JP4076776B2 - 樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、様々な機械工業分野、電気電子分野における摺動部品としての強度、剛性に優れ、また低摩擦、低磨耗性であり、かつ疲労特性に優れる摺動部品用ポリアミド樹脂組成物および製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミド樹脂はその優れた強度、剛性、靭性、耐熱性のため、様々な機械工業部品や電気電子部品に利用されている。近年、エネルギー問題の観点からこれらポリアミド樹脂の高寿命化が望まれている。例えば、摺動性部品の一つである歯車やシュー、ガイドレールなどは部品の軽量化の目的で樹脂化が進んでいるが、高寿命化のためには強度、剛性に優れ、低摩擦、低磨耗性であり、かつ良好な疲労特性を有する材料であることが必要とされている。
【0003】
従来技術では、低摩擦、低磨耗性を発現させるために、ポリアミド樹脂にガラス繊維などの無機フィラーを配合することが行われてる。例えば特公平6−60674号公報では、樹脂としてナイロン66、ナイロン6等を用い、これに強度・剛性を向上するためにガラス繊維や炭素繊維などを充填して強化した材料を射出成形し、ギアの歯部を切削加工して形成した樹脂製ギアが開示されている。しかしながら比重が増加し、樹脂化による軽量化の利点が薄いという問題点があった。さらにフィラーで強化されているために切削工具の摩耗が著しいという問題もあった。またリワーク性が悪いためにリサイクルの観点から上記方法は必ずしも好ましい手段とはいえなかった。
【0004】
一方では、ポリアミド樹脂に対してシリコーン樹脂やオレフィン樹脂などさまざまな有機系の摺動性改良剤を添加して低摩擦、低摩耗性を達成することが行われてきたが、耐熱性を減少させたり、樹脂同士のなみじが十分でなく、機械的特性、とくに引っ張り強度や伸び特性を低下させたり、高荷重雰囲気下での部品では亀裂の原因となり、部品としての寿命が短い場合があった。そこで特開昭61−174259号公報には、ポリアミド樹脂ペレット表面にステアリン酸カルシウムをまぶした後、成形する、耐磨耗性にすぐれたポリアミド樹脂成形体の製造方法が開示されている。しかしながら部品の寸法精度が要求されるギアにおいては、成形品を切削して精度をあわせることがあり、該方法では成形品表面を切削してしまうと耐磨耗性の改良効果が薄くなるという問題点があった。
【0005】
さらに、特開平11−270655号公報には、結晶性ポリマーの成型品の結晶モルフォロジーを均一にすることによって耐磨耗性、良好な疲労特性を有する合成樹脂歯車が開示された。該結晶モルフォロジーを均一にする方法としては、無機、有機系の添加剤を添加する方法や、成型時に振動エネルギーを付与しながら成型する方法が開示されているが、当発明者らの検討によると無機、有機系の添加剤では成型の型によっては結晶モルフォロジーの均一化が不十分となり、良好な疲労特性が得られなかったり、また振動エネルギーを付与する場合には新たな装置が必要となり汎用性に低い問題点があった。
以上のような問題から、摺動部品として低比重で、高寿命化につながる低摩耗、低摩擦であり、疲労特性に優れたポリアミド樹脂が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の問題点を解決しうる、強度、剛性に優れ、また低摩擦、低磨耗性であり、かつ疲労特性に優れる摺動部品用ポリアミド樹脂組成物および製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、(A)ポリアミド樹脂と(B)アパタイト化合物かならなる(C)ポリアミド樹脂組成物と、(D)高級脂肪酸の金属塩および/または(E)高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル化合物を溶融混練して得られる、(F)98%硫酸相対粘度(1g/100ml)ηrが1.5以上3.5未満のポリアミド樹脂組成物を用いて、さらに重合を進めることによって得られる、ηrが3.5以上6.0以下のポリアミド樹脂組成物が上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
1.(A)ポリアミド樹脂と(B)アパタイト化合物からなる(C)ポリアミド樹脂組成物と、(D)高級脂肪酸の金属塩および(E)高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種を溶融混練して得られる、(F)98%硫酸相対粘度(1g/100ml)ηrが1.5以上3.5未満のポリアミド樹脂組成物を用いて、さらに重合を進めることによって得られるポリアミド樹脂組成物であって、該組成物のηrが3.5以上6.0以下であることを特徴とする摺動部品用ポリアミド樹脂組成物、
2.(F)98%硫酸相対粘度(1g/100ml)ηrが1.5以上3.5未満のポリアミド樹脂組成物において、ポリアミド100質量部に対して(C)高級脂肪酸の金属塩および(D)高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種が0.01から5質量部溶融混練されていることを特徴とする上記1記載の摺動部品用ポリアミド樹脂組成物、
3.上記1から2いずれか記載のポリアミド樹脂組成物を成形加工することによって得られることを特徴とするポリアミド製摺動部品、
である。
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、強度、剛性に優れ、また低摩擦、低磨耗性であり、かつ疲労特性に優れる摺動部品用ポリアミド樹脂組成物およびその製造方法に関するものである。
本発明で用いられる(A)ポリアミド樹脂とは公知のポリアミド樹脂であれば特に限定されない。例えば、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリウンデカラクタム(ナイロン11)、ポリドデカラクタム(ナイロン12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロンTMHT)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド(9T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(6T)である。
【0010】
また、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3−メチル−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ナイロン11T(H))、およびこれらのうち少なくとも2種の異なったポリアミド形成成分を含むポリアミド共重合体、およびこれらの混合物などである。
これらのポリアミドのうち、製造コストの観点から好ましいポリアミドは、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、およびこれらのうち少なくとも2種の異なったポリアミド形成成分を含むポリアミド共重合体、およびこれらの混合物などをあげることができる。
【0011】
上記ポリアミドの原料としては特に限定されるものではなく、公知のアミノ酸、ラクタム、及びジアミンとジカルボン酸とからなる塩及びそのオリゴマーを挙げることができる。
上記ポリアミドの原料には、さらに分子量調節や耐熱水性向上のために末端封止剤を添加することができる。末端封止剤としては、モノカルボン酸又はモノアミンが好ましい。その他、無水フタル酸などの酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類などを挙げることができる。
【0012】
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸などを挙げることができる。本発明では、これらのモノカルボン酸を1種用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
末端封止剤として使用するモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミンなどの脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどの脂環式モノアミンが挙げられる。
また、アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミンなどの芳香族モノアミンなどを挙げることができる。本発明では、これらのモノアミンを1種用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記ポリアミドの製造方法は特に限定されるものではなく、製造方法として一般的である溶融重合法を用いることができ、例えば、バッチ式重合法、連続式重合法をあげることができる。
【0014】
本発明で用いられる(B)アパタイト化合物とは下記一般式で表される。
(Ca、X)10 Z(HPO4Z(PO46 Z(Y)2 Z・nH2
式中、0≦z<1、0≦n≦16であり、(X)はカルシウム以外の金属元素、(Y)は陰イオン又は陰イオン化合物である。また、0≦z<0.5、0≦n≦4である。Xとしては、元素周期律表の1、2(カルシウムを除く)、3、4、5、6、7、8、11、12、13族元素及びこれらの少なくとも一種とスズ、鉛などとの混合物などが挙げられる。
【0015】
上記アパタイト化合物の結晶は、広角X線回折測定を行うと、2θで約25.9、31.7および32.6(度)にピークが観測され、それぞれ(002)、(211)および(300)面に帰属される。
また一般的なアパタイトと呼ばれる化合物では、リン(P)とカルシウム(Ca)およびカルシウム以外の金属(X)のモル比((Ca+X)/P)は理論値としては1.67であるが、この理論値からはずれた金属欠陥型またはリン欠陥型アパタイトの存在が知られている。上記金属欠陥型またはリン欠陥型アパタイトは広角X線回折測定によってアパタイトと同様の構造をとることが確認されている。
【0016】
本発明の(B)アパタイト化合物においても、金属欠陥型またはリン欠陥型アパタイトであってもよい。具体的には、((Ca+X)/P)は、好ましくは1.51〜1.75であり、さらに好ましくは1.53〜1.70であり、最も好ましくは1.55〜1.68である。リン(P)とカルシウム(Ca)およびカルシウム以外の金属(X)のモル比は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析を用いて求めることができる。(Ca+X)/P比が上記範囲内であれば、アパタイトの結晶性が低下して、樹脂組成物の機械的特性が低下する傾向を抑えることができる。
【0017】
また一般式中の(Y)で示される陰イオン又は陰イオン化合物としては、水酸イオン(OH)、フッ素イオン(F)、塩素イオン(Cl)などを挙げることができる。これら陰イオン元素又は陰イオン化合物は1種であっても、2種以上であってもよい。また、前記式中のリン酸水素イオン(HPO4 2 )、リン酸イオン(PO4 3 )、又は(Y)の一部が炭酸イオン(CO3 2 )に置換した炭酸含有アパタイトであってもよい。
【0018】
本発明で用いられる(B)アパタイト化合物では、上記一般式のうち、カルシウム以外の金属元素としては、2族元素であるマグネシウム、ストロンチウム、バリウム、銅、鉄、又はこれらの2種以上からなる混合物があってもかまわない。さらに金属元素中のカルシウムの割合は70mol%以上から100mol%、好ましくは80mol%以上から100mol%、もっとも好ましくは85mol%以上から100mol%であれば結晶性の良い、微細なアパタイトとなる傾向にある。
【0019】
本発明で用いられる(B)アパタイト化合物のうち、一般式中の(Y)で示される陰イオン又は陰イオン化合物としては、特に限定されないが、樹脂とのなじみの観点から、水酸アパタイト((Y)が水酸イオン)、フッ素化アパタイト((Y)の一部又は全部がフッ素イオン)、塩素化アパタイト((Y)の一部又は全部が塩素イオン)、炭酸含有水酸アパタイト、炭酸含有フッ素化アパタイト、炭酸含有塩素化アパタイト、さらには、これらの混合物が最も好ましく用いられる。
【0020】
該アパタイト化合物の原料は、リン酸系化合物と非リン酸系金属化合物、リン酸系金属化合物や、リン酸系金属化合物と非リン酸系金属化合物とからなる混合物などを挙げることができるが、リン酸系金属化合物と非リン酸系金属化合物とからなる混合物を用いるのが製造コストや西方の容易さからいってより好ましい。ここで、リンに対するカルシウムおよびカルシウム以外の金属元素のモル比が好ましくは1.51〜1.75、さらに好ましくは1.53〜1.70、最も好ましくは1.55〜1.68の範囲のリン酸系金属化合物と非リン酸金属化合物とからなる混合物を原料として用いるのが最も好ましい。上記範囲内であれば、生成するアパタイトは微細でかつ球状に近い結晶となり、樹脂組成物の摺動特性により優れる傾向にある。
【0021】
本発明で用いられる上記リン酸系金属化合物としては、リン酸一水素カルシウム (CaHPO4)、リン酸一水素カルシウム二水和物 (CaHPO4・2H2O)、二リン酸二水素カルシウム (CaH227)、リン酸二水素カルシウム一水和物 (Ca(H2PO42・H2O)、二リン酸カルシウム (α−およびβ−Ca227)、リン酸三カルシウム (α−およびβ−Ca3(PO42)、リン酸四カルシウム(Ca4(PO42O)、リン酸八カルシウム五水和物(Ca22(PO46・5H2O)、亜リン酸カルシウム一水和物(CaHPO3・H2O)、次亜リン酸カルシウム(Ca(H2PO22)、リン酸マグネシウム第二・三水和物(MgHPO4・3H2O)、リン酸マグネシウム第三・八水和物(Mg3(PO42・8H2O)、リン酸バリウム第二(BaHPO4)などを挙げることができる。
【0022】
この中でも、経済性、および短時間で容易にアパタイト結晶を製造することができる観点から、本発明では、リン酸一水素カルシウム(CaHPO4)およびリン酸一水素カルシウム二水和物(CaHPO4・2H2O)が特に好ましく用いられる。これらの原料は、1種で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。2種以上組み合わせる場合には、例えば、リン酸一水素カルシウム二水和物(CaHPO4・2H2O)と二リン酸二水素カルシウム(CaH227)とを用いるように、同種の金属元素を含有する原料の組み合わせや、リン酸一水素カルシウム二水和物(CaHPO4・2H2O)とリン酸マグネシウム第二・三水和物(MgHPO4・3H2O)とを用いるように、異種の金属元素を含有する原料の組み合わせなどが例示されるが、いずれでも差し支えない。
【0023】
本発明で用いられる上記非リン酸系金属化合物としては、リン酸系以外で金属元素と化合物を形成するものであれば特に限定されるものではなく、金属水酸化物(水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウムなど)、金属塩化物(塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アルミニウム、塩化鉄(二価、三価)など)を挙げることができる。
【0024】
また、金属フッ化物(フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化バリウム、フッ化ストロンチウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アルミニウムなど)、金属臭化物(臭化カルシウムなど)、金属ヨウ化物(ヨウ化カルシウムなど)、金属炭化物(炭化カルシウムなど)、金属酸化物(酸化カルシウムなど)、炭酸金属塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アルミニウムなど)、硫酸金属塩(硫酸カルシウムなど)、硝酸金属塩(硝酸カルシ ウムなど)、ケイ酸金属塩(ケイ酸カルシウムなど)などの無機金属化合物が挙げられる。
【0025】
また、金属元素とモノカルボン酸との 化合物(酢酸カルシウム、安息香酸カルシウム、ステアリン酸カルシウムなど)、金属元素とジカルボン酸との化合物(しゅう酸カルシウム、酒石酸カルシウムなど)、金属元素とトリカルボン酸との化合物(クエン酸 カルシウムなど)などを挙げることができる。これら原料は、1種で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。2種以上組み合わせる場合には、例えば水酸化カルシウムと炭酸カルシウムとの混合物のように、同種の金属元素を含有する化合物を組み合わせても良いし、例えば、炭酸カルシウムと水酸化マグネシウムとの混合物のように、異種の金属元素を含有する化合物を組み合わせても良い。
【0026】
本発明では、これら化合物の中でも、経済性および複合体の機械的物性がより優れていることから、金属水酸化物、金属フッ化物、金属塩化物および炭酸金属塩、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。特に2族元素であるカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムの水酸化物、フッ化物、塩化物および炭酸塩、あるいはこれらの混合物がより好ましく、その中でもカルシウムの水酸化物、フッ化物、塩化物および炭酸塩、あるいはこれらの混合物が最も好ましく用いられる。
【0027】
本発明で用いられるアパタイトの原料であるリン酸系金属化合物や非リン酸系金属化合物は、平均粒径にして100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは25μm以下のものを用いるのが良い。平均粒径の測定は、純水中に分散させた原料をレーザ回折/散乱式粒度分布装置などを用いて導出する方法によれば良い。
該アパタイト化合物の合成方法は特に限定されないが、例えば水熱合成法をあげることができる。具体的にはアパタイト化合物の原料をオートクレーブなどの反応容器に封入し、水溶媒を加え、窒素などの不活性ガスで置換したあと、密閉状態で前記温度条件下、飽和水蒸気圧程度の圧力条件下で行う方法や、あるいは水熱合成中に、反応容器から水あるいは親水性溶媒を抜き出し、飽和水蒸気圧より低い圧力で行う方法や、これらを組み合わせた方法などを用いることができる。
【0028】
本発明で用いられる水熱合成を行う装置は、オートクレーブなどの耐圧反応容器を用いることができ、特に限定されるものではない。中でも針状アパタイト粒子を得るといった観点から、攪拌装置を装備しているオートクレーブ型反応容器が最も好ましい。
本発明で用いられる(C)ポリアミド樹脂とは、前記(A)と前記(B)からなるポリアミド樹脂であれば特に限定されないが、ポリアミド中にアパタイト化合物が均一に分散していることが好ましい。さらに好ましくは、分散しているアパタイト化合物の粒径は1μm以下であり、より好ましくは0.3μm以下、最も好ましくは0.1μm以下である。上記範囲内であれば機械的特性、摺動特性に特に優れる傾向にある。
【0029】
ここで、アパタイト化合部の分散状態は、ポリアミド樹脂の成形品の薄片をミクロトームなどによって切り出し、アパタイト粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)(写真倍率5.0万倍)により観察して最低100個の粒子を任意に選択し、各粒子について、その最大長を測定し、数平均から求めることができる。
ここで、(C)ポリアミド樹脂におけるアパタイト化合物の含有量は好ましくはポリアミド100質量部に対して、0.01から100質量部であり、さらに好ましくは0.1から50質量部であり、最も好ましくは1から20質量部である。上記範囲内であれば摺動特性や疲労特性に特に優れ、また成型時の流動性を落とす傾向を避けることができる。該質量比は(C)のペレットや成形品などをJISR3420に従って強熱減量(Ig.loss)を測定し、その質量減少量から求めることができる。例えば、ペレットを十分乾燥した後、白金皿に約1g秤量し、650±20℃の電気炉で灰化し、冷却後、その質量を秤り、アパタイト化合物の含有量を定量する。
【0030】
本発明の(C)ポリアミド樹脂の製造方法は、例えばポリアミドにアパタイト化合物を溶融混練する方法、ポリアミド原料にアパタイト化合物を添加して重合する方法などをあげることができるが、微細で、均一にアパタイト化合物が分散したポリアミド樹脂組成物を得るといった観点から、ポリアミド原料とアパタイト化合物の原料を配合し、次いでポリアミドの重合およびアパタイト化合物の合成を同時に行うのが好ましい方法である。
【0031】
該製造方法において、ポリアミドの原料とアパタイト化合物の原料の混合方法は特に限定されるものではなく、ポリアミド、アパタイト化合物の各原料となる固形成分を混合し水系溶媒に投入する方法や各原料を予め水溶媒でスラリー化して互いに混合する方法などをあげることができる。その際、ポリアミドとアパタイト化合物の各原料成分の質量比は、ポリアミド原料100質量部に対して、アパタイト化合物0.01から100質量部であることが好ましく、さらに0.1から50質量部であることが好ましく、1から20質量部であることが最も好ましい。上記範囲内であれば、ポリアミドの重合が進行しにくくなる傾向を抑えると共に、押出や成形加工が困難になるなどの問題を抑えることができる。
【0032】
前記ポリアミドの重合方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。その際、アパタイト原料も同時に加熱され、そのままアパタイトの水熱合成条件下となり、アパタイト化合物が良分散したポリアミド樹脂を得ることができる。
ポリアミドの重合の例としては、11−アミノウンデカン酸などの水に難溶な成分を原料とし、200から290℃で加熱し重縮合する方法、ε−カプロラクタム水溶液を原料とし、必要に応じてモノカルボン酸などの末端封鎖剤、あるいはε−アミノカプロン酸などの反応促進剤を加えて、不活性ガスを流通させながら、200から290℃に加熱し重縮合するラクタム類の開環重縮合法、ヘキサメチレンアジパミド水溶液などのジアミン成分とジカルボン酸成分との塩水溶液を原料とし、200から290℃に加熱濃縮し、発生する水蒸気圧を10から20気圧の間の適当な圧力に保ち、最終的には圧力を抜き、常圧あるいは減圧し重縮合を行う熱溶融重縮合法などを用いることができる。
【0033】
さらには、ジカルボン酸ハライド成分とジアミン成分とを溶液中で重縮合させる溶液法なども用いることができる。これらの方法は必要に応じて組合わせてもよい。また重合を更に進めるために、重縮合物の融点以下の温度で行う固相重合法を追加して行うこともできる。重合形態としては、バッチ式でも連続式でもよい。重合装置も特に制限されるものではなく、公知の装置、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、ニーダーなどの押出機型反応器などを用いることができる。
【0034】
本発明で用いられる(D)高級脂肪酸の金属塩とは、特に限定されないが、すぐれた摺動特性を示すためには好ましくは炭素数で10から30であるカルボン酸の金属塩である。具体的にはパルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸等のリチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩などをあげることができる。本発明ではこれら高級脂肪酸の金属塩を1種類で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0035】
本発明で用いられる(E)高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル化合物とは特に限定されないが、すぐれた摺動特性を示すためには好ましくは炭素数で10から30であるカルボン酸の金属塩と炭素数10から30である高級アルコールのエステル化合物である。具体的にはステアリン酸とステアリルアルコールのエステル化合物であるステアリルステアレートやベヘン酸とベヘニルアルコールのエステル化合物であるベヘニルベヘネートなどをあげることができる。本発明ではこれら高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル化合物を1種類で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0036】
本発明においては、(D)高級脂肪酸の金属塩と(E)高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル化合物をそれぞれ単独で用いたり、両者を併用して用いることもできる。
本発明で用いられる(F)98%硫酸相対粘度(1g/100ml)ηrが1.5以上3.5未満のポリアミド樹脂組成物とは、(A)ポリアミド樹脂と(B)アパタイト化合物かならなる(C)ポリアミド樹脂組成物と、(D)高級脂肪酸の金属塩および/または(E)高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル化合物を溶融混練して得られる。ここで、溶融混練とは、一般に実用されている混練機が適用できる。例えば、1軸押出機や2軸押出機、ロール、バンバリーミキサーなどを用いれば良い。
【0037】
本発明で用いられる前記(F)ポリアミド樹脂組成物において、ポリアミドに対する(D)高級脂肪酸の金属塩、および/または(E)高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル化合物の添加量はポリアミド100質量部に対して(D)および/または(E)が0.01から5質量部であり、さらに好ましくは0.05から3質量部であり、最も好ましくは0.1から2質量部である。上記範囲内であれば、その後に行う追加の重合において、重合度があがりづらくなる傾向を避けることができ、また摺動性、疲労特性の観点からも好ましい。
【0038】
本発明の摺動部品用ポリアミド樹脂組成物は、前記(F)ポリアミド樹脂をさらに重合して得られる樹脂組成物であって、該組成物のηrが3.5以上6.0以下の樹脂組成物である。重合を進める際の方法は特に限定されないが、注入添加されている(D)および/または(E)がポリアミド中から抽出されないためにも、好ましくはポリアミドの融点以下で固相重合する方法をあげることができる。ここで、ηrが3.5以上6.0以下の範囲内であれば、疲労特性にすぐれた樹脂組成物であり、また粘度が高すぎて成形が困難となることを避けることができる。
【0039】
本発明の摺動部品用ポリアミド樹脂組成物には、さらなる摺動性改良を目的で(D)高級脂肪酸の金属塩および/または(E)高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル化合物を該樹脂組成物表面に付着させて使用することもできる。その際の(D)および/または(E)の添加量は特に限定されないが、好ましくは該樹脂組成物100質量部に対して、(D)および/または(E)0.01から0.3質量部であり、さらに好ましくは0.03から0.2質量部であり、最も好ましくは0.05から0.1質量部である。
【0040】
本発明の摺動部品用ポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で公知の重合触媒を添加することができる。例えば、リン酸、次亜リン酸塩、亜リン酸エステル、フェニルフォスホン酸などのリン化合物をあげることができる。
本発明の摺動部品用ポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、成形性改良剤を添加しても差し支えない。前記成形性改良剤は、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド化合物、ポリアルキレングリコールあるいはその末端変性物、低分子量ポリエチレンあるいは酸化低分子量ポリエチレン、置換ベンジリデンソルビトール、ポリシロキサン、カプロラクトン類、無機結晶核剤類からなる化合物類から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0041】
本発明の摺動部品用ポリアミド樹脂組成物には、更なる熱劣化、熱時の変色防止、耐熱エージング性、耐候性の向上を目的に、劣化抑制剤を添加しても差し支えない。前記劣化抑制剤は、酢酸銅やヨウ化銅などの銅化合物やヒンダードフェノール化合物などのフェノール系安定剤、ホスファイト系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、トリアジン系安定剤、イオウ系安定剤から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0042】
本発明の摺動部品用ポリアミド樹脂組成物には、着色剤を添加しても差し支えない。前記着色剤は、ニグロシンなどの染料、酸化チタンあるいはカーボンブラックなどの顔料、あるいはアルミニウム、着色アルミニウム、ニッケル、スズ、銅、金、銀、白金、酸化鉄、ステンレス、チタンなどの金属粒子、マイカ製パール顔料、カラーグラファイト、カラーガラス繊維、カラーガラスフレークなどのメタリック顔料などから選ばれる少なくとも1種の着色剤である。
【0043】
本発明の摺動部品用ポリアミド樹脂組成物には、導電性カーボンブラックを添加しても差し支えない。前記導電性カーボンブラックは、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブなどから選ばれる少なくとも1種のカーボンブラックであり、中でも良好な鎖状構造を有し凝集密度が大きいものが好ましい。
本発明の摺動部品用ポリアミド樹脂組成物には、難燃剤を配合してもさせても差し支えない。難燃剤は、非ハロゲン系難燃剤、あるいは臭素系難燃剤が好ましい。
【0044】
前記非ハロゲン系難燃剤は、赤リン、リン酸アンモニウム、あるいはポリリン酸アンモニウムなどのリン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化ジルコニウム、酸化スズ、錫酸亜鉛、ヒドロキシ錫酸亜鉛などの金属水酸化物あるいは無機金属化合物の水和物や、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウムなどのホウ酸化合物などの無機化合物系難燃剤である。
【0045】
また、メラミン、メラム、メレム、メロン(300℃以上でメレム3分子から3分子の脱アンモニアによる生成物)、メラミンシアヌレート、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、サクシノグアナミン、アジポグアナミン、メチルグルタログアナミン、メラミン樹脂などのトリアジン系難燃剤、シリコーン樹脂、シリコーンオイル、シリカなどのシリコーン系難燃剤から選ばれる少なくとも1種の難燃剤である。
【0046】
前記臭素系難燃剤は、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノール型エポキシ系重合体および臭素系架橋芳香族重合体からなる化合物類から選ばれる少なくとも1種の難燃剤である。
本発明の摺動部品用ポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、無機充填材を配合しても差し支えない。前記無機充填剤は、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、アパタイト、リン酸ナトリウム、蛍石、窒化珪素、チタン酸カリウム、二硫化モリブデンなどから選ばれる少なくとも1種の無機充填剤である。
【0047】
本発明の摺動部品用ポリアミド樹脂組成物は、各種成形加工性に優れるため、公知の成形方法、例えばプレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、発泡成形、溶融紡糸など、一般に知られているプラスチック成形方法を用いても、良好に成形加工ができる。
本発明の摺動部品用ポリアミド樹脂組成物は、強度、剛性に優れ、また低摩擦、低磨耗性であり、かつ疲労特性に優れるため、包装・容器などの汎用的消費分野や、自動車分野、電気・電子分野、機械・工業分野、事務機器分野、航空・宇宙分野などの各種部品、特にギア、歯車、シュー、ガイドレール、カムなどの摺動部品などへの応用が期待される。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例、比較例において記載した評価は、以下の方法により実施した。
(1)アパタイトおよびポリアミドからなるポリアミド樹脂組成物の性質
(1−1)アパタイト化合物の含有量(質量部/100質量部ポリアミド樹脂)
ポリアミド樹脂組成物を100±20℃で8時間乾燥し冷却する。白金皿に、乾燥した複合材料を1gとり、650±20℃の電気炉で灰化し、冷却後、その質量を秤り、アパタイト化合物の含有量を定量した。
【0049】
(1−2)カルシウムとリンとのモル比(Ca/P)
原料、アパタイト原料液あるいはアパタイトのカルシウムおよびリンを定量し、モル比を算出した。
(1−2−1)カルシウムの定量:
原料、アパタイト原料液あるいはアパタイト0.5gを白金皿に秤量し、500℃電気炉で炭化する。冷却後、塩酸5mlおよび純水5mlを加えヒーター上で煮沸溶解する。再び冷却し、純水を加え500mlとした。装置はThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、波長317.933nmにて定量した。
【0050】
(1−2−2)リンの定量:
原料、アパタイト原料液あるいはアパタイト0.5gを秤量し濃硫酸を20ml加え、ヒーター上で湿式分解した。冷却後、過酸化水素5mlを加え、ヒーター上で加熱し、全量が2〜3mlになるまで濃縮した。再び冷却し、純水で500mlとした。装置はThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、波長213.618(nm)にて定量した。
【0051】
(1−3)アパタイト化合部の定性分析:広角X線回折
測定条件は以下のとおりである。
X線:銅Kα
波数:0.1542nm
管電圧:40KV
管電流:200mA
走査速度:4deg./min
発散スリット:1deg.
散乱スリット:1deg.
受光スリット:0.15mm
【0052】
(2)硫酸相対粘度測定
98%濃硫酸100gに対してペレット状、もしくは成形品から切り出した樹脂組成物1.00gを溶解させ、JIS K6810に従って25℃にて測定した。
【0053】
(3)機械特性
射出成形機(日精樹脂(株)製PS40E)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃に設定し、射出14秒、冷却15秒の射出成形条件で評価用ダンベル片、短冊片を得た。
(3−1)曲げ弾性率(GPa)および曲げ強度(MPa)
ASTM D790に準じて行った。(23℃、50%湿度)
(3−2)引張り強度(MPa)および引張り伸度(%)
ASTM D638に準じて行った。(23℃、50%湿度)
(3−3)ノッチ付きIzod衝撃強度(J/m)
ASTM D256に準じて行った。(23℃、50%湿度)
【0054】
(4)摺動特性(摩擦係数、磨耗量の測定)
摩擦磨耗試験は、以下に記す(a)成形後のプレートと、(b)成形後、表面を切削した後のプレートの2種類で評価を行った。
(4−1)成形後のプレート
射出成形機(日精樹脂(株)製FN3000)を用いて、シリンダー温度290℃、金型温度80℃に設定し、射出14秒、冷却15秒の射出成形条件で評価用プレート(a×b×c=90mm×60mm×3mm)を得て、試験を行った。ここで、ab面は金型に接する面であり、試験はab面上で行った。
【0055】
(4−2)表面切削後のプレート
成形後のプレートをab表面から深さ100μmまでミクロトームにて切削し、その切削後の表面を使用して試験を行った。
摩擦磨耗試験は、東測精密工業(株)製ピン/プレート試験機AFT−15MSを用いて以下の条件で測定した。
ピン SUS314
往復速度 30mm/s
往復距離 20mm
荷重 0.20MPa
温度 25℃
湿度 50%
【0056】
(5)曲げ振動疲労試験
射出成形機(日精樹脂(株)製PS40E)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃に設定し、射出14秒、冷却15秒の射出成形条件で評価用type1曲げ振動疲労試験片を得た。
試験は定応力振動疲労試験機(東洋精機製作所製)を使用し、以下の条件で行った。
試験速度 1800回/分
設定応力 30、40、50MPa
温度23℃
湿度50%
【0057】
製造例1
ポリアミド樹脂組成物(I)の製造:
50質量%のポリアミド66の原料(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩)の水溶液を30Kg作製した。アパタイト化合物の原料として、平均粒子径3μmで最大粒子径10μm以下のリン酸一水素カルシウム二水和物(CaHPO4・2H2O)を750g、および平均粒子径1.5μm重質炭酸カルシウム(CaCO3)の25質量%懸濁液を1746g(炭酸カルシウム:純水=291g:873g)用いた。これら、ポリアミド66原料およびアパタイト化合物原料を混合し、十分撹拌した。カルシウムとリンとのモル比は、1.67と算出された。
【0058】
該ポリアミド66原料の水溶液とアパタイト化合物原料の混合懸濁液とを、撹拌装置を有し、かつ下部に抜出しノズルを有する70リットルのオートクレーブ中に仕込み、50℃の温度下、十分攪拌した。窒素で置換した後、撹拌しながら温度を50℃から約270℃まで昇温した。この際、オートクレーブ内の圧力は、ゲージ圧にして約1.77MPaになるが、圧力が1.77MPa以上にならないよう水を系外に除去しながら加熱を約1時間続けた。
その後、約1時間をかけ、圧力を大気圧まで降圧し、更に約270℃、大気圧で約1時間保持した後、撹拌を停止し、下部ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行い、ペレットを得た。このペレットの98%硫酸相対粘度(1g/100ml)ηrは3.0であった。
【0059】
製造例2
ポリアミド樹脂組成物(II)の製造:
アパタイト化合物原料として、平均粒子径3μmで最大粒子径10μm以下のリン酸一水素カルシウム二水和物(CaHPO4・2H2O)を750g、および平均粒子径1.5μm重質炭酸カルシウム(CaCO3)と、平均粒径3μmのフッ化カルシウム(CaF2)との混合物の25質量%懸濁液を1148g(炭酸カルシウム:フッ化カルシウム:純水=276g:11g:861g)を用いる以外は製造例1と同様にして、ポリアミド樹脂組成物(II)を得た。このペレットの98%硫酸相対粘度(1g/100ml)ηrは3.0であった。
【0060】
製造例3
ポリアミド樹脂組成物(III)の製造:
アパタイト化合物原料として、平均粒子径3μmで最大粒子径10μm以下のリン酸一水素カルシウム二水和物(CaHPO4・2H2O)を1500g、および平均粒子径1.5μm重質炭酸カルシウム(CaCO3)と、平均粒径3μmのフッ化カルシウム(CaF2)との混合物の25質量%懸濁液を2304g(炭酸カルシウム:フッ化カルシウム:純水=553g:23g:1728g)を用いる以外は製造例1と同様にして行い、ポリアミド樹脂組成物(III)を得た。このペレットの98%硫酸相対粘度(1g/100ml)ηrは3.0であった。
【0061】
【実施例1】
製造例1で得たポリアミド樹脂組成物(I)と、(D)として、モンタン酸カルシウム(以下CaVと記述)をポリアミド樹脂組成物100質量部に対して0.05質量部をブレンドして、ペレット表面に付着させた。その後、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35)にて、吐出量40kg/h、回転数300rpm、温度280℃で溶融混練して(D)を含有したポリアミド樹脂組成物を得た。この樹脂組成物のηrは3.0であった。
このペレット50kgを、150L固相重合装置へ投入し、窒素置換を十分に行った。その後、スチームラインを利用してヒーター温度を220℃に設定し、窒素を8L/分で流しながら固相重合を行った。その時、内温は200℃まで上昇した。28時間後、加熱を停止し、冷却後ペレットを取り出した。こうして得られたペレット状の樹脂組成物のηrは5.1であり、射出成形品として評価した。評価結果を表1、2に示す。
【0062】
【実施例2】
製造例1で得たポリアミド樹脂組成物(I)と、(D)として、ステアリン酸カルシウム(以下St−Caと記述)、(E)として、ステアリルステアレート(以下St−Stと記述)をポリアミド樹脂組成物100質量部に対してそれぞれ0.05質量部をブレンドして、ペレット表面に付着させた。その後、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35)にて、吐出量40kg/h、回転数300rpm、温度280℃で溶融混練して(D)を含有したポリアミド樹脂組成物を得た。この樹脂組成物のηrは2.9であった。
以降の操作は実施例1同様に行った。得られたペレット状の樹脂組成物のηrは5.0であり、射出成形品として評価した。評価結果を表1、2に示す。
【0063】
【実施例3】
製造例2で得たポリアミド樹脂組成物(II)を用いた以外は実施例1同様におこなった。得られたペレット状の樹脂組成物のηrは5.1であり、射出成形品として評価した。評価結果を表1、2に示す。
【0064】
【実施例4】
製造例3で得たポリアミド樹脂組成物(III)を用いた以外は実施例1同様におこなった。得られたペレット状の樹脂組成物のηrは5.1であり、射出成形品として評価した。評価結果を表1、2に示す。
【0065】
【比較例1】
50質量%のポリアミド66の原料(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩)の水溶液を30Kg作製、十分撹拌した。該ポリアミド66原料の水溶液を、撹拌装置を有し、かつ下部に抜出しノズルを有する70リットルのオートクレーブ中に仕込み、50℃の温度下、十分攪拌した。窒素で置換した後、撹拌しながら温度を50℃から約270℃まで昇温した。この際、オートクレーブ内の圧力は、ゲージ圧にして約1.77MPaになるが、圧力が1.77MPa以上にならないよう水を系外に除去しながら加熱を約1時間続けた。
【0066】
その後、約1時間をかけ、圧力を大気圧まで降圧し、更に約270℃、大気圧で約1時間保持した後、撹拌を停止し、下部ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行い、ペレットを得た。このペレットの98%硫酸相対粘度(1g/100ml)ηrは3.0であった。
このペレット50kgを、150L固相重合装置へ投入し、窒素置換を十分に行った。その後、スチームラインを利用してヒーター温度を220℃に設定し、窒素を8L/分で流しながら固相重合を行った。その時、内温は200℃まで上昇した。28時間後、加熱を停止し、冷却後ペレットを取り出した。こうして得られたペレット状の樹脂組成物のηrは5.1であった。こうして得られたペレットを射出成形として評価した。評価結果を表3、4に示す。
【0067】
【比較例2】
製造例1で得たポリアミド樹脂組成物(I)のペレット50kgを、150L固相重合装置へ投入し、窒素置換を十分に行った。その後、スチームラインを利用してヒーター温度を220℃に設定し、窒素を8L/分で流しながら固相重合を行った。その時、内温は200℃まで上昇した。28時間後、加熱を停止し、冷却後ペレットを取り出した。こうして得られたペレット状の樹脂組成物のηrは5.1であった。こうして得られたペレットを射出成形として評価した。評価結果を表3、4に示す。
【0068】
【比較例3】
製造例1で得たポリアミド樹脂組成物(I)と、(D)として、モンタン酸カルシウム(以下CaVと記述)をポリアミド樹脂組成物100質量部に対して0.05質量部をコーン型ブレンダーでブレンドして、ペレット表面に付着させた。その後、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35)にて、吐出量40kg/h、回転数300rpm、温度280℃で溶融混練して(D)を含有したポリアミド樹脂組成物を得た。この樹脂組成物のηrは3.0であった。このペレットを射出成形品として評価した。評価結果を表3、4に示す。
【0069】
【比較例4】
製造例1で得たポリアミド樹脂組成物(I)のペレット50kgを、150L固相重合装置へ投入し、窒素置換を十分に行った。その後、スチームラインを利用してヒーター温度を220℃に設定し、窒素を8L/分で流しながら固相重合を行った。その時、内温は200℃まで上昇した。28時間後、加熱を停止し、冷却後ペレットを取り出した。こうして得られたペレット状の樹脂組成物のηrは5.1であった。このペレット100質量部に対し、(D)としてモンタン酸カルシウム(CaV)0.05質量部をコーン型ブレンダーでブレンドして、ペレット表面に滑剤を付着させた。こうして得られたペレットを射出成形として評価した。評価結果を表3、4に示す。
【0070】
【比較例5】
製造例1で得たポリアミド樹脂組成物(I)のペレット50kgを、150L固相重合装置へ投入し、窒素置換を十分に行った。その後、スチームラインを利用してヒーター温度を220℃に設定し、窒素を8L/分で流しながら固相重合を行った。その時、内温は200℃まで上昇した。28時間後、加熱を停止し、冷却後ペレットを取り出した。こうして得られたペレット状の樹脂組成物のηrは5.1であった。
このペレット100質量部に対し、(D)としてステアリン酸カルシウム(St−Ca)0.05質量部、(E)としてステアリルステアレート(St−St)0.05質量部をコーン型ブレンダーでブレンドして、ペレット表面に滑剤を付着させた。こうして得られたペレットを射出成形として評価した。評価結果を表3、4に示す。
【0071】
【表1】
Figure 0004076776
【0072】
【表2】
Figure 0004076776
【0073】
【表3】
Figure 0004076776
【0074】
【表4】
Figure 0004076776
【0075】
【発明の効果】
本発明は、様々な機械工業分野、電気電子分野における摺動部品としての強度、剛性に優れ、また低摩擦、低磨耗性であり、かつ疲労特性に優れる摺動部品用ポリアミド樹脂組成物および製造方法に関するものであり、本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、自動車分野、電気・電子分野、機械・工業分野、事務機器分野、航空・宇宙分野などの各種摺動部品などへの応用が期待される。

Claims (3)

  1. (A)ポリアミド樹脂と(B)アパタイト化合物からなる(C)ポリアミド樹脂組成物と、(D)高級脂肪酸の金属塩および(E)高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を溶融混練して得られる、(F)98%硫酸相対粘度(1g/100ml)ηrが1.5以上3.5未満のポリアミド樹脂組成物を用いて、さらに重合を進めることによって得られるポリアミド樹脂組成物であって、該組成物のηrが3.5以上6.0以下であることを特徴とする摺動部品用ポリアミド樹脂組成物。
  2. (F)98%硫酸相対粘度(1g/100ml)ηrが1.5以上3.5未満のポリアミド樹脂組成物において、ポリアミド100質量部に対して(C)高級脂肪酸の金属塩および(D)高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が0.01から5質量部溶融混練されていることを特徴とする請求項1に記載の摺動部品用ポリアミド樹脂組成物。
  3. 請求項1から2いずれか記載のポリアミド樹脂組成物を成形加工することによって得られることを特徴とするポリアミド製摺動部品。
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