JP2007039544A - 木質樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

木質樹脂組成物およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 充填セルロ−ス系微粉末の焦げおよび臭気がなく、金型を汚染せず、木質感(触感や光沢および色などの外観品質)に問題がない木質樹脂組成物を提供すること、さらに、その簡便安価な製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の木質樹脂組成物は、スチレン系重合体(A)とオレフィン系重合体(B)とを、(A)/(B)=70/30〜10/90(重量比)で含み、該スチレン系重合体(A)と該オレフィン系重合体(B)との合計を100重量部としたときに、セルロ−ス系微粉末(C)を10〜160重量部、スチレン系熱可塑性エラストマー(D)を1〜10重量部含む。
【選択図】 なし

Description

本発明は、成形性および機械的性質に優れ、かつ質感に優れる木質樹脂組成物およびその製造方法に関する。
木粉などのセルロ−ス系微粉末とオレフィン系樹脂(例えば、PP、HDPE)を混合、混練して得られる木質樹脂組成物の成形品は、充分に高い機械的強度が得られない、表面光沢が高い、木質感がほとんど無い等の問題を有している。これらの問題を解決するために、スチレン系樹脂(例えば、ABS、PS、AES、AAS、SAS)等をさらに添加した木質樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、スチレン系樹脂を添加することで、押出成形を用い成形することは問題なくとも、射出成形を用いる場合は、様々な問題を有している。例えば、成形温度が高く、流動性が低くなるので、充填した木粉等が焦げる、および得られる製品が焦げ臭い臭気を有する。充填した木粉等が焦げることで、木粉等に含まれるリグニンが熱分解し、製品の色を黒やこげ茶に変色させるので、所望の製品の色に比べて色が暗くなるという問題がある。熱分解したリグニンは水に溶けやすいので、屋外で簡単に変色するという問題もある。また、成形時に木粉等の分解ガスが金型に付着して、長時間の連続成形ができず、金型のクリ−ニングを小まめに行う必要がある。
さらに、従来技術では、上記のような問題に起因して、スチレン系樹脂のオレフィン系樹脂に対する割合を高くすることができないので、表面光沢が高くなり蝋のような触感や光沢が残る。これらを除去するために、通常は、表面をサンディングしたり、さらに塗装をしたりして表面状態を変える必要がある。従って、別の加工を施すことになり、コストが高くなるという問題がある。
特開平11−269316号公報
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、充填セルロ−ス系微粉末の焦げおよび臭気がなく、金型を汚染せず、木質感(触感や光沢および色などの外観品質)に優れる木質樹脂組成物を提供すること、さらに、その簡便安価な製造方法を提供することである。
本発明の木質樹脂組成物は、スチレン系重合体(A)とオレフィン系重合体(B)とを、(A)/(B)=70/30〜10/90(重量比)で含み、該スチレン系重合体(A)と該オレフィン系重合体(B)との合計を100重量部としたときに、セルロ−ス系微粉末(C)を10〜160重量部、スチレン系熱可塑性エラストマー(D)を1〜10重量部含む。
好ましい実施形態においては、上記スチレン系重合体(A)は、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、ACS樹脂、AAS樹脂、MBS樹脂から選ばれる少なくとも1種である。
好ましい実施形態においては、上記スチレン系重合体(A)と上記オレフィン系重合体(B)とを、(A)/(B)=70/30〜20/80(重量比)で含む。
本発明の別の局面においては、木質樹脂組成物の製造方法が提供される。この製造方法は、スチレン系重合体(A)とセルロ−ス系微粉末(C)を溶融混練して混練物とした後、オレフィン系重合体(B)およびスチレン系熱可塑性エラストマー(D)を添加し混練する。
本発明によれば、スチレン系重合体(A)と、オレフィン系重合体(B)と、セルロ−ス系微粉末微粉末(C)と、スチレン系熱可塑性エラストマー(D)とを所定の割合で含むことで、優れた木質感(触感や光沢および色などの外観品質)かつ、優れた機械的性質を有する木質樹脂組成物を提供できる。特に、所定量のスチレン系熱可塑性エラストマー(D)を加えることで、スチレン系樹脂の有する性質、例えば、線膨張が小さい、高加重での熱変形温度が高い、表面硬度が高い、木目着色がしやすい、剛性が高い、感触がプラスチック様ではない、表面光沢が低い、などの性質を有効に利用できる。従って、成形時における充填セルロース系微粉末の焦げがなく、金型を汚染することを防ぎ、かつ、優れた木質感および優れた破断伸びをバランスよく得ることができる。
さらに、所定量のスチレン系熱可塑性エラストマー(D)を含むことでスチレン系樹脂(A)のオレフィン系樹脂(B)に対する割合を高くすることができるので、表面光沢を低く抑えることができる。また、所定量のスチレン系熱可塑性エラストマー(D)とスチレン系樹脂(A)とを組み合わせて用いることにより、上記の効果に加えて、流動性がよく安定した成形を行うことができる。この結果、木質感を損なわず、かつ、優れた機械的性質を有する木質樹脂組成物を提供することができる。
本発明の木質樹脂組成物は、スチレン系重合体(A)とオレフィン系重合体(B)とを、(A)/(B)=70/30〜10/90(重量比)で含み、該スチレン系重合体(A)と該オレフィン系重合体(B)との合計を100重量部としたときに、セルロ−ス系微粉末(C)を10〜160重量部、スチレン系熱可塑性エラストマー(D)を1〜10重量部含む。
A.スチレン系重合体
上記スチレン系重合体(A)はオレフィン系重合体(B)に対して、(A)/(B)=70/30〜10/90(重量比)の割合で木質樹脂組成物に含まれる。好ましくは、(A)/(B)=70/30〜20/80であり、より好ましくは、(A)/(B)=70/30〜25/75であり、さらに好ましくは、(A)/(B)=70/30〜30/70である。スチレン系重合体の割合を上記範囲に設定することで、表面光沢を低く抑えることができる。スチレン系重合体(A)の割合が大きすぎると、溶融時の流動性が高くなり、セルロ−ス系微粉末の焦げおよび金型の汚染が生じるおそれがあり、成形性が悪くなる場合がある。スチレン系重合体(A)の割合が小さすぎると、表面光沢が高くなり蝋のような触感や光沢が残るおそれがある。
スチレン系重合体(A)は、目的に応じて任意の適切なスチレン系重合体が採用される。具体例としては、スチレンの単独重合体;α−メチルスチレンの単独重合体;アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂);アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂);アクリロニトリル・アクリル・スチレン共重合体(AAS樹脂);アクリロニトリル・エチレンプロピレンゴム・スチレン共重合体(AES樹脂);アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン共重合体(ACS樹脂);スチレン・メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂);スチレンと無水マレイン酸共重合体(SMA樹脂);ブタジエン・スチレン・メタクリル酸メチル共重合体(MBS樹脂)などが挙げられる。
好ましくは、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、ACS樹脂、AAS樹脂、MBS樹脂である。線膨張が小さく、高荷重での熱変形温度が高く、表面硬度が高く、木目着色がしやすく、剛性が高く、触感がプラスチック様ではない等の特徴を有するので、優れた木質樹脂組成物を得ることができる。特に好ましくは、ABS樹脂である。ABS樹脂は強靭で耐衝撃性と機械的性質に優れ、剛性も高く、耐薬品性にも優れ、成形性にも優れているからである。ABS樹脂は、ブレンド法、グラフト法、あるいはグラフト・ブレンド法などの種々の製造方法によって合成されるゴム強化スチレン系重合体を総称するものである。
B.オレフィン系重合体
上記オレフィン系重合体(B)はA項で説明したスチレン系重合体(A)と共に、(A)/(B)=70/30〜10/90(重量比)の割合で木質樹脂組成物に含まれる。好ましくは、(A)/(B)=70/30〜20/80であり、より好ましくは、(A)/(B)=70/30〜25/75であり、さらに好ましくは、(A)/(B)=70/30〜30/70である。オレフィン系重合体(B)の割合が90(重量比)を超えると、触感や光沢などの外観品質が劣るおそれがある。オレフィン系重合体(B)の割合が10(重量比)より低くなると流動性が著しく低くなり、成形が困難になるおそれがある。
上記オレフィン系重合体(B)は、目的に応じて任意の適切なオレフィン系重合体が採用される。具体例としては、1種又は2種以上のオレフィン系単量体を高圧法又は低圧法等の方法で重合して得られる(共)重合体である。例えば、ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリ1−ブテン;プロピレン・エチレン共重合体;プロピレン・1−ブテン共重合体;エチレン・1−ブテン共重合体;プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体等が挙げられる。これらオレフィン系重合体は、単独で用いてもよく、目的に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。プロピレンを構造単位として含有するポリプロピレン系重合体が特に好ましく用いられる。
上記ポリプロピレン系重合体としては、プロピレンの単独重合体、プロピレン以外のα−オレフィン(例えば、炭素数2または4〜20のα−オレフィン)とプロピレンとの共重合体等が挙げられる。上記α−オレフィンの具体例としては、エチレン;1−ブテン;1−ペンテン;1−ヘキセン;1−ヘプテン;1−オクテン;1−デセン;1−ドデセン;1−ヘキサドデセン;4−メチル−1−ペンテン;2−メチル−1−ブテン;3−メチル−1−ブテン;3,3−ジメチル−1−ブテン;ジエチル−1−ブテン;トリメチル−1−ブテン;3−メチル−1−ペンテン;エチル−1−ペンテン;プロピル−1−ペンテン;ジメチル−1−ペンテン;メチルエチル−1−ペンテン;ジエチル−1−ヘキセン;トリメチル−1−ペンテン;3−メチル−1−ヘキセン;ジメチル−1−ヘキセン;3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン;メチルエチル−1−ヘプテン;トリメチル−1−ヘプテン;ジメチル−1−オクテン;エチル−1−オクテン;メチル−1−ノネン;ビニルシクロペンタン;ビニルシクロヘキサン;ビニルノルボルナン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは単独で用いてもよく、目的に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。共重合成分の割合としては、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。共重合体の構造については特に制限はなく、例えば、ランダム型、ブロック型、グラフト型、テーパー型、これらの混合型等いずれであってもよい。
ポリプロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.001g/10分以上および1000g/10分以下、より好ましくは0.01g/10分以上および1000g/10分以下、更に好ましくは0.1g/10分以上および1000g/10分以下である。MFRが0.001g/10分以下では成形流動性が劣り、熱劣化の要因となる場合が多い。MFRが1000g/10分以上では耐衝撃性が低下する場合が多い。なお、本明細書に記載のMFR値は、ASTM−D1238に従い230℃、2.16kg荷重下で測定される。
C.セルロ−ス系微粉末
本発明の木質樹脂組成物は、上記スチレン系重合体(A)と上記オレフィン系重合体(B)との合計を100重量部とした場合、セルロ−ス系微粉末(C)を10〜160重量含む。好ましくは、10〜140重量部である。より好ましくは、10〜100重量部であり、さらに好ましくは、10〜70重量部であり、特に好ましくは、20〜50重量部である。セルロース系微粉末の含有割合が10重量部より低くなると、木質感が不十分である場合が多い。160重量部を超えると成形時の流動抵抗が大きくなるので、木質樹脂組成物に焼け焦げなどが生じる場合が多い。
セルロ−ス系微粉末(C)は、任意の適切なセルロ−ス系微粉末が採用される。具体例としては、木材、竹、籾殻、ケナフ、パルプ、紙、落綿、セルロ−ス繊維等の粉粒体が挙げられる。好ましくは、木材の製造工程などで生じる松、杉、ヒノキ、ツガ等の木屑である。
セルロ−ス系微粉末の平均粒径は、目的に応じて適宜選択される。当該平均粒径は小さければ小さいほど好ましい。具体的には、平均粒径は、好ましくは1000μm以下であり、さらに好ましくは500μm以下であり、特に好ましくは100μm以下である。平均粒径の下限は特に限定はされないが、例えば、
10μmである。セルロ−ス系微粉末が所定の範囲内に平均粒径を有することで、成形性に優れ、かつ、優れた木質感(特に、香りや触感など)を有し得る。
D.スチレン系熱可塑性エラストマー
木質樹脂組成物は、スチレン系重合体(A)とオレフィン系重合体(B)との合計を100重量部とした場合、上記スチレン系熱可塑性エラストマー(D)を1〜10重量部含む。好ましくは、1.5〜5重量部である。上記範囲のスチレン系熱可塑性エラストマーを含むことにより、充填セルロース系微粉末の焦げがなく、金型を汚染することを防ぎ、かつ、優れた木質感および優れた破断伸びをバランスよく得ることができる。さらに、上記スチレン系重合体(A)の含有割合を高く設定できる。この結果、成形性に優れ、木質感を損なわず、かつ機械的特性に優れた木質樹脂組成物を得ることができる。スチレン系熱可塑性エラストマー(D)が1重量部より低い場合は、木質樹脂組成物の破断伸びが低くなり、強度が不十分となる場合が多い。10重量部を超える場合は、溶融時の流動性が低くなるので、セルロ−ス系微粉末の焦げが生じ、金型を汚染するおそれがある。
スチレン系熱可塑性エラストマーは、目的に応じて任意の適切なスチレン系熱可塑性エラストマーが採用される。代表例には、スチレン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとしてスチレン系繰り返し単位またはそれに類似した繰り返し単位と、ソフトセグメントとしてオレフィン系繰り返し単位またはそれに類似した繰り返し単位とを有する。ハードセグメントは、常温では物理的な架橋点(擬似架橋点)として作用し、高温ではその物理的な架橋が解けて流動する。したがって、スチレン系熱可塑性エラストマーは、加熱すれば流動して通常の熱可塑性プラスチックとして成形することができ、常温では加硫せずにゴム弾性を示すことができるエラストマーを意味し、汎用ポリスチレン系樹脂(例えば、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、ACS樹脂、AAS樹脂、MBS樹脂)とは異なる物性(性質)を有する。このような挙動を示すかぎり、ハードセグメントとソフトセグメントの配列は、任意の適切な配列が採用される。
スチレン系熱可塑性エラストマーの具体的な例としては、ポリスチレングラフトポリプロピレン;スチレン−ブタジエン共重合体;水素添加スチレン−イソプレン共重合体;スチレン−エチレン共重合体等を挙げることができる。共重合体は、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体を挙げることができ、目的に応じて適宜選択される。
好ましくは、スチレン−ブタジエン共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体)及びその水添物である。例えば、スチレン−スチレン−ブタジエン共重合体(SBS);水添スチレン−スチレン−ブタジエン共重合体(SEBS);水添スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体(SBBS);水添スチレン−ブタジエン共重合体(HSBR);イソプレン−スチレン共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体)及びその水添物;水添スチレン−イソプレン共重合体(SEPS);水添スチレン−ビニルイソプレン共重合体(SIS);水添スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SEPS);水添スチレン−ブタジエンラバー(HSBR);および水添スチレン−ブタジエン−オレフィン結晶ブロック共重合体(SEBC)などが挙げられる。さらに好ましくは、水添スチレン−ブタジエンブロックあるいはランダム共重合体(例えば、SEBSまたはSBBSなど);水添スチレン −イソプレンブロックあるいはランダム共重合体;スチレン−エチレンランダム共重合体である。
E.その他添加物
木質樹脂組成物は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。添加剤としては、例えば、滑剤、無機充填剤、着色剤、帯電防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、木目着色に用いるカラーマスターバッチが挙げられる。これらの添加剤は単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
F.木質樹脂組成物の製造方法
F−1.木質樹脂組成物の成形準備
次に、本発明の木質樹脂組成物の製造方法の好ましい一例について説明する。まず、スチレン系重合体(A)とセルロ−ス系微粉末(C)を混練する。混練は任意の適切な方法が採用され得る。例えば押出機、好ましくは2軸の押出機を用い混練する。押出機により混練を行う場合、温度や混練時間等は、用いるスチレン系重合体(A)とセルロース系微粉末(C)の種類および含有割合等に応じ適宜設計される。混練し、押出しをすることでスチレン系重合体(A)とセルロ−ス系微粉末(C)の混練物(例えばペレット)を得ることができる。なお、スチレン系重合体(A)とセルロ−ス系微粉末(C)の混練物は市販品(例えば、長瀬産業株式会社製 プラスッドシリーズ)を用いてもよい。次に、得られた混練物にオレフィン系重合体(B)とスチレン系熱可塑性エラストマー(D)をさらに添加し混練し、押出機などを用いて成形に適した形状(例えばペレット)の最終混練物、すなわち本発明の木質樹脂組成物を得る。該混練方法は、目的に応じて任意の適切な方法で混練される。滑剤およびカラーマスターバッチなどの添加剤は、目的に応じて適切な方法または順番で添加され得る。以上のようにして、本発明の木質樹脂組成物が得られる。
F−2.木質樹脂組成物の成形
木質樹脂組成物の成形は、任意の適切な成形方法で行われる。例えば、圧縮成形、射出成形、トランスファー成形などである。好ましくは射出成形である。射出成形を行うことで、安定した木質樹脂組成物を得ることができるからである。射出成形の条件は、目的や用いる樹脂などに応じて任意の適切な条件が採用され得る。例えば、射出温度は、好ましくは140℃〜180℃であり、金型温度は、好ましくは40℃〜60℃である。射出圧力や射出速度もまた、目的とする成形品の形状等に応じて適宜選択される。さらに、ゲート部は目的に応じて適宜選択され、ファンゲート等が挙げられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例には限定されない。なお、特に示さない限り、実施例中の部およびパ−セントは重量基準である。実施例における評価項目は以下の通りである。
(成形品の焦げおよび臭気の評価)
成形品の焦げの有無を目視で確認した。また、成形品の臭いの有無を官能評価した。表1において、焦げおよび臭気の評価欄で示される記号は、以下の意味である。「○」焦げおよび臭気はなかった。「△」成形品に若干の焦げおよび臭気があった。「×」成形品全体に明確な焦げまたは臭気があった。なお、「○〜△」とは、成形品に若干の臭気はあるが、焦げは観察されなかった状態を意味する。
(射出成形時の金型汚染に関する評価)
成形品を500枚連続して射出成形を行い、その後の金型表面を目視にて観察した。表1において、金型汚染欄で示される記号は、以下の意味である。「○」汚染はなかった。「△」金型に若干の汚染があった。「×」金型全体に明確な汚染があった。なお、「○〜△」とは、金型に若干の汚染があるが、木質樹脂組成物の成形には影響を及ぼさない程度の汚染を意味する。
(光沢の測定)
成形品の表面光沢を60度鏡面の光沢度計(JIS Z 8741に準拠)で測定した。表面光沢値が低いと木目が良好に観察される。
(破断伸びの測定)
ASTM D638に準じて、引張試験機で破断伸びを測定した。
(実施例1)
a.射出成型用ペレットの作製
プラスッドAE1004(長瀬産業株式会社製:スチレン系重合体としてABS樹脂50重量%と、セルロ−ス系微粉末50重量%を含む)100重量部に、オレフィン系重合体としてポリプロピレン(日本ポリプロ(株) ノバテックPP BC6DR)を50重量部加え混練した。次いで、スチレン系熱可塑性エラストマーとして水添SEBS(旭化成(株) タフテック H1043)を3重量部加えた。木目着色のためにカラーマスターバッチ(着色MB)(セツナン化成 もくめ君)4重量部を加え、ペレットを得た。
b.射出成形
得られたペレットを射出成形機(日本製鋼所 JSW220 型締力220T)を用い以下の条件で射出成形を行い、300mm×65mm×2mmの角材を成形した。ゲ−トは幅方向の片側からファンゲ−トを用いた。得られた成形品の評価結果を表1に示す。
温調
ホッパー下 150℃
H3 160℃
H2 170℃
H1 170℃
金型温度 50℃
射出圧力 60%
射出速度 60%
(実施例2)
実施例1で用いたスチレン系熱可塑性エラストマーを、水添SBBS(旭化成(株) タフテック P2000)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、上記項目を評価した。成形品の評価結果を表1に示す。
(実施例3)
スチレン系重合体としてABS樹脂(テクノポリマ−株式会社:テクノABS330)70重量部とセルロ−ス系微粉末(平均粒子系500μm以下)50重量部を溶融混練し、オレフィン系重合体としてPP(日本ポリプロ(株) ノバテックPP BC6DR)30重量部を加え混練した。さらに、スチレン系熱可塑性エラストマーとして水添SEBS(旭化成(株) タフテック H1043)を3重量部加え、木目着色のために着色MB(セツナン化成 もくめ君)を4重量部加え、ペレットを得た。以下、実施例1と同様にして成形品を作製し、上記項目を評価した。成形品の評価結果を表1に示す。
(実施例4)
スチレン系重合体(ABS樹脂)を10重量部とし、オレフィン系重合体(PP)を90重量部としたこと以外は、実施例3と同様にして成形品を作製し、上記項目を評価した。成形品の評価結果を表1に示す。
(実施例5)
スチレン系重合体(ABS樹脂)を50重量部とし、オレフィン系重合体(PP)を50重量部とし、セルロ−ス系微粉末を160重量部としたこと以外は、実施例3と同様にして成形品を作製し、上記項目を評価した。成形品の評価結果を表1に示す。
(実施例6)
スチレン系重合体(ABS樹脂)を50重量部とし、オレフィン系重合体(PP)を50重量部とし、セルロ−ス系微粉末を10重量部としたこと以外は、実施例3と同様にして成形品を作製し、上記項目を評価した。成形品の評価結果を表1に示す。
(実施例7)
スチレン系熱可塑性エラストマーとして水添SEBSを1重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、上記項目を評価した。成形品の評価結果を表1に示す。
(実施例8)
スチレン系熱可塑性エラストマーとして水添SEBSを10重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、上記項目を評価した。成形品の評価結果を表1に示す。
(比較例1)
スチレン系重合体(ABS樹脂)を80重量部とし、オレフィン系重合体(PP)を20重量部としたこと以外は、実施例3と同様にして成形品を作製し、上記項目を評価した。成形品の評価結果を表1に示す。
(比較例2)
スチレン系重合体(ABS樹脂)を5重量部とし、オレフィン系重合体(PP)を95重量部としたこと以外は、実施例3と同様にして成形品を作製し、上記項目を評価した。成形品の評価結果を表1に示す。
(比較例3)
スチレン系熱可塑性エラストマーを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、上記項目を評価した。成形品の評価結果を表1に示す。
(比較例4)
スチレン系熱可塑性エラストマーとして水添SEBS(旭化成(株) タフテック H1043)を15重量部加えたこと以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、上記項目を評価した。成形品の評価結果を表1に示す。
(比較例5)
スチレン系重合体(ABS樹脂)を50重量部とし、オレフィン系重合体(PP)を50重量部とし、セルロ−ス系微粉末を170重量部としたこと以外は、実施例3と同様にして成形品を作製し、上記項目を評価した。成形品の評価結果を表1に示す。
(比較例6)
スチレン系重合体(ABS樹脂)を50重量部とし、オレフィン系重合体(PP)を50重量部とし、セルロ−ス系微粉末を5重量部としたこと以外は、実施例3と同様にして成形品を作製し、上記項目を評価した。成形品の評価結果を表1に示す。
Figure 2007039544
(評価)
実施例1〜8と比較例1および2とを比較すると、スチレン系重合体を所定の範囲で含むことにより、優れた木質感(触感や光沢および色などの外観品質)が得られ、優れた破断伸びを有し、木質樹脂組成物のデラミネ−ションを防げることが分かる。さらに、セルロース系微粒子の焼け焦げおよび臭気がなく、かつ、金型の汚染がないことが明らかである(例えば、実施例1と比較例1の比較)。この結果、製造コストを低く抑えることが可能となる。
実施例1〜8と比較例3および4とを比較すると、スチレン系熱可塑性エラストマーを所定の範囲で含むことにより、優れた破断伸びを有し、木質樹脂組成物のデラミネ−ションを防げることが分かる。特に、破断伸びの向上は顕著である。例えば、実施例1の破断伸びは、比較例3の破断伸びと比較し約2倍である。さらに、セルロース系微粒子の焼け焦げおよび臭気がなく、かつ、金型の汚染がないことが明らかである(例えば、実施例1と比較例4の比較)。また、水添SBBSを用いることで、より表面光沢を低くすることができるので、木質感が向上する。
実施例1〜8と比較例5および6とを比較すると、セルロース系微粉末を所定の範囲で含むことにより、優れた木質感(触感や光沢および色などの外観品質)が得られる。さらに、セルロース系微粒子の焼け焦げおよび臭気がなく、かつ、金型の汚染がないことが明らかである(例えば、実施例1と比較例5の比較)。
以上の結果より、優れた木質感や機械的特性および優れた成形性を有する木質樹脂組成物、および、簡便安価な製造方法が提供される。
本発明の木質樹脂組成物は、家具・建材などの住宅関連分野をはじめ、幅広い分野で好適に使用される。

Claims (4)

  1. スチレン系重合体(A)とオレフィン系重合体(B)とを、(A)/(B)=70/30〜10/90(重量比)で含み、該スチレン系重合体(A)と該オレフィン系重合体(B)との合計を100重量部としたときに、セルロ−ス系微粉末(C)を10〜160重量部、スチレン系熱可塑性エラストマー(D)を1〜10重量部含む、木質樹脂組成物。
  2. 前記スチレン系重合体(A)は、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、ACS樹脂、AAS樹脂、MBS樹脂から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の木質樹脂組成物。
  3. スチレン系重合体(A)とオレフィン系重合体(B)とを、(A)/(B)=70/30〜20/80(重量比)で含む、請求項1または2に記載の木質樹脂組成物。
  4. スチレン系重合体(A)とセルロ−ス系微粉末(C)を溶融混練して混練物とした後、オレフィン系重合体(B)およびスチレン系熱可塑性エラストマー(D)を添加し混練する、木質樹脂組成物の製造方法。
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