JP2007059760A - 素子の接合方法 - Google Patents

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紘平 酒井
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Abstract

【課題】 目的の組成比率を有する合金層が得られ、この合金層を介して素子を基材や他の素子に精度良く接合でき、十分な接合強度が得られる、素子の接合方法を提供する。
【解決手段】 第1の素子1a,21と、第2の素子31或いは基材3との間に、第1の金属からなる第1金属層4a,32と、この第1金属層と相互に固相拡散する第2の金属からなる第2金属層5a,22,33aとを形成し、第1の素子を第2の素子或いは基材に接触させて所定の温度で加熱することにより、この第1及び第2金属層を相互に固相拡散させて合金層7a,37aにして溶融させ、その後冷却することにより、第1素子を第2素子或いは基材に合金層7a,37aを介して接合する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、半導体レーザ素子等の素子の接合方法に関する。
従来、その動作時に発熱を伴う素子を、基材や他の素子に接合する場合、この素子が発生した熱を基材や他の素子に効率的に放熱するために、一般的に、合金層を介して接合することが行われている。接合材である合金は、他の接合材である導電ペースト(導電粒子を樹脂中に分散させたもの)に比べて、熱伝導率が高いため、放熱性に優れている。
このような接合方法は、例えば、半導体レーザ装置や光ピックアップ装置において、半導体レーザ素子を基材や他の素子に接合する場合に用いられている。
そして、このような接合方法が、特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されている接合方法は、Ag−Sn(銀−錫)合金からなる半田箔を用いて、半導体レーザ素子を放熱体に接合する方法である。そして、この接合方法により、それ以前に発生していた半田溜まりによる素子の電気的短絡やレーザ光の遮光といった問題が解決するとされている。
特開平5−41563号公報
しかしながら、特許文献1に記載されている接合方法は、半田箔を素子の外形サイズと同等のサイズに切断するものであるが、量産においてこれを精度良く切断することは困難である。さらに、この切断された半田箔片を所定の位置に精度良く搭載することは困難である。そして、素子と半田箔片との位置がずれた状態で素子を放熱体に接合すると、素子と放熱体との接合強度が不十分になったり、動作時に素子が発生した熱を放熱体に効率よく放熱できないという問題が生じる。
また、このように合金からなる半田箔は、一般的に、蒸着法やスパッタリング法により形成されるが、形成された半田箔の合金の組成比率は、目的の比率と異なる場合があり、成膜条件に対して厳しい管理が必要になる。
また、酸化されやすいSnを含む半田箔の表面及びその表面近傍部は、大気中の酸素と反応して酸化するため、素子を接合する際、この酸化された領域が接合強度を低下させる可能性がある。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、目的の組成比率を有する合金層が得られ、この合金層を介して素子を基材や他の素子に精度良く接合でき、高い接合強度が得られる、素子の接合方法を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本願各発明は次の手段を有する。
1)合金層(7a)を介して半導体素子(1a)を基材(3)に接合するために前工程と後工程とを有する素子の接合方法であって、前記前工程は、前記半導体素子(1a)の接合面となる面上又は前記基材(3)の接合面となる面上に、第1の金属からなる第1金属層(4a)と、加熱した際に前記第1金属層(4a)と相互に固相拡散する第2の金属からなる第2金属層(5a)とを積層形成する金属層形成工程を備えており、前記後工程は、前記半導体素子(1a)の接合面となる面上又は前記基材(3)の接合面となる面上に積層形成した前記第1金属層(4a)と前記第2金属層(5a)とを所定の温度で加熱して、前記第1金属層(4a)と前記第2金属層(5a)とを相互に固相拡散し前記第1の金属と前記第2の金属との合金からなる前記合金層(7a)にして溶融させる合金層溶融工程と、前記合金層溶融工程により溶融した前記合金層(7a)を冷却固化して、前記合金層(7a)を介して前記半導体素子(1a)を前記基材(3)に接合する接合工程とを備えており、前記所定の温度を前記合金の融点以上の温度とすることを特徴とする素子の接合方法である。
2)合金層(7a)を介して半導体素子(1a)を基材(3)に接合するために前工程と後工程とを有する素子の接合方法であって、前記前工程は、前記半導体素子(1a)の接合面となる面上又は前記基材(3)の接合面となる面上に、第1の金属からなる第1金属層(4a)を積層形成する第1金属層形成工程と、前記基材(3)の接合面となる面上又は前記半導体素子(1a)の接合面となる面上に、加熱した際に前記第1金属層(4a)と相互に固相拡散する第2の金属からなる第2金属層(5a)を積層形成する第2金属層形成工程とを備えており、前記後工程は、前記半導体素子(1a)の接合面となる面上又は前記基材(3)の接合面となる面上に積層形成した前記第1金属層(4a)と前記第2金属層(5a)とを所定の温度で加熱して、前記第1金属層(4a)と前記第2金属層(5a)とを相互に固相拡散し前記第1の金属と前記第2の金属との合金からなる前記合金層(7a)にして溶融させる合金層溶融工程と、前記合金層溶融工程により溶融した前記合金層(7a)を冷却固化して、前記合金層(7a)を介して前記半導体素子(1a)を前記基材(3)に接合する接合工程とを備えており、前記所定の温度を前記合金の融点以上の温度とすることを特徴とする素子の接合方法である。
3)合金層(7d)を介して半導体素子(1d)を基材(13)に接合するために前工程と後工程とを有する素子の接合方法であって、前記前工程は、前記半導体素子(1d)の接合面となる面上及び前記基材(13)の接合面となる面上にそれぞれ、第1の金属からなる第1金属層と、加熱した際に前記第1金属層と相互に固相拡散する第2の金属からなる第2金属層とを積層形成する金属層形成工程を備えており、前記後工程は、前記半導体素子(1d)の接合面となる面上及び前記基材(13)の接合面となる面上にそれぞれ積層形成した前記第1金属層と前記第2金属層とを所定の温度で加熱して、前記第1金属層と前記第2金属層とを相互に固相拡散し前記第1の金属と前記第2の金属との合金からなる前記合金層(7d)にして溶融させる合金層溶融工程と、前記合金層溶融工程により溶融した前記合金層(7d)を冷却固化して、前記合金層(7d)を介して前記半導体素子(1d)を前記基材(13)に接合する接合工程とを備えており、前記所定の温度を前記合金の融点以上の温度とすることを特徴とする素子の接合方法である。
4)合金層(7d)を介して半導体素子(1d)を基材(13)に接合するために前工程と後工程とを有する素子の接合方法であって、前記前工程は、前記基材(13)の接合面となる面上に、第1の金属からなる第1金属層(14)と、加熱した際に前記第1金属層(14)と相互に固相拡散する第2の金属からなる第2金属層(15)とを積層形成する第1金属層形成工程と、前記半導体素子(1d)の接合面となる面上に、前記第2金属層(12)を積層形成する第2金属層形成工程とを備えており、前記後工程は、前記基材(13)の接合面となる面上に積層形成した前記第1金属層(14)と前記第2金属層(15)と、前記半導体素子の接合面となる面上に積層形成した前記第2金属層(12)とを所定の温度で加熱して、前記第1金属層(14)と前記第2金属層(12,15)とを相互に固相拡散し前記第1の金属と前記第2の金属との合金からなる前記合金層(7d)にして溶融させる合金層溶融工程と、前記合金層溶融工程により溶融した前記合金層(7d)を冷却固化して、前記合金層(7d)を介して前記半導体素子(1d)を前記基材(13)に接合する接合工程とを備えており、前記所定の温度を前記合金の融点以上の温度とすることを特徴とする素子の接合方法である。
5)前記第1金属層(4a,12+14)及び前記第2金属層(5a,14)の各厚さをt1及びt2、前記合金層(7a,7d)における前記第1の金属の組成重量比率及び比重をx1及びy1、前記合金層(7a,7d)における前記第2の金属の組成重量比率及び比重をx2及びy2とするとき、x1/x2=(t1×y1)/(t2×y2)の関係を満たすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の素子の接合方法である。
6)前記第1金属層(4a,12+14)の厚さt1及び前記第2金属層(5a,14)の厚さt2の合計厚さt1+t2を、1〜4μmの範囲内とすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の素子の接合方法である。
7)前記第1の金属はAu(金)またはAg(銀)であり、前記第2の金属はSn(錫)であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の素子の接合方法である。
本発明によれば、素子の接合方法において、目的の組成比率を有する合金層が得られ、この合金層を介して素子を基材や他の素子に精度良く接合でき、高い接合強度が得られるという効果を奏する。
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により図1〜図6を用いて説明する。
一般的に、素子を基材等に接合するための合金層の材料として、共晶組成を有する合金である、Au80重量%−Sn20重量%合金、Au10重量%−Sn90重量%合金、及びAg3.5重量%−Sn96.5重量%合金が用いられる。
以下に、これらの合金を用いた第1実施例〜第4実施例について、それぞれ順を追って説明する。
ここで、各実施例の各工程をわかりやすく区別するために、各工程名に、第1実施例ではAを、第2実施例ではBを、第3実施例ではCを、第4実施例ではDを付している。
また、第1実施例〜第3実施例における実施の形態がほぼ同じであるので、図1〜図3を兼用して、説明する。
<第1実施例>
まず、第1実施例として、Au80重量%−Sn20重量%合金からなる合金層7aを介して、素子1aを基材3に接合する方法を、A1工程〜A3工程として、図1〜図3を用いて説明する。
図1は、本発明の素子の接合方法の第1実施例におけるA1工程を説明するための模式図であり、(a)は上面図、(B)は断面図である。
図2及び図3は、本発明の素子の接合方法の第1実施例におけるA2工程及びA3工程を説明するための模式的断面図である。
(A1工程)[図1参照]
素子1aがマトリクス状に複数形成されたウエハ2aを準備する。第1実施例では、素子1aの外形サイズは、約0.25mm角である。また、ウエハ2aは、直径が約8inch(約203.2mm)、厚さが約0.3mmの円板である。
このウエハ2aにおいて、後述する基材3と接合する面に、真空成膜法により、Sn(錫)層4a及びAu(金)層5aを順次積層する。
ここで、真空成膜法とは、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法等を示す。
詳しくは、ウエハ2aにおける後述する基材3と接合する面に、真空成膜法により、その厚さが約400nmになるようにSn層4aを成膜し、さらにこのSn層4aの表面に、その厚さが約600nmになるようにAu層5aを成膜する。このSn層4a及びAu層5aは、真空成膜装置内における真空雰囲気中で連続して成膜される。
即ち、Sn層4a及びAu層5aが成膜されたウエハ2aを真空成膜装置から取り出す際、ウエハ2aは大気に晒されるが、この大気中の酸素によって酸化されやすいSn層4aは酸化されにくいAu層5aにより覆われているため、このAu層5aは酸化防止膜として機能して、Sn層4aが酸化されることを防止する。
このSn層4a及びAu層5aは、ウエハ状態の複数の素子1aに同時に形成されるので、生産性が良好である。
(A2工程)[図2参照]
上述のSn層4a及びAu層5aが形成されたウエハ2aを、劈開,切断により分断して、複数の素子1aを得る。
(A3工程)[図3参照]
上述の素子1aを、Sn層4a及びAu層5aを介して、基材3に接触させる。
そして、Sn層4a及びAu層5aを所定の温度で加熱することにより、このSn層4aとAu層5aとを相互に固相拡散させて、SnとAuとの合金からなる合金層7aにし、この合金層7aを溶融させる。
第1実施例では、この加熱温度を290℃に設定した。その理由については、後で詳述する。
その後、加熱を止めることで合金層7aの温度が下がって合金層7aが固化することにより、素子1aは合金層7aを介して基材3に接合される。
また、この合金層7aの厚さは約1μmである。
ここで、Sn層4a及びAu層5aの各厚さと合金層7aの合金組成との関係について、説明する。
第1実施例では、上述したように、Sn層4aの厚さt1aを約400nmに、Au層5aの厚さt2aを約600nmに設定した。即ち、Sn層4aの厚さt1aとAu層5aの厚さt2aとの厚さ比率t1a/t2aを、40/60に設定した。
また、周知のように、Snの密度d1は約7.3g/cmであり、Auの密度d2は約19.3g/cmである。
従って、同一面積S(cm)におけるSn層4aの重さw1a、及びAu層5aの重さw2aは、w1a=d1×S×t1a≒2.9E−4(g:グラム)、及びw2a=d2×S×t2a≒11.6E−4(g:グラム)となる。
よって、Sn層4aの重さw1aとAu層5aの重さw2aとの重量比率w1a/w2aは、約20/80となる。
そこで、合金層7aの組成をXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy:X線光電子分光法)により定量分析した結果、Au80重量%−Sn20重量%の合金であることを確認した。また、この合金層7aは、均一な組成になっていることを確認した。
次に、接合における加熱条件について、説明する。
合金層7aとなる層は、融点が約232℃のSnからなるSn層4aと、融点が約1063℃のAuからなるAu層5aとにより構成されている。各融点は周知である。このため、素子1aを基材3に接合させるためには、Sn層4a及びAu層5aが共に溶融する温度、即ち、1063℃以上の温度が必要と推測される。
しかし、実際には、Sn層4a及びAu層5aは、相互に固相拡散して合金化するので、これらの層4a,5aが合金化した後の合金層7aはその合金の融点で溶融する。
そこで、発明者らが鋭意実験した結果、Sn層4a及びAu層5aが相互に固相拡散する温度は、213℃以上であることが見出された。
また、上述したように、第1実施例の合金層7aはAu80重量%−Sn20重量%の合金からなり、この合金の融点は周知のように約281℃なので、第1実施例では、加熱温度をこの融点よりも高い温度である290℃に設定した。
即ち、第1実施例は、この温度(290℃)により、まず、Sn層4a及びAu層5aが相互に固相拡散して合金層7aになると共に溶融し、その後、加熱を止めてこの合金層7aを冷却することにより、この合金層7aを介して素子1aを基材3に接合させるものである。
また、Sn層4a及びAu層5aを、固相拡散する温度以上の温度であり合金層7aの融点未満の温度、例えば220℃に加熱して合金層7aを形成し、この合金層7aの組成をXPSにより定量分析した結果、Au80重量%−Sn20重量%の合金であることを確認した。また、この合金層7aは、均一な組成になっていることを確認した。
従って、上述した結果から、Sn層4aの厚さt1aとAu層5aの厚さt2aとの厚さ比率t1a/t2aを40/60に設定し、Sn層4a及びAu層5aを相互に固相拡散する温度以上に加熱することによって
、Au80重量%−Sn20重量%の合金からなる合金層7aが得られることを確認した。
そして、発明者らが鋭意実験した結果、この厚さ比率t1a/t2aが大きいほど、これに比例して、合金層7aのSnの重量比率も大きいことを確認した。
<第2実施例>
次に、第2実施例として、Au10重量%−Sn90重量%合金からなる合金層7bを介して、素子1bを基材3に接合する方法を、B1工程〜B3工程として、図1〜図3を用いて説明する。
図1は、本発明の素子の接合方法の第2実施例におけるB1工程を説明するための模式図であり、(a)は上面図であり、(b)は断面図である。
図2及び図3は、本発明の素子の接合方法の第2実施例におけるB2工程及びB3工程を説明するための模式的断面図である。
(B1工程)[図1参照]
素子1bがマトリクス状に複数形成されたウエハ2bを準備する。素子1b及びウエハ2bの外形サイズは、第1実施例と同様である。
このウエハ2bにおいて、後述する基材3と接合する面に、真空成膜法により、Sn(錫)層4b及びAu(金)層5bを順次積層する。
詳しくは、ウエハ2bにおける後述する基材3と接合する面に、真空成膜法により、その厚さが約960nmになるようにSn層4bを成膜し、さらにこのSn層4bの表面に、その厚さが約40nmになるようにAu層5bを成膜する。このSn層4b及びAu層5bは、真空成膜装置内における真空雰囲気中で連続して成膜される。
即ち、Sn層4b及びAu層5bが成膜されたウエハ2bを真空成膜装置から取り出す際、ウエハ2bは大気に晒されるが、この大気中の酸素によって酸化されやすいSn層4bは酸化されにくいAu層5bにより覆われているため、このAu層5bは酸化防止膜として機能して、Sn層4bが酸化されることを防止する。
このSn層4b及びAu層5bは、ウエハ状態の複数の素子1bに同時に形成されるので、生産性が良好である。
(B2工程)[図2参照]
上述のSn層4b及びAu層5bが形成されたウエハ2bを、劈開,切断により分断して、複数の素子1bを得る。
(B3工程)[図3参照]
上述の素子1bを、Sn層4b及びAu層5bを介して、基材3に接触させる。
そして、Sn層4b及びAu層5bを所定の温度で加熱することにより、このSn層4bとAu層5bとを相互に固相拡散させて、SnとAuとの合金からなる合金層7bにし、この合金層7bを溶融させる。
第2実施例では、この加熱温度を225℃に設定した。その理由については、後で詳述する。
その後、加熱を止めることで合金層7bの温度が下がって合金層7bが固化することにより、素子1bは合金層7bを介して基材3に接合される。
また、この合金層7bの厚さは約1μmである。
ここで、Sn層4b及びAu層5bの各厚さと合金層7bの合金組成との関係について、説明する。
第2実施例では、上述したように、Sn層4bの厚さt1bを約960nmに、Au層5bの厚さt2bを約40nmに設定した。即ち、Sn層4bの厚さt1bとAu層5bの厚さt2bとの厚さ比率t1b/t2bを、96/4に設定した。
また、周知のように、Snの密度d1は約7.3g/cmであり、Auの密度d2は約19.3g/cmである。
従って、同一面積S(cm)におけるSn層4bの重さw1b、及びAu層5bの重さw2bは、w1b=d1×S×t1b≒7.0E−4(g:グラム)、及びw2b=d2×S×t2b≒0.77E−4(g:グラム)となる。
よって、Sn層4bの重さw1bとAu層5bの重さw2bとの比率w1b/w2bは、約90/10となる。
そこで、合金層7bの組成をXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy:X線光電子分光法)により定量分析した結果、Au10重量%−Sn90重量%の合金であることを確認した。また、この合金層7bは、均一な組成になっていることを確認した。
次に、接合における加熱条件について、説明する。
合金層7bとなる層は、融点が約232℃のSnからなるSn層4bと、融点が約1063℃のAuからなるAu層5bとにより構成されている。各融点は周知である。このため、素子1bを基材3に接合させるためには、Sn層4b及びAu層5bが共に溶融する温度、即ち、1063℃以上の温度が必要と推測される。
しかし、実際には、Sn層4b及びAu層5bは、相互に固相拡散して合金化するので、その合金の融点で溶融する。
そこで、発明者らが鋭意実験した結果、Sn層4b及びAu層5bが相互に固相拡散する温度は、213℃以上であることが見出された。
また、上述したように、第2実施例の合金層7bはAu10重量%−Sn90重量%の合金からなり、この合金の融点は周知のように約217℃なので、第2実施例では、加熱温度をこの融点よりも高い温度である225℃に設定した。
即ち、第2実施例は、この温度(225℃)により、まず、Sn層4b及びAu層5bが相互に固相拡散して合金層7bになると共に溶融し、その後、加熱を止めてこの合金層7bを冷却することにより、この合金層7bを介して素子1bを基材3に接合させるものである。
また、Sn層4b及びAu層5bを、固相拡散する温度以上の温度であり合金層7bの融点未満の温度、例えば215℃に加熱して合金層7bを形成し、この合金層7bの組成をXPSにより定量分析した結果、Au10重量%−Sn90重量%の合金であることを確認した。また、この合金層7bは、均一な組成になっていることを確認した。
従って、上述した結果から、Sn層4bの厚さt1bとAu層5bの厚さt2bとの厚さ比率t1b/t2bを、96/4に設定し、Sn層4b及びAu層5bを相互に固相拡散する温度以上に加熱することによって、Au10重量%−Sn90重量%の合金からなる合金層7bが得られることを確認した。
そして、発明者らが鋭意実験した結果、この厚さ比率t1b/t2bが大きいほど、これに比例して、合金層7bのSnの重量比率も大きいことを確認した。
次に、第3実施例として、Ag3.5重量%−Sn96.5重量%合金からなる合金層7cを介して、素子1cを基材3に接合する方法を、C1工程〜C3工程として、図1〜図3を用いて説明する。
図1は、本発明の素子の接合方法の第3実施例におけるC1工程を説明するための模式図であり、(a)は上面図であり、(b)は断面図である。
図2及び図3は、本発明の素子の接合方法の第3実施例におけるC2工程及びC3工程を説明するための模式的断面図である。
(C1工程)[図1参照]
素子1cがマトリクス状に複数形成されたウエハ2cを準備する。素子1c及びウエハ2cの外形サイズは、第1実施例と同様である。
このウエハ2cにおいて、後述する基材3と接合する面に、真空成膜法により、Sn(錫)層4c及びAg(銀)層9を順次積層する。
詳しくは、ウエハ2cにおける後述する基材3と接合する面に、真空成膜法により、その厚さが約975nmになるようにSn層4cを成膜し、さらにこのSn層4cの表面に、その厚さが約25nmになるようにAg層9を成膜する。このSn層4c及びAg層9は、真空成膜装置内における真空雰囲気中で連続して成膜される。
このSn層4c及びAg層9は、ウエハ状態の複数の素子1cに同時に形成されるので、生産性が良好である。
(C2工程)[図2参照]
上述のSn層4c及びAg層9が形成されたウエハ2cを、劈開,切断により分断して、複数の素子1cを得る。
(C3工程)[図3参照]
上述の素子1cを、Sn層4c及びAg層9を介して、基材3に接触させる。
そして、Sn層4c及びAg層9を所定の温度で加熱することにより、このSn層4cとAg層9とを相互に固相拡散させて、SnとAgとの合金からなる合金層7cにし、この合金層7cを溶融させる。
第3実施例では、この加熱温度を225℃に設定した。その理由については、後で詳述する。
その後、加熱を止めることで合金層7cの温度が下がって合金層7cが固化することにより、素子1cは合金層7cを介して基材3に接合される。
また、この合金層7cの厚さは約1μmである。
ここで、Sn層4c及びAg層9の各厚さと合金層7cの合金組成との関係について、説明する。
第3実施例では、上述したように、Sn層4cの厚さt1cを約975nmに、Ag層9の厚さt3を約25nmに設定した。即ち、Sn層4cの厚さt1cとAg層9の厚さt3との厚さ比率t1c/t3を、975/25に設定した。
また、周知のように、Snの密度d1は約7.3g/cmであり、Agの密度d3は約10.5g/cmである。
従って、同一面積S(cm)におけるSn層4cの重さw1c、及びAg層9の重さw3は、w1c=d1×S×t1c≒7.1E−4(g:グラム)、w3=d3×S×t3≒0.26E−4(g:グラム)となる。
よって、Sn層4cの重さw1cとAg層9の重さw3との比率w1c/w3は、約96.5/3.5となる。
そこで、合金層7cの組成をXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy:X線光電子分光法)により定量分析した結果、Ag3.5重量%−Sn96.5重量%の合金であることを確認した。また、この合金層7cは、均一な組成になっていることを確認した。
次に、接合における加熱条件について、説明する。
合金層7cとなる層は、融点が約232℃のSnからなるSn層4cと、融点が約961℃のAgからなるAg層9とにより構成されている。各融点は周知である。このため、素子1cを基材3に接合させるためには、Sn層4c及びAg層9が共に溶融する温度、即ち、961℃以上の温度が必要と推測される。
しかし、実際には、Sn層4c及びAg層9は、相互に固相拡散して合金化するので、その合金の融点で溶融する。
そこで、発明者らが鋭意実験した結果、Sn層4c及びAg層9が相互に固相拡散する温度は、218℃以上であることが見出された。
また、上述したように、第3実施例の合金層7cはAg3.5重量%−Sn96.5重量%の合金からなり、この合金の融点は周知のように約221℃なので、第3実施例では、加熱温度をこの融点よりも高い温度である225℃に設定した。
即ち、第3実施例は、この温度(225℃)により、まず、Sn層4c及びAg層9が相互に固相拡散して合金層7cとなると共に溶融し、その後、加熱を止めてこの合金層7cを冷却することにより、この合金層7cを介して素子1cを基材3に接合させるものである。
また、Sn層4c及びAg層9を、固相拡散する温度以上の温度であり合金層7bの融点未満の温度、例えば219℃に加熱して合金層7cを形成し、この合金層7cの組成をXPSにより定量分析した結果、Ag3.5重量%−Sn96.5重量%の合金であることを確認した。また、この合金層7cは、均一な組成になっていることを確認した。
従って、上述した結果から、Sn層4cの厚さt1cとAg層9の厚さt3との厚さ比率t1c/t3を、97.5/2.5に設定し、Sn層4c及びAg層9を相互に固相拡散する温度以上に加熱することによって、Ag3.5重量%−Sn96.5重量%の合金からなる合金層7cが得られることを確認した。
そして、発明者らが鋭意実験した結果、この厚さ比率t1c/t3が大きいほど、これに比例して、合金層7cのSnの重量比率も大きいことを確認した。
<第4実施例>
次に、第4実施例として、Au80重量%−Sn20重量%合金からなる合金層7dを介して、素子1dを基材13に接合する方法をD1工程〜D3工程として、図4〜図6を用いて説明する。第4実施例では、合金層7dが、素子1dに形成された第1の接合層16と、基材13に形成された第2の接合層17とからなることを特徴としている。
第1実施例〜第3実施例では、説明をわかりやすくするために、素子側のみにSn層及びAu層を形成し、基材側には金属層を形成しなかった。
しかしながら、実際は、基材の表面には、接合された素子に電源を供給するための配線パターン及び接続パッドが形成されている。即ち、この接続パッドとは、第2の接合層17を示す。
従って、この第4実施例は、第1実施例〜第3実施例よりもより現実的な実施例である。
図4〜図6は、本発明の素子の接合方法の第4実施例におけるD1工程〜D3工程をそれぞれ説明するための模式図である。
(D1工程)[図4参照]
その厚さが約300nmであるAu(金)層12からなる第1の接合層16が形成された素子1dを準備する。このAu層12は、素子1dがマトリクス状に複数形成されたウエハに、真空成膜法を用いて形成される。第4実施例では、素子1dの外形サイズは、約0.25mm角である。
(D2工程)[図5参照]
基材13における素子1dと接合する面に、真空成膜法により、その厚さが約400nmになるようにSn層14を成膜し、さらにこのSn層14の表面に、その厚さが約300nmになるようにAu層15を成膜する。
このAu層15は酸化防止膜として機能して、Sn層14が酸化されること防止する。
その後、素子1dの外形とほぼ同じ外形となるように、フォトリソ法を用いてSn層14及びAu層15からなる第2の接合層17を形成する。
(D3工程)[図6参照]
素子1dを、第1の接合層16の外形と第2の接合層17の外形とが略一致するように、第1の接合層16及び第2の接合層17を介して、基材13に接触させる。そして、第1の接合層16及び第2の接合層17を所定の温度で加熱することにより、この第1の接合層16と第2の接合層17とを相互に固相拡散させて、SnとAuとの合金からなる合金層7dにし、この合金層7dを溶融させる。
第4実施例では、この加熱温度を290℃に設定した。その理由については、後で詳述する。
その後、加熱を止めることで合金層7dの温度が下がって合金層7dが固化することにより、素子1dは合金層7dを介して基材13に接合される。
また、この合金層7dの厚さは約1μmである。
ここで、第1の接合層16であるAu層12、及び第2の接合層17であるSn層14及びAu層15の各厚さと合金層7dの合金組成との関係について、説明する。
第4実施例では、上述したように、Au層12の厚さt4aを約300nmに、Sn層14の厚さt1dを約400nmに、Au層15の厚さt4bを約300nmに設定した。即ち、Au層12,15の合計の厚さ(t4a+t4b)とSn層14の厚さt1dとの厚さ比率(t4a+t4b)/t1dを、60/40に設定した。
また、周知のように、Auの密度d2は約19.3g/cmであり、Snの密度d1は約7.3g/cmである。
従って、同一面積S(cm)におけるAu層12,15の合計の重さw2d、及びSn層14の重さw1dは、w2d=d2×S×(t4a+t4b)≒11.6E−4(g:グラム)、及びw1d=d1×S×t1d≒2.9E−4(g:グラム)となる。
よって、Au層12,15の合計の重さw2dとSn層14の重さw1dとの比率w2d/w1dは、約80/20となる。
そこで、合金層7dの組成をXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy:X線光電子分光法)により定量分析した結果、Au80重量%−Sn20重量%の合金であることを確認した。また、この合金層7dは、均一な組成になっていることを確認した。
次に、接合における加熱条件について、説明する。
合金層7dとなる層は、融点が約1063℃のAuからなるAu層12,15と、融点が約232℃のSnからなるSn層14とにより構成されている。各融点は周知である。このため、素子1dを基材13に接合させるためには、Au層12,15及びSn層14が共に溶融する温度、即ち、1063℃以上の温度が必要と推測される。
しかし、実際には、Au層12,15及びSn層14は、相互に固相拡散して合金化するので、その合金の融点で溶融する。
そこで、発明者らが鋭意実験した結果、Au層12,15及びSn層14が相互に固相拡散する温度は、213℃以上であることが見出された。
また、上述したように、第4実施例の合金層7dはAu80重量%−Sn20重量%の合金からなり、この合金の融点は周知のように約281℃なので、第4実施例では、加熱温度をこの融点よりも高い温度である290℃に設定した。
即ち、第4実施例は、この温度(290℃)により、まず、Au層12,15及びSn層14が相互に固相拡散して合金層7dになると共に溶融し、その後、加熱を止めてこの合金層7dを冷却することにより、この合金層7dを介して素子1dを基材13に接合させるものである。
また、Au層12,15及びSn層14を固相拡散する温度以上の温度であり合金層7dの融点未満の温度、例えば220℃に加熱して合金層7dを形成し、この合金層7aの組成をXPSにより定量分析した結果、Au80重量%−Sn20重量%の合金であることを確認した。また、この合金層7aは、均一な組成になっていることを確認した。
従って、上述した結果から、Au層12,15の合計の厚さ(t4a+t4b)とSn層14の厚さt1dとの厚さ比率(t4a+t4b)/t1dを、60/40に設定し、Au層12,15及びSn層14を相互に固相拡散する温度以上に加熱することによって、Au80重量%−Sn20重量%の合金からなる合金層7dが得られることを確認した。
そして、発明者らが鋭意実験した結果、この厚さ比率(t4a+t4b)/t1dが大きいほど、これに比例して、合金層7dのAuの重量比率も大きいことを確認した。
<変形例>
次に、変形例として、素子21を素子31に接合し、さらにこの素子31を基材43に接合する方法を、E1工程〜E5工程として、図7〜図11を用いて説明する。
図7〜図11は、変形例におけるE1工程〜E5工程をそれぞれ説明するための模式的断面図である。
(E1工程)[図7参照]
その厚さが約300nmであるAu(金)層22からなる第1の接合層23が形成された素子21を準備する。このAu層22は、素子21がマトリクス状に複数形成されたウエハに、真空成膜法を用いて形成される。変形例では、素子21の外形サイズは、約0.25mm角である。
(E2工程)[図8参照]
一面に厚さが約400nmのSn(錫)層32と厚さが約300nmのAu(金)層33aとからなる第2の接合層34aが形成され、この一面に対して反対側の面に、厚さが約20nmのAu層33bからなる第3の接合層34bが形成された素子31を準備する。
このSn(錫)層32、及びAu層33a,33bは、素子31がマトリクス状に複数形成されたウエハに、真空成膜法を用いて順次形成される。
変形例では、素子31の外形サイズは、約0.25mm角である。
(E3工程)[図9参照]
上述の第1の接合層23が形成された素子21を、第1の接合層23及び第2の接合層34aを介して、上述の第2の接合層34a及び第3の接合層34bが形成された素子31に接触させる。そして、第1の接合層23及び第2の接合層34aを所定の温度で加熱することにより、この第1の接合層23と第2の接合層34aとを相互に固相拡散させて、Au80重量%−Sn20重量%の合金からなる合金層37aを形成し、この合金層37aを溶融させる。
変形例では、この加熱温度を290℃に設定した。
その後、加熱を止めることで合金層37aの温度が下がって合金層37aが固化することにより、素子21は合金層37aを介して素子31に接合される。
また、この合金層37aの厚さは約1μmである。
この合金層37aがAu80重量%−Sn20重量%の合金からなる理由、及び加熱温度を290℃に設定した理由については、第4実施例で説明した理由と同じである。
(E4工程)[図10及び図11参照]
図10に示すように、基材43の素子31を接合する面に、真空成膜法により、その厚さが約960nmになるようにSn層42を成膜し、さらにこのSn層42の表面に、その厚さが約20nmになるようにAu層43を成膜する。
その後、素子31の外形(変形例では約0.25mm角)とほぼ同じ外形となるように、フォトリソ法を用いてSn層42及びAu層43からなる第4の接合層45を形成する。
次に、図11に示すように、上述のE3工程を経た素子31を、第3の接合層34bの外形と第4の接合層45の外形とが略一致するように、第3の接合層34b及び第4の接合層45を介して、上述の基材43に接触させる。そして、第3の接合層34b及び第4の接合層45を所定の温度で加熱することにより、この第3の接合層34bと第4の接合層45とを相互に固相拡散させて、Au10重量%−Sn90重量%の合金からなる合金層37bにし、この合金層37bを溶融させる。なお、合金層37bがAu10重量%−Sn90重量%の合金からなる理由は、第2実施例及び第4実施例で説明した理由により説明される。
また、この加熱温度は、合金層37bの融点(約217℃)以上の温度であって、かつ、合金層37aが溶融しない温度(即ち、合金層37aの融点:約281℃)未満の温度である。
即ち、この温度範囲(合金層37bの融点以上であり合金層37aの融点未満である温度範囲)になるように加熱温度を設定することによって、合金層37aを溶融させることなく、合金層37bのみを溶融させることが可能である。
また、合金層37bを溶融させる際、加熱温度が上述した温度範囲よりも高いと、合金層37aも溶融するので、この溶融によって、素子21と素子31とが相互にずれる場合がある。この場合、素子21と素子31と接合面積が減少するため、素子21と素子31と接合強度が悪化するという問題が発生する。
そこで、変形例では、この加熱温度を225℃に設定した。
その後、加熱を止めることで合金層37bの温度が下がって合金層37bが固化することにより、素子31は合金層37a及び合金層37bを介して基材43に接合される。
また、この合金層37bの厚さは約1μmである。
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよいのは言うまでもない。
例えば、第1実施例乃至第4実施例、及び変形例では、合金層7a,7b,7c,7d,37a,37bを、Au80重量%−Sn20重量%合金、Au10重量%−Sn90重量%合金、及びAg3.5重量%−Sn96.5重量%合金のいずれかにより構成したが、これらの組成比率に限定されるものではない。
合金層がAu−Sn合金からなる場合、Au層とSn層とを、同一面積において所定の厚さ比率になるように成膜することによって、所定の重量比率を有するAu−Sn合金からなる合金層を得ることができる。
即ち、Au層に対するSn層の厚さ比率を大きくすれば、この厚さ比率に比例して、Au−Sn合金のSnの重量比率は大きくなる。
また、接合層がAg−Sn合金からなる場合についても同様である。
また、第1実施例では、合金層7aの組成をAu80重量%−Sn20重量%とし、Sn層4aの厚さt1aとAu層5aの厚さt2aとの厚さ比率t1a/t2aを40/60に設定したが、これに限定されるものではない。
発明者らが鋭意実験した結果、Sn層4aの厚さt1aとAu層5aの厚さt2aとの厚さ比率t1a/t2aを、59/41〜32/68の範囲内、即ち、合金層7aのAuの組成比率が65〜85重量%の範囲内であれば、このAu−Sn合金は、Au80重量%−Sn20重量%合金と結果的に同様の溶融が得られることが確認されている。
また、第2実施例では、合金層7bの組成をAu10重量%−Sn90重量%とし、Sn層4bの厚さt1bとAu層5bの厚さt2bとの厚さ比率t1b/t2bを96/4に設定したが、これに限定されるものではない。
発明者らが鋭意実験した結果、Sn層4bの厚さt1bとAu層5bの厚さt2bとの厚さ比率t1b/t2bを93.2/6.8〜94.5/5.5の範囲内、即ち、合金層7bのAuの組成比率が6.8〜13.4重量%の範囲内であれば、このAu−Sn合金は、Au10重量%−Sn90重量%合金と同様の溶融が得られることが確認されている。
また、第3実施例では、合金層7cの組成をAg3.5重量%−Sn96.5重量%とし、Sn層4cの厚さt1cとAg層9の厚さt3との厚さ比率t1c/t3を、975/25に設定したが、これに限定されるものではない。
発明者らが鋭意実験した結果、Ag3.5重量%−Sn96.5重量%とし、Sn層4cの厚さt1cとAg層9の厚さt3との厚さ比率t1c/t3を98.6/1.4〜95.7/4.3の範囲内、即ち、合金層7cのAgの組成比率が2〜6重量%の範囲内であれば、このAg−Sn合金は、Ag3.5重量%−Sn96.5重量%合金と同様の溶融が得られることが確認されている。
第1実施例乃至第4実施例、及び変形例では、合金層7a,7b,7c,7d,37a,37bそれぞれを形成するための層の厚さの合計が約1μmになるように設定したが、これに限定されるものではない。
ここで、Au層及びSn層の厚さの合計が4μmの場合と、10μmの場合とにおいて、Au層及びSn層を217℃に加熱して相互に固相拡散させて、Au80重量%−Sn20重量%合金からなる合金層をそれぞれ形成した。
そして、この各合金層の組成をXPSにより分析した結果を、図12に示す。
図12(a)は、Au層及びSn層の厚さの合計が4μmの場合における、厚さ方向に対するAuとSnとの組成比率の変化を表したグラフである。また、図12(b)は、Au層及びSn層の厚さの合計が10μmの場合における、厚さ方向に対するAuとSnとの組成比率の変化を表したグラフである。
図12(a)より、Au層及びSn層の厚さの合計が4μmの場合では、AuとSnとの組成比率が厚さ方向に対してほぼ均一である。このことから、Au層及びSn層の厚さの合計が4μmの場合では、AuとSnとが十分に固相拡散されている合金層が得られていることがわかる。
また、発明者らが鋭意実験した結果から、Au層及びSn層の厚さの合計が4μm以下の範囲であれば、AuとSnとが十分に固相拡散されることを確認している。
一方、図12(b)より、Au層及びSn層の厚さの合計が10μmの場合では、AuとSnとの組成比率が厚さ方向に対して徐々に変化している。このことから、Au層及びSn層の厚さの合計が10μmの場合では、得られた合金層はAuとSnとが十分に固相拡散されていないものであると判断できる。
AuとSnとが十分に固相拡散されていない合金層は、層自体の機械的強度が低いため、このような合金層を介して素子と基材とを接合すると、その接合強度は低くなってしまう。
また、Au層及びSn層の厚さの合計が1μm未満の場合は、得られた合金層自体の強度が低下する。
よって、Au80重量%−Sn20重量%合金からなり、組成の均一な合金層を得るためには、Au層及びSn層の厚さの合計を1〜4μmの範囲内に設定することが好ましい。
また、第2実施例と同様にして、Au10重量%−Sn90重量%合金からなる合金層についても、同様の実験を行った結果、この合金層の厚さが4μm以下の範囲であれば、AuとSnとが十分固相拡散されることを確認している。
また、Au層及びSn層の厚さの合計が1μm未満の場合は、得られた合金層自体の強度が低下する。
よって、Au10重量%−Sn90重量%合金からなり、組成の均一な合金層を形成するためには、Au層及びSn層の厚さの合計を1〜4μmの範囲内に設定することが好ましい。
次に、第3実施例と同様にして、Ag3.5重量%−Sn96.5重量%合金からなり、その厚さが4μmである合金層を作製した。この合金層を形成するための加熱温度は220℃である。
この合金層の組成をXPSにより分析した結果を図13に示す。図13は、Ag3.5重量%−Sn96.5重量%合金からなり、その厚さが4μmである合金層の厚さ方向に対するAgとSnとの組成比率の変化を表したグラフである。
図13より、この合金層は、AgとSnとの組成比率が厚さ方向に対してほぼ均一である。このことから、この合金層では、AgとSnとが十分固相拡散されていると判断できる。
また、発明者らが鋭意実験した結果から、この合金層の厚さが4μm以下の範囲であれば、AgとSnとが十分固相拡散されることを確認している。
また、Ag層及びSn層の厚さの合計が1μm未満の場合は、得られた合金層自体の強度が低下する。
よって、Ag3.5重量%−Sn96.5重量%合金からなり、組成の均一な合金層を形成するためには、Ag層及びSn層の厚さの合計を1〜4μmの範囲内に設定することが好ましい。
また、第4実施例及び変形例では、素子及び基材の各接合層の面積を略同じにしたが、これに限定されるものではない。例えば、素子及び基材の各接合層の面積及び組成が異なる場合、各接合層を接触させて加熱した際、各接合層はその面に対して直交方向に相互に固相拡散するが、同時にその面に対して平行方向にも固相拡散する。しかし、実際には、図12を用いて説明した理由により、平行方向への固相拡散する距離も約10μm以下である。一方、接合層の外形サイズは実施例では約0.25mm角、即ち、250μm角であり、平行方向への固相拡散による合金層の組成比のずれはほとんど無視できる。
また、第1実施例乃至第4実施例、及び変形例では、Sn層を形成した後に、Au層またはAg層を形成したが、形成する順序はこれに限定されるものではない。但し、Au層を形成した後にこのAu層上にSn層を形成する場合は、表層であるSn層が酸化しやすいため、注意が必要である。
また、第1実施例乃至第3実施例において、素子1a,1b,1cに形成されたSn層4a,4b及びAu層5a,5b、または、Sn層4c及びAg層9を、所定の温度に加熱して、相互に固相拡散させて合金化させて各合金層を形成した後に、素子1a,1b,1cをこの合金層を介して基材3に接合しても良い。
また、第1実施例乃至第3実施例において、素子1a,1b,1cではなく基材3にSn層4a,4b及びAu層5a,5b、または、Sn層4c及びAg層9を形成しても良い。
また、第1実施例乃至第3実施例において、素子1a,1b,1cにSn層4a,4b,4cを形成し、基材3にAu層5a,5b、Ag層9を形成しても良い。逆に、素子1a,1b,1cにAu層5a,5b、Ag層9を形成し、基材3にSn層4a,4b,4cを形成しても良い。
また、第4実施例において、素子1dにSn層14及びAu層15を形成し、基材13にAu層12を形成しても良い。
また、第4実施例において、素子1d及び基材13の両方に、Sn層及びAu層の両方を形成しても良い。
本発明に係る素子の接合方法は、動作時の発熱量が大きい半導体レーザ素子を基材上の受光素子などに接合する光ピックアップ装置や、同半導体レーザ素子をステムなどに接合する半導体レーザ装置などに対して、非常に有効である。
この場合、例えば、半導体レーザ素子は素子1a,1b,1c,1d,21に相当し、受光素子は素子31に相当し、基材及びステムは基材3,13,43に相当する。
本発明の素子の接合方法の第1乃至第3実施例におけるA1工程乃至C1工程を説明するための模式図である。 本発明の素子の接合方法の第1乃至第3実施例におけるA2工程乃至C2工程を説明するための模式的断面図である。 本発明の素子の接合方法の第1乃至第3実施例におけるA3工程乃至C3工程を説明するための模式的断面図である。 本発明の素子の接合方法の第4実施例におけるD1工程を説明するための模式的断面図である。 本発明の素子の接合方法の第4実施例におけるD2工程を説明するための模式的断面図である。 本発明の素子の接合方法の第4実施例におけるD3工程を説明するための模式的断面図である。 本発明の素子の接合方法の変形例におけるE1工程を説明するための模式的断面図である。 本発明の素子の接合方法の変形例におけるE2工程を説明するための模式的断面図である。 本発明の素子の接合方法の変形例におけるE3工程を説明するための模式的断面図である。 本発明の素子の接合方法の変形例におけるE4工程を説明するための模式的断面図である。 本発明の素子の接合方法の変形例におけるE4工程を説明するための模式的断面図である。 合金層の厚さ方向に対するAuとSnとの組成比率の変化を表したグラフである。 合金層の厚さ方向に対するAgとSnとの組成比率の変化を表したグラフである。
符号の説明
1a,1b,1c,1d,21,31 素子 、 2a,2b,2c,2d ウエハ 、 3,13,43 基材 、 4a,4b,4c,14,32,42 Sn層 、 5a,5b,12,15,22,33a,33b,43 Au層 、 7a,7b,7c,7d,37a,37b 合金層 、 9 Ag層 、 16,17,23,34a,34b,45 接合層 、 d1,d2,d3 密度 、 S 面積 、 t1a,t1b,t1c,t1d,t2a,t2b,t3,t4a,t4b 厚さ 、 w1a,w1b,w1c,w1d,w2a,w2b,w2d,w3 重さ

Claims (7)

  1. 合金層を介して半導体素子を基材に接合するために前工程と後工程とを有する素子の接合方法であって、
    前記前工程は、
    前記半導体素子の接合面となる面上又は前記基材の接合面となる面上に、第1の金属からなる第1金属層と、加熱した際に前記第1金属層と相互に固相拡散する第2の金属からなる第2金属層とを積層形成する金属層形成工程を備えており、
    前記後工程は、
    前記半導体素子の接合面となる面上又は前記基材の接合面となる面上に積層形成した前記第1金属層と前記第2金属層とを所定の温度で加熱して、前記第1金属層と前記第2金属層とを相互に固相拡散し前記第1の金属と前記第2の金属との合金からなる前記合金層にして溶融させる合金層溶融工程と、
    前記合金層溶融工程により溶融した前記合金層を冷却固化して、前記合金層を介して前記半導体素子を前記基材に接合する接合工程とを備えており、
    前記所定の温度を前記合金の融点以上の温度とすることを特徴とする素子の接合方法。
  2. 合金層を介して半導体素子を基材に接合するために前工程と後工程とを有する素子の接合方法であって、
    前記前工程は、
    前記半導体素子の接合面となる面上又は前記基材の接合面となる面上に、第1の金属からなる第1金属層を積層形成する第1金属層形成工程と、
    前記基材の接合面となる面上又は前記半導体素子の接合面となる面上に、加熱した際に前記第1金属層と相互に固相拡散する第2の金属からなる第2金属層を積層形成する第2金属層形成工程とを備えており、
    前記後工程は、
    前記半導体素子の接合面となる面上又は前記基材の接合面となる面上に積層形成した前記第1金属層と前記第2金属層とを所定の温度で加熱して、前記第1金属層と前記第2金属層とを相互に固相拡散し前記第1の金属と前記第2の金属との合金からなる前記合金層にして溶融させる合金層溶融工程と、
    前記合金層溶融工程により溶融した前記合金層を冷却固化して、前記合金層を介して前記半導体素子を前記基材に接合する接合工程とを備えており、
    前記所定の温度を前記合金の融点以上の温度とすることを特徴とする素子の接合方法。
  3. 合金層を介して半導体素子を基材に接合するために前工程と後工程とを有する素子の接合方法であって、
    前記前工程は、
    前記半導体素子の接合面となる面上及び前記基材の接合面となる面上にそれぞれ、第1の金属からなる第1金属層と、加熱した際に前記第1金属層と相互に固相拡散する第2の金属からなる第2金属層とを積層形成する金属層形成工程を備えており、
    前記後工程は、
    前記半導体素子の接合面となる面上及び前記基材の接合面となる面上にそれぞれ積層形成した前記第1金属層と前記第2金属層とを所定の温度で加熱して、前記第1金属層と前記第2金属層とを相互に固相拡散し前記第1の金属と前記第2の金属との合金からなる前記合金層にして溶融させる合金層溶融工程と、
    前記合金層溶融工程により溶融した前記合金層を冷却固化して、前記合金層を介して前記半導体素子を前記基材に接合する接合工程とを備えており、
    前記所定の温度を前記合金の融点以上の温度とすることを特徴とする素子の接合方法。
  4. 合金層を介して半導体素子を基材に接合するために前工程と後工程とを有する素子の接合方法であって、
    前記前工程は、
    前記基材の接合面となる面上に、第1の金属からなる第1金属層と、加熱した際に前記第1金属層と相互に固相拡散する第2の金属からなる第2金属層とを積層形成する第1金属層形成工程と、
    前記半導体素子の接合面となる面上に、前記第2金属層を積層形成する第2金属層形成工程とを備えており、
    前記後工程は、
    前記基材の接合面となる面上に積層形成した前記第1金属層と前記第2金属層と、前記半導体素子の接合面となる面上に積層形成した前記第2金属層とを所定の温度で加熱して、前記第1金属層と前記第2金属層とを相互に固相拡散し前記第1の金属と前記第2の金属との合金からなる前記合金層にして溶融させる合金層溶融工程と、
    前記合金層溶融工程により溶融した前記合金層を冷却固化して、前記合金層を介して前記半導体素子を前記基材に接合する接合工程とを備えており、
    前記所定の温度を前記合金の融点以上の温度とすることを特徴とする素子の接合方法。
  5. 前記第1金属層及び前記第2金属層の各厚さをt1及びt2、前記合金層における前記第1の金属の組成重量比率及び比重をx1及びy1、前記合金層における前記第2の金属の組成重量比率及び比重をx2及びy2とするとき、x1/x2=(t1×y1)/(t2×y2)の関係を満たすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の素子の接合方法。
  6. 前記第1金属層の厚さt1及び前記第2金属層の厚さt2の合計厚さt1+t2を、1〜4μmの範囲内とすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の素子の接合方法。
  7. 前記第1の金属はAu(金)またはAg(銀)であり、前記第2の金属はSn(錫)であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の素子の接合方法。
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