JP2007046149A - 電解リン酸塩化成処理方法ならびに温間もしくは熱間鍛造加工方法 - Google Patents

電解リン酸塩化成処理方法ならびに温間もしくは熱間鍛造加工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】できるだけ低い電圧で大きな電流を流し皮膜を形成させ、効率全般を向上させ得る電解リン酸塩化成処理方法を提供する。
【解決手段】「リン酸」、「リン酸溶液に溶解し、リン酸を解離させて溶解することができる金属である亜鉛、鉄もしくはマンガン」ならびに「皮膜成分となる金属の硝酸塩」を溶解させた溶液から構成される処理浴であり、硝酸イオン以外の陰イオン及び皮膜成分となる金属イオン以外の金属イオンが0.5g/L以下であり、硝酸塩から溶解した金属イオンが10g/L以上であり、且つリン酸及びリン酸イオンは上記硝酸塩から溶解した金属イオンの1/2以下である電解リン酸塩化成処理浴の中を用いて、上記処理浴の硝酸塩となる金属を電極として使用し、被処理物との間で直流電源を用い電解する。
【選択図】図11

Description

この発明は、金属表面に「リン酸塩結晶と金属」を含む皮膜を電解処理で形成する処理浴及びその方法とそれを用いた温鍛加工以上の高温に被処理物を加熱する塑性加工の潤滑処理に関する。
特開2000−234200号公報(特許文献1)は、本発明者出願の電解リン酸塩化成処理に関する基本的特許出願である。その特徴は、処理浴が皮膜形成成分以外の金属イオンを原則的に含まない(0.4g/L以下)ことである。又、処理浴組成は、硝酸イオンが6〜140g/L、リン酸及びリン酸イオンが0.5〜60g/L、リン酸イオンと処理浴中で錯体を形成し溶解するイオン(亜鉛など)が、0.5〜70g/L、溶解したイオンが還元され析出する金属イオンが0〜40g/Lである事を特徴としている。
特許文献1での塗装下地用での実施例1、実施例3および実施例4では、1A/dm2以上の電流を流した場合(ワーク1ケを2dm2で計算)、電解電圧は9.6V以上であり、陰極処理に限って言えば17.7V以上である。
特開2002-322593号公報(特許文献2)は、同じく本発明者出願の電解リン酸塩化成処理に関する特許出願である。この発明は、特許文献1がリン酸塩化成処理浴への外部からの反応妨害物質(すなわち皮膜形成成分以外の金属イオン)を含ませない事に特徴を有するのに対し、反応系内部から出てくる妨害物質イオン(N2O4ガス、過剰なFeイオン)の生成を制御するものである。
特許文献2は、処理浴に溶解している定性的な組成は、特許文献1と同じである。そして、実施例全ての処理浴組成は、還元され析出する金属イオンを4.7〜7.3g/Lの範囲としており10g/Lを超えていない。そして、全ての実施例は8V以上で電解されている。
又、特開2004−52085号公報(特許文献3)は、同じく本発明者出願の電解リン酸塩化成処理に関する特許である。この特許は、リン酸塩化成処理後の水洗水を電気透析し、濃縮した部分を再び処理浴に戻す事を特徴としている。この特許では、処理浴成分の電気分解に関しての知見を得ている。
この特許文献3の図3は、電解処理浴成分を含んだ電気透析浴の電気分解が2つの形式で見られる事を示している。すなわち、印加電圧6V以下の電気透析は、溶質成分のみのイオン移動であるが、6V以上では溶媒である水の電気分解を伴ったものである事を示している。そして、6V以上の電解では、水の分解に伴いスラッジを生成する可能性を指摘している。
但し、図3の表示は、電解槽を10層重ねたものであり、1電解槽当りでは0.6Vを境界として2つの電解系が存在する事を示している。
すなわち、特許文献3は、電解リン酸塩化成処理が、電圧の変化に関して2つの電解処理系から構成される事を示している。そして、図3では、低い電解電圧系の電流(X軸)−電圧(Y軸)は、高い電解電圧系のそれよりも勾配が緩く、電解効率が良好である事を示している。
すなわち、低い電圧での電解処理は、溶媒である水の分解を抑え、溶質成分を優先して移動させる為、皮膜形成効率を上昇させる。
一方において、金属材料を200℃以上に加熱した後、塑性加工する温間もしくは熱間鍛造と呼ばれる加工技術がある。この加工は、鉄鋼、アルミニウムとその合金、マグネシウムとその合金等多くの金属材料で採用されている。
特開平6−1994号公報(特許文献4)は、鉄鋼材料の冷温間鍛造加工用潤滑処理に関するものである。その中には従来技術の課題として、温間鍛造は、400〜1000℃に被鍛造物を加温し鍛造加工を行うが、適当な潤滑剤及びその処理方法が見当たらないとしている。
冷間鍛造では、リン酸塩化成皮膜を被鍛造材に形成し、それを有機脂肪酸塩(ステアリン酸ナトリウム等)浴に浸漬し、潤滑膜を形成する方法が潤滑処理として確立している。すなわち、リン酸塩化成皮膜を用いて、被鍛造材を潤滑処理をする方法が確立している。
これに対し、従来の温間鍛造では、リン酸塩化成皮膜を被鍛造材に形成し、その上に潤滑剤を用いた膜を形成する潤滑処理は実施されていない。これは、温間鍛造の温度領域(400〜1000℃程度)では、従来の無電解方式で形成されたリン酸塩化成皮膜は下地金属との密着性を確保できない為、潤滑膜が破壊され、潤滑処理として機能しないためである。潤滑処理の役割は、金型と被鍛造材の間に潤滑剤を介在させ、金型と被鍛造材が直接接触させないようにすることである。しかし、温間鍛造の温度でリン酸塩化成皮膜の密着性が確保できなければ、そのような機能を確保することは困難である。
そのため、従来の温間鍛造では、被鍛造物を250〜300℃程度に加熱し、その直後にグラファイト等の固形潤滑剤を分散させた液体に浸漬するか、グラファイト粉末を含んだ液体を吹付ける事で被鍛造物表面にグラファイト膜を形成し、それに引き続いて被鍛造物を800℃程度に加熱し、又、それに引き続き(温鍛)プレスを行う加工が行われている。その際、型の表面には、別途潤滑剤が型潤滑の為吹き付けられている。また、被鍛造物への潤滑剤の塗布は行なわず、型に潤滑剤を塗布するのみの方法も行なわれる。
しかし、被鍛造物に潤滑剤のみを塗布する処理方法では、潤滑剤は被鍛造材に物理的に付着しているのみであり、被鍛造材と化学的な反応を伴って付着していないので、プレス加工時に被鍛造材の加工部分で金型と被鍛造材とが強く擦れたり、しごかれたりすると、同部分の潤滑剤が容易に取り去られてしまい、その部分で焼付を起こすという問題が発生する。
特許文献4は、その対策として水溶性無機塩(K2SO4,Na2B4O4,等)と二硫化モリブデン及び/又は黒鉛(グラファイト)から構成される溶液に被鍛造材を浸漬し、被鍛造材表面に上記の潤滑物質を均一塗布し、その後乾燥させて、被鍛造材表面に無機塩と二硫化モリブデン及び/又は黒鉛(グラファイト)から構成される潤滑皮膜を形成する。さらに、潤滑皮膜を形成するための工程の中に、被鍛造材をフッ酸硝酸洗浄することを必要としている。この酸洗は、表面に強固な皮膜を形成するために行うとしている。そして、このようにして形成した潤滑膜は温間鍛造用の潤滑機能を示すことが記載されている。しかしながら、
上記の記述では、被鍛造材表面に皮膜を反応させ形成するのではなく、処理浴中の固形分を化学的に活性な表面に物理的に付着させて皮膜を形成しているにすぎない。
また、本発明者による特許文献1には、各種被鍛造材に形成する下地皮膜であるリン酸塩化成皮膜に関する発明が記載されている。しかしながら、特許文献1は、塗装下地用に適用した塗装耐食性を向上させた「リン酸塩+金属」皮膜と、冷鍛下地用に適用するリン酸塩のみから構成されるリン酸塩化成皮膜の形成例を示しているのみである。そして、「リン酸塩+金属」皮膜を温鍛もしくは熱鍛潤滑用に適用することについては記載も示唆もしていない。
すなわち、特許文献1が示す電解リン酸塩化成処理技術の基本的要素とすることは、処理浴が皮膜成分とならない金属イオンを実質的に含まないこと(400ppm以下)である。そして、皮膜の形態は、リン酸塩とならない金属を含む場合(請求項36、実施例1、4および5)と、リン酸塩とならない金属を含まない場合(請求項8、実施例2)があることを示している。
リン酸塩とならない金属を含む場合は、「リン酸塩+金属」から構成される皮膜である。その皮膜に含まれる金属は、溶液中に陽イオンとして存在した金属が還元され析出したものである。そして、「リン酸塩+金属」から構成される皮膜は、塗装下地処理に採用すると塗装耐食性を向上させることを示している。そして、金属の析出は溶液中に溶解した金属イオンが還元され析出するのであることを明確にしている。又、金属を還元して析出させるためには、処理浴に皮膜成分とならない金属イオン(例えばナトリウムイオン)を含ませないことが必要であることを示している。これは、皮膜成分とならない金属イオンを含む無電解処理浴からは、「リン酸塩+金属」から構成される皮膜は不可能であることも示している。そのような下地皮膜の違いが塗装の耐食性の差を生じることを示している。
また、特許文献1では冷鍛用に使用する実施例(実施例2)を示している。そして、冷鍛用の実施例と塗装用の実施例では処理浴組成・皮膜組成が大幅に異なることを示している。塗装下地用にはリン酸塩以外の金属成分を含むが、冷鍛下地用にはリン酸塩以外の金属成分は僅かしか含まないことを示している。
表1に特許文献1の実施例および比較例における処理方法、用途、処理浴組成および皮膜組成についての比較を示す。
上記の比較から以下のことが確認できる。
i.冷鍛加工用皮膜は、リン酸塩とならない金属成分(Ni)を含まない皮膜である。
ii.塗装耐食性は、リン酸塩とならない金属成分(Ni)を含む皮膜の方が良好である。
すなわち、冷鍛用の(低温での)潤滑処理にはリン酸塩とならない金属成分を含まない皮膜が良好であるが、塗装耐食性には金属成分を含んだほうが良好である。この違いは、リン酸塩化成処理皮膜の機能が塗装下地用と冷鍛加工潤滑用で異なることに対応している。
次いで、従来のNiを含まないリン酸塩化成処理皮膜が冷鍛潤滑処理に用いられていた根拠を明確にする。冷鍛用潤滑機能とは、冷間鍛造加工の温度領域(150〜250℃)で、金型と被鍛造材(鉄鋼)が接触し被鍛造材が塑性変化する際、被鍛造材表面を覆った潤滑皮膜(下地皮膜:リン酸塩+潤滑剤(ステアリン酸ソーダ等))が溶融し流動化することで、被鍛造材と金型が直接に接触することを防ぐことで発揮されるものである。したがって、下地皮膜に要求される性能(項目)は、a.潤滑剤を均一に保持できる化学的性質:潤滑剤との化学的親和性の確保、b.冷間鍛造加工の温度領域(150〜250℃)で被鍛造材の変形に対応し流動化すること、の2点である。上記のaは、従来の「還元されて析出した金属を含まない」リン酸塩化成皮膜であることで確保される。そして上記のbは、形成するリン酸塩皮膜が、Niを含まないことで確保される。
無電解処理方式で形成される皮膜では、上記のa、bの性能を確保するため処理浴を限定している。すなわち、処理浴での「還元されて析出する金属」(一般的にはNi)を0.5g/L以下に抑えることで達成している。従来の無電解方式の冷鍛用リン酸塩化成処理皮膜は、基本的にNiを含まないか、または作用させない皮膜であり、冷間鍛造温度領域で上記のa、bを満足する。また、無電解方式では、「還元されて析出する金属」を析出させることは基本的に不可能である。したがって、無電解処理方式では、電解反応電圧が水の分解電圧以下である事から、Niを含む鍛造用に適した厚い皮膜(たとえば付着質量が5g/m以上)を形成することはできない。
一方、電解処理法で形成する皮膜は、「還元されて析出する金属」を析出させることができる。すなわち、融点の高い金属Ni(融点:1453℃)を被鍛造材に化学反応した形で含ませることも、含ませないこともできる。しかし、「還元されて析出する金属」、たとえばNiを多く含ませた場合には、リン酸塩化成皮膜は上記のa、bの鉄鋼材冷鍛加工用に必要な性能を満足しなくなる。したがって、そのような皮膜は冷鍛用には適用しない。
表1の実施例で、塗装耐食性の向上した例(実施例1、4および5)は、いずれも金属Niを多く含むものである。これは、塗装下地膜は、電荷が変化して析出する金属Niを多く含んだ、下地金属に強く結合した皮膜が望ましいことを示している。
塗装耐食性に係わる現象及び評価は、通常の大気圧、常温の環境で行なわれる。そして、下地皮膜が寄与する塗装の剥れ、劣化は、リン酸塩化成皮膜が金属素材に化学的に強く結合していない時には低下する。金属素材とリン酸塩化成皮膜の結合の強さは、皮膜形成反応に係わる活性化エネルギーの大きさに関係して大きくなる。そして、「還元されて析出する金属」の析出は電荷の変化を伴うものである。それに対し、「リン酸塩結晶の析出」は金属イオンの電荷の変化を伴わない反応で形成される。両者の反応系の活性化エネルギーは異なり、「還元されて析出する金属」の析出反応の方が大きい。このことは、リン酸塩化成皮膜の形成で、「還元されて析出する金属」であるNiを多く含んだ皮膜が下地金属に強固であることに対応する。そして、表1の結果はそれを証明している。
冷間鍛造に係る潤滑処理では、リン酸塩化成皮膜と下地金属との密着性が大きいことは有利とはいえない。潤滑処理は、素材金属の塑性変化に伴い、その表面が流動性を伴うことが必要である。潤滑性は金属(プレス型)と金属(素材)が直接に接触するのを防ぐ作用である。下地金属に強固に結合した皮膜は、下地金属素材と一体化して塑性変化する傾向になる。そのために、流動性が損なわれる事になり、潤滑性は低下する。
上記の冷間鍛造での潤滑処理の考えは、温間鍛造にも適用できる。すなわち、温間鍛造に用いる潤滑性を必要とするリン酸塩化成皮膜は、その塑性加工温度、圧力領域で金属素材と一体にならず流動性を得ていることが望まれる。すなわち、温間鍛造の温度、圧力領域で下地金属との密着性が低下することが望まれる。
故に、冷間鍛造加工の温度領域(150〜250℃)では、「還元されて析出する金属」を基本的に含まない皮膜が適切である。しかし、被鍛造材を加熱した後、塑性加工する温間鍛造加工での潤滑性保持に関しては、「還元されて析出する金属」を含む皮膜を用いることができる。
以上のことから、析出した金属を含む、電解リン酸塩化成処理で形成されたリン酸塩化成皮膜は、冷間鍛造加工の温度領域(150〜250℃)での潤滑性はない。特許文献1は冷鍛加工への適用する皮膜については示しているが、温鍛もしくは熱鍛加工への可能性は何ら記載も示唆もしていない。
特開2000−234200号公報 特開2002-322593号公報 特開2004−52085号公報 特開平6−1994号公報
電解リン酸塩化成処理技術のレベルアップを図る事が本発明の主たる目的である。
(i)すなわち、電解処理技術の効率的な制御方法を明確化し、反応効率を向上させる。
(ii)その事から、従来より効率的な電解リン酸塩化成処理技術を実用化し、合せて適用範囲を広げる事である。すなわち、温鍛もしくは熱鍛加工潤滑処理への適用である。
最初に、「電解処理技術の効率的な制御方法を明確化し、反応効率を向上させる」事を説明する。
発明者はリン酸塩化成処理浴を、「リン酸塩を主たる皮膜を形成する処理浴」、「金属+リン酸塩の皮膜を形成する処理浴」の2つに分類する。この考えは、特許文献1で本発明者が説明しているものである。
「リン酸塩を主たる皮膜を形成する処理浴」は、リン酸と「リン酸溶液に溶解し、リン酸を解離させて溶解する事ができる金属である亜鉛、鉄、もしくはマンガン」を主たる成分として含み、「皮膜成分となる金属の硝酸塩」を付随的に含む溶液である。
「金属+リン酸塩の皮膜を形成する処理浴」は、「リン酸」と「リン酸溶液に溶解し、リン酸を解離させて溶解する事ができる金属である亜鉛、」及び「皮膜成分となる金属の硝酸塩」を溶解させた溶液から構成される処理浴である。
前者の処理浴は、従来技術である無電解処理での一般的なものである。そして、後者の処理浴は、電解処理特有の処理浴である。本発明の対象は、後者である。
そして、「電解処理技術の効率的な制御方法を明確化し、反応効率を向上させる」とは、できるだけ低い電圧で大きな電流を流し皮膜を形成する事を意味する。すなわち、少ない電気エネルギーで皮膜を形成する事である。
又、「適用範囲を広げる事である。すなわち、温鍛加工潤滑処理への適用である。」とは、従来適用実績の無い温鍛もしくは熱鍛加工潤滑処理に、本技術を適用する事である。
本発明が解決しようとするもう一つの課題は、被鍛造材を室温から200℃以上に加熱した鍛造加工での潤滑処理のレベルアップである。その具体的な方法は、被鍛造材の表面に200℃以上の加熱に耐える(すなわち、所定の加熱温度になっても被鍛造材から潤滑膜が脱離しない)潤滑処理膜を形成し、潤滑処理を行うことである。そのような潤滑処理は、「下地金属材との密着性を有し、潤滑剤を保持できる下地膜」と「下地膜に均一に担持され、加熱された温度で金型と被鍛造材に対し潤滑機能を発揮する潤滑剤の層(膜)」から構成される。
このような潤滑処理の、具体的な方法は個々の金属材料で異なる。それは、個々の材料で物理的・化学的性質が異なるからである。しかし、上記の潤滑処理の考え方(耐熱性のある下地皮膜と潤滑層から構成される潤滑膜の形成)は、材料の違いに係わらず共通するものである。
潤滑剤は、従来から温鍛加工で用いられている。そのような状況を考慮すれば、本発明が解決しようとする課題のポイントは、各種被鍛造材に耐熱性のある下地皮膜を形成することである。
温間鍛造が最も適用されているのは、鉄鋼材料である。故に、以下、鉄鋼材料を例に説明する。鉄鋼材料に適用する場合、本発明の課題は400℃程度以上の温間鍛造領域で良好な潤滑処理を提供することであり、400℃以上となる被鍛造材表面に「リン酸塩+金属」で構成されるリン酸塩化成皮膜を均一に形成し、その上に400℃以上で良好な潤滑性能を有する潤滑剤からなる潤滑皮膜を形成することにより達成される。
以上のように、本発明が解決しようとする課題は、被鍛造材表面と化学的に結合した強固な耐熱性皮膜(化成皮膜)を形成し、その上に潤滑剤を担持させた潤滑処理膜を形成し、温間鍛造潤滑処理に適用することである。
電解反応効率を上げるとは、電解処理反応系の電気抵抗を減らし、低い電圧で電流を多く流す事である。
電解処理での電流及びイオンの流れを図1により説明する。直流電源と電極・被処理物間は電気抵抗が無いものとする。
上記の電解処理系で、抵抗を生じるのは、(i)電極表面(電極と処理浴)での変換:電流→イオン移動への変換、(ii)処理浴内での溶液の安定性及びイオンの移動、(iii)被処理物表面での変換:溶液(イオン)→固体(皮膜)への変換:皮膜形成の3点である。
上記の3点について説明する。
(i)電極表面での変換:電流→イオン移動への変換に関して
電流が電極から溶解したイオンに容易に移動する事が必要である。そして、主として移動させるイオンは、成膜成分である事が望まれる。本発明で形成する皮膜は、「金属を含むリン酸塩皮膜」である。それ故、電極材料は処理浴の主たる成分と同じ材料であり、処理浴から析出して皮膜になる材料が望ましい。すなわち、皮膜成分となる金属を電極として用いる事が望ましい。皮膜成分となる金属は、硝酸塩で処理浴に含まれるので、電極材料は、処理浴に含む硝酸塩の金属とする。
尚、電解リン酸塩化成処理では、電極に係わる電流がすべて、溶解に費やされるものではない。これは、電気メッキと異なる点である。電解リン酸塩化成処理では、電極材料と同じ金属成分が溶解した形(金属イオン)で別途処理浴に補給される。従って、印加される電流は、「電極材料の溶解」と「処理浴成分の移動に直接関与し、成分イオンの反応を行う」部分に分けられる。
そして、電解反応効率を上げるとは、「処理浴成分の移動に直接関与し、成分イオンの反応を行う」部分への比率を多くし、且つその反応を制御する事である。電極材料に処理浴に添加する硝酸塩金属と同じ金属を使用することは上記の作用に有効である。
しかし、電気メッキでは、そのように金属イオンが薬品として補給される事は無い。故に、印加された全ての電流は、電極材料の溶解に費やされる。
(ii)処理浴内での溶液の安定性及びイオンの移動
本発明の処理浴の主たる陰イオン成分は、リン酸イオンと硝酸イオンのみである。リン酸イオンと硝酸イオンを金属イオンとの溶解性で比較すれば、硝酸イオン>リン酸イオンである。従って、硝酸イオンを多く含む溶液が、溶解性では有利である。
本発明では、硝酸イオン>リン酸イオンの処理浴の状況を、硝酸塩からの金属イオンを10g/Lとした上で、リン酸及びリン酸イオンをその1/2以下とした比率で示している。その事で、硝酸イオンの濃度、及び硝酸イオン/リン酸イオンの比率を明示している。そして、処理浴は、硝酸イオンがある程度(少なくとも20g/L程度)の濃度以上であり、リン酸イオンに対し4倍程度の濃度である事を示している。
(iii)被処理物表面での変換:溶液(イオン)→固体(皮膜)への変換:皮膜形成
析出する皮膜成分は「金属」と「リン酸塩」である。
「金属」は硝酸塩が溶解した状況から還元され析出する。硝酸塩成分(硝酸イオン+金属イオン)が少ないと、溶解イオン濃度が低下している事になり、従って電流効率が低下し析出効率が低下する。従って、処理浴が、硝酸塩成分を一定濃度以上有している事が必要である。これは、上記(ii)で示した事でもある。
リン酸塩の析出は、溶液中のリン酸成分(H3PO又はHPO )が解離しPO 3−になる事でリン酸塩(Zn3(PO等)結晶を皮膜として形成するものである。故に、処理浴中のリン酸の状態がH3POであるか、HPO であるかによって、析出の過程(必要エネルギーのレベル等)が異なるのは明確である。すなわち、H3POからPO 3−に解離させるよりも、HPO からPO 3−に解離させる方が容易である。故に、電解反応効率を上げる手法として、処理浴に含まれるリン酸の状態をできるだけ、HPO を多く含む状態にする事は有効である。すなわち、溶液状態のH3POにZnO(酸化亜鉛)等を溶解させて、亜鉛イオン(Zn2+)を溶解させる事で、H3PO→HPO の解離を進めた状態の処理浴を用い、リン酸塩の析出効率を向上させる事ができる。
電解反応効率を上げる為の、その他の手法に関して説明する。
硝酸塩から溶解した金属イオンが20g/L以上である事は、処理浴の電解成分イオン濃度を上げる事で、電解反応効率の上昇を図るものである。
また、リン酸塩化成処理浴の酸化還元電位(ORP:水素標準電極電位)が、770mv以上であると言う事は、鉄の電気化学反応である
Fe2+→(⇔) Fe3+ + e : 0.77v (1)
に関連した制御事項である。
処理浴のORPが770mv以上であるという事は、式(1)から処理浴中の鉄イオンの状態は全てFe3+の状態を示す。そして、処理浴中の鉄イオンが変化しない事を示している。処理浴の化学成分の状態を制御する事は、反応効率を上げる為に必要である。
電解電圧が6V以下で2A/dm2以上の電流は、従来技術(特許文献1〜2)の電解処理との比較での、本特許の特徴を示している。従来技術では、6V以下で2A/dm2以上の電流を得た実績は無い。
同様に、電解電圧が15V以下で20A/dm2以上の電流は、従来技術(特許文献1〜2)の電解処理との比較での、本特許の特徴を示している。従来技術では、15V以下で20A/dm2以上の電流を得た実績は無い。
本発明は、さらに、リン酸塩化成処理を新たに温鍛もしくは熱鍛加工潤滑処理に適用する事を課題としている。すなわち、その課題を解決する手段として以下の内容を提供する。
(1) 「リン酸」、「リン酸溶液に溶解し、リン酸を解離させて溶解することができる金属である亜鉛、鉄もしくはマンガン」ならびに「皮膜成分となる金属の硝酸塩」を溶解させた溶液から構成される処理浴であり、硝酸イオン以外の陰イオン及び皮膜成分となる金属イオン以外の金属イオンが0.5g/L以下であり、硝酸塩から溶解した金属イオンが10g/L以上であり、且つリン酸及びリン酸イオンは上記硝酸塩から溶解した金属イオンの1/2以下である電解リン酸塩化成処理浴の中を用いて、上記処理浴の硝酸塩となる金属を電極として使用し、被処理物との間で直流電源を用い電解することにより、硝酸塩から析出した金属とリン酸塩を含む皮膜を形成することを特徴とする電解リン酸塩化成処理方法;
(2) 「リン酸溶液に亜鉛を溶解させたリン酸塩溶液」;リン酸及びリン酸イオン;リン酸を解離させて溶解することができる金属である亜鉛イオン;ならびにニッケル、コバルト、マンガン、銅もしくは亜鉛の硝酸塩;を溶解させた溶液から構成される処理浴であり、硝酸イオン及びリン酸イオン以外の陰イオンならびに皮膜成分となる金属イオン以外の金属イオンがそれぞれ0.5g/L以下であり、硝酸塩から溶解した金属イオンが10g/L以上であり、且つリン酸及びリン酸イオンは上記金属イオンの1/2以下である電解リン酸塩化成処理浴を用いて、上記処理浴の硝酸塩となる金属を電極として使用し、被処理物との間で直流電源を用い電解することにより、硝酸塩から析出した金属とリン酸塩を含む皮膜を形成することを特徴とする電解リン酸塩化成処理方法;
(3) 硝酸塩から溶解した金属イオンが20g/L以上であり、且つリン酸及びリン酸イオンは硝酸塩から溶解した金属イオンの1/2以下である(1)もしくは(2)記載の電解リン酸塩化成処理方法;
(4) リン酸塩化成処理浴の酸化還元電位(ORP:水素標準電極電位)が、770mv以上である(1)もしくは(2)記載の電解リン酸塩化成処理方法;
(5) 電解電圧が6V以下で、電解電流が2A/dm2以上である(1)もしくは(2)の電解リン酸塩化成処理方法;
(6) 電解電圧が15V以下で、かつ電解電流が20A/dm2以上である(1)もしくは(2)記載の電解リン酸塩化成処理方法;
(7) 金属の温鍛もしくは熱鍛加工時において、被鍛造材に加えられる温度以上の融点を有する金属とリン酸塩から構成される「リン酸塩+金属」の化成皮膜を被鍛造材の表面に形成し、その上に潤滑剤を担持させて潤滑機能を有した皮膜を被鍛造材表面に形成した被鍛造材を用いることを特徴とする温間もしくは熱間鍛造加工用潤滑処理方法;
(8) 被鍛造材の表面に形成する「リン酸塩+金属」から構成されるリン酸塩皮膜形成が、(1)もしくは(2)記載のリン酸塩化成皮膜であることを特徴とする温間もしくは熱間鍛造加工用潤滑処理方法。
(9) 潤滑剤が、有機脂肪酸塩を含む有機化合物及び多層構造を有する無機高分子化合物であることを特徴とする(7)もしくは(8)記載の温間もしくは熱間鍛造加工用潤滑処理方法;
(10) 潤滑剤が、ステアリン酸塩、黒鉛、二硫化モリブデンもしくは雲母である(9)記載の温間もしくは熱間鍛造加工用潤滑処理方法;
(11) 金属の温鍛もしくは熱鍛加工時に被鍛造材に加えられる温度以上の融点を有する金属とリン酸塩から構成される「リン酸塩+金属」皮膜を形成し、その上に潤滑剤を担持させた、温鍛もしくは熱鍛加工での潤滑機能を有する皮膜を形成した被鍛造材を形成し、この被鍛造材を加熱し、温間鍛造加工もしくは熱間鍛造加工を行うことを特徴とする温間もしくは熱間鍛造加工方法;ならびに
(12) 「リン酸塩+金属」皮膜が、示差熱分析で結晶水を含まないリン酸塩を含む(11)記載の温間もしくは熱間鍛造加工方法、
である。
本発明の効果は、第1に「金属+リン酸塩」の化成皮膜を電解処理法で形成する際に、効率的な方法を提供する事である。すなわち、従来の処理方法よりも、多くの電流を流す事ができ、故に処理時間を短くできる方法を提供する。
本発明の第2の効果は、「金属+リン酸塩」の化成皮膜を電解処理法で形成する際に、従来より低い電圧印加で皮膜形成できる事である。従来の実績の無い1.5〜6Vの電圧印加で「金属+リン酸塩」のリン酸塩化成皮膜を形成する事ができる。印加電圧を低くできる事は、処理浴の分解を抑制する事になる。従って、処理浴の安定性は大幅に向上する。故に、スラッジ生成を効率良く抑制する事になる。又、印加電圧の低下で、形成する皮膜の結晶粒径を小さくできる。結晶粒を小さくする事は、塗装下地に用いた場合耐食性の向上に寄与すると考えられる。
本発明の第3の効果は、「金属+リン酸塩」の化成皮膜の特性を活かし、新規分野への適用を行う事である。それは、温鍛加工潤滑処理への適用を可能とした事である。本発明から形成されるリン酸塩化成皮膜は耐熱性を有する。その為、従来の無電解処理から得られた皮膜では適用できなかった温鍛加工潤滑処理の分野にリン酸塩化成皮膜を適用した。
この新たな潤滑処理は、冷鍛加工潤滑処理と同様に被鍛造材表面と化学的に反応したリン酸塩化成皮膜を用い、その上に潤滑剤を覆い皮膜とする。故に、有機脂肪酸塩(例えばステアリン酸ナトリウム等)等、従来適用不可であった材料を温間鍛造の潤滑剤として用いる事ができる。
又、被鍛造材を250℃程度に加熱した後、被鍛造材に物理的に塗布していたグラファイト等の潤滑剤に対しても、加熱することなく塗布する事が可能である。そして、塗布されたグラファイト等の潤滑剤は、加熱された鉄表面に付着するのでなくリン酸塩化成皮膜に付着するので、被鍛造材への密着性は向上する。この事は、潤滑性に良好な傾向である。
本発明の電解処理で形成する皮膜は、「金属+リン酸塩」である。
そして、金属は硝酸塩の形で処理浴に溶解し補給される。そして、電解で還元され、析出する。すなわち、次に示す式(2)で析出する。
2+ + 2e → M (2)
又、リン酸塩はリン酸が解離し金属塩として析出する。その際に析出する金属塩は、金属がリン酸を解離させ溶解できる金属種に限られる。その金属種は、亜鉛、鉄もしくはマンガンに限定される。しかし、本発明では、金属がリン酸を解離させ溶解させて用いる事のできる金属は、処理浴の安定性確保の視点から、亜鉛が好適である。
最初に、リン酸塩化成処理浴の組成に関して述べる。
リン酸塩化成処理浴を構成する成分は、「リン酸」、「亜鉛がリン酸を解離した状態で溶解し、リン酸イオンと会合し溶解している部分」、「ニッケル、コバルト、マンガン、銅、及び亜鉛の硝酸塩の溶解した部分」から構成される。これは、陰イオンの種類で分類すれば、「リン酸イオン系の部分」と「硝酸イオン系の部分」に分類される。それ以外のイオン種は、雑イオンであり0.5g/L以下に規定される。
本発明のリン酸塩化成処理浴は、処理浴を構成する成分を上記の陰イオンの種類の比率で表示すると硝酸イオン系>リン酸イオン系であり、硝酸塩の金属が10g/L以上であり、且つリン酸及びリン酸イオンの合計は、硝酸塩金属の1/2以下である。
本発明のリン酸塩化成処理浴は、より望ましくは硝酸塩の金属が20g/L以上であり、且つリン酸及びリン酸イオンの合計は、硝酸塩金属の1/2以下である。
尚、アルミ材の電解処理では、アルミ表面での酸化膜生成防止の為に必要な量、たとえば1g/L以下のF(弗素)イオンの含有は許容される。
次いで、電極材料について述べる。電極材料は析出させようとする金属を用いる。還元させ析出する金属は、処理浴に硝酸塩として補給される金属と同一である。従って、用いられる金属電極材料は、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、及び亜鉛又はそれらの金属の合金である。
次いで電解処理方法ついて述べる。電解処理は、上記の処理浴及び電極材料と直流電源を用いて、図1に示すような電解処理システムを形成し、行う。そして、電解処理は、通常被処理物を陽極とし、鉄電極を陰極として陽極電解処理を行ない、次いで処理浴の硝酸塩である金属を陽極とし被処理物を陰極とした陰極電解処理の順で行う。場合によっては、陽極処理を省略する事も可能である。また、電極材料は陽極処理と陰極処理で異なる事が一般的であり、複数用いる事ができる。又、電解リン酸塩化成処理浴は、通常電解処理浴槽と処理をしない槽を設け、その間を循環させる事が望ましい。その際は、処理浴で発生する硝酸イオンの還元に伴い生成する分子状の窒素酸化物(NO)が除去できる構造とすべきである。
次いで、その他の工夫に関して述べる。処理浴のORP:酸化還元電位を計測し770mv以上に維持する事が望ましい。これは、処理浴中に電極及び被処理物から溶解する鉄イオンを制御する為に必要である。式(1)からORP770mv以上の浴は、Fe2+を原則含まない。すなわち、本発明の硝酸イオンを主体に含む処理浴は、Fe2+を含む場合は(すなわち、ORPが770mv以下の場合は)、処理浴中でFe3+に酸化され、処理浴中でFeイオンの溶解度が低下ししスラッジが生成する。
故に、処理浴のORPを770mv以上に維持する事は、処理浴中のFe2+を、すなわち、式(3)で示される電極及び被処理物から溶解してくる鉄イオン量を制御する事である。
Fe → Fe2+ + 2e (3)
故に、処理浴のORP制御を実施する事は望ましい。
電解処理は概ね15V以下で行われる。又、より望ましくは6V以下である。
次いで、本発明の電解リン酸塩化成処理の応用として温間(もしくは熱間)鍛造潤滑処理への適用がある。その最良の形態に関して述べる。
本発明の温間鍛造加工用潤滑処理は、金属の温鍛加工時に被鍛造材に加えられる温度以上の融点を有する金属とリン酸塩から構成される「リン酸塩+金属」皮膜が被鍛造材の表面に形成され、その上に潤滑剤を担持させた、温鍛加工での潤滑機能を有する皮膜を形成した被鍛造材が形成される。そして、被鍛造材の表面に形成する「リン酸塩+金属」から構成されるリン酸塩皮膜形成は、電解処理方式で行われる。
金属の鍛造加工での潤滑機能は、金型と被鍛造材(金属)が接触して被鍛造材が塑性変化する際、被鍛造材表面を覆った潤滑皮膜(下地皮膜+潤滑皮膜)が鍛造加工の温度領域で溶融して流動化し、被鍛造材の塑性変形に追随して変化することで、被鍛造材と金型が直接に接触することを防ぐ事である。その際、潤滑膜を構成する下地皮膜は一般的にリン酸塩を含む無機化合物であり、潤滑剤は、通常200〜1000℃の間で軟化する有機化合物、または層状構造を有する無機化合物が好適である。たとえば、ステアリン酸ナトリウム等の有機脂肪酸塩、フッ素樹脂、二硫化モリブデン、グラファイト(黒鉛)等が好適に使用される。
冷鍛加工の潤滑処理下地膜としてリン酸塩化合物が下地皮膜として選ばれるのは、冷鍛加工の温度領域で、金型と被鍛造材(金属)が接触して被鍛造材が塑性変化する際、被鍛造材表面を覆った潤滑皮膜(下地皮膜+潤滑皮膜)が鍛造加工の温度領域で溶融して流動化し、被鍛造材の塑性変形に追随して変化しうるからである。したがって、冷鍛加工でリン酸塩化成皮膜に要求される機能は、被鍛造材(金属)との適度な密着性とステアリン酸ナトリウム等潤滑剤を均一に分布させ保持する事である。
そして、潤滑剤は、鍛造加工の温度領域で、金型と被鍛造材(金属)が接触して被鍛造材が塑性変化する際、潤滑剤が相手側の金型と反応することなく安定に存在し、且つ流動性を有することで被鍛造材の塑性変形(延び)に追随し、金型と被鍛造材が直接触れるのを防ぎ、金型が劣化するのを防止しうるものが好適である。
次に鍛造加工・潤滑処理の下地処理皮膜に限って説明を進める。下地皮膜に要求される事は、「素材金属との密着性の保持」と「潤滑剤を均一に保持する事」である。もし、潤滑剤が素地金属に化学的な反応を介して密着性を保持できれば、下地処理皮膜は不要である。しかし、そのような潤滑剤は存在しない為、下地処理が必要となる。
下地処理に必要とされる素材金属との密着性とは、鍛造加工の温度領域で、金型と被鍛造材(金属)が接触して被鍛造材が塑性変化する際、被鍛造材表面を覆った潤滑皮膜(下地皮膜+潤滑皮膜)が鍛造加工の温度領域で軟化して流動化し、被鍛造材の塑性変形に追随して変化する密着性である。
従って、下地処理皮膜は、素地金属との密着性が強すぎても適切でない。適度な密着性が求められる。
又、下地処理皮膜は、潤滑剤を均一に保持する機能が求められる。一般的な潤滑剤は有機脂肪酸塩・多層構造の無機高分子化合物(グラファイト等)等であり、金属表面との化学的親和性を有しないものである(故に、潤滑剤は金属に直接に形成する事ができない。)。これに対し、リン酸塩は、上記の潤滑剤と化学的親和性を有するので、潤滑剤を保持する事ができる。
このように、潤滑下地処理膜は、化学的性質の異なる素地金属と潤滑剤の間に介在し、両者を結合させる役割を果たしている。これは、重要な機能である。
鍛造加工の潤滑処理で考慮すべき事は、温度領域である。鍛造加工は、冷間鍛造、温間鍛造、熱間鍛造等の鍛造方法で温度が異なる。また、温間鍛造は金属の種類でその加工温度は異なる。したがって、鍛造加工の温度領域で潤滑性、流動性の区分は概ね以下のとおりである。
鍛造加工−(i)冷鍛加工:加工温度100〜250℃
(ii)温鍛加工・(ii−1)鉄鋼:加工温度300〜1000℃
(ii−2)非鉄金属:加工温度200〜600℃
従って、潤滑処理(下地皮膜+潤滑膜)も上記の温度を参考に適用される。
現在鉄鋼の冷鍛加工・潤滑処理下地膜としてリン酸塩化合物が選ばれるのは、その温度領域で金型と被鍛造材(金属)が接触して被鍛造材が塑性変化する際、被鍛造材表面を覆った潤滑皮膜(下地皮膜+潤滑皮膜)が鍛造加工の温度領域で軟化して流動化し、被鍛造材の塑性変形に追随して変化するという機能を発揮しうるからである。従って、冷鍛用潤滑処理のリン酸塩化成皮膜に要求される機能は、被鍛造材(金属)との適度な密着性と潤滑剤の均一な分布と保持である。
さて、温間鍛造に適用できる潤滑下地膜を考えた場合には、鍛造温度を考慮する必要がある。すなわち、200℃以上に加熱しても下地膜が素材から脱離することなく、素材の塑性変形に追従する事が望まれる。リン酸塩化成皮膜の潤滑剤との化学的親和性は従来から確認されている。しかし、従来の無電解処理から得られた皮膜は、温鍛用下地処理には適用されていない。それは、200℃以上に被処理物が加熱されるとリン酸塩化成皮膜が分解し被処理物から脱離する為である。
従来の無電解処理から得られたリン酸塩化成処理皮膜は、Zn(PO42 ・4H2O等の結晶水を含んだ、50μm程度の大きな結晶粒の形であり、温度上昇に伴い結晶水が脱離し、大きな結晶粒の皮膜自体の化学構造が破壊されると推定される。故に、無電解処理で形成されたリン酸塩化成皮膜は、耐熱性を有しない。
温鍛用潤滑処理に適用するリン酸塩化成皮膜は、耐熱性を有する事が望まれる。そして、本発明の電解処理で得られる「リン酸塩+金属」化成皮膜は、温鍛加工に適用できる耐熱性を有する。その皮膜は、還元されて析出した金属を多く含み、且つ、リン酸塩を含む皮膜である。
また、本発明の電解処理から形成された皮膜は、「リン酸塩+金属」の化成皮膜であり、リン酸塩を含む故、潤滑剤との親和性を持つ。このように、本発明の皮膜は、耐熱性と潤滑剤との親和性を併せ持つ特徴を有する。
そのような皮膜の形成は、特許文献1に示した皮膜成分以外の金属イオンを含まない処理浴を用いることを踏襲した上で、形成できる。
すなわち、本発明の温間鍛造加工用潤滑処理は、被鍛造材の表面に電解処理で形成する「リン酸塩+金属」から構成されるリン酸塩皮膜の形成を、リン酸及びリン酸イオン;リン酸を解離させて溶解することができる金属である亜鉛イオン;ならびにニッケル、コバルト、マンガン、銅もしくは亜鉛の硝酸塩を溶解させた溶液;から構成される処理浴の中で、被鍛造材を電解する方法で行われる。
そして、好適には、被鍛造材の表面に形成する「リン酸塩+金属」から構成されるリン酸塩皮膜形成は、硝酸塩から溶解した金属イオンが10g/L以上であり、且つリン酸及びリン酸イオンは上記金属イオンの1/2以下である処理浴で行われる。さらに好適には、被鍛造材の表面に形成する「リン酸塩+金属」から構成されるリン酸塩皮膜形成は、硝酸塩から溶解した金属イオンが20g/L以上であり、且つリン酸及びリン酸イオンは上記硝酸塩から溶解した金属イオンの1/2以下である処理浴で行われる。
次に、上記皮膜を温鍛加工へ適用することについて説明する。なお、本発明においては前記のように鉄鋼材の例を主として記述するが、本発明は、温鍛加工を実施する金属材料全般に適用できる。
温鍛加工は、金属材料を室温よりも高温に加熱した後に鍛造加工するものである。その加熱温度は、金属の種類により異なる。表2に温鍛加工に供する各種金属の一般的な温鍛および熱鍛加工温度を示す。
次に、被鍛造材に形成する「リン酸塩+金属」皮膜の金属の特性と処理浴の条件を明確にする。表3にリン酸塩化成皮膜に含むことが可能な金属を挙げる。
「リン酸塩+金属」に該当する金属の第1に必要な条件は、金属の融点に関する事である。皮膜に含まれる金属は、被鍛造材の温鍛加工温度程度以上の融点を有するが必要である。(表2参照)
第2の必要な条件は、皮膜を形成する処理浴中での挙動に関する事である。金属が皮膜に取り込まれるには、リン酸塩化成処理浴中で2価金属イオンとして安定して溶解し、存在している事が必要となる。そのためには、溶媒である水が分解しない、酸化還元電位の範囲内では、金属の電荷が容易に変動しない事が必要である。すなわち、M2+ ⇔ M3+ + e の平衡が存在しない事である。
(金属イオンが、M2+ → M3+ + e でM3+ となると溶解度が減少する。その為、処理浴中にスラッジが生成する。これは、処理浴の溶液としての安定性を阻害するものであり、許容されるものではない。)
第3の必要な条件は、溶媒である水の電気分解に影響されない事である。水の電気化学的反応での分解は、処理浴の電位が、下記式(4)および(5)に示される酸化還元電位を超えた状況で発生する。
アノード反応:H + 2OH ⇔ 2HO + 2e :−0.83V (4)
カソード反応:0 + 4H + 4e ⇔ 2HO :1.23V (5)
従って、処理浴中の金属成分のM2+ ⇔ M3+ + e 平衡電位が、式(4)および(5)で示される電位の範囲内にあるならば、その金属成分イオンは、処理浴中でM2+の状態からM3+ の状態になる可能性を有す。そのような変動が起こる事は望ましくない。
表3に挙げた金属は、―0.83V〜1.23Vの範囲にM2+ ⇔ M3+ + e 平衡電位を有していない。
第4の必要条件は、溶媒である水の電気分解の影響を受けることなく、カソード析出が行えることである。これは、表3の M ⇔ M2+ + 2e を考慮する必要がある。すなわち、金属イオンのカソード析出:M2+ + 2e → M が−0.83V以下の場合は、溶媒である水のカソード分解反応式(4)の反応が優先的に起こる為、金属イオンのカソード析出は原則的に不可である。すなわち、表3の金属の析出―溶解反応電位が、−0.83Vより大幅に低ければ、水溶液からの電解析出は不可能である。表3に挙げた金属(Ni,Mn,Co,Cu,Zn)は、Mnを除き析出―溶解反応電位は、−0.83V以上であり、析出可能である。Mnの電位は、僅かに−0.83Vを下回る範囲であり、析出可能である。
故に、表3に掲げた金属は、上記の3つの条件を満足するので、電解処理で「リン酸塩+金属」の化成皮膜を形成する事ができる。但し、被鍛造材の種類に応じて、析出金属を適時用いることが必要である。
次に潤滑剤の機能と最適な形態について述べる。潤滑剤は、被処理物に形成するものとして、従来から温鍛用に使用されているもの:例えばグラファイト等は引き続き本発明でも使用できる。又、温鍛加工被処理物用に、新規の潤滑剤として有機脂肪酸塩も使用できる。これは、耐熱性を有するリン酸塩化成皮膜を潤滑剤の下地処理として用いる事によるものである。
潤滑剤の機能は、温間鍛造時に被処理物と金型が直接接触するのを防ぐものである。鉄鋼用の場合、250℃程度に加熱後、被鍛造物に直接塗布する潤滑剤として、グラファイト(黒鉛)が使用されている。しかし、そこで塗布されたグラファイトは被鍛造材と物理的に付着しているのみであり、確実な密着性を有しない。従って、その被鍛造材は直ちに800℃程度まで加熱し、温鍛加工される工程である。
下地皮膜として耐熱性を有するリン酸塩化成皮膜が形成されているならば、被鍛造材への潤滑膜の形成は容易となる。これは、潤滑剤が、リン酸塩化成皮膜と化学的親和性(性質が類似する)を有する為である。それ故、化成皮膜表面は、鉄鋼材表面に比較し、潤滑剤を均一に分散付着させ、確実に密着させる事ができる。
本発明の温間鍛造加工方法においては、耐熱性を有するリン酸塩化成皮膜を形成し、その上に潤滑剤を塗布する。それ故、新規の潤滑剤として有機脂肪酸塩を使用する事が可能となる。すなわち、冷間鍛造で従来から用いられて来たステアリン酸ナトリウム等の脂肪酸塩を用いる事ができる。
すなわち、本発明の温鍛加工潤滑処理は、金属の温鍛加工時に被鍛造材に加えられる温度程度以上の融点を有する金属とリン酸塩から構成される「リン酸塩+金属」皮膜を形成し、その上に有機脂肪酸塩、多層構造の無機高分子化合物等である潤滑剤を担持させた、温鍛加工での潤滑機能を有する皮膜を形成した被鍛造材を形成し、この被鍛造材を加熱し、温間鍛造加工を行う。そして、温間鍛造自体は原則的に現状と同じ方法で行いうる。温間もしくは熱間鍛造時の型への潤滑剤吹きつけは、型の冷却する機能も備えたものであり、必要である。
実施例1〜5
(I.電解リン酸塩化成処理の効率化)
表4に実施例1−5と比較例1の処理浴条件を示す。
比較例はリン酸及びリン酸イオン濃度が金属イオン(Ni)の1/2以上である。従って、その点で、本発明の処理浴ではない。
これらの処理浴で電解リン酸塩化成処理を行った。表5にその概要を示す。
尚、膜厚は、電磁膜厚計((株)ケット科学研究所:LE-300J)での計測である。
図2−図7にそれぞれ実施例1〜5および比較例1で形成した皮膜のSEM写真(1000倍)を示す。実施例1は電圧が小さい為、電流も小さく皮膜形成が充分ではない。実施例2〜5は皮膜を形成している。
比較例1は量産設備での実施結果である。表6に比較例の工程を示す。
比較例1はクラッチ部品ステータを被処理物とするものであり、図8は、化成処理→電着塗装(膜厚15μ)後、塩水噴霧試験2000時間経過後の外観である。塗膜クロスカット部からの塗膜の剥離は無く、耐食性は良好である。
尚、塗料は、日本ペイント(株)「パワーニックス」110ブラック:鉛フリーカチオン電着塗料である。
次に実施例1〜5の電着塗装を記す。
電着塗装:パワーニックス110ブラック(鉛フリーカチオン電着)
塗装条件:下記の3種類で行う。
イ:電着塗装時間:45秒(立上り電圧制御10秒含む)
ロ:電着塗装時間:60秒(立上り電圧制御11秒含む)
ハ:電着塗装時間 90秒(立上り電圧制御12秒含む)
塗装温度:30℃ 焼付け乾燥温度:160℃×10分
塗装電圧:150V
塗装→焼付け後の各実施例の塗装膜厚を表7に示す。(表示はμm)
塗装膜厚は、化成皮膜の形成条件よりも、電着塗装時間に大きく依存する。
上記の塗装品の塩水噴霧試験結果を表8に示す。表8に示す数字は塗膜をカットした線からの剥離幅をmmで表示した値である。表示値は小さいほうが良好である。
表8の結果は、塗装耐食性は、塗装膜厚よりも化成処理条件に大きく依存している事を示している。そして、電解処理品の実施例は、電圧1.8Vを除いては、塗装膜厚が少なくても、塗装耐食性は現状レベルである。
本特許の実施例は、比較例の1/2の処理時間(化成処理・電着塗装・焼付け時間)で処理できることがわかる。それは、上記の塗装条件イと実施例1-5の組み合わせで可能である。その組み合わせでは、塗装膜厚も比較例の1/2となるが、耐食性は比較例1のレベルを維持できる。
そして、電解電圧は3−6vであり、比較例1の8vに比べ低い電圧での処理が可能となる。故に、電解電圧的には処理浴成分が分解するのを抑制される方向になる。すなわち、スラッジ生成をより抑制できる方向になる。
実施例6〜8
(II.温鍛加工への適用)
自動車エンジン部品(ロアボデー:材質SCM415)を用いた。図9は温鍛加工前、図10は温鍛加工前後の状態を示す。
表9に実施例6〜8、比較例2の温鍛加工の工程を示す。但し、水洗・湯洗は省略する。又、温鍛プレスでは実施例6〜8、比較例2とも、プレス型に固形潤滑剤(グラファイト)を同じ条件でスプレー塗布した。
実施例6〜8の違いは、潤滑剤の種類の違いのみである。又、実施例6〜8と比較例2の違いは、実施例がショットブラスト(前工程リン酸塩化成処理膜の除去で実施)を含めて、被鍛造材に「金属+リン酸塩」の下地処理と潤滑処理を実施したのに対し、従来例はそれらの処理を実施していない事である。
電解リン酸塩化成処理の詳細は以下である。処理浴の組成はりん酸及びリン酸イオン:15g/L、亜鉛イオン:10g/L、Niイオン:51g/L、硝酸イオン:157g/Lである。この処理浴の中に図9に示した被処理物(ロアボデー)を陰極とし、Ni板を陽極として配置する。10秒電圧を加えず浸漬した後、5秒で13Vまで電圧を上昇させ、電流を被処理物1ケ(1.2dm2の表面積)当り28〜32A×25秒流す。その時の温度は30〜34℃である。このようにして、被処理物表面に黒灰色のリン酸塩+Niの皮膜を形成する。
又、潤滑処理は水溶液に浸漬し皮膜を形成する。その概要は表10に示す。
温鍛加工プレスでの加工荷重の違いを表11に示す。
実施例と比較例では加工荷重が大きく異なった。実施例は、加工荷重が低く良好である。これは、被鍛造材に潤滑皮膜を形成したもの(実施例)と潤滑皮膜を形成しない場合(比較例)で潤滑性能が大幅に異なる事を示している。本発明が有効である事は明らかである。
(III.リン酸塩化成皮膜の組成の比較)
本発明の実施例6〜8が、従来の電解リン酸塩化成処理皮膜と異なる事を示す。従来の電解処理から得られた皮膜(比較例3)として、特開2000-234200号公報の実施例1および4を比較例3として挙げる。
実施例6〜8と比較例3の違いは、処理浴組成、皮膜組成ともりん酸又はリン(P)に対する金属成分の比率である。処理浴組成、皮膜組成とも本発明の実施例は、比較例3に比較し金属成分比率が大きい。すなわち、本発明の皮膜は金属成分大の皮膜である。いずれにしても、従来例との違いは明確である。
(IV.リン酸塩化成皮膜の耐熱性の比較)
次いで、皮膜の耐熱性をDSC:示差熱分析結果で示す。
図11:実施例6〜8(電解処理からの温鍛用リン酸塩皮膜)の示差熱分析図
図12:比較例4(無電解処理からのリン酸塩皮膜)の示差熱分析図
比較例4は、従来の無電解方式で作成した皮膜である。リン酸塩化成処理浴は、日本パーカライジング(株)化成処理薬品:「パルボンド」3684Xを所定の条件に調整したものである。その処理浴(80℃)に冷間圧延鋼板を10分浸漬し皮膜を形成した。図12は、その皮膜の示差熱分析図であり、図14は、その皮膜のSEM図である。
図11は、本発明の実施例6〜8に用いたリン酸塩化成皮膜構成物の示差熱分析図である。すなわち、鉄鋼材料の温鍛加工用に電解処理で作成したリン酸塩化成皮膜である。
図12は、鉄鋼の現在、冷鍛加工用に使用している従来例のリン酸塩化成皮膜構成物の示差熱分析図である。すなわち、無電解処理方式で得たリン酸塩皮膜の示差熱分析図である。
図11と図12の大きな違いは、図12では200℃以下の温度領域で示差走査熱量曲線の変化があるのに対し、図11ではそのような現象が見られない事である。
図12の無電解処理からの皮膜は200℃までの温度上昇で大きな重量変化(減少)を生じている。この大きな示差走査熱量曲線の変化は、皮膜構造の大きな変化を示している。従来の無電解処理で得られたリン酸塩化成皮膜は、水の結晶を含んだ結晶(含水塩):Zn(PO42・4H2Oの形で存在する事が知られている。従って、皮膜構造の大きな変化は200℃までの加熱で、リン酸塩結晶から水の結晶が抜ける事によるものである。また、図13と図14を見れば、電解処理と無電解処理では皮膜外観が異なる事は明確である。この外観の違いが、皮膜の構造に関係していると考えられる。
このような事から、従来の無電解処理で形成したリン酸塩化成皮膜を500℃以上に加熱する温鍛加工の下地皮膜に適用する事は不可である。故に、従来のリン酸塩化成皮膜が温鍛用に用いられる事は無かった。
示差熱分析の結果は加熱による皮膜の重量変化を示している。無電解処理で形成した皮膜(図12)は170℃の示差走査熱量曲線の吸収までで、9.78/11.062=0.884の重量減少を生じているが、本発明の電解処理皮膜(図11)は187℃の僅かな変化までで、13.57/13.804=0.983までの減少に留まっている。これは、本発明のリン酸塩化成皮膜が耐熱性で従来皮膜よりも有効である事を示している。
実施例9
(潤滑剤に有機脂肪酸塩を用いた実施例)
自動車エンジン部品(NBシリンダー:材質SUJ2:クロムを含んだ合金鋼)を用いた。
図15、図16は、それぞれ温鍛加工前と温鍛加工後におけるNBシリンダーの形態を示す。
表13に実施例9および比較例5の温鍛加工の工程を示す。
なお、温鍛プレスでは実施例9、比較例5ともに、プレス型に潤滑剤を同じ条件でスプレー塗布した。
又、実施例9と比較例5の違いは、実施例9がショットブラスト(前工程リン酸塩化成処理膜の除去で実施)を行った後、被鍛造材に「金属+リン酸塩」の下地処理と潤滑処理としてステアリン酸ナトリウム溶液に浸漬する処理を実施したのに対し、比較例5はそれらの処理を実施しない事である。
実施例9の電解リン酸塩化成処理は実施例6〜8と同じである。
温鍛加工プレスでの加工荷重を表14に示す。
実施例9と比較例5の加工荷重は同等である。実施例9は、被鍛造材の潤滑処理剤としてステアリン酸ナトリウムを用いた例である。これは、従来の被鍛造材に潤滑皮膜としての実績の無いものである。本発明が、安価なステアリン酸ナトリウムを潤滑処理に適用できる例を示したものである。
本発明の電解リン酸塩化成処理方法は、従来の電解処理に対し低い電圧で、大きな電流を印加する事ができる。すなわち、従来よりも効率的な電解リン酸塩化成処理技術である。
又、本発明は、温間鍛造用潤滑処理に関して有効である。従来、リン酸塩化成皮膜を潤滑剤の下地処理として用いる事は出来なかったが、本発明の金属を多く析出させる方法を利用し、温間鍛造に適用できる皮膜を開発し、新たな温間鍛造潤滑処理方式を開発した。開発した潤滑処理は、温間鍛造時の加工荷重を大幅に低下させる事を確認した。故に、温間鍛造の革新を可能とする技術である。
電解処理での電流およびイオンの流れを示す図。 実施例1で形成した皮膜のSEM写真(1000倍)。 実施例2で形成した皮膜のSEM写真(1000倍)。 実施例3で形成した皮膜のSEM写真(1000倍)。 実施例4で形成した皮膜のSEM写真(1000倍)。 実施例5で形成した皮膜のSEM写真(1000倍)。 比較例1で形成した皮膜のSEM写真(1000倍)。 化成処理、電着塗装(膜厚15μ)後、塩水噴霧試験2000時間経過後の外観。 被鍛造材(ロアボデー)の概略図。 被鍛造材(ロアボデー)の温鍛加工前後の状態を示す。 本発明の実施例6〜8に用いたリン酸塩化成皮膜の示差熱分析図。 比較例4のリン酸塩化成皮膜の示差熱分析図。 実施例6〜8のリン酸塩化成皮膜のSEM図。 比較例4のリン酸塩化成皮膜のSEM図。 実施例9における温鍛加工前後の状態(NBシリンダー)を示す。 比較例5における温鍛加工前後の状態(NBシリンダー)を示す。

Claims (12)

  1. 「リン酸」、「リン酸溶液に溶解し、リン酸を解離させて溶解することができる金属である亜鉛、鉄もしくはマンガン」ならびに「皮膜成分となる金属の硝酸塩」を溶解させた溶液から構成される処理浴であり、硝酸イオン以外の陰イオン及び皮膜成分となる金属イオン以外の金属イオンが0.5g/L以下であり、硝酸塩から溶解した金属イオンが10g/L以上であり、且つリン酸及びリン酸イオンは上記硝酸塩から溶解した金属イオンの1/2以下である電解リン酸塩化成処理浴の中を用いて、上記処理浴の硝酸塩となる金属を電極として使用し、被処理物との間で直流電源を用い電解することにより、硝酸塩から析出した金属とリン酸塩を含む皮膜を形成することを特徴とする電解リン酸塩化成処理方法。
  2. 「リン酸溶液に亜鉛を溶解させたリン酸塩溶液」;リン酸及びリン酸イオン;リン酸を解離させて溶解することができる金属である亜鉛イオン;ならびにニッケル、コバルト、マンガン、銅もしくは亜鉛の硝酸塩;を溶解させた溶液から構成される処理浴であり、硝酸イオン及びリン酸イオン以外の陰イオンならびに皮膜成分となる金属イオン以外の金属イオンがそれぞれ0.5g/L以下であり、硝酸塩から溶解した金属イオンが10g/L以上であり、且つリン酸及びリン酸イオンは上記金属イオンの1/2以下である電解リン酸塩化成処理浴を用いて、上記処理浴の硝酸塩となる金属を電極として使用し、被処理物との間で直流電源を用い電解することにより、硝酸塩から析出した金属とリン酸塩を含む皮膜を形成することを特徴とする電解リン酸塩化成処理方法。
  3. 硝酸塩から溶解した金属イオンが20g/L以上であり、且つリン酸及びリン酸イオンは硝酸塩から溶解した金属イオンの1/2以下である請求項1もしくは2記載の電解リン酸塩化成処理方法。
  4. リン酸塩化成処理浴の酸化還元電位(ORP:水素標準電極電位)が、770mv以上である請求項1もしくは2記載の電解リン酸塩化成処理方法。
  5. 電解電圧が6V以下で、電解電流が2A/dm2以上である請求項1もしくは2の電解リン酸塩化成処理方法。
  6. 電解電圧が15V以下で、かつ電解電流が20A/dm2以上である請求項1もしくは2記載の電解リン酸塩化成処理方法。
  7. 金属の温鍛もしくは熱鍛加工時において、被鍛造材に加えられる温度以上の融点を有する金属とリン酸塩から構成される「リン酸塩+金属」の化成皮膜を被鍛造材の表面に形成し、その上に潤滑剤を担持させて潤滑機能を有した皮膜を被鍛造材表面に形成した被鍛造材を用いることを特徴とする温間もしくは熱間鍛造加工用潤滑処理方法。
  8. 被鍛造材の表面に形成する「リン酸塩+金属」から構成されるリン酸塩皮膜形成が、請求項1もしくは2記載のリン酸塩化成皮膜であることを特徴とする温間もしくは熱間鍛造加工用潤滑処理方法。
  9. 潤滑剤が、有機脂肪酸塩を含む有機化合物及び多層構造を有する無機高分子化合物であることを特徴とする請求項7もしくは8記載の温間もしくは熱間鍛造加工用潤滑処理方法。
  10. 潤滑剤が、ステアリン酸塩、黒鉛、二硫化モリブデンもしくは雲母である請求項9記載の温間もしくは熱間鍛造加工用潤滑処理方法。
  11. 金属の温鍛もしくは熱鍛加工時に被鍛造材に加えられる温度以上の融点を有する金属とリン酸塩から構成される「リン酸塩+金属」皮膜を形成し、その上に潤滑剤を担持させた、温鍛もしくは熱鍛加工での潤滑機能を有する皮膜を形成した被鍛造材を形成し、この被鍛造材を加熱し、温間鍛造加工もしくは熱間鍛造加工を行うことを特徴とする温間もしくは熱間鍛造加工方法。
  12. 「リン酸塩+金属」皮膜が、示差熱分析で結晶水を含まないリン酸塩を含む請求項11記載の温間もしくは熱間鍛造加工方法。
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