110℃に加熱された熱風を吹き付けて密着させながら、シート状に成形した。この時の金属ドラムの速度は2m/分とした。
得られた未延伸シートを125℃に保たれたロール群に通して予熱し、125℃に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に3倍延伸した。引き続き、この縦延伸積層シートの両端をクリップで把持しつつテンターに導入して125℃で予熱し、125℃で幅方向に3倍延伸し(面積倍率:縦延伸倍率×横延伸倍率=9倍)、均一に徐冷した後、室温まで冷却して巻き取り、厚さ35μmの医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを得た。
次に医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの両面に界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製)をメタノール(ナカライテスク社製)で濃度3wt%に調整した溶液を、ガラス棒で両面コーティングし、常温乾燥させて親水化処理を行い、本発明の比較例4とした。
得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの特性結果を表1に示す。得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、透水性能が劣っており、蒸気滅菌耐性も無く、医用分離膜に不適な医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートであった。
(比較例5)
医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを構成するポリプロピレンとして、メルトフローレイト(MFR):7g/10分であるポリプロピレン(住友化学(株)製 WF836DG3)99.96重量%に、β晶核剤として、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレン ジカルボキサミド(新日本理化(株)製NU−100)を0.04重量%の比率で添加混合したポリプロピレン樹脂を二軸押出機に供給して300℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却してチップカッターで5mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥した。
そのポリプロピレン原料チップを、一軸押出機に供給して220℃で溶融・混練し、200メッシュの単板ろ過フィルターを経た後に200℃に加熱されたTダイ口金内を通して、溶融ポリマーをシート状に押出し、表面温度120℃に加熱された金属ドラムに巻き付け、シートのドラムに接する面とは逆側の面からエアーナイフを用いて120℃に加熱された熱風を吹き付けて密着させながら、シート状に成形した。この時の金属ドラムの速度は2m/分とした。
得られた未延伸シートを105℃に保たれたロール群に通して予熱し、105℃に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に5倍延伸した。引き続き、この縦延伸積層シートの両端をクリップで把持しつつテンターに導入して155℃で予熱し、155℃で幅方向に8倍延伸し(面積倍率:縦延伸倍率×横延伸倍率=40倍)、均一に徐冷した後、室温まで冷却して巻き取り、厚さ25μmの医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを得た。
次に医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの両面に界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製)をメタノール(ナカライテスク社製)で濃度3wt%に調整した溶液を、ガラス棒で両面コーティングし、常温乾燥させて親水化処理を行い、本発明の比較例5とした。
得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの特性結果を表1に示す。得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、蒸気滅菌耐性が無く、医用分離膜に適した医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートであった。
(比較例6)
医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを構成するポリプロピレンとして、メルトフローレイト(MFR):2.5g/10分、密度:0.900g/cm、融点163℃であるポリプロピレン((株)トクヤマ製)59.95重量%に、メルトフローレイト(MFR):0.4g/10分、密度:0.963g/cm、融点131℃であるポリエチレン(三菱化学製 三菱ポリエチBT002)40重量%、β晶核剤として、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレン ジカルボキサミド(新日本理化(株)製NU−100)を0.05重量%、2,6―ジターシャリーブチルー4−メチルフェノール(樹脂成分100重量部に対して0.1重量部)、ステアリン酸カルシウム(樹脂成分に対して0.1重量部)の比率で添加混合したポリプロピレン樹脂を二軸押出機に供給して300℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却してチップカッターで5mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥した。
そのポリプロピレン原料チップを、一軸押出機に供給して220℃で溶融・混練し、200メッシュの単板ろ過フィルターを経た後に200℃に加熱されたTダイ口金内を通して、溶融ポリマーをシート状に押出し、表面温度110℃に加熱された金属ドラムに巻き付け、シートのドラムに接する面とは逆側の面からエアーナイフを用いて110℃に加熱された熱風を吹き付けて密着させながら、シート状に成形した。この時の金属ドラムの速度は2m/分とした。
得られた未延伸シートを80℃に保たれたロール群に通して予熱し、80℃に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に2倍延伸した。引き続き、この縦延伸積層シートの両端をクリップで把持しつつテンターに導入して80℃で予熱し、80℃で幅方向に2倍延伸し(面積倍率:縦延伸倍率×横延伸倍率=4倍)、均一に徐冷した後、室温まで冷却して巻き取り、厚さ35μmの医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを得た。
次に医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの両面に界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製)をメタノール(ナカライテスク社製)で濃度3wt%に調整した溶液を、ガラス棒で両面コーティングし、常温乾燥させて親水化処理を行い、本発明の比較例6とした。
得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートの特性結果を表1に示す。得られた医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートは、分画性能も蒸気滅菌耐性も無く、抽出物や血球成分損傷が有り医用分離膜に不適な医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートであった。
(参考例1)
医用分離膜として膜厚150μmのセルロース混合エステルシート(ミリポア社製、品名:MF−ミリポア DAWP)を本発明の参考例1とした。
参考例1の医用分離膜の特性結果を表1に示す。参考例1の医用分離膜は、抽出物や血球成分損傷が有り、医用分離膜に不適な医用分離膜であった。
Figure 2007061673

Claims (6)

  1. 透水量が1×10−11/(sec・m・Pa)以上であり、実質的に無核の孔を有し、β晶活性を有し、かつ120℃で15分間保持した時の長手方向と幅方向の熱収縮率の和が0〜20%であることを特徴とする医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシート。
  2. 空孔率が55〜80%である請求項1に記載の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシート。
  3. 長手方向と幅方向の2%伸張時の応力(F2値)の和が10〜50MPaである請求項1または2に記載の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシート。
  4. 長手方向と幅方向の破断点伸度の和が50〜200%である請求項1〜3のいずれかに記載の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシート。
  5. 親水化処理が施されている請求項1〜4のいずれかに記載の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシート。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の医用分離膜用微孔性ポリプロピレンシートを用いた医用分離膜。
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