JP4394748B1 - 冷陰極放電管用電極及び冷陰極放電管 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】含有量3.0質量%以上7.0質量%以下のモリブデン(Mo)と、含有量12.0質量%以上18.0質量%以下の鉄(Fe)と、を含有し、残部がニッケル(Ni)及び不可避的不純物である合金を用いてなる冷陰極放電管用電極である。
【選択図】なし
Description
冷陰極放電管は、一般に、気密に封止されたガラス管と、ガラス管の内部空間内の両端部に配置された一対の電極(冷陰極放電管用電極)と、を有し、前記内部空間にアルゴン(Ar)やネオン(Ne)等の不活性ガス及び水銀(Hg)が封入されて構成される。
純ニッケル製の電極を用いた場合、電極にアルゴン等の不活性ガスが衝突することにより、ニッケル原子がガラス管内に飛散する。この現象はスパッタと呼ばれている。スパッタにより飛散したニッケル原子は、水銀原子と結合してアマルガムを形成するため、水銀原子の有効量が減少する。水銀原子の有効量が減少することにより、紫外線の放射量が減少するため、冷陰極放電管から照射される可視光線の輝度が低下する。このようにして冷陰極放電管は寿命に至る。
以上のように、純ニッケル製の電極ではスパッタが起こりやすく、該電極を用いた冷陰極放電管は寿命が短かい傾向がある。
従って、本発明は、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、耐スパッタ性及び深絞り加工性に優れ、希少金属であるモリブデンの含有量が少ない冷陰極放電管用電極を提供することである。
また、本発明の目的は、前記冷陰極放電管用電極を備えた長寿命な冷陰極放電管を提供することである。
<1> 含有量3.0質量%以上7.0質量%以下のモリブデン(Mo)と、含有量12.0質量%以上18.0質量%以下の鉄(Fe)と、を含有し、残部がニッケル(Ni)及び不可避的不純物である合金を用いてなる冷陰極放電管用電極である。
<2> 含有量3.5質量%以上6.5質量%以下のモリブデン(Mo)と、含有量12.5質量%以上17.5質量%以下の鉄(Fe)と、を含有し、残部がニッケル(Ni)及び不可避的不純物である合金を用いてなる冷陰極放電管用電極である。
<3> 含有量4.5質量%以上5.5質量%以下のモリブデン(Mo)と、含有量14.0質量%以上16.0質量%以下の鉄(Fe)と、を含有し、残部がニッケル(Ni)及び不可避的不純物である合金を用いてなる冷陰極放電管用電極である。
<4> 前記合金中におけるニッケル(Ni)の含有量が74.5質量%以上である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の冷陰極放電管用電極である。
<5> <1>〜<4>のいずれか1つに記載の冷陰極放電管用電極を備えた冷陰極放電管である。
また、本発明によれば、前記冷陰極放電管用電極を備えた長寿命な冷陰極放電管を提供することである。
本発明の冷陰極放電管用電極は、含有量3.0質量%以上7.0質量%以下のモリブデン(Mo)と、含有量12.0質量%以上18.0質量%以下の鉄(Fe)と、を含有し、残部がニッケル(Ni)及び不可避的不純物である合金を用いてなる。
本発明の冷陰極放電管用電極は、上記構成としたことにより、耐スパッタ性及び深絞り加工性が向上され、希少金属であるモリブデンの含有量が低減される。
本発明者は、ニッケル中に、希少金属であるモリブデンに加え、一般的な金属である鉄を特定量添加することにより、モリブデンの使用量を抑えつつニッケルの結晶粒界の結合力を強くすることができ、耐スパッタ性を向上できるとの知見を得、この知見に基づき本発明を完成した。
一方、前記鉄の含有量が18.0質量%を超えると、深絞り加工性が悪化する傾向がある。
耐スパッタ性と深絞り加工性とをより効果的に両立させる観点からは、前記鉄の含有量は、12.5質量%以上17.5質量%以下であることがより好ましく、14.0質量%以上16.0質量%以下であることが特に好ましい。
ここで、「深絞り加工性に優れる」とは、前記合金を冷陰極放電管用電極の形状(例えばカップ形状)に深絞り加工する際、破裂や損傷等の加工不良が抑制されている性質を指す。
深絞り加工性をより向上させる観点より、前記合金中におけるニッケルの含有量は、74.5質量%以上が好ましく、75.5質量%以上がより好ましく、78.0質量%以上が特に好ましい。
ニッケル含有量の上限は、耐スパッタ性向上の観点から、84.5質量%が好ましい。
前記モリブデンの含有量が3.0質量%未満であると、耐スパッタ性が悪化する傾向(即ち、スパッタが顕著になる傾向)がある。
一方、本発明における合金中、モリブデンの含有量が7.0質量%を超えると、深絞り加工性が悪化する傾向がある。
前記モリブデンの含有量は、3.5質量%以上6.5質量%以下であることが好ましく、4.5質量%以上5.5質量%以下であることがより好ましい。
更に、前記合金中における、モリブデンの含有量と鉄の含有量との組み合わせとしては、モリブデンの含有量が3.5質量%以上6.5質量%以下であって、鉄の含有量が12.5質量%以上17.5質量%以下である組み合わせが好ましく、モリブデンの含有量が4.5質量%以上5.5質量%以下であって、鉄の含有量が14.0質量%以上16.0質量%以下である組み合わせがより好ましい。
ここで、不可避的不純物とは、合金の製造工程において不可避的に混入される不純物を指す。
前記不可避的不純物としては、例えば、炭素、酸素、窒素、硫黄、マンガン、ケイ素、クロム、コバルト、アルミニウム、等が挙げられる。
本発明における合金中における不可避的不純物の含有量は、3.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることが特に好ましい。
例えば、ニッケル、鉄、及びモリブデンの各単体(粉末状でも塊状でもよい)を真空溶解炉に投入して金属溶湯を作製し、作製された金属溶湯を用いて真空鋳造によりインゴットとすることで、インゴットの形態の合金を製造できる。更に、前記インゴットを熱間圧延し、圧延板材を作製し、冷間圧延と熱処理とを繰り返し行い、板状の形態の合金とすることもできる。
また、本発明における合金(インゴットの形態及び板状の形態の双方を含む)としては、市販品を用いてもよい。
前記合金はニッケルを主成分として構成されるため、展性や延性に優れており、深絞り加工により容易にカップ形状に加工される(即ち、深絞り加工性に優れる)。
本発明の冷陰極放電管用電極の大きさには特に限定はない。
例えば、従来、カップ形状の冷陰極放電管用電極は、カップ径2.1mm程度、カップ長さ5mm程度の大きさであったが、近年は、光度向上(電流増大)の観点よりカップ径2.7mm以上4.0mm以下、カップ長さ10mm以上20mm以下の大きさが検討されている。
本発明は、上記従来の大きさの冷陰極放電管用電極から上記近年の大きさの冷陰極放電管用電極まで、特に制限なく適用できる。
本発明の冷陰極放電管は、既述の本発明の冷陰極放電管用電極を備えて構成される。
本発明の冷陰極放電管は、耐スパッタ性に優れた本発明の冷陰極放電管用電極を備えるため、長寿命である。更に、希少金属であり高価なモリブデンの使用量が抑えられるため、低コストである。
図1に示すように、本発明の冷陰極放電管の一例である冷陰極放電管100は、ガラス管10と、ガラス管10の両端部を封止する封止ガラス11及び12と、を有している。ガラス管10と、封止ガラス11及び12と、により内部空間16が画定されている。
前記ガラス管10の外径は、例えば、2.5mm以上6.0mm以下の範囲内、好ましくは3.0mm以上6.0mm以下の範囲内である。ガラス管10の材質としては、例えば、硼・珪酸ガラス、鉛ガラス、ソーダガラス、低鉛ガラス等が用いられる。
前記内部空間16には、アルゴン、キセノン、ネオン等の希ガスおよび水銀が封入されており、内部圧力は大気圧の数十分の一程度に減圧されている。
前記蛍光体層を構成する蛍光体は、ハロリン酸塩蛍光体や希土類蛍光体などの蛍光体から、目的や用途に応じて適宜選択される。前記蛍光体層は、2種類以上の蛍光体を含んでいてもよい。
冷陰極放電管用電極21及び冷陰極放電管用電極22はいずれもカップ形状である。
冷陰極放電管用電極21及び冷陰極放電管用電極22は、冷陰極放電管用電極21の開口部17と、冷陰極放電管用電極22の開口部18と、が対向する向きに配置されている。
冷陰極放電管用電極21の底面部23(詳しくは、該底面部23の封止ガラス11側の表面)には、リード線31の一端が接続されている。リード線31は、封止ガラス11を貫通してガラス管10の外部に至り、他端側で不図示の電源部に接続されている。
同様に、冷陰極放電管用電極22の底面部24(詳しくは、該底面部24の封止ガラス12側の表面)には、リード線32の一端が接続されている。リード線32は、封止ガラス12を貫通してガラス管10の外部に至り、他端側で不図示の電源部に接続されている。
冷陰極放電管用電極21及び冷陰極放電管用電極22の詳細な形態は、既述の「冷陰極放電管用電極」の項で説明したとおりであり、好ましい範囲も既述のとおりである。
リード線31及び32は、例えば、コバール等の導電性材料により構成される。または、コバールからなる外周部と銅又は銅合金からなる内部とを有する2層構造のリード線などであってもよい。
冷陰極放電管用電極21の形状は、円筒形状の一端が底面部23により閉塞された、カップ形状である。冷陰極放電管用電極21は、合金板をカップ形状に深絞り加工して作製される。リード線31は、一方の端面が冷陰極放電管用電極21の底面部23の外側に、例えば溶接により接続されている。
冷陰極放電管用電極21及び冷陰極放電管用電極22は、本発明における合金を用いたものであるため耐スパッタ性に優れている。
従って、冷陰極放電管100は、経時による輝度の低下が抑制されており、長寿命である。
<冷陰極放電管用電極(試料1)の作製及び評価>
ニッケル、モリブデン及び鉄を真空溶解炉に投入して金属溶湯を作製し、真空鋳造によりインゴットを作製した。
得られたインゴットを熱間圧延し、圧延板材を作製した。
得られた圧延板材に対し、冷間圧延と熱処理とを繰り返し行い、板厚0.2mm、ビッカース硬度151Hvの板状の合金材を作製した。
得られた板状の合金材を用いて組成分析用の試験片を作製し、ICP発光分光分析法及び赤外線吸収法(JIS Z2616)により組成分析を行ったところ、下記表1に示す値であった。
得られたコイル材を、順送金型及びトランスファー金型を用いて深絞り加工し、カップ径3.6mm×カップ長さ15mmのカップ形状の冷陰極放電管用電極(試料1)を得た。
上記冷陰極放電管用電極(試料1)と同組成の試験片(5mm×10mm×10mm)を作製し、日立製作所製IML−250により、加速電圧500V、加速電流210mA、減速電圧250V、入射角度45°、入射ガスAr、及び真空度2.7×10−4Paの条件にてスパッタ試験を行い、1分間当たりのスパッタ量を測定した。
別途、純Niの試験片(5mm×10mm×10mm)を作製し、得られた純Niの試験片についても上記と同様のスパッタ試験を行った。
合金のスパッタ量と純Niのスパッタ量との相対比較を行い、下記評価基準に従って評価した。
評価結果を下記表1に示す。
◎ … 純Niのスパッタ量を100%とした場合、スパッタ量が60%未満
○ … 純Niのスパッタ量を100%とした場合、スパッタ量が60%以上75%未満
△ … 純Niのスパッタ量を100%とした場合、スパッタ量が75%以上90%未満
× … 純Niのスパッタ量を100%とした場合、スパッタ量が90%以上
上記冷陰極放電管用電極(試料1)の作製と同様の深絞り加工により、冷陰極放電管用電極を10000個作製し、作製数(深絞り加工数)10000個中、破裂や損傷が発生したものの個数を確認し、下記評価基準に従って評価した。
評価結果を下記表1に示す。
◎ … 深絞り加工数10000個中、破裂や損傷の発生 0個
○ … 深絞り加工数10000個中、破裂や損傷の発生 1個以上50個以下
△ … 深絞り加工数10000個中、破裂や損傷の発生 51個以上300個以下
× … 深絞り加工数10000個中、破裂や損傷の発生 301個以上
真空溶解炉に投入するニッケル、モリブデン及び鉄の組成を種々変化させたこと以外は試料1と同様にして冷陰極放電管用電極(試料2〜試料19)を作製し、試料1と同様の組成分析及び評価を行った。
組成分析の結果及び評価結果を下記表1に示す。
このような耐スパッタ性及び深絞り加工性に優れた冷陰極放電管用電極(試料6〜試料14)を、図1及び図2中の冷陰極放電管用電極21、22として用いることで、長寿命な冷陰極放電管100を作製することができる。
11、12 封止ガラス
14 ガラス管の内壁
16 内部空間
21、22 冷陰極放電管用電極
31、32 リード線
100 冷陰極放電管
Claims (5)
- 含有量3.0質量%以上7.0質量%以下のモリブデン(Mo)と、含有量12.0質量%以上18.0質量%以下の鉄(Fe)と、を含有し、残部がニッケル(Ni)及び不可避的不純物である合金を用いてなる冷陰極放電管用電極。
- 含有量3.5質量%以上6.5質量%以下のモリブデン(Mo)と、含有量12.5質量%以上17.5質量%以下の鉄(Fe)と、を含有し、残部がニッケル(Ni)及び不可避的不純物である合金を用いてなる冷陰極放電管用電極。
- 含有量4.5質量%以上5.5質量%以下のモリブデン(Mo)と、含有量14.0質量%以上16.0質量%以下の鉄(Fe)と、を含有し、残部がニッケル(Ni)及び不可避的不純物である合金を用いてなる冷陰極放電管用電極。
- 前記合金中におけるニッケル(Ni)の含有量が74.5質量%以上である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の冷陰極放電管用電極。
- 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の冷陰極放電管用電極を備えた冷陰極放電管。
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