JP2007045724A - 2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルの製造方法 - Google Patents

2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 シアノヒドリンを原料とする簡便な2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルの製造方法を提供する。
【解決手段】 シアノヒドリン、アルコール類、溶媒および水との混合物に塩化水素を導入することを特徴とする、2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルの製造方法である。特に、シアノヒドリンとして青酸とアルデヒドとの反応液を使用すると、未反応の青酸の処理も簡便に行うことができ、有利である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、シアノヒドリンから対応するα−ヒドロキシエステルを製造する方法に関し、より詳細には、シアノヒドリン、アルコール、溶媒および水を含む反応液に塩化水素を導入してエステル化反応を行わせることを特徴とする、特に2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルを製造する方法に関する。
α−ヒドロキシエステルは、医農薬原料や写真薬原料の中間体として、工業的に重要な化合物である。出発原料として、アミド、アルコールおよびギ酸エステルを使用する方法や、α−ヒドロキシカルボン酸とアルコールとを使用する方法のほか、シアノヒドリンとアルコールとを使用する方法などがある。中でも、シアノヒドリンはアルデヒドと青酸とから容易に調製できるため、シアノヒドリンを出発原料とする2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルの製造方法も各種提案されている。
例えば、ケトンシアノヒドリンと硫酸とを反応させ、反応物とアルコール類とをエステル化し、これにアルカリ金属などの無水硫酸塩を添加してα−ヒドロキシ脂肪酸エステル類を製造する方法がある(特許文献1)。
また、第一工程においてシアノヒドリンをアルコール溶媒中で塩化水素などの酸と反応させてイミノエーテル塩酸塩を合成し、第二工程において未反応の酸を除去した後に水を添加して加水分解し、高収率で2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルを製造する方法もある(特許文献2)。α−ヒドロキシニトリル、アルコールおよび塩化水素ガスの反応による従来の方法では、反応時間が12〜15時間と長く、かつその間、反応混合液を連続してHCl流と接触させる必要があり操作が煩雑であること、およびエステルの収率も低いことに鑑みてなされたものである。R、R’をアルキル基としてこの反応を下記に示すが、第一工程に次いで第二工程を行うことで、α−ヒドロキシエステルを高収率かつ短時間で合成できる、というものである。
Figure 2007045724
また、特定のシアノヒドリンに水とリン酸とを反応させ、その反応物にアルコールを添加してエステル化を行なう方法もある(特許文献3)。該方法は、酸として硫酸や塩酸などの強酸を使用すると、生成物ヒドロキシカルボン酸エステルおよびアルコールのエーテル化反応の併発が避けられず、反応生成物中に副生物としてアルコキシカルボン酸エステルが混入する点に鑑みてなされたものであり、リン酸を使用する点に特徴がある。リン酸を用いて反応を行うとエーテル化物を生成する副反応が抑制され、高選択率で反応が進行するというものである。該反応を下記に示すが、シアノヒドリンに水とリン酸とを作用させてアミド化し、次いでアルコールによりエステル化を行なっている。
Figure 2007045724
また、特定のシアノヒドリンに特定量の水および特定量の硫酸とを反応させ、その反応物にアルコールを添加してエステル化を行なう方法もある(特許文献4)。シアノヒドリンに水と硫酸とを作用させてアミド化し、次いでアルコールによりエステル化を行ない、この反応混合物に含水アルコールを連続的に供給しながら同時に生成するヒドロキシカルボン酸エステルを留出させることでエーテル化合物を生成する副反応を抑制し、高選択率で反応を進行させるというものである。
米国特許第2041820号明細書 特開平4−230241号公報 特開平6−247895号公報 特開平6−247896号公報
しかしながら、特許文献1記載の方法は、無水の状態で反応を行うため副反応が発生し易く、収率が低下する場合がある。また、シアノヒドリンを原料に使用する場合には、シアンを構成する窒素原子が還元され最終的にアンモニアとなって排出されるため、酸として硫酸を使用すると不溶性の硫酸アンモニウムが発生し、処理負担が必要となる。なお、硫酸アンモニウムの処理負担の点では、特許文献4も同じである。また、シアノヒドリンとアルコールとの混合物を使用する特許文献2記載の方法では、該混合物に添加する塩化水素量が少ない場合にはスラリー状の反応物の流動性が低下し攪拌が困難となるため、予め多量の反応溶媒を必要とする。ただし、塩化水素量が2モル以上となる場合には、過剰に添加した酸の留去操作も必要となる。なお、特許文献3記載の方法は、リン酸を用いてアミド化を行なうものであり、水質汚濁防止法により製造所の立地によっては排出されるリン酸廃水の処理が困難となる場合がある。
また、上記特許文献1〜4の方法は、いずれも二段の反応を行い、第一工程の反応物を得た後に第二工程を実施しており、実際の反応操作が煩雑である。なお、シアノヒドリンは上記したように、物質の添加順序によって反応が異なり、したがって形成される中間体も異なる。例えば、シアノヒドリンは、塩酸存在下に水によってアミド塩酸塩を形成し、次いでアルコールを反応させるとエステル体を形成する。一方、シアノヒドリンに塩酸存在下にアルコールを反応させるとイミノエーテル塩酸塩を最初に形成し、これに水を加えると加水分解して対応するエステル体を形成する。
なお、シアノヒドリンは青酸をアルデヒドやケトンのカルボニル基に作用させることで容易に反応液中に調製できる。このため、該反応液からシアノヒドリンを単離せずに対応する2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルを製造できれば、未反応の青酸との分離工程が不要となる。また、残存する青酸を他の不要物の処理工程で同時に処理できれば、残存青酸の処理負担が軽減される。
本発明は上記現状に鑑みて、シアノヒドリンを原料化合物として使用し、合成反応および廃液処理を簡便にできる2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルを製造する方法を提供するものである。
本発明者は、シアノヒドリンを原料とした2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルの合成反応について詳細に検討したところ、従来は、シアノヒドリンに酸存在下に水またはアルコールを反応させて第一段階を行い、次ぐ第二段階目で、得られた中間体から目的物である2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルを製造していたが、シアノヒドリン、アルコール類、溶媒および水との混合物に塩化水素を導入すると、アミド体やイミノエーテル塩酸塩などの中間体を単離することなく、一段階でシアノヒドリンから2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルを製造しうることを見出し、本発明を完成させた。また、塩化水素を添加する前に水を必要量添加することで、反応中に生成する固形物の反応液部分に対する溶解性を向上させ、更に溶媒を添加することにより反応液スラリー状体が改善され、撹拌操作を簡便かつ均一に行なうことができる。また、加水分解用の水の後添加操作を回避できる。
特に、シアノヒドリンとして青酸とアルデヒドとの反応液を使用する場合には、該反応液にアルコール、溶媒、水を添加し、得られた混合物に塩酸を導入することで2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルを製造することができ、副生する塩化アンモニウムの処理と同時に残存する青酸の除去操作を行なうこともでき、工程も簡略化される。
本発明によれば、一段反応でシアノヒドリンから2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルを高収率で製造でき、かつ中間体を単離する処理も不要である。また、酸として塩化水素を使用することで硫酸使用時に比較して、廃棄物処理が容易となる。特に、シアノヒドリンとして青酸とアルデヒドとの反応液を使用する場合には、シアノヒドリンの製造工程と2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルの製造工程から排出される廃液を別個に処理するよりも極めて効率的に廃液処理を行なうことができる。
本発明の第一は、下記(1)で示される2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルの製造方法であって、下記式(2)で示されるシアノヒドリン、対応するアルコール類、溶媒および水との混合物に塩化水素を導入することを特徴とする、2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルの製造方法である。
Figure 2007045724
(式中、Rはフェニル基、Rはエチル基である。)
本発明の製造方法において原料として使用される対応するアルコールとは、ROHで示されるものであり、Rも上記式(1)におけるRと同じである。
本発明の特徴は、上記シアノヒドリンに上記アルコール、溶媒および水を添加した混合物を使用し、これに塩化水素を導入して中間体を取り出すことなくまた反応を中断することなく一段階で2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルを製造する点にある。反応工程を以下に示す。
Figure 2007045724
本発明において、シアノヒドリン、アルコール、溶媒および水の仕込みおよび塩化水素ガスの吹き込み操作後は、加熱だけで済むため、中間体分離のための固液分離、蒸留、濃縮等の操作が不要となり、原料を新たに追加するために反応を中断する必要もなく、また常圧下で反応が行えるためオートクレーブ等の加圧反応装置が不要であり、安全性、操作性に優れる。また、エステル化の収率も高い。
本発明で使用する溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、炭素数が6〜18である飽和脂肪族炭化水素および塩化メチレンのいずれか1種以上であることが好ましい。いずれも、反応不活性な溶媒であるため、不安定な原料であるシアノヒドリンの分解を抑制することができる。
該溶媒に加えるシアノヒドリンの濃度は、添加する水およびアルコールの量によっても異なるが、一般には混合液中に5.0〜60.0質量%、好ましくは20.0〜40.0質量%、特に好ましくは26.0〜37.0質量%とする。60.0質量%を上回ると、イミノエーテル化の際に形成される固形分量が多くなりすぎ、スラリーの撹拌が困難となる。一方、5.0質量%を下回ると、溶媒回収工程が煩雑となるおそれがある。
添加するアルコールは、理論的にはシアノヒドリン1モルに対して1モルであるが、反応収率を考慮して、1〜5モル、好ましくは1.5〜4モル、特に好ましくは2〜4モルである。1モルを下回ると収率が低下し、一方、5モルを超えると過剰に添加されたアルコールの除去操作が煩雑となるおそれがある。
また、水は、理論的にはシアノヒドリン1モルに対して1モルであるが、反応収率を考慮して、0.8〜2モル、好ましくは0.9〜1.5モル、特に好ましくは0.9〜1.2モルである。0.8モルを下回ると収率が低下し、一方、2モルを超えるとやはり収率が低下するおそれがある。特に、塩化水素吹き込み前に水が上記範囲で添加されると、イミノエーテル化の際の反応液スラリーの流動性が改善され、撹拌も容易となり、更に反応性および操作性が向上する。なお、混合液における上記シアノヒドリン濃度は、添加する水、アルコールに加えて、溶媒量を適宜選択することで調整することができる。
本発明では、上記混合物に塩化水素ガスを導入する点に特徴がある。従来から多用された硫酸に代わり塩化水素を反応で使用することで、廃水処理の負荷を軽減することができる。つまり、シアノヒドリンを原料として2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルを製造する際には、シアノヒドリンに由来する窒素からアンモニアが副生し、硫酸と反応して硫酸水素アンモニウムを形成するが、該化合物は反応活性を低下させるため、シアノヒドリン1モルに対して1モル以上の硫酸の投与が必要となる。また、廃液に含まれる硫酸を中和する場合に必要なアルカリ量は、同モル量の塩酸を中和する場合と比較して2倍量となる。したがって、塩化水素を使用するほうが、廃水処理量も低減できるのである。
使用する塩化水素は、シアノヒドリン1モルに対して1〜1.5モル、好ましくは1.05〜1.25モルである。1モルを下回ると反応促進効果が低下し、一方1.5モルを超えると収率が低下するおそれがある。なお、塩化水素はガス状で供給しても塩酸水溶液などの液状で供給してもよく、塩化水溶液を使用する場合の塩酸濃度は、35.0〜38.0質量%が好適であり、含まれる水は前記混合液中の水濃度に含めるものとする。
塩化水素導入時の液温は、0〜80℃であることが好ましく、より好ましくは25〜60℃、特に好ましくは35〜45℃である。0℃を下回ると反応時間が長くなるおそれがある。一方、80℃を越えると原料であるアルコールと塩化水素が反応し、水及び塩化アルキルを副生するおそれがある。塩化水素として塩酸水溶液を使用する場合も、上記温度範囲に調温することが好ましい。塩化水素の導入時間は、生産性及び反応熱の除熱効率により任意に選択できるが、1〜20時間、特には1〜15時間である。
本発明では、塩化水素添加後に、反応液を0℃〜常圧下還流温度の範囲で、20時間以内で反応させると目的物である2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルを得ることができるが、異なる温度で第一熟成と第二熟成とを行うことがより好ましい。
例えば、塩化水素添加後に、反応液を0℃〜常圧下還流温度の範囲、好ましくは35〜45℃で、0時間を超えて4時間、特には1〜2時間熟成させる。これを第一熟成と称する。次いで、20℃〜常圧下還流温度の範囲、好ましくは常圧下還流温度で、0時間を超えて15時間、より好ましくは4〜12時間熟成させる。これを第二熟成と称する。このように温度を変化させると、第一熟成では副反応を抑制しつつ、仕込んだ塩化水素の大部分を反応させることにより塩化水素及びメタノールの消費量を抑えるとともに収率向上を図ることができ、第二熟成で反応温度を高めることにより反応時間を短縮することができ、収率を向上させ、反応時間を短縮できる。なお、本発明では、目的物の形成にしたがってスラリーが形成されるため、第一熟成および第二熟成に亘って反応液を撹拌することが好ましい。本発明では、反応液に溶媒、水およびアルコールを含み、液量が多いため、攪拌も容易である。
本発明で使用するシアノヒドリンは、上記したものであればその製造方法などは問わないが、下記式(3)で示されるアルデヒドとHCNとの反応生成物である場合に、好適である。なお、下記式(3)において、Rは、前記2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルに記載したと同じである。
Figure 2007045724
(式中、Rは、フェニル基を表す。)
シアノヒドリンは、アルデヒドまたはケトンのカルボニル基に青酸を付加することによって製造することができ、反応液には5.0〜60.0質量%の濃度で目的のシアノヒドリンが含まれる。本発明では、この反応液をそのままシアノヒドリンとして使用することができる。未反応の青酸が存在すると、青酸は本発明の2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルの製造工程において下記に示すようにギ酸アルキルと塩化アンモニウムとに変化する。
Figure 2007045724
(式中、Rはエチル基である。)
一方、微量残存する青酸は、副生する塩化ナトリウムの処理の際に廃水から除去することができる。具体的には、微量の青酸を含んだ廃水の処理を行う場合に、強塩基物質として水酸化ナトリウムを酸に対して当量以上仕込み中和を行いpH13以上にする。蒸留などによって含まれるアンモニアを除去する。次いで、このアルカリ溶液に塩素または次亜塩素酸ナトリウムを添加する。アルカリ処理によって青酸はNaCNとなり、次亜塩素酸ナトリウムの酸化力により窒素と二酸化炭素とに分解する。アルカリ溶液に塩素または次亜塩素酸ナトリウムを添加し、アルカリ処理によって青酸を分解する方法を、アルカリ塩素法という。アルカリ塩素法に先立ちアンモニアを除去するのは、含まれるアンモニアが酸化されると次亜塩素酸ナトリウムが無駄に消費されるからである。アルカリ塩素法の反応式を以下に示す。
Figure 2007045724
本発明において、硫酸に代えて塩化水素を使用する利点は、このような未反応の青酸を含む場合に特に優れる。すなわち、上記のようにアルカリ処理を行なう場合には含まれる酸を中和し更にアルカリ溶液にするために水酸化ナトリウムなどを使用する。この際、水酸化ナトリウムの使用量は、塩酸を中和する場合と比較して硫酸を中和すると2倍量が必要となる。廃水処理を行う場合、配管等の閉塞を避け結晶の析出を防ぐ必要があるため中和で生成するナトリウム塩を溶解する必要があるが、硫酸ナトリウムと塩化ナトリウムの10℃における水に対する溶解度は、硫酸ナトリウムは8.26質量%であり塩化ナトリウムは26.31質量%であり、塩化ナトリウムは硫酸ナトリウムの3.2倍の溶解度をもつ。塩化ナトリウムに比較して硫酸ナトリウムの分子量は2.4倍であるから、硫酸を使用した場合の廃水量と塩酸を使用した場合の排水量とを比較すると、前者は後者の8.3倍の廃水量となる。したがって、特にシアノヒドリンを青酸を原料に使用して調製し、シアノヒドリン反応液に微量の青酸が残存する場合には、特に2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルの製造工程に塩化水素を使用することで、2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルの反応系から排出される廃液の処理と同時に残存する青酸を分別でき、かつ処理すべき廃液量を低減することができる。
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
(参考例1)
攪拌機、温度計、還流器を備えた300ml容ガラス製4つ口フラスコに、フェニルプロピルアルデヒド161.0g(1.20mol)およびトリエチルアミンを仕込み、恒温水槽により15℃に調温した。フラスコ内液を15℃に維持しながら青酸32.0g(1.2mol)を1時間かけて滴下した。滴下後は15℃で1時間熟成を行った。これにより、2−ヒドロキ−4−フェニルブチロニトリルを99.0質量%含有する2−ヒドロキシ−4−フェニルブチロニトリル反応液を得た。
(実施例1)
2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルの合成
攪拌機、温度計、還流器を備えた1リットル容ガラス製4つ口フラスコに、トルエン280.4g、エタノール229.4g(4.98mol)、水21.3g(1.18mol)、及び参考例1で得た2−ヒドロキシ−4−フェニルブチロニトリル反応液(2−ヒドロキシ−4−フェニルブチロニトリル1.20mol)を仕込み、恒温水槽内でフラスコ内液を撹拌しながら温度40℃に調温した。フラスコ内液の温度を40℃に維持しつつ塩化水素54.5g(1.49mol)を吹き込んだ。その後、40℃にて1時間熟成した。次いで、フラスコ内液還流温度で5時間熟成を行った。TCDを検出器としたガスクロマトグラフィーを用いてフラスコ内液の分析を行なったところ、生成物は2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルであり、生成量は226.0g(1.08mol)であり、収率は90.4%であった。
(比較例)
攪拌機、温度計、還流器を備えた1リットル容ガラス製4つ口フラスコに無水エタノール309.1g(6.71mol)、2−ヒドロキシ−4−フェニルブチロニトリル反応液(2−ヒドロキシ−4−フェニルブチロニトリル1.20mol)を仕込み、恒温水槽内でフラスコ内液を撹拌しながら温度0℃に調温した。フラスコ内液の温度を0℃に維持しつつ塩化水素125.3g(3.44mol)を吹き込んだ。得られた混合物を0℃で2時間撹拌して熟成した。熟成中、イミノエーテル塩酸塩が析出し、濃いスラリー状態となり、撹拌が困難となった。このためフラスコから撹拌機を外し、反応液スラリーを減圧濃縮し、塩化水素を除去した。減圧濃縮時間は6時間を要した。
再びフラスコに撹拌機を取り付け、無水エタノール301.6g、水21.6g(2.06mol)を仕込み加熱還流を1.5時間行った。反応終了後、反応液スラリーにトルエン(ガスクロマトグラフィーによるフェニル−2−ヒドロキシ酪酸エチル含有量算定のための内部標準物質として使用)を25.0g加え、TCDを検出器としたガスクロマトグラフィーを用いてフラスコ内上澄み液の分析を行なったところ、2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチル生成量は、224.2g(1.08mol)であり、収率は89.7%であった。
本発明は、医農薬、写真薬等の中間体として有用な2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルを簡便に製造することができ、有用である。

Claims (6)

  1. 下記式(1)で示される2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルの製造方法であって、下記式(2)で示されるシアノヒドリン、対応するアルコール類、溶媒および水との混合物に塩化水素を導入することを特徴とする、2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルの製造方法。
    Figure 2007045724
    (式中、Rはフェニル基、Rはエチル基である。)
  2. 前記アルコール類の添加量が、前記シアノヒドリン1モルに対して1〜5モル倍である、請求項1記載の2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルの製造方法。
  3. 前記水の添加量が、前記シアノヒドリン1モルに対して0.8〜2モル倍である、請求項1または2記載の2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルの製造方法。
  4. 前記溶媒が、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、炭素数6〜18の飽和脂肪族炭化水素および塩化メチレンからなる群から選択される1種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルの製造方法。
  5. 前記塩化水素の導入量が、前記シアノヒドリンの1〜1.5モル倍である、請求項1〜4のいずれかに記載の2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルの製造方法。
  6. 前記塩化水素の導入が、温度0〜80℃で行なわれる、請求項1〜5のいずれかに記載の2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステルの製造方法。
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