しかしながら、上記複合光記録媒体では、光ビームが記録層上に集光されるまでに透過する保護層の厚み(以下、保護層の厚み、と略記する)が、記録層ごとに異なる。このため、複合光記録媒体に備えられた複数の記録層上に記録マークを書き込む、あるいは、記録マークを読み出すにあたって、光ピックアップに備えられる対物レンズを、共有化することは困難であった。これはすなわち、複数の記録層に対して単一の対物レンズを用いる場合、全ての記録層において球面収差の発生量を許容値以下に抑えることは困難なためである。
上記球面収差の問題に関して、さらに詳しく説明すれば、以下の通りである。
光記録再生装置に備えられた光ピックアップには、該光ピックアップに備えられた光源から放射される光ビームを光記録媒体の記録層上に集光するための対物レンズが備えられている。
上記対物レンズは、ある厚みの保護層を想定した上で設計され、その厚みの保護層を透過した集光ビームの集光スポットにおける球面収差の大きさが設計指標とされる。すなわち、上記対物レンズは、該対物レンズにより集光された光ビームが、想定された厚みを持つ保護層を透過し、集光スポットに集光されるとき、該集光スポットにおける球面収差が最小になるよう設計されている。ここで言うところの対物レンズ設計とは、対物レンズを構成する材料の選定、レンズ面の面形状の決定、レンズ面の距離などのことである。
換言すれば、上記対物レンズにより集光された光ビームが、該対物レンズの設計により定まる球面収差を最小にする保護層の厚みとは異なる厚みを有する保護層を透過して記録層上に集光された場合、該記録層上において球面収差が発生する。対物レンズの設計時に想定された球面収差を最小にする保護層の厚みと、該対物レンズにより集光された光ビームが記録層上に集光されるまでに実際に透過する保護層の厚みとの差(以下、保護層の厚み誤差、と略記する)が大きいほど、該記録層における球面収差は大きくなる。
球面収差が大きくなると、集光スポットにおける光ビームの強度が不足する。このため、記録層上で発生する球面収差が許容値を超えると、該記録層の再生時には、再生信号の振幅が低下するという問題が生じ、また、該記録層への記録時には、記録マークの形成が困難になるという問題が生じる。
従って、光ピックアップには、該光ピックアップにより記録あるいは再生しようとする記録層における球面収差の発生量が許容値以下になるよう、該光記録媒体における保護層の厚みに対応した対物レンズを備えることが必要になる。
ところが、複数の光記録媒体を複合させた複合光記録媒体においては、一つの光記録媒体の中に複数の記録層が混在し、光ピックアップから放射された光ビームが記録層上に集光されるまでに透過する保護層の厚みが記録層ごとに異なる。従って、いかなる厚みの保護層を想定して設計した対物レンズを用いても、対物レンズにより定まる球面収差を最小にする保護層の厚みとは異なる保護層の厚みを有する記録層において、保護層の厚み誤差が生じる。そして、保護層の厚み誤差が生じる記録層においては、球面収差が発生する。
複合光記録媒体に備えられる記録層の数が増えるほど、該複合光記録媒体に備えられた保護層の厚みのばらつきは大きくなる。すなわち、該複合光記録媒体に備えられる全ての記録層において、球面収差の発生量を許容値以下に抑えることは困難になる。
また、複合光記録媒体に備えられた記録層に記録マークを書き込む、あるいは、該記録マークを読み出すための光ビームの波長が短いほど、保護層の厚み誤差に対する球面収差の発生量が大きくなる。すなわち、小さな記録マークを書き込むために、短い波長を有する光ビームを用いる必要がある高密度記録層を備えた複合光記録媒体においては、球面収差の発生量を許容値以下に抑えることがさらに困難になる。
上記球面収差の問題を解決するためには、光ピックアップに、該複合光記録媒体に備えられた複数の記録層に対応する複数の対物レンズを備えることも可能である。しかしながら、光ピックアップに複数の対物レンズを備える場合、光ピックアップの複雑化、および、光ピックアップの製造コストの増加という問題が新たに生じる。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、単一の対物レンズが備えられた光ピックアップにより、情報の記録あるいは再生が可能な複合光記録媒体を実現することであり、同時に、上記複合光記録媒体への情報の記録、あるいは、上記複合光記録媒体に記録された情報の再生が可能な光ピックアップを提供することにある。
本発明に係る複合光記録媒体は、上記課題を解決するために、第1の波長を有する光ビームにより読み出し、あるいは、書き込みがなされる第1の記録層、および、第2の記録層と、上記第1の波長より短い第2の波長を有する光ビームにより読み出し、あるいは、書き込みがなされる第3の記録層と、を備え、上記三つ記録層は、上記光ビームの入射側から第1の記録層、第3の記録層、第2の記録層の順に、配置されることを特徴としている。
上述したとおり、単一の対物レンズを備える光ピックアップにより、複合光記録媒体に備えられた複数の記録層に対し読み出し、あるいは、書き込みが行われる場合、該複合光記録媒体の光ビームが入射する表面からの距離が、該対物レンズ設計時に決定される球面収差を最小にする保護層の厚み、とは異なる記録層において、球面収差の発生は避けられない。
保護層の厚み誤差に対する球面収差の発生量は、光ビームの波長が短いほどその影響が大きい。また、異なる記録層の厚みを有する二つの記録層において同時に球面収差の差を小さくするためには、これらの記録層間距離を短くすることが好ましい。
これに対して、上記の構成によれば、球面収差の影響が大きい記録層(第2の波長に対応する第3の記録層)は内側に配置され、球面収差の影響が小さい記録層(第1の波長に対応する第1および第2の記録層)は外側に配置される。このため、上記複合光記録媒体に対して用いられる光ピックアップでは、対物レンズの共通化によって各記録層において不可避に発生する球面収差を、上記複合光記録媒体に備えられた各記録層に対して記録マークを書き込む、あるいは、読み出すのに支障がないレベルにまで低減することが容易になる。すなわち、光ピックアップにおける対物レンズの共有化が容易になる。
より具体的には、例えば、球面収差を最小にする保護層の厚みが上記第3の記録層に対する保護層の厚み(上記複合光記録媒体の光ビームが入射する面から上記第3の記録層までの距離)と同一になる対物レンズを用いた場合、保護層の厚み誤差に対する球面収差の発生量が大きい第2の波長を有する光ビームにより読み出し、あるいは、書き込みがなされる第3の記録層における保護層の厚み誤差を0にすることが可能になる。また、同時に、第1の記録層、および、第2の記録層に対する保護層の厚み誤差を、該記録層間の距離以下に抑えることが可能になる。
また、上記複合光記録媒体においては、上記第1の記録層および上記第2の記録層は、上記第2の波長に対する反射率が上記第1の波長に対する反射率よりも小さい、波長選択性を有する反射膜により構成されることが好ましい。
上記構成によれば、上記複合光記録媒体に上記第2の波長を有する光ビームが入射するとき(すなわち、第3の記録層に対して記録/再生を行うとき)には、該光ビームが上記第1および第2の記録層により反射され、光ピックアップに入射する強度を減ずることが可能である。
さらに、上記第3の記録層は、上記第1の波長に対する反射率が上記第2の波長に対する反射率よりも小さい、波長選択性を有する反射膜により構成されることが好ましい。
上記構成によれば、上記複合光記録媒体に上記第1の波長を有する光ビームが入射するとき(すなわち、第1または第2の記録層に対して記録/再生を行うとき)には、該光ビームが上記第3の記録層により反射され、光ピックアップに入射する強度を減ずることが可能である。
同じ波長に対応する第1および第2記録層において、第1の記録層の記録/再生時に第2の記録層から反射による問題(もしくは、第2の記録層の記録/再生時に第1の記録層から反射による問題)は、2つの記録層の間に他の波長に対応する第3の記録層を挟み、結果として、2つの記録層の距離を離すことで低減することが可能になる。
これにより、目的の記録層と隣接する記録層により反射された反射光が、フォーカスエラー信号として本来読み取られるべき目的の記録層により反射された反射光に混入するフォーカス制御の問題、および、目的の記録層と隣接する記録層により反射された反射光が、再生信号として本来読み取られるべき目的の記録層により反射された反射光に混入する層間クロストークの問題を軽減するという効果を奏する。
また、上記複合光記録媒体においては、上記三つの記録層は、上記第1の記録層と上記第3の記録層との距離と、上記第2の記録層と上記第3の記録層との距離と、が等しくなるように配置されていることが好ましい。
上記構成によれば、例えば、球面収差を最小にする保護層の厚みが上記第3の記録層に対する保護層の厚み(上記複合光記録媒体の光ビームが入射する面から第3の記録層までの距離)と同一になる対物レンズに対し、第1の記録層、および、第2の記録層に対する保護層の厚み誤差を、第1の記録層と第2の記録層との間の距離の2分の1に抑えることが可能になる。
このため、上記構成によれば、上記複合光記録媒体に備えられた全ての記録層において発生する球面収差の発生量を、同時に許容値以下に抑えることがさらに容易になるという効果を奏する。
また、上記構成によれば、上記対物レンズに対し、上記第1の記録層における保護層の厚み誤差と、上記第2の記録層における保護層の厚み誤差は同一になる。すなわち、上記第1の記録層における球面収差の発生量と上記第2の記録層における球面収差の発生量が同一になる。このため、上記第1の記録層と上記第2の記録層に記録される記録マークのサイズを一様に小さくすることが可能になり、従って、上記第1の記録層と上記第2の記録層において一様に記録密度を高めることが可能になる。
また、上記第1の記録層における記録密度と上記第2の記録層における記録密度を同一にすることにより、上記第1の記録層に対し書き込み、あるいは、読み出しをする際の上記複合光記録媒体の回転速度と、上記第2の記録層に対し書き込み、あるいは、読み出しをする際の上記複合光記録媒体の回転速度とを同一にすることが可能になる。従って、上記第1の記録層と上記第2の記録層に対して連続的に読み出し、あるいは、書き込みを行う際、記録層間の移行時間を短縮することが可能になる。
本発明に係る他の複合光記録媒体は、上記課題を解決するために、第1の波長を有する光ビームにより読み出し、あるいは、書き込みがなされる第1の記録層、および、第2の記録層と、上記第1の波長より短い第2の波長を有する光ビームにより読み出し、あるいは、書き込みがなされる第3の記録層、および、第4の記録層と、を備え、上記四つの記録層は、上記光ビームの入射側から第1の記録層、第3の記録層、第4の記録層、第2の記録層の順に、配置されることを特徴としている。
上記の構成によれば、球面収差の影響が大きい記録層(第2の波長に対応する第3および第4の記録層)は、球面収差の影響が小さい記録層(第1の波長に対応する第1および第2の記録層)の間に配置される。このため、上記複合光記録媒体に対して用いられる光ピックアップでは、対物レンズの共通化によって各記録層において不可避に発生する球面収差を、上記複合光記録媒体に備えられた各記録層に対して記録マークを書き込む、あるいは、読み出すのに支障がないレベルにまで低減することが容易になる。すなわち、光ピックアップにおける対物レンズの共有化が容易になる。
より具体的には、例えば、球面収差を最小にする保護層の厚みが、上記第3の記録層に対する保護層の厚み(上記複合光記録媒体の光ビームが入射する面から第3の記録層までの距離)と上記第4の記録層に対する保護層の厚み(上記複合光記録媒体の光ビームが入射する面から上記第4の記録層までの距離)との平均値と同一になる対物レンズに対し、保護層の厚み誤差に対する球面収差の発生量が大きい第2の波長を有する光ビームにより読み出し、あるいは、書き込みがなされる上記第3の記録層、および、上記第4の記録層に対する保護層の厚み誤差を、該記録層間の距離の2分の1に抑えることが可能になる。また、同時に、上記第1の記録層、および、上記第2の記録層に対する保護層の厚み誤差を、該記録層間距離以下にすることが可能である。
また、この場合、上記第3の記録層における保護層の厚み誤差と、上記第4の記録層における保護層の厚み誤差は同一になる。すなわち、上記第3の記録層における球面収差の発生量と上記第4の記録層における球面収差の発生量が同一になる。このため、上記第3の記録層と上記第4の記録層に記録される記録マークのサイズを一様に小さくすることが可能になり、従って、上記第3の記録層と上記第4の記録層において一様に記録密度を高めることが可能になる。
また、上記第3の記録層における記録密度と上記第4の記録層における記録密度を同一にすることにより、上記第3の記録層に対し書き込み、あるいは、読み出しをする際の上記複合光記録媒体の回転速度と、上記第4の記録層に対し書き込み、あるいは、読み出しをする際の上記複合光記録媒体の回転速度とを同一にすることが可能になる。従って、上記第3の記録層と上記第4の記録層に対して連続的に読み出し、あるいは、書き込みを行う際、記録層間の移行時間を短縮することが可能になる。
また、上記複合光記録媒体においては、上記第1の記録層および上記第2の記録層は、上記第2の波長に対する反射率が上記第1の波長に対する反射率よりも小さい、波長選択性を有する反射膜により構成されることが好ましい。
上記構成によれば、上記複合光記録媒体に上記第2の波長を有する光ビームが入射するとき(すなわち、第3または第4の記録層に対して記録/再生を行うとき)には、該光ビームが上記第1および第2の記録層により反射され、光ピックアップに入射する強度を減ずることが可能である。
また、上記複合光記録媒体においては、上記第3の記録層および上記第4の記録層は、上記第1の波長に対する反射率が上記第2の波長に対する反射率よりも小さい、波長選択性を有する反射膜により構成されることが好ましい。
上記構成によれば、上記複合光記録媒体に上記第1の波長を有する光ビームが入射するとき(すなわち、第1または第2の記録層に対して記録/再生を行うとき)には、該光ビームが上記第3の記録層、あるいは、上記第4の記録層により反射され、光ピックアップに入射する強度を減ずることが可能である。
同じ波長に対応する第1および第2記録層において、第1の記録層の記録/再生時に第2の記録層から反射による問題(もしくは、第2の記録層の記録/再生時に第1の記録層から反射による問題)は、2つの記録層の間に他の波長に対応する第3および第4の記録層を挟み、結果として、2つの記録層の距離を離すことで低減することが可能になる。
これにより、目的の記録層と隣接する記録層により反射された反射光が、フォーカスエラー信号として本来読み取られるべき目的の記録層により反射された反射光に混入するフォーカス制御の問題、および、目的の記録層と隣接する記録層により反射された反射光が、再生信号として本来読み取られるべき目的の記録層により反射された反射光に混入する層間クロストークの問題を軽減するという効果を奏する。
また、上記複合光記録媒体においては、上記四つの記録層は、上記第1の記録層と上記第3の記録層との距離と、上記第2の記録層と上記第4の記録層との距離と、が等しくなるように配置されていることが好ましい。
上記構成によれば、例えば、球面収差を最小にする保護層の厚みが、上記第3の記録層に対する保護層の厚み(上記複合光記録媒体の光ビームが入射する面から第3の記録層までの距離)と上記第4の記録層に対する保護層の厚み(上記複合光記録媒体の光ビームが入射する面から上記第4の記録層までの距離)との平均値と同一になる対物レンズに対し、第1の記録層、および、第2の記録層に対する保護層の厚み誤差を、第1の記録層と第2の記録層との間の距離の2分の1に抑えることが可能になる。
このため、上記構成によれば、上記複合光記録媒体に備えられた全ての記録層において発生する球面収差の発生量を、同時に許容値以下に抑えることがさらに容易になるという効果を奏する。
また、上記構成によれば、上記対物レンズに対し、上記第1の記録層における保護層の厚み誤差と、上記第2の記録層における保護層の厚み誤差は同一になる。すなわち、上記第1の記録層における球面収差の発生量と上記第2の記録層における球面収差の発生量が同一になる。このため、上記第1の記録層と上記第2の記録層に記録される記録マークのサイズを一様に小さくすることが可能になり、従って、上記第1の記録層と上記第2の記録層において一様に記録密度を高めることが可能になる。
また、上記第1の記録層における記録密度と上記第2の記録層における記録密度を同一にすることにより、上記第1の記録層に対し書き込み、あるいは、読み出しをする際の上記複合光記録媒体の回転速度と、上記第2の記録層に対し書き込み、あるいは、読み出しをする際の上記複合光記録媒体の回転速度とを同一にすることが可能になる。従って、上記第1の記録層と上記第2の記録層に対して連続的に読み出し、あるいは、書き込みを行う際、記録層間の移行時間を短縮することが可能になる。
また、上記複合光記録媒体においては、上記第1の記録層の上記光ビームが入射する側に配置された保護層と、上記第2の記録層の上記光ビームが入射する側とは反対側に配置された基板を備え、上記保護層と上記基板の厚みは概ね同一であることが好ましい。
上記構成によれば、上記複合光記録媒体を形成する際、上記基板と上記保護層とを同一の材料により構成することが可能になる。また、上記基盤および上記保護層に記録マークを形成する工程、および、凹凸形状が形成された上記基板および上記保護層上に記録層を構成する反射膜を成膜する工程を共通化することが可能になる。これにより、製造装置の共通化による上記複合光記録媒体の製造コストを低下させることが可能になるという効果を奏する。
本発明に係る光ピックアップは、上記課題を解決するために、上記第1の波長を有する光ビームを出射する光源と、上記第2の波長を有する光ビームを出射する光源と、上記第1の波長を有する光ビーム、および、上記第2の波長を有する光ビームを集光する対物レンズを備え、上記対物レンズにおける、上記第1の波長に対し球面収差を最小にする保護層の厚みは、第1の記録層に対する保護層の厚み(上記複合光記録媒体における光ビームが入射する面から上記第1の記録層までの距離)より大きく、第2の記録層に対する保護層の厚み(上記複合光記録媒体における光ビームが入射する面から上記第2の記録層までの距離)より小さく、上記対物レンズにおける、上記第2の波長に対し球面収差を最小にする保護層の厚みは、第1の記録層に対する保護層の厚み(上記複合光記録媒体における光ビームが入射する面から上記第1の記録層までの距離)より大きく、第2の記録層に対する保護層の厚み(上記複合光記録媒体における光ビームが入射する面から上記第2の記録層までの距離)より小さいことを特徴としている。
上記構成を有する光ピックアップによれば、上記複合光記録媒体に備えられた全ての記録層に対する保護層の厚み誤差を、上記第1の記録層と上記第2の記録層との間の距離以下にすることが可能になり、上記複合光記録媒体に備えられた全ての記録層において発生する球面収差の発生量を、同時に許容値以下に抑えることが容易になるという効果を奏する。
また上記構成を有する光ピックアップによれば、上記第1の記録層と上記第2の記録層とに対する保護層の厚み誤差の差を、該記録層間の距離以下に抑えることが可能である。このため、両記録層において発生する球面収差の量を概ね同一にすることが可能であり、両記録層の記録密度を一様に向上させることが可能である。
本発明に係る光ピックアップにおいては、上記対物レンズは、上記第1の波長に対し球面収差を最小にする保護層の厚みと、上記第2の波長に対し球面収差を最小にする保護層の厚みとが概ね同一である対物レンズであり、上記対物レンズにおける、球面収差を最小にする保護層の厚みは、第3の記録層に対する保護層の厚み(上記複合光記録媒体における光ビームが入射する面から第3の記録層までの距離)と概ね同一であることが好ましい。
上記構成を有する光ピックアップによれば、上記複合光記録媒体において、保護層の厚み誤差に対する球面収差の発生量の大きい第2の波長を有する光ビームによって書き込み、あるいは、読み出しが行われる上記第3の記録層に対する保護層の厚み誤差を0にすることが可能である。また、上記複合光記録媒体において、第1の記録層と第3の記録層との間の距離と、第2の記録層と第3の記録層との間の距離とが同一の場合、上記第1の記録層、および、上記第2の記録層に対する保護層の厚み誤差を、該記録層間の距離の2分の1にすることが可能である。
これにより、上記複合光記録媒体に備えられた全ての記録層において発生する球面収差の発生量を、同時に許容値以下に抑えることがさらに容易になるという効果を奏する。
本発明に係る他の光ピックアップは、上記第1の波長を有する光ビームを出射する光源と、上記第2の波長を有する光ビームを出射する光源と、上記第1の波長を有する光ビーム、および、上記第2の波長を有する光ビームを集光する対物レンズを備え、上記対物レンズにおける、上記第1の波長に対し球面収差を最小にする保護層の厚みは、第1の記録層に対する保護層の厚み(上記複合光記録媒体における光ビームが入射する面から上記第1の記録層までの距離)より大きく、第2の記録層に対する保護層の厚み(上記複合光記録媒体における光ビームが入射する面から上記第2の記録層までの距離)より小さく、上記対物レンズにおける、上記第2の波長に対し球面収差を最小にする保護層の厚みは、第3の記録層に対する保護層の厚み(上記複合光記録媒体における光ビームが入射する面から上記第3の記録層までの距離)より大きく、第4の記録層に対する保護層の厚み(上記複合光記録媒体における光ビームが入射する面から上記第4の記録層までの距離)より小さいことを特徴としている。
上記構成を有する光ピックアップによれば、上記複合光記録媒体において、保護層の厚み誤差に対する球面収差の発生量の大きい第2の波長を有する光ビームによって書き込み、あるいは、読み出しが行われる上記第3の記録層、および、上記第4の記録層に対する保護層の厚み誤差を、該記録層間の距離以下にすることが可能であり、同時に、上記第1の記録層、および、上記第2の記録層に対する保護層の厚み誤差を、該記録層間の距離以下にすることが可能である。
これにより、上記複合光記録媒体に備えられた全ての記録層において発生する球面収差の発生量を、同時に許容値以下に抑えることが容易になるという効果を奏する。
また、上記構成を有する光ピックアップによれば、同一の波長に対応する二つの記録層における保護層の厚み誤差の差を、該記録層間の距離以下に抑えることが可能である。このため、同一波長に対応する記録層において発生する球面収差の量を概ね同一にすることが可能であり、両記録層の記録密度を一様に向上させることが可能である。
本発明に係る光ピックアップにおいては、上記対物レンズにおける、上記第1の波長に対し球面収差を最小にする保護層の厚みは、上記複合光記録媒体における光ビームが入射する面から上記第3の記録層までの距離より大きく、上記複合光記録媒体における光ビームが入射する面から上記第4の記録層までの距離より小さいことが好ましい。
上記構成を有する光ピックアップによれば、例えば、上記四つの記録層が、第1の記録層と第3の記録層との距離と、第2の記録層と第4の記録層との距離と、が等しくなるように配置されている複合光記録媒体に対し、第1の記録層と第2の記録層とに対する保護層の厚み誤差をさらによく一致させることが可能であり、該記録層において発生する球面収差の量をさらに良く一致させることが可能である。
本発明に係る光ピックアップにおいては、上記対物レンズは、上記第1の波長に対し球面収差を最小にする保護層の厚みと、上記第2の波長に対し球面収差を最小にする保護層の厚みとが概ね同一である対物レンズであり、上記対物レンズにおける、球面収差を最小にする保護層の厚みは、第3の記録層に対する保護層の厚み(上記複合光記録媒体における光ビームが入射する面から第3の記録層までの距離)と、第4の記録層に対する保護層の厚み(上記複合光記録媒体における光ビームが入射する面から第4の記録層までの距離)との平均値と概ね同一であることが好ましい。
上記構成を有する光ピックアップによれば、上記複合光記録媒体において、保護層の厚み誤差に対する球面収差の発生量の大きい第2の波長を有する光ビームによって書き込み、あるいは、読み出しが行われる上記第3の記録層、および、上記第4の記録層に対する保護層の厚み誤差を、該記録層間の距離の2分の1にすることが可能である。また、上記複合光記録媒体において、第1の記録層と第3の記録層との間の距離と、第2の記録層と第4の記録層との間の距離と、が同一の場合、上記第1の記録層、および、上記第2の記録層に対する保護層の厚み誤差も、該記録層間の距離の2分の1にすることが可能である。
これにより、上記複合光記録媒体に備えられた全ての記録層において発生する球面収差の発生量を、同時に許容値以下に抑えることがさらに容易になるという効果を奏する。
本発明に係る光記録再生装置は、上記課題を解決するために、上記に記載の何れかの光ピックアップを備えたことを特徴としている。
これにより、上記複合光記録媒体に備えられた全ての記録層において発生する球面収差の発生量を、同時に許容値以下に抑えることが容易になるという効果を奏する。また、上記光記録再生装置においては、光記録媒体が装着された時に、第1の波長の光ビームを用いて、該光記録媒体の厚さ方向の全体にわたるフォーカスエラー信号を生成し、上記フォーカスエラー信号における信号のピークレベルがある閾値以上となる回数と、閾値以下となる回数とをカウントし、双方の数がともに1以上であるか否かにより、装着された光記録媒体が複合光記録媒体であるか否かを判別する構成とすることができる。
上記の構成によれば、装着された光記録媒体に対する上記フォーカスエラー信号は、記録層の存在位置において信号のピークが発生するが、そのピークレベルの異なり具合を見ることによって複合光記録媒体であるか否かを判断できる。また、上記フォーカスエラー信号を生成するに当たって、第1の波長(第2の波長に比べて波長が長い)の光ビームを用いることで、上記フォーカスエラー信号を良好に検出することができる。
本発明に係る複合光記録媒体は、以上のように、第1の波長を有する光ビームにより読み出し、あるいは、書き込みがなされる第1の記録層、および、第2の記録層と、上記第1の波長より短い第2の波長を有する光ビームにより読み出し、あるいは、書き込みがなされる第3の記録層と、を備え、上記三つ記録層は、上記光ビームの入射側から第1の記録層、第3の記録層、第2の記録層の順に、配置されることを特徴としている。
あるいは、本発明に係る他の複合光記録媒体は、第1の波長を有する光ビームにより読み出し、あるいは、書き込みがなされる第1の記録層、および、第2の記録層と、上記第1の波長より短い第2の波長を有する光ビームにより読み出し、あるいは、書き込みがなされる第3の記録層、および、第4の記録層と、を備え、上記四つの記録層は、上記光ビームの入射側から第1の記録層、第3の記録層、第4の記録層、第2の記録層の順に、配置されることを特徴としている。
それゆえ、本発明に係る複合光記録媒体においては、保護層の厚み誤差に対する球面収差の発生量が大きい記録層は、保護層の厚み誤差に対する球面収差の発生量が小さい記録層の間に配置される。このため、上記複合光記録媒体に対して用いられる光ピックアップでは、対物レンズの共通化によって各記録層において不可避に発生する球面収差を、該複合光記録媒体に対する情報の記録あるいは再生に支障がないレベルにまで低減することが容易になる。すなわち、光ピックアップにおける対物レンズの共有化が容易になるといった効果を奏する。
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1から図6に基づいて説明すると以下の通りである。
ここで、本発明に係る複合光記録媒体は、種類が異なる複数の記録層を備えたものであるが、これらの記録層における保護層の厚みは、その規格上ほぼ等しいものである。このような複合光記録媒体では、複数の記録層のそれぞれにおいて保護層の厚さが大きく異なる複合光記録媒体(例えば、CDの記録層とDVDの記録層とを備えた複合光記録媒体)、に比べて、それぞれの記録層に対して保護層の厚み誤差に起因する球面収差が小さくなることは明らかである。本発明は、さらに、記録層の配置を工夫することによって、それぞれの記録層に対して保護層の厚み誤差に起因する球面収差をさらに抑制し、光ピックアップにおける対物レンズの共有化を可能とするものである。
また、本発明に係る複合光記録媒体では、種類が異なる記録層のそれぞれにおいて、読み出し、あるいは、書き込みに用いられる光ビームの波長が異なる。また、本発明に係る複合光記録媒体は、3層以上の記録層を備えており、その内、波長の長い光ビームに対応する記録層を2層以上備えているものとする。
本発明に係る複合光記録媒体としては、例えば、DVDの記録層とHD−DVDの記録層とを備えた複合光記録媒体が挙げられるが、もちろん、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、本実施の形態1に係る複合光記録媒体1の構成について図1を参照して説明する。複合光記録媒体1においては、光の入射側より、保護層10、記録層11(第1の記録層)、スペーサ層12、記録層13(第3の記録層)、スペーサ層14、記録層15(第2の記録層)、および基板16が、この順序で配置されている。記録層11および記録層15は第1の波長λ1に対応しており、記録層13は第2の波長λ2に対応している。ここで、第1の波長λ1は、第2の波長λ2よりも波長が長い。すなわち、
λ2<λ1
である。
また、複合光記録媒体1の光の入射側表面から記録層11までの厚みをt-L1-λ1とし、同様に記録層15までの厚みをt-L0-λ1、記録層13までの厚みをt-L0-λ2とすれば、
t-L0-λ1>t-L0-λ2>t-L1-λ1
の関係が成り立つ。なお、以降の説明においては、説明の簡略化のために、複合光記録媒体1の光の入射側表面から各記録層までの厚みのことを、その記録層に対する保護層の厚みと表現する。
次に図2、および、図3を用いて上記複合光記録媒体1に対して用いられる光ピックアップに備えられる対物レンズに関して説明する。
上記構成の複合光記録媒体1における上記3つの記録層に対し、記録マークを書き込みあるいは読み出しする際に使用する光ピックアップに備えられる対物レンズには、第1の波長λ1に対する球面収差を最小にする保護層の厚みt1が、
t-L0-λ1>t1>t-L1-λ1
となる対物レンズを用いる。
図2は、対物レンズに波長λ1を有する光ビームL1を入射させた場合、光ビームL1が厚みt1を有する保護層を透過して集光されるとき、集光スポットの球面収差が最も小さくなることを示す概略説明図である。
また、上記対物レンズ109は、第2の波長λ2に対して球面収差を最小にする保護層の厚みがt-L0-λ2に近い値であるほど好ましい。その具体的範囲は、
t-L0-λ1>t2>t-L1-λ1
である。
図3は、対物レンズ109に波長λ2を有する光ビームL2を入射させた場合、光ビームL2が厚みt2を有する保護層を透過して集光されるとき、集光スポットの球面収差が最も小さくなることを示す概略説明図である。
光ピックアップに光源として備えられる半導体レーザの発振波長は素子温度の変化により瞬間的に変化する(モードホップ現象)。従って、対物レンズを分散が大きい(すなわち、波長に対する屈折率の変動が大きい)材料で形成した場合、対物レンズに入射する光ビームの波長の変動に伴い、集光スポットの位置が該光ビームの光軸方向に変動する。光記録媒体に備えられる記録層の高密度化に伴い、光ビームが短波化されるほど、また、対物レンズの高開口数化されるほど、上記集光スポットにおける位置ずれの影響は大きくなる。
そこで、モードホップ現象に起因する集光スポットの位置ずれを回避するために、光ピックアップに備えられる対物レンズ109には、分散の小さい材料で形成された低分散型の対物レンズが用いられることが好ましい。
上記モードホップ現象を考慮した低分散型の対物レンズでは、異なる波長を有する光ビームに対する、球面収差を最小にする保護層の厚みの差は小さくなる。すなわち、上記低分散型の対物レンズを用いることで、結果として、第1の波長λ1に対する球面収差を最小にする保護層の厚みと、第2の波長に対する球面収差を最小にする保護層の厚みとは概ね同一になり、異なる波長に対して対物レンズを共通化するうえで有効である。
すなわち、対物レンズ109には、t1=t2となる対物レンズを用いることがより好ましい。
上記構成の複合光記録媒体1においては、保護層の厚み誤差に対する球面収差の発生量が大きい記録層13(波長が短い光ビームに対応する記録層)を、保護層の厚み誤差に対する球面収差の発生量が小さい記録層11と記録層15と(波長が長い光ビームに対応する記録層)の間に配置したことで、上記各記録層において発生する球面収差の量を抑えることが可能になる。すなわち、上述した対物レンズを共通の対物レンズとして用いれば、各記録層において不可避に発生する球面収差を、全ての記録層に対する情報の記録あるいは再生が可能となるレベルにまで低減することができる。
逆に、複合光記録媒体1とは異なる記録層の配置、例えば、
t-L0-λ1>t-L1-λ1>t-L0-λ2
のような保護層の厚みとなる配置や、
t-L0-λ2>t-L0-λ1>t-L1-λ1
のような保護層の厚みとなる配置の構成とした場合、上記低分散型の対物レンズ、特に、t1=t2なる対物レンズを採用することが困難になる。
また、複合光記録媒体1の構成では、第1の波長λ1に対応した記録層を2層とすることで、3層以上の記録層を配置することが可能となり、記録媒体の大容量化も同時に実現することができる。
上述した第1の波長λ1に対する球面収差を最小にする保護層の厚みt1が、
t-L0-λ1>t1>t-L1-λ1
となる対物レンズを用いれば、第1の波長に対応する記録層(記録層11および記録層15)に対する保護層の厚み誤差の差を該記録層間距離より小さくすることが可能である。さらに、球面収差を最小にする保護層の厚みt1が、記録層11に対する保護層の厚みと記録層15に対する保護層の厚みとの平均値、すわなち(t-L0-λ1+t-L1-λ1)/2、に概ね同一になる対物レンズを用いれば、記録層11と記録層15に対する保護層の厚み誤差は同一になる。これらの構成により、記録層11と記録層15とにおいて発生する球面収差の量を概ね同一にできる。
このとき、記録層11と記録層15とに記録される記録マークの大きさを一様に小さくすることが可能であり、両記録層の記録密度を一致させることができる。その結果、これら2つの記録層としてピットやランド・グルーブなどの凹凸形状を形成する工程を共通化できる。
また、記録層11と記録層15との記録密度が同一のため、両記録層に記録された情報を再生する際の複合光記録媒体の回転速度を一致させることができる。従って、同波長に対応する記録層を連続して再生する場合、複合光記録媒体2の回転速度を変えることなく、再生する記録層を移行することが可能である。すなわち、同一波長に対応する記録層を連続再生する場合、記録層間の移行時間を短縮することが可能である。
次に、本実施の形態1に係る複合光記録媒体に情報を記録、あるいは、該複合光記録媒体に記録された情報を再生する光記録再生装置に備えられる光ピックアップの概略について、図4を用いて説明する。
上記光ピックアップは、ホログラムレーザー100、コリメートレンズ101、整形プリズム102、ビームスプリッタ103、ホログラムレーザー104、コリメートレンズ105、整形プリズム106、波長開口選択フィルター107、対物レンズホルダー108、および対物レンズ109を備えてなる構成である。
ホログラムレーザー100は、半導体レーザ110(第1の波長を有する光ビームを出射する光源)と、光検出器(図示せず)と、ホログラム素子(図示せず)とを備えている。ホログラムレーザー100に備えられた半導体レーザは第1の波長λ1の光ビームを出射する。また、光検出器は、複合光記録媒体1の記録層により反射された反射光を検出し、フォーカスサーボ、トラッキングサーボ、および、RF信号を得る。また、ホログラム素子は、半導体レーザ110から出射された光ビームを透過し、複合光記録媒体1により反射された反射光を光検出器へと導く。
コリメートレンズ101および整形プリズム102は、第1の波長λ1に対応して設けられた光学系である。すなわち、ホログラムレーザー100から出射された光ビームは、コリメートレンズ101により平行光とされ、整形プリズム102により強度分布を調整されたのち、ビームスプリッター103を透過し、対物レンズ109へと向かう。
ホログラムレーザー104は、半導体レーザ111(第2の波長を有する光ビームを出射する光源)と、光検出器(図示せず)と、ホログラム素子(図示せず)とを備えている。ホログラムレーザー104に備えられた半導体レーザ111は第2の波長λ2の光ビームを出射する。また、光検出器は、複合光記録媒体1の記録層により反射された反射光を検出し、フォーカスサーボ、トラッキングサーボ、および、RF信号を得る。また、ホログラム素子は、半導体レーザ111から出射された光ビームを透過し、複合光記録媒体1により反射された反射光を光検出器へと導く。
コリメートレンズ105および整形プリズム106は、第2の波長λ2に対応して設けられた光学系である。すなわち、ホログラムレーザー104から出射された光は、コリメートレンズ105により平行光とされ、整形プリズム106により強度分布を調整されたのち、ビームスプリッター103で反射され、対物レンズ109へと向かう。
対物レンズ109の光源側には波長開口選択フィルター107が備えられている。すなわち、各波長の光が所定の対物レンズの開口数に応じた光束径となって対物レンズ109に入射するように、同心円状のパターンを有する波長選択性を持つフィルターが形成されている。
例えば、波長λ1に対応した開口数をNA1、波長λ2に対応した開口数をNA2とし、
NA2>NA1
となる波長開口選択フィルター107を使用した場合、入射する光ビームの波長が波長λ2のとき、波長が波長λ1のときと比べて、より大きい光束径の光が対物レンズ109に入射することになる。
また、対物レンズホルダー108は、ホログラムレーザー100および104の光検出器によって検出されるフォーカスサーボ信号およびトラッキングサーボ信号に基づいて、対物レンズ109をフォーカス方向ならびにトラッキング方向に駆動するアクチュエータに備えられたものである。
ホログラムレーザー100、および、ホログラムレーザー104は、光源の切り替え手段(図示せず)により、点灯を制御できるようになっており、複合光記録媒体1に備えられた第1の波長λ1に対応する記録層に光ビームを集光する場合には、ホログラムレーザー100が点灯し、第2の波長λ2に対応する記録層に光ビームを集光するときには、ホログラムレーザー104が点灯する。
次に、本実施の形態1に係る複合光記録媒体に情報を記録する、あるいは、該複合光記録媒体に記録された情報を再生する光記録再生装置の概略について、図9を用いて説明する。、
光記録再生装置55は、光ピックアップ52、送りモータ51、スピンドルモータ53、記録媒体検出光センサ54を備えており、複合光記録媒体1はスピンドルモータ53に対し、着脱自在に取り付けられる。また、光ピックアップ52、送りモータ51、スピンドルモータ53の動作を制御するドライバとしては、スピンドルモータドライバ56、送りモータドライバ57、レーザドライバ58、フォーカス/ラジアルサーボドライバ59が備えられている。
スピンドルモータドライバ56は、スピンドルモータ53の回転を制御するドライバである。送りモータドライバ57は、送りモータ51を制御するドライバであり、光ピックアップ52の光記録媒体の半径方向への移動を制御する。レーザドライバ58は、光ピックアップ52に備えられた半導体レーザの発光を制御するためのドライバである。フォーカス/ラジアルサーボドライバ59は、光ピックアップ52が光記録媒体の記録層にフォーカスする、あるいは、光記録媒体の記録層のトラックにトラッキングするための制御を行うドライバである。
さらに、光記録再生装置55は、記録再生信号処理回路60、コントローラ61を備えている。記録再生信号処理回路60は、再生時には、光記録媒体から再生されたアナログ信号をデジタル信号に変換して復調し、記録時には、光記録媒体へ記録するユーザデータを変調し、レーザドライバ58に出力するための回路である。また、コントローラ61は、前記ドライバや回路を統括するCPUであり、ホストコンピュータからの入出力信号に応じて各ドライバや回路に指示を送る機能を担っている。
次に、光記録媒体が光記録再生装置に装着された時の、複合光記録媒体の判別動作について図10を参照して説明する。
光記録媒体が光記録再生装置に装着されたか否かは、図9に示した記録媒体検出光センサ54によって検出される。具体的には、光記録再生装置に備えられた図示しないトレイが装置から引き出された後、再度トレイが収納された段階で図10の動作が開始される。すなわち、記録媒体検出光センサ54が光を発し、記録媒体からの反射光の有無を検出する(S1)ことにより、光記録媒体が光記録再生装置内に収納されたか否かを判断する(S2)。ここで、光記録媒体が収納されたと判断されなかった場合には動作を終了する。
一方、光記録再生装置に対して光記録媒体が収納されたと判断された場合は、スピンドルモータ53により光記録媒体を回転させ、光ピックアップ52を送りモータ51により光記録媒体のトラックが読み取れる位置まで移動させる。そして、光ピックアップ52に備えられた第1の波長の半導体レーザを発光させ、光記録媒体の記録層カウントを行う(S3)。ここで、記録層カウントとは、光ピックアップ52に搭載された対物レンズを、対物レンズが搭載されたアクチュエータによりフォーカス方向(図9の上下方向)に揺動し、フォーカスエラー信号に現れる信号のピークの数のうち、ピークレベルが閾値以上の数と、閾値以下のピークの数とを検出することを言う。
図11は、図1に示した複合光記録媒体の記録層カウントを行った場合のフォーカスエラー信号を示す概略説明図である。ここで、第3の記録層は第1の波長の光の反射率が低いため、フォーカスエラー信号のピークが閾値より小さくなっている。従って、ピークレベルが閾値以上の数は2、閾値以下のピークの数は1ということになる。次に、ピークの数として閾値以上のものと閾値以下のものとが存在しているか否かを判断し(S4)、存在していれば収納された光記録媒体が複合光記録媒体であると判断し(S5)、動作を終了する。また、閾値以上のものと以下のものとの何れかのみしか存在しない場合には通常の光記録媒体であると判断し(S6)、動作を終了する。
上記光記録再生装置においては、第1の波長の半導体レーザと第2の波長の半導体レーザとが備えられているが、上記記録層カウントを行うにあたっては第1の波長の半導体レーザを用いることが好ましい。その理由は以下の通りである。
複合光記録媒体に備えられた第1の記録層と第2の記録層とに光ピックアップの対物レンズにより第1の波長の光ビームを集光する場合、いずれの記録層においても信号の記録、あるいは、再生において問題のない程度に小さな球面収差の発生量となっている。したがって、前記2つの記録層の間に配置された第3の記録層で発生する球面収差も小さいものとなっているため、フォーカスエラー信号は良好に検出することが可能である。
一方、第2の波長の光ビームを第1の記録層や第2の記録層に集光した場合、球面収差の発生量が大きく、フォーカスエラー信号が急峻なピークを持った信号として得られない可能性がある。したがって、複合光記録媒体の判別に対して、第1の波長の光ビームを使用する場合と、第2の波長の光ビームを使用する場合とを考えると、第1の波長の光ビームを使用する方がより安定して複合光記録媒体の判別を行うことが可能である。
なお、フォーカスエラー信号における閾値は、実際の複合光記録媒体により実測するか、あるいは、複合光記録媒体の規格における各記録層の反射率と透過率の値から決定すれば良い。
〔具体例1〕
続いて、本実施の形態1に係る複合光記録媒体の具体的構成を例示する。
複合光記録媒体1は、第1の波長λ1(650nm)に対応した記録層11(第1の記録層)、および、記録層15(第2の記録層)、ならびに第2の波長λ2(405nm)に対応した記録層13(第3の記録層)を備えており、光の入射側より、保護層10、記録層11、スペーサ層12、記録層13、スペーサ層14、記録層15、基板16の順に各部材が配置されている。
上述したとおり、第1の波長λ1と第2の波長λ2との間には、
λ2<λ1
の関係があり、また、光の入射側表面から記録層11までの距離をt-L1-λ1、また、同表面から記録層15までの距離をt-L0-λ1、さらに、同表面から記録層13までの距離をt-L0-λ2とすれば、
t-L0-λ1>t-L0-λ2>t-L1-λ1
の関係が成り立っている。
上記複合光記録媒体1において、保護層10、および、基板16は、ポリカーボネートにより形成され、厚みは575μmである。スペーサ層12は紫外線硬化樹脂で構成され、厚みは25μmである。スペーサ層14は紫外線硬化型シートで構成され、厚みは25μmである。
複合光記録媒体1は再生専用媒体であり、ピット部(記録マーク)は、保護層10の記録層11側表面、および、基板16の記録層15側表面に形成される。記録層11は、ピット部が形成された保護層10の表面上に、例えばAlからなる反射膜を成膜することにより構成される。また、記録層15は、ピット部が形成された基板16の表面上に、例えばAlからなる反射膜を成膜することにより構成される。
記録層13の表面には、スペーサ層14を構成する紫外線硬化型シートが貼り付けられ、該紫外線硬化型シートの入射側表面にピット部が形成される。記録層13は、ピット部が形成された該紫外線硬化型シートの表面上に成膜された反射膜(例えばAl)により構成される。
さらに、スペーサ層12となる紫外線硬化樹脂を接着剤として利用し、保護層10と記録層11とからなる部材と、基板16と記録層15とスペーサ層14と記録層13とからなる部材と、を接着することで複合光記録媒体1が製造される。
上記複合光記録媒体1において、上記保護層10と上記基板16とはともに厚さ575μmのポリカーボネートにより構成されている。このため、上記複合光記録媒体の製造工程において、保護層10と基板16とにピット部を形成する工程、および、ピット部が形成された保護層10と基板16上に反射膜を成膜する工程を共通化することが可能であり、これにともなって、製造コストを下げることが可能である。
また、上記複合光記録媒体1において、記録層13を対応するピット部が形成される上記スペーサ層14は紫外線硬化型シートにより構成されたが、上記スペーサ層14は光硬化樹脂により構成することも可能である。この場合、2P法(Photo Polimerization 法)により、該光硬化樹脂上にピット部を形成することが可能になる。
実施の形態1に係る複合光記録媒体1において、記録層11、記録層13、および、記録層15を構成する反射膜の厚みは20nmであり、保護層10、スペーサ層12、および、スペーサ層14と比較して、非常に薄い。従って、実質的に、記録層11に対する保護層の厚み(t-L1-λ1)は575μm、記録層13に対する保護層の厚み(t-L0-λ2)は600μm、記録層15に対する保護層の厚み(t-L0-λ1)は625μmとなる。
上記複合光記録媒体1において、スペーサ層12および14の厚みは、上記のように25μmとしたが、この厚みは、集光スポットにおける球面収差の抑制や、記録層に対する集光スポットのフォーカス制御および再生信号の問題を考慮して設定されている。
まず、集光スポットにおける球面収差を小さくするためには、スペーサ層の厚みは薄い方が望ましい。例えば、複数の記録層を備えた複合光記録媒体において、記録層間のスペーサ層を厚くすると、該記録層に対する保護層の厚み誤差(より正確には該記録層に対する保護層の厚み誤差の和)が大きくなり、該記録層における球面収差の発生量が無視できなくなる。球面収差が大きくなると再生信号の振幅が低下し、集光スポットにおける光強度が低下するため、光記録媒体に記録マークが形成できなくなるといった問題が生ずる。したがって、球面収差の観点からは、2つの記録層間の距離、すなわち、スペーサ層の厚みは極力薄く設定される方が望ましい。
一方、スペーサ層を薄くしすぎた場合には、記録層に対するフォーカス制御や、信号再生に際して問題が発生する。ここでフォーカス制御における問題とは、目的の記録層と隣接する記録層により反射された反射光が、フォーカスエラー信号として本来読み取られるべき目的の記録層により反射された反射光に混入することにより、フォーカス制御が困難になるという問題である。また、信号再生における問題とは、目的の記録層と隣接する記録層により反射された反射光が、再生信号として本来読み取られるべき目的の記録層により反射された反射光に混入する、いわゆる層間クロストークの問題である。これらの観点からは、記録層間の距離、すなわち、スペーサ層の厚みは大きい方が好ましい。
複合光記録媒体においては以上の問題点があるため、隣接する2つの記録層間の距離、すなわち、本願で言うところのスペーサ層の厚みは10μm〜40μmとされる場合が多い。
上記複合光記録媒体1においては、保護層として600μmの厚みを想定した対物レンズ109を用いた場合(すなわち球面収差が最小となる保護層の厚みt1およびt2がいずれも600μmの場合)、第1の波長λ1に対応した記録層11および15に対する保護層の厚み誤差は±25μm、また、第2の波長λ2に対応した記録層13に対する保護層の厚み誤差は0μmに抑えられる。これは、上記全ての記録層においての球面収差の発生量を十分低く抑えることができるレベルである。
特に、保護層の厚み誤差に伴う球面収差の発生量は、波長の短い光ほど大きいが、短い波長λ2に対応する記録層、すなわち、記録層13に対する保護層の厚み誤差を0μmに抑えることで、球面収差の発生量を低減することに成功している。
また同時に、25μm以上の記録層間距離を確保することにより、深刻なフォーカス制御の問題、および、層間クロストークの問題を招来することなく、各記録層における球面収差の発生量を抑えることを可能にしている。
なお、上記においては球面収差が最小となる保護層の厚みt1およびt2がいずれも600μmという、本願の最も好適な具体例について説明したが、本願の効果を得るためには実施の形態1で説明したような下記の範囲の
625μm>t1>575μm
625μm>t2>575μm
であれば良い。
なお、上記説明の複合光記録媒体においては記録層を構成する反射膜としてAlを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、記録層を構成する反射膜としてはAuやAgを用いても同様の効果を得ることができる。
なお、本具体例では再生専用の複合光記録媒体の構成に関して述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく、追記型や書き換え型の複合光記録媒体も本発明の技術的範囲に含まれる。追記型や書き換え型の複合光記録媒体に備えられる記録層を構成する反射膜の材料としては、有機色素や無機材料などを使用することが可能である。また、いわゆる相変化材料として知られる材料を記録層として使用することもできる。
また、記録層を構成する反射膜として波長選択性を有する反射膜を用いることも可能である。具体的には、第1の波長λ1に対応する記録層11と記録層15とは、第1の波長λ1に対する反射率が、第2の波長λ2に対する反射率よりも大きい反射膜で構成されると良い。この構成は、記録層13に対して第2の波長λ2で記録/再生する際に、第1の波長λ1に対応する記録層11および記録層15からの反射光を防止する上で有効である。
また、第2の波長λ2に対応する記録層13は、第2の波長にλ2に対する反射率が、第1の波長λ1に対する反射率よりも大きい反射膜で構成されると良い。この構成は、記録層11または15に対して第1の波長λ1で記録/再生する際に、第2の波長λ2に対応する記録層13からの反射光を防止する上で有効である。
すなわち、記録層11を構成する反射膜の、第1の波長λ1に対する反射率をR1-L1-λ1、第2の波長λ2に対する反射率をR2-L1-λ1とし、記録層15を構成する反射膜の、第1の波長λ1に対する反射率をR1-L0-λ1、第2の波長λ2に対する反射率をR2-L0-λ1とし、記録層13を構成する反射膜の、第1の波長λ1に対する反射率をR1-L0-λ2、第2の波長λ2に対する反射率をR2-L0-λ2としたとき、
R1-L1-λ1>R2-L1-λ1
R1-L0-λ1>R2-L0-λ1
R1-L0-λ2<R2-L0-λ2
の関係が成り立つ。
上記複合光記録媒体1に備えられた記録層11、および、記録層13を、上述のような波長選択性を有する反射膜で構成することにより、複合光記録媒体1に第1の波長λ1を持つ光ビームを入射するときには、該光ビームが第2の波長λ2に対応する記録層13により反射されて光ピックアップに受光される光ビームの強度を小さくすることができる。また、複合光記録媒体1に第2の波長λ2を持つ光ビームを入射するときには、該光ビームが第1の波長λ1に対応する記録層11および15により反射されて光ピックアップに受光される光ビームの強度を小さくすることが可能である。
また、同じ波長に対応する記録層において発生する前記問題は、2つの記録層の間に他の波長に対応する記録層を挟み、結果として、2つの記録層の距離を離すことで低減することができる。
これにより、隣接する記録層間で発生する、フォーカス制御の問題および層間クロストークの問題をさらに軽減することができる。波長選択性を有する反射膜としては、SiO2、SiN、TiO2などの誘電体膜から構成される誘電体多層膜による干渉効果によるものや、SiHx、Siなどの波長選択性を有する反射膜を使用すれば良い。
なお、実施の形態1に係る光ピックアップは、上述したように、低分散型の対物レンズを備え、第1の波長λ1に対して球面収差を最小にする保護層の厚みと、第2の波長に対して球面収差を最小にする保護層厚みと、が同一(600nm)であったが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。すなわち、第1の波長λ1に対して球面収差を最小にする保護層の厚みと、第2の波長に対して球面収差を最小にする保護層厚みとは請求項に示した範囲で異なっても良い。
〔具体例2〕
上記具体例1に係る複合光記録媒体1は、第1の波長λ1に対応する二つの記録層11(第1の記録層)と、記録層15(第2の記録層)と、第2の波長λ2に対応する一つの記録層13(第3の記録層)と、の合計三つの記録層を備えていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、上記複合光記録媒体にさらに記録層を追加した複合光記録媒体も本発明の技術的範囲に含まれる。
本具体例2においては、上記具体例1に係る複合光記録媒体に備えられた三つの記録層に加え、さらに第1の波長λ1に対応するもう一つの記録層を備えた構成について例示する。
図5に示す複合光記録媒体209において、保護層200、基板208はともにポリカーボネートからなり、ともに厚みは570μmである。スペーサ層204は紫外線硬化樹脂で構成され、厚みは20μmである。スペーサ層202とスペーサ層206とは紫外線硬化型シートで構成され、厚みはそれぞれ20μmである。
記録層201(第1の記録層)、記録層205(第2の記録層)、および、記録層207(追加された記録層)は第1の波長λ1(650nm)に対応した記録層であり、記録層203(第3の記録層)は第2の波長λ2(405nm)に対応した記録層である。
複合光記録媒体209は再生専用媒体であり、保護層200の記録層201側の面、および、基板208の記録層207側の面には各々ピット部が形成されている。
また、保護層200におけるピット部が形成された表面には、例えばAlからなる反射膜が成膜されており、該反射膜が記録層201を構成している。同様に、基板208におけるピット部が形成された表面には、例えばAlからなる反射膜が成膜されており、該反射膜が記録層207を構成している。
基板208に記録層207を形成した後、スペーサ層206を構成する紫外線硬化型シートが貼り付けられ、該紫外線硬化型シートの基板208に対向する面とは反対側の面にピット部が形成される。記録層205は、該紫外線硬化型シートのピット部が形成された表面に成膜された反射膜(例えばAl)により構成される。
同様に、保護層200に記録層201を形成した後、スペーサ層202を構成する紫外線硬化型シートが貼り付けられ、該紫外線硬化型シートの保護層200に対向する面とは反対側の面にピット部が形成される。記録層203は、該紫外線硬化型シートのピット部が形成された表面に成膜された反射膜(例えばAl)により構成される
さらに、スペーサ層204となる紫外線硬化樹脂を接着剤として利用し、保護層200と記録層201とスペーサ層202と記録層203とからなる部材と、基板208と記録層207とスペーサ層206と記録層205とからなる部材と、を接着することで複合光記録媒体209が作成される。
上記複合光記録媒体209において、記録層201、記録層203、記録層205、および、記録層207を構成する反射膜の厚みは20nmであり、保護層200、スペーサ層202、スペーサ層204、および、スペーサ層206と比較して、非常に薄い。従って、実質的に、記録層201に対する保護層の厚みは570μm、記録層203に対する保護層の厚みは590μm、記録層205に対する保護層の厚みは610μm、記録層207に対する保護層の厚みは630μmとなっている。
上記複合光記録媒体209に対して、第1の波長λ1に対しても、第2の波長λ2に対しても、600μmの厚みを持つ保護層を透過したとき球面収差が最小になるよう設計された対物レンズ109を用いれば、記録層201に対する厚み誤差を−30μm、記録層203に対する保護層の厚み誤差を−10μm、記録層205に対する保護層の厚み誤差を+10μm、記録層207に対する保護層の厚み誤差を+30μmに抑えることが可能であり、上記全ての記録層においての球面収差の発生量を十分低く抑えることができる。
特に、保護層の厚み誤差に対する球面収差の発生量の大きい、短い波長である第2の波長λ2に対応する記録層203に対する保護層の厚み誤差を−10μmに抑えることにより、球面収差の発生量をさらに低減することができる。
また、上記複合光記録媒体209においては、隣接する記録層間の距離を20μm確保している。これにより、深刻なフォーカス制御の問題、および、層間クロストークの問題を招来することなく、各記録層における球面収差の発生量を抑えることを可能にしている。
なお、上記説明の複合光記録媒体においては記録層を構成する反射膜としてAlを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、記録層を構成する反射膜としてはAuやAgを用いても同様の効果を得ることができる。
なお、本具体例では再生専用の複合光記録媒体の構成に関して述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく、追記型や書き換え型の複合光記録媒体も本発明の技術的範囲に含まれる。追記型や書き換え型の複合光記録媒体に備えられる記録層を構成する反射膜の材料としては、有機色素や無機材料などを使用することが可能である。また、いわゆる相変化材料として知られる材料を記録層として使用することもできる。
また、記録層として波長選択性を有する反射膜を使用することにより、集光スポットのフォーカス制御の問題や、層間クロストークの問題をさらに低減することができる点も具体例1と同様である。
〔具体例3〕
本具体例3は、上記具体例1に係る複合光記録媒体に備えられた三つの記録層に加え、さらに第2の波長λ2に対応するもう一つの記録層を備えた構成について例示する。
図6に示す複合光記録媒体309において、保護層300、スペーサ層302、基板308はともにポリカーボネートからなり、それぞれ厚みは100μm、480μm、580μmである。スペーサ層304は紫外線硬化樹脂で構成され、厚みは20μmである。スペーサ層306は紫外線硬化型シートで構成され、厚みは20μmである。
記録層303(第1の記録層)、および、記録層307(第2の記録層)は第1の波長λ1(650nm)に対応した記録層であり、記録層301(追加された記録層)、および、記録層305(第3の記録層)は第2の波長λ2(405nm)に対応した記録層である。
複合光記録媒体309は再生専用媒体であり、スペーサ層302の両面、および、基板308の記録層307側の面には各々ピット部が形成されている。
また、スペーサ層302の両面において、ピット部が形成された表面上に例えばAlからなる反射膜が成膜されており、該反射膜が記録層301と記録層303とを構成している。同様に、基板308におけるピット部が形成された表面には例えばAlからなる反射膜が成膜されており、該反射膜が記録層307を構成している。
基板308に記録層307を形成した後、スペーサ層306を構成する紫外線硬化型シートが貼り付けられ、該紫外線硬化型シートの基板308に対向する面とは反対側の面にピット部が形成される。記録層305は、該紫外線硬化型シートのピット部が形成された表面に成膜された反射膜(例えばAl)により構成される。
スペーサ層302に備えられた記録層301の表面には、ポリカーボネートからなる保護層308が、紫外線硬化樹脂からなる接着剤により接着される。該紫外線硬化樹脂の接着後の厚みは数μm程度である。また、スペーサ層302に備えられた記録層303の表面には、スペーサ層304を構成する紫外線硬化樹脂が塗布され、該紫外線硬化樹脂を接着剤として、記録層303と記録層305とが接着される。
上記複合光記録媒体309において、記録層301、記録層303、記録層305、および、記録層307を構成する反射膜の厚みは20nmであり、保護層300、スペーサ層302、スペーサ層304、および、スペーサ層306と比較して、非常に薄い。従って、実質的に、記録層301に対する保護層の厚みは100μm、記録層303に対する保護層の厚みは580μm、記録層305に対する保護層の厚みは600μm、記録層307に対する保護層の厚みは620μmとなっている。
上記複合光記録媒体309に対して、第1の波長λ1に対しても、第2の波長λ2に対しても、600μmの厚みを持つ保護層を透過したとき球面収差が最小になるよう設計された対物レンズ109を用いれば、第1の波長に対応する記録層303と記録層307に対する保護層の厚み誤差を±20μm、第2の波長に対応する記録層305に対する保護層の厚み誤差を0μmに抑えることが可能であり、上記三つの記録層においての球面収差の発生量を十分低く抑えることができる。
特に、保護層の厚み誤差に対する球面収差の発生量の大きい、短い波長である第2の波長λ2に対応する記録層305に対する保護層の厚み誤差を0μmに抑えることにより、球面収差の発生量をさらに低減することができる。
また、上記複合光記録媒体309においては、第1の波長λ1に対応する記録層303と記録層307とに関して、隣接する記録層間の距離を40μm確保している。これにより、フォーカス制御の問題、および、層間クロストークの問題を招来することなく、各記録層における球面収差の発生量を抑えることを可能にしている。
なお、記録層301に関しては、第2の波長λ2に対し100μmの厚みを持つ保護層を透過したとき集光スポットにおける球面収差が最小になるよう設計された対物レンズを、複合光記録媒体309を再生するための光ピックアップに備えることにより対応することが可能になる。
なお、上記説明の複合光記録媒体においては記録層を構成する反射膜としてAlを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、記録層を構成する反射膜としてはAuやAgを用いても同様の効果を得ることができる。
なお、本具体例では再生専用の複合光記録媒体の構成に関して述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく、追記型や書き換え型の複合光記録媒体も本発明の技術的範囲に含まれる。追記型や書き換え型の複合光記録媒体に備えられる記録層を構成する反射膜の材料としては、有機色素や無機材料などを使用することが可能である。また、いわゆる相変化材料として知られる材料を記録層として使用することもできる。
また、記録層として波長選択性を有する反射膜を使用することにより、集光スポットのフォーカス制御の問題や、層間クロストークの問題をさらに低減することができる点も具体例1と同様である。
〔実施の形態2〕
本発明の第2の実施の形態について、図7および図8に基づいて説明すれば、以下の通りである。
はじめに、図7を用いて実施の形態2に係る複合光記録媒体の構成について説明する。
複合光記録媒体2は、第1の波長λ1(650nm)に対応した記録層21(第1の記録層)、および、記録層27(第2の記録層)、ならびに第2の波長λ2(405nm)に対応した記録層23(第3の記録層)、および、記録層25(第4の記録層)を備えており、光の入射側より、保護層20、記録層21、スペーサ層22、記録層23、スペーサ層24、記録層25、スペーサ層26、記録層27、基板28の順に各部材が配置されている。
第1の波長λ1と第2の波長λ2との間には、
λ2<λ1
の関係があり、また、光の入射側表面から記録層21までの距離をt-L1-λ1、また、同表面から記録層27までの距離をt-L0-λ1、さらに、同表面から記録層23までの距離をt-L1-λ2、同表面から記録層25までの距離をt-L0-λ2とすれば、
t-L0-λ1>t-L0-λ2>t-L1-λ2>t-L1-λ1
の関係が成り立っている。
上記構成の複合光記録媒体1における上記3つの記録層に対し、記録マークを書き込みあるいは読み出しする際に使用する光ピックアップに備えられる対物レンズには、第1の波長λ1に対する球面収差を最小にする保護層の厚みt1と、第2の波長に対して球面収差を最小にする保護層の厚みt2とが、
t-L0-λ1>t1>t-L1-λ1
t-L0-λ2>t2>t-L1-λ2
となる対物レンズを用いる。
上記構成の複合光記録媒体2においては、保護層の厚み誤差に対する球面収差の発生量が大きい記録層23および25(波長が短い光ビームに対応する記録層)を、保護層の厚み誤差に対する球面収差の発生量が小さい記録層21と記録層27と(波長が長い光ビームに対応する記録層)の間に配置されている。
上記配置により球面収差の影響が大きい記録層である記録層23と記録層25との間の層間距離(すなわち、スペーサ層24の厚み)を小さくすることが可能になる。このため、上述した対物レンズを共通の対物レンズとして用いれば、各記録層において不可避に発生する球面収差を、全ての記録層に対する情報の記録あるいは再生が可能となるレベルにまで低減することができる。
また、複合光記録媒体2とは異なる配置、例えば、各記録層に対する保護層の厚みを、
t-L0-λ2>t-L0-λ1>t-L1-λ2>t-L1-λ1
としたり、
t-L0-λ1>t-L0-λ2>t-L1-λ1>t-L1-λ2
とした場合、第2の波長λ2に対応する二つの記録層間距離が大きくなる。その結果、上記記録層において発生する球面収差は、本願発明の構成の場合に対して大きくなる。この場合、記録層における記録密度を下げる、あるいは、光ピックアップにおいて球面収差を補正する手段を備えるなどの対応が必要となる。
また、本実施の形態2に係る複合光記録媒体に対して用いられる光ピックアップが備える対物レンズは、第1の波長に対して球面収差を最小にする保護層の厚みt1と、第2の波長に対して球面収差を最小にする保護層の厚みt2とは、
t-L0-λ1>t1>t-L1-λ1
t-L0-λ2>t2>t-L1-λ2
の条件を満たすよう設計された対物レンズである。
上記対物レンズによれば、同一波長に対応する記録層に対する保護層の厚み誤差の差を、該記録層間距離以下に抑えることが可能である。
すなわち、記録層21と記録層27とに対する保護層の厚み誤差の差は該記録層間の距離以下であり、記録層21と記録層27における球面収差の発生量は概ね一致する。このため、記録層21と記録層27とに記録される記録マークの大きさを一様に小さくすることが可能であり、両記録層の記録密度を一致させることができる。その結果、これら2つの記録層としてピットやランド・グルーブなどの凹凸形状を形成する工程を共通化できる。
また、記録層の記録密度が同一のため、両記録層に記録された情報を再生する際の複合光記録媒体の回転速度を一致させることができる。従って、同波長に対応する記録層を連続して再生する場合、複合光記録媒体2の回転速度を変えることなく、再生する記録層を移行することが可能である。すなわち、同一波長に対応する記録層を連続再生する場合、記録層間の移行時間を短縮することが可能である。
同様に、記録層23と記録層25とにおける球面収差の発生量も概ね等しい。このため、記録層23と記録層25とに対しても上記と同様の効果を奏する。
上記複合光記録媒体2においては、記録層21(第1の記録層)と記録層23(第3の記録層)との間の距離と、記録層27(第2の記録層)と記録層25(第4の記録層)との間の距離が等しくなるよう各記録層を配置することが好ましい。
上記複合光記録媒体においては、第1の波長λ1に対して球面収差を最小にする保護層の厚み誤差t1が、さらに
t-L0-λ2>t1>t-L1-λ2
を満足する対物レンズに対して、記録層21と記録層27とに対する保護層の厚み誤差をさらに良く一致させ、該記録層において発生する球面収差の発生量をさらによく一致させることが可能になる。
またこの場合、スペーサ層22とスペーサ層26を共通の部材で構成することが可能になり、上記複合光記録媒体の作成時における、該スペーサ層に記録マークを記録する工程を共通化できる。
さらに、基板20と保護層28とは、ほぼ同一の厚さとすることが好ましい。この場合、基板20と保護層28とに同一の材料を使用することが可能となる。その結果、基板20や保護層28上にピットやランド・グルーブ等の凹凸形状を形成する工程を共通化することが可能になる。また、凹凸形状が形成された基板20や保護層28上に、記録層を構成する膜を成膜するための条件出しや、膜の特性のばらつきを抑制することが可能になる。
また、この場合、2つの対称な構造体を一体にした構成とすることが可能となるため、各々の構造体の製造プロセスを共通化でき、品質を安定に保つことができる。また、製造装置を共通化することができ、記録媒体の製造コストの低減に有効である。
本実施の形態2に係る複合光記録媒体に情報を記録、あるいは、該複合光記録媒体に記録された情報を再生する光記録再生装置に備えられる光ピックアップについては、図4と同様の構成の光ピックアップを用いることができる。
〔具体例4〕
続いて、本実施の形態2に係る複合光記録媒体の具体的構成を例示する。
本具体例2に係る複合光記録媒体2において、保護層20、および、基板28は、ポリカーボネートにより形成され、厚みは570μmである。スペーサ層24は紫外線硬化樹脂で構成され、厚みは20μmである。スペーサ層22、および、スペーサ層26は紫外線硬化型シートで構成され、厚みは20μmである。
複合光記録媒体2は再生専用媒体であり、ピット部(記録マーク)は、保護層20の記録層21側表面、および、基板28の記録層27側表面に形成される。記録層21は、ピット部が形成された保護層20の表面上に成膜された例えばAlからなる反射膜により構成され、また、記録層27は、ピット部が形成された基板28の表面上に成膜された例えばAlからなる反射膜により構成される。
記録層27の表面には、スペーサ層26を構成する紫外線硬化型シートが貼り付けられ、該紫外線硬化型シートの入射側表面にピット部が形成される。記録層25は、ピット部が形成された該紫外線硬化型シートの表面上に成膜された反射膜(例えばAl)により構成される。
同様に、記録層21の表面には、スペーサ層22を構成する紫外線硬化型シートが貼り付けられ、該紫外線硬化型シートの入射側表面にピット部が形成される。記録層23は、ピット部が形成された該紫外線硬化型シートの表面上に成膜された反射膜(例えばAl)により構成される。
なお、ピット部が形成される上記スペーサ層22とスペーサ層26とは紫外線硬化型シートにより構成されたが、該スペーサ層は光硬化樹脂により構成することも可能である。この場合、2P法(Photo Polimerization 法)により、該光硬化樹脂上にピット部を形成することが可能になる。
さらに、スペーサ層24となる紫外線硬化樹脂を接着剤として利用し、保護層20と記録層21とスペーサ層22と記録層23とからなる部材と、基板28と記録層27とスペーサ層26と記録層25とからなる部材と、を接着することで複合光記録媒体2が製造される。
本実施の形態2に係る複合光記録媒体2において、記録層21、記録層23、記録層25、および、記録層27を構成する反射膜の厚みは20nmであり、保護層20、スペーサ層22、スペーサ層24、および、スペーサ層26と比較して、非常に薄い。従って、実質的に、記録層21に対する保護層の厚み(t-L1-λ1)は570μm、記録層23に対する保護層の厚み(t-L1-λ2)は590μm、記録層25に対する保護層の厚み(t-L0-λ2)は610μm、記録層27に対する保護層の厚み(t-L0-λ1)は630μmとなる。
また、複合光記録媒体2の全体の厚みは1200μmであり、その二分の一の厚み600μmが、該複合光記録媒体2の光の入射側表面から、第2の波長λ2に対応する2つの記録層23および記録層25の間の位置までの厚みと一致するようにした。
上記複合光記録媒体2に記録された情報を再生するための光ピックアップに備えられる対物レンズ109には、第1の波長λ1(650nm)に対しても、また、第2の波長λ2(405nm)に対しても、厚み600μmの保護層を透過したとき、集光スポットにおける球面収差が最小になる対物レンズを用いる。
上記複合光記録媒体2に対して上記対物レンズ109を用いれば、第1の波長λ1に対応した記録層21および記録層27に対する保護層の厚み誤差は±30μm、また、第2の波長λ2に対応した記録層23および記録層25に対する保護層の厚み誤差は±10μmに抑えることが可能であり、上記全ての記録層においての球面収差の発生量を十分低く抑えることができる。
また、保護層の厚み誤差に伴う球面収差の発生量は、波長の短い光ほど大きいが、上記複合光記録媒体2に対して上記対物レンズ109を用いることにより、短い波長λ2に対応する記録層、すなわち、記録層23および25に対する保護層の厚み誤差を±10μmに抑えることが可能になり、球面収差の発生量をさらに低減することを可能にしている。
また、上記複合光記録媒体2においては、隣接する記録層間の距離、すなわち記録層間のスペーサ層の厚みは20μmである。
複数の記録層を持つ複合光記録媒体では、フォーカス制御の問題、および、層間クロストークの問題を解消するために、通常、記録層の間の距離は10μmから40μmとされる場合が多い。これに対して、上記複合光記録媒体2は、20μm以上の記録層間距離を確保することにより、フォーカス制御の問題、および、層間クロストークの問題を招来することなく、各記録層における球面収差の発生量を抑えることを可能にしている。
上記説明の複合光記録媒体においては記録層を構成する反射膜としてAlを使用したが、AuやAgであっても同様の効果を得ることができる。
また、記録層として再生専用のものを使用したが、追記型のものや書き換え型のものであっても良い。この場合、記録層を構成する膜の材料としては有機色素や無機材料などの一般的に使用される材料を使用することができる。いわゆる相変化材料として知られるものを記録層として使用することもできる。
なお、上記説明の複合光記録媒体においては記録層を構成する反射膜としてAlを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、記録層を構成する反射膜としてはAuやAgを用いても同様の効果を得ることができる。
なお、本具体例では再生専用の複合光記録媒体の構成に関して述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく、追記型や書き換え型の複合光記録媒体も本発明の技術的範囲に含まれる。追記型や書き換え型の複合光記録媒体に備えられる記録層を構成する反射膜の材料としては、有機色素や無機材料などを使用することが可能である。また、いわゆる相変化材料として知られる材料を記録層として使用することもできる。
また、記録層を構成する反射膜として波長選択性を有する反射膜を用いることも可能である。具体的には、第1の波長λ1に対応する記録層21および27は、第1の波長λ1に対する反射率が、第2の波長λ2に対する反射率よりも大きい反射膜で構成されると良い。この構成は、記録層23または25に対して第2の波長λ2で記録/再生する際に、第1の波長λ1に対応する記録層21および記録層27からの反射光を防止する上で有効である。
また、第2の波長λ2に対応する記録層23および25は、第2の波長にλ2に対する反射率が、第1の波長λ1に対する反射率よりも大きい反射膜で構成されると良い。この構成は、記録層21または27に対して第1の波長λ1で記録/再生する際に、第2の波長λ2に対応する記録層23および25からの反射光を防止する上で有効である。
すなわち、記録層21を構成する反射膜の、第1の波長λ1に対する反射率をR1-L1-λ1、第2の波長λ2に対する反射率をR2-L1-λ1とし、記録層23を構成する反射膜の、第1の波長λ1に対する反射率をR1-L1-λ2、第2の波長λ2に対する反射率をR2-L1-λ2とし、記録層25を構成する反射膜の、第1の波長λ1に対する反射率をR1-L0-λ2、第2の波長λ2に対する反射率をR2-L0-λ2、記録層27を構成する反射膜の、第1の波長λ1に対する反射率をR1-L0-λ1、第2の波長λ2に対する反射率をR2-L0-λ1としたとき、
R1-L1-λ1>R2-L1-λ1
R1-L1-λ2<R2-L1-λ2
R1-L0-λ2<R2-L0-λ2
R1-L0-λ1>R2-L0-λ1
の関係が成り立つ。
上記複合光記録媒体2に備えられた各記録層を、上記波長選択性を有する反射膜で構成することにより、複合光記録媒体2に第1の波長λ1を持つ光ビームを入射するときには、該光ビームが第2の波長λ2に対応する記録層23および25により反射されて光ピックアップに受光される光ビームの強度を小さくすることが可能である。また、複合光記録媒体2に第2の波長λ2を持つ光ビームを入射するときには、該光ビームが第1の波長λ1に対応する記録層21および27により反射されて光ピックアップに受光される光ビームの強度を小さくすることが可能である。
また、同じ第1の波長λ1に対応する記録層21および27において発生する前記問題は、これら2つの記録層の間に第2の波長λ2に対応する記録層23および25を挟み、結果として、記録層21および27の距離を離すことで低減することができる。
これにより、隣接する記録層間で発生する、フォーカス制御の問題および層間クロストークの問題をさらに軽減することができる。
波長選択性を有する反射膜としては、SiO2、SiN、TiO2などの誘電体膜から構成される誘電体多層膜による干渉効果によるものや、SiHx、Siなどの波長選択性を有する反射膜を使用すれば良い。
なお、実施の形態2に係る光ピックアップは、上述したように、低分散型の対物レンズを備え、第1の波長λ1に対して球面収差を最小にする保護層の厚みと、第2の波長に対して球面収差を最小にする保護層厚みと、が同一(600nm)であったが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。すなわち、第1の波長λ1に対して球面収差を最小にする保護層の厚みと、第2の波長に対して球面収差を最小にする保護層厚みとは請求項に示した範囲で異なっても良い。
〔具体例5〕
上記具体例4に係る複合光記録媒体2は、第1の波長λ1に対応する二つの記録層と、第2の波長に対応する二つの記録層を備えていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、上記複合光記録媒体にさらに記録層を追加した複合光記録媒体も本発明の技術的範囲に含まれる。
本具体例5においては、上記具体例1に係る複合光記録媒体に備えられた四つの記録層に加え、さらに第2の波長に対応する記録層を備えた構成について例示する。
図8に示す複合光記録媒体511において、保護層500、スペーサ層502、基板510はともにポリカーボネートからなり、それぞれ厚みは100μm、470μm、570μmである。スペーサ層506は紫外線硬化樹脂で構成され、厚みは20μmである。スペーサ層504とスペーサ層508とは紫外線硬化型シートで構成され、厚みはそれぞれ20μmである。
記録層503(第1の記録層)、および、記録層509(第2の記録層)は第1の波長λ1(650nm)に対応した記録層であり、記録層501(追加された記録層)、記録層505(第3の記録層)、および、記録層507(第4の記録層)は第2の波長λ2(405nm)に対応した記録層である。
複合光記録媒体511は再生専用媒体であり、スペーサ層502の両面、および、基板510の記録層509側の面には各々ピット部が形成されている。
また、スペーサ層502の両面において、ピット部が形成された表面上に例えばAlからなる反射膜が成膜されており、該反射膜が記録層501と記録層503とを構成している。同様に、基板510におけるピット部が形成された表面には例えばAlからなる反射膜が成膜されており、該反射膜が記録層509を構成している。
基板510に記録層509を形成した後、スペーサ層508を構成する紫外線硬化型シートが貼り付けられ、該紫外線硬化型シートの基板510に対向する面とは反対側の面にピット部が形成される。記録層507は、該紫外線硬化型シートのピット部が形成された表面に成膜された反射膜(例えばAl)により構成される。
スペーサ層502に備えられた記録層501の表面には、ポリカーボネートからなる保護層500が、紫外線硬化樹脂からなる接着剤により接着される。該紫外線硬化樹脂の接着後の厚みは数μm程度である。
また、スペーサ層502に備えられた記録層503の表面には、スペーサ層504を構成する紫外線硬化型シートが貼り付けられ、該紫外線硬化型シートの記録層503に対向する面とは反対側の面にピット部が形成される。記録層505は、該紫外線硬化型シートのピット部が形成された表面に成膜された反射膜(例えばAl)により構成される。
記録層505の表面にはスペーサ層506を構成する紫外線硬化樹脂が塗布され、該紫外線硬化樹脂を接着剤として、記録層505と記録層507が接着される。
上記複合光記録媒体510において、記録層501、記録層503、記録層505、507、および、記録層509を構成する反射膜の厚みは20nmであり、保護層500、スペーサ層502、スペーサ層504、スペーサ層506、および、スペーサ層508と比較して、非常に薄い。従って、実質的に、記録層501に対する保護層の厚みは100μm、記録層503に対する保護層の厚みは570μm、記録層305に対する保護層の厚みは590μm、記録層507に対する保護層の厚みは610μm、記録層509に対する保護層の厚みは630μmとなっている。
また、複合光記録媒体511の全体の厚みは1200μmであり、その二分の一の厚み600μmが、光記録媒体の光の入射側表面から、第2の波長λ2に対応する2つの記録層505、記録層507の間の位置までの厚みと一致するようにした。
上記複合光記録媒体510に対して、第1の波長λ1に対しても、第2の波長λ2に対しても、600μmの厚みを持つ保護層を透過したとき球面収差が最小になるよう設計された対物レンズ109を用いれば、第1の波長に対応する記録層503、および、記録層509に対する保護層の厚み誤差を±30μm、第2の波長に対応する記録層505、および、記録層507に対する保護層の厚み誤差を±10μmに抑えることが可能であり、上記四つの記録層においての球面収差の発生量を十分低く抑えることができる。
特に、保護層の厚み誤差に対する球面収差の発生量の大きい、短い波長である第2の波長λ2に対応する記録層505および記録層507に対する保護層の厚み誤差を±10μmに抑えることにより、球面収差の発生量をさらに低減する効果を奏している。
また、上記複合光記録媒体510においては、記録層503、記録層505、記録層507、および、記録層509に関して、隣接する記録層間の距離を20μm確保している。これにより、フォーカス制御の問題、および、層間クロストークの問題を招来することなく、各記録層における球面収差の発生量を抑えることを可能にしている。
なお、記録層501に関しては、第2の波長λ2に対し100μmの厚みを持つ保護層を透過したとき集光スポットにおける球面収差が最小になるよう設計された対物レンズを、複合光記録媒体510を再生するための光ピックアップに別途備えることにより対応することが可能になる。
なお、具体例5においても、記録層を構成する反射膜としてAlを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、記録層を構成する反射膜としてはAuやAgを用いても同様の効果を得ることができる。
なお、本具体例では再生専用の複合光記録媒体の構成に関して述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく、追記型や書き換え型の複合光記録媒体も本発明の技術的範囲に含まれる。追記型や書き換え型の複合光記録媒体に備えられる記録層を構成する反射膜の材料としては、有機色素や無機材料などを使用することが可能である。また、いわゆる相変化材料として知られる材料を記録層として使用することもできる。
本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項で示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。