JP3870800B2 - 光学記録媒体の初期化装置および初期化方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学記録媒体(以下光ディスクとも言う)の初期化方法に関し、特に相変化材料を記録材料とする光学記録層を有する多層光ディスクの初期化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報記録の分野においては、光学情報記録方式に関する研究が各所で進められている。この光学情報記録方式は、非接触で記録・再生が行えること、再生専用型、追記型、書換可能型のそれぞれのメモリ形態に対応できるなどの数々の利点を有し、安価な大容量ファイルの実現を可能とする方式として産業用から民生用まで幅広い用途が考えられている。
【0003】
上記の各種光学情報記録方式用の光学記録媒体(以下、光ディスクともいう)の大容量化は、主に、光学情報記録方式に用いる光源となるレーザ光の短波長化と、高開口のレンズを採用することにより、焦点面でのスポットサイズを小さくすることで達成してきた。
【0004】
例えば、CD(コンパクトディスク)では、レーザ光波長が780nm、レンズの開口率(NA)が0.45であり、650MBの容量であったが、DVD−ROM(デジタル多用途ディスク−再生専用メモリ)では、レーザ光波長が650nm、NAが0.6であり、4.7GBの容量となっている。
さらに、次世代の光ディスクシステムにおいては、光学記録層上に例えば100μm程度の薄い光透過性の保護膜(カバー層)が形成された光ディスクを用いて、レーザ光波長を450nm以下、NAを0.78以上とすることで大容量化が検討されている。
【0005】
ところで、近年、相変化型記録材料を用い、かつ、2層の光学記録層を有する書換型の多層光ディスクの開発が進められている。以降は、このように複数の光学記録層を有する光ディスクを多層光ディスクと、1層の光学記録層を有する光ディスクを単層光ディスクと、それぞれ呼ぶことがある。
本発明者らは、相変化型多層光ディスクの開発を進めてきており、1999年のOptical Data Strage(ODS)学会や、2001年のODS学会で発表を行っている。
【0006】
相変化型光ディスクは、単層光ディスクと多層光ディスクとに関わらず、市場に出荷する前に初期化と呼ばれる工程を必要とする。
相変化型光ディスクの製造工程においては、一般にスパッタリング装置によって相変化型記録材料をポリカーボネート等の基板上に成膜するが、成膜を終えた段階では相変化型記録材料の相状態はas−depositedと呼ばれる非晶質に近い状態になっている。
相変化型光ディスクでは情報記録を行うときには、相変化記録相の状態が結晶状態であることが要求され、この成膜直後の非晶質状態を結晶状態に変化させる工程のことを初期化工程と呼ぶ。
【0007】
現在広く用いられている初期化装置は、初期化を行う光学記録層上にレーザ光を集光して、相変化記録材料を過熱しながら光学記録層全面を走査することで、光学記録層全面の結晶化を行っている。
このとき光学記録層上に集光されるレーザ光のビーム形状は、例えばディスク回転方向には1μm程度、半径方向には100μm程度のビーム幅を有する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような初期化装置を用いて、光入射側から第1層目に設けられた相変化型の光学記録層を有する多層光ディスクの上記光学記録層を初期化する場合には、特開2001−250265号公報に記載されているように、第1光学記録層と第2光学記録層の間の中間層の厚みムラによって発生する光干渉により、初期化光の光強度変調が第1記録層上で発生し、初期化ムラを引き起こすことが知られている。
【0009】
本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであり、従って本発明の目的は、各記録層の情報記録再生信号特性を劣化することなく、初期化する際に生じる光干渉による初期化ムラを低減することができる光学記録媒体の初期化装置と初期化方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の光学記録媒体の初期化装置は、基板上に、光照射側から少なくとも第1光学記録層および第2光学記録層が中間層を介して積層され、少なくとも上記第1光学記録層が相変化記録材料を有する光学記録媒体の初期化装置であって、初期化レーザ光光源と、上記初期化レーザ光光源からの初期化レーザ光を光学記録媒体の光学記録層に集光する対物レンズを含む光学系とを有し、上記対物レンズに入射する初期化レーザ光が、2つの領域に区分された入射瞳の一方の領域と他方の領域とで位相が半波長ずれている。
【0011】
上記の本発明の光学記録媒体の初期化装置は、好適には、上記一方の領域と他方の領域は上記対物レンズの中心軸を通って入射瞳を二分する境界線によって区分されており、上記境界線を上記光学記録層上に投影した時の当該境界線の延伸方向が上記光学記録媒体の半径方向と一致する。
【0012】
上記の本発明の光学記録媒体の初期化装置は、好適には、上記光学系が上記一方の領域に入射する初期化レーザ光と上記他方の領域に入射する初期化レーザ光との位相を半波長ずらす位相差発生素子を含む。
さらに好適には、上記位相差発生素子が屈折率の異なる複数の光学材料を有し、上記2つの領域での光学距離の差が上記初期化レーザ光の半波長の奇数倍となるように構成されている。
あるいはさらに好適には、上記位相差発生素子が上記2つの領域で結晶軸が異なる方向を向くように配置された複屈折材料を有し、当該2つの領域での光学距離の差が上記初期化レーザ光の半波長の奇数倍となるように構成されている。
【0013】
初期化光の第1光学記録層と第2光学記録層の間の光干渉による光学記録層上での光強度変調は、第1光学記録層上に入射した入射光が第1光学記録層を透過し、中間層を透過して第2光学記録層を照射し、第2光学記録層で反射し再び第1光学記録層上に戻り、第1光学録層上で入射光と戻り光干渉することによって引き起こされる。よって第2光学記録層からの戻り光の強度分布が入射光と重なる領域において、戻り光の強度が充分小さければ上述した問題は解決できる。
【0014】
上記の本発明の光学記録媒体の初期化装置においては、対物レンズに入射する初期化レーザ光が、2つの領域に区分された入射瞳の一方の領域と他方の領域とで位相が半波長ずれている構成とする。さらに、位相の異なる領域の境界線の延伸方向が、第1光学記録層上に集光した半径方向に長軸を有する収束光の長軸方向に対応するように配置する。
これによって、第2光学記録層から第1光学記録層への戻り光の強度分布は、第1光学記録層上に集光した光の集光領域を避けるようなプロファイルとなり、問題としている第1光学記録層と第2光学記録層の間の光干渉による初期化光の第1光学記録層上での強度変調が回避でき、良質な初期化が可能になる。
【0015】
また、上記の目的を達成するため、本発明の光学記録媒体の初期化方法は、基板上に、光照射側から少なくとも第1光学記録層および第2光学記録層が中間層を介して積層され、少なくとも上記第1光学記録層が相変化記録材料を有する光学記録媒体の初期化方法であって、対物レンズを含む光学系により初期化レーザ光を光学記録媒体の光学記録層に照射して当該光学記録層の初期化を行うときに、上記初期化レーザ光の位相を、2つの領域に区分された入射瞳の一方の領域と他方の領域とで半波長ずらして上記対物レンズに入射させる。
【0016】
上記の本発明の光学記録媒体の初期化方法は、好適には、上記一方の領域と他方の領域は上記対物レンズの中心軸を通って入射瞳を二分する境界線によって区分されており、上記境界線を上記光学記録層上に投影した時の当該境界線の延伸方向が上記光学記録媒体の半径方向と一致する。
【0017】
上記の本発明の光学記録媒体の初期化方法は、好適には、上記光学系が上記一方の領域に入射する初期化レーザ光と上記他方の領域に入射する初期化レーザ光との位相を半波長ずらす位相差発生素子を含む。
さらに好適には、上記位相差発生素子が屈折率の異なる複数の光学材料を有し、上記2つの領域での光学距離の差が上記初期化レーザ光の半波長の奇数倍となるように構成されている。
あるいはさらに好適には、上記位相差発生素子が上記2つの領域で結晶軸が異なる方向を向くように配置された複屈折材料を有し、当該2つの領域での光学距離の差が上記初期化レーザ光の半波長の奇数倍となるように構成されている。
【0018】
上記の本発明の光学記録媒体の初期化方法は、対物レンズを含む光学系により初期化レーザ光を光学記録媒体の光学記録層に照射して当該光学記録層の初期化を行うときに、上記初期化レーザ光の位相を、2つの領域に区分された入射瞳の一方の領域と他方の領域とで半波長ずらして上記対物レンズに入射させる。
これによって、第2光学記録層から第1光学記録層への戻り光の強度分布は、第1光学記録層上に集光した光の集光領域を避けるようなプロファイルとなり、問題としている第1光学記録層と第2光学記録層の間の光干渉による初期化光の第1光学記録層上での強度変調が回避でき、良質な初期化が可能になる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳しく説明する。
本実施の形態は、光学記録媒体(光ディスク)の初期化装置とそれを用いた初期化方法に関する。
【0020】
図1(a)は、本実施形態に係る2層の光学記録層を設けた光ディスクの光の照射の様子を示す模式斜視図である。
光ディスクDCは、中心部にセンタホールCHが開口された略円盤形状をしており、内周部がクランプ領域CAとされ、その外側に情報記録再生領域RAが設けられて、ドライブ方向DRに回転駆動される。
情報を記録または再生するときには、光ディスクDC中の光学記録層に対して、例えば開口数が0.8以上の対物レンズOLにより、400nmより長波長である青〜赤外色の領域のレーザ光である記録再生光LTR が照射される。
【0021】
図1(b)は図1(a)中のA−A’における模式断面図である。
ディスク基板11上に、光照射側から第1光学記録層16および第2光学記録層12が中間層17を介して積層されて構成であり、少なくとも第1光学記録層16は相変化型記録材料を含む構成である。
【0022】
例えば、厚さが1.1mm、外周径が120mm、センタホールCHの内周径が15mmであるポリカーボネートなどからなるディスク基板11の一方の表面に第2光学記録層12が形成されている。
第2光学記録層12は、上層側から例えば誘電体膜、相変化膜などの記録膜、誘電体膜および反射膜などがこの順番で積層された構成であり、層構成や層数は、記録材料の種類や設計によって異なる。
第2光学記録層12の上層に、例えば20μm程度の膜厚であり、記録再生光の波長に対して透明な中間層17が形成されており、その上層に第1光学記録層16が形成されている。
第1光学記録層16は、上層側から例えば誘電体膜、相変化膜からなる記録膜、誘電体膜および半透過性の反射膜などがこの順番で積層された構成である。
第1光学記録層16の上層に、紫外線硬化樹脂からなる転写層14によりシート状基板13が貼り合わされている。転写層14とシート状基板13を合わせて例えば90μmの膜厚の光透過性の保護膜18を構成する。
【0023】
ディスク基板11の一方の表面に凹凸形状11’が設けられており、この凹凸形状に沿って第2光学記録層12が形成されている。
また、転写層14の表面にも凹凸形状14’が設けられており、この凹凸形状に沿って第1光学記録層16が形成されている。
【0024】
上記の光ディスクを記録あるいは再生する場合には、図1(b)に示すように、対物レンズOLによりレーザ光などの記録再生光LTR を光透過性の保護膜18側から第1光学記録層16あるいは第2光学記録層12に合焦するように照射する。対物レンズOLの光ディスクからの距離を調整して第1光学記録層16と第2光学記録層12のいずれかに焦点を合わせるかにより、第1光学記録層16と第2光学記録層12のいずれかを選択的に記録または再生する。
上記の構成で、第1光学記録層16は半透過性であり、記録再生光LTR を第2光学記録層12に照射する場合には第1光学記録層16を透過させて行う。
光ディスクの再生時においては、第1および第2光学記録層(16、12)のいずれかで反射された戻り光が受光素子で受光され、信号処理回路により所定の信号を生成して、再生信号が取り出される。
【0025】
上記のような光ディスクにおいて、第1光学記録層16および第2光学記録層12は、転写層14の表面に形成された凹凸形状14’あるいはディスク基板11の表面に形成された凹凸形状11’に起因した凹凸形状を有している。例えば、この凹凸形状によりトラック領域が区分されている。
上記の凹凸形状により区分されたトラック領域はランドおよびグルーブと呼ばれ、ランドとグルーブの両者に情報を記録するランド・グルーブ記録方式を適用することで大容量化が可能である。また、ランドとグルーブのいずれか一方のみを記録領域とすることも可能である。
【0026】
第2光学記録層12については、例えばディスク基板11の凹凸形状11’に起因する凹凸形状を記録データに対応する長さを有するピットとし、光学記録層をアルミニウム膜などの反射膜で構成することにより、再生専用の記録層とすることもできる。
【0027】
上記の第1光学記録層16は、製造工程において、成膜を終えた段階ではas−depositedと呼ばれる非晶質に近い状態になっており、使用可能な状態とするために初期化光を照射して結晶化する必要がある。
図2(a)は、上記の第1光学記録層16の初期化に用いる光ディスクプレーヤタイプの初期化装置の模式図である。
【0028】
第1光学記録層および第2光学記録層の多層の光学記録層を有する光ディスクDCは、スピンドルモータSMにより回転駆動され、この回転する光ディスクDCの光学記録層に対して光ディスクの半径方向DRrad に可動である光学ヘッドHDにより初期化光LTI を照射するようになっている。
【0029】
光学ヘッドHDは、初期化光光源であるレーザダイオードLD、ビームスプリッタBS、反射ミラーMR、位相差発生素子PH、対物レンズOLを備えており、レーザダイオードLDからの初期化光LTI を光ディスクDC中の光学記録層に集光して照射する。
また、光ディスクDCからの戻り光をビームスプリッタBSおよび集光レンズLSを介してフォトディテクタPDに導き、これをモニタすることができる。
レーザダイオードLDの発光波長は、特に限定はないが例えば810nmであり、また対物レンズOLとしては、開口数は0.60のものを用いることができる。
【0030】
図2(b)は、上記の位相差発生素子PHの構成を示す平面図である。
位相差発生素子PHは、図面上右半面の領域Pと左半面の領域Qとに境界線Rによって区分されている。初期化レーザ光LTI は、方向DRLT(紙面上垂直な方向)に入射するものとする。対物レンズ入射瞳に入射する初期化光LTI は、位相差発生素子PHを通過することによって領域Pと領域Qとで位相が半波長分ずらされている。
また例えば、位相差発生素子PHは、初期化しようとする光ディスクDCの光学記録層上に境界線Rを投影した時の当該境界線Rの延伸方向が光ディスクDCの半径方向と一致するように配置される。
【0031】
この初期化装置によって光ディスクDCの第1光学記録層16上に集光される初期化光LTI の大きさは、例えば、光ディスクの半径方向に長さL=50μm程度である。半径方向のビーム長さLはレーザ光源の横モードの度合いと、レーザ出射後に配置されたコリメータレンズの焦点距離と、対物レンズの焦点距離によって決まる。
例えば、レーザ波長を810nm、中間層材料のレーザ波長に対する屈折率を1.5、対物レンズの開口数NAを0.6、中間層厚を20μmとすると、トラック方向に幅d=1μm程度のビームが2本並んだような強度分布となる。
【0032】
また、第2光学記録層から第1光学記録層への戻り光の強度分布は、位相差発生素子PHを用いて入射瞳に入射する初期化光LTI の領域Pと領域Qとでの位相を半波長分ずらすことにより、第1光学記録層上に集光した光の集光領域を避けるようなプロファイルとなる。
【0033】
ここで、上記の初期化装置から位相差発生素子を除いた場合には、第1光学記録層上の収束光の光強度分布は、上述のように2本並んだ分布とはならず、1本の半径方向に長いビームになる。
【0034】
上述の初期化装置による多層の光学記録層を有する光ディスクの初期化方法について説明する。
スピンドルモータにより駆動される回転テーブルなどにより、光ディスクを適切な回転数で回転させ、初期化光であるレーザ収束光をその焦点位置が初期化したい記録層面位置にくるようにフォーカスサーボと呼ばれる技術を用いて焦点を結ばせる。
レーザ収束光は光ディスク1回転あたり半径方向に一定の距離、例えば5μm移動する。
この動作により光ディスクの情報記録再生領域RA全面を初期化する。
【0035】
本実施形態に係る初期化装置を用いて初期化すると、上記のように第2光学記録層から第1光学記録層への戻り光の強度分布を、第1光学記録層上に集光した光の集光領域を避けるようなプロファイルとすることができ、この結果、従来において問題となる第1光学記録層と第2光学記録層の間の光干渉による初期化光の第1光学記録層上での強度変調が回避でき、第1光学記録層の良質な初期化が可能になる。
【0036】
ここで、位相差発生素子PHの配置位置は図2(a)に示すように対物レンズOLと反射ミラーMRの間の位置に限定するものではなく、同様の効果が得られる位置であれば良い。
また対物レンズOLと位相差発生素子PHの間に4分の1波長板が配置されていても良い。
【0037】
第1光学記録層16と同様に、第2光学記録層12も相変化型の記録膜を含む構成とする場合には、第2光学記録層12についても同様の初期化を行う必要があり、上記の図2(a)の初期化装置を用いて初期化を行うことができる。
【0038】
ここで、図2(a)の初期化装置において、位相差発生素子PHがある場合と無い場合について、第1光学記録層上に初期化レーザ光を集光したときの各ビームの中心位置におけるトラック方向の断面の光強度の分布をシミュレーションした結果を図3および図4に示す。シミュレーションは、図1に示す光ディスクの構成において行っている。
【0039】
図3は、図2(a)の初期化装置を用いた場合のシミュレーションの結果を示す図である。
図3中、実線aは対物レンズにより第1光学記録層上に直接集光された初期化レーザ光(以下直接光とも言う)の強度分布を示し、急峻な2つのピークを有する分布となっている。
一方、破線bは対物レンズにより集光された初期化レーザ光が第1光学記録層および中間層17を透過し、第2光学記録層12で反射し、再び中間層17を透過して第1光学記録層16に戻ってくる戻り光(以下単に戻り光とも言う)の強度分布を示し、横軸方向に広がった分布となっている。ここで、第1光学記録層16での透過率が100%、第2光学記録層12での反射率が100%、中間層17での吸収率が0%と想定している。
【0040】
上記の戻り光(破線b)は、対物レンズの光軸を通って半径方向に伸びる軸上においてエネルギー密度が極小となる。この極小となる領域のトラック方向の幅は10μm以上あり、直接光(実線a)のピークとは重なっていないことを示している。
【0041】
図4は、図2(a)の初期化装置において位相差発生素子PHを取り除いた場合のシミュレーションの結果を示す図である。
図4中、実線aは直接光の強度分布を示し、急峻な1つのピークを有する分布となっている。
一方、破線bは戻り光の強度分布を示し、横軸方向に広がった分布となっている。ここで、第1光学記録層16での透過率が100%、第2光学記録層12での反射率が100%、中間層17での吸収率が0%と想定している。
上記の戻り光(破線b)は、対物レンズの光軸を通り半径方向に伸びる軸上においてエネルギー密度が極小とはならず、戻り光(破線b)は直接光と干渉して強度変調を引き起こすのに充分なエネルギー密度を有していることを示している。
【0042】
図4において、直接光のピーク位置でのエネルギー密度を1とした時のピーク位置での戻り光のエネルギー密度は0.052程度であるが、一方で、図3においては、直接光のピーク位置でのエネルギー密度を1とした時のピーク位置での戻り光のエネルギー密度は0.017程度となっている。
このように、初期化装置において位相差発生素子を用いた場合には、位相差発生素子を取り除いた場合と比べて、直接光のピーク位置での戻り光のエネルギー密度が3分の1程度に押さえられており、上記位相差発生素子を導入することにより多層光ディスクの第1光学記録層を初期化するときに問題になる、各光学記録層の間の光干渉による初期化ムラを改善することができる。
【0043】
尚、図3のシミュレーションの結果において、光ディスクに例えば0.6°程度のトラック方向のスキューが発生したとすると、中間層厚を20μmとすると、戻り光の位置は直接光の位置に対して相対的にトラック方向に0.2μm程度シフトするが、この変位量は問題にはならない量となっている。
【0044】
次に、上記の2層の光学記録層を有する光ディスクの製造方法の一例について説明する。
ここでは、第1光学記録層16だけでなく第2光学記録層12も相変化型の記録膜を含む構成として説明する。
【0045】
まず、従来より知られている所定の方法によって、第2光学記録層用のパターンである凹凸形状10’を表面に有する第2光学記録層用スタンパ10を作成する。
次に、上記の第2光学記録層用スタンパ10を金型のキャビティ内側を臨むように設置し、例えば溶融状態のポリカーボネートを射出する射出成形により、図5(a)に示すように、ポリカーボネートからなるディスク基板11を作成する。このとき、金型の形状を設定することで、ディスク基板11にセンタホールCHの形状を形成する。
ここで、ディスク基板11の表面には、第2光学記録層用スタンパ10の凹凸形状10’に対応して、凹凸形状11’が形成される。
【0046】
上記の第2光学記録層用スタンパ10から離型することで、図5(b)に示すような表面に凹凸形状11’が形成されたディスク基板11が得られる。
【0047】
次に、図6(a)に示すように、ディスク基板11の表面に空気や窒素ガスなどのガスを吹き付けてダストを除去した後、例えばスパッタリング法あるいはCVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより、アルミニウム膜からなる全反射性の反射膜、誘電体膜、相変化型の記録膜、誘電体膜を順次積層させ、第2光学記録層12を形成する。
【0048】
次に、図6(b)に示すように、図2(a)の初期化装置を用いて、あるいは図2(a)の初期化装置から位相差発生素子PHを取り外した構成の初期化装置を用いて、初期化光LTI を対物レンズOLで集光して第2光学記録層12に照射しながら第2光学記録層12の全面に掃引し、第2光学記録層12を初期化する。
【0049】
一方、図7(a)に示すように、例えば80μmの厚みの中心にセンタホールCHを有する略円形のシート状基板13上に、転写層となる適量の紫外線硬化樹脂14aを供給して、スピン塗布する。
次に、予め第1光学記録層用のパターンである凹凸形状15’を表面に有する第1光学記録層用スタンパ15を形成しておき、図7(b)に示すように、紫外線硬化樹脂14aに第1光学記録層用スタンパ15を貼り合わせ、充分な量の紫外線を照射して紫外線硬化樹脂14aを固化させ、転写層14とする。
ここで、転写層14の表面には、第1光学記録層用スタンパ15の凹凸形状15’に対応して、凹凸形状14’が形成される。
【0050】
次に、図8(a)に示すように、第1光学記録層用スタンパ15と転写層14の界面で剥離することで、転写層14の表面に凹凸形状14’を転写する。
【0051】
次に、図8(b)に示すように、転写層14の表面に空気や窒素ガスなどのガスを吹き付けてダストを除去した後、例えばスパッタリング法あるいはCVD法などにより、アルミニウム膜からなる半透過性の反射膜、誘電体膜、相変化型の記録膜、誘電体膜を順次積層させ、第1光学記録層16を形成する。
【0052】
次に、図9(a)に示すように、ディスク基板11に形成された第2光学記録層12上に、感圧性粘着シート17aを配置し、図9(b)に示すように、感圧性粘着シート17aを貼り合わせ用の中間層17として、第2光学記録層12と第1光学記録層16とを向かい合わせ、芯合わせをして貼り合わせる。
【0053】
次に、図10に示すように、図2(a)の初期化装置を用いて、初期化光LTI を対物レンズOLで集光して第1光学記録層16に照射しながら第1光学記録層16の全面に掃引し、第1光学記録層16を初期化する。
以上で、図1に示す構成の光ディスクを製造することができる。
【0054】
尚、上記の製造方法は1実施形態であり、例えば、第2光学記録層12の上層に、表面に第1光学記録層用の凹凸パターンを有する中間層17を形成し、その上層に第1光学記録層16を形成し、その上層に光透過性の保護膜18を形成する方法など、他の方法により製造することも可能である。但し、いずれの場合も、第1光学記録層16の初期化は上述のように中間層17を介して第2光学記録層12と積層した後に行うものとする。
【0055】
(実施例1)
図11(a)は、上記の初期化装置において用いる位相差発生素子PHの具体的な構成例の平面図であり、図11(b)は図11(a)中のX−X’における断面図である。
屈折率の異なる2つの材料を段差状の境界面で接合した構成であり、光学材料20の屈折率がNa であり、光学材料21の屈折率がNb であり、説明上、光学材料20側から光が入射するものとする。
図11(a)に示す半平面領域PとQにおいて、方向DRLTに入射した光は、光学材料20,21を通り、光学材料21から素子外へ透過した時点で、半平面領域Pから透過した光と半平面領域Qから透過した光の間で、2π|Na −Nb|d/λで示される位相差を持つことになる。ここで、dは図11(a)に示す段差形状の高さ、λは初期化光の波長である。
この値が下記の式(1)を満たす場合、即ち、半平面領域P,Qでの光学距離の差が初期化レーザ光の半波長の奇数倍となる構成の場合、対物レンズに入射する初期化レーザ光が半平面領域PとQのうちの一方の領域と他方の領域とで位相が半波長ずれている構成を実現することができる。
ここで、光学材料20,21のいずれか一方が無い構成としてもよい。この場合ない方の材料の屈折率の値に、空気や真空など、存在するほうの材料を取り囲む雰囲気の屈折率を用いる。
【0056】
【数1】
|Na −Nb |d/λ=1/2+n (nは0以上の整数) ・・・(1)
【0057】
例えば、光学材料20,21として石英ガラス(屈折率1.452)と空気(屈折率1.000)、初期化レーザ光波長830nmとするとき、式(1)中のnの値を0とすると、段差dを0.918μmとして上記構成の位相差発生素子を実現できる。
【0058】
また、例えば、光学材料20,21として石英ガラス(屈折率1.452)とBK7(屈折率1.510)、初期化レーザ光波長830nmとするとき、式(1)中のnの値を0とすると、段差dを7.155μmとして上記構成の位相差発生素子を実現できる。
【0059】
(実施例2)
位相差発生素子に入射する光が直線偏光である場合には、図12に示す位相差発生素子を用いることができる。
図12(a)は、上記の初期化装置において用いる位相差発生素子PHの具体的な他の構成例の平面図であり、図12(b)は図12(a)中のX−X’における断面図である。
複屈折材料には水晶のような一軸性結晶が存在し、3つの結晶軸が互いに直交し、かつa,b軸方向で光に対する屈折率が等しく、c軸ではa,b軸とは異なる屈折率を持つものが存在する。これらは波長板と呼ばれる光学素子として広く用いられている。
このような複屈折材料を1枚用いて、図12(a)および(b)に示すように、半平面領域Pにおいてc軸AXc が一の方向に向くように複屈折材料22を配置し、半平面領域Qにおいてはc軸AXc が半平面領域Pと直行する方向を向くように複屈折材料22を配置してこれらを接合することにより、半平面領域PとQの間で透過光の位相差を発生させることができる。
【0060】
例えば、波長833nmにおけるα型水晶の複屈折率の値は、No =1.53770(常光)、Ne =1.54661(異常光、ここではc軸に用いる)である。
ここで、図12に示す構成の位相差発生素子PH中の半平面領域P,Qのそれぞれにおいて、Ne の方向をc軸に用い、No の方向を図12の面内でNe に直行する方向に用いる。
またこの位相差発生素子に入射する直線偏光のレーザー光の偏光方向を半平面領域Pのc軸に平行または垂直となるように入射する。
このとき、この位相差発生素子の厚みが、下記の式(2)を満たす場合、即ち、半平面領域P,Qでの光学距離の差が初期化レーザ光の半波長の奇数倍となる構成の場合、対物レンズに入射する初期化レーザ光が半平面領域PとQのうちの一方の領域と他方の領域とで位相が半波長ずれている構成を実現することができる。式(2)中、dは位相差発生素子の厚さ、λは初期化光の波長である。
【0061】
【数2】
|No −Ne |d/λ=1/2+n (nは0以上の整数) ・・・(2)
【0062】
例えば、複屈折材料として上記のα型水晶を用い、初期化レーザ光波長833nmとするとき、式(2)中のnの値を10とすると、位相差発生素子の厚さdを0.9816μmとして上記構成の位相差発生素子を実現できる。
【0063】
本発明は上記の実施形態に限定されない。
例えば、初期化対象とするディスク構造は、図1に示す構造に限られるものではなく、例えば図1の構造において第1光学記録層16上に形成された光透過性の保護膜18が無い状態で初期化を行ってもよい。
また、3層以上の光学記録層を有する光学記録媒体の初期化に適用することも可能である。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
【0064】
【発明の効果】
本発明により、相変化型の光学記録層を有する光学記録媒体を初期化するときに、各記録層の情報記録再生信号特性を劣化することなく、初期化する際に生ずる光干渉による初期化ムラを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は本発明の実施形態に係る光ディスクの光の照射の様子を示す模式斜視図であり、図1(b)は模式断面図である。
【図2】図2(a)は本実施形態に係る初期化装置の模式図であり、図2(b)は位相差発生素子の構成を示す平面図である。
【図3】図3は位相差発生素子がある場合場合について第1光学記録層上に初期化レーザ光を集光したときのビームの中心位置におけるトラック方向の断面の光強度の分布をシミュレーションした結果である。
【図4】図4は位相差発生素子が無い場合場合について第1光学記録層上に初期化レーザ光を集光したときのビームの中心位置におけるトラック方向の断面の光強度の分布をシミュレーションした結果である。
【図5】図5(a)および(b)は実施形態に係る光ディスクの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図6】図6(a)および(b)は図5の続きの工程を示す断面図である。
【図7】図7(a)および(b)は図6の続きの工程を示す断面図である。
【図8】図8(a)および(b)は図7の続きの工程を示す断面図である。
【図9】図9(a)および(b)は図8の続きの工程を示す断面図である。
【図10】図10は図9の続きの工程を示す断面図である。
【図11】図11(a)は実施例1に係る位相差発生素子の平面図であり、図11(b)は図11(a)中のX−X’における断面図である。
【図12】図12(a)は実施例2に係る位相差発生素子の平面図であり、図12(b)は図12(a)中のX−X’における断面図である。
【符号の説明】
10…第2光学記録層用スタンパ、11…ディスク基板、12…第2光学記録層、13…シート状基板、14…転写層、14a…紫外線硬化樹脂、15…第1光学記録層用スタンパ、16…第1光学記録層、17…中間層、17a…感圧性粘着シート、18…保護膜、20,21…光学材料、22…複屈折材料、10’,11’,14’,15’…凹凸形状、BS…ビームスプリッタ、CA…クランプ領域、CH…センタホール、DC…光ディスク、DR…ドライブ方向、DRLT…初期化光の入射方向、DRrad …半径方向、HD…光学ヘッド、LD…レーザダイオード、LS…集光レンズ、LTI …初期化光、LTR …記録再生光、MR…反射ミラー、OL…対物レンズ、PD…フォトディテクタ、PH…位相差発生素子、RA…情報記録再生領域、SM…スピンドルモータ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学記録媒体(以下光ディスクとも言う)の初期化方法に関し、特に相変化材料を記録材料とする光学記録層を有する多層光ディスクの初期化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報記録の分野においては、光学情報記録方式に関する研究が各所で進められている。この光学情報記録方式は、非接触で記録・再生が行えること、再生専用型、追記型、書換可能型のそれぞれのメモリ形態に対応できるなどの数々の利点を有し、安価な大容量ファイルの実現を可能とする方式として産業用から民生用まで幅広い用途が考えられている。
【0003】
上記の各種光学情報記録方式用の光学記録媒体(以下、光ディスクともいう)の大容量化は、主に、光学情報記録方式に用いる光源となるレーザ光の短波長化と、高開口のレンズを採用することにより、焦点面でのスポットサイズを小さくすることで達成してきた。
【0004】
例えば、CD(コンパクトディスク)では、レーザ光波長が780nm、レンズの開口率(NA)が0.45であり、650MBの容量であったが、DVD−ROM(デジタル多用途ディスク−再生専用メモリ)では、レーザ光波長が650nm、NAが0.6であり、4.7GBの容量となっている。
さらに、次世代の光ディスクシステムにおいては、光学記録層上に例えば100μm程度の薄い光透過性の保護膜(カバー層)が形成された光ディスクを用いて、レーザ光波長を450nm以下、NAを0.78以上とすることで大容量化が検討されている。
【0005】
ところで、近年、相変化型記録材料を用い、かつ、2層の光学記録層を有する書換型の多層光ディスクの開発が進められている。以降は、このように複数の光学記録層を有する光ディスクを多層光ディスクと、1層の光学記録層を有する光ディスクを単層光ディスクと、それぞれ呼ぶことがある。
本発明者らは、相変化型多層光ディスクの開発を進めてきており、1999年のOptical Data Strage(ODS)学会や、2001年のODS学会で発表を行っている。
【0006】
相変化型光ディスクは、単層光ディスクと多層光ディスクとに関わらず、市場に出荷する前に初期化と呼ばれる工程を必要とする。
相変化型光ディスクの製造工程においては、一般にスパッタリング装置によって相変化型記録材料をポリカーボネート等の基板上に成膜するが、成膜を終えた段階では相変化型記録材料の相状態はas−depositedと呼ばれる非晶質に近い状態になっている。
相変化型光ディスクでは情報記録を行うときには、相変化記録相の状態が結晶状態であることが要求され、この成膜直後の非晶質状態を結晶状態に変化させる工程のことを初期化工程と呼ぶ。
【0007】
現在広く用いられている初期化装置は、初期化を行う光学記録層上にレーザ光を集光して、相変化記録材料を過熱しながら光学記録層全面を走査することで、光学記録層全面の結晶化を行っている。
このとき光学記録層上に集光されるレーザ光のビーム形状は、例えばディスク回転方向には1μm程度、半径方向には100μm程度のビーム幅を有する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような初期化装置を用いて、光入射側から第1層目に設けられた相変化型の光学記録層を有する多層光ディスクの上記光学記録層を初期化する場合には、特開2001−250265号公報に記載されているように、第1光学記録層と第2光学記録層の間の中間層の厚みムラによって発生する光干渉により、初期化光の光強度変調が第1記録層上で発生し、初期化ムラを引き起こすことが知られている。
【0009】
本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであり、従って本発明の目的は、各記録層の情報記録再生信号特性を劣化することなく、初期化する際に生じる光干渉による初期化ムラを低減することができる光学記録媒体の初期化装置と初期化方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の光学記録媒体の初期化装置は、基板上に、光照射側から少なくとも第1光学記録層および第2光学記録層が中間層を介して積層され、少なくとも上記第1光学記録層が相変化記録材料を有する光学記録媒体の初期化装置であって、初期化レーザ光光源と、上記初期化レーザ光光源からの初期化レーザ光を光学記録媒体の光学記録層に集光する対物レンズを含む光学系とを有し、上記対物レンズに入射する初期化レーザ光が、2つの領域に区分された入射瞳の一方の領域と他方の領域とで位相が半波長ずれている。
【0011】
上記の本発明の光学記録媒体の初期化装置は、好適には、上記一方の領域と他方の領域は上記対物レンズの中心軸を通って入射瞳を二分する境界線によって区分されており、上記境界線を上記光学記録層上に投影した時の当該境界線の延伸方向が上記光学記録媒体の半径方向と一致する。
【0012】
上記の本発明の光学記録媒体の初期化装置は、好適には、上記光学系が上記一方の領域に入射する初期化レーザ光と上記他方の領域に入射する初期化レーザ光との位相を半波長ずらす位相差発生素子を含む。
さらに好適には、上記位相差発生素子が屈折率の異なる複数の光学材料を有し、上記2つの領域での光学距離の差が上記初期化レーザ光の半波長の奇数倍となるように構成されている。
あるいはさらに好適には、上記位相差発生素子が上記2つの領域で結晶軸が異なる方向を向くように配置された複屈折材料を有し、当該2つの領域での光学距離の差が上記初期化レーザ光の半波長の奇数倍となるように構成されている。
【0013】
初期化光の第1光学記録層と第2光学記録層の間の光干渉による光学記録層上での光強度変調は、第1光学記録層上に入射した入射光が第1光学記録層を透過し、中間層を透過して第2光学記録層を照射し、第2光学記録層で反射し再び第1光学記録層上に戻り、第1光学録層上で入射光と戻り光干渉することによって引き起こされる。よって第2光学記録層からの戻り光の強度分布が入射光と重なる領域において、戻り光の強度が充分小さければ上述した問題は解決できる。
【0014】
上記の本発明の光学記録媒体の初期化装置においては、対物レンズに入射する初期化レーザ光が、2つの領域に区分された入射瞳の一方の領域と他方の領域とで位相が半波長ずれている構成とする。さらに、位相の異なる領域の境界線の延伸方向が、第1光学記録層上に集光した半径方向に長軸を有する収束光の長軸方向に対応するように配置する。
これによって、第2光学記録層から第1光学記録層への戻り光の強度分布は、第1光学記録層上に集光した光の集光領域を避けるようなプロファイルとなり、問題としている第1光学記録層と第2光学記録層の間の光干渉による初期化光の第1光学記録層上での強度変調が回避でき、良質な初期化が可能になる。
【0015】
また、上記の目的を達成するため、本発明の光学記録媒体の初期化方法は、基板上に、光照射側から少なくとも第1光学記録層および第2光学記録層が中間層を介して積層され、少なくとも上記第1光学記録層が相変化記録材料を有する光学記録媒体の初期化方法であって、対物レンズを含む光学系により初期化レーザ光を光学記録媒体の光学記録層に照射して当該光学記録層の初期化を行うときに、上記初期化レーザ光の位相を、2つの領域に区分された入射瞳の一方の領域と他方の領域とで半波長ずらして上記対物レンズに入射させる。
【0016】
上記の本発明の光学記録媒体の初期化方法は、好適には、上記一方の領域と他方の領域は上記対物レンズの中心軸を通って入射瞳を二分する境界線によって区分されており、上記境界線を上記光学記録層上に投影した時の当該境界線の延伸方向が上記光学記録媒体の半径方向と一致する。
【0017】
上記の本発明の光学記録媒体の初期化方法は、好適には、上記光学系が上記一方の領域に入射する初期化レーザ光と上記他方の領域に入射する初期化レーザ光との位相を半波長ずらす位相差発生素子を含む。
さらに好適には、上記位相差発生素子が屈折率の異なる複数の光学材料を有し、上記2つの領域での光学距離の差が上記初期化レーザ光の半波長の奇数倍となるように構成されている。
あるいはさらに好適には、上記位相差発生素子が上記2つの領域で結晶軸が異なる方向を向くように配置された複屈折材料を有し、当該2つの領域での光学距離の差が上記初期化レーザ光の半波長の奇数倍となるように構成されている。
【0018】
上記の本発明の光学記録媒体の初期化方法は、対物レンズを含む光学系により初期化レーザ光を光学記録媒体の光学記録層に照射して当該光学記録層の初期化を行うときに、上記初期化レーザ光の位相を、2つの領域に区分された入射瞳の一方の領域と他方の領域とで半波長ずらして上記対物レンズに入射させる。
これによって、第2光学記録層から第1光学記録層への戻り光の強度分布は、第1光学記録層上に集光した光の集光領域を避けるようなプロファイルとなり、問題としている第1光学記録層と第2光学記録層の間の光干渉による初期化光の第1光学記録層上での強度変調が回避でき、良質な初期化が可能になる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳しく説明する。
本実施の形態は、光学記録媒体(光ディスク)の初期化装置とそれを用いた初期化方法に関する。
【0020】
図1(a)は、本実施形態に係る2層の光学記録層を設けた光ディスクの光の照射の様子を示す模式斜視図である。
光ディスクDCは、中心部にセンタホールCHが開口された略円盤形状をしており、内周部がクランプ領域CAとされ、その外側に情報記録再生領域RAが設けられて、ドライブ方向DRに回転駆動される。
情報を記録または再生するときには、光ディスクDC中の光学記録層に対して、例えば開口数が0.8以上の対物レンズOLにより、400nmより長波長である青〜赤外色の領域のレーザ光である記録再生光LTR が照射される。
【0021】
図1(b)は図1(a)中のA−A’における模式断面図である。
ディスク基板11上に、光照射側から第1光学記録層16および第2光学記録層12が中間層17を介して積層されて構成であり、少なくとも第1光学記録層16は相変化型記録材料を含む構成である。
【0022】
例えば、厚さが1.1mm、外周径が120mm、センタホールCHの内周径が15mmであるポリカーボネートなどからなるディスク基板11の一方の表面に第2光学記録層12が形成されている。
第2光学記録層12は、上層側から例えば誘電体膜、相変化膜などの記録膜、誘電体膜および反射膜などがこの順番で積層された構成であり、層構成や層数は、記録材料の種類や設計によって異なる。
第2光学記録層12の上層に、例えば20μm程度の膜厚であり、記録再生光の波長に対して透明な中間層17が形成されており、その上層に第1光学記録層16が形成されている。
第1光学記録層16は、上層側から例えば誘電体膜、相変化膜からなる記録膜、誘電体膜および半透過性の反射膜などがこの順番で積層された構成である。
第1光学記録層16の上層に、紫外線硬化樹脂からなる転写層14によりシート状基板13が貼り合わされている。転写層14とシート状基板13を合わせて例えば90μmの膜厚の光透過性の保護膜18を構成する。
【0023】
ディスク基板11の一方の表面に凹凸形状11’が設けられており、この凹凸形状に沿って第2光学記録層12が形成されている。
また、転写層14の表面にも凹凸形状14’が設けられており、この凹凸形状に沿って第1光学記録層16が形成されている。
【0024】
上記の光ディスクを記録あるいは再生する場合には、図1(b)に示すように、対物レンズOLによりレーザ光などの記録再生光LTR を光透過性の保護膜18側から第1光学記録層16あるいは第2光学記録層12に合焦するように照射する。対物レンズOLの光ディスクからの距離を調整して第1光学記録層16と第2光学記録層12のいずれかに焦点を合わせるかにより、第1光学記録層16と第2光学記録層12のいずれかを選択的に記録または再生する。
上記の構成で、第1光学記録層16は半透過性であり、記録再生光LTR を第2光学記録層12に照射する場合には第1光学記録層16を透過させて行う。
光ディスクの再生時においては、第1および第2光学記録層(16、12)のいずれかで反射された戻り光が受光素子で受光され、信号処理回路により所定の信号を生成して、再生信号が取り出される。
【0025】
上記のような光ディスクにおいて、第1光学記録層16および第2光学記録層12は、転写層14の表面に形成された凹凸形状14’あるいはディスク基板11の表面に形成された凹凸形状11’に起因した凹凸形状を有している。例えば、この凹凸形状によりトラック領域が区分されている。
上記の凹凸形状により区分されたトラック領域はランドおよびグルーブと呼ばれ、ランドとグルーブの両者に情報を記録するランド・グルーブ記録方式を適用することで大容量化が可能である。また、ランドとグルーブのいずれか一方のみを記録領域とすることも可能である。
【0026】
第2光学記録層12については、例えばディスク基板11の凹凸形状11’に起因する凹凸形状を記録データに対応する長さを有するピットとし、光学記録層をアルミニウム膜などの反射膜で構成することにより、再生専用の記録層とすることもできる。
【0027】
上記の第1光学記録層16は、製造工程において、成膜を終えた段階ではas−depositedと呼ばれる非晶質に近い状態になっており、使用可能な状態とするために初期化光を照射して結晶化する必要がある。
図2(a)は、上記の第1光学記録層16の初期化に用いる光ディスクプレーヤタイプの初期化装置の模式図である。
【0028】
第1光学記録層および第2光学記録層の多層の光学記録層を有する光ディスクDCは、スピンドルモータSMにより回転駆動され、この回転する光ディスクDCの光学記録層に対して光ディスクの半径方向DRrad に可動である光学ヘッドHDにより初期化光LTI を照射するようになっている。
【0029】
光学ヘッドHDは、初期化光光源であるレーザダイオードLD、ビームスプリッタBS、反射ミラーMR、位相差発生素子PH、対物レンズOLを備えており、レーザダイオードLDからの初期化光LTI を光ディスクDC中の光学記録層に集光して照射する。
また、光ディスクDCからの戻り光をビームスプリッタBSおよび集光レンズLSを介してフォトディテクタPDに導き、これをモニタすることができる。
レーザダイオードLDの発光波長は、特に限定はないが例えば810nmであり、また対物レンズOLとしては、開口数は0.60のものを用いることができる。
【0030】
図2(b)は、上記の位相差発生素子PHの構成を示す平面図である。
位相差発生素子PHは、図面上右半面の領域Pと左半面の領域Qとに境界線Rによって区分されている。初期化レーザ光LTI は、方向DRLT(紙面上垂直な方向)に入射するものとする。対物レンズ入射瞳に入射する初期化光LTI は、位相差発生素子PHを通過することによって領域Pと領域Qとで位相が半波長分ずらされている。
また例えば、位相差発生素子PHは、初期化しようとする光ディスクDCの光学記録層上に境界線Rを投影した時の当該境界線Rの延伸方向が光ディスクDCの半径方向と一致するように配置される。
【0031】
この初期化装置によって光ディスクDCの第1光学記録層16上に集光される初期化光LTI の大きさは、例えば、光ディスクの半径方向に長さL=50μm程度である。半径方向のビーム長さLはレーザ光源の横モードの度合いと、レーザ出射後に配置されたコリメータレンズの焦点距離と、対物レンズの焦点距離によって決まる。
例えば、レーザ波長を810nm、中間層材料のレーザ波長に対する屈折率を1.5、対物レンズの開口数NAを0.6、中間層厚を20μmとすると、トラック方向に幅d=1μm程度のビームが2本並んだような強度分布となる。
【0032】
また、第2光学記録層から第1光学記録層への戻り光の強度分布は、位相差発生素子PHを用いて入射瞳に入射する初期化光LTI の領域Pと領域Qとでの位相を半波長分ずらすことにより、第1光学記録層上に集光した光の集光領域を避けるようなプロファイルとなる。
【0033】
ここで、上記の初期化装置から位相差発生素子を除いた場合には、第1光学記録層上の収束光の光強度分布は、上述のように2本並んだ分布とはならず、1本の半径方向に長いビームになる。
【0034】
上述の初期化装置による多層の光学記録層を有する光ディスクの初期化方法について説明する。
スピンドルモータにより駆動される回転テーブルなどにより、光ディスクを適切な回転数で回転させ、初期化光であるレーザ収束光をその焦点位置が初期化したい記録層面位置にくるようにフォーカスサーボと呼ばれる技術を用いて焦点を結ばせる。
レーザ収束光は光ディスク1回転あたり半径方向に一定の距離、例えば5μm移動する。
この動作により光ディスクの情報記録再生領域RA全面を初期化する。
【0035】
本実施形態に係る初期化装置を用いて初期化すると、上記のように第2光学記録層から第1光学記録層への戻り光の強度分布を、第1光学記録層上に集光した光の集光領域を避けるようなプロファイルとすることができ、この結果、従来において問題となる第1光学記録層と第2光学記録層の間の光干渉による初期化光の第1光学記録層上での強度変調が回避でき、第1光学記録層の良質な初期化が可能になる。
【0036】
ここで、位相差発生素子PHの配置位置は図2(a)に示すように対物レンズOLと反射ミラーMRの間の位置に限定するものではなく、同様の効果が得られる位置であれば良い。
また対物レンズOLと位相差発生素子PHの間に4分の1波長板が配置されていても良い。
【0037】
第1光学記録層16と同様に、第2光学記録層12も相変化型の記録膜を含む構成とする場合には、第2光学記録層12についても同様の初期化を行う必要があり、上記の図2(a)の初期化装置を用いて初期化を行うことができる。
【0038】
ここで、図2(a)の初期化装置において、位相差発生素子PHがある場合と無い場合について、第1光学記録層上に初期化レーザ光を集光したときの各ビームの中心位置におけるトラック方向の断面の光強度の分布をシミュレーションした結果を図3および図4に示す。シミュレーションは、図1に示す光ディスクの構成において行っている。
【0039】
図3は、図2(a)の初期化装置を用いた場合のシミュレーションの結果を示す図である。
図3中、実線aは対物レンズにより第1光学記録層上に直接集光された初期化レーザ光(以下直接光とも言う)の強度分布を示し、急峻な2つのピークを有する分布となっている。
一方、破線bは対物レンズにより集光された初期化レーザ光が第1光学記録層および中間層17を透過し、第2光学記録層12で反射し、再び中間層17を透過して第1光学記録層16に戻ってくる戻り光(以下単に戻り光とも言う)の強度分布を示し、横軸方向に広がった分布となっている。ここで、第1光学記録層16での透過率が100%、第2光学記録層12での反射率が100%、中間層17での吸収率が0%と想定している。
【0040】
上記の戻り光(破線b)は、対物レンズの光軸を通って半径方向に伸びる軸上においてエネルギー密度が極小となる。この極小となる領域のトラック方向の幅は10μm以上あり、直接光(実線a)のピークとは重なっていないことを示している。
【0041】
図4は、図2(a)の初期化装置において位相差発生素子PHを取り除いた場合のシミュレーションの結果を示す図である。
図4中、実線aは直接光の強度分布を示し、急峻な1つのピークを有する分布となっている。
一方、破線bは戻り光の強度分布を示し、横軸方向に広がった分布となっている。ここで、第1光学記録層16での透過率が100%、第2光学記録層12での反射率が100%、中間層17での吸収率が0%と想定している。
上記の戻り光(破線b)は、対物レンズの光軸を通り半径方向に伸びる軸上においてエネルギー密度が極小とはならず、戻り光(破線b)は直接光と干渉して強度変調を引き起こすのに充分なエネルギー密度を有していることを示している。
【0042】
図4において、直接光のピーク位置でのエネルギー密度を1とした時のピーク位置での戻り光のエネルギー密度は0.052程度であるが、一方で、図3においては、直接光のピーク位置でのエネルギー密度を1とした時のピーク位置での戻り光のエネルギー密度は0.017程度となっている。
このように、初期化装置において位相差発生素子を用いた場合には、位相差発生素子を取り除いた場合と比べて、直接光のピーク位置での戻り光のエネルギー密度が3分の1程度に押さえられており、上記位相差発生素子を導入することにより多層光ディスクの第1光学記録層を初期化するときに問題になる、各光学記録層の間の光干渉による初期化ムラを改善することができる。
【0043】
尚、図3のシミュレーションの結果において、光ディスクに例えば0.6°程度のトラック方向のスキューが発生したとすると、中間層厚を20μmとすると、戻り光の位置は直接光の位置に対して相対的にトラック方向に0.2μm程度シフトするが、この変位量は問題にはならない量となっている。
【0044】
次に、上記の2層の光学記録層を有する光ディスクの製造方法の一例について説明する。
ここでは、第1光学記録層16だけでなく第2光学記録層12も相変化型の記録膜を含む構成として説明する。
【0045】
まず、従来より知られている所定の方法によって、第2光学記録層用のパターンである凹凸形状10’を表面に有する第2光学記録層用スタンパ10を作成する。
次に、上記の第2光学記録層用スタンパ10を金型のキャビティ内側を臨むように設置し、例えば溶融状態のポリカーボネートを射出する射出成形により、図5(a)に示すように、ポリカーボネートからなるディスク基板11を作成する。このとき、金型の形状を設定することで、ディスク基板11にセンタホールCHの形状を形成する。
ここで、ディスク基板11の表面には、第2光学記録層用スタンパ10の凹凸形状10’に対応して、凹凸形状11’が形成される。
【0046】
上記の第2光学記録層用スタンパ10から離型することで、図5(b)に示すような表面に凹凸形状11’が形成されたディスク基板11が得られる。
【0047】
次に、図6(a)に示すように、ディスク基板11の表面に空気や窒素ガスなどのガスを吹き付けてダストを除去した後、例えばスパッタリング法あるいはCVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより、アルミニウム膜からなる全反射性の反射膜、誘電体膜、相変化型の記録膜、誘電体膜を順次積層させ、第2光学記録層12を形成する。
【0048】
次に、図6(b)に示すように、図2(a)の初期化装置を用いて、あるいは図2(a)の初期化装置から位相差発生素子PHを取り外した構成の初期化装置を用いて、初期化光LTI を対物レンズOLで集光して第2光学記録層12に照射しながら第2光学記録層12の全面に掃引し、第2光学記録層12を初期化する。
【0049】
一方、図7(a)に示すように、例えば80μmの厚みの中心にセンタホールCHを有する略円形のシート状基板13上に、転写層となる適量の紫外線硬化樹脂14aを供給して、スピン塗布する。
次に、予め第1光学記録層用のパターンである凹凸形状15’を表面に有する第1光学記録層用スタンパ15を形成しておき、図7(b)に示すように、紫外線硬化樹脂14aに第1光学記録層用スタンパ15を貼り合わせ、充分な量の紫外線を照射して紫外線硬化樹脂14aを固化させ、転写層14とする。
ここで、転写層14の表面には、第1光学記録層用スタンパ15の凹凸形状15’に対応して、凹凸形状14’が形成される。
【0050】
次に、図8(a)に示すように、第1光学記録層用スタンパ15と転写層14の界面で剥離することで、転写層14の表面に凹凸形状14’を転写する。
【0051】
次に、図8(b)に示すように、転写層14の表面に空気や窒素ガスなどのガスを吹き付けてダストを除去した後、例えばスパッタリング法あるいはCVD法などにより、アルミニウム膜からなる半透過性の反射膜、誘電体膜、相変化型の記録膜、誘電体膜を順次積層させ、第1光学記録層16を形成する。
【0052】
次に、図9(a)に示すように、ディスク基板11に形成された第2光学記録層12上に、感圧性粘着シート17aを配置し、図9(b)に示すように、感圧性粘着シート17aを貼り合わせ用の中間層17として、第2光学記録層12と第1光学記録層16とを向かい合わせ、芯合わせをして貼り合わせる。
【0053】
次に、図10に示すように、図2(a)の初期化装置を用いて、初期化光LTI を対物レンズOLで集光して第1光学記録層16に照射しながら第1光学記録層16の全面に掃引し、第1光学記録層16を初期化する。
以上で、図1に示す構成の光ディスクを製造することができる。
【0054】
尚、上記の製造方法は1実施形態であり、例えば、第2光学記録層12の上層に、表面に第1光学記録層用の凹凸パターンを有する中間層17を形成し、その上層に第1光学記録層16を形成し、その上層に光透過性の保護膜18を形成する方法など、他の方法により製造することも可能である。但し、いずれの場合も、第1光学記録層16の初期化は上述のように中間層17を介して第2光学記録層12と積層した後に行うものとする。
【0055】
(実施例1)
図11(a)は、上記の初期化装置において用いる位相差発生素子PHの具体的な構成例の平面図であり、図11(b)は図11(a)中のX−X’における断面図である。
屈折率の異なる2つの材料を段差状の境界面で接合した構成であり、光学材料20の屈折率がNa であり、光学材料21の屈折率がNb であり、説明上、光学材料20側から光が入射するものとする。
図11(a)に示す半平面領域PとQにおいて、方向DRLTに入射した光は、光学材料20,21を通り、光学材料21から素子外へ透過した時点で、半平面領域Pから透過した光と半平面領域Qから透過した光の間で、2π|Na −Nb|d/λで示される位相差を持つことになる。ここで、dは図11(a)に示す段差形状の高さ、λは初期化光の波長である。
この値が下記の式(1)を満たす場合、即ち、半平面領域P,Qでの光学距離の差が初期化レーザ光の半波長の奇数倍となる構成の場合、対物レンズに入射する初期化レーザ光が半平面領域PとQのうちの一方の領域と他方の領域とで位相が半波長ずれている構成を実現することができる。
ここで、光学材料20,21のいずれか一方が無い構成としてもよい。この場合ない方の材料の屈折率の値に、空気や真空など、存在するほうの材料を取り囲む雰囲気の屈折率を用いる。
【0056】
【数1】
|Na −Nb |d/λ=1/2+n (nは0以上の整数) ・・・(1)
【0057】
例えば、光学材料20,21として石英ガラス(屈折率1.452)と空気(屈折率1.000)、初期化レーザ光波長830nmとするとき、式(1)中のnの値を0とすると、段差dを0.918μmとして上記構成の位相差発生素子を実現できる。
【0058】
また、例えば、光学材料20,21として石英ガラス(屈折率1.452)とBK7(屈折率1.510)、初期化レーザ光波長830nmとするとき、式(1)中のnの値を0とすると、段差dを7.155μmとして上記構成の位相差発生素子を実現できる。
【0059】
(実施例2)
位相差発生素子に入射する光が直線偏光である場合には、図12に示す位相差発生素子を用いることができる。
図12(a)は、上記の初期化装置において用いる位相差発生素子PHの具体的な他の構成例の平面図であり、図12(b)は図12(a)中のX−X’における断面図である。
複屈折材料には水晶のような一軸性結晶が存在し、3つの結晶軸が互いに直交し、かつa,b軸方向で光に対する屈折率が等しく、c軸ではa,b軸とは異なる屈折率を持つものが存在する。これらは波長板と呼ばれる光学素子として広く用いられている。
このような複屈折材料を1枚用いて、図12(a)および(b)に示すように、半平面領域Pにおいてc軸AXc が一の方向に向くように複屈折材料22を配置し、半平面領域Qにおいてはc軸AXc が半平面領域Pと直行する方向を向くように複屈折材料22を配置してこれらを接合することにより、半平面領域PとQの間で透過光の位相差を発生させることができる。
【0060】
例えば、波長833nmにおけるα型水晶の複屈折率の値は、No =1.53770(常光)、Ne =1.54661(異常光、ここではc軸に用いる)である。
ここで、図12に示す構成の位相差発生素子PH中の半平面領域P,Qのそれぞれにおいて、Ne の方向をc軸に用い、No の方向を図12の面内でNe に直行する方向に用いる。
またこの位相差発生素子に入射する直線偏光のレーザー光の偏光方向を半平面領域Pのc軸に平行または垂直となるように入射する。
このとき、この位相差発生素子の厚みが、下記の式(2)を満たす場合、即ち、半平面領域P,Qでの光学距離の差が初期化レーザ光の半波長の奇数倍となる構成の場合、対物レンズに入射する初期化レーザ光が半平面領域PとQのうちの一方の領域と他方の領域とで位相が半波長ずれている構成を実現することができる。式(2)中、dは位相差発生素子の厚さ、λは初期化光の波長である。
【0061】
【数2】
|No −Ne |d/λ=1/2+n (nは0以上の整数) ・・・(2)
【0062】
例えば、複屈折材料として上記のα型水晶を用い、初期化レーザ光波長833nmとするとき、式(2)中のnの値を10とすると、位相差発生素子の厚さdを0.9816μmとして上記構成の位相差発生素子を実現できる。
【0063】
本発明は上記の実施形態に限定されない。
例えば、初期化対象とするディスク構造は、図1に示す構造に限られるものではなく、例えば図1の構造において第1光学記録層16上に形成された光透過性の保護膜18が無い状態で初期化を行ってもよい。
また、3層以上の光学記録層を有する光学記録媒体の初期化に適用することも可能である。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
【0064】
【発明の効果】
本発明により、相変化型の光学記録層を有する光学記録媒体を初期化するときに、各記録層の情報記録再生信号特性を劣化することなく、初期化する際に生ずる光干渉による初期化ムラを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は本発明の実施形態に係る光ディスクの光の照射の様子を示す模式斜視図であり、図1(b)は模式断面図である。
【図2】図2(a)は本実施形態に係る初期化装置の模式図であり、図2(b)は位相差発生素子の構成を示す平面図である。
【図3】図3は位相差発生素子がある場合場合について第1光学記録層上に初期化レーザ光を集光したときのビームの中心位置におけるトラック方向の断面の光強度の分布をシミュレーションした結果である。
【図4】図4は位相差発生素子が無い場合場合について第1光学記録層上に初期化レーザ光を集光したときのビームの中心位置におけるトラック方向の断面の光強度の分布をシミュレーションした結果である。
【図5】図5(a)および(b)は実施形態に係る光ディスクの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図6】図6(a)および(b)は図5の続きの工程を示す断面図である。
【図7】図7(a)および(b)は図6の続きの工程を示す断面図である。
【図8】図8(a)および(b)は図7の続きの工程を示す断面図である。
【図9】図9(a)および(b)は図8の続きの工程を示す断面図である。
【図10】図10は図9の続きの工程を示す断面図である。
【図11】図11(a)は実施例1に係る位相差発生素子の平面図であり、図11(b)は図11(a)中のX−X’における断面図である。
【図12】図12(a)は実施例2に係る位相差発生素子の平面図であり、図12(b)は図12(a)中のX−X’における断面図である。
【符号の説明】
10…第2光学記録層用スタンパ、11…ディスク基板、12…第2光学記録層、13…シート状基板、14…転写層、14a…紫外線硬化樹脂、15…第1光学記録層用スタンパ、16…第1光学記録層、17…中間層、17a…感圧性粘着シート、18…保護膜、20,21…光学材料、22…複屈折材料、10’,11’,14’,15’…凹凸形状、BS…ビームスプリッタ、CA…クランプ領域、CH…センタホール、DC…光ディスク、DR…ドライブ方向、DRLT…初期化光の入射方向、DRrad …半径方向、HD…光学ヘッド、LD…レーザダイオード、LS…集光レンズ、LTI …初期化光、LTR …記録再生光、MR…反射ミラー、OL…対物レンズ、PD…フォトディテクタ、PH…位相差発生素子、RA…情報記録再生領域、SM…スピンドルモータ。
Claims (10)
- 基板上に、光照射側から少なくとも第1光学記録層および第2光学記録層が中間層を介して積層され、少なくとも上記第1光学記録層が相変化記録材料を有する光学記録媒体の初期化装置であって、
初期化レーザ光光源と、
上記初期化レーザ光光源からの初期化レーザ光を光学記録媒体の光学記録層に集光する対物レンズを含む光学系とを有し、
上記対物レンズに入射する初期化レーザ光が、2つの領域に区分された入射瞳の一方の領域と他方の領域とで位相が半波長ずれている
光学記録媒体の初期化装置。 - 上記一方の領域と他方の領域は上記対物レンズの中心軸を通って入射瞳を二分する境界線によって区分されており、
上記境界線を上記光学記録層上に投影した時の当該境界線の延伸方向が上記光学記録媒体の半径方向と一致する
請求項1に記載の光学記録媒体の初期化装置。 - 上記光学系が上記一方の領域に入射する初期化レーザ光と上記他方の領域に入射する初期化レーザ光との位相を半波長ずらす位相差発生素子を含む
請求項1に記載の光学記録媒体の初期化装置。 - 上記位相差発生素子が屈折率の異なる複数の光学材料を有し、上記2つの領域での光学距離の差が上記初期化レーザ光の半波長の奇数倍となるように構成されている
請求項3に記載の光学記録媒体の初期化装置。 - 上記位相差発生素子が上記2つの領域で結晶軸が異なる方向を向くように配置された複屈折材料を有し、当該2つの領域での光学距離の差が上記初期化レーザ光の半波長の奇数倍となるように構成されている
請求項3に記載の光学記録媒体の初期化装置。 - 基板上に、光照射側から少なくとも第1光学記録層および第2光学記録層が中間層を介して積層され、少なくとも上記第1光学記録層が相変化記録材料を有する光学記録媒体の初期化方法であって、
対物レンズを含む光学系により初期化レーザ光を光学記録媒体の光学記録層に照射して当該光学記録層の初期化を行うときに、上記初期化レーザ光の位相を、2つの領域に区分された入射瞳の一方の領域と他方の領域とで半波長ずらして上記対物レンズに入射させる
光学記録媒体の初期化方法。 - 上記一方の領域と他方の領域は上記対物レンズの中心軸を通って入射瞳を二分する境界線によって区分されており、
上記境界線を上記光学記録層上に投影した時の当該境界線の延伸方向が上記光学記録媒体の半径方向と一致する
請求項6に記載の光学記録媒体の初期化方法。 - 上記光学系が上記一方の領域に入射する初期化レーザ光と上記他方の領域に入射する初期化レーザ光との位相を半波長ずらす位相差発生素子を含む
請求項6に記載の光学記録媒体の初期化方法。 - 上記位相差発生素子が屈折率の異なる複数の光学材料を有し、上記2つの領域での光学距離の差が上記初期化レーザ光の半波長の奇数倍となるように構成されている
請求項8に記載の光学記録媒体の初期化方法。 - 上記位相差発生素子が上記2つの領域で結晶軸が異なる方向を向くように配置された複屈折材料を有し、当該2つの領域での光学距離の差が上記初期化レーザ光の半波長の奇数倍となるように構成されている
請求項8に記載の光学記録媒体の初期化方法。
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