JP2007031832A - 冷陰極放電管電極用合金 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 質量%でNb:1.0%以上〜6.0%未満、Mo:3.0〜15.0%、残部は実質的にNi及び不可避的不純物からなる冷陰極放電管電極用合金。
【選択図】 なし
Description
例えば、特開2005−93119号公報(特許文献1)には、質量%でNbを6%〜32%未満含有し、残部が実質的にNiで成るNi−Nb合金を電極として用いる提案がなされている。この提案は、Niよりスパッタによる消耗が起こり難いNbをNiと合金化させることにより、純Niで成る電極よりも耐スパッタ性に優れた電極を提供できるという点で優れたものである。
しかしながら、特許文献1に開示される電極用Ni−Nb合金では、Nb含有量が質量%で6%以上と多く、この範囲は脆性の金属間化合物(Ni3Nb)が生成し、素材をカップ形状の電極に成形する過程での冷間での塑性加工性に悪影響を及ぼすという問題がある領域である。従って、特許文献1に開示される電極用Ni−Nb合金では耐スパッタ性には優れているものの、素材をカップ形状に成形する過程での塑性加工性が悪く、電極自体の作製が困難となるという欠点がある。
本発明の目的は、上述した従来の電極用Ni−Nb合金における塑性加工性の問題を解決し、さらに従来の電極用Ni−Nb合金と同等以上の耐スパッタ性が得られる電極用合金を提供することである。
しかしながら、この低Nb含有量のNi−Nb合金では、Nbを6.0%以上含有する従来合金ほどの耐スパッタ性が得られない。そこで、高濃度域まで含有しても脆性の金属間化合物を生成することなく、かつ耐スパッタ性を高める効果のある第三元素としてMoを選択し、このMo含有量の適切な範囲を見出すことにより、本発明に到達した。
すなわち本発明は、質量%でNb:1.0%以上〜6.0%未満、Mo:3.0〜15.0%、残部は実質的にNi及び不可避的不純物からなる冷陰極放電管電極用合金である。好ましいNbとMoの含有量は、Nb:2.0〜5.5%、Mo:4.0〜12.0%である。
以下に本発明の電極用合金における化学成分の規定理由を述べる。なお、特に記載のない限り質量%として記す。
Nb:1.0%以上6.0%未満
Nbは、Niと合金化することによって耐スパッタ性を向上させ、かつ耐食性をも高める効果を持つ本発明の必須元素である。但し、1.0%未満ではいずれの効果も小さく、逆に6.0%以上の範囲では脆性の金属間化合物(Ni3Nb)の生成により塑性加工性が劣化するので上述の範囲に規定した。より望ましい上限は5.5%であり、更に望ましくは5.0%である。望ましい下限は2.0%であり、更に望ましくは3.0%である。
Moは、Nbと同様にNiと合金化することによって電極用合金の耐スパッタ性を向上させる効果のある本発明の必須元素である。それ故、Nb量を1.0%以上6.0%未満とし、かつ適量のMoを含んだNi−Nb−Mo合金では、塑性加工性を劣化させることなく、Nbを6.0%以上含む従来のNi−Nb合金と同等の耐スパッタ性を得ることができる。
また、NiへのMoの固溶限は広く、理論的には25.0%の高濃度(含有量)域まで脆性の金属間化合物(Ni4Mo)を生成しないので、この25.0%以下の含有量では金属間化合物の生成による塑性加工性の著しい劣化の懸念がない。しかしながら、Mo量が15.0%を超えると、加工硬化による強度の上昇により塑性加工性が劣化するので、Mo量の上限値を15.0%とした。また、Mo量の下限値を3.0%としたのは、3.0%未満では耐スパッタ性を向上させる効果が小さいからである。Moのより望ましい上限は12.0%であり、さらに望ましくは11.5%、更に望ましくは10.0%である。Moのより望ましい下限は4.0%であり、更に好ましくは5.0%であると良い。
本発明の冷陰極放電管電極用合金において、Niは優れた加工性を確保するために必要な必須元素であるとともに上述したNb、Mo以外の残部を占めるベースとなる元素である。それ故、残部はできるだけ不可避的不純物含有量が少ないことが望まれるが、電極用合金の耐スパッタ性と塑性加工性に悪影響を与えない範囲として、それぞれ、以下に示す範囲であれば、不可避的に含有しても差し支えない。
C≦0.10%、Si≦0.50%、Mn≦0.50%、P≦0.05%、S≦0.05%
本発明の電極用合金では、上記の構成により、耐スパッタ性に優れた従来のNi−Nb合金と同等以上の耐スパッタ性を確保しつつ、従来のNi−Nb合金の問題であった塑性加工性を改善することができるので、優れた耐スパッタ性により長寿命が得られるという効果に加え、カップ形状の電極への塑性加工が容易であるという効果をも有し、冷陰極放電管の電極用合金として好適である。
これらの焼鈍した薄板のビッカース硬さを測定した後、冷間での深絞り加工テストを行った。(冷間での深絞り加工テストは、10個の試験片にて行い、1つでも割れや亀裂が発生したものには「否」として示す。)No.1〜No.9のビッカース硬さと深絞り加工テストの結果を表2に示す。
No.3、No.4、No.9の熱間圧延後の5mm厚さの板材より、耐スパッタ性評価用の試料として直径75mm、厚さ3mmのスパッタリング用ターゲットを作製した。これらのターゲットをマグネトロンスパッタ装置の真空チャンバー内に設置し、Ar圧力0.8Pa、投入電力300Wの条件で12時間、連続スパッタした後、チャンバー内からターゲットを取り出し、スパッタによるターゲットの消耗量(重量変化)を測定した。
No.3、No.4、No.9のスパッタ率(スパッタ率の値が小さい程、スパッタによる消耗が少なく、耐スパッタ性が優れていることを意味する。)の結果を表3に示す。
以上の実施例から、本発明のNo.3とNo.4は、耐スパッタ性に優れた比較例(従来例)のNo.9とほぼ同等の耐スパッタ性を確保しつつ、No.9よりカップ形状への成形(塑性加工)が容易であることが分かり、冷陰極放電管の電極用合金として適していることが示された。
なお、本発明のNo.4と純Niについて、電子が電極から放出される際の仕事関数(値が小さい程、電子放出が起こり易いことを意味する。)を、大気中光電子分光法を用いて測定したところ、それぞれ4.08eV(No.4)、4.17eV(純Ni)であり、純Niより優れていた。それ故、本発明のNo.4で成る電極は、これまで主に使用されてきた純Ni製の電極と比較して、電子放出特性の観点からも実用に供し得ることが確認された。
Claims (2)
- 質量%でNb:1.0%以上〜6.0%未満、Mo:3.0〜15.0%、残部はNi及び不可避的不純物からなることを特徴とする冷陰極放電管電極用合金。
- 質量%でNb:2.0〜5.5%、Mo:4.0〜12.0%であることを特徴とする請求項1に記載の冷陰極放電管電極用合金。
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