近年、情報化の進展によって、光記録媒体に対して高密度・大容量・高速アクセス等が求められている。大容量光記録媒体として、CD(Compact Disk)やMO(Magnet-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)等が普及しており、さらに大容量を実現可能な光気記録媒体として、青色レーザを用いたBlu−Ray Disk(以下、BDと省略する。)やHD−DVDが開発されている。
上記CDにおいては、記録層としてプレピットを用いた再生専用型のCD−ROM、記録層として色素膜を用いた一回のみ追記可能型のCD−R、および記録層として相変化膜を用いた書き換え型のCD−RWの3種類が存在する。DVDやBDについても、上記CDと同様に、再生専用型、追記可能型、および書き換え型の光ディスクが存在する。
ここで、上記CD、DVD、BDについて図面を用いて説明する。
図12は、CDに対して情報の記録再生を行う際の要部構成を説明する断面図である。CD(1層650MB)の場合、記録再生を行う半導体レーザ光125の波長が780nm、対物レンズ124の開口数NAが0.45であり、概ね1.2mmの厚みの透明基板121が用いられており、透明基板121の表面に形成された記録層122の透明基板121と反対側には保護層123が設けられている。レーザ光125は、透明基板121側から記録層122へと対物レンズ124により集光照射され、情報の記録再生が行われる。
次に、図13は、DVDに対して情報の記録再生を行う際の要部構成を説明する断面図である。DVD(1層4.7GB)の場合、記録再生を行う半導体レーザ光137の波長が650nm、対物レンズ136のNAが0.6、透明基板131の厚さが0.6mmであり、この厚さの基板2枚を貼あわせることによって、光記録媒体のトータル厚みはCDと同様の1.2mmとなっている。
図13に示す片面2層タイプのDVDでは、厚さ0.6mmの2枚の透明基板131および135それぞれが記録層132および記録層134を持ち、互いの記録層が向き合うように、中間層133を介して接着されており、一方の透明基板131側からレーザ光137が対物レンズ136により集光照射され、記録層132または記録層134の記録再生が行われる。
一般に、光と集光スポット径の関係は、レーザ光の波長λと対物レンズの開口数NAを用いて(集光スポット径)∝λ/NAで示される。従って、集光スポット径をより小さくするためには、波長λをより短く、開口数NAをより大きくすることが必要である。
一方、レーザ光が通過する透明基板の厚さをtとすると、透明基板の傾きが発生した際、(t/λ)×NA3に比例するコマ収差が発生することになる。波長λを短くし、開口数NAを大きくすると、コマ収差が大きくなり、透明基板の傾きに対して、真円状の集光スポットを維持することができなくなる。従って、コマ収差を抑制し、記録密度を大きくするためには、透明基板の厚さtを小さくする必要があることになる。
このような事情から、短波長化・高NA化により高密度化を実現したDVDの透明基板131の厚さは、CDの透明基板121(図12参照)の厚さの半分の厚さとなっている。
次に、図14は、BDに対して記録再生を行う際の要部構成を説明する断面図である。BDは、1.1mm厚のディスク基板144上に記録層143が設けられ、該記録層143を覆うように、0.1mm厚の透明カバー層141が透明接着剤142により貼り付けられた構成となっている。BDに対する情報の記録再生は、波長405nmのレーザ光146を、開口数NAが0.85の対物レンズ145により、透明カバー層141側から記録層143へと集光照射することにより行われる。
BDにおいても、短波長レーザ光・高NA対物レンズを使用することによるコマ収差の増大を、レーザ光が通過する透明カバー層141の厚さを0.1mmと薄くすることにより抑制し、記録密度の増大を実現している。
また、波長405nmのレーザ光をDVDに適用したHD−DVDと呼ばれる光ディスクの開発も進められており、このHD−DVDでは、DVDと同じく、開口数NAが0.6の対物レンズが使用され、0.6mm厚の透明基板が採用されている。
以上のように、CD,DVD,BD,HD−DVDと異なる形状を有する光記録媒体が存在している。これらの光ディスクにおいて、BDとCDとの互換性を確保することが可能な光記録媒体の構成が、非特許文献1“1.2mm−Thick Blu−ray/CD Dual Format discs”(Technical Digest of ISOM’04, p150,151)のFig.1に開示されている。
図15に、上記非特許文献1に記載されている光記録媒体の断面図を示す。該光記録媒体は、CDフォーマットに対応したCD記録層154が形成された1.1mm厚のCD基板155上に、0.03mm厚の中間層153を介して、BDフォーマットに対応したBD記録層152が設けられ、該BD記録層152上に、0.1mm厚のBDカバー層151が設けられた構成となっている。ここで、CD記録層154の記録再生は、波長780nmまたは650nmのレーザ光158を、開口数NAが0.45の対物レンズ159を用いて、CD基板155側から、CD記録層154へと集光照射することにより行われる。また、BD記録層152の記録再生は、波長405nmのレーザ光156を、開口数NAが0.85の対物レンズ157を用いて、BDカバー層151側から、BD記録層152へと集光照射することにより行われる。
通常、CD基板厚は1.2mmであるが、上記の文献においては、CD基板155の厚さを1.1mmとした場合においても、良好な再生特性が得られることを実証している。また、上記の構成によれば、光記録媒体のトータル厚さが、概ね1.2mmとなり、CDを記録再生可能な装置に対しても装着可能であり、かつ、BDを記録再生可能な装置に対しても装着可能な光記録媒体であることが提示されている。
また、上記非特許文献1には、図16に示す光記録媒体についても併せて記載されている。図16に示す光記録媒体は、1.1mm厚の透明基板163の両面に、CD記録層162とBD記録層164とが設けられ、CD記録層162上に保護層161が設けられ、BD記録層164上にBDカバー層165が設けられた構成となっている。ここで、CD記録層162の記録再生は、波長780nmまたは650nmのレーザ光168を、開口数NAが0.45の対物レンズ169を用いて、BDカバー層165側から、CD記録層162へと集光照射することにより行われる。また、BD記録層164の記録再生は、波長405nmのレーザ光166を、開口数NAが0.85の対物レンズ167を用いて、BDカバー層165側から、BD記録層164へと集光照射することにより行われる。
また、これらの光記録媒体の多くは、著作権保護の観点から光記録媒体が固有の識別情報を保有している場合がある。特許文献1においては、図17に示すように、バーコード状のBCA170が設けられている。該BCA170としては、光記録媒体製造後、光記録媒体ごとに異なる識別情報(ID)や、暗号鍵や復号鍵が、バーコード状に記録されたものであり、大強度のレーザ光等を集光照射して、記録膜自体を蒸発させて書き換え不可能なバーコードを形成する光透過タイプのBCAや、記録層自体もしくは記録層周辺の基板に、書き換え不可能な変質を生じさせ、該変質領域の反射光量変化を読み取る反射率制御タイプのBCAがある。
特開2000−173062号公報(2000年6月23日公開)
Shin Masuharaら著、「1.2mm−Thick Blu−ray/CD Dual Format discs」、Technical Digest of ISOM’04,p150,151(2004年9月11日公開)
しかしながら、図15および図16に示す従来技術による光記録媒体では、CDとBDとの両方のフォーマットを有する光記録媒体を提供することが可能であるが、BDとDVDとの両方のフォーマットを有する光記録媒体を提供することができない。
例えば、図15に示す従来技術に従って、BDとDVDとの両方のフォーマットを有する光記録媒体を形成すると、図18に示すように、DVDフォーマットからなるDVD記録層184が形成された0.6mm厚のDVD基板185上に、0.03mm厚の中間層183を介して、BDフォーマットからなるBD記録層182が設けられ、該BD記録層182上に、0.1mm厚のBDカバー層181が設けられた構成となる。この場合、光記録媒体のトータル厚さtが、概ね0.7mmとなる。DVDの記録再生装置もBDの記録再生装置も、厚さ1.2mmの光記録媒体を想定しているから、厚さが概ね0.7mmの上記光記録媒体は、どちらの記録再生装置にも装着できない光記録媒体となってしまう。
また、図16に示す構成の光記録媒体においても、BDとDVDとの両方のフォーマットを有する光記録媒体を形成しようとすると、同様に、光記録媒体のトータル厚さが、概ね0.6mmとなってしまい、BDの記録再生装置にも、DVDの記録再生装置にも装着できない光記録媒体となってしまうという問題がある。
次に、図15および図18に示す光記録媒体においては、0.03mm厚と極めて薄い中間層153,183を介して各記録層が隣接することになる。従って、各々の記録層にBCA170を保有させる場合、一方の記録層のBCA170を透過した光が、他方の記録層のBCA170により反射されることにより、一方の記録層のBCA情報が他方の記録層のBCA情報に混入することとなり、識別情報の読み取りエラーが発生する可能性があるという問題がある。
また、図16に示す光記録媒体においては、CD記録層162に集光照射されるレーザ光168がBD記録層164を透過するため、CD記録層162のBCA170と、BD記録層164のBCA170との半径位置等が接近すると、CD記録層162におけるBCA170を読み込む光が、BD記録層164におけるBCA170を通過することになる。その結果、各記録層の重畳したBCA情報を読み込むことにより、識別情報の読み取りエラーが発生する可能性があるという問題がある。
本発明は上述した従来の問題に鑑みてなされたものであり、複数の異なるフォーマットに対応した光記録再生装置に対して装着可能な互換性を有する光記録媒体を提供することを目的としている。また、本発明は、上述したBCA情報の読み取りエラーの発生が抑制された光記録媒体を提供することをも目的としている。
本発明の光記録媒体は、上記の課題を解決するための手段として、以下の構成を備えている。
本発明の光記録媒体は、第1透明基板または第1透明カバー層、第1記録面、第2基板、第2記録面、第3透明基板がこの順に積層された光記録媒体において、上記第1記録面および上記第2記録面は異なるフォーマットに対応しており、この順にそれぞれ、上記第1透明基板側および第3透明基板側から照射されたレーザ光により情報が記録および/または再生されることを特徴する光記録媒体。
上記の発明によれば、第1記録面への情報の記録再生を行う際と、第2記録面への情報の記録再生を行う際とのいずれも、他方の記録面を透過することなく、それぞれの記録面にレーザ光を照射することにより行うことができる。これにより、従来の光記録媒体と同様な安定した記録再生を実現することが可能となる。
また、第2基板の厚みを調整することで、光記録媒体全体の厚みを所定のものとすることができる。これにより、光記録媒体のトータル厚さを容易に調整することができるから、光記録媒体全体の厚みに関し、異なるフォーマットの互換性を確保することができる。
上記本発明の光記録媒体は、上記第1記録面がBDフォーマットに対応した記録面であり、上記第2記録面がHD−DVDフォーマットまたはDVDフォーマットに対応した記録面である構成としてもよい。
上記の発明によれば、BDフォーマットに対応した記録面と、HD−DVDフォーマットまたはDVDフォーマットに対応した記録面を有する光記録媒体において、それぞれの記録面に対して、他方の記録面を透過することなく、従来の光記録媒体と同様な安定した記録再生を実現することが可能となる。
上記本発明の光記録媒体は、光記録媒体の厚さが、BDフォーマットに対応した光記録媒体の厚さであることが好ましい。
上記の発明によれば、第2基板の厚さを調整することにより、BDフォーマットに対応した光記録媒体の厚さと等しくすることができる。このような上記第2基板の厚さの設定としては、例えば、光記録媒体のトータル厚さが1.2mmとなる構成が挙げられる。これにより、BDフォーマットのみに対応する記録再生装置に対しても、HD−DVDフォーマットのみに対応する記録再生装置に対してもチャッキング可能な光記録媒体を提供することが可能となる。
上記本発明の光記録媒体は、上記第1記録面および/または上記第2記録面が、複数の記録層により構成されているものであってもよい。また、この場合、上記第1記録面の記録容量と上記第2記録面の記録容量とを概ね等しくすることが好ましい。
上記の発明によれば、上記第1記録面と上記第2記録面との両方、もしくは、一方を、複数の記録層により構成された記録面とすることにより、光記録媒体の記録密度を増大させることが可能となる。また、第1記録面の記録容量と第2記録面の記録容量とを、等しくすることにより、それぞれのフォーマットに対して、同一条件で、同一容量の記録を行うことが可能となる。このため、例えば、同一プログラムを異なるフォーマットの記録面に記録する際に、同一の圧縮レートで信号処理を行い、記録することが可能となり、各々の記録面それぞれに対応した圧縮レートで信号処理を行い、記録することが可能となる。このため、各々の記録面それぞれに対応した圧縮レートで信号処理を行わなくても良いから、1つのメディアパッケージを製造する際の、信号処理にかかるコストを低減することが可能となる。
上記第1記録面の記録容量と上記第2記録面の記録容量とが概ね等しいものとなるようにするには、例えば、上記第1記録面がBDフォーマットに対応した1層の記録層により構成されており、上記第2記録面がHD−DVDフォーマットに対応した2層の記録層により構成されているものとすればよい。
上記の発明によれば、BDフォーマットに対応した1層の記録層からなる第1記録面の記録容量25GBと、HD−DVDフォーマットに対応した2層の記録層からなる第2記録面の記録容量30GBとが、概ね等しくなるから、それぞれのフォーマットに対して、同一条件で同一容量の記録を行うことが可能となる。
また、上記の構成以外に、上記第1記録面がBDフォーマットに対応した2層の記録層により構成されており、上記第2記録面がHD−DVDフォーマットに対応した4層の記録層により構成されたものとしても、上記第1記録面の記録容量と上記第2記録面の記録容量とを概ね等しくすることができる。
上記の発明によれば、BDフォーマットに対応した2層の記録層からなる第1記録面の記録容量と、HD−DVDフォーマットに対応した4層の記録層からなる第2記録面の記録容量とを、概ね等しくすることができるから、それぞれのフォーマットに対して、同一条件で、同一容量の記録を行うことが可能となる。
さらに、上記の構成以外に、上記第1記録面がBDフォーマットに対応した1層の記録層により構成されており、上記第2記録面がDVDフォーマットに対応した5層の記録層により構成されたものとしても、上記第1記録面の記録容量と上記第2記録面の記録容量約23.5GBとを概ね等しいものとすることができる。
上記の発明によれば、BDフォーマットに対応した1層の記録層からなる第1記録面の記録容量と、DVDフォーマットに対応した5層の記録層からなる第2記録面の記録容量とを、概ね等しくすることができるから、それぞれのフォーマットに対して、同一条件で、同一容量の記録を行うことが可能となる。
上記本発明の光記録媒体は、上記第1記録面の情報の記録再生を行うレーザ光の波長と、上記第2記録面の情報の記録再生を行うレーザ光の波長とが、ほぼ等しいものであってもよい。
上記本発明の光記録媒体の上記第1記録面および上記第2記録面は、この順にそれぞれ、上記第1透明基板側および第3透明基板側から照射されたレーザ光により情報が記録および/または再生されるものであるから、上記第1および第2記録面のうち、他方の記録面を透過することなく、一方の記録面にレーザ光を直接照射することにより、情報の記録再生を行うことができる。このため、例えば、BDとHD−DVDのように、ほぼ同一波長のレーザ光を用いて情報を記録再生する場合であっても、他方の記録面を介することなく、一方の記録面の情報を記録再生することができる。従って、両方の記録面に対する記録再生を、低出力の半導体レーザ光源を用いて、適切に行うことが可能となる。
例えば、DVD記録再生装置のピックアップ部品では、規格の違いや半導体レーザの製造バラつき等により、波長が620nm〜670nm程度の部品が存在しており、また、BDやHD−DVD記録再生装置では、波長405nmに対して前後10nm程度の分布が有る。よって、本発明において、波長が「ほぼ等しい」とは、上記第1記録面の情報の記録再生を行うレーザ光の波長と、上記第2記録面の情報の記録再生を行うレーザ光の波長との差が40nm程度以内であることをいう。
上記本発明の光記録媒体の上記第2基板は、例えば、金属シートやペーパーシートにより構成してもよい。金属シートからなる第2基板を用いることにより、光記録媒体の剛性を高くすることが可能となり、そり等の変形の発生が抑制された光記録媒体を提供できる。また、ペーパーシート(紙シート)からなる第2基板を用いることにより、光記録媒体の低コスト化が実現するとともに、環境に対する負荷の小さな光記録媒体を提供できる。なお、「金属シート」および「ペーパーシート」とは、その主成分が「金属」および「紙」からなるシートのことをいい、補強のために樹脂等の他の成分を含んだものや表面にコーティングされたものであっても良い。
上記本発明の光記録媒体は、上記第1記録面および/または上記第2記録面のレーザ光入射面側に、非線形光学膜が形成されているものであってもよい。
上記の発明によれば、記録面のレーザ光入射側に非線形光学膜が設けられるから、当該非線形光学膜により、記録容量の大きな光記録媒体を実現することができる。ここで、「非線形光学膜」とは、例えば、レーザ光の照射に伴う温度上昇に対して、屈折率や光透過率や光反射率等が、非線形的に変化するものをいう。これにより、レーザ光が集光照射されて形成される光ビームスポット内の一部分のみの情報を再生する超解像再生を実現すことができるから、記録容量の大きな光記録媒体とすることが可能となる。
上記非線形光学膜が形成されている光記録媒体は、上記第1記録面がBDフォーマットに対応した記録層であり、上記第2記録面がHD−DVDフォーマットに対応した記録層であり、かつ、上記第1記録面と第2記録面のうち、第2の記録面のレーザ光入射側にのみ非線形光学膜が形成されている構成としてもよい。
上記の発明によれば、BDフォーマットに対応した第1記録面が非線形光学膜を有さず、HD−DVDフォーマットに対応した光学系により再生可能な第2記録面のレーザ光入射側に非線形光学膜を有していないから、容易に、第1記録面の記録容量と第2記録面の記録容量とを等しくすることができる。これにより、第1記録面と第2記録面それぞれの記録面に対して、同一条件で、同一容量の記録を行うことが可能な光記録媒体とすることができる。
上記本発明の光記録媒体は、上記第1記録面および上記第2記録面のそれぞれがBCA(Burst Cutting Area)を有しており、該BCAに光記録媒体の識別情報を含んだバーコード状のマークが形成されているものであってもよい。
上記本発明の光記録媒体は、上述したように、第1記録面と第2記録面とが第2基板を介して設けられている。このため、それぞれの記録面に設けられたBCAに記録されたバーコード状のパターン情報を読み出す際に、一方の記録面のBCA情報が、他方の記録面のBCA情報に混入することが防がれた光記録媒体を実現できる。
上記第1記録面および上記第2記録面のそれぞれがBCAを有している光記録媒体は、上記第1記録面および上記第2記録面のそれぞれに形成されているBCAの少なくとも一部が、第1記録面および第2記録面の法線方向からみて重なった領域に形成されているものであってもよい。
上記本発明の光記録媒体は、上述のとおり第1記録面と第2記録面とが第2基板を介して設けられている。このため、第1記録面および第2記録面のBCAの少なくとも一部が、第1記録面および第2記録面の法線方向、すなわち上記第1記録面および上記第2記録面を構成する記録層の積層方向に重なった領域に形成されている場合においても、第1記録面のBCA情報と第2記録面のBCA情報とを、正確に読み出すことが可能である。
本発明の製造方法は、上記本発明の光記録媒体の製造方法であって、上記第2記録面が形成された上記第3透明基板上に、上記第1記録面が形成された上記第2基板を接着剤により貼り合わせ、該第1記録面上に、上記第1透明基板を透明接着剤により貼り合わせることを特徴としている。
上記の発明によれば、従来の光記録媒体と同程度の厚さを有する第3透明基板上および第2基板上に、第2記録面および第1記録面を形成することが可能である。このため、従来同様に、射出成形法やフォトポリマー法(2P法)を用いて、記録情報やトラッキングのための凹凸パターンを基板表面に形成することができ、光記録媒体の形成コストを低減することが可能となる。
本発明の製造方法は、上記本発明の光記録媒体の製造方法であって、上記第1記録面と上記第2記録面とが形成された上記第2基板の両面に、上記第1透明基板と上記第3透明基板とを、透明接着剤により貼り合わせることを特徴としている。
上記の発明によれば、第2基板の両表面に、一括して記録情報やトラッキングのための凹凸パターンを形成することが可能となり、形成プロセスが簡略化されるとともに、光記録媒体の低コスト化を実現することができる。
本発明の製造方法は、上記本発明の光記録媒体の製造方法であって、上記第1記録面が形成された上記第1透明基板、および上記第2記録面が形成された上記第3透明基板を、接着剤によって上記第2基板に貼り合わせることを特徴としている。
上記の発明によれば、それぞれの基板を貼り合わせる接着剤を記録再生のためのレーザ光が通過することが無いため、光を透過し難い接着剤を使用することが可能である。このため、例えば、安価な両面粘着テープ等の接着剤を用いることにより、光記録媒体の低コスト化が実現されるとともに、貼り合わせ工程を簡略化することができる。
本発明の光記録媒体は、以上のように、上記第1記録面および上記第2記録面は異なるフォーマットに対応しており、この順にそれぞれ、上記第1透明基板側および第3透明基板側から照射されたレーザ光により情報が記録および/または再生されるものである。これにより、第1記録面への情報の記録再生を行う際と、第2記録面への情報の記録再生を行う際、それぞれの記録面に対して、他方の記録面を透過することなく、従来の光記録媒体と同様な安定した記録再生を実現することが可能となる。また、第2基板により光記録媒体のトータル厚さを容易に調整することができるから、光記録媒体全体の厚みに関し、異なるフォーマットの互換性を確保することができる。
本発明の実施形態について図1ないし図11に基づいて説明すると以下の通りである。なお、以下に説明する各実施形態は、本発明の実施形態の一例に過ぎず、本発明の範囲は、以下の実施形態の範囲に限られるものではない。
〔本発明の第1の光記録媒体〕
本発明の一実施形態としての第1の光記録媒体の断面図を図1に示す。同図に示すように、本発明の第1の光記録媒体は、第1透明基板11、第1記録層13、第2基板14、第2記録層16、第3透明基板17が積層された構成である。透明接着剤層12は第1透明基板11と第2基板14とを貼り合わせる接着剤よりなり、透明接着剤層15は第2基板14と第3透明基板17とを貼り合わせるための接着剤よりなるものである。図1では、透明接着剤層12により第1透明基板11と第2基板14の第1記録層13形成面とを貼り合わせ、接着剤層15により第2基板14の第1記録層13の反対側の面と第3透明基板17の第2記録層16形成面とを貼り合わせた構成となっている。また、第1記録層13と第2記録層16とは、それぞれ、異なるフォーマットに従って形成された凹凸パターンを有しており、適宜、記録膜や反射膜が形成されている。
なお、上記第1透明基板11には、ポリカーボネートのような基板を使用することができる。また、該第1透明基板11は、100μ程度の膜厚のものであればよく、必ずしも基板である必要はない。本実施形態の光記録媒体は、第1透明基板11の代わりに、例えば、紫外線硬化樹脂等をスピンコートすることによって作製されたカバー層を備えたものであってもよい。
上記第1記録層13および第2記録層16(以下、適宜、これらをまとめて「記録層」という。)としては、再生専用型、追記可能型、書き換え型の3種類が存在する。これら3種類の記録層の構成について、図2〜図4を用いて以下に説明する。
図2は、記録層が再生専用型である場合の断面図を示している。同図に示すように、再生専用型の記録層は、プリピット23が設けられた透明基板21上に、Al等の反射膜22が形成された構成であり、対物レンズ24によりレーザ光25が反射膜22上に集光照射され、プリピット23の再生が行われる。
次に、図3は、記録層が追記可能型である場合の断面図を示している。同図に示すように、追記可能型の記録層は、案内溝34が設けられた透明基板31上に、TeOx等の相変化膜32と反射膜33とからなる記録層が形成された構成であり、対物レンズ35によりレーザ光36が記録層に集光照射され、情報の記録再生が行われる。
次に、図4は、書き換え可能型の場合の断面図を示している。同図に示すように、案内溝46が設けられた透明基板41上に、ZnS−SiO2等の透明誘電体膜42、GeSbTe等の相変化記録膜43、ZnS−SiO2等の透明誘電体膜44、Al等の反射膜45からなる記録膜が形成され、対物レンズ47によりレーザ光48が記録層に集光照射され、情報の記録再生が行われる。
上述したとおり、記録層としては、再生専用型、追記可能型、書き換え型の3種類が存在するが、以下では、これら3種のものを区別せずに説明する。
本発明の実施形態である第1の光記録媒体への記録再生は、次のようにして行われる。図1に示すように、第1透明基板11側から照射される第1レーザ光L11は、第1対物レンズCL11により第1記録層13へと集光され、第1記録層13への情報の記録および/または第1記録層13に記録されている情報の再生が行われる。また、第3透明基板17側から照射される第2レーザ光L12は、第2対物レンズCL12により第2記録層16へと集光され、第2記録層16の記録再生が行われる。
上記のような構成とすることにより、安定した記録再生を実現することができる。すなわち、第1記録層13からなる第1記録面への記録再生を行う際、第1レーザ光L11は、第1透明基板11と透明接着剤層12のみを透過することにより、第1記録層13への記録再生を実現することが可能となる。また、第2記録層16からなる第2記録面への記録再生を行う際、第2レーザ光L12は、第3透明基板17のみを透過することにより、第2記録層16への記録再生を実現することが可能となる。その結果、それぞれの記録層に対して、他方の記録層を透過することなく、従来の光記録媒体と同様な安定した記録再生を実現することが可能となる。
ここで、第2基板14は、本発明の光記録媒体の互換性を確保することができるように、その厚さを設定することが望ましい。例えば、第1記録層13が、BDフォーマットに対応する記録層である場合、第1レーザ光L11の波長が405nmであり、第1対物レンズCL11の開口数NAが0.85であり、第1透明基板11の厚さが概ね0.1mmとなる。また、第2記録層16が、HD−DVDフォーマットに対応する記録層である場合、第2レーザ光L12の波長が405nmであり、第2対物レンズCL12の開口数NAが0.60であり、第3透明基板17の厚さが概ね0.6mmとなる。
一般に、光記録媒体においては、チャッキング等の互換性を確保するため、光記録媒体のトータル厚さが揃えられている。例えば、CD,DVD,BDのトータル厚さは、いずれも同じ1.2mmとされている。
ここで、本実施の形態の第1の光記録媒体においては、第1透明基板11の厚さが0.1mmであり、第3透明基板16の厚さが0.6mmであるため、第2基板14の厚さを概ね0.5mmとして、光記録媒体のトータル厚さを1.2mmとすることが望ましい。ここでは、透明接着剤層12および15(以下、両者を区別ない場合、適宜「接着剤層」という。)の厚さを無視しているが、接着剤層の厚さが無視できない程度に厚くなる場合には、第2基板14の厚さを接着剤層の厚さ分だけ薄くすることが望ましい。
このように、本実施の形態の第1の光記録媒体は、第2基板14の厚さを調整して、光記録媒体のトータル厚さtを1.2mmとすることにより、BDフォーマットのみに対応する記録再生装置およびHD−DVDフォーマットのみに対応する記録再生装置のいずれに対しても、チャッキング可能な光記録媒体とすることが可能となる。
上述した本実施の形態においては、第1記録層13がBDフォーマットに対応し、第2記録層16がHD−DVDフォーマットに対応した光記録媒体について説明しているが、第1記録層13がBDフォーマットに対応し、第2記録層15がDVDフォーマットに対応した光記録媒体においても、同様に第2基板14の厚さを0.5mmとすることにより、BDフォーマットとDVDフォーマットとの両方に対して互換性を有する光記録媒体を提供することが可能である。
加えて、現在、2層記録再生に対応していないBD記録再生装置が市場に出ているため、例えば、上記第1記録面がBDフォーマットの2層記録層を有しており、上記第2記録面がBDフォーマットの1層記録層を有しているような構成とすることもできる。このような構成とすることで、例えば、HD画質の4時間の画像を2層記録面に記録し、同様のプログラムをSD画質で4時間記録させた構成の光記録媒体を提供することが可能となり、2層記録に未対応の機種でも同様のプログラムを視聴することが可能となる。
ここで、本実施形態の第1の光記録媒体の第2基板14について、さらに説明する。第2基板14は、紫外線硬化樹脂等をスピンコートすることによって作製されるような接着剤層ではなく、ポリカーボネートシートのような基板を示している。このことによって、光記録媒体のトータル厚さを1.2mmに調整することが容易になる。接着剤では100μm以上の厚みの層の平滑化が困難であり、既存の光記録媒体においても、接着剤層は100μm以下のものが使用されている。また、第1の光記録媒体においては、記録層の記録再生のためのレーザ光は、第1透明基板11または第3透明基板17を通過するものであるが、第2基板14を通過しないので、第2基板14として光透過可能な材質のものを使用する必要が無い。従って、適宜、第2基板14として様々な材質を選択することが可能である。
例えば、第2基板14として、剛性の高いステンレスシート等の金属シートを用いることにより、光記録媒体の機械的強度を高め、反り等の変形を防止し、高品質な光記録媒体を提供することが可能となる。また、第2基板14として、ペーパーシートを用いることにより、光記録媒体の低コスト化を実現することが可能である。
また、本実施形態の第1の光記録媒体は、第1記録層13からなる第1記録面と、第2記録層16からなる第2記録面とを同一の波長で再生する際に、それぞれの記録面を独立して記録再生することができる。これに対し、例えば、図16に示した従来技術は、2つの記録面(CD記録層162、BD記録層164)を、異なる波長のレーザ光(レーザ光169、レーザ光167)で、同一基板側から記録再生するものであるが、この場合、BD記録層164として、波長選択性を有する半透明反射膜を用いることにより、2つの記録面を独立して記録再生することを可能としている(非特許文献1のFig.2参照)。
しかし、2つの記録面を同一波長のレーザ光で記録再生する場合、図1の第2記録層16に、上記波長選択性を有する半透明反射膜を用いることができない。このため、第2記録層16を構成する反射膜の膜厚を薄くして、半透明反射膜とすることになる。この場合、第1記録層13からの反射光強度と、第2記録層16からの反射光強度とが、概ね等しくなるように、それぞれの記録層の反射率と透過率が設定される。しかしながら、上述したとおり、第2記録層16は反射膜の膜厚を薄くして半透明反射膜としたものであり、波長選択性が無い。このため、それぞれの記録層へ入射させるレーザ光強度を大きくすることが必要とされるから、大出力の半導体レーザ光源が必要となる。
これに対し、本発明の光記録媒体においては、他方の記録面を透過することなく、一方の記録面にレーザ光が直接照射される。このため、例えば、BDとHD−DVDのように、ほぼ同一波長のレーザ光を用いた記録再生を行う場合であっても、両方の記録面に対する記録再生を、低出力の半導体レーザ光源を用いて、適切に行うことが可能となる。
〔本発明の第1の記録媒体の製造方法〕
図1に示す本実施形態の第1の光記録媒体の製造方法(形成方法)について、以下に説明する。
第1の光記録媒体は、第2記録層16が形成された第3透明基板17上に、第1記録層13が形成された第2基板14を接着剤15により貼り合わせ、該第2基板の表面に形成された第1記録層13上に、第1透明基板11を透明接着剤12により貼り合わせることにより製造することができる。
例えば、第1記録層13をBDフォーマットに対応させ、第2記録層16をHD−DVDフォーマットに対応させた場合、第1透明基板11、第2基板14、および第3透明基板17の厚さが、それぞれ、概ね0.1mm、0.5mm、および0.6mmとなる。ここで、上記製造方法によれば、第1記録層13からなる第1記録面が、0.5mm厚の第2基板14上に設けられ、第2記録層16からなる第2記録面が、0.6mmの第3透明基板17上に設けられることになる。このように、記録層を設ける基板の厚さが、0.5mm〜0.6mmと比較的厚いものとなるから、従来同様に、射出成形法やフォトポリマー法(2P法)を用いて、記録情報やトラッキングのための凹凸パターンを基板表面に形成することができ、光記録媒体の形成コストを低減することが可能となる。
また、第1の光記録媒体の製造方法は、上述した製造方法に限られるものではなく、第2基板14の両面に、それぞれ、第1記録層13からなる第1記録面と第2記録層16からなる第2記録面とを形成した後、第1記録面側に第1透明基板11を、第2記録面側に第3透明基板17を、それぞれ透明接着剤により貼り合わせることにより、光記録媒体を形成することとしても良い。この場合、第2基板14の両表面に、一括して記録情報やトラッキングのための凹凸パターンを形成することが可能となるから、形成プロセスがさらに簡略化される。なお、この製造方法によれば、接着剤層15は、第2基板14と第2記録層16との間ではなく、第2記録層16と第3透明基板17との間に位置する構成となる点において、図1に示したものとは異なる光記録媒体が得られる。
また、凹凸パターンを有する第1透明基板11上に第1記録層13からなる第1記録面を形成し、凹凸パターンを有する第3透明基板17上に第2記録層16からなる第2記録面を形成した後、第1透明基板11と第3透明基板17とを、第2基板14へと、接着剤により貼り合わせることによっても、本発明の光記録媒体を形成することが可能である。この製造方法によれば、透明接着剤層12が第1透明基板11と第1記録層13との間ではなく、第1記録層13と第2基板14との間に位置する構成となる点において、図1に示したものとは異なる光記録媒体が得られる。
この場合、記録層の記録再生のために、レーザ光が上記接着剤層を通過することが無いため、光を透過し難い接着剤を使用することが可能である。例えば、接着剤層として安価な両面粘着テープ等を用いることにより、光記録媒体の低コスト化が実現されるとともに、貼り合わせ工程を簡略化することができる。
現在、光記録媒体の高密度化のため、光学系においては短波長化および高NA化がすすんでいるが、このために、ディスクのチルト角に対するマージンが確保しにくくなっている。これに対し、例えば、金属を含むような機械的強度の強い基板を第2基板として用いることで、光記録媒体のそり等を防止し、チルトによる記録エラーや読み取りエラーを低減させることができる。
〔本発明の第2の光記録媒体〕
本発明の他の一実施形態としての第2の光記録媒体の断面図を図5に示す。同図に示すように、本実施形態の第2の光記録媒体は、第1透明基板51、第1記録層53、第2基板54、第2記録層55、第3記録層57、第3透明基板58が積層された構成である。透明接着剤層52は第1透明基板51と第2基板54とを貼り合わせるための接着剤よりなり、透明接着剤層56は、第2基板54と第3透明基板58とを貼り合わせるための接着剤よりなるものである。なお、以下において、透明接着剤層52と透明接着剤層56とを区別しない場合、適宜「接着剤層」という。
また、第2記録層55と第3記録層57とが、同一フォーマットに従った凹凸パターンを有し、第1記録層53が、第2記録層55および第3記録層57と異なるフォーマットに従った凹凸パターンを有している。また、第1記録層53、第2記録層55および第3記録層57(以下、これらを区別しない場合には、適宜「記録層」という。)には、適宜、記録膜や反射膜が形成されている。
本実施形態の第2の光記録媒体への記録再生は、次のようにして行われる。第1記録層53からなる第1記録面に対する記録再生は、上述した第1の光記録媒体と同様に、第1透明基板51側から行われる。一方、第2記録層55と第3記録層56とからなる第2記録面に対する記録再生は、第3透明基板58側から行われる。ここで、第2記録層55への記録再生は、第3透明基板58側から照射される第2レーザ光L52を、第3記録層57を透過させることにより行われる。従って、本実施形態の第2の光記録媒体においては、第3記録層57が光透過可能な記録層であり、第2記録層55と第3記録層57からの第2レーザ光の反射光量がほぼ等しくなるように、その透過率が設定されることが望ましい。
ここで、第2基板54は、本実施形態の光記録媒体の互換性を確保することができるように、その厚さを設定することが望ましい。例えば、第1記録層53が、BDフォーマットに対応する記録層である場合、第1レーザ光L51の波長が405nmであり、第1対物レンズCL51の開口数NAが0.85であり、第1透明基板51の厚さが0.1mmとなる。また、第2記録層55と第3記録層57とが、HD−DVDフォーマットに対応する記録層である場合、第2レーザ光L52の波長が405nmであり、第2対物レンズCL52の開口数NAが0.60であり、第3透明基板58の厚さが0.6mmとなる。
一般に、光記録媒体においては、チャッキング等の互換性を確保するため、光記録媒体のトータル厚さが揃えられている。例えば、CD,DVD,BDのトータル厚さは、いずれも同じ1.2mmとされている。
ここで、本実施形態においては、第1透明基板51の厚さが0.1mmであり、第3透明基板58の厚さが0.6mmであるため、第2基板54の厚さを0.5mmとして、光記録媒体のトータル厚さを1.2mmとすることが望ましい。ここでは、接着剤層の厚さを無視しているが、接着剤層の厚さが無視できない程度に厚くなる場合には、第2基板54の厚さを、接着剤層の厚さ分だけ薄くすることが望ましい。
このように、本実施形態の光記録媒体は、第2基板54の厚さを調整して、光記録媒体のトータル厚さを1.2mmとすることにより、BDフォーマットのみに対応する記録再生装置に対しても、HD−DVDフォーマットのみに対応する記録再生装置に対してもチャッキング可能な光記録媒体とすることが可能である。
また、BDでは、開口数NAが0.85の対物レンズCL51を用い、HD−DVDでは、開口数NAが0.6の対物レンズCL52を用いているため、BDの記録密度がHD−DVDの記録密度の概ね2倍となる。従って、図1に示した第1の光記録媒体では、第1記録層13の記録容量が、第2記録層16の記録容量の約2倍となる。このため、同一条件での記録再生を行った場合、第2記録層16からなる第2記録面には、第1記録層13からなる第1記録面の半分の情報しか記録できないことになる。
これに対し、本実施形態の第2の光記録媒体においては、BDフォーマットに従う第1記録層53からなる第1記録面と、HD−DVDフォーマットに従う第2記録層55と第3記録層57とからなる第2記録面が形成されている。このため、第1記録面の記録容量と第2記録面の記録容量とがほぼ等しくなるから、それぞれのフォーマットに対して、同一条件で、同一容量の記録を行うことが可能となる。
また、本実施形態の第2の光記録媒体においても、上述した第1の光記録媒体同様に、第2基板54として、光透過可能な材質を使用する必要が無い。従って、第2基板54として様々な材質を適宜選択することが可能である。第2基板54として、例えば、ステンレスシートやペーパーシート等を使用することが可能である。
〔本発明の第2の記録媒体の製造方法〕
図5に示す本実施形態の第2の光記録媒体の製造方法(形成方法)について、以下に説明する。第2の光記録媒体は、第3記録層57が形成された第3透明基板58上に、両面に第1記録層53と第2記録層55とが形成された第2基板54を、第2記録層55が第3記録層57側となるように、透明接着剤56により貼り合わせ、第2基板54の該第1記録層53上に、第1透明基板51を透明接着剤52により貼り合わせることにより製造することができる。
例えば、第1記録層53をBDフォーマットに対応させ、第2記録層55と第3記録層57とをHD−DVDフォーマットに対応させた場合、第1透明基板51、第2基板54、および第3透明基板58の厚さが、それぞれ、概ね0.1mm、0.5mm、および0.6mmとなる。ここで、上記製造方法によれば、第1記録層53と第2記録層55とが0.5mm厚の第2基板54の両面に設けられ、第3記録層57が0.6mmの第3透明基板58上に設けられることになる。このように、記録層を設ける基板の厚さが、0.5mm〜0.6mmと比較的厚いものとなるから、従来同様に、射出成形法やフォトポリマー法(2P法)を用いて、記録情報やトラッキングのための凹凸パターンを基板表面に形成することができ、光記録媒体の形成コストを低減することが可能となる。
また、第2の光記録媒体の製造方法は、上述した製造方法に限られるものではなく、射出成形法もしくはフォトポリマー法により第3記録層57と第2記録層55とが形成された第3透明基板58上に、射出成形法もしくはフォトポリマー法により第1記録層53が形成された第2基板54を接着剤により貼り合わせ、該第1記録層53上に、第1透明基板51を透明接着剤52により貼り合わせて光記録媒体を形成することとしてもよい。この製造方法によれば、透明接着剤層56が第2記録層55と第3記録層57との間ではなく、第2記録層55と第2基板54との間に位置する構成となる点において、図5に示したものとは異なる光記録媒体が得られる。
この場合も、第1記録層53と、第2記録層55および第3記録層57とを、0.5mm〜0.6mmと比較的厚い第2基板54もしくは第3透明基板58上に形成することができる。このため、従来同様の方法を用いて記録情報やトラッキングのための凹凸パターンを基板表面に形成できるから、光記録媒体の形成コストを低減することが可能となる。
また、凹凸パターンを有する第1透明基板51上に第1記録層53を形成し、第3透明基板57上に第3記録層57と第2記録層55とを形成した後、第1透明基板51と第3透明基板58を第2基板54へと、接着剤により貼り合わせることによっても、本発明の光記録媒体を形成することが可能である。この製造方法によれば、透明接着剤層56が第2記録層55と第3記録層57との間ではなく、第2記録層55と第2基板54との間に位置しており、透明接着剤層52が第1透明基板51と第1記録層53との間ではなく第1記録層53と第2基板54との間に位置する構成となる点において、図5に示したものとは異なる光記録媒体が得られる。
この場合、記録層の記録再生のために、レーザ光が上記接着剤層を通過することが無いため、光を透過し難い接着剤を使用することが可能である。例えば、安価な両面粘着テープ等を用いることにより、光記録媒体の低コスト化が実現されるとともに、貼り合わせ工程を簡略化することができる。
上述した本実施形態においては、第1記録層53としてBDフォーマットに対応し、第2記録層55と第3記録層57としてHD−DVDフォーマットに対応した光記録媒体について説明しているが、第1記録層53としてBDフォーマットに対応し、第2記録層55と第3記録層58としてDVDフォーマットに対応した光記録媒体においても、第2基板54の厚さを0.5mmとすることにより、BDフォーマットとDVDフォーマットの両方に対して互換性を有する光記録媒体を提供することが可能である。
この場合、BDフォーマットの場合、直径120mmの光ディスクで、25GBの記憶容量を有しており、DVDフォーマットの場合、同一直径で、4.7GBの記憶容量となるため、それぞれのフォーマットに対して、同一の記憶容量を確保するためには、1層のBDフォーマットの記録層に対して、概ね5層のDVDフォーマットの記録層を設けることが望ましい。このように、複数の記録層を積層するためには、第2基板58上に、フォトポリマー法を用いて、記録層を順次積層することが望ましい。
また、図6に示すように、第1透明基板61または第2基板63が、BDフォーマットに対応した2層の記録層62からなる第1記録面を有する場合、第2基板63または第3透明基板65にHD−DVDフォーマットに対応した4層の記録層64からなる第2記録面を設けることにより、記録層62からなる第1記録面の記録容量と、記録層64からなる第2記録面との記録容量が等しくなる。なお、図6に示すように、2層の記録層62からなる第1記録面への情報の記録再生は、レーザ光L61を対物レンズCL61で第1記録面に集光することにより行い、4層の記録層64からなる第2記録面への記録再生は、レーザ光L62を対物レンズCL62で第1記録面に集光することにより行う。
以上のように、本実施形態の第2の光記録媒体においては、異なるフォーマットに対応した記録層を有する光記録媒体において、各フォーマットにより決定されるトータルの記憶容量が等しくなるように、各記録面を構成する記録層の積層数を決定することにより、それぞれのフォーマットに対して、同一条件で、同一容量の記録を行うことが可能となる。
〔本発明の第3の光記録媒体〕
本発明の他の実施形態としての第3の光記録媒体は、その記録層の光入射側に、非線形光学層が設けられている点を除いて、本発明の第1の光記録媒体と同じ構成である。図7、図8および図9に、本発明の第3の光記録媒体の記録層の断面図を示す。
図7は、第3の光記録媒体が再生専用型である場合の断面図を示している。同図に示すように、プリピット74が設けられた透明基板71上に、非線形光学膜72とAl等の反射膜73が形成されている。対物レンズ75によりレーザ光76が、非線形光学膜72および反射膜73上に集光照射されて、プリピット74の再生が行われる。
ここで、非線形光学膜72としては、レーザ光76の照射に伴う温度上昇により、屈折率や光透過率や光反射率が変化するZnO,CeOx,TiOx等の薄膜や、近接場効果により微小領域の反射光量が増大するスーパーレンズ効果を利用することのできるPtOx,AgOx等の薄膜を用いることができる。
これらの非線形光学膜を設けることにより、レーザ光76が集光照射されて形成される光ビームスポット内の一部分のみの情報を再生することが可能な超解像再生が実現し、通常の光記録媒体の2倍の記録容量を実現することが可能となる。また、上記実施例において、記録面に対してレーザ光入射側と反射膜との間に非線形光学膜が形成されていてもよい。
次に、図8は、第3の光記録媒体が追記可能型である場合の断面図を示している。同図に示すように、案内溝85が設けられた透明基板81上に、非線形光学膜82、TeOx等の相変化膜83、反射膜84とからなる記録層が形成されている、対物レンズ86によりレーザ光87が記録層に集光照射され、情報の記録再生が行われる。追記可能型の場合も再生専用型と同様に、非線形光学膜82を設けることにより、通常の光記録媒体の2倍の記録容量を実現することが可能となる
次に、図9は、書き換え可能型である第3の光記録媒体の場合の断面図を示している。同図に示すように、案内溝97が設けられた透明基板91上に、ZnS−SiO2等の透明誘電体膜92、非線形光学膜93、ZnS−SiO2等の透明誘電体膜94、GeSbTe等の相変化記録膜95、ZnS−SiO2等の透明誘電体膜96からなる記録膜が形成され、対物レンズ98によりレーザ光99が記録層に集光照射され、情報の記録再生が行われる。書き換え可能型の場合も再生専用型と同様に、非線形光学膜93を設けることにより、通常の光記録媒体の2倍の記録容量を実現することが可能となる
上記のような非線形光学膜を有する記録層を、図1に示す本発明の第1の光記録媒体の第1記録層13と第2記録層16の両方に用いることにより、本発明の第1の光記録媒体の2倍の記録容量を有する光記録媒体である本実施形態の第3の光記録媒体を提供することができる。
また、図1において、第1記録層13からなる第1記録面をBDフォーマットに対応した405nmの波長のレーザ光L11と0.85の開口数NAの対物レンズCL11を使用する記録面とし、第2記録面16からなる第2記録面をHD−DVDフォーマットに対応した405nmの波長のレーザ光L12と0.6の開口数NAの対物レンズCL12とを使用する記録面とした場合、非線形光学膜を用いない場合、第1記録面と第2記録面を記録再生する対物レンズの開口数NAの違いにより、第1記録面の記録容量が第2記録面の記録容量の2倍になり、第1記録面と第2記録面に対して、同一条件で、同一容量の記録を行うことができなくなる。
ここで、図1において、BDフォーマットに対応した第1記録面に非線形光学膜を有さない記録層を形成し、HD−DVDフォーマットに対応した光学系により再生可能な第2記録面に非線形光学膜を有する記録層を形成することにより、非線形光学膜の超解像再生により、第2記録面の記録容量のみが2倍となり、第1記録面と第2記録面の記録容量を等しくすることができる。
すなわち、上記の構成によれば、異なるフォーマットに対応した記録層を有する光記録媒体において、各フォーマットにより決定されるトータルの記憶容量が等しくなるように、各記録面を構成する記録層の一方に非線形光学膜を設けることができる。これにより、本発明の第3の光記録媒体は、それぞれのフォーマットに対して、同一条件で、同一容量の記録を行うことが可能となる。
〔本発明の第4の光記録媒体〕
本発明の第4の光記録媒体は、図10に示すように、上述した本発明の実施形態である第1から第3の光記録媒体において、その第1記録面101と第2記録面102の両方に、BCA103が設けられた構成のものである。
図15に示す構成の従来の光記録媒体に対して、第1記録面101に相当するBD記録層152と第2記録面102に相当するCD記録層154との両面に、図10に示したように幅50μmのストライプパターン列からなる光透過タイプのBCA103を形成した場合、中間層153の厚さが10μm〜30μmと薄いため、第2記録面154のBCA103のストライプパターンを透過したレーザ光は、BD記録層152により反射される。ここで、BD記録層152のBCA103が、第2記録面154と同じ半径位置に形成されている場合、BD記録層152からの反射光は、CD記録層154のBCA103のパターンの有無により変調されることになる。その結果、BD記録層152のBCA103の情報に、CD記録層154のBCA103の情報が混入し、BCA情報の読み取りエラーが発生することになる。
これに対して、本発明の実施形態である第1から第3の光記録媒体はいずれも、第1記録面101と第2記録面102との間に、0.5mm程度の厚さの第2基板(第2基板14、第2基板54、第2基板63)が設けられており、第1記録面101と第2記録面102との間隔が広くなっている。従って、第1記録面101のBCA103を透過したレーザ光が、第2記録面102において反射されても、反射光が拡散されるため、第1記録面101のBCA情報に、第2記録面102のBCA情報が混入するといった問題が発生せず、各記録面のBCA情報を安定して再生することができる。
また、第2基板として、レーザ光を透過しない材料、例えば、不透明樹脂基板、ステンレスシート、ペーパーシート等を用いることにより、第1記録面101のBCA情報と、第2記録面102のBCA情報との干渉が完全に無くなるから、各記録面のBCA情報を安定して再生することができる。
また、図16に示す構成の従来の光記録媒体においては、第1記録面101に相当するCD記録層162の再生を行うレーザ光168が、第2記録面102に相当するBD記録層164を透過して集光照射されるため、BD記録層164に形成されたBCA情報が、CD記録層162のBCA情報にノイズとして混入し、BCA情報の読み取りエラーが発生することになるという問題がある。
図11は、図10のBCA103付近を拡大して表示した断面図であり、第1記録面101のBCA103と、第2記録面102のBCA103との、光記録媒体の各記録面の中心からの距離(半径位置)の関係を示している。図11に示す例では、第1記録面101に形成されたBCA103の内周側および外周側の半径位置をそれぞれa1およびb1、第2記録面102に形成されたBCA103の内周側および外周側の半径位置をそれぞれa2およびb2で示している。ここで、第1記録面101と第2記録面102との距離をd、レーザ光104を集光する対物レンズの開口数をNA1、基板の屈折率をn1とすると、図11に示すように、レーザ光104の光軸とレーザ光104の外縁とのなす角の角度θは、θ=sin−1(NA1/n1)で表される。
このとき、互いのBCAの半径位置が、以下の式(1)および(2)の関係を満たすとき、第1記録面101上のBCA103を再生するレーザ光が、第2記録面102上のBCA103を経由することになり、重畳した信号を再生し、BCA情報の読み取りエラーが発生する可能性がある。
b1>a1−d×tan(sin−1(NA1/n1))……(1)
b2<a2+d×tan(sin−1(NA1/n1))……(2)
しかしながら、本実施形態の第4の光記録媒体においては、各記録面(第1記録面101および第2記録面102)の情報を再生するレーザ光が、他方の記録面を通過しない構成、すなわち一方の記録面の情報を再生する場合に、レーザ光が他方の記録面を通過せず、当該情報を再生する記録面のみに照射される構成となっており、各記録面のBCAが上記の式(1)、(2)の関係を満たす位置関係にあっても、それぞれのBCA情報を独立して再生することが可能である。
以上のように、本実施形態の光記録媒体においては、第1記録面101と第2記録面102のBCA103の情報を、それぞれ独立して再生することが可能である。従って、第1記録面101および第2記録面102のBCA103の少なくとも一部が、記録層の積層方向に重なった領域に形成されている場合においても、第1記録面101のBCA103の情報と第2記録面102のBCA103の情報とを、正確に読み出すことが可能である。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。