JP2007056275A - 板状アパタイト強化樹脂組成物 - Google Patents

板状アパタイト強化樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 強度、剛性、耐熱性が高く、靱性に優れ、またウエルド強度保持率、寸法特性、表面外観、リワーク性に優れる物性的にバランスの取れた樹脂組成物の提供。
【解決手段】樹脂および板状アパタイトから成る樹脂組成物であって、得られた該樹脂組成物中に存在する該アパタイトがリン(P)と、カルシウム(Ca)およびカルシウム以外の金属(X)のモル比(Ca+X)/Pが1.41〜1.61であり、その平均厚み(d)が100nm以下、かつ、該平均厚み(d)と平均長さ(L)との比である平均アスペクト比(L/d)が5以上の粒子形状で該樹脂組成物中に存在することを特徴とする板状アパタイト強化樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、様々な機械工業部品、電気電子部品などの産業用材料として好適な強度、剛性、耐熱性が高く、靱性に優れ、またウエルド強度保持率、寸法特性、表面外観およびリワーク性に優れる、樹脂と微細かつ高いアスペクト比を有するアパタイトからなる樹脂組成物に関するものである。
従来より、樹脂材料の特性を改良あるいは向上させることを目的として、樹脂に無機充填剤を配合することは広く行われている。例えばガラス繊維や炭素繊維などの無機繊維状充填材、タルク、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、ウォラストナイトなどの無機物粒子、あるいは雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母などの層状化合物などの各種無機充填材を樹脂に配合する方法が提案され、またこれらの材料のいくつかは、包装・容器などの汎用的消費分野や、自動車分野、電気・電子分野、機械・工業分野、事務機器分野、航空・宇宙分野などの各種部品などに用いられている。
しかしながら、これらの従来技術によると、得られる成型体の強度や剛性がより向上する点では有効であるものの、ガラス繊維や炭素繊維など無機繊維状充填材を用いた場合には、製品の比重が増加したり、製品の表面外観や表面平滑性が低下したり、製品の靱性が低下したりする問題があった。また押出、成形時などに押出機や成形機のシリンダー、スクリュー、金型などの摩耗が生じたり、近年の環境ニーズの高まりにより要求されているリサイクル、リワークによって無機繊維状充填剤の破損により、強度など物性が大きく低下し、再使用できないなどの問題があった。また、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母などの層状化合物を用いた場合には、成形体のウエルド強度が著しく減少する問題があり、産業用材料として用いることは困難な場合があった。
そのため、従来技術とは異なった様々な機械工業部品、電気電子部品などの産業用材料として好適な強度、剛性、耐熱性が高く、靱性に優れ、またウエルド強度保持率、寸法特性、表面外観およびリワーク性に優れる、物性バランスのよい樹脂組成物が工業的に望まれていた。
上記課題を解決すべく、本発明者らは特許文献1で開示されているように、ポリアミド樹脂と微細なアパタイトからなる樹脂組成物を提案し、靱性を損なうことなく、剛性、強度を向上させたポリアミドを見出した。しかしながら本発明者らの検討の結果、微細なアパタイトの形状が球状であるために、自動車部品、電子電機部品、工業機械部品などの各種部品への応用においては強度、剛性が十分でないということがわかった。
一方、樹脂とアパタイトからなる組成物としては、特許文献2に、ポリエステル樹脂と平均一次粒径が5から200nm、平均二次粒径が0.1から10μmであり、かつ二次粒径の相対標準偏差が0.95以下のヒドロキシアパタイトから成るポリエステル組成物が開示されている。さらに、特特許文献3に、高分子樹脂と平均繊維径が5から20μm、平均繊維長が100μmから5mmの繊維状ヒドロキシアパタイトから成る組成物が開示されている。ここで、教示されたアパタイトの特徴は、前者は微細ではあるが、アパタイトの平均アスペクト比に関する記述がなく、また後者は高いアスペクト比を有するが、平均径が大きいといえる。
このような組成物に関して、本発明者らの検討によると、工業的な部品に応用可能なほど、強度、剛性、耐熱性が十分でなく、また靱性、ウエルド強度保持率、表面外観、リワーク性を含めたバランスに偏りがあることがわかった。
ところで、微細で高いアスペクト比を有する針状化したアパタイトに関しては、吉村昌弘らにより、非特許文献1で開示されている方法、すなわち、低結晶性アパタイトにエチレンジアミン四酢酸などの添加物を加えて、水熱合成する方法が開示されているが、本発明者らの検討によると、その収率が著しく低く、工業的に用いることは困難である。
そのため、従来の技術では、樹脂および、微細で高いアスペクト比を有するアパタイトから成る樹脂組成物は知られておらず、その特性についても未知であった。
国際公開第2000/011088号パンフレット 特開2000−119495号公報 特開昭63−132810号公報 日本化学会誌、1991,(10)、p.1402〜1407
本発明の目的は、上記の問題点を解決しうる強度、剛性、耐熱性が高く、靱性に優れ、またウエルド強度保持率、寸法特性、表面外観、リワーク性に優れる、樹脂および、アパタイトから成る樹脂組成物であって、得られた該樹脂組成物中に存在する該アパタイトの粒子形状に関し、その平均厚み(d)が100nm以下であり、かつ、該平均厚み(d)と平均長さ(L)との比である平均アスペクト比(L/d)が5以上である粒子形状で存在することを特徴とする樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、樹脂と特定の形状、大きさをもつアパタイトからなる樹脂組成物により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下に記載する通りのものである。
1.樹脂および板状アパタイトから成る樹脂組成物であって、得られた該樹脂組成物中に存在する該アパタイトがリン(P)と、カルシウム(Ca)およびカルシウム以外の金属(X)のモル比(Ca+X)/Pが1.41〜1.61であり、その平均厚み(d)が100nm以下、かつ、該平均厚み(d)と平均長さ(L)との比である平均アスペクト比(L/d)が5以上の粒子形状で該樹脂組成物中に存在することを特徴とする板状アパタイト強化樹脂組成物。
2.平均アスペクト比(L/d)が20以上の粒子形状で該樹脂組成物中に存在することを特徴とする上記1に記載の板状アパタイト強化樹脂組成物。
3.板状アパタイトを構成するカルシウム(Ca)およびカルシウム以外の金属(X)とカルシウム(Ca)のモル比Ca/(Ca+X)は、好ましくは0.80〜1.00であることを特徴とする上記1又は2に記載の板状アパタイト強化樹脂組成物。
4.板状アパタイトが、リン酸八カルシウム化合物を40℃〜400℃で加熱処理して得られることを特徴とする上記1から4のいずれかに記載の板状アパタイト強化樹脂組成物。
5.樹脂が、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ゴムのいずれかから選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂であることを特徴とする上記1から4のいずれかに記載の板状アパタイト強化樹脂組成物。
6.樹脂および板状アパタイトとを溶融混練法により配合し得られることを特徴とする上記5に記載の板状アパタイト強化ポリアミド樹脂組成物。
7.樹脂原料と板状アパタイトとを配合し樹脂の重合し得られることを特徴とする上記5に記載の板状アパタイト強化ポリアミド樹脂組成物。
8.樹脂がポリアミド樹脂であることを特徴とする上記6に記載の板状アパタイト強化樹脂組成物。
9.樹脂原料がポリアミド原料であることを特徴とする上記7に記載の板状アパタイト強化樹脂組成物。
10.樹脂と、リン(P)と、カルシウム(Ca)およびカルシウム以外の金属(X)のモル比(Ca+X)/Pが1.41〜1.61であり、平均厚み(d)が100nm以下であり、かつ、該平均厚み(d)と平均長さ(L)との比である平均アスペクト比(L/d)が5以上である板状アパタイトとを配合して得られることを特徴とする板状アパタイト強化樹脂組成物の製造方法。
11.平均アスペクト比(L/d)が20以上の粒子形状で該樹脂組成物中に存在することを特徴とする上記10に記載の板状アパタイト強化樹脂組成物。
12.板状アパタイトを構成するカルシウム(Ca)およびカルシウム以外の金属(X)とカルシウム(Ca)のモル比Ca/(Ca+X)は、好ましくは0.80〜1.00であることを特徴とする上記10又は11に記載の板状アパタイト強化樹脂組成物の製造方法。
13.板状アパタイトが、リン酸八カルシウム化合物を40℃〜400℃で加熱処理して得られることを特徴とする上記10から12のいずれかに記載の板状アパタイト強化樹脂組成物の製造方法。
14.樹脂が、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ゴムのいずれかから選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂であることを特徴とする上記10から13のいずれかに記載の板状アパタイト強化樹脂組成物の製造方法。
15.樹脂および板状アパタイトとを溶融混練法により配合することを特徴とする上記14に記載の板状アパタイト強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
16.樹脂原料と板状アパタイトとを配合し樹脂の重合することを特徴とする上記14に記載の板状アパタイト強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
17.樹脂がポリアミド樹脂であることを特徴とする上記15に記載の板状アパタイト強化樹脂組成物の製造方法。
18.樹脂原料がポリアミド原料であることを特徴とする上記16に記載の板状アパタイト強化樹脂組成物の製造方法。
本発明により、強度、剛性、耐熱性が高く、靭性に優れ、またウエルド強度保持率,寸法特性、表面外観、リワーク性に優れる物性的にバランスの取れた樹脂組成物を提供が可能となった。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、樹脂および板状アパタイトから成る樹脂組成物であって、該アパタイトがリン(P)と、カルシウム(Ca)およびカルシウム以外の金属(X)のモル比(Ca+X)/Pが1.41〜1.61であり、その平均厚み(d)が100nm以下であり、かつ、該平均厚み(d)と平均長さ(L)との比である平均アスペクト比(L/d)が5以上である板状粒子で存在することを特徴とする樹脂組成物に係わる。
本発明で好ましく用いられる樹脂は特に制限されないが、熱可塑性樹脂又はゴム、熱硬化性樹脂を好ましい樹脂として挙げることができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、アラミド、ポリイミド等の縮合樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等のポリエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の含ハロゲンビニル化合物樹脂、ゴム等を挙げることができる。また、脂肪族ポリエステル樹脂としては、生分解性高分子として知られるポリ乳酸や、ポリグリコール酸なども含まれる。
これらの他に、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化樹脂等も用いることができる。これら樹脂は、1種でもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、これら樹脂の中でも、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂及びゴムから選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂が、より好ましく用いられる。
アパタイトは人体の骨の成分としても知られる、カルシウムとリンからなる化合物であり、一般に、カルシウム及び/又はリン原子が理論量を超えて存在したり、逆に不足して存在することが知られている。そのため、アパタイトの形状は、球状、六角柱状、針状、板状等種々の形状を取ることができる。本発明では、樹脂の補強効果が著しい、平均厚みが100nm以下でありかつ平均アスペクト比が5以上であるアパタイト、すなわち、板状のアパタイトと樹脂とからなる樹脂組成物である。
本発明において、板状アパタイトは、その形状が板状、円盤状、短冊状、層状などの形状をしているものであり、平均厚みが100nm以下、好ましくは75nm以下であり、最も好ましくは50nm以下であり、かつ平均アスペクト比が5以上、好ましくは20以上であり、さらに好ましくは25以上であり、最も好ましくは30以上、のもので有れば特に限定されない。ここで本発明では、アパタイト形状の中で最も長い軸(長辺)の長さを「長さL」、それと対応する最も短い軸の長さを「厚みd」と定義して用いる。
本発明では、平均長さ、平均厚み、および平均アスペクト比は、単位体積中に長さLi、厚みdiのアパタイト粒子がNi個存在するとき、
平均長さL=ΣLiNi/ΣLiNi
平均厚みd=ΣdiNi/ΣdiNi
平均アスペクト比L/d=(ΣLiNi/ΣLiNi)/(ΣdiNi/ΣdiNi)
と定義することができる。
以下、本発明で用いられる板状アパタイトについて、詳しく説明する。
一般にアパタイトは下記一般式(I)で示される。
(M)10−z(HPO(PO6−z(Y)2−z・nHO (I)
式中、0≦z≦2、0≦n≦16であり、(M)は金属元素、(Y)は陰イオン又は陰イオン化合物である。
上記金属元素(M)は結晶の安定性の観点からカルシウム(Ca)が好ましいが、カルシウムと、元素周期律表の1、2(カルシウムを除く)、3、4、5、6、7、8、11、12、13族元素及びスズ、鉛等のカルシウム以外の金属元素(X)との混合物であってもよい。中でも、カルシウム以外の金属元素としては、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、鉛、ニッケル、アルミニウム、銅、鉄、又はこれらの2種以上からなる混合物であることが特に好ましい。
上記(Y)で示される陰イオン又は陰イオン化合物としては、水酸イオン(OH−)、フッ素イオン(F)、塩素イオン(CL)等を挙げることができる。これら陰イオン元素又は陰イオン化合物は1種であっても、2種以上であってもよい。また、前記一般式中のリン酸水素イオン(HPO 2−)、リン酸イオン(PO 3−)、又は(Y)の一部が炭酸イオン(CO 2−)に置換した炭酸含有アパタイトであってもよい。
本発明で用いられるアパタイトは上記一般式で表される組成である平均厚み(d)が100nm以下であり、かつ、該平均厚み(d)と平均長さ(L)との比である平均アスペクト比(L/d)が5以上である板状のアパタイトであるが、金属(M)とリン(P)の理論量比、すなわち(Ca+X)/P、(ただし、Xはカルシウム以外の金属)が1.67からはずれた1.41〜1.61の金属欠陥型のアパタイトであることが好ましい。
さらに、カルシウム(Ca)およびカルシウム以外の金属(X)とカルシウム(Ca)のモル比Ca/(Ca+X)は、好ましくは0.80から1.00であり、さらに好ましくは0.90から1.00であり、もっとも好ましくは0.95から1.00である。上記範囲をはずれると、より微細で高アスペクト比の板状のアパタイトとなりにくい傾向にある。
本発明で用いられる板状アパタイトは、リン酸八カルシウム化合物を40℃〜400℃で加熱処理して製造することができる。
リン酸八カルシウム化合物とは下記一般式で示される。
Ca(PO・nHO (0≦n≦5)
該リン酸カルシウムの形状は一般的に層状であり、その厚さは100nm以下であることが知られている。
上記リン酸八カルシウムは、カルシウムや水素の代わりに、元素周期律表の1、2(カルシウムを除く)、3、4、5、6、7、8、11、12、13族元素およびスズ、鉛などのカルシウム以外の金属元素が置換されていてもかまわない。中でも、カルシウム以外の金属元素としては、2族元素であるマグネシウム、ストロンチウム、バリウム、さらに、銅、鉄あるいはこれらの2種以上からなる混合物であることが特に好ましい。カルシウム(Ca)とカルシウム(Ca)およびカルシウム以外の金属(X)のモル比Ca/(Ca+X)は、結晶性の観点から、好ましくは0.70から1.00であり、さらに好ましくは0.80から1.00であり、もっと好ましくは0.95から1.00である。
本発明で板状アパタイトを製造するために用いられるリン酸八カルシウムのカルシウムなどの金属元素やリンの定量は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析を用いて行うことができる。より具体的には、リン酸八カルシウム化合物粒子0.5gを白金皿に秤量し、500℃電気炉で炭化し、冷却後、塩酸5mLおよび純水5mLを加えヒーター上で煮沸溶解する。再び冷却し、純水を加え500mLとし、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、カルシウムの特性波長317.933nmにてカルシウム濃度を定量する。カルシウム以外の金属の場合は、目的とする金属の特性波長を用いることにより、同様に定量することができる。
一方、リン酸八カルシウム化合物粒子0.5gを秤量し濃硫酸を20mL加え、ヒーター上で湿式分解し、冷却後、過酸化水素5mLを加え、ヒーター上で加熱し、全量が2〜3mLになるまで濃縮した。再び冷却し、純水で500mLとし、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、リンの特性波長213.618(nm)にてリン濃度を定量する。
本発明で板状アパタイトを製造するために用いられるリン酸八カルシウム化合物の定性確認は、例えば、広角X線回折、赤外吸収スペクトルなどで確認することができる。広角X線回折での確認方法をより具体的に述べれば、X線の線源として、銅Kα(波長λ=0.1542nm)を用いて、広角X線回折を測定し、回折角(2θ)が4.7度付近に(010)面ピークが存在し、9.4度付近に(020)面、9.8度付近に(110)面、その他、26度付近に(002)面、32度付近に(260)面が存在する。これら回折線の詳細は、LCPDS−InternationaL Centre for Diffraction DataのJCPDS card No26−1056に掲載されている。
本発明で板状アパタイトを製造するために用いられるリン酸八カルシウム化合物の合成方法は特に限定されるものではなく、例えば、門間氏のリン酸八カルシウムの総説(Gypsum and Lime No.166,113(1980))に述べられているように、カルシウム溶液とリン酸溶液を混合して得る沈殿法、リン酸水素カルシウムを加水分解する方法、リン酸三カルシウムを加水分解する方法など公知の合成方法をあげることができる。なかでも、大量に、収率よくリン酸八カルシウム化合物を得る方法として、特開平6−122510号公報に開示される、無水リン酸水素カルシウム、またはリン酸水素カルシウム二水和物と炭酸カルシウムをカルシウムとリンのモル比(Ca/P)を1.30〜1.60に調整し、水縣濁液中で、35〜68℃で反応させて得る合成方法をあげることができる。
本発明で板状アパタイトを製造するために用いられるリン酸八カルシウム化合物の加熱処理の方法は、特に限定されるものではないが、
(製造方法−1) リン酸八カルシウム化合物をスラリー状として加熱処理する方法、
(製造方法−2) リン酸八カルシウム化合物を粉末状として加熱処理する方法
があげられる。
以下製造方法−1、2についてそれぞれ説明する。
製造方法−1
リン酸八カルシウム化合物のスラリーを加熱処理する際の溶媒に対する濃度は特に限定されないが、収率よく板状アパタイトを得る観点から、好ましくは溶媒100質量部に対して、リン酸八カルシウム化合物が0.01〜300質量部であり、さらに好ましくは0.1〜100質量部であり、もっとも好ましくは1〜50質量部である。
前記溶媒としては、生成する板状アパタイトの形状から判断して、水または親水性有機溶媒の中から選ばれた少なくとも1種からなる溶媒が好ましい。親水性有機溶媒とは、水と相溶する溶媒であれば特に限定しないが、好ましいものとしては、例えばメタノール、エタノール、エチレングリコール等アルコール系溶媒やN,N−ジメチルホルムアミド、アセチルアセトアミド等のアミド系溶媒、その他アセトン、エーテル、ジメチルスルフォキシドなど、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。また水と上記親水性有機溶媒とを混合して用いてもかまわない。混合する場合の配合割合については特には限定されないが、両者が相分離しない程度が好ましい。
本製造方法−2で使用される、リン酸八カルシウム化合物のスラリー縣濁液を加熱処理する温度は好ましくは、40℃〜600℃の範囲であり、さらに好ましくは50℃から400℃の範囲であり、最も好ましくは60℃から350℃の範囲である。上記温度範囲内であれば、温度が低過ぎて板状アパタイトの生成に時間を多大に必要とすることがなく、また、温度が高過ぎて生成する板状アパタイトの分解を引き起こすこともないため、収率が減少する心配がない。
その際、水熱合成法を用いて加熱を行っても良い。合成する際の圧力は、加圧下であれば特に限定されないが、微細でかつ板状化したアパタイトを効率的に得るという観点から、好ましくは0.5MPa以上であり、より好ましくは1.0Mpa以上であり、更には1.5Mpa以上であり、最も好ましくは2.0Mpa以上である。
水熱合成の方法は、特に限定はされないが、例えば原料液をオートクレーブなどの反応容器に封入し、窒素などの不活性ガスで置換したあと、密閉状態で前記温度条件下、飽和水蒸気圧程度の圧力条件下で行う方法や、あるいは水熱合成中に、反応容器から水あるいは親水性溶媒を抜き出し、飽和水蒸気圧より低い圧力で行う方法や、これらを組み合わせた方法などを用いることができる。
本発明で用いられる水熱合成を行う装置は、オートクレーブなどの耐圧反応容器を用いることができ、特に限定されるものではない。中でも高アスペクト比の板状アパタイト粒子を得るといった観点から、攪拌装置を装備しているオートクレーブ型反応容器が最も好ましい。
水熱合成時間は、反応を完結させるため、任意に決めることができるが、2時間以上とすることが好ましく、さらに好ましくは4時間以上である。
さらに製造方法−2においては、ポリアミド、塩化ビニル重合体、ポリビニル重合体、ポリメチルメタクリレート重合体などの熱可塑性樹脂原料成分を加えた溶液中で加熱処理を行っても構わない。この場合、該樹脂原料成分中に板状アパタイトが良好に分散し、その界面には各原料成分が吸着する。そのため、得られる板状アパタイトを樹脂のフィラーとして用いる際、樹脂とのなじみがよく、補強効果が高い。なかでもポリアミドの原料成分は板状アパタイトの界面に吸着しやすく、これを樹脂と混練した場合はフィラーと樹脂とのぬれが良好であり、補強効果が特に高い。
本発明において、上記製造方法1から2などによって製造された、平均厚み(d)が100nm以下であり、かつ、該平均厚み(d)と平均長さ(L)との比である平均アスペクト比(L/d)が5以上である板状アパタイトのスラリーを長時間安定化や樹脂との分散性向上を目的として、必要に応じて、分散剤あるいはカップリング剤などを添加し使用することもできる。
前記分散剤は、特に制限するものではなく、公知の分散剤を用いることができる。例えば、「分散・凝集の解明と応用技術,1992年」(北原文雄監修・株式会社テクノシステム発行)の232〜237ページに記載されているようなアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤などを用いることができる。
これらの中でもアニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤を用いることが好ましく、特に、価格および物性の観点から、クエン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ショ糖ステアリン酸エステルなどのショ糖エステル類などを用いることがより好ましい。
前記カップリング剤は、特に制限するものではなく、公知のカップリン剤を用いることができる。中でも、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤が好ましいものとして挙げることができる。
シラン系カップリング剤としては、トリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(1,1−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピル−トリス(2−メトキシ−エトキシ)シラン、N−メチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、トリアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−4,5ジヒドロイミダゾールプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、N,O−(ビストリメチルシリル)アミド、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレアなど、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
この中でもγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(1,1−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのアミノシランおよびエポキシシランが経済性に優れ、取り扱い易いため、好ましく用いられる。
チタン系カップリング剤は、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(1,1−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル、アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネートなど、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
これら分散剤は、該アパタイト100質量部に対して、0.001〜100質量部の範囲で加えることが好ましく、0.01〜20質量部の範囲がさらに好ましく、0.05〜10質量部の範囲が最も好ましい。
本発明において、上記製造方法1から2などによって製造された、平均厚み(d)が100nm以下であり、かつ、該平均厚み(d)と平均長さ(L)との比である平均アスペクト比(L/d)が5以上であるアパタイトを粉末状で用いる場合、樹脂への分散性向上や、樹脂との界面接着性を向上させることを目的として、前記方法により得られた粉末状の板状アパタイトを表面処理剤による表面処理を行ってもよい。
表面処理は、シラン系カップリング剤やチタン系カップリング剤、又はフィルム形成剤等の表面処理剤として用いて行うことができる。
フィルム形成剤としては、ウレタン系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、無水マレイン酸とエチレン、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3ジクロロブタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロオクタジエン等の不飽和単量体とのコポリマー、エポキシ系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー等の重合体を挙げることができる。この中でも、経済性と性能が優れるという観点から、ウレタン系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、ブタジエン無水マレイン酸コポリマー、エチレン無水マレイン酸コポリマー、スチレン無水マレイン酸コポリマー、及びこれらの混合物が特に好ましく用いられる。
このようなカップリング剤及びフィルム形成剤によるアパタイトの表面処理は、公知の方法で行うことができる。すなわち、上記カップリング剤及びフィルム形成剤の有機溶媒溶液又は懸濁液をいわゆるサイジング剤としてアパタイトの表面に塗布するサイジング処理、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、レーディミキサー、V型ブレンダー等を用いて塗布する乾式混合、スプレーにより塗布するスプレー法、さらには、インテグラルブレンド法、ドライコンセントレート法を挙げることができる。また、これらの方法を組合せた方法、例えば、カップリング剤とフィルム形成剤の一部をサイジング処理により塗布した後、残りのフィルム形成剤をスプレーする方法等も挙げることができる。この中でも、経済性に優れるという観点から、サイジング処理、乾式混合、スプレー法及びこれらを組合せた方法が好ましく用いられる。
本発明の樹脂組成物の製法は特に限定されるものではないが、例えば、(製造方法−a)樹脂と、あらかじめ製造した平均厚み(d)が100nm以下であり、かつ、該平均厚み(d)と平均長さ(L)との比である平均アスペクト比(L/d)が5以上であるアパタイトを配合して該樹脂組成物を得る方法、(製造方法−b)樹脂原料と、あらかじめ製造した平均厚み(d)が100nm以下であり、かつ、該平均厚み(d)と平均長さ(L)との比である平均アスペクト比(L/d)が5以上であるアパタイトを配合し、重合して該樹脂組成物を得る方法などをあげることができる。
以下製造方法−aからbについてそれぞれ説明する。
製造方法−a
本製造方法−aでは、樹脂と、あらかじめ製造した平均厚み(d)が100nm以下であり、かつ、該平均厚み(d)と平均長さ(L)との比である平均アスペクト比(L/d)が5以上であるアパタイトを配合して得る方法であるが、該アパタイトは、前記製造方法−1から2で製造されたスラリー又は粉末状のものを使用することができる。
配合する方法としては、樹脂と溶融混練して製造する方法、樹脂と溶液中で混合する方法等を挙げることができる。また、上記の方法を用いて樹脂に高濃度の該アパタイトを含有するマスターバッチとした後、マスターバッチと樹脂とを混合する方法でもよい。更には、これら方法を必要に応じて組み合わせてもよい。
その際の樹脂と該アパタイトの配合割合は特に限定されるものではないが、樹脂100質量部に対して、好ましくは該アパタイト0.01から1000質量部、より好ましくは0.05から500質量部、もっとも好ましくは0.1から300質量部である。
前記製造方法のうち、溶融混練により製造する場合には、溶融混練を行う装置としては、一般に実用されている混練機が適用できる。例えば、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等を用いればよい。中でも、減圧装置、及びサイドフィーダー設備を装備した2軸押出機が最も好ましい。溶融混練の方法は、全成分を同時に混練してもよく、あらかじめ予備混練したブレンド物を用いて混練する方法、更に押出機の途中から逐次、各成分をフィードし、混練してもよい。また、該アパタイトをスラリーの状態で添加する場合には、液体添加ポンプを用いて、押出機の途中からフィードすることが好ましい。
溶融混練の条件は、特に制限されるものではないが、減圧度に関しては、0〜0.07Mpaが好ましい。混練の温度は、JISK7121に準じた示差走査熱量(DSC)測定で求まる融点又は軟化点より1〜100℃高い温度が好ましい。混練機での剪断速度は100(SEC−1)以上であることが好ましく、混練時の平均滞留時間は、1〜15分が好ましい。樹脂組成物中の溶媒は1質量%以下であることが好ましい。上記範囲内であれば、生産性が低下したり、成形加工性が低下したり、得られた成形品の外観が十分でなかったり、また物性の改良効果が十分でなかったりといった現象が起こりにくい。
製造方法−b
本製造方法−bでは、樹脂原料と、あらかじめ製造した平均厚み(d)が100nm以下であり、かつ、該平均厚み(d)と平均長さ(L)との比である平均アスペクト比(L/d)が5以上であるアパタイトを配合して重合して得る方法であるが、該アパタイトは、前期アパタイトの製造方法−1から2で製造されたスラリー又は粉末状で使用することができる。
樹脂原料に配合する方法としては、樹脂原料粉末やその溶液に直接該アパタイトを加える方法や該アパタイトを溶媒中に分散させてスラリー状として樹脂原料に添加する方法があげられる。さらに該アパタイト粉末またはスラリーを、樹脂原料の重合過程途中で加えた後に、重合を続けてもかまわない。その際、樹脂原料と該アパタイトの配合割合は特に限定されるものではないが、樹脂100質量部に対して、好ましくは該アパタイト0.01から1000質量部、より好ましくは0.05から500質量部、もっとも好ましくは0.1から300質量部である。
樹脂の重合方法に関してはとくに制限がなく、公知の方法を用いることができる。
この中でも、樹脂原料としてポリアミド原料を使用する場合が好ましく、先ず、ポリアミド原料と該アパタイトを配合し、次いで、ポリアミドの重合を行うのが好ましい方法である。
ポリアミド原料と該アパタイトの配合方法としては、固体状のポリアミド原料と該アパタイトを直接混合する方法、ポリアミド原料の水溶液と該アパタイトのスラリーを配合する方法などのいずれによってもよい。
本発明において、ポリアミドの重合方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、11−アミノウンデカン酸などの水に難溶な成分を原料とし、200〜290℃で加熱し重縮合する方法、ε−カプロラクタム水溶液を原料とし、必要に応じてモノカルボン酸などの末端封鎖剤、あるいはε−アミノカプロン酸などの反応促進剤を加えて、不活性ガスを流通させながら、200〜290℃に加熱し重縮合するラクタム類の開環重縮合法、ヘキサメチレンアジパミド水溶液などのジアミン成分とジカルボン酸成分との塩水溶液を原料とし、200〜290℃に加熱濃縮し、発生する水蒸気圧を10〜20気圧の間の適当な圧力に保ち、最終的には圧力を抜き、常圧あるいは減圧し重縮合を行う熱溶融重縮合法などを用いることができる。
さらには、ジアミン成分とジカルボン酸成分からなる固体塩や重縮合物の融点以下の温度で行う固相重合法、ジカルボン酸ハライド成分とジアミン成分とを溶液中で重縮合させる溶液法なども用いることができる。これらの方法は必要に応じて組合わせてもよい。重合形態としては、バッチ式でも連続式でもよい。重合装置も特に制限されるものではなく、公知の装置、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、ニーダーなどの押出機型反応器などを用いることができる。
本発明の樹脂組成物中のアパタイトの確認は、例えば、樹脂組成物のペレットや成形品等を用いて広角X線回折等で直接確認する方法や、ペレットや成形品等を樹脂が可溶な溶媒に浸して樹脂を除去し、残った成分を広角X線回折、赤外吸収スペクトル等で確認する方法等によればよい。広角X線回折の場合には、金属元素がカルシウムであるアパタイトにとると、2θで約25.9、31.7及び32.6(度)に観測される(002)、(211)及び(300)面に起因するピークの存在により、アパタイトの存在を確認することができる。
本発明の樹脂組成物は、樹脂中のアパタイトがミクロンメーターサイズで凝集した状態で分散してもよいが、物性の改良効果という観点から、樹脂中にナノメーターサイズで均一に分散していることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、樹脂中のアパタイトが平均厚み(d)が100nm以下であり、かつ、該平均厚み(d)と平均長さ(L)との比である平均アスペクト比(L/d)が5以上である粒子形状で存在する。
該アパタイトの樹脂中での分散状態の確認と、該平均厚み(d)と平均長さ(L)の測定は、樹脂組成物のペレットや成形品を用いて、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し測定する方法により行うことができる。
具体的に説明すると、樹脂組成物のペレットや成形品から、20〜80nmの超薄切片を作成し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて1〜10万倍の倍率で明視野像を撮り、最低100個のアパタイトの分散状態の観察を行い求めることができる。
上記方法により得られた明視野像から、単位体積中に長さLi、厚みdiのアパタイトがNi個存在した場合には、平均厚み、及び平均アスペクト比は下記式により求めることができる。
平均長さL=ΣLiNi/ΣLiNi
平均厚みd=ΣdiNi/ΣdiNi
平均アスペクト比L/d=(ΣLiNi/ΣLiNi)/(ΣdiNi/ΣdiNi)
本発明の樹脂組成物のアパタイトの含有量は、樹脂100質量部に対して、0.01〜1000質量部が好ましく、より好ましくは0.05〜500質量部、最も好ましくは0.1〜300質量部である。アパタイトの含有量は、例えば、樹脂組成物のペレットや成形品等をJISR3420に従って強熱減量(Ig.loss)を測定し、その質量減少量から求めることができる。具体的には、樹脂組成物を十分乾燥した後、白金皿に約1g秤量し、650±20℃の電気炉で灰化し、冷却後、その質量を秤り、アパタイトの含有量を定量する。樹脂の特性の改良効果を発揮させるには、少なくとも樹脂100質量部に対してアパタイトが0.01質量部以上含有されていると良く、成形性を考慮すると1000質量部以下である方が良い。
本発明による樹脂組成物には、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、成形性改良剤を添加しても差し支えない。前記成形性改良剤は、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド化合物、ポリアルキレングリコールあるいはその末端変性物、低分子量ポリエチレンあるいは酸化低分子量ポリエチレン、置換ベンジリデンソルビトール、ポリシロキサン、カプロラクトン類、無機結晶核剤類からなる化合物類から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
本発明の樹脂組成物には、更なる熱劣化、熱時の変色防止、耐熱エージング性、耐候性の向上を目的に、劣化抑制剤を添加しても差し支えない。前記劣化抑制剤は、ヒンダードフェノール化合物などのフェノール系安定剤、ホスファイト系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、トリアジン系安定剤、イオウ系安定剤から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
本発明の樹脂組成物には、着色剤を添加しても差し支えない。前記着色剤は、ニグロシンなどの染料、酸化チタンあるいはカーボンブラックなどの顔料、あるいはアルミニウム、着色アルミニウム、ニッケル、スズ、銅、金、銀、白金、酸化鉄、ステンレス、チタンなどの金属粒子、マイカ製パール顔料、カラーグラファイト、カラーガラス繊維、カラーガラスフレークなどのメタリック顔料などから選ばれる少なくとも1種の着色剤である。
本発明の樹脂組成物には、導電性カーボンブラックを添加しても差し支えない。前記導電性カーボンブラックは、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブなどから選ばれる少なくとも1種のカーボンブラックであり、中でも良好な鎖状構造を有し凝集密度が大きいものが好ましい。
本発明の樹脂組成物には、難燃剤を配合しても差し支えない。難燃剤は、非ハロゲン系難燃剤、あるいは臭素系難燃剤が好ましい。
前記非ハロゲン系難燃剤は、赤リン、リン酸アンモニウム、あるいはポリリン酸アンモニウムなどのリン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化ジルコニウム、酸化スズ、すず酸亜鉛、ヒドロキシすず酸亜鉛などの金属水酸化物あるいは無機金属化合物の水和物や、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウムなどのホウ酸化合物などの無機化合物系難燃剤、メラミン、メラム、メレム、メロン(300℃以上でメレム3分子から3分子の脱アンモニアによる生成物)、メラミンシアヌレート、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、サクシノグアナミン、アジポグアナミン、メチルグルタログアナミン、メラミン樹脂などのトリアジン系難燃剤、シリコーン樹脂、シリコーンオイル、シリカなどのシリコーン系難燃剤から選ばれる少なくとも1種の難燃剤である。
前記臭素系難燃剤は、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノール型エポキシ系重合体および臭素系架橋芳香族重合体からなる化合物類から選ばれる少なくとも1種の難燃剤である。
本発明の樹脂組成物には、無機充填材を配合しても差し支えない。前記無機充填剤は、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、アパタイト、リン酸ナトリウム、蛍石、窒化珪素、チタン酸カリウム、二硫化モリブデンなどから選ばれる少なくとも1種の無機充填剤である。
本発明の樹脂組成物は、各種成形加工性に優れるため、公知の成形方法、例えばプレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、発泡成形、溶融紡糸など、一般に知られているプラスチック成形方法を用いても、良好に成形加工ができる。
本発明の樹脂組成物は、強度、剛性、耐熱性が高く、靱性に優れ、またウエルド強度保持率、寸法特性、表面外観およびリワーク性に優れるため、包装・容器等の汎用的消費分野や、自動車分野、電気・電子分野、機械・工業分野、事務機器分野、航空・宇宙分野等の各種部品等への応用が期待される。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例、比較例において記載した評価は、以下の方法により実施した。
(1)数平均分子量(Mn)
ゲルパーミッショクロマトグラフィー(GPC)により求めた。装置は東ソー(株)製HLC−8020、検出器は示差屈折計(RI)、溶媒はヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、カラムは東ソー(株)製TSKgel−GMHHR−Hを2本とG1000HHRを1本用いた。溶媒流量は0.6ml/min、サンプル濃度は、1〜3(mgサンプル)/1(ml溶媒)であり、フィルターでろ過し、不溶分を除去し、測定試料とした。得られた溶出曲線をもとに、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算により、数平均分子量(Mn)を算出した。
(2)アパタイトの含有量(質量部/100質量部熱可塑性樹脂)
樹脂組成物を100±20℃で8時間乾燥し冷却する。白金皿に、乾燥した樹脂組成物を1gとり、650±20℃の電気炉で灰化し、冷却後、その質量を秤り、アパタイトの含有量を定量した。
(3)原料、アパタイト原料液あるいはアパタイトの、カルシウム、または、カルシウムおよびカルシウム以外の金属とリンとのモル比(Ca/P)、(Ca+X)/P
原料、アパタイト原料液あるいはアパタイトのカルシウム、カルシウム以外の金属およびリンを定量し、モル比を算出した。例として、カルシウムとリンの定量方法を示す。カルシウム以外の金属の場合は、使用した金属の特性波長によって定量した。
(3−1)カルシウムの定量:
原料、アパタイト原料液あるいはアパタイト0.5gを白金皿に秤量し、500℃電気炉で炭化する。冷却後、塩酸5mlおよび純水5mlを加えヒーター上で煮沸溶解する。再び冷却し、純水を加え500mlとした。装置はThermo Jarrell Ash製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、波長317.933nmにて定量した。
(3−2)リンの定量:
原料、アパタイト原料液あるいはアパタイト0.5gを秤量し濃硫酸を20ml加え、ヒーター上で湿式分解した。冷却後、過酸化水素5mlを加え、ヒーター上で加熱し、全量が2〜3mlになるまで濃縮した。再び冷却し、純水で500mlとした。装置はThermo Jarrell Ash製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、波長213.618(nm)にて定量した。
(4)広角X線回折
測定条件は以下のとおりである。
X線:銅Kα
波数:0.1542nm
管電圧:40KV
管電流:200mA
走査速度:4deg./min
発散スリット:1deg.
散乱スリット:1deg.
受光スリット:0.15mm
(5)透過型電子顕微鏡(TEM)観察
成形品を用いて、Reichert−Nissei製クライオミクロトームを用いて約50nmの超薄切片を作成した。透過型電子顕微鏡(TEM)観察は、日立製作所(株)製HF−2000用いて、5.0万倍の明視野像を撮影し、100個の粒子を任意に選択して、アパタイトの平均厚みおよび平均アスペクト比を求めた。
(6)樹脂組成物の物性
射出成形機(日精樹脂(株)PS40E)を用いて物性評価用の成形品を作成した。
(6−1)曲げ弾性率(Gpa)および曲げ強度(Mpa)
ASTM D790に準じて行った。
(6−2)引張り強度(Mpa)および引張り伸度(%)
ASTM D638に準じて行った。
(6−3)ノッチ付きIzod衝撃強度(J/m)
ASTM D256に準じて行った。
(6−4)荷重たわみ温度(℃)
ASTM D648に準じて行った。
(6−5)表面外観
堀場製ハンディー光沢計IG320を用いて、JIS K7150に準じて60°グロスを測定した。
(6−6)線膨張係数
Perkin−Elmer社製TMA−7を用いて、5.00℃/minの昇温速度で測定し、−23〜80℃の温度範囲で測定した。
(6−7)リワーク性
成形品(初期成形品)を粉砕機により粉砕し、得られた粉砕品を用いて成形を行った。この操作を更に4回繰り返し、最終的に得られた成形品(リワーク品)の引張り強度を測定し、
(リワーク品の引張強度)/(初期成形品の引張強度)
の引張強度保持率で比較した。
[リン酸八カルシウム化合物の製造例]
(製造例1−1)
リン酸水素カルシウム二水和物240.0g(1.395モル)と炭酸カルシウム46.6g(0.466モル)を蒸留水8000mlに加えた。この縣濁液を300rpmで攪拌しながら50℃に加熱し、この状態を8時間保持した。その後、攪拌、加熱を止め、白色縣濁液を濾過、蒸留水による洗浄を十分な回数繰り返し行った後、40℃にて乾燥し、リン酸八カルシウム化合物粉末(1)を得た。評価結果を表1に示す。
(製造例1−2)
α−リン酸三カルシウム80.0g(0.258モル)を0.25Mの酢酸ナトリウム水溶液4000mlに加えた。この縣濁液を300rpmで攪拌しながら50℃に加熱し、この状態を8時間保持した。その後、攪拌、加熱を止め、白色縣濁液を濾過、蒸留水による洗浄を十分な回数繰り返し行った後、40℃にて乾燥し、リン酸八カルシウム化合物粉末(2)を得た。評価結果を表1に示す。
板状アパタイトの製造例
(製造例2−1)
製造例1−1で得たリン酸八カルシウム化合物粉末(1)100.0gを蒸留水2000mlに加え、この縣濁液を300rpmで攪拌しながら60℃に加熱し、この状態を8時間保持した。その後、攪拌、加熱を止め、白色縣濁液を濾過、蒸留水による洗浄を十分な回数繰り返し行った後、80℃にて乾燥し、白色粉末を得た。評価結果を表2に示す。
(製造例2−2)
製造例1−2で得たリン酸八カルシウム化合物粉末(2)を用いた以外は製造例2−1と同様に実施した。評価結果を表2に示す。
(製造例2−3)
製造例1−1で得たリン酸八カルシウム化合物粉末(1)100.0gを蒸留水2000mlに加え原料液とした。その後、攪拌装置を有する5Lオートクレーブ中に原料液を入れ、300rpmで攪拌しながら、窒素で十分置換した後、220℃に昇温した。この時の圧力は2.5MPaであった。この状態を2時間保持し、水熱合成を行った。その後、加熱をやめ室温まで冷却し、攪拌装置を停止し、白色縣濁液を抜き出した。得られた白色縣濁液を濾過、蒸留水による洗浄を十分な回数繰り返し行った後、80℃にて乾燥し、白色粉末を得た。評価結果を表2に示す。
(製造例2−4)
製造例1−1で得たリン酸八カルシウム化合物粉末(1)100.0g、ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸の等モル塩5.0g(19.1ミリモル)を蒸留水2000mlに加えた。以後の操作は製造例2−1と同様に行い、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の少なくともいずれかが付着した白色粉末を得た。評価結果を表2に示す。
(製造例2−5)
製造例1−1で得たリン酸八カルシウム化合物粉末(1)100.0gをるつぼに入れて、酸素雰囲気下、180℃のオーブンに1時間保持した。その後、めのう乳鉢にて粉砕した。評価結果を表2に示す。
[実施例1]
ポリアミド66(旭化成(株)製:レオナ(登録商標)1300)100質量部に対して、製造例2−1の板状アパタイト(2−1)を10質量部になるように混合し、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35)を用いて、溶融混練し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の評価結果を表3に示す。
[実施例2]
ポリアミド66(旭化成(株)製:レオナ(登録商標)1300)100質量部に対して、製造例2−4で得た板状アパタイト(2−4)を10質量部になるように混合し、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35)を用いて、溶融混練し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の評価結果を表3に示す。
[実施例3]
ポリアミド66(旭化成(株)製:レオナ(登録商標)1300)100質量部に対して、製造例2−5の板状アパタイト(2−5)を10質量部になるように混合し、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35)を用いて、溶融混練し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の評価結果を表3に示す。
[実施例4]
ポリアミド66(旭化成(株)製:レオナ(登録商標)1300)100質量部に対して、製造例2−1の板状アパタイト(2−1)を50質量部になるように混合し、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35)を用いて、溶融混練し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の評価結果を表3に示す。
[実施例5]
ポリアミド66(旭化成(株)製:レオナ(登録商標)1300)100質量部に対して、製造例2−1の板状アパタイト(2−1)を10質量部になるように混合し、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35)を用いて、溶融混練し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の評価結果を表3に示す。
[比較例1]
実施例1から5で用いたポリアミド66(旭化成(株)製:レオナ(登録商標)1300)を評価した。評価結果を表3に示す。
[比較例2]
ポリアミド66(旭化成(株)製:レオナ(登録商標)1300)100質量部に対して、太平化学産業(株)製ヒドロキシアパタイトHAP−200(平均径(d)0.4ミクロン、平均長(L)2ミクロンの六角柱状結晶、平均アスペクト比(L/d)=5)を10質量部になるように混合し、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35)を用いて、溶融混練し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の評価結果を表3に示す。
[実施例6]
ポリフェニレンエーテル(旭化成(株)製:ザイロン(登録商標)500H)100質量部に対して、製造例2−1の板状アパタイト(2−1)を10質量部になるように混合し、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35)を用いて、溶融混練し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の評価結果を表4に示す。
[実施例7]
ポリオキシメチレン(旭化成(株)製:テナック(登録商標)C4520)100質量部に対して、製造例2−1の板状アパタイト(2−1)を10質量部になるように混合し、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35)を用いて、溶融混練し、樹脂組成物を得た。評価結果を表4に示す。
[実施例8]
ポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製:トレコン(登録商標)1401−X34)100質量部に対して、製造例2−1の板状アパタイト(2−1)を10質量部になるように混合し、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35)を用いて、溶融混練し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の評価結果を表4に示す。
[実施例9]
ポリトリメチルテレフタレート(シェル社製:CP−BR)100質量部に対して、製造例2−1の板状アパタイト(2−1)を10質量部になるように混合し、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35)を用いて、溶融混練し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の評価結果を表4に示す。
[比較例3]
実施例6で用いた、ポリフェニレンエーテルを評価した。この樹脂の評価結果を表5に示す。
[比較例4]
実施例7で用いた、ポリオキシメチレンを評価した。この樹脂の評価結果を表5に示す。
[比較例5]
実施例8で用いた、ポリブチレンテレフタレートを評価した。この樹脂の評価結果を表5に示す。
[比較例6]
実施例9で用いた、ポリトリメチルテレフタレートを評価した。この樹脂の評価結果を表5に示す。
[実施例10]
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンの等モル固体塩1.5Kg、純水1.5Kg、純水200gに懸濁させた製造例2−1で得た板状アパタイト65.0gを、5Lのオートクレーブ中に仕込みよく攪拌した。充分に窒素で置換した後、温度を室温から220℃まで昇温した。この際、オートクレーブ内の圧力は、ゲージ圧にして18Kg/cmになるが、圧力が18Kg/cm以上にならないよう水を系外に除去しながら加熱を1時間続けた。その後、内温が270度に達した時点で水を系外に除去しながら1時間かけて大気圧まで圧力を下げ、その後加熱を止め、系を密封してから室温まで冷却した。オートクレーブを開け、約1.5Kgのポリマーを取出し、粉砕機により粉砕した。こうして得られたポリアミド樹脂組成物は、粉砕品、射出成形品として評価した。評価結果を表6に示す。
[実施例11]
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンの等モル固体塩1.5Kg、純水1.5Kg、純水200gに懸濁させた製造例2−4で得た板状アパタイト65.0gを、5Lのオートクレーブ中に仕込みよく攪拌した。以後の操作は実施例10と同様に行った。評価結果を表6に示す。
[比較例7]
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンの等モル固体塩1.5Kg、純水1.5Kg、純水200gに懸濁させた太平化学産業(株)製ヒドロキシアパタイトHAP−200(平均径(d)0.4ミクロン、平均長(L)2ミクロンの六角柱状結晶、平均アスペクト比(L/d)=5)65.0gを、5Lのオートクレーブ中に仕込みよく攪拌した。以後の操作は実施例10と同様に行った。評価結果を表6に示す。
[実施例12]
ポリアミド66(旭化成(株)製:レオナ(登録商標)1300)100質量部に対して製造例2−1で得た板状アパタイト10質量部とガラス短繊維(旭ファイバーガラス(株)製:JA416)15質量部を二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35)を用いてシリンダー温度290℃、回転数250rpm、レート40Kg/hで溶融混練し、樹脂組成物を得た。なお、板状アパタイト、ガラス短繊維はサイドフィーダーより投入した。得られた樹脂組成物の評価結果を表7に示す。
[実施例13]
実施例1で得た、製造例2−1で得た板状アパタイトをあらかじめ溶融混練したポリアミド樹脂組成物100質量部に対してガラス短繊維(旭ファイバーガラス(株)製:JA416)15質量部を二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35)を用いてシリンダー温度290℃、回転数250rpm、レート40Kg/hで溶融混練し、樹脂組成物を得た。なお、ガラス短繊維はサイドフィーダーより投入した。得られた樹脂組成物の評価結果を表7に示す。
[実施例14]
ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩10.5Kgとヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の等モル塩4.5kgと純水20Kgを70Lのオートクレーブ中に仕込みよく攪拌した。充分に窒素で置換した後、温度を室温から220℃まで昇温した。この際、オートクレーブ内の圧力は、ゲージ圧にして18Kg/cmになるが、圧力が18Kg/cm以上にならないよう水を系外に除去しながら加熱を1時間続けた。その後、内温が270度に達した時点で水を系外に除去しながら1時間かけて大気圧まで圧力を下げ、その後加熱を止め、下部ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷、カッティングを行い、ポリアミド66/ポリアミド6Iを得た。GPCによる数平均分子量は10500であった。合成したポリアミド66/ポリアミド6I、100質量部に対して製造例2−1で得た板状アパタイト10質量部とガラス短繊維(旭ファイバーガラス(株)製:JA416)50質量部を二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35)を用いてシリンダー温度290℃、回転数250rpm、レート40Kg/hで溶融混練し、樹脂組成物を得た。なお、板状アパタイト、ガラス短繊維はサイドフィーダーより投入した。得られた樹脂組成物の評価結果を表7に示す。
[比較例8]
ポリアミド66(旭化成(株)製:レオナ(登録商標)1300)100質量部に対してガラス短繊維(旭ファイバーガラス(株)製:JA416)15質量部を二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35)を用いてシリンダー温度290℃、回転数250rpm、レート40Kg/hで溶融混練し、樹脂組成物を得た。なお、ガラス短繊維はサイドフィーダーより投入した。得られた樹脂組成物の評価結果を表7に示す。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
Figure 2007056275
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本発明の樹脂組成物から得られる成形体は、強度、剛性、耐熱性が高く、靱性に優れ、またウエルド強度保持率、寸法特性、表面外観、リワーク性に優れるため、包装・容器等の汎用的消費分野や、自動車分野、電気・電子分野、機械・工業分野、事務機器分野、航空・宇宙分野等の各種部品等への応用が期待される。

Claims (18)

  1. 樹脂および板状アパタイトから成る樹脂組成物であって、得られた該樹脂組成物中に存在する該アパタイトがリン(P)と、カルシウム(Ca)およびカルシウム以外の金属(X)のモル比(Ca+X)/Pが1.41〜1.61であり、その平均厚み(d)が100nm以下、かつ、該平均厚み(d)と平均長さ(L)との比である平均アスペクト比(L/d)が5以上の粒子形状で該樹脂組成物中に存在することを特徴とする板状アパタイト強化樹脂組成物。
  2. 平均アスペクト比(L/d)が20以上の粒子形状で該樹脂組成物中に存在することを特徴とする請求の範囲第1項に記載の板状アパタイト強化樹脂組成物。
  3. 板状アパタイトを構成するカルシウム(Ca)およびカルシウム以外の金属(X)とカルシウム(Ca)のモル比Ca/(Ca+X)は、好ましくは0.80〜1.00であることを特徴とする請求の範囲第1又は第2項に記載の板状アパタイト強化樹脂組成物。
  4. 板状アパタイトが、リン酸八カルシウム化合物を40℃〜400℃で加熱処理して得られることを特徴とする請求の範囲第1項から第4項のいずれかに記載の板状アパタイト強化樹脂組成物。
  5. 樹脂が、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ゴムのいずれかから選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求の範囲第1項から第4項のいずれかに記載の板状アパタイト強化樹脂組成物。
  6. 樹脂および板状アパタイトとを溶融混練法により配合し得られることを特徴とする請求の範囲第5項に記載の板状アパタイト強化ポリアミド樹脂組成物。
  7. 樹脂原料と板状アパタイトとを配合し樹脂の重合し得られることを特徴とする請求の範囲第5項に記載の板状アパタイト強化ポリアミド樹脂組成物。
  8. 樹脂がポリアミド樹脂であることを特徴とする請求の範囲第6項に記載の板状アパタイト強化樹脂組成物。
  9. 樹脂原料がポリアミド原料であることを特徴とする請求の範囲第7項に記載の板状アパタイト強化樹脂組成物。
  10. 樹脂と、リン(P)と、カルシウム(Ca)およびカルシウム以外の金属(X)のモル比(Ca+X)/Pが1.41〜1.61であり、平均厚み(d)が100nm以下であり、かつ、該平均厚み(d)と平均長さ(L)との比である平均アスペクト比(L/d)が5以上である板状アパタイトとを配合して得られることを特徴とする板状アパタイト強化樹脂組成物の製造方法。
  11. 平均アスペクト比(L/d)が20以上の粒子形状で該樹脂組成物中に存在することを特徴とする請求の範囲第10項に記載の板状アパタイト強化樹脂組成物。
  12. 板状アパタイトを構成するカルシウム(Ca)およびカルシウム以外の金属(X)とカルシウム(Ca)のモル比Ca/(Ca+X)は、好ましくは0.80〜1.00であることを特徴とする請求の範囲第10項又は第11項に記載の板状アパタイト強化樹脂組成物の製造方法。
  13. 板状アパタイトが、リン酸八カルシウム化合物を40℃〜400℃で加熱処理して得られることを特徴とする請求の範囲第10項から第12項のいずれかに記載の板状アパタイト強化樹脂組成物の製造方法。
  14. 樹脂が、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ゴムのいずれかから選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求の範囲第10項から第13項のいずれかに記載の板状アパタイト強化樹脂組成物の製造方法。
  15. 樹脂および板状アパタイトとを溶融混練法により配合することを特徴とする請求の範囲第14項に記載の板状アパタイト強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
  16. 樹脂原料と板状アパタイトとを配合し樹脂の重合することを特徴とする請求の範囲第14項に記載の板状アパタイト強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
  17. 樹脂がポリアミド樹脂であることを特徴とする請求の範囲第15項に記載の板状アパタイト強化樹脂組成物の製造方法。
  18. 樹脂原料がポリアミド原料であることを特徴とする請求の範囲第16項に記載の板状アパタイト強化樹脂組成物の製造方法。
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