JP2004346022A - 2−ヒドロキシブタン酸メチルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(1)プロピオンアルデヒドシアンヒドリンを、酸の存在下に水と反応させた後、さらにメタノールと反応させて2−ヒドロキシブタン酸メチルを含む反応混合液を得、(2)該反応混合液を水の存在下に蒸留することにより2−ヒドロキシブタン酸メチルと水の混合物を得、(3)次いで該混合物を、水と共沸する溶媒の存在下に共沸蒸留することにより該混合物より水を除去することを特徴とする2−ヒドロキシブタン酸メチルの製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は2−ヒドロキシブタン酸メチルの製造方法に関する。本発明により得られる2−ヒドロキシブタン酸メチルは、抗てんかん薬などの医薬の合成中間体として有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来、α−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法としては、▲1▼チタンおよび/または錫とα−ヒドロキシカルボン酸アミドとを構成成分として含む可溶性金属錯体触媒の存在下に、α−ヒドロキシカルボン酸アミドとアルコールを液相で反応させる方法(特許文献1参照。)、▲2▼シアンヒドリンを水および硫酸でアミド化し、次いでアルコールを加えてエステル化した後、この反応混合物に特定モル比の含水アルコールを連続的に供給しながら生成物のヒドロキシカルボン酸エステルを留出させる方法(特許文献2参照。)などが知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−279120号公報
【特許文献2】
特開平6−247896号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の方法▲1▼は、反応成績を向上させるために上記の金属錯体を一旦合成してから反応させねばならず、工程が煩雑であるという問題点を有する。また、上記の方法▲2▼は、シアンヒドリンとして使用することができるのはグリコロニトリル、アセトンシアンヒドリン、エチレンシアンヒドリンのいずれかであり、かかる方法をプロピオンアルデヒドシアンヒドリンに適用した場合には、得られる2−ヒドロキシブタン酸メチルの沸点が高いために、収率よく目的物を得ることができないという問題点を有する。したがって、これらの方法は、いずれも2−ヒドロキシブタン酸メチルの工業的に有利な製造方法とは言い難い。
【0005】
しかして、本発明の目的は、2−ヒドロキシブタン酸メチルを好収率で、工業的に有利に製造し得る方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記の目的は、(1)プロピオンアルデヒドシアンヒドリンを、酸の存在下に水と反応させた後、さらにメタノールと反応させて2−ヒドロキシブタン酸メチルを含む反応混合液を得、(2)該反応混合液を水の存在下に蒸留することにより2−ヒドロキシブタン酸メチルと水の混合物を得、(3)次いで該混合物を、水と共沸する溶媒の存在下に共沸蒸留することにより該混合物より水を除去することを特徴とする2−ヒドロキシブタン酸メチルの製造方法を提供することによって達成される。
【0007】
【発明の実施の形態】
(1)まず、プロピオンアルデヒドシアンヒドリンを、酸の存在下に水と反応[以下、これを水和反応と称する]させた後、さらにメタノールと反応[以下、これをエステル化反応と称する]させて2−ヒドロキシブタン酸メチルを含む反応混合液を得る工程[以下、これを工程1と称する]について説明する。
【0008】
工程1の水和反応において使用する酸は、例えば硫酸、塩酸、リン酸などの無機酸を使用するのが好ましく、これらの中でも硫酸を使用するのがより好ましい。硫酸は工業的に製造され、市販されているものをそのまま使用することができ、通常、90〜98質量%程度の硫酸を使用するのが好ましい。酸の使用量は、プロピオンアルデヒドシアンヒドリンに対して0.1〜5モル倍の範囲であるのが好ましく、0.5〜2モル倍の範囲であるのがより好ましい。
【0009】
工程1の水和反応における水の使用量は、プロピオンアルデヒドシアンヒドリンに対して0.1〜5モル倍の範囲であるのが好ましく、0.5〜2モル倍の範囲であるのがより好ましい。反応温度は、20〜150℃の範囲であるのが好ましく、40〜100℃の範囲であるのがより好ましい。反応時間は、0.5〜20時間の範囲であるのが好ましく、1〜10時間の範囲であるのがより好ましい。
【0010】
また、工程1のエステル化反応に使用するメタノールの使用量は、プロピオンアルデヒドシアンヒドリンに対して0.5〜50モル倍の範囲であるのが好ましく、1〜20モル倍の範囲であるのがより好ましい。反応温度は、20〜150℃の範囲であるのが好ましく、40〜100℃の範囲であるのがより好ましい。反応時間は、0.5〜20時間の範囲であるのが好ましく、1〜10時間の範囲であるのがより好ましい。
【0011】
工程1の操作方法に特に制限はなく、例えば、プロピオンアルデヒドシアンヒドリン、酸および水を混合し、所定温度において所定時間攪拌(水和反応)した後、得られた反応液をメタノールと混合し、所定温度において所定時間攪拌(エステル化反応)することにより行うことができる。得られた2−ヒドロキシブタン酸メチルを含む反応混合液は必要に応じて塩基を用いて中和し、次工程に供することができる。かかる塩基としては水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、アンモニア水などが挙げられるが、これらの中でもアンモニア水を使用するのが好ましい。
【0012】
(2)次に、工程1で得られた2−ヒドロキシブタン酸メチルを含む反応混合液を水の存在下に蒸留することにより2−ヒドロキシブタン酸メチルと水の混合物を得る工程[以下、これを工程2と称する]について説明する。
【0013】
工程2においては、まず工程1で得られた2−ヒドロキシブタン酸メチルを含む反応混合液に水を添加する。水は、液体状態または気体状態のいずれの形態で添加してもよい。水の添加量に特に制限はないが、通常、反応混合液中に含まれる2−ヒドロキシブタン酸メチルに対して0.1〜100質量倍の範囲であるのが好ましく、1〜10質量倍の範囲であるのがより好ましい。また、水は工程1で得られた反応混合液に一括して添加してもよいし、2−ヒドロキシブタン酸メチルと水の混合物を留出させる際に断続的または連続的に添加してもよい。
【0014】
蒸留する際における混合物の温度、すなわち2−ヒドロキシブタン酸メチルを含む反応混合液および水の混合物の温度は40〜200℃の範囲であるのが好ましく、80〜150℃の範囲であるのがより好ましい。蒸留は通常、常圧下で行なうが、必要に応じて減圧下で行ってもよい。
【0015】
工程2の操作方法に特に制限はなく、例えば、工程1で得られた反応混合液から予め過剰量のメタノールを留去した後、得られた残留物に水を添加し、所定温度において常圧下または減圧下に蒸留操作を行い、2−ヒドロキシブタン酸メチルと水の混合物を留出させる。
【0016】
(3)最後に、工程2で得られた2−ヒドロキシブタン酸メチルと水の混合物を、水と共沸する溶媒の存在下に共沸蒸留することにより該混合物より水を除去して2−ヒドロキシブタン酸メチルを得る工程[以下、これを工程3と称する]について説明する。
【0017】
工程3で使用する、水と共沸する溶媒としては、例えばヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルなどのエーテル;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステルなどが挙げられる。これらの中でも脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテルを使用するのが好ましい。溶媒の使用量は特に制限されないが、通常、2−ヒドロキシブタン酸メチルに対して0.1〜100質量倍の範囲であるのが好ましく、0.5〜10質量倍の範囲であるのがより好ましい。
【0018】
共沸蒸留する際における混合物の温度、すなわち2−ヒドロキシブタン酸メチル、水および水と共沸する溶媒の混合物の温度は、使用する溶媒の種類によっても異なるが、通常、40〜200℃の範囲であるのが好ましく、60〜120℃の範囲であるのがより好ましい。共沸蒸留は通常、常圧下で行なうが、必要に応じて減圧下で行ってもよい。
【0019】
工程3の操作方法に特に制限はなく、例えば、工程2で得られた混合物および水と共沸する溶媒を混合し、所定温度において常圧下または減圧下に共沸蒸留することにより、該混合物より水を除去することにより行う。
【0020】
このようにして得られた2−ヒドロキシブタン酸メチルの混合物からの単離・精製は、有機合成において一般的に用いられる方法により行うことができる。例えば、工程3において、水を共沸蒸留により除去して得られた、2−ヒドロキシブタン酸メチルおよび水と共沸する溶媒の混合物を、さらに精密蒸留することなどにより行うことができる。
【0021】
なお、本発明において原料として使用するプロピオンアルデヒドシアンヒドリンは、例えばプロピオンアルデヒドとシアン化水素を、触媒量の塩基の存在下、室温で反応させることにより製造することができる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0023】
実施例1
(a)ジムロート冷却管、温度計および攪拌機を備えた内容積500mlの3口フラスコに、97質量%硫酸55.6g(0.55mol)を入れ、プロピオンアルデヒドシアンヒドリン42.5g(0.50mol)と水9.9g(0.55mol)の混合液を30分で滴下したところ、内温が43℃まで上昇した。この混合物を60℃で1時間加熱し、さらに70℃で3時間加熱した後、メタノール160.0g(5.00mol)を添加して6時間還流した。得られた反応混合液を10℃以下まで冷却した後、25質量%アンモニア水6.7g(0.10mol)を加えた。反応混合液の一部を採りガスクロマトグラフィーにより分析した結果、2−ヒドロキシブタン酸メチルが52.0g(0.44mol、収率88.2%)生成していた。
【0024】
(b)上記(a)で得られた反応混合液を、その内温が100℃に達するまで加熱し、メタノール131.6g(2−ヒドロキシブタン酸メチル4.3gを含有)を留去した。得られた残留物に水100gを1.5時間かけて滴下しながら内温100〜120℃で蒸留することにより、2−ヒドロキシブタン酸メチルおよび水の混合物137.2g(2−ヒドロキシブタン酸メチル47.7gを含有)を得た。
【0025】
(c)ディーン・シュタークトラップ、温度計および攪拌機を備えた内容積500mlの3口フラスコに、上記(b)で得られた2−ヒドロキシブタン酸メチルおよび水の混合物を入れ、さらにトルエン75gを添加して内温79〜111℃で共沸蒸留することにより、水91.0g(2−ヒドロキシブタン酸メチル3.5gを含有)を留去した。次いで、得られた2−ヒドロキシブタン酸メチルのトルエン溶液を減圧下にトルエンを留去することにより、2−ヒドロキシブタン酸メチル39.2g(純度98.7%、収率65.6%)を得た。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、2−ヒドロキシブタン酸メチルを好収率で、工業的に有利に製造することができる。
Claims (1)
- (1)プロピオンアルデヒドシアンヒドリンを、酸の存在下に水と反応させた後、さらにメタノールと反応させて2−ヒドロキシブタン酸メチルを含む反応混合液を得、(2)該反応混合液を水の存在下に蒸留することにより2−ヒドロキシブタン酸メチルと水の混合物を得、(3)次いで該混合物を、水と共沸する溶媒の存在下に共沸蒸留することにより該混合物より水を除去することを特徴とする2−ヒドロキシブタン酸メチルの製造方法。
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