JP2007046149A - 電解リン酸塩化成処理方法ならびに温間もしくは熱間鍛造加工方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】「リン酸」、「リン酸溶液に溶解し、リン酸を解離させて溶解することができる金属である亜鉛、鉄もしくはマンガン」ならびに「皮膜成分となる金属の硝酸塩」を溶解させた溶液から構成される処理浴であり、硝酸イオン以外の陰イオン及び皮膜成分となる金属イオン以外の金属イオンが0.5g/L以下であり、硝酸塩から溶解した金属イオンが10g/L以上であり、且つリン酸及びリン酸イオンは上記硝酸塩から溶解した金属イオンの1/2以下である電解リン酸塩化成処理浴の中を用いて、上記処理浴の硝酸塩となる金属を電極として使用し、被処理物との間で直流電源を用い電解する。
【選択図】図11
Description
但し、図3の表示は、電解槽を10層重ねたものであり、1電解槽当りでは0.6Vを境界として2つの電解系が存在する事を示している。
上記の記述では、被鍛造材表面に皮膜を反応させ形成するのではなく、処理浴中の固形分を化学的に活性な表面に物理的に付着させて皮膜を形成しているにすぎない。
(i)すなわち、電解処理技術の効率的な制御方法を明確化し、反応効率を向上させる。
(ii)その事から、従来より効率的な電解リン酸塩化成処理技術を実用化し、合せて適用範囲を広げる事である。すなわち、温鍛もしくは熱鍛加工潤滑処理への適用である。
発明者はリン酸塩化成処理浴を、「リン酸塩を主たる皮膜を形成する処理浴」、「金属+リン酸塩の皮膜を形成する処理浴」の2つに分類する。この考えは、特許文献1で本発明者が説明しているものである。
「リン酸塩を主たる皮膜を形成する処理浴」は、リン酸と「リン酸溶液に溶解し、リン酸を解離させて溶解する事ができる金属である亜鉛、鉄、もしくはマンガン」を主たる成分として含み、「皮膜成分となる金属の硝酸塩」を付随的に含む溶液である。
「金属+リン酸塩の皮膜を形成する処理浴」は、「リン酸」と「リン酸溶液に溶解し、リン酸を解離させて溶解する事ができる金属である亜鉛、」及び「皮膜成分となる金属の硝酸塩」を溶解させた溶液から構成される処理浴である。
前者の処理浴は、従来技術である無電解処理での一般的なものである。そして、後者の処理浴は、電解処理特有の処理浴である。本発明の対象は、後者である。
電解処理での電流及びイオンの流れを図1により説明する。直流電源と電極・被処理物間は電気抵抗が無いものとする。
上記の電解処理系で、抵抗を生じるのは、(i)電極表面(電極と処理浴)での変換:電流→イオン移動への変換、(ii)処理浴内での溶液の安定性及びイオンの移動、(iii)被処理物表面での変換:溶液(イオン)→固体(皮膜)への変換:皮膜形成の3点である。
電流が電極から溶解したイオンに容易に移動する事が必要である。そして、主として移動させるイオンは、成膜成分である事が望まれる。本発明で形成する皮膜は、「金属を含むリン酸塩皮膜」である。それ故、電極材料は処理浴の主たる成分と同じ材料であり、処理浴から析出して皮膜になる材料が望ましい。すなわち、皮膜成分となる金属を電極として用いる事が望ましい。皮膜成分となる金属は、硝酸塩で処理浴に含まれるので、電極材料は、処理浴に含む硝酸塩の金属とする。
尚、電解リン酸塩化成処理では、電極に係わる電流がすべて、溶解に費やされるものではない。これは、電気メッキと異なる点である。電解リン酸塩化成処理では、電極材料と同じ金属成分が溶解した形(金属イオン)で別途処理浴に補給される。従って、印加される電流は、「電極材料の溶解」と「処理浴成分の移動に直接関与し、成分イオンの反応を行う」部分に分けられる。
そして、電解反応効率を上げるとは、「処理浴成分の移動に直接関与し、成分イオンの反応を行う」部分への比率を多くし、且つその反応を制御する事である。電極材料に処理浴に添加する硝酸塩金属と同じ金属を使用することは上記の作用に有効である。
しかし、電気メッキでは、そのように金属イオンが薬品として補給される事は無い。故に、印加された全ての電流は、電極材料の溶解に費やされる。
本発明の処理浴の主たる陰イオン成分は、リン酸イオンと硝酸イオンのみである。リン酸イオンと硝酸イオンを金属イオンとの溶解性で比較すれば、硝酸イオン>リン酸イオンである。従って、硝酸イオンを多く含む溶液が、溶解性では有利である。
本発明では、硝酸イオン>リン酸イオンの処理浴の状況を、硝酸塩からの金属イオンを10g/Lとした上で、リン酸及びリン酸イオンをその1/2以下とした比率で示している。その事で、硝酸イオンの濃度、及び硝酸イオン/リン酸イオンの比率を明示している。そして、処理浴は、硝酸イオンがある程度(少なくとも20g/L程度)の濃度以上であり、リン酸イオンに対し4倍程度の濃度である事を示している。
析出する皮膜成分は「金属」と「リン酸塩」である。
「金属」は硝酸塩が溶解した状況から還元され析出する。硝酸塩成分(硝酸イオン+金属イオン)が少ないと、溶解イオン濃度が低下している事になり、従って電流効率が低下し析出効率が低下する。従って、処理浴が、硝酸塩成分を一定濃度以上有している事が必要である。これは、上記(ii)で示した事でもある。
リン酸塩の析出は、溶液中のリン酸成分(H3PO4又はH2PO4 −)が解離しPO4 3−になる事でリン酸塩(Zn3(PO4)2等)結晶を皮膜として形成するものである。故に、処理浴中のリン酸の状態がH3PO4であるか、H2PO4 −であるかによって、析出の過程(必要エネルギーのレベル等)が異なるのは明確である。すなわち、H3PO4からPO4 3−に解離させるよりも、H2PO4 −からPO4 3−に解離させる方が容易である。故に、電解反応効率を上げる手法として、処理浴に含まれるリン酸の状態をできるだけ、H2PO4 −を多く含む状態にする事は有効である。すなわち、溶液状態のH3PO4にZnO(酸化亜鉛)等を溶解させて、亜鉛イオン(Zn2+)を溶解させる事で、H3PO4→H2PO4 −の解離を進めた状態の処理浴を用い、リン酸塩の析出効率を向上させる事ができる。
Fe2+→(⇔) Fe3+ + e : 0.77v (1)
に関連した制御事項である。
処理浴のORPが770mv以上であるという事は、式(1)から処理浴中の鉄イオンの状態は全てFe3+の状態を示す。そして、処理浴中の鉄イオンが変化しない事を示している。処理浴の化学成分の状態を制御する事は、反応効率を上げる為に必要である。
(2) 「リン酸溶液に亜鉛を溶解させたリン酸塩溶液」;リン酸及びリン酸イオン;リン酸を解離させて溶解することができる金属である亜鉛イオン;ならびにニッケル、コバルト、マンガン、銅もしくは亜鉛の硝酸塩;を溶解させた溶液から構成される処理浴であり、硝酸イオン及びリン酸イオン以外の陰イオンならびに皮膜成分となる金属イオン以外の金属イオンがそれぞれ0.5g/L以下であり、硝酸塩から溶解した金属イオンが10g/L以上であり、且つリン酸及びリン酸イオンは上記金属イオンの1/2以下である電解リン酸塩化成処理浴を用いて、上記処理浴の硝酸塩となる金属を電極として使用し、被処理物との間で直流電源を用い電解することにより、硝酸塩から析出した金属とリン酸塩を含む皮膜を形成することを特徴とする電解リン酸塩化成処理方法;
(3) 硝酸塩から溶解した金属イオンが20g/L以上であり、且つリン酸及びリン酸イオンは硝酸塩から溶解した金属イオンの1/2以下である(1)もしくは(2)記載の電解リン酸塩化成処理方法;
(4) リン酸塩化成処理浴の酸化還元電位(ORP:水素標準電極電位)が、770mv以上である(1)もしくは(2)記載の電解リン酸塩化成処理方法;
(5) 電解電圧が6V以下で、電解電流が2A/dm2以上である(1)もしくは(2)の電解リン酸塩化成処理方法;
(6) 電解電圧が15V以下で、かつ電解電流が20A/dm2以上である(1)もしくは(2)記載の電解リン酸塩化成処理方法;
(7) 金属の温鍛もしくは熱鍛加工時において、被鍛造材に加えられる温度以上の融点を有する金属とリン酸塩から構成される「リン酸塩+金属」の化成皮膜を被鍛造材の表面に形成し、その上に潤滑剤を担持させて潤滑機能を有した皮膜を被鍛造材表面に形成した被鍛造材を用いることを特徴とする温間もしくは熱間鍛造加工用潤滑処理方法;
(8) 被鍛造材の表面に形成する「リン酸塩+金属」から構成されるリン酸塩皮膜形成が、(1)もしくは(2)記載のリン酸塩化成皮膜であることを特徴とする温間もしくは熱間鍛造加工用潤滑処理方法。
(9) 潤滑剤が、有機脂肪酸塩を含む有機化合物及び多層構造を有する無機高分子化合物であることを特徴とする(7)もしくは(8)記載の温間もしくは熱間鍛造加工用潤滑処理方法;
(10) 潤滑剤が、ステアリン酸塩、黒鉛、二硫化モリブデンもしくは雲母である(9)記載の温間もしくは熱間鍛造加工用潤滑処理方法;
(11) 金属の温鍛もしくは熱鍛加工時に被鍛造材に加えられる温度以上の融点を有する金属とリン酸塩から構成される「リン酸塩+金属」皮膜を形成し、その上に潤滑剤を担持させた、温鍛もしくは熱鍛加工での潤滑機能を有する皮膜を形成した被鍛造材を形成し、この被鍛造材を加熱し、温間鍛造加工もしくは熱間鍛造加工を行うことを特徴とする温間もしくは熱間鍛造加工方法;ならびに
(12) 「リン酸塩+金属」皮膜が、示差熱分析で結晶水を含まないリン酸塩を含む(11)記載の温間もしくは熱間鍛造加工方法、
である。
そして、金属は硝酸塩の形で処理浴に溶解し補給される。そして、電解で還元され、析出する。すなわち、次に示す式(2)で析出する。
M2+ + 2e → M0 (2)
又、リン酸塩はリン酸が解離し金属塩として析出する。その際に析出する金属塩は、金属がリン酸を解離させ溶解できる金属種に限られる。その金属種は、亜鉛、鉄もしくはマンガンに限定される。しかし、本発明では、金属がリン酸を解離させ溶解させて用いる事のできる金属は、処理浴の安定性確保の視点から、亜鉛が好適である。
リン酸塩化成処理浴を構成する成分は、「リン酸」、「亜鉛がリン酸を解離した状態で溶解し、リン酸イオンと会合し溶解している部分」、「ニッケル、コバルト、マンガン、銅、及び亜鉛の硝酸塩の溶解した部分」から構成される。これは、陰イオンの種類で分類すれば、「リン酸イオン系の部分」と「硝酸イオン系の部分」に分類される。それ以外のイオン種は、雑イオンであり0.5g/L以下に規定される。
尚、アルミ材の電解処理では、アルミ表面での酸化膜生成防止の為に必要な量、たとえば1g/L以下のF(弗素)イオンの含有は許容される。
Fe → Fe2+ + 2e (3)
故に、処理浴のORP制御を実施する事は望ましい。
下地処理に必要とされる素材金属との密着性とは、鍛造加工の温度領域で、金型と被鍛造材(金属)が接触して被鍛造材が塑性変化する際、被鍛造材表面を覆った潤滑皮膜(下地皮膜+潤滑皮膜)が鍛造加工の温度領域で軟化して流動化し、被鍛造材の塑性変形に追随して変化する密着性である。
従って、下地処理皮膜は、素地金属との密着性が強すぎても適切でない。適度な密着性が求められる。
鍛造加工−(i)冷鍛加工:加工温度100〜250℃
(ii)温鍛加工・(ii−1)鉄鋼:加工温度300〜1000℃
(ii−2)非鉄金属:加工温度200〜600℃
従って、潤滑処理(下地皮膜+潤滑膜)も上記の温度を参考に適用される。
(金属イオンが、M2+ → M3+ + e でM3+ となると溶解度が減少する。その為、処理浴中にスラッジが生成する。これは、処理浴の溶液としての安定性を阻害するものであり、許容されるものではない。)
アノード反応:H2 + 2OH− ⇔ 2H2O + 2e :−0.83V (4)
カソード反応:02 + 4H+ + 4e ⇔ 2H2O :1.23V (5)
従って、処理浴中の金属成分のM2+ ⇔ M3+ + e 平衡電位が、式(4)および(5)で示される電位の範囲内にあるならば、その金属成分イオンは、処理浴中でM2+の状態からM3+ の状態になる可能性を有す。そのような変動が起こる事は望ましくない。
表3に挙げた金属は、―0.83V〜1.23Vの範囲にM2+ ⇔ M3+ + e 平衡電位を有していない。
(I.電解リン酸塩化成処理の効率化)
表4に実施例1−5と比較例1の処理浴条件を示す。
図2−図7にそれぞれ実施例1〜5および比較例1で形成した皮膜のSEM写真(1000倍)を示す。実施例1は電圧が小さい為、電流も小さく皮膜形成が充分ではない。実施例2〜5は皮膜を形成している。
尚、塗料は、日本ペイント(株)「パワーニックス」110ブラック:鉛フリーカチオン電着塗料である。
電着塗装:パワーニックス110ブラック(鉛フリーカチオン電着)
塗装条件:下記の3種類で行う。
イ:電着塗装時間:45秒(立上り電圧制御10秒含む)
ロ:電着塗装時間:60秒(立上り電圧制御11秒含む)
ハ:電着塗装時間 90秒(立上り電圧制御12秒含む)
塗装温度:30℃ 焼付け乾燥温度:160℃×10分
塗装電圧:150V
表8の結果は、塗装耐食性は、塗装膜厚よりも化成処理条件に大きく依存している事を示している。そして、電解処理品の実施例は、電圧1.8Vを除いては、塗装膜厚が少なくても、塗装耐食性は現状レベルである。
そして、電解電圧は3−6vであり、比較例1の8vに比べ低い電圧での処理が可能となる。故に、電解電圧的には処理浴成分が分解するのを抑制される方向になる。すなわち、スラッジ生成をより抑制できる方向になる。
(II.温鍛加工への適用)
自動車エンジン部品(ロアボデー:材質SCM415)を用いた。図9は温鍛加工前、図10は温鍛加工前後の状態を示す。
表9に実施例6〜8、比較例2の温鍛加工の工程を示す。但し、水洗・湯洗は省略する。又、温鍛プレスでは実施例6〜8、比較例2とも、プレス型に固形潤滑剤(グラファイト)を同じ条件でスプレー塗布した。
電解リン酸塩化成処理の詳細は以下である。処理浴の組成はりん酸及びリン酸イオン:15g/L、亜鉛イオン:10g/L、Niイオン:51g/L、硝酸イオン:157g/Lである。この処理浴の中に図9に示した被処理物(ロアボデー)を陰極とし、Ni板を陽極として配置する。10秒電圧を加えず浸漬した後、5秒で13Vまで電圧を上昇させ、電流を被処理物1ケ(1.2dm2の表面積)当り28〜32A×25秒流す。その時の温度は30〜34℃である。このようにして、被処理物表面に黒灰色のリン酸塩+Niの皮膜を形成する。
又、潤滑処理は水溶液に浸漬し皮膜を形成する。その概要は表10に示す。
(III.リン酸塩化成皮膜の組成の比較)
本発明の実施例6〜8が、従来の電解リン酸塩化成処理皮膜と異なる事を示す。従来の電解処理から得られた皮膜(比較例3)として、特開2000-234200号公報の実施例1および4を比較例3として挙げる。
(IV.リン酸塩化成皮膜の耐熱性の比較)
次いで、皮膜の耐熱性をDSC:示差熱分析結果で示す。
図11:実施例6〜8(電解処理からの温鍛用リン酸塩皮膜)の示差熱分析図
図12:比較例4(無電解処理からのリン酸塩皮膜)の示差熱分析図
比較例4は、従来の無電解方式で作成した皮膜である。リン酸塩化成処理浴は、日本パーカライジング(株)化成処理薬品:「パルボンド」3684Xを所定の条件に調整したものである。その処理浴(80℃)に冷間圧延鋼板を10分浸漬し皮膜を形成した。図12は、その皮膜の示差熱分析図であり、図14は、その皮膜のSEM図である。
図11は、本発明の実施例6〜8に用いたリン酸塩化成皮膜構成物の示差熱分析図である。すなわち、鉄鋼材料の温鍛加工用に電解処理で作成したリン酸塩化成皮膜である。
図12は、鉄鋼の現在、冷鍛加工用に使用している従来例のリン酸塩化成皮膜構成物の示差熱分析図である。すなわち、無電解処理方式で得たリン酸塩皮膜の示差熱分析図である。
図11と図12の大きな違いは、図12では200℃以下の温度領域で示差走査熱量曲線の変化があるのに対し、図11ではそのような現象が見られない事である。
図12の無電解処理からの皮膜は200℃までの温度上昇で大きな重量変化(減少)を生じている。この大きな示差走査熱量曲線の変化は、皮膜構造の大きな変化を示している。従来の無電解処理で得られたリン酸塩化成皮膜は、水の結晶を含んだ結晶(含水塩):Zn3(PO4)2・4H2Oの形で存在する事が知られている。従って、皮膜構造の大きな変化は200℃までの加熱で、リン酸塩結晶から水の結晶が抜ける事によるものである。また、図13と図14を見れば、電解処理と無電解処理では皮膜外観が異なる事は明確である。この外観の違いが、皮膜の構造に関係していると考えられる。
このような事から、従来の無電解処理で形成したリン酸塩化成皮膜を500℃以上に加熱する温鍛加工の下地皮膜に適用する事は不可である。故に、従来のリン酸塩化成皮膜が温鍛用に用いられる事は無かった。
示差熱分析の結果は加熱による皮膜の重量変化を示している。無電解処理で形成した皮膜(図12)は170℃の示差走査熱量曲線の吸収までで、9.78/11.062=0.884の重量減少を生じているが、本発明の電解処理皮膜(図11)は187℃の僅かな変化までで、13.57/13.804=0.983までの減少に留まっている。これは、本発明のリン酸塩化成皮膜が耐熱性で従来皮膜よりも有効である事を示している。
実施例9
(潤滑剤に有機脂肪酸塩を用いた実施例)
自動車エンジン部品(NBシリンダー:材質SUJ2:クロムを含んだ合金鋼)を用いた。
図15、図16は、それぞれ温鍛加工前と温鍛加工後におけるNBシリンダーの形態を示す。
表13に実施例9および比較例5の温鍛加工の工程を示す。
なお、温鍛プレスでは実施例9、比較例5ともに、プレス型に潤滑剤を同じ条件でスプレー塗布した。
実施例9の電解リン酸塩化成処理は実施例6〜8と同じである。
温鍛加工プレスでの加工荷重を表14に示す。
又、本発明は、温間鍛造用潤滑処理に関して有効である。従来、リン酸塩化成皮膜を潤滑剤の下地処理として用いる事は出来なかったが、本発明の金属を多く析出させる方法を利用し、温間鍛造に適用できる皮膜を開発し、新たな温間鍛造潤滑処理方式を開発した。開発した潤滑処理は、温間鍛造時の加工荷重を大幅に低下させる事を確認した。故に、温間鍛造の革新を可能とする技術である。
Claims (12)
- 「リン酸」、「リン酸溶液に溶解し、リン酸を解離させて溶解することができる金属である亜鉛、鉄もしくはマンガン」ならびに「皮膜成分となる金属の硝酸塩」を溶解させた溶液から構成される処理浴であり、硝酸イオン以外の陰イオン及び皮膜成分となる金属イオン以外の金属イオンが0.5g/L以下であり、硝酸塩から溶解した金属イオンが10g/L以上であり、且つリン酸及びリン酸イオンは上記硝酸塩から溶解した金属イオンの1/2以下である電解リン酸塩化成処理浴の中を用いて、上記処理浴の硝酸塩となる金属を電極として使用し、被処理物との間で直流電源を用い電解することにより、硝酸塩から析出した金属とリン酸塩を含む皮膜を形成することを特徴とする電解リン酸塩化成処理方法。
- 「リン酸溶液に亜鉛を溶解させたリン酸塩溶液」;リン酸及びリン酸イオン;リン酸を解離させて溶解することができる金属である亜鉛イオン;ならびにニッケル、コバルト、マンガン、銅もしくは亜鉛の硝酸塩;を溶解させた溶液から構成される処理浴であり、硝酸イオン及びリン酸イオン以外の陰イオンならびに皮膜成分となる金属イオン以外の金属イオンがそれぞれ0.5g/L以下であり、硝酸塩から溶解した金属イオンが10g/L以上であり、且つリン酸及びリン酸イオンは上記金属イオンの1/2以下である電解リン酸塩化成処理浴を用いて、上記処理浴の硝酸塩となる金属を電極として使用し、被処理物との間で直流電源を用い電解することにより、硝酸塩から析出した金属とリン酸塩を含む皮膜を形成することを特徴とする電解リン酸塩化成処理方法。
- 硝酸塩から溶解した金属イオンが20g/L以上であり、且つリン酸及びリン酸イオンは硝酸塩から溶解した金属イオンの1/2以下である請求項1もしくは2記載の電解リン酸塩化成処理方法。
- リン酸塩化成処理浴の酸化還元電位(ORP:水素標準電極電位)が、770mv以上である請求項1もしくは2記載の電解リン酸塩化成処理方法。
- 電解電圧が6V以下で、電解電流が2A/dm2以上である請求項1もしくは2の電解リン酸塩化成処理方法。
- 電解電圧が15V以下で、かつ電解電流が20A/dm2以上である請求項1もしくは2記載の電解リン酸塩化成処理方法。
- 金属の温鍛もしくは熱鍛加工時において、被鍛造材に加えられる温度以上の融点を有する金属とリン酸塩から構成される「リン酸塩+金属」の化成皮膜を被鍛造材の表面に形成し、その上に潤滑剤を担持させて潤滑機能を有した皮膜を被鍛造材表面に形成した被鍛造材を用いることを特徴とする温間もしくは熱間鍛造加工用潤滑処理方法。
- 被鍛造材の表面に形成する「リン酸塩+金属」から構成されるリン酸塩皮膜形成が、請求項1もしくは2記載のリン酸塩化成皮膜であることを特徴とする温間もしくは熱間鍛造加工用潤滑処理方法。
- 潤滑剤が、有機脂肪酸塩を含む有機化合物及び多層構造を有する無機高分子化合物であることを特徴とする請求項7もしくは8記載の温間もしくは熱間鍛造加工用潤滑処理方法。
- 潤滑剤が、ステアリン酸塩、黒鉛、二硫化モリブデンもしくは雲母である請求項9記載の温間もしくは熱間鍛造加工用潤滑処理方法。
- 金属の温鍛もしくは熱鍛加工時に被鍛造材に加えられる温度以上の融点を有する金属とリン酸塩から構成される「リン酸塩+金属」皮膜を形成し、その上に潤滑剤を担持させた、温鍛もしくは熱鍛加工での潤滑機能を有する皮膜を形成した被鍛造材を形成し、この被鍛造材を加熱し、温間鍛造加工もしくは熱間鍛造加工を行うことを特徴とする温間もしくは熱間鍛造加工方法。
- 「リン酸塩+金属」皮膜が、示差熱分析で結晶水を含まないリン酸塩を含む請求項11記載の温間もしくは熱間鍛造加工方法。
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